説明

設備におけるセメントクリンカの製造方法及びそのようなセメントクリンカ製造設備

【課題】二酸化炭素の排出を制限でき、経済的に実現性があり、更に、従来型の設備と技術的に近い設備で実施できるセメントクリンカの製造方法により、従来の製造方法および製造設備の問題点を解消する。
【解決手段】回転炉(1)によって生成される排ガス(10)とプレヒータ(3、3a)のガスとを分離して、それらのガスが混ざらないようにし、プレか焼反応炉(4)に酸素の豊富なガス(9)を供給して、サイクロンプレヒータ(3、3a)から出たガス(8)の一部分(8a)を前記プレか焼反応炉(4)内、さらにプレヒータ(3、3a)内でリサイクルして、プレヒータ内での材料の浮遊に適した流が得られるようにする。二酸化炭素の豊富な、リサイクルされないガスの他の部分(8b)は、隔離などの手段によってCO2の排出を制限するのに適応している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備におけるセメントクリンカの製造方法及びそのようなセメントクリンカ製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメントの製造には、その大部分で、焼成材料であるクリンカを使用し、クリンカは主成分が炭酸カルシウムである鉱物から製造される。クリンカの作製には、焼成作業を行うが、その焼成作業では、炭酸カルシウムの分解によっても、作業に必要な燃料の燃焼によっても、大量の二酸化炭素が発生する。
【0003】
例えば、いわゆるポルトランドセメント1トンの製造には、処理される材料に由来するCO2約530kg、及び燃料に由来するCO2250〜300kgの放出が伴う。この二酸化炭素は、30%未満の濃度で排ガスに放出され、そのような排ガスの主成分は窒素である。この状態では、大気中へのCO2排出を制限する目的で、分離、特に隔離することは困難である。
【0004】
セメントクリンカの製造には、あらかじめ粉砕した原料を回転炉でか焼する、いわゆる乾式焼成法が最も多く使用される。作業に必要とされるエネルギーを削減するために、回転炉の上流及び下流に熱交換器を加えて、材料及び回転炉から出た排ガスに含まれている熱を直接回収する。上流には、浮遊状の原料を予熱し、部分的に二酸化炭素を除去するサイクロンプレヒータがある。下流には、焼成した材料を冷気送風によって冷却するクリンカクーラがある。いわゆる乾式で作動する設備の大部分は、プレか焼炉(precalcinateur)と呼ばれる、プレヒータの下方の燃焼反応装置を備え、そのプレか焼炉内に焼成装置によって消費される大量の燃料が供給される。二酸化炭素除去反応の大部分がプレヒータ内で実施されることに注目すべきである。
【0005】
より正確には、乾式で作動する標準的な設備では、燃料の60〜65%はプレか焼炉に、そして残りは回転炉に供給され、二酸化炭素除去反応の約85%は回転炉に入る前に起きる。したがって、焼成装置によって放出される二酸化炭素780〜830kgのうち、76〜78%がプレヒータ及びプレか焼炉の位置で生成され、回転炉で生成されるのは22〜24%にすぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる経済的に実現性のあるセメントクリンカの製造方法を提案して、前述の問題点を解消することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、セメントクリンカの製造用に従来から使用されている設備と技術的に近い設備で実施できるセメントクリンカの製造方法を提案することである。
【0008】
本発明のまた別の目的は、そのような設備そのものを提案することである。
【0009】
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明から明らかになるものであるが、これらの説明は例として挙げたものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、まず、
‐原料を予熱するためのサイクロンプレヒータ、
‐サイクロンプレヒータに熱を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ、
を備える設備におけるセメントクリンカの製造方法であって、
‐前記サイクロンプレヒータ及び/またはプレか焼反応炉において、原料を予熱し、その二酸化炭素を除去し、
‐前記クリンカクーラにおいて、回転炉から出たクリンカを冷却する
方法に関するものである。
【0011】
本発明によると、
‐回転炉によって生成された排ガスとプレヒータのガスとを分離して、それらの排ガス及びガスが混ざらないようにし、
‐プレか焼反応炉に、該反応炉の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガスを供給し、
‐前記サイクロンプレヒータから出たガスの一部分を前記プレか焼反応炉内、さらに前記プレヒータ内でリサイクルして、前記プレヒータ内での材料の浮遊(suspension)に必要な適切な流(flux)を得るようにし、一方では、二酸化炭素の豊富な、前記サイクロンプレヒータのガスの他の部分は、例えば、隔離などのような、二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させる。
【0012】
本発明は、また、特に前記の方法を実施することのできるセメントクリンカの製造設備であって、下記の、
‐原料を予熱するためのサイクロンプレヒータ、
‐サイクロンプレヒータに熱(高温ガス)を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ、
を備える設備に関するものである。
【0013】
本発明によると、その設備は、さらに、
‐回転炉の排ガス用およびプレヒータのガス用の分離された各導管であって、それらの排ガス及びガスが混ざらないようにする導管、
‐プレか焼反応炉に供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源、
‐前記サイクロンプレヒータから出るガスの一部分をプレか焼反応炉内、さらに前記プレヒータ内でリサイクルするための導管、
を備える。
【0014】
本発明は、添付図面を参照して行う下記の説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による第一の実施態様の設備内で実施されるセメントクリンカの製造方法の実施例を概略的に示したものである。
【図2】図2は、本発明による第二の実施態様のセメントクリンカの製造方法及びその関連設備を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、また、設備におけるセメントクリンカの製造方法に関する。
【0017】
この設備は、下記の、
‐原料を予熱するためのサイクロンプレヒータ3、3a
‐サイクロンプレヒータに特に高温ガスの形態で熱を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉4、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉1、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ5、
を備える。したがって、従来技術の設備と同様に、サイクロンプレヒータ、プレか焼反応炉、回転炉及びクリンカクーラを備える設備に関する。
【0018】
本発明の方法によると、
‐前記サイクロンプレヒータ3、3a及び/またはプレか焼反応炉4において、原料を予熱し、(その大部分について)二酸化炭素を除去し、
‐前記クリンカクーラ5において、回転炉から出たクリンカを冷却する。
【0019】
本発明の製造方法によると、
‐回転炉1によって生成される排ガス10とプレヒータ3、3aのガスとを分離して、それらの回転炉の排ガス10とプレヒータ3、3aのガスとが混ざらないようにし、
‐プレか焼反応炉4に、該反応炉4の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス9を供給し、
‐前記サイクロンプレヒータ3、3aから出たガス8の一部分8aを前記プレか焼反応炉内、さらに前記プレヒータ3、3a内でリサイクルして、前記プレヒータ内での材料の浮遊に必要な適切な流を得るようにし、一方では、二酸化炭素の豊富な前記サイクロンプレヒータ3、3aのガスの他の部分8bは、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させる。
【0020】
二酸化炭素の約四分の三がプレヒータ及びプレか焼反応炉内で生成されるので、本発明はこのように少なくとも設備のこれらの部分でCO2を濃縮させることからなる。
【0021】
したがって、回転炉1によって生成される排ガス10と、プレヒータ3、3a/反応炉4の組(ensemble)の排ガスとは分離される。ところが、従来のセメント工業設備では、回転炉の排ガスはプレヒータ/プレか焼炉の組に高温ガスを供給し、それにより、一方ではこの組に熱を供与しながら、また、材料の浮遊に必要なガス流をこの組内に作り出すこともできるようになっている。
【0022】
本発明による設備では、回転炉の排ガスはプレヒータ/プレか焼炉の組には供給されない。従来の設備と比べると、プレヒータ内のガス流は材料の浮遊を得るためにはもはや十分でなく、熱流は所望の予熱を得るためにはもはや十分ではないので、二重の機能不均衡が生じる。
【0023】
本発明の設備によると、この不均衡は、プレヒータから出たガス8の部分8aのリサイクルによって完全にまたは部分的に回復される。リサイクルされるガスの部分は、プレヒータ内での材料の浮遊に必要な適切な流を得ることができるようなものである。
【0024】
より正確には、一実施態様によると、プレヒータから出るガス8の部分8aをリサイクルして、処理される材料と材料の浮遊に必要な流との間の質量流量比が0.5kg/kg〜2kg/kgの範囲になるようにする。
【0025】
該ガスがプレか焼反応炉4の方へ直接送られるとき、反応炉4内の燃焼ガスは、酸素が豊富なガス9と、二酸化炭素が豊富なリサイクルされた部分8aとの混合物である。有利には、この混合物は、燃焼ガスの酸素濃度が高くなりすぎないようにし、そうすることで、反応炉4内で、その反応炉を劣化させるおそれのある大きすぎる炎が生じることがないようにしている。
【0026】
また、部分8aのこのリサイクルによって、プレヒータ3、3a及びプレか焼反応炉4によって生成される大量の熱をリサイクルすることができる。反応炉4内の燃料消費をさらに削減するために、本発明の方法は、プレか焼反応炉4内、さらに、プレヒータ3、3a内でリサイクルされるガスの部分8aを、熱交換器11を介して、特に回転炉1の排ガス10に含まれる熱及び/または前記クリンカクーラ5によって生成される高温ガスの一部分によって再加熱する過程を備えることができる。
【0027】
より正確には、一実施態様によると、
‐前記クリンカクーラ5内で生成される高温ガスの第一の部分60、すなわち二次流を回転炉1の方へ送り、特に回転炉1の一つまたは複数のバーナによって燃焼ガスとして使用し、
‐750℃以上の温度と定義される、前記クリンカクーラ5内で生成される高温ガスの第二の部分6、すなわち三次流を運び、前記熱交換器11まで第一の部分とは別々に運搬し、それによって、リサイクルされる排ガスの部分8aを再加熱し、
‐前記クリンカクーラ内で生成される高温ガスの第三の部分7、すなわち過剰流を抽出する。
【0028】
場合によっては、サイクロン12内で回転炉1の排ガス10が除塵(depoussierer)され、プレヒータ3、3a内、さらにプレか焼反応炉4内に、そのようにして回収された高温の材料が導入される。
【0029】
ここでは、図1の実施例、及び、特に、リサイクルされるガス8aを熱交換器11によって再加熱する方法が部分的に記載されている。
【0030】
この実施例では、クリンカクーラ5の冷却ガスは空気であり、したがって、窒素をかなりの割合で含む。
【0031】
クーラの空気は、三つの流に分割される。クーラ内で生成される高温ガスの一部分60、いわゆる二次流は、回転炉1の方へ送られ、回転炉内で燃焼空気として使用される。
【0032】
750℃以上の温度と定義される、クリンカクーラ内で生成される高温ガスの第二の部分6、いわゆる三次流は、第一の部分60とは別に、熱交換器11まで運ばれ、リサイクルされるガスの部分8aを再加熱する。
【0033】
さらに、温度が三次流の温度より低い第三の部分7は抽出され、力学的エネルギー、さらに電気の生成に使用できる。
【0034】
回転炉の排ガス10は、サイクロン12の方へ運ばれ、除塵される。サイクロン12で回収された粉塵(poussieres)はプレか焼反応炉4まで運ばれる。除塵された排ガスは熱交換器11を通過して、三次流6とともに、リサイクルされるガスの部分8aの再加熱に使用される。
【0035】
熱交換器11の後、三次流に由来するガス6a及び回転炉1に由来する排ガス10の残留熱は、また、力学的エネルギー、さらに、電気の生成に使用できる。
【0036】
この実施例では、熱交換器11によって、三つの流、すなわち、リサイクルされるガスの部分8a、三次流6及び排ガス10の間で熱を交換することができる。このように、熱交換器11とは、場合によっては複数の熱交換器モジュールで構成することができる広い意味での熱交換器を示す。一般的には、特にこの実施例では、ガス6a、10a、さらに詳細には、前記熱交換器11から出た、回転炉1の排ガス10及び/またはクリンカクーラによって発生する三次流に含まれる熱、同様に、過剰流7の熱、さらにリサイクルされない排ガスの他の部分8bを、エネルギー、特に電気の生成のために少なくとも部分的に使用する。
【0037】
図1のこの実施例では、また、プレか焼反応炉4の一つまたは複数のバーナに供給される固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/またはサイクロンプレヒータ3、3bの空気圧清掃(nettoyage pneumatique)流体として、二酸化炭素の豊富なガスの、特に直接リサイクルされない部分8bを少なくとも部分的に使用することができる。
【0038】
図1のこの実施例では、プレか焼反応炉4/サイクロンプレヒータ3、3aの組によって生成されるガスだけが、二酸化炭素の排出を制限する目的で処理されることがわかる。実際、窒素の豊富な回転炉の排ガス10は、そのような処理、特に隔離に適応させていない。
【0039】
図2に示した別の実施態様によると、また、二酸化炭素の豊富な回転炉1のガスを濃縮して、大気中へのCO2の排出を制限することのできる処理を受けさせる。さらに詳しく言えば、この実施態様によると、
‐回転炉1のバーナに、回転炉の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の、酸素の豊富なガス15を供給し、
‐クリンカクーラ5に冷却ガスを供給するために冷却された、回転炉1によって生成されたガスおよび前記クリンカクーラ5によって生成された高温ガスの一部分17をリサイクルし、一方、二酸化炭素の豊富なガスの他の部分16は、特に二酸化炭素の隔離に適応させる。
【0040】
場合によっては、図2の実施態様によると、回転炉のバーナに供給される固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/または、回転炉1及びクーラ5の入口チャンバの自動空気圧清掃装置に供給される流体として、プレか焼炉4/サイクロンプレヒータ3、3aの組、及び回転炉1/クリンカクーラ5の組の各々の二酸化炭素の豊富なガスの一部分8b、16を使用する。
【0041】
以下に、図2の実施例について、特に詳細に記載する。この実施例では、一方ではサイクロンプレヒータ3、3a/プレか焼反応炉4の組のガス、もう一方では回転炉1/クリンカクーラ5の組のガスが、互いに無関係にリサイクルされる。
【0042】
特に図2に示したこの実施例では、酸素の豊富なガス15が、回転炉1のバーナに供給され、回転炉の唯一の酸素源を構成する。
【0043】
クリンカクーラ5の冷却ガスは、リサイクルされるガスによって構成されており、そのリサイクルされるガスの一部分はクリンカクーラ5によって生成されるガスに由来し、別の部分は回転炉の排ガス10に由来するものである。
【0044】
したがって、冷却ガスは二酸化炭素が豊富である。クリンカクーラ5内で生成される高温ガスの一部分60、いわゆる二次流は、回転炉1の方へ送られる。より正確には、その高温ガスの部分60は酸素の豊富なガス15と混じり合い、そのようにして燃焼ガスの酸素濃度を制限し、それによって、回転炉のバーナで、該回転炉を劣化させるおそれのある大きすぎる炎が生じないようにする。
【0045】
750℃以上の温度と定義されており、同様に二酸化炭素の豊富な、クリンカクーラ5内で生成される高温ガスの第二の部分6、いわゆる三次流は、第一の部分とは別に熱交換器11の方へ運ばれ、リサイクルされるガスの部分8aを再加熱する。
【0046】
温度が低い、クリンカクーラ内で生成される高温ガスの第三の部分7は、回転炉の排ガス10の一部分とともにクリンカクーラ5内でリサイクルされるためのものである。
【0047】
より正確には、回転炉の排ガス10は、サイクロン12内で除塵される。サイクロン12で回収された高温の粉塵は、プレか焼反応炉4内及び/または回転炉1内へ送られる。除塵された排ガス10は熱交換器11を通過して、プレヒータ3、3aのリサイクルされるガスの部分8aを再加熱する。
【0048】
同様に、750℃以上の温度と定義された、クリンカクーラ5内で生成されるガスの前記の部分6、いわゆる三次流は、熱交換器11まで運ばれ、リサイクルされるガスの部分8aを再加熱する。
【0049】
熱交換器11から出る排気ガス、すなわち、排ガス10に由来するガス10a及び三次流に由来するガス6aは、そのとき、熱交換器14の方へ運ばれ、冷却される。これらのガスの一部分16はリサイクルされず、他の部分はクリンカクーラ5の方へ送られ、クリンカクーラに冷却ガスが供給される。
【0050】
また、前記の過剰流7は、別の熱交換器14a内で冷却され、同様にクリンカクーラ5の冷却ガスとして使用される。
【0051】
場合によっては、回転炉1のバーナに供給される固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/または、回転炉1及びクリンカクーラ5の入口チャンバの自動空気圧清掃装置に供給される流体として、一方では、プレか焼反応炉4/サイクロンプレヒータ3、3aの組、もう一方では、クリンカクーラ5/回転炉1の組に各々由来する、特にリサイクルされない二酸化炭素の豊富なガスの一部分8b/16を使用することができる。
【0052】
一般的には、酸素が豊富で、プレか焼反応炉4に供給されるガス9の窒素含有量は5%未満であり得る。場合によっては、酸素が豊富で、特に図2の実施例によると、回転炉1のバーナに供給されるガス15の窒素含有量も同様に5%未満であり得る。
【0053】
本発明は、また、そのようなセメントクリンカ製造設備に関するものでもある。この設備は、
‐原料2を予熱するためのサイクロンプレヒータ3、3a
‐サイクロンプレヒータ3、3aに熱を供与する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉4、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉1、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉1の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ5、
を備える。
【0054】
本発明によると、前記設備は、
‐回転炉の排ガス10用およびプレヒータ3、3aのガス用の分離された各導管であって、それらの排ガス及びガスが混ざらないようにする導管、
‐プレか焼反応炉4に供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源9、
‐前記サイクロンプレヒータ3、3aから出るガス8の一部分8aをプレか焼反応炉内、さらに、前記プレヒータ3、3a内でリサイクルするための導管80、
を備える。特に、本発明による方法を実施することのできる、図1及び図2に先に記載した設備に関するものである。
【0055】
より一般的には、熱交換器11は、回転炉の排ガス10及びクリンカクーラ5によって生成される高温ガスの少なくとも一部分と協働して、サイクロンプレヒータ3、3aから出たガス8のリサイクルされる部分8aを再加熱することができる。
【0056】
回転炉1の排ガス10の除塵をするために、サイクロン12を備えることができる。場合によっては、導管120により、サイクロン12によって回収した粉塵をプレか焼反応炉4内、さらに、プレヒータ3、3a内に導入することができる。
【0057】
場合によっては、特に図2の実施例によると、本発明の設備は、さらに、
‐回転炉1のバーナに供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源15、
‐回転炉1の排ガス10及びクリンカクーラ5によって生成される高温ガスの一部分を前記クリンカクーラ5内でリサイクルできるようにする導管
を備えることができ、一連の熱交換器11、14、14aにより、リサイクルされるガスを冷却して、前記クリンカクーラ5に冷却ガスを供給することができる。
【0058】
ここで、従来技術の設備の性能、続いて、前述の図1に示した設備の期待される性能、さらに前述の図2に示した設備の性能について記載する。
【0059】
従来技術
ここで考察する従来技術の設備は、現在使用されている多数の装置の能力の代表である平均的なサイズのクリンカ製造装置であり、1時間当たりの原料337トンの原料供給量から一日当たり5000トンのクリンカを生産するものである。
【0060】
従来技術のこの設備は、62.8%がプレか焼反応炉の位置に導入される燃料の形態で供給されて、生産するクリンカ1トンにつき3000MJを消費する。燃料が石油コークスであり、その真発熱量が34300kJ/kgであり、窒素含有量が2%である場合を考察する。
【0061】
クリンカクーラは、とりわけ、プレか焼反応炉の燃焼に供給される890℃の三次空気117000Nm3/時及び245℃の排気210000Nm3/時を生成する。サイクロンプレヒータの排ガスは、温度320℃で流量286200Nm3/時である。供給される原料とプレヒータの排ガスとの間の質量流量比は0.82である。
【0062】
生成され、プレヒータから出る排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素3.6%
‐水7.1%
‐二酸化炭素29.6%
‐窒素59.7%
【0063】
回転炉の排ガスの流量は86200Nm3/時、温度は1160℃である。その排ガスは、サイクロンプレヒータで使用される。回転炉で生成される排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素3.2%
‐水5.9%
‐二酸化炭素21.5%
‐窒素69.4%
【0064】
これらの条件では、二酸化炭素の総量の78.1%はプレヒータ内で生成され、21.9%だけが回転炉内で生成される。
【0065】
本発明による実施例1
ここで考察する設備は従来技術の設備に匹敵するが、今回は、本発明による、図1に示したプレヒータ内での二酸化炭素の濃縮を実施する。
【0066】
製造されるクリンカ1トンにつき1972MJとして、プレか焼反応炉に燃料を供給する。回転炉の作動は全体として従来技術に比較して変更されておらず、クリンカ1トンにつき1117MJを消費する。プレか焼炉の燃焼に必要な酸素量は、27650Nm3/時であり、純酸素の形態で供給される。
【0067】
このように、プレヒータで325℃の排ガス235600Nm3/時が生成され、そのうち、150800Nm3/時がリサイクルされ、84800Nm3/時が抽出されて、その二酸化炭素が処理される。供給される原料とプレヒータの排ガスとの間の質量流量比は、従来技術の例と同様に0.82である。
【0068】
生成され、プレヒータから出るこれらの排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素5.1%
‐水15.8%
‐二酸化炭素78.85%
‐窒素0.24%
‐乾燥した排ガスにおけるCO293.6%
【0069】
排ガスによって放出されるCO2の質量流量は36.4トン/時であり、プレヒータから抽出された排ガスから隔離され得るCO2の質量流量は131.34トン/時であり、すなわち、全体の78.2%である。
【0070】
回転炉の排ガスは、サイクロンを通過して運ばれ、そのサイクロンで、1160℃の含まれている粉塵の大部分が取り除かれ、その粉塵はプレか焼反応炉内に再度導入される。
【0071】
クーラから810℃の三次空気145800Nm3/時が取り出され、回転炉の排ガスとともに熱交換器を通過して運ばれ、350℃まで冷却されながら、それらのエネルギーがプレヒータのリサイクルされる排ガスに伝達される。そのようにして、そのプレヒータの前記排ガスは、温度が943℃に達した後、プレか焼炉に導入される。
【0072】
本発明による実施例2
ここで考察する設備は、前述の設備であり、図2に示しているが、本発明によって、さらに回転炉内で排ガスのリサイクルを実施し、それによって、排ガスの二酸化炭素を濃縮する。
【0073】
プレヒータの作動は先の実施例の作動と同様であり、酸素の供給と、CO2の極めて豊富な排ガスのリサイクルが行われる。
【0074】
今回は、一方では回転炉の排ガス、もう一方ではクリンカクーラ内で生成される高温ガスであるガスを様々な熱交換器を介して運ぶことにより、これらのガスに含まれる熱の最大部分を交換し、これらのガスの温度を135℃まで低下させる。そのようにして冷却したこれらのガスを使用してクリンカクーラ内での送風を実施する。
【0075】
回転炉で、燃料の必要量は、製造されるクリンカ1トンにつき1117MJであり、燃料の燃焼は純酸素を使用して確実に行われる。そのようにして、排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素6.5%
‐水16.2%
‐二酸化炭素77.08%
‐窒素0.19%
‐乾燥した排ガスにおけるCO292.0%
【0076】
これらの排ガスを使用し、リサイクルすることで、下記のように作動するようにする。クリンカクーラ内に、温度が135℃に低下した排ガス306900Nm3/時を送風する。1180℃の極めて高温のガス53500Nm3/時が生成され、回転炉の方へ送られる。同様に、810℃の高温ガス112900Nm3/時が生成され、その熱の一部をプレヒータのリサイクルされる排ガスを再加熱するために使用する。そして最後に、262℃のそれほど高温でないガス140500Nm3/時が生成される。
【0077】
流量77600Nm3/時で、温度1180℃の回転炉の排ガスを使用して、プレヒータのリサイクルされる排ガスを再加熱する。排ガス24100Nm3/時を抽出して、そこから二酸化炭素を取り出すと、36.4t/時である。残りは、クリンカクーラで使用するために、350℃まで冷却する。クリンカは、クーラ内で温度205℃まで冷却される。燃焼のため、回転炉に純酸素14700Nm3/時を供給する。
【0078】
そのようにして、92%以下に濃縮された排ガスの形態で設備の二酸化炭素の総量を放出し、その排ガスは隔離処理に適している。
【0079】
以下の特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲を逸脱することなく、当業者がその他の実施態様を企図することが可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0080】
1 回転炉
2 原料
3、3a サイクロンプレヒータ
4 プレか焼反応炉
5 クリンカクーラ
11、14、14a 熱交換器
12 サイクロン
80、120 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐原料(2)を予熱するためのサイクロンプレヒータ(3、3a)、
‐サイクロンプレヒータ(3、3a)に熱を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉(4)、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉(1)、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉(1)の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ(5)、
を備える設備におけるセメントクリンカの製造方法であって、
‐前記サイクロンプレヒータ(3、3a)及び/または前記プレか焼反応炉(4)において、原料を予熱し、その二酸化炭素を除去し、
‐前記クリンカクーラ(5)において、回転炉から出たクリンカを冷却し、
‐回転炉(1)によって生成される排ガス(10)とプレヒータ(3、3a)のガスとを分離して、前記排ガス(10)と前記プレヒータのガスとが混ざらないようにし、
‐プレか焼反応炉(4)に、前記反応炉(4)の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス(9)を供給し、
‐前記サイクロンプレヒータ(3、3a)から出たガス(8)の一部分(8a)を前記プレか焼反応炉(4)内、さらに前記サイクロンプレヒータ(3、3a)内でリサイクルして、前記プレヒータ内での材料の浮遊に必要な適切な流を得るようにし、一方では、二酸化炭素が豊富な前記サイクロンプレヒータ(3、3a)のガスの他の部分(8b)は、例えば、隔離などのような、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サイクロンプレヒータ(3、3a)から出たガス(8)の前記部分(8a)をリサイクルして、処理される材料と材料の浮遊に必要な流との間の質量流量比が0.5kg/kg〜2kg/kgの範囲になるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プレか焼反応炉(4)内、さらに、プレヒータ(3、3a)内でリサイクルされるガスの部分(8a)を、熱交換器(11)を介して、前記回転炉(1)の排ガス(10)に含まれる熱及び/または前記クリンカクーラ(5)によって生成される高温ガスの一部分によって再加熱することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
‐前記クリンカクーラ(5)内で生成される高温ガスの第一の部分(60)、すなわち二次流を回転炉(1)へ送り、
‐750℃以上の温度と定義される前記クリンカクーラ内で生成される高温ガスの第二の部分(6)、すなわち三次流を運び、前記熱交換器(11)まで第一の部分とは別々に運搬し、それによって、リサイクルされるガスの部分(8a)を再加熱し、
‐前記クリンカクーラ内で生成される高温ガスの第三の部分(7)、すなわち過剰流を抽出することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エネルギー、特に電気の生成のために、ガス(6a、10a)、さらに詳細には、前記熱交換器(11)から出た、回転炉の排ガス及び/またはクーラの流に含まれる熱、同様に、過剰流(7)の熱、さらにリサイクルされない排ガスの他の部分(8b)を少なくとも部分的に使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記回転炉の排ガス(10)がサイクロン(12)内で除塵され、プレヒータ(3、3a)内、さらにプレか焼反応炉(4)内に、このようにして回収された原料(13)が導入されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
プレか焼反応炉(4)のバーナに供給される固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/またはサイクロンプレヒータ(3、3a)の空気圧清掃流体として、二酸化炭素の豊富なガスの、リサイクルされない前記部分(8b)を少なくとも部分的に使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
‐回転炉(1)のバーナに、回転炉の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の、酸素の豊富なガス(15)を供給し、
‐クリンカクーラ(5)に冷却ガスを供給するために冷却された、回転炉(1)によって生成されたガスおよび前記クーラ(5)によって生成された高温ガスの一部分(17)をリサイクルし、一方、二酸化炭素の豊富なガスの他の部分(16)は、特に隔離などの、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
回転炉のバーナに供給される固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/または、回転炉(1)及びクーラ(5)の入口チャンバの自動空気圧清掃装置に供給される流体として、二酸化炭素の豊富なガスの一部分(8b、16)を使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記の酸素の豊富なガス(9または15)の窒素含有量が、5%未満であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
特に請求項1に記載の方法を実施するためのセメントクリンカの製造設備であって、
‐原料(2)を予熱するためのサイクロンプレヒータ(3、3a)、
‐サイクロンプレヒータ(3、3a)に熱を供与する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉(4)、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉(1)、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉(1)の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ(5)、
を備える製造設備において、
‐回転炉(1)の排ガス(10)用およびプレヒータ(3、3a)のガス用の分離された各導管であって、前記排ガス及び前記ガスが混ざらないようにする導管、
‐プレか焼反応炉(4)に供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源(9)、
‐前記サイクロンプレヒータ(3、3a)から出るガス(8)の一部分(8a)をプレか焼反応炉(4)内、さらに、前記プレヒータ(3、3a)内でリサイクルするための導管(80)、
を備えることを特徴とする設備。
【請求項12】
熱交換器(11)が、回転炉(1)の排ガス(10)及び前記クリンカクーラ(5)によって生成される高温ガスの少なくとも一部分と協働して、サイクロンプレヒータ(3、3a)から出たガス(8)のリサイクルされる部分(8a)を再加熱することを特徴とする、請求項11に記載の設備。
【請求項13】
サイクロン(12)が、前記回転炉(1)の排ガス(10)の除塵をするために備えられることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の設備。
【請求項14】
導管(120)により、サイクロン(12)によって回収した粉塵をプレか焼反応炉(4)内、さらに、プレヒータ(3、3a)内に導入することができること特徴とする、請求項13に記載の設備。
【請求項15】
‐回転炉(1)のバーナに供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源(15)、
‐回転炉(1)の排ガス(10)及びクリンカクーラ(5)によって生成される高温ガスの一部分を前記クリンカクーラ(5)内でリサイクルできるようにする導管
をさらに備え、一連の熱交換器(11、14、14a)により、リサイクルされるガスを冷却して、前記クリンカクーラ(5)に冷却ガスを供給することができることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一つに記載の設備。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−529845(P2011−529845A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520541(P2011−520541)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000884
【国際公開番号】WO2010/012881
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(509140467)
【氏名又は名称原語表記】FIVES FCB
【Fターム(参考)】