説明

計測デバイス及び計測方法

本発明は、ガイドチューブ(20、20a、20b)と、ガイドチューブ(20、20a、20b)に変位可能に挿入されたピストン(24、24a、24b)と、ガイドチューブ(20、20a、20b)内においてピストン(24、24a、24b)を変位させるためにそのピストン(24、24a、24b)に力を印加するための作動アセンブリ(40、40a、42)と、計測される媒体(34)を収容するためのチャンバ(28、30)とを備えた計測デバイス(10、10a、10b)に関し、その計測される媒体(34)は、ピストン(24、24a、24b)の変位に従って吸引又は分配可能であり、作動アセンブリ(40、40a、42)は、ピストン(24、24a、24b)と磁気的に相互作用するように備わっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドチューブと、そのガイドチューブに変位可能に挿入されたピストンと、計測される媒体を収容するためのチャンバとを備えた計測デバイスに関し、その計測される媒体は、ピストンの変位に従って吸引又は分配可能である。更に、本発明はこのような計測デバイスを用いた計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの計測デバイスの例は、ガラスチューブを備えたピペットであり、そのガラスチューブの一端にはピストンが変位可能に導入されていて、他端にはノズルが配置されていて、そのノズルを通して、計測される媒体を、ピストンの変位に従って、吸引する(くみ上げる)か、又は分配(放出)し得る。液体又はガス状の変位媒体がピストンと計測される媒体との間に追加的に配置され得て、計測される媒体も完全にチャンバの外の押し出されるようにされ得て、又は極少量がくみ上げられ得る。
【0003】
ガイドチューブ内のピストンを作動させるための作動アセンブリは、ピストンに結合されていて、例えば調整素子の回転運動をピストンの並進運動に変換するものであることが知られている。この場合、調整素子の回転運動は、手動で、又は電気モータを用いてもたらされ得て、回転の特定の角度量、又は調整素子の特定の回転数が、ピストンの特定の変位に変換され、従って計測される媒体の特定の吸引又は分配量(ドーズ量)に変換される。
【0004】
応用によっては、特に研究分野においては、正確な計測(つまり、吸引又は分配される媒体の量の正確な測定)が非常に重要である。そこで、既知の計測デバイスにおいては、比較的複雑な機械的減速ギアを用いて、又は精密な電気モータを用いて、ピストンの最大限正確な位置決め及びピストンの最大限均一な移動を達成することが試みられている。ステップダウンギアによって比較的高い位置決め精度を達成することができるが、ステップダウンギアは非常に遅いので、計測プロセスのダイナミクスが同レベルで損なわれてしまう。更に、このようなギアユニットはコストがかかりメンテナンスが大変である。電気モータによる駆動も大部分は同様であり、減速ギアの使用を必要とするか、又はピストンの直接モータ駆動の場合には、モータのクリアランスによる精度の低下がつきまとう。
【0005】
従来の計測デバイスにおいて知られている更なる問題は、ピストンとガイドチューブとの間に必要な精密な適合であり、一方では、ピストンがガイドチューブに対して十分に密封されて、計測される媒体若しくは変位媒体の流出又は空気の侵入を防止し、他方では、所定の変位経路によるピストンの変位を許容するために、ピストンはガイドチューブ内にきつくなり過ぎないように密封される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした背景に対し、本発明の目的は、計測される媒体が比較的高い計測精度で吸引又は分配可能であり、好ましくは単純で安価に実施可能である上述のタイプの計測デバイス及びこのような計測デバイスを用いた計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の側面によると、この目的は、ガイドチューブと、ガイドチューブに変位可能に挿入されたピストンと、ガイドチューブ内においてピストンを変位させるためにピストンに力を印加するための作動アセンブリと、計測される媒体を収容するためのチャンバとを備えた計測デバイスによって達成され、その計測される媒体は、ピストンの変位に従って吸引可能又は分配可能であり、作動アセンブリは、本発明に従って、ピストンと磁気的に相互作用するように設計される。
【0008】
従って、本発明の重要な側面は、磁気的相互作用を介したピストンの作動である。これは、ガイドチューブ内におけるピストンの変位のための力が磁場に起因する磁力であることを意味している。従って、従来の計測デバイスとは対照的に、ピストンの移動は、隣接する素子とピストンとの間の機械的力の伝達ではなくて、非接触の磁気的相互作用によって行われる。作動アセンブリとピストンとの間の機械的結合の欠如は、作動ギアクリアランス若しくはモータクリアランス又は摩擦に起因して従来の計測デバイスにおいては回避することができない誤差の源を排除する。従って、本発明に係る計測デバイスは、磁場がステップダウンギアによって動かされる磁場発生手段を用いて発生及び変更される場合に、ピストンに対する振動の伝達、クリアランスに関するギアの影響などを大幅に防止することができる。従って、本発明に係る計測デバイスは、非常に高い計測精度で、計測される媒体をくみ上げるか又は放出することを可能にする。
【0009】
更に、磁場を用いたピストンの移動は、高度にダイナミックな計測を可能にする。計測プロセス中に磁場が電気的又は電子的手段によって(例えば、コイルのスイッチ切り替えによって)リセットされると、ピストンの移動は、非常に僅かな遅延でのみ進行できる。
【0010】
原理的には、ピストン自体が磁場を発生させることができ、例えば永久磁石を備え、作動アセンブリの磁気又は磁化可能(特に強磁性)素子と相互作用するようになり、ピストンの変位が、ガイドチューブに対する作動アセンブリの磁気又は磁化可能素子の移動によってもたらされる。しかしながら、媒体を計測するための磁場の駆動に関しては、作動アセンブリが磁場を発生させるための磁場発生手段を備えることが有利であると考えられる。従って、ガイドチューブの外側の磁場を発生及び駆動させるための手段は、磁気的に有効な距離において配置される。
【0011】
磁場発生手段との相互作用に関して、ピストンは少なくとも部分的に磁化可能物質又は永久磁性体で形成されることが好ましい。好ましくは、磁化可能物質は強磁性体であると理解される。しかしながら、この用語は、常磁性体、反磁性体(超伝導体)、フェリ磁性体もカバーし、これらは、ガイドチューブ内の変位に関して重要であるピストンに力を印加するために磁場において十分な磁化可能性を示す。
【0012】
更に好ましい実施形態では、ピストンは、磁化可能液体(好ましくは磁性流体)で形成され得る。この実施形態は、ピストンとガイドチューブとの間の特に低い摩擦力に起因して、特に高度にダイナミックなピストンの移動を可能にする。更に、磁性流体はそれ自体が非常に単純且つ確実にガイドチューブを密封し、計測デバイスの信頼できる動作を単純な手段によって保証できるようになる。磁場内において、磁化可能液体はより高い磁場強度の領域に留まろうとするので、磁化可能液体が、一方ではガイドチューブ内において確実に密封して分布したままとなり、他方では外部磁場に従ってガイドチューブ内において移動可能となる。
【0013】
本発明に係る計測デバイスの磁場発生手段は、磁束がガイドチューブに対して実質的に軸方向にピストンを通る磁場を発生させることが好ましい。このように向けられた磁束によって、磁場とピストンとの間の相互作用が、ピストンの変位方向に向けられて、ピストンに対する力の作用が、ピストンの変位方向において十分に機能できる。究極的には媒体を計測するためのピストンの移動を達成するために、磁場のサイズ、向き又は位置の変更が必要となる。最も単純な場合、これは、磁場をオン又はオフにすることによって達成可能であり、例えば、ピストンが、所定の期間にわたり磁石によって引き寄せられるか反発して、特定の距離で変位する。代替的に又は追加的に、磁場は、磁場発生手段の移動によって、ガイドチューブに対して相対的に動かされ得て、ピストンがこの移動に従うようになる。更なる代替的な又は追加的な可能性として、磁束の方向及び強度の局所的な変更(例えば、個々の磁石/コイルを制御/移動させることによる複数の磁石及び/又はコイルを有する配置)によって、磁場の磁束の方向又は強度が変更可能であり、又は、磁場の“変形”がもたらされ得て、これに従って、ピストンに作用する磁力が変化して、ピストンの変位をもたらす。
【0014】
特に単純な一実施形態では、磁場発生手段は、ガイドチューブを同軸状に取り囲む環状永久磁石を備える。ピストンを動かすため、永久磁石をガイドチューブの軸方向に変位させることができて、特にピストンは、環状永久磁石の中心に留まるようにされる。代わりに、ピストンが反発するように永久磁石を磁化させることもできる。
【0015】
更なる好ましい実施形態は、少なくとも一つのコイルを備えたコイルアセンブリを備えた磁場発生手段を提供し、そのコイルの巻き線がガイドチューブを同軸状に取り囲む。このようなコイルは、そのコイルに与えられる電流強度の制御によって可変磁場を構築することができて、その軸中心方向において調整可能な力でピストンを引く。代替的に又は追加的に、コイルをガイドチューブに対して同軸状に変位されて、ピストンを動かすことができる。
【0016】
フレキシブルで正確な計測用の特定の可能性は、複数のコイルを有するコイルアセンブリを備えた磁場発生手段の実施形態において提供され、それらコイルの巻き線は各々ガイドチューブを同軸状に取り囲み、コイルは互いに軸方向にずらされている。個々のコイルに与えられる電流強度を調整することによって、ガイドチューブ内に広がる磁場を、その全強度及び軸方向磁束分布に関して変更することができて、ピストンをガイドチューブ内の所定の位置に引く。単純な場合、軸方向に間隔を空けて配置された二つのコイルを交互に作動させて、ピストンを二つの位置の間で移動させることができる。
【0017】
本発明の目的のため、複数のコイルを備えたコイルアセンブリは、単巻変圧器(オートトランス)型の構造も含み、その単巻変圧器は、端部コンタクトと中心タップコンタクトとを有する連続的なコイル巻き線を有し、端部コンタクトと中心タップコンタクトとの間の二つのコイル部が独立的に駆動可能である。このようなコイルアセンブリの更なる変形例では、中心タップコンタクトを、端部コンタクト間においてコイル軸に沿って変位させて、二つのコイル部の巻き数の比を変更することができる。
【0018】
磁場を発生させて、その磁場内に本発明に従って計測デバイスのピストンを配置して、磁場の変更又は計測デバイスの他の素子の移動によってガイドチューブ内におけるピストンの所望の変位をもたらすための多数の更なる可能性は、当業者に知られているものである。
【0019】
好ましくは、本発明の計測デバイスは、磁場のサイズ及び/又は位置及び/又は方向を制御するための制御デバイスを更に備え、ガイドチューブ内のピストンの移動及びピストンの位置を駆動し得る。電子制御デバイスは、ピストンの確実且つ高速で精密な移動及び位置決めを可能にして、また、必要であれば、例えば吸引又は分配された媒体の量を検出する位置検出器又ははかりから、ピストンの移動又は位置を示す検出値のフィードバックによるピストンの位置の閉ループ制御を可能にする。
【0020】
本発明の第二の側面によると、本発明の目的は、ガイドチューブと、ガイドチューブに変位可能に挿入されたピストンと、計測される媒体を収容するためのチャンバとを備えた計測デバイスによって達成され、その計測される媒体は、ピストンの変位に従って吸引可能又は分配可能であり、磁化可能液体の潤滑膜が、ピストンとガイドチューブとの間に本発明に従って配置され、その計測デバイスは、潤滑膜に作用する磁場を発生させるための磁場発生手段を備える。従って、本発明の第二の側面の特徴も、磁気的相互作用によって媒体を計測するためのピストンの移動を促進するために、計測デバイスのピストンの領域内において磁化可能物質を使用することである。本発明の第二の側面によると、磁場発生手段の磁場は、磁化可能液体で形成された潤滑膜がピストンとガイドチューブとの間の空間に確実に留まることを保証する。これは、一方では、ピストンの高度にダイナミックで低摩擦の移動を可能にするという利点を有する。他方では、本発明の第二の側面は、計測デバイスの周囲に対するチャンバの密封性の顕著な増大を達成することを可能にする。
【0021】
本発明の計測デバイスは、本発明の第一の側面の特徴と第二の側面の特徴を併せ持つことが特に好ましく、つまり、磁場は、ピストンとガイドチューブとの間の磁化可能液体の安定な潤滑膜を保証するのと同時に、媒体を計測するためにガイドチューブ内においてピストンを移動させる。これは、潤滑膜がピストンの位置に配置されていて磁場内においてピストンと共に移動する場合に、潤滑膜が出て行ってしまうことを特に確実に防止するという利点を有する。
【0022】
潤滑膜の軸方向位置を確実に予め決めることを可能にするため、磁場発生手段は、磁束がピストンの位置においてガイドチューブに対して実質的に軸方向に向けられている磁場を発生させるように設計されることが好ましい。本実施形態も本発明の第一の側面の特徴と組み合わせられると、ピストンの位置を、磁場内において確実に設定することができる。何故ならば、ピストンの変位方向は、ピストンの位置における磁場の方向と実質的に一致するからである。
【0023】
本発明の第三の側面によると、本発明の目的は、計測デバイス(特に本発明の第一及び/又は第二の側面に係る計測デバイス)を用いて媒体を計測するための計測方法によって達成され、その計測デバイスは、ガイドチューブと、ガイドチューブに変位可能に挿入されたピストンと、計測される媒体を収容するためのチャンバとを備え、その計測される媒体は、ピストンの変位に従って吸引又は分配され、本計測方法は、磁場を提供するステップと、ピストンと磁場との磁気的相互作用によってピストンに力を印加するステップとを備える。また、このような計測方法は、実質的に機械的な結合無しでピストンに磁力を印加することによって、高度にダイナミック且つ単純で精密な計測を達成することを可能にし、その磁力は、ピストンと磁場との相互作用に起因するものである。磁場の位置、方向又はサイズを変更することによって、又は磁場を変形することによって、媒体を計測するためのピストンの移動がガイドチューブ内において生じ得る。
【0024】
本計測方法は、本発明の第一及び/又は第二の側面の実施形態に係る計測デバイスを用いて行われることが好ましく、本発明の第一又は第二の側面の個々の実施形態について説明される効果及び利点が得られる。
【0025】
本計測方法が、複数のコイルを有するコイルアセンブリを備えた計測デバイスで実施される場合、そのコイルの巻き線は各々ガイドチューブを同軸状に取り囲み、そのコイルは互いに軸方向にずらされていて、コイルにそれぞれ与えられる電流強度は、吸引又は放出されるドーズ量に従って制御可能であり、電子手段で所望の量の計測される媒体を高速且つ正確にくみ上げるか又は放出することができる。
【0026】
本発明の第四の側面によると、この目的は、ガイドチューブと、ガイドチューブに変位可能に挿入されたピストンと、ガイドチューブ内においてピストンを変位させるためにピストンに力を印加するための作動アセンブリとを備えた計測デバイスによって達成され、その計測されるデバイスは、ピストンの変位に従って吸引可能又は分配可能であり、作動アセンブリは、ピストンと磁気的に相互作用するように設計され、そのピストンは永久磁石を備える。本発明の第四の側面のピストンの永久磁石は、永久的なエネルギーの投入がなくても所定の磁化を保持して、その磁化を用いて、作動アセンブリによるピストンの位置決め又は移動を行うことができる。従って、永久磁石の使用は、計測デバイスを作動させるのに必要なエネルギーの減少を可能にする。
【0027】
第四の側面の計測デバイスのピストンは、少なくとも二つの相互に隣接する永久磁石部を備えることが好ましく、それら永久磁石部の磁化は、ガイドチューブに対して軸方向に延伸し、相互に隣接する永久磁石部の磁化は、互いに逆方向に向けられる。このような配置においては、比較的強力で放射状に延伸する磁場を、磁化の方向が変化する点(つまり、隣接する永久磁石部の接合)において発生させることができ、その磁場は、ピストンの軸方向位置の特に正確な位置決め及び高い空間分解能を可能にする。これは精度を上昇させて、計測デバイスの計測精度の改善へと反映されるが、これは、ピストンの軸方向変位に対する磁場の比較的大きな変化に因るものである。
【0028】
上述の効果は、相互の逆の磁化を有する単に二つの相互に隣接する永久磁石部を提供することで得られるものであるが、第四の側面に係る本発明の好ましい実施形態は、二つよりも多くの永久磁石部をガイドチューブの軸方向に配置することを提供し、隣接する永久磁石部は、相互に逆の磁化を有する。各磁石部は一方の軸方向端におけるN極と、他方の軸方向端におけるS極とを有するものと考えられるので、本発明の第四の側面に係る交互の磁化方向を有する永久磁石部の構造を、相互に隣接する永久磁石部が互いのS極又はN極を向き合わせていると説明することもできる。顕著に放射状に延伸する特に強力な磁場の効果が、隣接する永久磁石部のN極又はS極が合わさる接合領域に常に正確に生じる。
【0029】
第四の側面の本発明の特に単純な実施形態においては、永久磁石で形成される永久磁石部が互いに固定されて、隣接する永久磁石のN極が互いに向き合い且つ互いに隣接するようにされて、又は、隣接する永久磁石のS極が互いに向き合い且つ互いに隣接するようにされる。このようにして構成されるピストンは、複数の既知のシリンダー状永久磁石から極めて簡単に形成可能であり、それらの永久磁石は、交互の向きで、互いに取り付けられて、好ましくは接着剤で互いに結合される。しかしながら、代替的に、本発明の第四の側面に係るピストンは、対応する形状の磁場に晒して強磁性体を磁化することによっても達成可能である。
【0030】
本発明の更なる実施形態では、ピストンが少なくとも一つの密封部材を備え、その密封部材はガイドチューブの内壁と永久磁石部又は永久磁石との間に配置される。このようにして、ピストンの永久磁石自体がガイドチューブの内寸に完全にフィットしなければならないことが必須ではなくなり、確実な密封が永久磁石とガイドチューブとの間に保証されるという利点が得られる。この場合、少なくとも一つの密封部材は、キャップ上の形状となり、永久磁石の軸方向の上端及び/又は軸方向の下端に配置されるか、又は、軸方向の最も上及び/又は軸方向の最も下の永久磁石部の上に配置されるものである。このようにして、キャップ状の密閉部材を、永久磁石体の端部に配置することができて、永久磁石体の端の円周部及び端面を取り囲み、計測される媒体と永久磁石体との間の接触を回避することができる。
【0031】
第四の側面に係る本発明は、本発明の第一から第三の側面の主題とは別個独立に本発明の目的を達成する。しかしながら、好ましくは、第四の側面の計測デバイスの特徴が、第一から第三の側面の一以上の特徴と組み合わせられて、第一から第三の側面に関してそれぞれ上述した利点及び効果が得られる。
【0032】
上述の第一から第四の側面のうち一以上に係る本発明の実施形態によると、作動アセンブリは、磁場を発生させるための磁場発生手段を備え、その磁場発生手段は、少なくとも一つのコイルを有するコイルアセンブリを備え、その少なくとも一つのコイルは、少なくとも一つの巻き線を備え、その少なくとも一つの巻き線は、ガイドチューブの周囲の一部のみを取り囲む。
【0033】
従って、この実施形態では、コイルの少なくとも一つの巻き線は、ガイドチューブを完全に取り囲まず、つまり、ガイドチューブの周りに完全に(360度の円周角で)巻かれておらず、ガイドチューブの円周の一部のみにわたって(360度未満の円周角で)伸びて、ガイドチューブの円周の他の部分には巻き線が存在しない。このようにして、ガイドチューブが、巻き線で覆われた円周部においてもアクセス可能となり、例えば、計測プロセスの目視検査が可能になり、又は、ガイドチューブに対するピストンの位置又は移動を検出するための位置検出素子を配置することができる。巻き線によって覆われていない部分のサイズ及び巻き線のプロファイルに応じて、後述のように、その配置に関する利点、特に、複数の隣接するピペットの配置又は隣接するコイルの配置の密度に関する利点を得ることができる。
【0034】
上述の実施形態と同様の方法には、第一から第四の側面に係る本発明の更に有利な実施形態が伴い、作動アセンブリが、磁場を発生させるための磁場発生手段を備え、その磁場発生手段は少なくとも一つのコイルを有するコイルアセンブリを備え、その少なくとも一つのコイルは少なくとも一つの巻き線を備え、その少なくとも一つの巻き線は、ガイドチューブの長手方向中心軸を含む長手方向中心面の一方の面の上に完全に延伸する。このようにして、コイルが、ガイドチューブの周囲に存在する空間の半分のみを実質的に占有することが保証され得る一方、他の半分は完全にアクセス可能であり、例えば、同様の第二のコイルのため、位置検出素子のため、又は複数のピペットを共に便利に接続するためにアクセス可能となる。
【0035】
特に、コイルアセンブリは、少なくとも一つの第一の巻き線を有する第一のコイルと、少なくとも一つの第二の巻き線を有する第二のコイルを備えるものとされ、少なくとも一つの第一の巻き線は長手方向中心面の一方の面の上に完全に延伸し、少なくとも一つの第二の巻き線は長手方向中心面の他方の面の上に完全に延伸する。ガイドチューブの対向する面に配置されたコイルを用いて、ガイドチューブの内側に特に均一で明確な軸方向磁場を発生させることができ、又は磁場を特に確実に検出することができる。この場合、長手方向中心面の領域内のガイドチューブの円周の一部は、第一のコイルの巻き線によっても第二のコイルの巻き線によっても覆われていないままであり、ガイドチューブにアクセス可能となり、例えば、位置検出素子又は計測プロセスの目視検査のためにアクセス可能となる。
【0036】
上述の後半二つの実施形態の好ましい変形例では、コイルの少なくとも一つの巻き線が、ガイドチューブの外壁に接触しているガイドチューブの二つの相互に平行な接平面の間に完全に延伸するようにされる。この変形例では、特に複数のガイドチューブが互いに接続される場合に、高いパッキング密度を得ることができる。何故ならば、隣接するガイドチューブを互いに比較的短い距離で配置することができるからである。特に、ガイドチューブを完全に取り囲む複数の巻き線は、空間を急激に必要とするようになるものであるが、本発明のこの変形例に係るコイルアセンブリを用いる場合には、隣接するガイドチューブ間の最小の間隔は、コイルの少なくとも一つの巻き線の厚さによって決められるものではない。代わりに、上述の隣接するガイドチューブの接平面が互いに実質的に平行に延伸するように、互いに隣接して配置された本発明のこの変形例に係るガイドチューブの列が互いに接続される。そして、隣接するガイドチューブの外壁が接触するかほとんど接触するように密接して、ガイドチューブが互いに隣接して配置され得る。
【0037】
好ましくは、ガイドチューブの円周の一部のみを取り囲む一つの巻き線部は、特にガイドチューブの円周方向において、ガイドチューブの外壁に沿って延伸する。一つのこのような巻き線部は、ガイドチューブの内側に軸方向に延伸する磁場を発生させることができて、この磁場がピストンと相互作用し得る。
【0038】
更に、少なくとも一つの巻き線の一部は、ガイドチューブの外壁に沿って軸方向に延伸し得る。このような軸方向の巻き線部は、好ましくは、同じ巻き線内における上述の円周方向に延伸する巻き線部に接続されて、軸方向の巻き線部によって発生する磁場が、ピストンとあまり相互作用しないようになり、軸方向の巻き線部が主に、円周方向に延伸する巻き線部に対する電流の供給/放出の機能を果たす。
【0039】
円周方向に延伸する巻き線部と軸方向の巻き線部との特に有利な組み合わせが、上述の本発明の第四の側面と共に得られ、ピストンが、少なくとも一つの永久磁石、特に、交互の磁化方向で相互に隣接する複数の永久磁石部を備える。有利には、軸方向に延伸する巻き線部の軸方向長さは、永久磁石部又は永久磁石の長さに適合し得る。
【0040】
本発明の更なる変形例では、ガイドチューブの円周の一部のみを取り囲む少なくとも一つの巻き線部が、ガイドチューブに向けて延伸し、次に、ガイドチューブに沿って延伸し、次に、ガイドチューブから離れるように延伸する。この変形例では、巻き線の一部は、ピストンの位置において所望の磁場を発生させることに寄与できず、ガイドチューブから距離を置いて、その磁場が、ガイドチューブに沿って延伸する巻き線のアクティブ部分の磁場と干渉しないようにされる。容易に設定可能であり比較的一様な磁場をガイドチューブ内部に構築することができるが、通常のコイルの巻き線の場合と異なり、少なくとも一つの巻き線は、ガイドチューブを完全に取り囲まない。
【0041】
上述のように、位置検出素子は、少なくとも一つの巻き線によって取り囲まれていないガイドチューブの円周の一部に配置され得る。この位置検出素子は、位置検出器の一部であり得て、その位置検出素子を用いてピストンの移動又は位置を示す検出値を検出する。この検出値は、特に本発明の第一の側面に関して説明したピストンの位置の閉ループ制御用に使用可能であり、制御デバイスが、検出値のフィードバックによってピストンの位置を制御する。これは、非常に正確な自動化計測を可能にする。
【0042】
同様に、位置検出素子は、ピストンと磁気的に相互作用するように設計可能であり、つまり、特にピストンが発生させる磁場を検出することによってピストンの位置及び/又は移動を求めることができる。ピストンによって発生する磁場は、ピストンを制御すること(ピストンへの力の伝達)、及び、ピストンの位置/移動を検出することの両方のために同時に使用可能であり、構成を単純化する。
【0043】
以下、添付図面を参照して、好ましい例示的な実施形態に基づいて、本発明について詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第一の例示的な実施形態に係るピペットの断面図及び拡大図である。
【図2】本発明の第二の例示的な実施形態に係るピペットの断面図及び拡大図である。
【図3】本発明の第三の例示的な実施形態に係るピペットの概略的な側面図である。
【図4】本発明の第三の例示的な実施形態に係るピペットの側面図である。
【図5】図4に示されるピペットのピストンの永久磁石体の磁化を示す。
【図6】図5aから5cに示される永久磁石体の磁場の磁力線プロファイルの図である。
【図7】本発明の第四の例示的な実施形態に係るピペットの一部の斜視図である。
【図8】本発明の第五の例示的な実施形態に係るピペットの一部の斜視図である。
【図9】図4に示されるピペットの軸方向に垂直な断面における断面図である。
【図10】図7に示されるピペットの軸方向に垂直な断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1に示される第一の例示的な実施形態のピペット10は、ガラス物質製のシリンダー状ガイドチューブ20を備え、そのガイドチューブの上方の開口端22にピストン24が変位可能に挿入されていて、反対側の下方端26にノズル部28が取り付けられている。
【0046】
ノズル部28の内側と、ピストン24とノズル部28との間のガイドチューブ20の内側はチャンバ30を形成し、チャンバ30は、例示的な実施形態では、変位媒体32によって、そうでなければピペッティングされる媒体34によって、部分的に充填される。変位媒体32がピストンに隣接する一方で、ピペッティングされる媒体は、ノズル部28のノズル開口36に隣接する。
【0047】
ガイドチューブ20の軸方向における(つまり、ガイドチューブ20の長手方向中心軸Aに沿った)ピストン24の移動は、チャンバ30の体積の変化をもたらし、従ってノズル開口36の外へのピペッティングされる媒体の放出(分配)、又は、ノズル開口36を介してのチャンバ30内へのピペッティングされる媒体のくみ上げ(吸引)をもたらす。
【0048】
ピストン24は、少なくとも一部が磁化可能物質で形成され、例示的な実施形態では、強磁性金属で完全に形成される。ピストン24の外周とガイドチューブ20の内壁との間には、磁性流体の潤滑膜38が配置され、その磁性流体膜38が、ピストンを完全に取り囲み、ガイドチューブに対して全ての側面においてピストンを密封する。従って、潤滑膜38は、ガイドチューブ20内のピストン24の密封及び低摩擦ガイドの両方の機能を果たす。
【0049】
ガイドチューブ20は、環状永久磁石40に同心円状に通される。永久磁石40は、そのN極40N及びS極40Sが互いに軸方向にずらされるように磁化される。例示的な実施形態では、N極40Nがノズル部28の方を向いて、S極40Sがガイドチューブ20の開口端22の方を向く。勿論、リングは異なる向きでガイドチューブ20上に配置可能であり、そのS極40Sがノズル部28を向くようにできる。
【0050】
永久磁石リング40は、その中心(つまり、ピストン24の位置)に実質的に一様な磁場を発生させて、その磁場の磁力線は、長手方向中心軸Aに平行に伸びる。ピストン24の磁性体は磁場によって磁化される。ピストン24と永久磁石リング40との間の引力としての磁気的相互作用が、磁化可能ピストン24と永久磁石40の磁場との間に生じる。
【0051】
従って、ピストン24は、絶えず永久磁石リング40の中心に自らを位置決めするようにされる。永久磁石リング40がガイドチューブ20に対して相対的に軸方向に動かされると、ピストン24は、この移動に従って、ノズル開口36を介してピペッティングされる媒体34を吸引又は分配する。
【0052】
永久磁石リング40は、手動で、又は適切な移動制御手段によって自動で動かされ得て、その移動は、電子制御デバイスを用いて、当業者に知られている方法で、駆動、モニタリング又は規制され得る。永久磁石リング40がどう動かされるかにかかわらず、永久磁石リング40からピストン24への移動の伝達は、磁気的相互作用のみによって非接触で行われて、振動、取り扱いによる影響、機械的不正確性等を、ピストン24及びガイドチューブ20から切り離すことができて、非常に正確な計測を可能にする。更に、この切り離しは、ピペッティングされる媒体による作動アセンブリの汚染及び任意で制御デバイスの汚染を防止し、逆に、例えば、永久磁石40の移動手段の潤滑剤によるピペッティングされる媒体の汚染を防止し得る。
【0053】
更に、永久磁石リング40は、高速で移動可能であり、非常にダイナミックな計測を達成できる。潤滑膜38は、低摩擦損失で、ピストン24の高速移動を促進する。磁性流体で形成された潤滑膜38は永久磁石リングの磁場で同様に磁化されて、外側の磁場と磁気的相互作用し始める。結果としての潤滑膜38と永久磁石リング40との間の引力によって、潤滑膜38は、永久磁石リング40と同じ軸方向高さにおいてピストン24と共に確実に保持されて、潤滑膜38が、ピストン24とガイドチューブ20の内壁との間の空間内に常に留まるようになる。
【0054】
以下、本発明の第二の例示的な実施形態を、図2を参照して説明する。第二の例示的な実施形態の同一又は対応する要素は、第一の例示的な実施形態と同じ参照符号で指称されるが、追加の添え字“a”が付されていて、第一の例示的な実施形態との差異に関してのみ以下説明され、それ以外は、第一の例示的な実施形態の説明が明示的に参照される。
【0055】
第二の例示的な実施形態のピペット10aは、ガイドチューブ20aを備え、そのガイドチューブ内に変位可能にピストン24aが挿入されていて、そのピストンは、磁化可能な液体(特に磁性流体)で完全に形成される。
【0056】
第一の例示的な実施形態のように、第二の例示的な実施形態においても、ピペット20aのガイドチューブ20aは、永久磁石リング40aを同軸状に通されて、ピストン24aが永久磁石リング40aの磁場内に配置されるようになる。磁場は第二の実施形態においては二つの機能を果たす。第一に、磁場は、磁性流体が漏れ出ることを防止する。何故ならば、磁性流体は、最大磁場強度の領域において絶えず留まるようにされ、つまり、永久磁石リング40aの中心内に引き入れられて、全周囲にわたってガイドチューブの内壁においてそのガイドチューブ20aを確実に密封するからである。第二に、磁場を動かすことによって、特に、永久磁石リング40aをガイドチューブ20aの軸方向に変位させることによって、磁性流体24aを、ガイドチューブ20aの長手方向中心軸Aに沿って変位させ、その変位距離に応じて、所定の量のピペッティングされる媒体を吸引又は分配することができる。第一の実施形態のように、ピペッティングは非常にダイナミックに進行し得る。何故ならば、磁性流体がガイドチューブ20a内を低摩擦で滑るからである。
【0057】
第一及び第二の例示的な実施形態では、磁場を、永久磁石リング40又は40aによって発生させる。しかしながら、一般的に、本発明の実施形態において、磁場は、多様な方法で(特に電磁石によって)提供可能である。以下、本発明の第三の例示的な実施形態として、磁場を電磁石によって発生させる構成の一例を、図3を参照して詳述する。第一の例示的実施形態(図1)と異なる特徴のみを詳述するが、再び詳述されない残りの特徴については第一の例示的な実施形態の説明が明示的に参照される。図3において、同一又は対応する要素は図1と同じ参照符号で指称されるが、追加の添え字“b”が付されている。
【0058】
第三の例示的な実施形態のピペット10bにおいて、第一の例示的な実施形態のピストン24と同程度のピストン24bが、ガイドチューブ20b内に変位可能に挿入され、磁化可能金属製である。磁性流体の潤滑膜38bが、ピストン24bの外周とガイドチューブ20bの内壁との間に配置される。
【0059】
第一の例示的な実施形態とは異なり、第三の例示的な実施形態では、ピストン24bを動かすのに必要な磁場を、永久磁石ではなくて、コイルアセンブリ42によって発生させて、そのコイルアセンブリ42は、ガイドチューブ20bの軸方向Aに直列に配置された三つのコイル44‐1、44‐2、44‐3を備える。コイル44‐1、44‐2、44‐3の各々は、複数の巻き線46を有し、それら巻き線は、ガイドチューブ20bの外周の周りに長手方向中心軸Aに対して同軸状に巻かれる。コイル44‐1、44‐2、44‐3の各々の最初と最後の巻き線は、別々の電気回路48‐1、48‐2、48‐3に接続され、これによって、各コイル44‐1、44‐2、44‐3に、個別に、且つ他のコイルに対して独立的に電圧を印加することができる。例示的な実施形態では、電気回路48‐1、48‐2、48‐3の各々は、電圧源50と、それに直列に接続されたスイッチ52とを備える。電圧源50は、互いに互いに接続されるか、又は共通の電流供給手段によって提供され得る。
【0060】
電気回路48‐1、48‐2、48‐3の個々のスイッチ52のスイッチ位置に応じて、コイル44‐1、44‐2、44‐3が、それらの内部に、長手方向中心軸Aに平行に伸びる磁力線を有する磁場を設けるか、又はコイル44‐1、44‐2、44‐3の内部が磁場のないままとなる。スイッチの52のスイッチ位置に応じて、ピストン24bは、コイル44‐1、44‐2、44‐3のうち一つの磁場によって、又は、コイル44‐1、44‐2、44‐3のうち二つ又は三つによって設けられた磁場によって引き寄せられて、この磁場の中心に引き込まれて、ガイドチューブ20b内のピストン24bの移動が、スイッチ52によって駆動可能となる。
【0061】
スイッチ52は制御デバイス(図示せず)に接続され、その制御デバイスは、使用者によって設定されたピペッティングされる媒体の量に基づいて、コイル44‐1、44‐2、44‐3に意図的に電流供給を行う。単純な制御例では、コイル44‐1をオンにする(電気回路48‐1のスイッチを閉じる)一方、他の二つのコイルをオフにして(電気回路48‐2、48‐3のスイッチ52を開く)、コイル44‐1のみが磁場を発生させて、ピストン24bをコイル44‐1内に引き込むようにすることができる。そして、或る量のピペッティングされる媒体をノズル部の外に放出するため、コイル44‐2をオンにするのと同時に、第一のコイル44‐1をオフにすることができる。そして、ピストン24bが、第二のコイル44‐2の中心に引き込まれ、そのプロセス中に、対応する量の変位媒体又はピペッティングされる媒体をガイドチューブ20bの外に変位させる。そして、第三のコイル44‐3をオンにして、第二のコイル44‐2をオフにすることができる。
【0062】
単にオン又はオフにする以外のオプションも、コイル44‐1、44‐2、44‐3に対して利用可能である。放出のより正確な計測のため、0と最大値との間の特定の電流強度を、各コイルに与えることができる。異なる電流強度が、二つの隣接するコイル44‐1/44‐2又は44‐2/44‐3に与えられると、当業者は、電流強度の比から、実際に重ね合わされた磁場を容易に計算し、特定の電流強度を調整することによって、ガイドチューブ20b内の長手方向中心軸Aに沿ったピストン24bの非常に正確な位置決めを達成することができる。これは、制御デバイスとピストン24bとの間の機械的相互作用無しで、ピペッティングされる媒体を正確に計測することを可能にする。更に、個々の電気回路48‐1、48‐2、48‐3内の電流を、非常に高速にスイッチングして、非常にダイナミックな計測を達成することができる。
【0063】
以下、本発明の第三の例示的な実施形態を図4から図6を参照して説明する。第三の例示的な実施形態の同一又は対応する要素は第一の実施形態と同じ参照符号で指称されるが、追加の添え字“c”が付されていて、第一の例示的な実施形態と異なる点に関してのみ説明されて、その以外は、第一の例示的な実施形態の説明が明示的に参照される。
【0064】
第三の例示的な実施形態のピペット10cは、シリンダー状ガイドチューブ20cを備え、その中にピストン24cが変位可能に挿入されている。第一及び第二の例示的な実施形態とは異なり、第三の例示的な実施形態のピストン24cは、永久磁場を発生させる永久磁石体54を備える。
【0065】
永久磁石体54の構造を、図5aから5cにより詳細に示す。図5b及び図5cは、永久磁石体54が、複数の(ここでは5個の)永久磁石部56‐1、56‐2、56‐3、56‐4、56‐5を備えることを明らかにしており、これらの永久磁石部は、ガイドチューブ20cの軸方向にこの順序で順に配置されている。永久磁石部56‐1〜56‐5の各々は、磁化M〜Mを有し、その磁化方向はそれぞれ、矢印によって図5bに示されている。従って、全ての永久磁石部56‐1〜56‐5の磁化M〜Mは、軸方向に(長手方向中心軸Aに平行に)向けられているが、隣接する56‐1〜56‐5の磁化M〜Mの方向は、互いに逆向きになっていて、それらの磁化は、軸方向において永久磁石部毎に交互に一方向又は他方向を指す。従って、例えば、図5に係る例示的な実施形態では、Mは上を指し、Mは下を指し、Mは上を指し、Mは下を指し、Mが上を指す。
【0066】
例示的な実施形態では、全ての永久磁石部56‐1〜56‐5は、同じ軸方向長さLのものである。従って、永久磁石体54において、磁化方向は、長さL毎に軸方向に変化する。
【0067】
また、図5cに示されるように、磁化M〜Mは、個々の永久磁石部56‐1〜56‐5のN極又はS極を示すことによってもシンボル化可能である。相互に隣接する永久磁石部56‐1〜56‐5の互いに同じ極が接するように永久磁石部56‐1〜56‐5を一緒に接続することによって、永久磁石体54を形成する。例示的な実施形態では、永久磁石部56‐1のS極が、永久磁石部56‐2のS極に接し、永久磁石部56‐2のN極が永久磁石部56‐3のN極に接するといった様になる。
【0068】
互いに同じ極が接する永久磁石部56‐1〜56‐5に対応する複数の個別の永久磁石を一緒に接続すること(例えば接着剤で互いに結合すること)によって、永久磁石体54を単純に形成することができる。図5aから5cの例示的な実施形態では、永久磁石体54が、五個の個別の永久磁石を接続することによって、形成され得る。
【0069】
上述のように構成された永久磁石体54は、図6の磁力線図に示されるように、軸方向大きく変化する特徴的な磁場を有する。特に、磁化M〜Mの向きが変化する点において、つまり、隣接する永久磁石部56‐1〜56‐5の間の接合において、高度に放射的な高磁場が生じていて、交互に外向き又は内向きになっている点に留意されたい。この顕著な磁場特性を、後述のように、ピストンの正確な制御又は検出用に使用することができる。
【0070】
原理的には、永久磁石体54は、ガイドチューブ20cの内側に完璧にフィットして十分な密封作用で挿入可能であり、それ自体が直接ピストンとして作用するような形状のものとなりえる。しかしながら、ピストン24cは追加的に、少なくとも一つの密封部材58、59を備え、その密封部材は、永久磁石体54とガイドチューブ20cの内壁との間に配置される。例示的な実施形態では、二つの密封体58、59が提供され、それぞれ、永久磁石体54の端部上に配置されて、各々が永久磁石体54の端部周囲部分及び端面を取り囲むようにする。密封体58、59は、例えば、永久磁石体54の端部上に適切にフィッティングするラバーキャップとして配置され得る。
【0071】
図4は、複数のコイル44cを備えたコイルアセンブリ42cを示していて、コイルの巻き線は各々ガイドチューブ20cの外壁を環状に取り囲んでいる。従って、各コイル44cは、軸方向に向いた磁場をガイドチューブ20c内側の対応する軸方向位置に発生させ得て、その磁場は、ピストン24cと相互作用するようになり得る。コイル44cを流れる電流の開ループ/閉ループ制御によって、永久磁石体54の磁場(図6)の結果として発生するコイル磁場の相互作用で、ガイドチューブ20cの軸方向においてピストン24cに力を印加して、計測される媒体を吸引又は分配するようにピストン24cを変位させることが可能になる。
【0072】
複数のコイル44cは、軸方向コイル長さlを有し、互いに距離sで配置されている。隣接するコイル44c間の距離sは、各コイル44cの(1/2における)軸方向中心位置間で容易に測定可能である。
【0073】
好ましくは、隣接するコイル44c間の距離sは、永久磁石部56‐1〜56‐5の軸方向長さLの関数として、及び、コイル44cの段階制御の関数として与えられる。磁場は、交互方向の磁化を有する永久磁石部56‐1〜56‐5(図5を参照)の配置に従って、軸方向に2×Lの周期を有する。ピストン24cの変位が、複数(n個)の軸方向に連続したコイル44cを順に駆動させることによって、この周期の長さにわたって進行するものである場合、これは、コイル44cのn段階動作によって達成され得て、隣接するコイル44c間の距離は、
s=1/n × 2 × L (1)
となる。
【0074】
この式によると、例えば、s=2/3 × Lのコイル距離が、3段階動作に適していて、4段階動作に対しては、コイル距離はs=1/2 × Lとなる。
【0075】
媒体の特に正確な又は自動化計測のため、コイル44cを流れる電流を、ピストン24cの検出された移動又は位置の関数として調整することができる。このため、図4に示されるように、複数のコイル44cは各々制御デバイス45に接続され得て、その制御デバイス45は、コイル44cを流れる電流、又は各コイル44cに印加される電圧を制御する立場にある。制御デバイス45は、閉ループ制御回路の一部であり、位置検出素子47から、ピストン24cの移動及び/又は位置を示す検出値を受信する。位置検出素子47は、ガイドチューブ20cに沿って延伸し得る。図4に係る例示的な実施形態では、位置検出素子47は光学検出器であり、例えば、ガイドチューブ20cに沿って延伸する複数の光検出器からなる一次元アレイによる光学ラインセンサ(CCDラインセンサ、CMOSラインセンサ等)である。ピストン24の位置又は移動の光学検出は、位置/移動の検出と、コイル44cによって達成される磁気的ピストン制御との間にほとんど又は全く干渉が生じないという利点を有する。
【0076】
動作時には、制御デバイス45が、電圧源50c及び入力ユニット52cに接続される。使用者は、入力ユニット52c(例えば、電子入力ユニット、特にコンピュータ)によって、計測される所望の量を入力し得る。使用者の入力は制御デバイス45に送信されて、その制御デバイスが、それから、計測される量に対応するピストン24cの設定された位置又は設定された移動を計算する。位置検出素子47から入力された検出値に応じて、制御デバイスは、ピストン24の検出された位置又は移動と、ピストン24cの設定された移動又は設定された位置との間のずれを計測プロセス中に反復的に求め、このずれの大きさの関数としてコイル44cの電流強度を制御する。好ましくは、このプロセスにおいて、ピストン24cに作用する力が、検出されたピストンの移動/位置と、ピストンの設定された移動/位置との間の制御された変位の大きさのものとなるように、制御デバイス45がコイル電流を制御する。
【0077】
以下、本発明の第四の例示的な実施形態を、図7を参照して説明する。第四の例示的な実施形態は、第三の実施形態の変形例と見なされるものであって、以下、差異のみを説明し、再び説明されないピペットの要素に関しては、第三の例示的な実施形態の説明が明示的に参照される。
【0078】
第四の例示的な実施形態のピペット10dは、ガイドチューブ20dを備え、その中にピストン(図示せず)が変位可能に収容される。磁気的相互作用によってピストンの位置又は移動を制御するため、複数のコイル44‐1d、44‐2d、44‐3d、44‐4dを備えたコイルアセンブリ42dが、ガイドチューブ20dの外周に配置される。図7に詳細に示されるコイルに関して、コイル44‐1d及び44‐2dは、ガイドチューブ20dの第一の軸方向位置に配置されている一方、コイル44‐3d及び44‐4dは、ガイドチューブ20dの第二の(異なる)軸方向位置に配置されている。好ましくは、図7に示されない更なるコイル対が、ガイドチューブ20dにわたって軸方向に分布して設けられる。
【0079】
コイル44‐1dを、全てのコイル44‐1d〜44‐4dを代表するものとして説明すると、そのコイル44‐1dは、複数の巻き線60dを備え、各巻き線60dは、略矩形であり、その矩形はガイドチューブ20dのシリンダー状の外壁にしっかりとフィッティングしている。従って、各巻き線60dは、円周方向に延伸する二つの巻き線部62dと、二つの軸方向巻き線部64とを備える。
【0080】
複数のこのような矩形の巻き線60dが互いの周りに延伸して、又はガイドチューブ20dの外壁上に互いに螺旋状に入れ子にされる。更に、図7に参照符号66で示されるように、この種の巻き線は、ガイドチューブ20dの外面の上に多重層でも配置可能である。好ましくは、ガイドチューブ20dの外側に直接配置された複数の巻き線60d、及び任意で外側の層66に配置された追加の巻き線は、単一の連続的なワイヤから巻かれて、その端部において、コイル電流が供給されるか又は散逸して、コイル44‐1dが磁場を発生させるようにする。
【0081】
好ましくは、軸方向巻き線部64によって互いに接続され円周方向に伸びる複数の巻き線部62dが軸方向において互いに距離sで存在するように、軸方向巻き線部64の軸方向長さが選択され、その距離は、本発明の第三の例示的な実施形態に関して上述した軸方向に隣接するコイル間の距離sに従って、特にピストンの永久磁石体の永久磁石部の長さLの関数として、選択され得る。例えば、コイル44‐1dの平均軸方向長さs(つまり、軸方向巻き線部64の平均軸方向長さ)は、上記式(1)に従って設定され得る。
【0082】
例示的な実施形態では、円周方向に延伸する巻き線部62dは、それらがリングとしてガイドチューブ20dの外周を完全に取り囲まずに、360°未満の円周角(好ましくは180°未満)でのみ延伸するようにされる(図7及び図10を参照)。例示的な実施形態では、円周方向に延伸する巻き線部62dがなす円周角は、略80°と120°との間である。コイル44‐1dによって覆われていない自由円周部68dにおいて、ガイドチューブ20dは外部からアクセス可能であり、コイル44‐1dによって邪魔されずに、計測プロセスの目視モニタリングを可能にするか、又は、後述の位置検出素子を配置することができる。
【0083】
円周方向に伸びる巻き線部62dが180°未満の円周角にわたって延伸する場合、これは、コイル44‐1dの巻き線60dが、ガイドチューブ20dの長手方向中心軸Aを含む長手方向中心面Eの一方の面の上に完全に配置されることを意味する(図10)。これは、第二のコイル44‐2dを、第一のコイル44‐1dと同じ軸方向位置においてコイル44‐1dに対称に配置することを可能にする。長手方向中心面Eとガイドチューブ20dの外壁との間の断面線の領域には、自由円周部68dと、更に反対側の自由円周部70dが、コイル44‐1d、44‐2d間に延伸する。
【0084】
例示的な実施形態では、両方のコイル44‐1d、44‐2dの全ての巻き線60dが、二つの接平面T、Tの間に実質的に配置されるように、コイル44‐1d及び44‐2dの巻き線60dが更に配置されて、それら二つの接平面は、ガイドチューブ20dの対向する外面(この場合、自由円周部68d、70dの領域)に接して存在し、互いに平行である。このような配置は、複数のガイドチューブ20dを互いに接続する際に、コイルの巻き線がガイドチューブを完全に取り囲むピペットよりも、高いパッキング密度を得ることができるという追加の利点をもたらす。図9及び図10の比較から明らかなように、図10に係る第四の例示的な実施形態の場合には、長手方向中心軸Aに直交し且つ長手方向中心面Eに平行な方向のコイル44‐1d、44‐2dの幅yは、ガイドチューブを環状に取り囲むコイル44c(例えば、第三の例示的な実施形態のコイル44c)の対応する幅yよりも小さい。特に、本発明の第四の例示的な実施形態に係る複数のガイドチューブ20dは、互いに、自由円周部68d又は70dにおいて接続されて、コイル44‐1dから44‐4dがその配置を実質的に邪魔しないように高密度でパッキング可能である。従って、複数のガイドチューブ20dを備えた計測デバイスは、少なくとも一寸法においてより小型の構造を有し得る。
【0085】
図8は、本発明の第四の例示的な実施形態の変形例として本発明の第五の例示的な実施形態を示し、コイルアセンブリ42eのコイル44‐1e、44‐2eが、同様に、ピペット10eのガイドチューブ20eを完全に取り囲まず、第四の例示的な実施形態に関して説明した外部からのガイドチューブ20eのアクセス性、複数のガイドチューブ20eのより高いパッキング密度の利点及び効果が得られる。
【0086】
しかしながら、第四の例示的な実施形態とは異なり、第五の例示的な実施形態では、コイル44‐1e、44‐2eの巻き線60eの全ての巻き線部が、ガイドチューブ20eの外壁の上に、又は外壁に平行に延伸していない。代わりに、第五の例示的な実施形態の一つの巻き線60eは、ガイドチューブ20eから離れるようにそのガイドチューブ20eの外壁から延伸して且つガイドチューブ20eから離れた位置において互いに接続された巻き線部72を備える。ガイドチューブ20e内側の軸方向磁場は、円周方向に延伸する巻き線部62eによって発生し、その巻き線部62eの端部は、ガイドチューブ20eから離れて延伸する巻き線部72に接続される。特に、図8から明らかなように、第五の例示的な実施形態では、巻き線60eは、長手方向中心軸Aに直交する面内において実質的に延伸する。
【0087】
第五の例示的な実施形態においても、好ましくは、二つの対称なコイル44‐1e、44‐2eが、ガイドチューブ20eの同じ軸方向位置においてガイドチューブ20eの長手方向中心面Eの各面の上に取り付けられて、これらが共に、ガイドチューブを環状に取り囲む巻き線を有するコイルの磁場(例えば、図4によるもの)と同等に、ガイドチューブ20e内部に比較的一様な軸方向磁場を発生させるようにする。
【0088】
更に、図8においては、位置検出素子74(特にガイドチューブ20e内に挿入されたピストンによって発生する磁場の軸方向検出を可能にする磁気測定システム)が、二つの対向する自由円周部68e、70eのうち一方の上に配置され、それら自由円周部においては、ガイドチューブ20eの外周が、コイル44‐1e、44‐2eの巻き線60eによって覆われていない。位置検出素子74は、例えば、磁化可能ストリップであり得て、そのストリップは、自由円周部68e及び/又は70eにおいて軸方向に延伸し、その軸方向の磁化プロファイルは、ピストンの位置/移動を検出するために、磁気的読み取りユニットによって読み取られ得る。
【0089】
このようにして検出されたピストンの移動/位置は、好ましくは閉ループ制御信号として、制御デバイスにフィードバックされて、その制御デバイスは、その閉ループ制御信号に基づいた開ループ制御信号を出力し、その開ループ制御信号に基づいて、コイル44‐1e、44‐2eに、所定の電力強度の電流が供給される。コイル44‐1e、44‐2eと、制御デバイスと、位置検出素子74とは、ガイドチューブ20e内をガイドされるピストンの位置又は移動を制御するために、従って、ピペット10eの計測プロセスの正確な自動制御のための閉ループ制御回路の本質的な構成要素を形成する。
【0090】
第四及び第五の例示的な実施形態の自由円周部は、位置検出素子の取り付け及び動作に含まれる技術的困難性を単純化するものであるが、本発明の他の例示的な実施形態(特に、上述の例示的な第一から第三の実施形態)においては、ピストンの位置又は移動を検出するために、位置検出素子又は他の手段を有利に提供することもできる。例えば、第五の例示的な実施形態の位置検出素子74は、外側のコイルがガイドチューブを完全に取り囲むピペットにおいても使用可能であり、例えば、磁化可能ストリップが、ガイドチューブの外壁とコイルの巻き線との間に導入される。この場合、コイルによって発生する磁場に基づいて、位置検出素子の検出信号の対応する補正が必要となる。
【0091】
ピストンの位置/移動を検出するために当業者に知られている他の手段、例えば、光学検出や、電磁信号又は音響信号に基づいた検出が同様に考えられて、ピストンの位置/移動を検出するのに用いられる電磁波又は音響波が、コイル又はピストンの磁場とほとんど又は全く干渉しないという利点が挙げられる。
【符号の説明】
【0092】
10 ピペット
20 ガイドチューブ
22 上方開口端
24 ピストン
26 下方端
28 ノズル部
30 チャンバ
32 変位媒体
34 計測される媒体
36 ノズル開口
38 磁性流体潤滑膜
40 永久磁石リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドチューブ(20、20a〜e)と、
前記ガイドチューブ(20、20a〜e)に変位可能に挿入されたピストン(24、24a、24b、24c)と、
前記ガイドチューブ(20、20a〜e)内において前記ピストン(24、24a、24b、24c)を変位させるために前記ピストン(24、24a、24b、24c)に力を印加するための作動アセンブリ(40、40a、42、42c〜e)と、
前記ピストン(24、24a、24b、24c)の変位に従って吸引可能又は分配可能な計測される媒体(34)を収容するためのチャンバ(28、30)とを備えた計測デバイス(10、10a〜e)であって、
前記作動アセンブリ(40、40a、42、42c〜e)が、前記ピストン(24、24a、24b、24c)と磁気的に相互作用するように設計されていて、
前記計測デバイス(10、10a〜e)が、磁場のサイズ及び/又は位置及び/又は方向を制御するための制御デバイスを備え、前記制御デバイスが、前記ピストン(24、24a、24b、24c)の移動又は位置を示す検出値のフィードバックによって前記ピストンの位置を制御するように設計されていることを特徴とする計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項2】
吸引又は分配される媒体の量を検出する位置検出器(74)又ははかりを備え、前記位置検出器(74)又ははかりが、ピストンの位置検出器の閉ループ制御のために、前記ピストン(24、24a、24b、24c)の移動又は位置を示す検出値を提供することを特徴とする請求項1に記載の計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項3】
ガイドチューブ(20c、20d、20e)と、
前記ガイドチューブ(20c、20d、20e)に変位可能に挿入されたピストン(24c)と、
前記ガイドチューブ(20c、20d、20e)内において前記ピストン(24c)を変位させるために前記ピストン(24c)に力を印加するための作動アセンブリ(42c、42d、42e)と、
前記ピストン(24c)の変位に従って吸引可能又は分配可能な計測される媒体(34)を収容するためのチャンバ(28、30)とを備えた特に請求項1又は2に記載の計測デバイス(10c、10d、10e)であって、
前記作動アセンブリ(42c、42d、42e)が、前記ピストン(24c)と磁気的に相互作用するように設計されていて、前記ピストン(24c)が永久磁石(54)を備えることを特徴とする計測デバイス(10c、10d、10e)。
【請求項4】
前記ピストン(24c)が、少なくとも二つの相互に隣接する永久磁石部(56‐1〜56‐5)を備え、前記少なくとも二つの相互に隣接する永久磁石部(56‐1〜56‐5)の磁化(M〜M)が、前記ガイドチューブ(20c、20d、20e)に対して軸方向に延伸して、且つ、互いに逆方向を向くことを特徴とする請求項3に記載の計測デバイス(10c、10d、10e)。
【請求項5】
前記永久磁石部(56‐1〜56‐5)が複数の永久磁石によって形成されていて、隣接する永久磁石のN極が互いに向き合い且つ互いに隣接するか、又は隣接する永久磁石のS極が互いに向き合い且つ互いに隣接するように、前記複数の永久磁石が互いに固定されていることを特徴とする請求項4に記載の計測デバイス(10c、10d、10e)。
【請求項6】
前記ピストン(24c)が少なくとも一つの密封部材(58、59)を備え、前記少なくとも一つの密封部材(58、59)が、前記ガイドチューブ(20c、20d、20e)の内壁と前記永久磁石部(56‐1〜56‐5)又は前記永久磁石との間に配置されていることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の計測デバイス(10c、10d、10e)。
【請求項7】
前記少なくとも一つの密封部材がキャップ状であり、前記永久磁石の軸方向の上端及び/又は軸方向の下端に配置されているか、又は軸方向に最も上の永久磁石部及び/又は軸方向に最も下の永久磁石部(56‐1〜56‐5)の上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の計測デバイス(10c、10d、10e)。
【請求項8】
ガイドチューブ(20、20a〜e)と、
前記ガイドチューブ(20、20a〜e)に変位可能に挿入されたピストン(24、24a、24b、24c)と、
前記ガイドチューブ(20、20a〜e)内において前記ピストン(24、24a、24b、24c)を変位させるために前記ピストン(24、24a、24b、24c)に力を印加するための作動アセンブリ(40、40a、42、42a〜e)と、
前記ピストン(24、24a、24b、24c)の変位に従って吸引可能又は分配可能な計測される媒体(34)を収容するためのチャンバ(28、30)とを備えた計測デバイス(10、10a〜e)であって、
前記作動アセンブリ(40、40a、42、42c〜e)が、前記ピストン(24、24a、24b、24c)と磁気的に相互作用するように設計されていることを特徴とする計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項9】
前記作動アセンブリ(40、40a、42、42c〜e)が、磁場を発生させるための磁場発生手段を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項10】
前記ピストン(24、24a、24b、24c)が、少なくとも一部が磁化可能物質で形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項11】
前記ピストン(24a)が、磁化可能液体、好ましくは磁性流体で形成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の計測デバイス(10a)。
【請求項12】
前記磁場発生手段(40、40a、42、42c〜e)が、前記ガイドチューブ(20、20a〜e)に対して実質的に軸方向に磁束が通過する磁場を発生させるように設計されていることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載且つ請求項9に記載の計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項13】
前記作動アセンブリ(40、40a、42、42c〜e)が、前記ガイドチューブ(20、20a〜e)の軸方向(A)において実質的に移動可能な磁場を発生させるように設計されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項14】
前記磁場発生手段(40、40a)が、前記ガイドチューブ(20、20a)を同軸状に取り囲む環状磁石を備えることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載且つ請求項9に記載の計測デバイス(10、10a)。
【請求項15】
前記磁場発生手段(42、42c)が、少なくとも一つのコイル(44‐1、44‐2、44‐3、44c)を有するコイルアセンブリを備え、前記少なくとも一つのコイル(44‐1、44‐2、44‐3、44c)の巻き線が、前記ガイドチューブ(20b、20c)を同軸状に取り囲むことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載且つ請求項9に記載の計測デバイス(10b、10c)。
【請求項16】
前記磁場発生手段(42、42c)が、複数のコイル(44‐1、44‐2、44‐3、44c)を有するコイルアセンブリを備え、各コイルの巻き線が前記ガイドチューブ(20b、20c)を同軸状に取り囲み、前記コイル(44‐1、44‐2、44‐3、44c)が互いに軸方向にずらされていることを特徴とする請求項1から8又は10から14のいずれか一項に記載且つ請求項9に記載の計測デバイス(10b、10c)。
【請求項17】
前記作動アセンブリ(42d、42e)が、磁場を発生させるための磁場発生手段を備え、前記磁場発生手段が、少なくとも一つの巻き線(60d、60e)を備えた少なくとも一つのコイル(44‐1d、44‐2d、44‐1e、44‐2e)を有するコイルアセンブリを備え、
前記少なくとも一つの巻き線(60d、60e)が、前記ガイドチューブ(20d、20e)の円周の一部のみを取り囲むことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の計測デバイス(10d、10e)。
【請求項18】
前記作動アセンブリ(42d、42e)が、磁場を発生させるための磁場発生手段を備え、前記磁場発生手段が、少なくとも一つの巻き線(60d、60e)を備えた少なくとも一つのコイル(44‐1d、44‐2d、44‐1e、44‐2e)を有するコイルアセンブリを備え、
前記少なくとも一つの巻き線(60d、60e)が、前記ガイドチューブ(20d、20e)の長手方向中心軸(A)を含む長手方向中心面(E)の一方の面の上に完全に延伸していることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の計測デバイス(10d、10e)。
【請求項19】
前記少なくとも一つの巻き線(60d、60e)が、前記ガイドチューブ(20d、20e)の外壁に接触している前記ガイドチューブ(20d、20e)の二つの相互に平行な接平面(T、T)の間に完全に延伸していることを特徴とする請求項17又は18に記載の計測デバイス(10d、10e)。
【請求項20】
前記コイルアセンブリ(42d、42e)が、少なくとも一つの第一の巻き線を有する第一のコイル(44‐1d、44‐1e)と、少なくとも一つの第二の巻き線を有する第二のコイル(44‐2d、44‐2e)とを備え、
前記少なくとも一つの第一の巻き線が、長手方向中心面(E)の一方の面の上に完全に延伸し、前記少なくとも一つの第二の巻き線が、長手方向中心面(E)の他方の面の上に完全に延伸していることを特徴とする請求項18又は19に記載の計測デバイス(10d、10e)。
【請求項21】
前記少なくとも一つの巻き線(60d、60e)が、前記ガイドチューブ(20d、20e)の外壁に沿って円周方向に延伸する巻き線部(62d、62e)を備えることを特徴とする請求項17から19のいずれか一項に記載の計測デバイス(10d、10e)。
【請求項22】
前記少なくとも一つの巻き線(60d)が、前記ガイドチューブ(20d)の外壁に沿って軸方向に延伸する巻き線部(64)を備えることを特徴とする請求項17から20のいずれか一項に記載の計測デバイス(10d)。
【請求項23】
前記軸方向に延伸する巻き線部(64)の軸方向長さ(s)が、前記永久磁石部(56‐1〜56‐5)又は前記永久磁石の長さ(L)に適合されていることを特徴とする請求項22に記載且つ請求項3から7のいずれか一項に記載の計測デバイス(10d)。
【請求項24】
前記少なくとも一つの巻き線(60e)が、巻き線部(72)を備え、前記巻き線部(72)が、前記ガイドチューブ(20e)に向けて延伸し、次に前記ガイドチューブに沿って延伸し、次に前記ガイドチューブ(20e)から離れて延伸することを特徴とする請求項17から23のいずれか一項に記載の計測デバイス(10e)。
【請求項25】
位置検出器の位置検出素子(74)が、前記少なくとも一つの巻き線(60e)によって取り囲まれていない前記ガイドチューブの円周部(68e、70e)に配置されていて、前記位置検出器が、前記位置検出素子(74)を用いて、前記ピストンの移動又は位置を示す検出値を検出することを特徴とする請求項17から24のいずれか一項に記載の計測デバイス(10e)。
【請求項26】
前記位置検出素子(74)が、前記ピストンと相互作用するように設計されていることを特徴とする請求項25に記載の計測デバイス(10e)。
【請求項27】
磁場のサイズ及び/又は位置及び/又は方向を制御するための制御デバイスを備えることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項に記載の計測デバイス(10、10a〜e)。
【請求項28】
ガイドチューブ(20、20b)と、
前記ガイドチューブ(20、20b)に変位可能に挿入されたピストン(24、24b)と、
前記ピストン(24、24b)の変位に従って吸引可能又は分配可能な計測される媒体(34)を収容するためのチャンバ(28、30)とを備えた特に請求項1から27のいずれか一項に記載の計測デバイス(10、10b)であって、
磁化可能液体の潤滑膜(38、38b)が前記ピストン(24、24b)と前記ガイドチューブ(20、20b)との間に配置されていて、
前記計測デバイス(10、10b)が、前記潤滑膜(38、38b)に作用する磁場を発生させるための磁場発生手段(40、42)を備えることを特徴とする計測デバイス(10、10b)。
【請求項29】
前記磁場発生手段(40、42)が、前記ピストン(24、24b)の位置において前記ガイドチューブ(20、20b)に対して実質的に軸方向に磁束が向いている磁場を発生させるように設計されていることを特徴とする請求項28に記載の計測デバイス(10、10b)。
【請求項30】
計測デバイス(10、10a〜e)、特に請求項1から29のいずれか一項に記載の計測デバイス(10、10a〜e)を用いて媒体(34)を計測するための計測方法であって、前記計測デバイス(10、10a〜e)が、ガイドチューブ(20、20a〜e)と、前記ガイドチューブ(20、20a〜e)に変位可能に挿入されたピストン(24、24a、24b、24c)と、計測される媒体(34)を収容するためのチャンバ(28,30)とを備え、前記計測される媒体(34)が前記ピストン(24、24a、24b、24c)の変位に従って吸引又は分配され、
磁場を提供するステップと、
前記磁場と前記ピストン(24、24a、24b、24c)との磁気的相互作用によって前記ピストン(24、24a、24b、24c)に力を印加するステップとを備えることを特徴とする計測方法。
【請求項31】
前記計測デバイス(10b〜10e)が、複数のコイル(44‐1、44‐2、44‐3、44c、44‐1d、44‐2d、44‐1e、44‐2e)を有するコイルアセンブリ(42、42c〜42e)を備え、各コイルの巻き線の各々が前記ガイドチューブ(20b〜20e)を同軸状に取り囲むか又は部分的に取り囲み、前記複数のコイル(44‐1、44‐2、44‐3、44c、44‐1d、44‐2d、44‐1e、44‐2e)が互いに軸方向にずらされ、前記複数のコイル(44‐1、44‐2、44‐3、44c、44‐1d、44‐2d、44‐1e、44‐2e)の各々に与えられる電流強度が、吸引又は分配される量に従って制御されることを特徴とする請求項30に記載の計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a−5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−10】
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【公表番号】特表2013−516618(P2013−516618A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547507(P2012−547507)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050105
【国際公開番号】WO2011/083125
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(501401397)ハミルトン・ボナドゥーツ・アーゲー (8)
【Fターム(参考)】