説明

記録ヘッド用基板、記録ヘッド、ヘッドカートリッジ、及び記録装置

【課題】 定電流駆動方式によるインクジェット記録ヘッドにおいて、ヘッド基板面積の増大を抑えた駆動回路のレイアウトを提供する。
【解決手段】 その数が非常に大きくなる複数の記録素子や複数のスイッチング素子をヘッド基板の長手方向に配列し、基板の端部で、かつ基板の短手方向に複数の記録素子を駆動するために用いる駆動信号や制御信号を入力する端子を配置する一方、これらの領域の間の領域に所定電流を流すための電流源を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録ヘッド用基板、記録ヘッド、ヘッドカートリッジ、及び記録装置に関し、特に、例えば、インクジェット方式に従って記録を行うために用いられ、記録素子に所定電流を与えて駆動するための回路を有する記録ヘッド用基板、記録ヘッド、ヘッドカートリッジ、及び記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノズル内に配置されたヒータに通電することにより熱エネルギーを発生させてインクを吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)が知られている。
【0003】
この記録ヘッドは、発生した熱エネルギーを利用してヒータ近傍のインクを発泡させ、そのノズルからインクを吐出させて記録を行う方式を採用した記録ヘッドである。
【0004】
高速に記録を行うためには、記録ヘッドに搭載したなるべく多くのヒータを同時に駆動して同じタイミングでインクを吐出させることが望ましい。しかしながら、記録ヘッドを搭載する記録装置の電源の電力供給能力に制限があることや、電源からヒータに至る配線抵抗に起因する電圧降下などにより、一度に流すことができる電流値が制限される。このため、複数のヒータを時分割駆動してインクを吐出させる時分割駆動方式を用いることが一般的である。例えば、複数個のヒータを複数のグループに分割し、各グループ内で同時に2つ以上のヒータを駆動しないように時分割制御を行い、ヒータを流れる電流の総和を抑えることにより一度に大電力を供給する必要をなくしている。
【0005】
図17は従来のインクジェット記録ヘッドに搭載したヒータ駆動回路の構成例を示す図である。
【0006】
図17に示すヒータ駆動回路は、m個のグループに夫々x個のヒータを搭載し、同時に各グループにつき1つのヒータ、即ち、m個のヒータを同時駆動し、これをx回行うことで1サイクルの駆動を行うように構成されている。
【0007】
さて、図17に示すように、ヒータ1101−11〜1101−mx夫々に対応するMOSトランジスタ1102−11〜1102−mxは、図17に示すように、夫々が同数(x個)づつ収容するm個のグループ1100−1〜1100−mに分けられている。即ち、グループ1100−1では、電源パッド(電源端子)1103からの電源配線は、ヒータ1101−11〜1101−1xに共通に接続されており、MOSトランジスタ1102−11〜1102−1x夫々は、電源パッド1103とグランド(GND)1104との間で、対応するヒータ1101−11〜1101−1x夫々と直列に接続されている。
【0008】
また、ヒータ1101−11〜1101−1x夫々は、制御回路1105から、対応するMOSトランジスタ1102−11〜1102−1xのゲートに制御信号が印加されたときに、MOSトランジスタ1102−11〜1102−1xがオンすることにより電源配線から対応するヒータを通って電流が流れて加熱される。
【0009】
図18は、図17に示すヒータ駆動回路の各グループのヒータを通電駆動するタイミングを示すタイミングチャートである。この図では、図17のグループ1100−1を例にとって説明している。
【0010】
図18において、制御信号VG1〜VGxはグループ1100−1に属する第1〜第x番目のヒータ1101−11〜1101−1xを駆動させるためのタイミング信号である。即ち、制御信号VG1〜VGxは、グループ1100−1のMOSトランジスタ1102−11〜1102−1xの制御端子に入力される信号の波形を示し、ハイレベルの時に対応するMOSトランジスタ1102−1i(i=1,x)をオンし、ローレベルの時に対応するMOSトランジスタをオフする。他のグループ1100−2〜1100−mの場合も同様である。また、図18において、Ih1〜Ihx夫々は、ヒータ1101−11〜1101−1x夫々に流れる電流値を示している。
【0011】
このように各グループ内のヒータを順次、時分割で通電駆動することにより、各グループ内で通電駆動されるヒータは、常に1個以下になるように制御することができるので、一度に大電流をヒータに供給する必要はない。
【0012】
図19は図17に示す電源パッド1103からグループ1100−1〜1100−mに接続される電源配線のレイアウトを示した図である。言い換えると、図19は、図17に示すヒータ駆動回路を形成している基板(ヘッド基板)のレイアウトの一部を示す図とも言える。図19では図中の紙面の上側にヒータ(不図示)が配置されている場合の電源配線部分のレイアウトを示している。
【0013】
図19に示すように、グループ1100−1〜1100−m夫々に対し電源パッド1103より個別に電源配線1301−1〜1301−mが接続され、グランド(GND)パッド1104に対して、電源配線1302−1〜1302−mが接続されている。このように、m×x個のヒータ(記録素子)を備えた記録ヘッドにおいて、各グループ内の記録素子1個づつを順に駆動する時分割駆動では、m個の電源供給配線とグランド配線とが必要となる。
【0014】
前述のように、各グループで同時に駆動される最大ヒータ数を1以下にすることで、各グループ別に分割された配線を流れる電流値は、常に1つのヒータに流れる電流以下にすることができる。これにより複数のヒータを同時駆動した場合でも、ヒータ基板内での配線における電圧降下量については一定とすることができ、これと同時に、別のグループに属する複数のヒータを同時駆動した場合でも、各ヒータへの投入エネルギー量をほぼ一定にすることができる。
【0015】
さて、近年、記録装置には更なる高速化、高精細化が要求されているため、搭載する記録ヘッドも高密度でより多くのノズルを実装するようになっている。そして、記録ヘッドのヒータ駆動に際しては、記録速度の点から、なるべく多くのヒータを同時に高速に駆動することが求められている。
【0016】
また、ヒータやその駆動回路を実装した記録ヘッド基板(以下、ヘッド基板という)は、多数のヒータとその駆動回路を同一の半導体基板上に形成している。このため、製造工程上、1つの半導体ウェハから取れるヒータ基板の個数を増加させてコストダウンを図る必要があるため、ヘッド基板を小型化することも求められている。
【0017】
ところが前述のように、同時駆動されるヒータ数を増やした場合、ヘッド基板内では同時駆動ヒータの数に対応した数の配線が必要となる。このため配線の数が増加すると、ヘッド基板面積が限られている場合には、配線一本当りの配線領域が減少するため配線抵抗が増加する。また同時に、各配線幅が細くなることにより、ヘッド基板内の配線相互での抵抗のバラツキも増加することになる。このような問題は、ヘッド基板を小型化する場合にも同様に生じ、更に、配線抵抗の増加及び抵抗のバラツキが増加することになる。前述のように、ヘッド基板内では、ヒータと電源配線は電源に対して直列に接続されているため、配線抵抗とその抵抗のバラツキが増加することにより、各ヒータに印加される電圧の変動割合が増加する。
【0018】
ヒータへの投入エネルギーが過小であればインクの吐出が不安定になり、また過剰であればヒータの耐久性を低下させる原因になる。つまり、ヒータに印加される電圧の変動が大きい場合には、ヒータの耐久性が低下したり、インク吐出が不安定になったりする。このため、高画質な記録を行うためには、ヒータへの投入エネルギーが一定であることが望ましく、また耐久性の観点からも適切な投入エネルギーで安定していることが望ましい。
【0019】
上述の各グループ毎に同時駆動数を1つ以下にした時分割駆動では、ヘッド基板内部での電圧降下を抑制することは可能であるが、ヘッド基板外部での配線は、複数グループの複数のヒータに対して共通となっているため、同時に駆動するヒータの数によって、共通の配線での電圧降下量が異なる。このような電圧降下量の変動に対して、各ヒータへの投入エネルギーを一定化するために、従来は、電圧の印加時間により、各ヒータへの投入エネルギーを調整している。しかしながら、同時駆動のヒータ数が増すと、共通配線を流れる電流量により電圧降下量が増加し、ヒータに印加される電圧が減少してしまう。その結果、それを補うために、ヒータ駆動時の電圧印加時間を増加せざるを得ず、高速にヒータを駆動することが困難になるという問題がある。
【0020】
このようなヒータへの投入エネルギー変動による問題を解決する方法として、例えば、特許文献1は定電流で記録素子を駆動する方式を提案している。
【0021】
図20は、特許文献1に開示されたヒータ駆動回路を示す図である。
【0022】
この構成では、記録素子毎(R1〜Rn)に設けられた定電流源(Tr14〜(n+13))とスイッチング素子(Q1〜Qn)を用いて、記録素子(R1〜Rn)を定電流により駆動している。
【特許文献1】特開2001−191531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、特許文献1に開示された定電流駆動の場合、スイッチング素子(Q1〜Qn)以外に記録素子と同数のトランジスタが必要となるため、従来の駆動方式に比べ著しくヒータ基板の面積が増大し、ヒータ基板のコストがアップするという問題がある。
【0024】
また、ヒータへの投入エネルギーの安定化のためには、複数の定電流源の間で出力電流が一定であることが求められるが、定電流源の数が増えるほど、これら定電流源間の出力電流のバラツキが増えるという問題も生じる。特に、記録装置の記録の高速化や高精細化により、著しくヒータ数の増加したヘッド基板において、複数の定電流源間での出力電流のバラツキ量を低減することは困難である。
【0025】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、各記録素子に定電流を供給して記録素子を駆動する定電流駆動方式を採用しながらも、基板サイズの小型化を達成でき、高速に記録素子を駆動することができる記録ヘッド用基板と、その記録ヘッド用基板を用いた記録ヘッドと、その記録ヘッドを組み込んだヘッドカートリッジ、及び、その記録ヘッドを用いた記録装置とを提供することを目的としている。
【0026】
また、この小型化のため、上述した従来技術の課題を克服した駆動回路をヘッド基板上に最適配置する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するため本発明の記録ヘッド基板は以下のように構成されている。
【0028】
即ち、基板上に備えられた複数の記録素子に前記複数の記録素子に対応した複数のスイッチング素子を介して定電流を流すことにより、前記複数の記録素子を駆動する駆動方法を採用した記録ヘッド用基板であって、前記基板は長辺と短辺とを有する基板であり、前記基板の長手方向に前記複数の記録素子と前記複数のスイッチング素子とを配列し、前記基板の短手側の端部に前記複数の記録素子を駆動するために用いる駆動信号や制御信号を入力するための端子を配置し、前記定電流を流すための定電流源は、前記端子が配置された第1の領域と、前記複数の記録素子と前記複数のスイッチング素子とが配列された第2の領域との間の領域に配置されていることを特徴とする。
【0029】
さらに、前記駆動信号や前記制御信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子のオン/オフを制御する制御回路を前記基板の長手方向に配置されていることが望ましい。
また、前記基板の長手方向にはインクを供給するための供給口が設けられていることが望ましい。
【0030】
さて、前記複数の記録素子は複数のグループにグループ化され、同じグループに属する記録素子は同時に駆動されることはなく、異なるグループに属する複数の記録素子が同時駆動され、前記電流源は複数個、前記複数のグループ各々に対応して設けられ、前記複数の電流源は、前記第1の領域と前記第2の領域との間の領域にまとめて配置されていることが望ましい。
なお、前記定電流源は、飽和領域で動作するMOSトランジスタで構成されていることが望ましい。
【0031】
そして、前記端子から前記複数のグループに対応した複数の前記定電流源までの距離は実質的に等しいことが望ましい。
【0032】
さらにまた、前記電流源が定電流を発生するために用いる基準電流を発生する基準電流回路と、前記基準電流を基準電圧に基づいて発生する電圧電流変換回路と、前記基準電圧を発生する基準電圧回路とを有し、前記基準電流回路と、前記電圧電流変換回路と、前記基準電圧回路とを前記第1の領域と、前記第2の領域との間に配置すると良い。
【0033】
加えて、前記電流源を、前記第1の領域と前記第2の領域との間に配置することによって得られる回路素子の群を、前記基板上において、上下対称と左右対称との少なくともいずれかであるように、複数個配置するようにしても良い。
【0034】
なお、前記複数のスイッチング素子はMOSトランジスタであることが望ましい。
【0035】
また他の発明によれば、上記構成の記録ヘッド用基板を用いた記録ヘッドを備える。
【0036】
この記録ヘッドはインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドであることが望ましい。
【0037】
さらに他の発明によれば、上記インクジェット記録ヘッドとその記録ヘッドに供給するインクを保持するインクタンクを一体的に備えたヘッドカートリッジを備える。
【0038】
またさらに他の発明によれば、上記構成のインクジェット記録ヘッド又はヘッドカートリッジを用いてインクを記録媒体に吐出して記録を行う記録装置を備える。
【発明の効果】
【0039】
従って本発明によれば、その数が非常に大きくなる複数の記録素子や複数のスイッチング素子を基板の長手方向に配列し、基板の端部で、かつ基板の短手方向に複数の記録素子を駆動するために用いる駆動信号や制御信号を入力するパッドを配置する一方、これらの領域の間に定電流を流すための定電流源を配置するので、基板面積を有効に用いることができるのみならず、基板上において、信号入力パッドから定電流源までの配線長を短くすることができるので、ヘッド基板サイズを大きく増大させることなく高速でかつ安定した記録が可能な定電流駆動方式を用いたヘッド基板を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
【0041】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0042】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0043】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0044】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0045】
以下に用いる記録ヘッド用基板(ヘッド基板)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
さらに、基板上とは、単に素子基板の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
【0046】
また、本発明における「定電流」および「定電流源」とは、同時駆動される記録素子数の変動などによらず記録素子に与えられる所定の一定電流およびこの電流を記録素子に与える電流源のことを意味するものである。そして、一定とすべき電流値自体は、所定の電流値に変更設定される場合をも含んだ意味である。
【0047】
<インクジェット記録装置の説明(図1)>
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の概観図である。図1において、リードスクリュー5005は、キャリッジモータ5013の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア5009〜5011を介して回転する。キャリッジHCは、リードスクリュー5004の螺旋溝5005に対して係合するピン(不図示)を有し、リードスクリュー5004の回転に伴って、ガイドレール5003に支持されて矢印a,b方向に往復移動される。このキャリッジHCには、インクジェットカートリッジIJCが搭載されている。インクジェットカートリッジIJCは、インクジェット記録ヘッドIJH(以下、記録ヘッドという)及び記録用のインクを貯蔵するインクタンクITを具備する。
【0048】
インクジェットカートリッジIJCは記録ヘッドIJHとインクタンクITとを一体化した構成となっている。
【0049】
5002は紙押え板であり、キャリッジの移動方向に亙って紙をプラテン5000に対して押圧する。プラテン5000は不図示の搬送モータにより回転し、記録紙Pを搬送する。5007,5008はフォトセンサで、キャリッジのレバー5006のこの域での存在を確認して、モータ5013の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知手段である。5016は記録ヘッドの前面をキャップするキャップ部材5022を支持する部材である。また、5015はこのキャップ内を吸引する吸引手段で、キャップ内開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。5017はクリーニングブレードで、5019はこのブレードを前後方向に移動可能にする部材であり、本体支持板5018にこれらが支持されている。ブレードは、この形態でなく周知のクリーニングブレードが本例に適用できることは言うまでもない。又、5012は、吸引回復の吸引を開始するためのレバーで、キャリッジと係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達手段で移動制御される。
【0050】
これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復は、キャリッジがホームポジション側の領域に来た時にリードスクリュー5004の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されているが、周知のタイミングで所望の作動を行うようにすれば、本例にはいずれも適用できる。
【0051】
図2はインクジェットカートリッジIJCの詳細な構成を示す外観斜視図である。
【0052】
図2に示されているように、インクジェットカートリッジIJCはブラックインクを吐出するカートリッジIJCKとシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の3色のカラーインクを吐出するカートリッジIJCCから構成されており、これら2つのカートリッジは互いに対して分離可能であり、夫々独立にキャリッジHCと脱着可能である。
【0053】
カートリッジIJCKはブラックインクを貯留するインクタンクITKとブラックインクを吐出して記録する記録ヘッドIJHKとから成り立っているが、これらは一体型の構成となっている。同様に、カートリッジIJCCはシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の3色のカラーインクを貯留するインクタンクITCとこれらカラーインクを吐出して記録する記録ヘッドIJHCとから成り立っているが、これらは一体型の構成となっている。なお、この実施例ではインクタンク内にインクが充填されているカートリッジとなっている。
【0054】
また、カートリッジIJCKやIJCCは一体型のみならず、インクタンクと記録ヘッドとが分離する構成のものを用いることもできる。
【0055】
記録ヘッドIJHは記録ヘッドIJHKと記録ヘッドIJHCとをまとめて言及するときに用いる。
【0056】
さらに、図2から明らかなように、ブラックインクを吐出するノズル列、シアンインクを吐出するノズル列、マゼンタインクを吐出するノズル列、イエロインクを吐出するノズル列はキャリッジ移動方向に並んで配置され、ノズルの配列方向はキャリッジ移動方向とは交差する方向となっている。
【0057】
図3は3色のカラーインクを吐出する記録ヘッドIJHCの立体的な構造を示す斜視図である。
【0058】
図3からインクタンクITKから供給されるインクの流れが明らかになる。記録ヘッドIJHCには、シアン(C)インクを供給するインクチャネル2C、マゼンタ(M)インクを供給するインクチャネル2M、イエロ(Y)インクを供給するインクチャネル2Yがあり、インクタンクITKからは夫々のインクチャネルに基板の裏面側から夫々のインクを供給する供給路(不図示)が備えられている。
【0059】
インク流路301C、301M、301Yが電気熱変換体(ヒータ)401に対応して設けられており、これらのインク流路を経てCインク、Mインク、Yインクは夫々、基板上に設けられた電気熱変換体(ヒータ)401まで導かれる。そして、電気熱変換体(ヒータ)401に対して後述する回路を通して通電されると、電気熱変換体(ヒータ)401上にあるインクに熱が与えられ、インクが沸騰し、その結果、生じた泡によって吐出口302C、302M、302Yからインク液滴900C、900M、900Yが吐出される。
【0060】
なお、図3において、1は後で詳述する電気熱変換体やこれを駆動する種々の回路、メモリ、キャリッジHCとの電気的接点となる種々のパッド、種々の信号線が形成される記録ヘッド用基板(以下、ヘッド基板という)である。
【0061】
また、1つの電気熱変換体(ヒータ)及びこれを駆動するMOS−FETをまとめて記録素子といい、複数の記録素子を総称して記録素子部という。
【0062】
図3ではカラーインクを吐出する記録ヘッドIJHCの立体的な構造を示したが、ブラックインクを吐出する記録ヘッドIJHKも同様な構造をしている。ただし、その構造は図3に示す構成の3分の1である。即ち、インクチャネルは1つであり、配置する記録素子数が同じであればヘッド基板の規模も約3分の1程度となる。
【0063】
次に、上述した記録装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
【0064】
図4は記録装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0065】
図4において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROM、1703は各種データ(上記記録信号や記録ヘッドに供給される記録データ等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッドIJHに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。
【0066】
さらに、1709は記録紙Pを搬送するための搬送モータ(図1では不図示)1706は搬送モータ1709を駆動するためのモータドライバ、1707はキャリッジモータ1710を駆動するためのモータドライバ、1705は記録ヘッドIJHを駆動するためのヘッドドライバである。
【0067】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録信号が入るとゲートアレイ1704とMPU1701との間で記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されると共に、キャリッジHCに送られた記録データに従って記録ヘッドIJHが駆動され、記録紙P上への画像記録が行われる。
【0068】
なお、この実施例では、図2に示すような構成の記録ヘッドを用い、キャリッジ各走査において、記録ヘッドIJHKによる記録と記録ヘッドIJHCによる記録とが重ならないように制御する。カラー記録の場合、各走査毎に記録ヘッドIJHKと記録ヘッドIJHCとを交互に駆動する。例えば、キャリッジが往復走査する場合に、往路走査において記録ヘッドIJHKを駆動し、復路走査において記録ヘッドIJHCを駆動するように制御する。記録ヘッドの駆動制御はこのような制御のみならず、記録動作は往路走査のみで行い記録紙Pの搬送を行わずに2回の往路走査で記録ヘッドIJHKと記録ヘッドIJHCを夫々駆動するなどの他の制御を行っても良い。
【0069】
次に、記録ヘッドIJHに実装されるヘッド基板の構成とその動作について説明する。
【0070】
図5は記録ヘッドIJHに作り込まれたヒータ駆動回路を形成するヘッド基板の構成例を示す図である。
【0071】
なお、図5において、既に従来例の図17において説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明を省略する。また、図5に示す構成においても、従来例と同様に(m×x)個のヒータとスイッチング素子(MOSトランジスタ)が、夫々x個のヒータとスイッチング素子とからなるm個のグループに分割され、同時には各グループが1つずつのヒータが選択駆動される時分割駆動方式を採用した例を示している。
【0072】
図5において、103−1〜103−mは定電流源群、105は基準電流回路である。
【0073】
ヒータ駆動回路は、図5に示すように、各グループ毎にヒータに電流を供給するための定電流源103−1〜103−mが接続される。
【0074】
例えば、グループ1100−1では、ヒータ1101−11〜1101−1x各々に直列接続されたMOSトランジスタ1102−11〜1102−1のソース側端子は共通接続され、各グループのヒータの一端も共通接続されており、そのグループに対し定電流源103−1が接続される。また、電源配線108は各ヒータ1101−11〜1101−1xに共通接続端に接続されている。
【0075】
ヒータ1101−11〜1101−1xの駆動用スイッチであるMOSトランジスタ1102−11〜1102−1xは電源配線108とグランド(GND)の間にそれぞれ直列に接続されている。また、ヒータ1101−11〜1101−1xに所定電流を流すための定電流源群の1つである高耐電圧MOSトランジスタ103−1は、MOSトランジスタ1102−11〜1102−1xとグランド(GND)の間に共通のスイッチとして直列に1個接続されている。なお、この実施例では、MOSトランジスタ(定電流源)103をその飽和領域で動作させることで所定電流を流せる構成としている。
【0076】
なお、他のグループ1100−2〜1100−mの構成もグループ1100−1と同様である。
【0077】
従って、このヒータ駆動回路を全体として見ると、電源配線108側からヒータ1101−11〜1101−mx、スイッチとして機能するMOSトランジスタ1102−11〜1102−mx、定電流源群103−1〜103−m、グラウンド配線の順に直列に接続されている。そして、定電流源群103−1〜103−m各々が、対応するグループの共通接続端に定電流を出力する。なお、その出力電流値の大きさは基準電流回路105からの制御信号により調節される。
【0078】
次に、以上の回路構成のヒータ駆動回路の動作について説明する。
【0079】
なお、この動作はm個のグループについて共通であるので、ここでは、x個のヒータで構成される1グループ分について説明する。
【0080】
図6は、図5に示したヒータ駆動回路の1つのグループの構成を抜き出して示した回路図である。
【0081】
図6において、既に従来例の図17や図5において説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
【0082】
また、図6において、VG1、VG2、……、VG(x−1)、VGxは、スイッチング用のMOSトランジスタ1102−11、1102−12、……、1102−1(x−1)、1102−1xのゲートに印加される制御回路1105から出力される制御信号を表し、Ih1、Ih2、……、Ih(x−1)、Ihxは、ヒータ1101−11、1101−12、……、1101−1(x−1)、1101−1xを流れる電流を表し、VCは基準電流回路105からの制御信号を表している。
【0083】
スイッチング用のMOSトランジスタ1102−11〜1102−1xは、ここでは簡単のために、理想的にドレインとソースとの2端子スイッチとして動作すると考え、VGi(i=1,x)の信号レベルが“H”であれば、そのスイッチはオン(ドレイン−ソース間が短絡)となり、“L”であればオフ(ドレイン−ソース間が開放)するものとして説明する。また、定電流源103−1は、その端子間にある電圧が印加されると制御信号VCにより設定された一定電流をその端子間に(図においては上から下方向へ)出力するものとする。
【0084】
図7は制御信号(VGi)とその制御信号に応じてヒータに流れる電流(Ihi)の波形を示す図である。
【0085】
例えば、制御信号VG1に関して言えば、時刻t1までの期間では“L”であり、定電流源103−1の出力とヒータ1101−11は遮断されており、そのヒータには電流が流れない。しかしながら、時刻t1からt2までの期間では“H”になり、電流源であるMOSトランジスタ1102−11のソース−ドレイン間が通電し、定電流源103−1からの出力電流がそのヒータに流れる。その後、時刻t2からは再び“L”となり、ヒータへの電流が遮断される。
【0086】
制御信号VG2、……、VGxについても同様である。
【0087】
なお、ヒータへの電流の投入時間は制御信号VGiにより制御され、ヒータへの投入電流Ihiの大きさは定電流源103−1への制御信号VCにより制御される。
【0088】
このように、時刻t1から時刻t2の期間に、ヒータ1101−11に電流が流れると、そのヒータ上面のインクは加熱・発泡し、その結果、対応するノズルからインクが吐出し、インクドットが記録される。
【0089】
以下同様にして、図7に示すタイミングチャートに示す信号に従って、順次、ヒータ1101−11〜1101−1xへ電流が流れ、その結果、加熱されたインクの吐出によるインクドットの記録と、ヒータ1101−11〜1101−1xへの電流投入の停止が行われる。
【0090】
以上の構成により、基準電流回路105により定電流源103−1の出力電流値が設定され、その設定された出力電流はMOSトランジスタ1102−11〜1102−1xにより所望の時間、ヒータ1101−11〜1101−1xに流れる。
【0091】
なお、実際の動作では、MOSトランジスタ1102−11〜1102−1xがオンの時はソース−ドレイン間に抵抗が存在するが、この抵抗における電圧降下分に対し十分に高い電源電圧を設定することで、定電流源の出力電流がそのままヒータに流れ、オン抵抗が存在しない場合と実質的に何ら変わらない動作が実現される。
【0092】
以下、以上の回路構成と動作を行うヒータ駆動回路を形成した本発明に従うヘッド基板の回路レイアウト構成について説明する。
【実施例1】
【0093】
図8は本発明の実施例1に従うヘッド基板のレイアウト構成を示す図である。
【0094】
図8は図5に示したヒータ駆動回路(等価回路)の中のヒータ、トランジスタ、制御回路、定電流源といった各素子について、ヘッド基板上での実体配置を示すためのレイアウト構成の一例である。従って、図8においても、図5で言及した構成要素に対応する配置領域には同じ参照番号を付している。また、本発明に従うヘッド基板は矩形の基板であり、その基板には短辺と長辺とがある。そして、ヘッド基板の長辺に沿った方向(長手方向)にヒータやスイッチング用のトランジスタなどを配列している。
例えば、グループ1100−1にはヒータ1101−11〜1101−1xを有するヒータ群とスイッチング用のMOSトランジスタ1102−11〜1102−1xを有するトランジスタ群が形成されている。グループ1100−2にはヒータ1101−21〜1101−2xを有するヒータ群とスイッチング用のMOSトランジスタ1102−21〜1102−2xを有するトランジスタ群が形成されている。同様に、グループ1100−mにはヒータ1101−m1〜1101−mxを有するヒータ群とMOSトランジスタ1102−m1〜1102−mxを有するトランジスタ群が形成されている。また、m個のグループ各々に対応して、グループ毎に電流を供給するm個の定電流源103−1〜103−mからなる定電流源群103が形成される。
【0095】
なお、ヘッド基板の短辺に沿った方向(短手)には、VHコンタクトなど種々のコンタクトやキャリッジとの電気的接点となる入出力パッド群1501が形成される。
【0096】
図9は図8に示したヘッド基板を用いたインクジェット記録ヘッドの部分断面図である。
【0097】
図9に示されるように、ヘッド基板1に設けられたヒータ1101−2Xに対向した位置に吐出口302が設けられており、ヘッド基板1の端部に形成されたインク供給路20を介してヒータ位置に供給されたインクが加熱されて吐出口302から吐出される。
【0098】
また、図10は図8に示したヘッド基板の電源配線部分のレイアウトを示す図である。
【0099】
図10から分かるように、電源配線1601−1〜1601−mは電源パッド1103に接続されグループ1100−1〜1100−mのヒータ1101−11〜1101−mxにVHコンタクトを介して接続される。一方、電源配線1602−1〜1602−mには定電流源群103の出力側の端子とMOSトランジスタ1102−11〜1102−mxのソース側端子がグループ毎にそれぞれ接続される。定電流源群103のグランド(GND)側端子は電源配線1603を介して共通にGNDパッド1104に接続される。
【0100】
図8に示すレイアウト構成から分かるように、定電流源103−1〜mは、グループの領域1100−1〜mに夫々配置されてはおらず、ヒータ群およびトランジスタ群と、入出力パッド群1501との間の領域に複数の定電流源が集合した定電流源群として配置されている。
【0101】
さて、通常、高速記録を行う観点から多くのヒータを配列するためヘッド基板の長さは、ヒータ配列方向の長さが長く、即ち、図8及び図10における横方向に長く、また、ヘッド基板の面積を縮小する観点からヒータの配列方向に垂直な方向に短くなるように配置する。この細長い形状のためヒータ配列と垂直方向のヘッド基板の長さが伸びると、ヘッド基板の面積が著しく増大し、1枚のウェハに形成できるヘッド基板の個数を著しく減少させてしまう。
【0102】
このため、この実施例によれば、ヒータ配列に平行する部分(ヒータの配列方向と直交する方向)の領域には、できるだけ少ない種類の回路や素子だけを配置するようにしている。図8に示す例では、ヒータの数と同数必要な駆動素子(MOSトランジスタ)や、それを制御する制御回路のみを配置し、それ以外の回路素子(例えば、定電流源群)や入出力パッドをヒータ配列の延長線にある基板端部側にまとめて配置することでヘッド基板の面積の増大を抑えるようにしている。
【0103】
この実施例では、具体的には、ヒータの数に比べ少ない素子数で構成される定電流源を入出力パッド部とヒータ配列部分との間に配置することにより、定電流駆動に関わる回路による基板サイズの増大を抑えるようにしている。
【0104】
また、本発明に従う定電流源群の配置は上記ヘッド基板サイズの大型化を防止する観点からだけではなく、以下のような理由にもよる。
【0105】
図5において、定電流源群から各グループ内のヒータまでの配線では、各グループ内での同時駆動可能なヒータの数が1つであるため電圧降下の差異は生じないが、定電流源からGNDパッド1104までの配線には複数のグループを流れた電流が流れるため、同時駆動されるヒータ数に依存して電圧降下量が変化する。この実施例では、図10に示したように、各グループの定電流源をまとめて入出力パッドの近傍の領域(ヒータ群やスイッチング用MOSトランジスタ群と入出力パッドとの間の領域)に配置することにより、パッドから定電流源までの距離を短くしているので、定電流源までの配線で生じる電圧降下量の変動をも少なくしている。
【0106】
また、図10に示されるように、GNDパッドから複数の定電流源に対する配線1603の長さがほぼ等距離となっているので、GNDパッドから各定電流源までの配線抵抗を実質的に等しくすることができる。これによって、夫々の定電流源を構成するMOSトランジスタのソース電圧も等しくすることができ、信頼性の高い安定したMOSトランジスタの駆動に貢献する。
【0107】
さらに図10に示されるように、所定電流を流す定電流源群103から各スイッチング用のMOSトランジスタまでの電源配線1601−1〜1601−mや電源配線1602−1〜1602−mなどの共通配線は、グループ間で実質的に同等の配線抵抗になるように、配線長が長いほど、その幅を広くしている。このため、配線抵抗が高いものに電圧をそろえて設定する必要がなく電気的な損失を低減することもできる。
【実施例2】
【0108】
図11は本発明の実施例2に従うヘッド基板のレイアウト構成を示す図である。
【0109】
図11は図5に示したヒータ駆動回路を実現するレイアウト構成の一例である。なお、図11に示された一点鎖線は対称軸を示している。従って、図11においても、図5で言及したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0110】
また、図12は図11に示したヘッド基板の電源配線のレイアウトを示す図である。
【0111】
この実施例のレイアウトは、図5に示したヒータ駆動回路を4つ分、同一のヘッド基板上に対称に配置した例である。各回路の動作は実施例1で説明したのと同一である。従って、参照番号は4つの区画の内、1つについてのみ付している。この構成では、例えば、図3に示すように、基板中央にあけられた穴(インク供給口2C、2M、2Y)からインクがヘッド基板上面に配置されたヒータに供給されることより、ヒータに電流を投入することでインクを紙面上面に吐出させることができる。
【0112】
従って、図11に示す構成であれば、4つの定電流源ブロックであるヒータ駆動回路に電流を供給でき、これらのブロックに含まれる夫々(x×m)個のヒータは同じ色のインクを吐出する4群のノズル列に対応付けられるように記録ヘッドを構成しても良いし、異なる色のインクを吐出する4群のノズル列に対応付けられるように構成しても良い。
【0113】
図12に示すように、この実施例に従う構成では、左右(ヘッド基板の2つの短辺側)に配置されたパッドからの電源配線の長さが最大でも基板中央までの長さであるため、電源配線による電圧降下を効率的に抑えられるという効果がある。
【0114】
再び、図11に言及すると、定電流源群は、ヘッド基板上において、対応するヒータ配列群それと隣接するパッド群との間に配置される。この場合も、実施例1と同様に定電流駆動に関わる回路によるヘッド基板のサイズの増大を抑えることができる。
【実施例3】
【0115】
図13はこの実施例に従う定電流駆動方式を用いた記録ヘッドIJHのヘッド基板の構成を示す回路ブロック図である。なお、図13においても、これまでに説明で言及したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付している。また、図13において、1102−11〜1102−mxはスイッチとして描かれているが、これまでに説明したようにその実体はスイッチング素子として機能するMOSトランジスタである。
【0116】
この回路構成は大きく分けて、基準電圧回路101、電圧電流変換回路102、基準電流回路103、及び、n個の定電流源ブロック(ヒータ駆動回路)106−1〜106−nから構成されている。
【0117】
従って、図13に示す構成であれば、n個の定電流源ブロック(ヒータ駆動回路)に電流を供給でき、これらのブロックに含まれる夫々(x×m)個のヒータは同じ色のインクを吐出するn群のノズル列に対応付けられても良いし、異なる色のインクを吐出するn群のノズル列に対応付けられても良い。
【0118】
基準電圧回路101は電圧電流変換回路102が用いる基準電圧(Vref)を生成する。そして、電圧電流変換回路102では基準電圧(Vref)を元に電圧電流変換を行い、基準電流(Iref)を生成する。次に、電圧電流変換回路102で生成された基準電流(Iref)をもとに基準電流回路105では、複数の基準電流IR1〜IRnを生成する。基準電圧(Iref)からはカレントミラー回路により、基準電流(Iref)電流に比例する複数の基準電流IR1〜IRnが生成され、n個の定電流源ブロック106に対し、基準電流IR1〜nを供給する。
【0119】
定電流源ブロック106−1〜106−nでは、基準電流IR1〜nを基準として、夫々各定電流源ブロック内の定電流源群103−1〜103−mにより、基準電流IR1〜nに比例する定電流Iha〜mを出力する。なお、各電流源群における動作は実施例1と同一なので、その説明は省略する。
【0120】
図14はこの実施例に従うヘッド基板のレイアウト構成を示す図である。
【0121】
図14は図13に示したヘッド基板の回路を実現するレイアウト構成の一例である。なお、図14に示された一点鎖線は対称軸を示している。従って、図14においても、これまでに説明で言及したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0122】
この実施例では4個のヘッド駆動回路をもつ例について説明する。
【0123】
図14に示す例においても実施例2と同様に、4つの定電流源群各々はヒータ配列とそれに隣接するパッド群との間に配置される。また基準電圧回路、電流電圧変換回路および基準電流回路はまとめてヒータ配列とパッド群との間に配置される。
【0124】
また、図14に示す例では、基準電圧回路101、電圧電流変換回路102、及び基準電流回路105は同一箇所に配置(破線で囲まれた領域)されているが、この図の左右の反対側にあるヒータ配列とパッド群との間に分割されて配置しても良い。
【0125】
ともあれ、この実施例に従えば、このような配置をすることで実施例1、2と同様に定電流駆動に関わる回路によるヘッド基板のサイズの増大を抑えることができる。
【実施例4】
【0126】
図15は図14に示した回路構成を2系統分、同一基板上に設けたレイアウト構成の一例を示す図である。
【0127】
この例では、ヒータに印加する電流を2系統独立に設定できるため、例えば、2つの異なる量のインクを吐出させるために適合したヒータの配列を混在して同一基板上に構成できる。
【0128】
図16は、ヒータ配列が複数配置されたレイアウト構成の一例を示す図である。
この例の構成は、カラー記録用に複数色のインクを同一基板上に設けられたヒータにより吐出させる場合などに適している。
【0129】
なお、図15〜図16ではインク供給口2−1、2−2、……2−nが図示されている。他の構成要素については既に説明したのと同じであるので、同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置のキャリッジ周辺部の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図2】インクジェットカートリッジIJCの詳細な構成を示す外観斜視図である。
【図3】3色のカラーインクを吐出する記録ヘッドIJHCの立体的な構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】記録ヘッドIJHに搭載したヒータ駆動回路を形成するヘッド基板の構成例を示す図である。
【図6】図5に示したヒータ駆動回路の1ブロックの構成を示す回路図である。
【図7】制御信号(VGi)とその制御信号に応じてヒータに流れる電流(Ihi)の波形を示す図である。
【図8】本発明の実施例1に従うヘッド基板のレイアウト構成を示す図である。
【図9】図8に示したヘッド基板を用いたインクジェット記録ヘッドの部分断面図である。
【図10】図8に示したヘッド基板の電源配線のレイアウトを示す図である。
【図11】本発明の実施例2に従うヘッド基板のレイアウト構成を示す図である。
【図12】図10に示したヘッド基板の電源配線のレイアウトを示す図である。
【図13】本発明の実施例3に従う定電流駆動方式を用いた記録ヘッドIJHのヘッド基板の構成を示す回路ブロック図である。
【図14】本発明の実施例3に従うヘッド基板のレイアウト構成を示す図である。
【図15】図14に示した回路構成を2系統、同一ヘッド基板上に設けたレイアウト構成の一例を示す図である。
【図16】カラー記録に対応したヘッド基板のレイアウト構成を示す図である。
【図17】従来のインクジェット記録ヘッドに搭載したヒータ駆動回路の構成例を示す図である。
【図18】図17に示すヒータ駆動回路の各グループのヒータを通電駆動するタイミングを示すタイミングチャートである。
【図19】図17に示す電源パッド1103からグループ1100−1〜1100−mに接続される電源配線のレイアウトを示した図である。
【図20】従来技術に従うヒータ駆動回路を示す図である。
【符号の説明】
【0131】
101 基準電圧回路
102 電圧電流変換回路
103 定電流源群
103−1〜103−m 定電流源
105 基準電流回路
106−1〜106−n 電流源ブロック
1101−11〜1101mx ヒータ
1102−11〜1102mx MOSトランジスタ
1105 制御回路
IJH 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に備えられた複数の記録素子に前記複数の記録素子に対応した複数のスイッチング素子を介して定電流を流すことにより、前記複数の記録素子を駆動する駆動方法を採用した記録ヘッド用基板であって、
前記基板は長辺と短辺とを有する基板であり、
前記基板の長手方向に前記複数の記録素子と前記複数のスイッチング素子とを配列し、
前記基板の短手側の端部に前記複数の記録素子を駆動するために用いる駆動信号や制御信号を入力するための端子を配置し、
前記定電流を流すための定電流源は、前記端子が配置された第1の領域と、前記複数の記録素子と前記複数のスイッチング素子とが配列された第2の領域との間の領域に配置されていることを特徴とする記録ヘッド用基板。
【請求項2】
前記駆動信号や前記制御信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子のオン/オフを制御する制御回路を前記基板の長手方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド用基板。
【請求項3】
前記基板の長手方向にはインクを供給するための供給口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド用基板。
【請求項4】
前記複数の記録素子は複数のグループにグループ化され、同じグループに属する記録素子は同時に駆動されることはなく、異なるグループに属する複数の記録素子が同時駆動され、
前記電流源は複数個、前記複数のグループ各々に対応して設けられ、
前記複数の電流源は、前記第1の領域と前記第2の領域との間の領域にまとめて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド用基板。
【請求項5】
前記定電流源は、飽和領域で動作するMOSトランジスタで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の記録ヘッド用基板。
【請求項6】
前記端子から前記複数のグループに対応した複数の前記定電流源までの距離は実質的に等しいことを特徴とする請求項4に記載の記録ヘッド用基板。
【請求項7】
前記定電流源が定電流を発生するために用いる基準電流を発生する基準電流回路と、
前記基準電流を基準電圧に基づいて発生する電圧電流変換回路と、
前記基準電圧を発生する基準電圧回路とをさらに有し、
前記基準電流回路と、前記電圧電流変換回路と、前記基準電圧回路とを前記第1の領域と、前記第2の領域との間に配置することを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド用基板。
【請求項8】
前記定電流源を、前記第1の領域と、前記第2の領域との間に配置することによって得られる回路素子の群を、前記基板上において、上下対称と左右対称との少なくともいずれかであるように、複数個配置することを特徴とする請求項2に記載の記録ヘッド用基板。
【請求項9】
前記複数のスイッチング素子はMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録ヘッド用基板。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の記録ヘッド用基板を用いた記録ヘッド。
【請求項11】
前記記録ヘッドはインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項10に記載の記録ヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載のインクジェット記録ヘッドに供給されるインクを保持するインクタンクを一体的に備えたことを特徴とするヘッドカートリッジ。
【請求項13】
請求項11に記載のインクジェット記録ヘッド又は請求項12に記載のヘッドカートリッジを用いてインクを記録媒体に吐出して記録を行う記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−7761(P2006−7761A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154141(P2005−154141)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】