説明

観賞用草木育成架台

【課題】 造形の自由度を飛躍的に向上させると共に、植生された植物への吸水性が確実で、軽量、かつ病原菌を保有しづらいものを提供すること。
【解決手段】 この観賞用草木育成架台10は、通水性を有する1種類または複数種類の多孔質ウレタンからなる内部材1と、その内部材1を包む薄い硬質樹脂の外殻部材2とを有し、該外殻部材2に少なくとも植生用の穴3と吸水用の穴4を含む複数の穴を設けている。なお、外殻部材2をウレタンとしたり、内部材1内に水に不溶性の固体を埋め込んだりするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盆栽、庭園等で使用される鑑賞用草木育成架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の観賞用草木育成架台は、火山岩等の自然石または人工石上の適所に用土を安置し草木を植生し苔を付植している。
【0003】
このような中で、形態調整の容易さと環境汚染の防止の目的で、一種の土となるポリウレタン発泡体を、盆器および草木を植える主幹と一体となるように形成する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−146136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天然で採取される自然石は、形状および通水性ならびに耐久性等で適性のものが希少である。また、自然石は、植え付ける植物の弊害となる病原菌を保有している場合があるので、使用の前に滅菌処理が必要となっている。一方、人工石にしても通水性や造形に難点があり、人工加工をしても自然性を保てない状況である。また、両者ともに重量があり容積の大きな架台においては個人愛好家が簡単に移設することができず、屋上や屋内の設置の際は膨大な経費が必要となっている。なお、従来の観賞用草木育成架台は、重いものというイメージがあり、水上浮遊架台とする発想は無い状況である。
【0005】
また、特許文献1記載の発明は、小型の盆栽の大量生産に適しているものの、主幹に植えられる生きた草木の長寿命化については何の検討もされていない。また、小型の盆器を前提としているため、大型化には適さないものとなっている。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、造形の自由度を飛躍的に向上させると共に、植生された植物への吸水性が確実で、軽量、かつ病原菌を保有しづらい観賞用草木育成架台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観賞用草木育成架台は、通水性を有する1種類または複数種類の多孔質ウレタンからなる内部材と、その内部材を包む薄い硬質樹脂の外殻部材とを有し、該外殻部材に少なくとも植生用の穴と吸水用の穴を含む複数の穴を設けている。
【0008】
本発明によれば、内部材が通水性を有する多孔質ウレタンで形成され、外殻部材に一部に吸水用の穴が設けられているので、造形の自由度が高まり、給水性も確実となり、また軽量化が達成される。しかも、外殻部材も病原菌を保有しない硬質樹脂から形成されるので植物の弊害となる病原菌を保有しづらい観賞用草木育成架台を得ることができる。また、外殻部材に植生用の穴が形成されているので、草木の植えつけ、育成が容易となる。
【0009】
他の発明の観賞用草木育成架台は、通水性を有する1種類または複数種類の多孔質ウレタンからなる内部材と、その内部材を包む薄い硬質樹脂の外殻部材とを有し、外殻部材の表面に岩石色または草木色を模した塗装を施している。
【0010】
この発明によれば、内部材が通水性を有する多孔質ウレタンで形成されているので、造形の自由度が高まり、軽量化が達成される。しかも、外殻部材も病原菌を保有しない硬質樹脂から形成されるので植物の弊害となる病原菌を保有しづらい観賞用草木育成架台を得ることができる。また、給水性に関しては、この架台の一部を切り取り吸水用の穴を形成し、内部材を露出させることで簡単に達成できる。さらに、外殻部材の表面に岩石色または草木色を模した塗装が施されているので、外観はあたかも自然の岩石または自然の植物であるかのように見えることとなる。
【0011】
また、他の発明は、上述の観賞用草木育成架台に加え、外殻部材をウレタンとしている。この発明によれば、外殻部材を硬質ウレタン樹脂にすることにより、内部材の多孔質ウレタン表面への吹き付けが容易にでき、多孔質ウレタンとの接合が強固となり、外殻部材の厚さを小さくできるものとなる。
【0012】
さらに、他の発明は、上述の観賞用草木育成架台に加え、内部材内に水に不溶性の固体を埋め込んでいる。この構成によれば、多孔質ウレタンの内部材に不溶性の固体たとえば石・鉄鋼等を埋め込むことによって仕様に合わせた重量と固定用アンカーとしての機能も付加することが可能となる。また、水に不溶性の固体は、環境を汚さないものであるなら、各種の廃材でも良い。それによって廃材の再利用が可能となる。また、石や廃材等を埋め込むことによって、内部材である多孔質ウレタンの量を減少させることができる。
【0013】
また、他の発明は、上述の観賞用草木育成架台に加え、内部材は、多孔質ウレタン原料が吹き付けにて形成されたものであり、外殻部材は、その内部材の表面に硬質ウレタンが吹き付けにて形成されたものとしている。この発明によれば、吹き付けによって内部材や外殻部材が形成されているので、随意の造形が可能になると共に低価格化が実現される。
【0014】
さらに、他の発明は、上述の観賞用草木育成架台に加え、外殻部材に設けられてなる水と接する穴と他の穴間を結ぶ水路を内部材内に設けている。この構成によれば、内部材に設けられた水路によって、外殻部材にあけられた水と接する穴から水を送り、外殻部材上の他の箇所にあけられた穴から流出させることが可能となる。この結果、架台を岩石風に構成すると、岩の間から出てくる湧き水を模し、架台上に自然風な水流を作り込むことが可能となる。
【0015】
さらに、水路に送水するポンプを内部材の内部に設置するのが好ましい。このようにすると、人工的な仕掛けが外部に現れずポンプ騒音も防止できるので、内部材内に設けられた水路と合わせることによって、外観上、より自然に近い模擬空間を創作できる。
【0016】
また、他の発明は、上述の観賞用草木育成架台に加え、吸水用の穴は、植生用の穴より大きくされ、その穴から内部材が露出し、その内部材の露出面と外殻部材の吸水用の穴を囲む部分とが1つの平坦面を形成するように構成されている。この発明によれば、吸水用の穴を下にして盆器に置けば、架台が安定すると共に吸水が確実となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、造形の自由度が飛躍的に向上すると共に、植生された植物への吸水性が確実で、軽量、かつ病原菌を保有しづらい観賞用草木育成架台を得ることができる。
【0018】
また、本発明の展開として、架台内部から外殻部材の外に出水して架台上に水流等の盆景を構成したり、水上浮遊架台を実現し、従来の観賞用草木育成架台では不可能であったミニ庭園を実現することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図を参照しながら、本発明の実施の形態に係る観賞用草木育成架台を説明する。なお、まず第1の実施の形態に係る観賞用草木育成架台(以下、単に架台という。)10を図1に基づいて説明する。
【0020】
架台10は、図1の側断面図に示されるように、略円柱状の内部材1と、内部材1を包む外殻部材2と、外殻部材2に開けられた植生用の穴3と吸水用の穴4とを有している。この架台10は、植生用の穴3の部分の内側の内部材1が摘出されることで形成された凹み1aを有し、この凹み1aに床土5が充填されている。この床土5に草木6が植えられている。架台10は、草木6が植えつけられた状態で、水7が張られた盆器8に載置される。
【0021】
内部材1は、多孔質ウレタン原料の吹き付け加工にて形状を仕上げられた通水性を有する多孔質ウレタンとなっている。なお、この内部材1は、真空成型や注型等で作製した外殻部材2内に、多孔質ウレタンを挿入する方法でも実現できる。この多孔質ウレタンは、いわゆる発泡ウレタンで、製造過程で通水性と滅菌をコントロールできるきわめて軽量の材料である。
【0022】
通水性に関しては、たとえば下部を溜水または流水等の水7に浸しておくと、毛細管現象によって水分が上方へ上がっていき、上部の草木6へ水7を供給することができる。この通水性は、加工過程で発泡率を変えることによりコントロールすることができる。この結果、植えようとする草木6の種類によって予め発泡率を所定の値に設定することで、その草木6に最適な水分補給が可能となる。
【0023】
また、内部材1は、多孔質ウレタンで形成されているため、植生用の穴3からピンセット等で所望量を容易に摘出可能であり、凹み1aを形成しやすいものとなっている。凹み1aは、円形状とするのが好ましいが、四角形状としたり他の形状としても良い。この凹み1aと植生用の穴3は、架台10の本体を購入した後、購入者がナイフやピンセット等で形成するようにしても良い。また、吸水用の穴4も、全面が外殻部材2で覆われている架台10を購入した人が、その一部を切り取ることで形成しても良い。
【0024】
外殻部材2は、内部材1の図1で下面を残し、その他の全表面(植生用の穴3を除く)を覆うものである。この外殻部材2は、内部材1の表面に吹き付けによって硬質ウレタン樹脂の薄い外殻を形成することで得られたものである。なお、この外殻部材2は、真空成型や注型等で形成されるものとしても良い。また、外殻部材2は、硬質ウレタン樹脂の他に、他の種類の硬質樹脂、たとえばエポキシ等の熱硬化性樹脂、スチロール樹脂、アクリル樹脂としても良い。ただし、好ましくは親水性の樹脂、たとえば親水性の多価アルコール系の樹脂を採用するのが良い。
【0025】
なお、外殻部材2の表面には、岩石色を模した塗装が施してある。この表面色は、架台10が岩石形状のときは岩石色を、大木の根元形状の時は茶色の木色を、大木の幹形状のときは生きているかのような色の木色を、それぞれ施すことになる。さらには他の植物の色としても良い。
【0026】
植生用の穴3は、外殻部材2に予め形成しておいても良いが、上述したように内部材1の全面または上部を外殻部材2が全面的に覆うように形成し、その状態で販売された場合には、購入者がドリルとニッパー等を使用して開けるようにしても良い。このように購入者が植生用の穴3を開けるようにすると、購入者の好みの位置に草木6を植えることが可能となる。
【0027】
植生用の穴3には草木6の幹の部分が貫通し、根元となる部分は凹み1a内に入りその凹み1aに床土5が充填されることで草木6が植えられる。植生用の穴3は、円形状とするのが好ましいが、植える草木によっては他の形状としても良い。また、植生用の穴3は、床土5の架台外への飛散を防ぐ意味では凹み1aの径より小さくするのが好ましいが、土を露出させて自然感を向上させる際には、凹み1aの径と同等またはそれ以上にしても良い。
【0028】
吸水用の穴4は、架台10が盆器8に載置される載置面とほぼ同じ大きさとされ、植生用の穴3に比べ大きくされている。これは架台10を盆器8に載置する際の安定性を考慮したためである。すなわち、吸水用の穴4は、図1に示されるように、内部材1の露出面と、外殻部材2の吸水用の穴4を囲む部分とが1つの平坦面を形成するように構成されている。
【0029】
床土5は、植える草木6によって異なるものとなるが、たとえば腐葉土、赤土、川砂を所定の割合で混ぜたものや、ブレンド土、ケト土、藤砂を混ぜたものや、こららの土を1つだけとしたり、2種以上混合したものとしても良い。草木6は、第1の実施の形態では、木としているが、植物であれば他のもの、たとえば花や苔等の草としても良い。
【0030】
水7を蓄える盆器8は、中央に円形状の台部8aを有し、外周に円形状の壁部8bを有し全体が円形状とされている。吸水用の穴4が水7に接触しやすくするため、外周から中央に伸びる低段部8cと外周から伸び中央を横切る複数の低段部8dが設けられている。この低段部8c,8dに水7が入り込むように水7を盆器8に入れることで、水7が吸水用の穴4から架台10内に吸水されていく。
【0031】
各低段部8c,8dの下端面は同一高さとされ、その下端面の位置は、台部8aと壁部8bの間に形成される水深が深くなる部分に比べより上方に位置する。この構成によって、架台10に対する水の供給が長期に渡って確実になされると共に、水の中に岩石状の架台10が置かれる配置となり、水の中に架台10が浮かんでいる様子とすることができる。なお、盆器8の形状は、図1に示す形状に限定する必要はなく、他の形状も採用することができる。また盆器8を設けず、適当な深さの池や湖等の中に架台10を入れ、水上に架台10を浮かすようにしても良い。
【0032】
この第1の実施の形態に係る架台10によれば、内部材1となる多孔質ウレタンは発泡ウレタンの吹き付け加工によって形状を仕上げ、その外表面に吹き付けによって硬質ウレタン樹脂の薄い外殻部材2を形成したり、あるいは硬質樹脂の外殻部材2を真空成型や注型等で作製し外殻部材2の穴から多孔質ウレタンを挿入したりする方法で実現できるため、架台10を随意に造形できる共にコストも大変安価にできる。さらに、重量も同体積で比較した場合、従来の自然石や人工石と比べ十分の一以下にすることができるため、大きな架台10でも容易に移設できる。また、架台10全体の比重を水の比重より小さくできるため、適当な深さの池等の水上に浮かせ、水上浮遊架台を実現でき、新たな造形の可能性を拡げることができる。
【0033】
また、架台10は、外殻部材2に包まれた多孔質ウレタンが通水性を有しているため、涸れることがないように管理された溜水または流水に吸水用の穴4を浸しておけば、外殻部材2上の他の箇所に設けられた植生用の穴3に植えられた植物の所まで内部の多孔質ウレタンの毛細管現象によって水分が常に供給されることとなる。多孔質ウレタンの通水性は、上述したように加工過程で発泡率を変えることによりコントロールすることができるため、所望の植生に合わせて作り込むことができる。
【0034】
この架台10では、草木6の植生部となる多孔質ウレタンを植生用の穴3から適正量摘出し外殻部材2との間にできた空間に床土5を充填して、そこに草木6を植え付けるのであるが、多孔質ウレタンはピンセット等で所望量を容易に摘出できるので外観を損なうことなく、適性な床土量を収める空間が得られ、草木6の確実な植え付けができる。また、正常の加工環境では、多孔質ウレタンと外殻部材2の加工過程で植物の病原菌が入り込む可能性が少ない。したがって、充填する床土5や植え付ける草木6自体および供給水となる水7からの病原菌の汚染を防止すれば、クリーンな架台10を維持できる。
【0035】
また、草木6を植える場所は、外殻部材2上のいずれの場所でも多孔質ウレタンからなる内部材1の通水性によって水7が供給されるので、従来の観賞用草木育成架台のように草木6を植える場所の制約がない。また、内部材1および外殻部材2は、比重が小さく大変軽いものであるから、全体が非常に軽いものとなり、たとえば1m四方の架台であっても、女性が軽々と持ち上げることができ、盆器8の材質を軽いものにすれば、容易に他の場所に移設することができる。
【0036】
次に、第2の実施の形態に係る架台10Aを図2に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態に係る架台10や盆器8等と同一機能を持つ部材は同一符号を付すこととし、その説明を省略または簡略化することとなる。
【0037】
架台10Aは、図2の側断面図に示されるように、内部材1は、通水性がそれぞれ異なる多孔質ウレタン1A,1B,1Cで構成されている。外殻部材2は、この実施の形態では真空成型で加工されたものとなっており、多孔質ウレタン1A,1B,1Cの図2で下端面の一部が水7に浸され、下端面以外が外殻部材2や他の内部材1に接するように、この外殻部材2内に多孔質ウレタン1A,1B,1Cが挿入されている。
【0038】
この架台10Aでは、外殻部材2と多孔質ウレタン1A,1B,1Cとが接する各部分に、植生用の穴3をあけ、それぞれの穴3の多孔質ウレタン1A,1B,1Cの一部を摘出している。そして、床土5を凹み1aに充填し、それぞれ水の必要度の異なる草木6A,6B,6Cを植え付けている。
【0039】
この架台10Aは、架台10と同様な効果を有すると共に、さらに、1つの架台10Aにバラエティーの富んだ植生を企画することが可能となる利点を有する。
【0040】
次に、第3の実施の形態に係る架台10Bを図3に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態に係る架台10や盆器8等と同一機能を持つ部材は同一符号を付すこととし、その説明を省略または簡略化することとなる。
【0041】
この架台10Bは、図3の側断面図に示すように、石11および廃材12を内部材1となる多孔質ウレタンの吹き付け成型の過程で、内部材1の中に埋め込んだものである。その他の点は、架台10と同様な構成となっている。なお、石11としては、自然石の他にレンガ等の石相当の材料としても良い。
【0042】
この架台10Bは、この架台10Bを盆器8等に載置したときの姿勢の安定性を増す工夫をしたものである。架台10Bは、原材料特性、すなわち、内部材1と外殻部材2の材料の特性から非常に軽量で移設等の取り扱いが容易であるが、屋外に設置した場合、強風下での安定性等仕様上適性な重量を付加する必要も生ずる。適性重量の石11を埋め込むことで姿勢の安定性を満たすと同時に取り扱い性をあまり損なわない架台10Bを実現できる。石11の代わりに、水に不溶性で物性変化のない金属でも良い。廃材12は、水に溶けず有害物質を含まないものが好ましい。石11や廃材12を埋め込むことで、多孔質ウレタンからなる内部材1の使用量を減らすことができる。また、廃材12が重量物であれば、石11の役目を兼ねることもできる。
【0043】
次に、第4の実施の形態に係る架台10Cを図4に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態に係る架台10や盆器8等と同一機能を持つ部材は同一符号を付すこととし、その説明を省略または簡略化することとなる。
【0044】
この架台10Cは、図4の側断面図に示すように、多孔質ウレタンからなる内部材1の内部に揚水ポンプ15を配置すると共に、水路16を形成したものである。揚水ポンプ15の配線15aは、内部材1と盆器8を通過し、図示しない電源に接続される。水路16は、外殻部材2と同材料にて円筒状に形成されたものの内部空間が該当し、その内部空間を水7が移動していく。
【0045】
図4において、水路16が下の開口部16aから内部材1の内部をとおり、内部材1に設置された揚水ポンプ15を介して上の開口部16bに通じている。揚水ポンプ15が作動すると、盆器8に張られた水7が水路16をとおって上の開口部16bに送られこの開口部16bから湧き上がる。湧き上がった水7は、沢状に成型された外殻部材2の上を流れ下り、最後には、深くなった溜水部7aに流れ落ちる。
【0046】
このように、この架台10Cによれば、従来のように送水パイプを架台の外部から水の湧出部に配管する必要がなく、より自然な景観を実現できる。また、この架台10は、先に示した架台10と同様な効果を併せ持っている。
【0047】
次に、第5の実施の形態に係る架台10Dを図5に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態に係る架台10や盆器8等と同一機能を持つ部材は同一符号を付すこととし、その説明を省略または簡略化することとなる。
【0048】
この架台10Dは、池や湖等の水7上に浮遊するものである。内部材1は、通水性の異なる多孔質ウレタン1D,1E,1Fが積層されてなり、最も通水性の低い多孔質ウレタン1Dが水7に接し、通水性が中間となる多孔質ウレタン1Eがその上に配置され、最も通水性が高い多孔質ウレタン1Fが最も上部に配置されている。なお、内部材1は、1種類または2種類としたり、4種類以上としても良い。
【0049】
植生用の穴3からは、水の必要度が異なる草木6D,6E,6Fが外部に露出している。また、浮力を調整するための鋼鉄製バランサー21が内部材1中の多孔質ウレタン1Dに埋め込まれている。そして、架台10Dは、強風にあおられた時の固定用として湖等の水底22に固定されるアンカー22と鋼鉄バランサー21をロープ24にて接続することで定位置を確保している。
【0050】
この架台10Dは、架台10と同様な効果を有しているのに加え、水上浮遊架台としての活用ができるものとなる。さらに、この架台10は、規模においては、人25が上陸でき、建造物を構築することもできる大きさとなっている。このように、架台10Dは、浮遊する浮島および浮岩として従来にない景観を容易に構築できる。
【0051】
以上、本発明の各実施の形態について説明してきたが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々変更実施可能である。たとえば、内部材1としては、多孔質ウレタンの他に、通水性を有する発泡体であれば他の樹脂材料、たとえば、発泡性ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡アクリル樹脂としても良い。
【0052】
また、水上浮遊架台としては、図5に示す架台10Dを示したが、架台10,10A,10B,10Cを水に浮かべることで水上浮遊架台としても良い。なお、架台10Bの場合は、水に浮かせるために石11や廃材12の大きさや重さを特に考慮する必要がある。
【0053】
さらに、上述の実施の形態では、内部材1を外殻部材2が覆うようにし、植生用の穴3の部分のみで内部材1が外気に露出し、その後床土5等で、内部材1の露出が無くなるようにされているが、外殻部材2の所々に内部材1が外気に露出したままの状態としても良い。その場合、内部材1が露出している部分にも、岩石色または草木色の塗装を施すのが好ましい。
【0054】
また、各実施の形態の架台10,10A,10B,10C,10Dは、植生用の穴3や吸水用の穴4が開けられたものとなっているが、内部材1の全表面を外殻部材2で覆ったり、吸水用の穴4以外の穴を設けないようにしても良い。内部材1の全表面を外殻部材2で覆ったものの場合、購入者等が植生用の穴3や吸水用の穴4を開けることとなる。また、吸水用の穴4以外の穴を設けない場合は、購入者等が植生用の穴3を設置することとなる。
【0055】
なお、吸水用の穴4は、盆器7等への設置面全体に渡るような大きさのものを1つ設けているが、架台10,10A,10B,10C,10Dの各下端面を外殻部材2で覆い、その一部のみに穴を1つまたは複数設け、その穴を吸水用の穴4としても良い。また、内部材1は、外殻部材2に隙間なく配置された後に、凹み1aが設けられているが、予め凹み1aを設けた状態で外殻部材2と一体化させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る観賞用草木育成架台の側断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る観賞用草木育成架台の側断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る観賞用草木育成架台の側断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る観賞用草木育成架台の側断面図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る観賞用草木育成架台の側断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 内部材(多孔質ウレタン)
1A〜1F 通水性の異なる多孔質ウレタン(内部材)
2 外殻部材
3 植生用の穴
4 吸水用の穴
5 床土
6 草木
7 水
8 盆器
10 観賞用草木育成架台
11 石(水に不溶性の固体)
12 廃材(水に不溶性の固体)
15 揚水ポンプ(ポンプ)
16 水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水性を有する1種類または複数種類の多孔質ウレタンからなる内部材と、その内部材を包む薄い硬質樹脂の外殻部材とを有し、該外殻部材に少なくとも植生用の穴と吸水用の穴を含む複数の穴を設けたことを特徴とする観賞用草木育成架台。
【請求項2】
通水性を有する1種類または複数種類の多孔質ウレタンからなる内部材と、その内部材を包む薄い硬質樹脂の外殻部材とを有し、上記外殻部材の表面に岩石色または草木色を模した塗装を施したことを特徴とする観賞用草木育成架台。
【請求項3】
請求項1または2記載の観賞用草木育成架台において、前記外殻部材をウレタンとしたことを特徴とする観賞用草木育成架台。
【請求項4】
請求項1または2記載の観賞用草木育成架台において、前記内部材内に水に不溶性の固体を埋め込んだことを特徴とする観賞用草木育成架台。
【請求項5】
請求項1または2記載の観賞用草木育成架台において、前記内部材は、多孔質ウレタン原料が吹き付けにて形成されたものであり、前記外殻部材は、その内部材の表面に硬質ウレタンが吹き付けにて形成されたものであることを特徴とする観賞用草木育成架台。
【請求項6】
請求項1記載の観賞用草木育成架台において、前記外殻部材に設けられてなる水と接する穴と他の穴間を結ぶ水路を前記内部材内に設けたことを特徴とする観賞用草木育成架台。
【請求項7】
請求項6記載の観賞用草木育成架台において、前記水路に送水するポンプを前記内部材の内部に設置したことを特徴とする観賞用草木育成架台。
【請求項8】
請求項1記載の観賞用草木育成架台において、前記吸水用の穴は、前記植生用の穴より大きくされ、その吸水用の穴から前記内部材が露出し、その内部材の露出面と前記外殻部材の前記吸水用の穴を囲む部分とが1つの平坦面を形成するように構成されていることを特徴とする観賞用草木育成架台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−67863(P2006−67863A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253724(P2004−253724)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(504332908)
【Fターム(参考)】