説明

角度測定器具

【課題】 角度測定器具を提供する。
【解決手段】 光学的角度測定用の角度測定器具は、少なくとも1つの軸(1、2;11)を中心に回転可能に支持された望遠鏡本体5を備え、ここで、軸(1、2;11)は少なくとも2つの軸受箇所6に回転可能に支持されており、また軸受箇所6は軸(1、2;11)の方向に互いに離間している。
この場合、軸(1、2;11)の位置を検出するための少なくとも2つのセンサ構成のそれぞれは、軸(1、2;11)に沿った測定箇所に配置されており、ここで、測定箇所は軸(1、2;11)の方向に互いに離間している。センサ構成の少なくとも1つは、測定箇所で軸方向に対して垂直な方向への軸(1、2;11)のずれを検出する一群の容量センサ(7a、7b、7c、7d)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的角度測定器具の分野、特に、請求項1の上位概念に記載の角度測定器具に関する。
【背景技術】
【0002】
角度測定器具は、例えば角度を測定するための純粋なセオドライトとして使用されるか、または例えば電気光学的距離測定システムと組み合わされて調整測定システムの一部として使用される。典型的に、セオドライトにおいて、水平軸は、V字状軸受、すなわち、規定された2つの接点を有する摩擦軸受を有する。しかし、V字状軸受は、一方向のみの負荷を受けることしかできないという欠点を有し、このことにより、非垂直な配置が阻止され、駆動力の方向が変化するので、モータ駆動が困難になる。
【0003】
半径方向の遊びを若干有する他の軸受は空気軸受であり、応力が加えられた玉軸受である。レーザートラッカー等の器具は、応力が加えられた玉軸受を備える。空気軸受が扱いにくく、大きいのに対して、応力が加えられた玉軸受は、最小の半径方向のずれ誤差に従った要件によって、非常に強い応力を玉に加えなければならないので、玉がもはや理想的に転動しないという欠点を有する。材料選択に応じた、応力印加による温度の影響は、さらなる複雑さをもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、回転マウントの上記欠点を除去する冒頭に述べた種類の角度測定器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する角度測定器具によって解決される。
【0006】
すなわち、光学的角度測定用の角度測定器具は、角度エンコーダを有する、少なくとも1つの軸を中心に回転可能に支持された望遠鏡本体を備える。望遠鏡本体には、一般に公知の種類の望遠照準器、電子カメラ、レーザ光学距離計等を設けることができる。この場合、軸は少なくとも2つの軸受箇所に回転可能に支持されており、またこれらの軸受箇所は軸の方向に互いに離間している。軸の正確な位置を検出するための少なくとも2つのセンサ構成のそれぞれは、軸に沿った測定箇所に配置されており、この場合、測定箇所は軸の方向に互いに離間している。センサ構成の少なくとも1つは、測定箇所で軸方向に対して垂直な方向への軸のずれを検出する一群の容量センサを備える。
【0007】
これにより、通常の、すなわち、特に強くはない応力印加で玉軸受を動作させることが可能になる。このようにして、球面のそれぞれ直径上の正反対の点で球の容易な転動が保証されている。
【0008】
この場合、軸の点は、軸受精度によって、軸方向に対して垂直な平面で移動できる。この移動はセンサ構成によって測定箇所のそれぞれで検出することができる。2つの測定箇所が存在しているので、軸の2つの点の位置またはずれ、したがって、ずらされた軸の位置も全体的に認識されている。この位置は、望遠鏡本体のまたはその中に配置された望遠鏡および/または距離計の視野方向を算出する際に考慮される(角度エンコーダによって通常算出された、1つまたは2つの軸を中心とする回転角度に加えて)。このことは、望遠鏡本体の視野方向が、一方では、軸を中心とする回転から決定され、他方では、本発明に従って決定された軸の位置に応じて、補正が行われることを意味する。例えば温度測定による器具の形状の別の補正を公知の方法で行うことができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、センサ構成の各々は、それぞれ2つの容量センサを有する第1のセンサ対および第2のセンサ対を備え、この場合、第1のセンサ対は、軸方向に対して垂直な第1の方向への軸のずれを測定し、第2のセンサ対は、軸方向に対して垂直な第2の方向への軸のずれを測定し、また第1の方向と第2の方向とが互いにほぼ垂直である。センサ対を互いに垂直に向けることによって、2つの方向の位置決定が互いに分離されている。
【0010】
しかし、その代わりに、センサを若干使用することも可能である。例えば、一方向のみへの軸のずれを測定するために、1つのみのセンサまたは1つのみのセンサ対を使用できる。あるいは、3つのセンサが軸を中心に周囲に三角形構成で配置され、また軸のずれが、2つの方向において3つのセンサ容量の全体から算出される。同様に、5つまたは6つのセンサを使用できる。しかし、評価については、2つの垂直センサ対を有する詳細に示した別形態が特に簡単である。
【0011】
本発明の別の好ましい実施形態では、センサ構成の少なくとも1つにおいて、第1のセンサ対の第1のセンサ、および第2のセンサ対の第1のセンサのそれぞれが、第1のセンサ要素キャリアに配置されており、また第1のセンサ対の第2のセンサ、および第2のセンサ対の第2のセンサのそれぞれが、第2のセンサ要素キャリアに配置されている。このことにより、それぞれ2つのセンサを軸の位置に調整することが可能になり、この場合、対の2つのセンサの調整のそれぞれが互いに独立して行われる。2つのセンサは同一のキャリアで互いに垂直であるので、軸に対するそれらのセンサの配置は、キャリアを移動させることによって本質的に互いに独立して設定することも可能である。
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態では、軸と電極との間のセンサのそれぞれは、軸と電極との間隔に従って容量を形成する。この場合、軸は、電気的に見てアースに置かれていることが好ましい。これによって、センサ容量のサーキッティングおよび評価を特に簡単に構成できる。
【0013】
角度測定器具の複数の軸で、特に、水平軸(または天頂軸)でおよび/または垂直軸(または方位軸)で、本発明による測定装置を使用できる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、角度測定器具は、センサ対の少なくとも1つのために、第1のセンサの容量に従って第1の信号を生成し、また第2のセンサの容量に従って第2の信号を生成するように、そして第1の信号と第2の信号とから差動信号を生成するように形成されている電子回路を備える。したがって、差動信号は、第1のセンサと第2のセンサとの間の方向への軸のずれに関する基準である。
【0015】
別の好ましい実施形態は従属請求項から明らかである。
【0016】
添付図面に示した好ましい実施形態を参照して、本発明について以下に詳細に説明する。
【0017】
図面に用いた参照符号およびそれらの意味は符号の説明にまとめて記載されている。原則として、図面の同一の部分には、同一の参照番号が付与されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、回転位置センサを有する角度測定器具の側面図を示している。この場合、望遠鏡本体5は水平軸1を中心に支持部4に回転可能に支持されている。支持部4は垂直軸2を中心に基部3に回転可能に支持されている。マウントは玉軸受6をそれぞれ備える。2つの軸1、2のそれぞれには、軸方向に互いに離間して一対ずつまたは個別に配置されている容量センサ7が設けられている。センサ7のそれぞれは軸1、2の軸受6に配置されていることが好ましい。センサ7の容量を変化させることによって、軸の横方向のずれが測定されて、回転位置の角度補正に換算される。対応する軸を中心に回転角度を測定するための角度計または角度エンコーダ、および存在し得るモータ回転駆動部は図示されていない。
【0019】
図2は、回転位置センサの詳細図を示している。図面の左側は軸方向の平面図を示しており、また右側は断面図を示しており、この場合、紙面には軸方向が存在する。支持部4または基部3の一部であるベースキャリア12(断面図にのみ図示)には、2つのセンサ要素キャリア14、14’が例えばねじ13等の固定手段で固定されている。この固定は調整可能であるので、センサ7と軸11との間の間隔を設定できる。この場合、軸11とセンサ7の電極16との間の空隙が容量を形成する。電極16と軸11との間隔は、キャリア14を移動させることによって例えば約15マイクロメートルにそれぞれ設定される。28mmの軸径の場合、3mmの電極幅でまた10mmの長さで約3〜4pFのベース容量が得られる。
【0020】
軸11は水平軸1または垂直軸2であることができる。センサ7a、7b、7c、7dの各々は、絶縁体15を介してセンサ要素キャリア14に絶縁固定されておりかつ電極接続リード17を介して評価電子装置に電気的に接続されている電極16を備える。絶縁体15は機械的精度および安定性の理由でセラミック材料からなることが好ましい。軸11は評価電子装置のアース接続部に電気的に接続されている。
【0021】
4重循環読出または4重センサによって軸の角度位置を測定した場合、この種の角度測定は、軸のずれに関する情報も提供でき、すなわち、このために、センサ構成としても用いることができる。この場合、軸の位置を完全に決定するには、軸方向に離間した上記の種類の追加の容量センサ構成だけで済む。
【0022】
図3は、回転位置センサの容量値を評価するための電子回路を示している。それぞれ1つのセンサ7a、7b、7c、7d用の、第1の信号または第2の信号を生成するための電子回路は、抵抗R1とセンサの可変容量Csとからなる分圧器を備えることが好ましい。この場合、特に、電圧Uoを有する電源と電圧Usを有する分圧器のタップとの間に抵抗R1が配置されている。分圧器のタップと軸1、2;11との間にはセンサ7a、7b、7c、7dの容量が配置されている。分圧器のタップで信号Usを整流して平滑化するために、分圧器のタップと増幅器入力との間にはダイオードDが直列に配置されており、また増幅器入力とアースとの間には平滑コンデンサCが配置されている。好ましくは、2つのダイオードDは、センサ対のそれぞれ2つのセンサによって一対になっており、すなわち、同一のダイオードハウジング内に配置されている。
【0023】
センサ対の平滑化された2つの信号は、差動増幅器X、Yの2つの入力に案内される。差動増幅器X、Yの出力信号は、センサの中心からX方向またはY方向への軸のずれに関する基準である。差動法によって、温度の影響が小さく保持される。2つの差動増幅器X、Yの出力は、A/D変換器によってデジタル化され、システムコントローラによってデジタル継続処理される。当然、同一の全体機能によって、回路構成の他の箇所でも、アナログ信号処理とデジタル信号処理とのインターフェースを実現できる。軸のずれを決定するための回路を純粋にアナログで実現できる。
【0024】
電源は発振器OscとドライバDrvとを備える。発振器Oscの周波数f、例えば約1.5MHzのシヌソイド信号は、ドライバDrvによって、例えば約2Vppの電圧Uoに増加される。抵抗R1はセンサ電極の容量Csと共に分圧器を形成する。ダイオードDにおいて、分圧器のタップの得られた電圧Usが整流されて、Cに平滑化される。
【数1】

【0025】
約100mV/マイクロメートルのセンサ感度および約1mVのノイズでは、10〜20nmの分解能が得られる。これにより、150mmの軸受間隔に対応するセンサ間隔では、約0.1マイクロラドの軸11の回転(軸11に対して垂直な軸を中心とした)に関する角度感度が得られる。
【0026】
電子回路は、温度の影響を排除するための補償回路、特に分圧器R1−R2と、それぞれ個々のセンサ7a、7b、7c、7dの回路と同様に形成されている整流して平滑化するための回路とを備えることが好ましい。これによって、基準電圧が発生し、さらに、この基準電圧がA/D変換器を介してデジタル化される。このようにして、センサ対の測定信号が基準電圧に関連することによって、変化する信号振幅Uoの影響が排除される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】回転位置センサを有する角度測定器具の側面図である。
【図2】回転位置センサの詳細図である。
【図3】回転位置センサの容量値を評価するための電子回路の図面である。
【符号の説明】
【0028】
1 水平軸
2 垂直軸
3 基部
4 支持部
5 望遠鏡本体
6 玉軸受
7、7a...7d センサ
11 軸
12 ベースキャリア
13 固定部、ねじ
14 センサ要素キャリア
15 絶縁体
16 電極
17 電極接続リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの軸(1、2;11)を中心に回転可能に支持された望遠鏡本体5を備える光学的角度測定用の角度測定器具であって、前記軸(1、2;11)が少なくとも2つの軸受箇所6に回転可能に支持されており、該軸受箇所6が前記軸(1、2;11)の方向に互いに離間している角度測定器具において、
前記軸(1、2;11)の位置を検出するための少なくとも2つのセンサ構成のそれぞれが、前記軸(1、2;11)に沿った測定箇所に配置されており、該測定箇所が前記軸(1、2;11)の方向に互いに離間しており、前記センサ構成の少なくとも1つが、前記測定箇所で軸方向に対して垂直な方向への前記軸(1、2;11)のずれを検出する一群の容量センサ(7a、7b、7c、7d)を備えることを特徴とする角度測定器具。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサ構成の各々が、それぞれ2つの容量センサを有する第1のセンサ対(7a、7b)および第2のセンサ対(7c、7d)を備え、前記第1のセンサ対(7a、7b)が、前記軸方向に対して垂直な第1の方向への前記軸(1、2;11)のずれを測定し、前記第2のセンサ対(7c、7d)が、軸方向に対して垂直な第2の方向への前記軸(1、2;11)のずれを測定し、また前記第1の方向と前記第2の方向とが互いにほぼ垂直である請求項1に記載の角度測定器具。
【請求項3】
前記センサ構成の少なくとも1つにおいて、前記第1のセンサ対(7a、7b)の第1のセンサ(7a)、および前記第2のセンサ対の第1のセンサ(7c)のそれぞれが、第1のセンサ要素キャリア(14)に配置されており、また前記第1のセンサ対の第2のセンサ(7b)、および前記第2のセンサ対の第2のセンサ(7d)のそれぞれが、第2のセンサ要素キャリア(14’)に配置されている請求項2に記載の角度測定器具。
【請求項4】
前記軸(1、2;11)と電極(16)との間の前記センサのそれぞれが、前記軸(1、2;11)と前記電極(16)との間隔に従って容量を形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の角度測定器具。
【請求項5】
前記軸(1、2;11)が水平軸(1)および/または垂直軸(2)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の角度測定器具。
【請求項6】
前記センサ対(7a、7b;7c、7d)の少なくとも1つのために、前記第1のセンサ(7a、7c)の前記容量に従って第1の信号を生成し、また前記第2のセンサ(7b、7d)の前記容量に従って第2の信号を生成するように、そして前記第1の信号と前記第2の信号とから差動信号を生成するように形成されている電子回路を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の角度測定器具。
【請求項7】
それぞれ1つの前記センサ(7a、7b、7c、7d)用の、前記第1の信号または前記第2の信号を生成するための前記電子回路が、抵抗(R1)と前記センサの前記容量(Cs)とからなる分圧器(R1、Cs)を備え、特に、前記抵抗(R1)が電源(Osc、Drv)と前記分圧器のタップとの間に配置されており、また前記センサ(7a、7b、7c、7d)の前記容量(Cs)が前記タップと前記軸(1、2;11)との間に配置されている請求項6に記載の角度測定器具。
【請求項8】
前記電子回路が、前記分圧器の前記タップで前記信号を整流して平滑化するための回路、特に、前記信号と直列のダイオード(D)と、アースへの平滑コンデンサ(C)とを備える請求項7に記載の角度測定器具。
【請求項9】
センサ対(7a、7b;7c、7d)のそれぞれ2つのセンサの前記2つのダイオード(D)が、同一のダイオードハウジング内に配置されている請求項8に記載の角度測定器具。
【請求項10】
前記電子回路が、温度の影響を排除するための補償回路、特に、分圧器と、前記それぞれ個別のセンサ(7a、7b、7c、7d)の前記回路と同様に形成されている整流して平滑化するための回路とを備える請求項6〜9のいずれか1項に記載の角度測定器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−526209(P2009−526209A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553596(P2008−553596)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000049
【国際公開番号】WO2007/090309
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501403450)ライカ・ゲオジステームス・アクチェンゲゼルシャフト (7)
【Fターム(参考)】