説明

設置面段差吸収型の家具装着脚

【課題】家具類製品を段差のある設置面へ設置するときに段差を吸収して高さ調節を要しない家具の脚の装着部位に装着する組立て容易な家具装着脚を供する。
【解決手段】起伏や不整による段差の有る設置面に非固定に設置される家具類の脚下端に装着される家具装着脚が、家具脚の装着部に装着される結合子11と、同結合子11を包むカバー要素12の内部に設けたピストン子14、ばね要素15から成る弾性体15′と、多点接触部位16a、16bを有した摩擦環16とを有する段差吸収機構とを圧入組立てで構成し、設置面への設置足部13aを有したシリンダ要素13をも圧入で組立てして有し、ピストン子14とシリンダ要素13との相対移動可能な構成から、段差の有る設置面で相対移動の減速化を図りつつ設置面の段差を吸収して同設置面に家具を安定設置可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のテーブル、机類、椅子類等の家具製品における脚の下端に装着され、これらの家具製品が例えば、床面等の家具設置面ないし載置面に起伏部分や施工不整等による段差等が生じている場所や領域に移動可能に、つまり非固定状に設置されて使用されるとき、その段差(多くは数ミリメートル程度の段差)に起因して家具製品がぐらつく等の不安定現象を解消して安定状態でかつ心地よく家具利用を可能にするための設置面段差吸収型の家具装着脚に関する。
【背景技術】
【0002】
家具製品を床面に対して定位置に固定配置して使用する場合とは反対に必要に応じて移動可能な状態で非固定的に設置して使用する際に、例えばコンクリートの打ち放し面のようなフラット処理が十分に施されていない床面のアンジュレーション、つまり起伏状態を吸収して安定的に家具製品の設置を可能にするように、家具製品の脚端に調節足を装着して設置面の不整状態や起伏状態による段差を調節足のねじ調節で簡便に設置不安定を除去するようにしたものは、例えば、特許文献1に開示され、かつ実用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−218406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近時の飲食店舗等の床面等には、コンクリート床面がそのまま机、テーブル、椅子等の家具製品の設置面に利用され、そのような設置面に直に非固定状態で家具製品が設置され、その際に、定位置に固定状態で設置されれば、不安定設置の問題発生はないが、家具製品が店舗内等で実用される場合には、しばしば、家具製品の移動が行なわれ、その都度、設置面の状態の僅かな不整差や起伏による段差が、家具類の安定設置を阻害してぐらつきの要因となり、利用者の不快感や、机やテーブルに載せられた例えば、コーヒー等の液体が容器からこぼれる等の不都合も発生し、店舗経営者側からは、その都度、上述した従来のねじ調節による調節足では、家具製品の移動の都度、調節する等の処置を要することは、実用度に欠けるとして改善手段の開発、提供が要望されていた。
【0005】
更に、上記の種類の店舗等では、通路の確保等から、設置面への家具製品の固定設置が不都合な場合もあり、利用者に移動の自由を与える場合もある。そのようなときには、家具製品の移動に応じて速やかに設置面の段差に適応し、ぐらつきの発生を解消し得るように改善された設置面段差吸収型の家具装着脚の提供が要望されている。このような要望に応えるべく、本願出願人は、既に起伏や不整による段差を有した設置面に非固定に設置される家具に装着される家具装着脚において、家具脚の装着部に装着される脚主部と、前記脚主部の下端に設けられて設置面への設置部分を構成する設置脚部とを有し、前記設置脚部は、弾性体を内包して上下の相対移動が可能な上筐部材、下筐部材を具備し、該上筐部材を脚主部に結合すると共に該下筐を設置面への足部とし、上下筐間に前記相対移動の抑制手段を内装して該相対移動の減速化を図り、以って設置面の段差を吸収しながら該設置面に家具を安定設置可能する設置面段差吸収型の家具装着脚を提案し、製品化に向けて鋭意、設計、試作を重ねた。その結果、なお製品の加工、組み立ての容易化、製品の耐用性能の向上、使用時の操作性の向上等の多面的な改善を達成し得ることが発見された。
【0006】
よって、本発明は、上述した発見に基づいて加工、組み立てが容易であると共に使用時の耐用性能、操作性の向上を達成した家具装着脚を提供することを解決の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の解決に当たって、起伏や不整による段差を有した設置面へ非固定に家具を安定設置可能にするための家具装着脚において、
家具脚が有する装着部に結合される先端結合部とその他端側の基端部とを有する結合子と、
該結合子とピストン子とを包持するとともに該ピストン子との間で前記結合子の前記基端部を挟持することにより三者一体化されたカバー要素と、
前記カバー要素のピストン子を相対変位可能に受承しつつ該カバー要素に嵌着されて設置面への足部として設けられるシリンダ要素と、
前記カバー要素の内部に内挿され、前記ピストン子と前記シリンダ要素との間に装填される弾性体と、
前記ピストン子に嵌着されるとともに前記シリンダ要素に摺接状態に設けられた摩擦環と、を具備して構成され、前記家具脚を介して掛けられる負荷に対応したピストン子とシリンダ要素との相対変位によって前記設置面の段差を吸収して家具を設置可能な設置面段差吸収型の家具装着脚を提供するものである。
また、本発明は、前記弾性体をコイルばねで形成するとともに前記弾性環を前記コイルばねのバネ剛さに準じた摺接抵抗力を発揮可能な環状リングによって構成した設置面段差吸収型の家具装着脚を提供するものである。
【0008】
更に、本発明は、前記環状リングは、前記シリンダ要素との摺接部を有すると共に該摺接部は摺接、変位方向に分離した複数の環状摺接部を備えている設置面段差吸収型の家具装着脚を提供するものである。
本発明は、また、前記シリンダ要素に対して前記カバー要素が相対変位可能であるとともに該カバー要素の内周域と、該シリンダ要素の外周域とに該相対変位方向における前記両要素の分離を阻止する外れ止め係合部を具備した設置面段差吸収型の家具装着脚を提供するものである。
更に、本発明は、前記シリンダ要素に対して前記カバー要素が相対変位可能であるとともに該カバー要素の内周域と、該シリンダ要素の外周域とに該相対変位方向における前記両要素の分離を阻止する外れ止め係合部を具備した設置面段差吸収型の家具装着脚を提供するものである。
また、本発明は、前記ピストン子が、前記シリンダ要素に対する摺接変位時の空気抜き孔を有する設置面段差吸収型の家具装着脚を提供するものである。
他方、本発明は、家具脚に装着されて家具設置面における波打ち等の段差を吸収して家具を安定設置せしめ得る設置面段差吸収型の家具装着脚において、
前記家具脚の端部に設けた装着部に装着、結合される結合脚を包持すると共にキャップ状に形成されたカバー要素と、該キャップ状カバー要素の周壁部に所定量の上下変位が可能に係合し、下底面を前記家具設置面に対する設置面とする中空シリンダ状の足要素と、前記カバー要素と前記足要素との間の内部空間内に具備され、前記カバー要素に対して前記足要素を前記所定量の上下範囲内において対向する弾発力と摩擦力とのバランス下で変位保持させることにより前記段差吸収を遂行可能にする段差吸収機構と、を具備して構成されたことを特徴とする設置面段差吸収型の家具装着脚を提供せんとするものである。
【発明の効果】
【0009】
上述した構成を有した設置面段差吸収型の家具装着脚は、家具製品の脚部位の下端に装着され、設置面に家具製品と共に設置されると、家具製品の重量や家具製品を介して人によって掛けられる負荷を上方から受けてカバー要素とシリンダ要素との間に内包された弾性体が上下方向に収縮自在状態で定着され、このとき、設置面に高位と低位とによる段差が存在する場合には、家具製品の複数の脚部位同志の間で高位設置面に設置された脚部位に対して低位設置面に設置された脚部位では、設置面との間に隙間を残存させることなく、弾性体の収縮作用と摩擦環の摺接摩擦力との均衡によって上方からの家具製品重量を受けた夫々の脚部位は、高位、低位間の差による段差を吸収し、全ての脚部位が家具装着脚を介して設置面に接した状態で定置されることとなり、安定に設置面に設置される。そして、このような家具製品に、例えば、人が座ったり、寄り掛かったりして荷重を付加した場合にも各脚部位においてその荷重付加分だけ弾性体が更に収縮しながら、摩擦環の摩擦力作用下で、安定を維持し、ぐらつきの発生は防止される。しかもこのときに本発明では、カバー要素とシリンダ要素とが弾性体の収縮時に相対移動を行うときに、内装した摩擦環が相対移動の抑制作用を呈し、該相対移動の減速化が図られるから、相対移動がゆっくりと遂行され、急激な相対移動が阻止される。この点は、例えば、人が寄り掛かるテーブルにおいて、急に人が離れたときに荷重の付加が解消されたことから、弾性体への圧縮力が解放されことになり、カバー要素とシリンダ要素との間で元の状態に復帰する相対的な伸張移動が発生するが、この伸張移動も摩擦環による相対移動の抑制作用でゆっくりと遂行されるから、家具が跳ね上がり動作するようなことは防止される。
従って、例えば、テーブル上に液体入り容器が置かれていても、急激な伸張移動に起因して液が容器からこぼれ出てテーブルから床面等に向けて流れる等の不都合は、未然に防止され、テーブル等の利用者にも全く不快感を与えることがないと言う作用効果を奏する。
【0010】
なお、摩擦環は、環状弾性リングによって構成すると同時に複数の摺接部を有する構造としたことから、弾性リング自体の潰れ変形を来たすことなく、複数摺接部の摩擦抵抗を増強することが可能となり、この潰れ変形を低減することが、摩擦環の耐用性能を向上させ、しかも必要とする摩擦力を確保し得るから家具脚自体の耐用寿命を長期化させ得るという効果を奏するのである。
加えて、本発明によれば、結合子と、ピストン子とを包持するカバー要素と、該カバー要素に嵌着されて設置面への足部として設けられるシリンダ要素と、カバー要素の内部に内挿される弾性体と、ピストン子に嵌着され、前記シリンダ要素に摺接する摩擦環とを相互に組み立て構成して設置面段差吸収型の家具装着脚を製造、加工する過程において、それぞれの要素や部品を接着、半田付け、溶接等の固定手段を用いることなく、手操作で簡単に組み立て得る構成としているから、加工の簡素化による製造コストの低減を図ることができる。しかも、かかる単純な手操作で組み立て得ることは、既存接着剤の除去、半田付けの取り外し、溶接の分離等の厄介な作業を伴うことがないから、例えば、設置面への足として機能するシリンダ要素が、破損した場合や、摩擦環が耐用寿命を経過して取替えを要するような際に、分解により要素や部品の交換を行なうことができる、或いは家具装着脚の大小寸法規模、家具製品の重量規模、その他使用条件等に呼応して結合子を成すねじ要素の変更、カバー要素の変更等を簡単に対応することができると言う効果を奏することができる。
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施形態にのみ限定されるものではなく、請求項1〜6に記載の発明の範囲を逸脱することなく、種々の改変、変更等が可能であることを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1(イ)及び(ロ)は、本発明の実施形態における設置面段差吸収型の家具装着脚の組み立て状態における全体的構成を示した斜視図であり、(イ)は組み立て完了後の状態を示し、(ロ)は各構成要素を示すために分解状態における同家具装着脚を示している。
【0013】
図1(イ)に明示するように、家具装着脚10は、同図に図示されないテーブル、机、OAチェアー等の椅子類を始めとする家具製品の脚部位、つまり家具脚の下端に設けられた装着部に装着されて使用されるものであり、同装着脚10は、ねじ要素から成る結合子11と、同結合子11の下端を内部に包み込んで保持する空胴状の筒体に形成されたカバー要素12と、そのカバー要素12の空胴内部に装填されると共に最下端面を床面への設置面とした足部13aを形成するシリンダ要素13とを外部露出要素として具備している。
【0014】
ここで、図1(ロ)を参照すると、上述した家具装着脚10を更に分解して図示されており、上記の結合子11、カバー要素12、足部13aを有したシリンダ要素13がそれぞれの構成要素として備えられていると共に結合子11は、フランジ状の下端11a’ を有する雄ねじ要素であり、カバー要素12の中心穴12aを貫通して上方へ突出するように形成され、又、カバー要素12の下方からその空胴内部へ装填されたシリンダ要素13は、同じく上方に開口した空胴体形状を有する筒体要素として形成されていることが理解できる。
【0015】
また、家具装着脚1は、カバー要素12に空胴内部に嵌め込み状態で一体的に保持され、上記シリンダ要素13に対向した筒部14aと皿形部14bとを有したピストン子14と、このピストン子14の中心部に形成された後述のばね受け胴14c(図1(ロ)に現れていない)及び同じくシリンダ要素13の中心部に形成されたばね受け胴13bとの間に装填された弾性体15′から成り、ピストン子14、シリンダ要素13を相互に離間する方向に付勢するつる巻き形状のばね要素15と、ピストン子14の筒部の外周に形成された環状溝14dの底部に定着されて嵌着された後述する特殊断面を有するOリング形状をした摩擦環16と、をさらに具備して構成されている。
【0016】
ここで、図2を参照すると、同図は、図1(イ)のA―A線に沿う拡大断面図であり、カバー要素12とシリンダ要素13との間で上述した結合子11、ピストン子14、弾性体15′(ばね要素15)、摩擦環16等の組み立て状態が示されている。この図2から明らかなように、カバー要素12は空胴内部に結合子11の下端11a’ を受承する円凹状の小座部12b、ピストン子14の皿部14bを受ける同じく円凹状の大座部12c、大座部12cの縁部分に形成されて突き出し部12d、この突き出し部12dの下方に形成された垂直壁12e、該垂直壁12eの下端に突出したストップ壁12f等を備え、ピストン子14がカバー要素12の大座部12cに着座されると、同ピストン子14とカバー要素12との間に結合子11を挟むように固定、保持し、これによって結合子11がカバー要素12の内部空胴内に包持、固定され、このとき、そのねじ部分11bがカバー要素12の中心穴12aから上方へ突出し、家具の装着部のねじ込まれて取付けられるものである。
【0017】
他方、ピストン子14は、組み立て時には、カバー要素12の下方から装入され、上方へ押圧されることで突き出し部12dの傾斜壁を経てカバー要素12を外方へ押し広げながら上記の大座部12cに着座し、突き出し部12dによって落下が防止されならがカバー要素12の内部に結合子11を固定しながら定着されて組み立てられるものである。このピストン子14は予め上記の特殊断面のO
リング形状を有した摩擦環16をその環状溝14d内に装着した状態で組み立てられる。
【0018】
結合子11、ピストン子14をカバー要素12の内部に組み立て後に、上述したばね要素15から成る弾性体15′がピストン子14のばね受け胴14cと筒部14aの内周面との間に装入され、その上端をばね受け胴14cの底面に当接させる。
【0019】
次に、シリンダ要素13がカバー要素12の下方から装填される。このとき、シリンダ要素13のばね受け胴13bは、上記の弾性体15′の下端を受けるように装入され、その弾性体15′の下端はばね受け胴13bに係合し、かつばね受け胴13bの底面を介して若しくはばね受け胴13bを介して該シリンダ要素13に下方への付勢力を付与することとなる。ここで、シリンダ要素13は下面が既述のように、足要素を成すとともに、ばね受け胴13b円筒の外側に略同心状に形成された外壁13cがシリンダ機能部として設けられ、内周面13dを円滑な垂直な摺動面として形成されている。この内周面13dはピストン子14に嵌着された摩擦環16の外周面と摺接して摩擦力下で係合している。シリンダ要素13は更にその外壁13cの上端に環状に延設され、外向きに突出してストッパ部13eを有し、シリンダ要素13をカバー要素12に圧力下で装入して組み立てる段階では、このストッパ部13eがカバー要素12の下端のストップ壁12fの内側斜面を介して該カバー要素12を外方へ広げるように強制的に嵌合され、ストッパ部13eとストップ壁12fとの係合によって圧入組立て後にはシリンダ要素13がカバー要素12から離脱することはないように形成されている。しかしながら、シリンダ要素13はカバー要素12との間で相互に上下方向に相対変位可能に成っており、そのとき、ピストン子14に嵌着された摩擦環16がシリンダ要素13の内周面13dを摩擦力下で摺動する構成に成っている。
【0020】
つまり、シリンダ要素13を床面上に置いて、組み立によって一体化された結合子11、カバー要素12、ピストン子14の三者を上方から下方へ向けての負荷力、例えば、人による下方への押し下げ力を掛けると、三者はシリンダ要素13に対して相対的に下方へ移動し、このとき、内部ではピストン子14に嵌着された摩擦環16がシリンダ要素13の内周面13dを摩擦力に抗して摺動し、またばね要素15から成る弾性体15′は収縮され内部に付勢力を蓄積するように成っている。この弾性多15′の蓄積する付勢力は、上述して負荷力と対抗して結合子11、カバー要素12、ピストン子14の三者をシリンダ要素13から離間する方向へと戻すように作用し、負荷力が解除されると、摩擦環16の摩擦力に抗して上記三者を押し上げるように、或いはシリンダ要素13を下方へ押し下げるように働く。
【0021】
なお、組み立によって一体化された結合子11、カバー要素12、ピストン子14の三者とシリンダ要素13との相対変位距離”h”は、本発明の基本思想である不整床面の数ミリ程度の段差を吸収すべく、通常は数ミリ程度(実際には2〜8ミリ程度)に適宜に設定され、かつそれだけの相対変位距離”h”を有すれば、十分に段差吸収機能を奏することができる。
【0022】
更に、相対変位移動時には、シリンダ要素13とピストン子14を始めとするカバー要素12等の一体部分との変位動作が、カバー要素12の空胴内部で行われ、かつ摩擦環16がシリンダ要素13の内周面13dに摺接していることからピストン子14の内部が密閉化している。従って、ピストン子14には予め、空気孔14eを適所に適当数だけ設けておけば、相対変位時にピストン子14の内部の空気は圧縮による圧力上昇を起こすことなく空気孔1eから外部へ解放されるので、相対変位移動を円滑化させることができる。
【0023】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る段差吸収型の家具装着脚10における各要素の構成素材を探ると、ねじ要素から成る結合子11は、機械的強度を確保すべく、通常は鉄を始めとする金属材料によって加工されるが、用途上から或いは製造経費等からの必要性に応じて硬質プラスチック材料等によって成型加工によって形成しても良いことは言うまでもない。また、カバー要素12は、周知のポリアミド樹脂等の成形性に富む樹脂材料を用いて成型加工法によれば、組立て時の圧入組立てにも好都合であるが、ステンレス材料等の塑性加工によって形成し、組立てにおいては、ステンレス製カバー要素12の外側から絞り加工法のように外圧力によってピストン子14やシリンダ要素13を内部に封入する方法で組立てる方法を採用することも可能である。
他方、シリンダ要素13やピストン子14は、強度、耐用性を有し、かつ前者のシリンダ要素13では、摺動性に優れたポリアセタール(POM)、後者のピストン14では寸法安定性や硬度の高いポリブチレンテレフタレート(PBT)、等の合成樹脂材が利用できるが、これらの樹脂材料に限定されることなく、例えば、高密度ポリエチレン、フッ素樹脂材(ETFE)、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール(AS樹脂)等の種々の合成樹脂材料で代用利用することも可能であり、これら合成樹脂材料を成型加工法で加工、成形することによって得られる。
また、ばね要素15(弾性体15′)は、金属ばね材料で形成され、設計上からの大きさ寸法、つまり内外径や素材径、ばね剛さ等を適宜、指定することによって市販にて入手することが可能である。
【0024】
ここで、特殊断面のOリング形状からなる摩擦環16は、図4に拡大図示するように、外周に二つの環状山形部分16a、16bを形成して断面を英字のB形とする等で、摺動時にそれぞれの山の頂点による二点(複数点)接触を実現して、フリクション効果の増大を図りつつ、周知の単純円環形のOリング要素等と異なって形状の潰れによるフリクション効果を得るのではなく、シリンダ要素13の内周面13dに対して垂直な方向に弾性収縮して反力によるフリクションパワーを発揮することから、シリンダ要素13との摩擦摺動にも関わらず、耐久性に優れることを確認して採用した本発明の一つの特徴的な構成要素を成すもので、素材としては、ニトリルゴム、プロピレンゴム、フッ素ゴム等を用いて加工されている。なお、図示例は、二つの山形部分16a、16bを形成したが、更に各山形部分16a、16bの頂部に凹所を設ける等して複数点接触効果を倍加させることも可能であり、本発明は、それらの実施形態も図示例と同様に技術思想の範囲内に包含するものとする。
【0025】
さて、図3(イ)、(ロ)を参照すると、同図は、家具装着脚10が家具脚の装着部に取り付けられる前の製品状態において、図3(イ)がカバー要素12をはじめとする結合子11、ピストン子14等の一体化部分がシリンダ要素13に対して上下方向に相対変位をしていない状態を示し、図3(ロ)は、相対変位によって上下方向に伸縮した状態を示している。
【0026】
ここで、注目すべき点は、後者の相対変位をした状態は、家具類の複数の脚の夫々の装着部に各一個ずつ取付けられて段差を有した床面等の設置面へ家具が載置されたとき、既述した相対変位代”h”によって家具脚を介して上方から押し付力による負荷力を付与すると、段差により高くなっている設置面に置かれた本実施形態の家具装着脚10は、段差により低くなっている設置面に置かれた同じ本実施形態の家具装着脚10よりも相対変位で図3(ロ)に示すような変位収縮により段差分を吸収し、内部の摩擦環16とばね要素15から成る弾性体15′との力関係で均衡した状態で停止し、テーブルや机、椅子等の家具類を段差の有る床面上でもぐらぐらしない安定した状態で定着させる作用をするのである。つまり、摩擦環16が発揮するフリクションによって弾性体15′のばね圧縮反力を抑止してピストン子14とシリンダ要素13とが段差分だけ相対変位した状態で停止することで、あたかも家具類は、段差の無い平滑な床面等の設置面へ設置された場合と同じ設置状態を確保するのである。
【0027】
つまり、本実施形態の家具装着脚10は、弾性体15′(ばね要素15)の弾性力の作用下で伸縮自在に形成され、かつフリクション効果を奏する多点接触部位を有した摩擦環16により弾性体15′との力の均衡作用で設置面の段差を吸収する段差吸収機構を形成しながら該設置面に家具製品を安定設置可能とする設置面段差吸収型の家具装着脚を構成し、しかも相対変位を所定位置で力の均衡によって停動させるように摩擦環16が機能するから、シリンダ要素13の結合子11、ピストン子14、カバー要素12の一体化部分に対するシリンダ要素13の内部に向う相対変位移動動作を減速させることでゆっくりと縮小変位しながら段差吸収作用を達成することができるのである。
【0028】
上述した本発明の実施形態による家具装着脚10は、上記のように、家具類製品の複数の脚に装着されて、起伏や不整による段差が介在するコンクリート床面等の設置面に設置されると、家具製品の重量負荷や人が下方へ押す力等を受けて夫々の脚の家具装着脚10が上下方向で相対変位して高位の設置面と低位の設置面との段差を吸収した状態で安定に設置を果たすことになるが、この点は、家具類製品が設置面上を位置変更のために移動された場合にも新たな設置面で再び、その位置での段差を吸収して何らの調節操作を伴うことなく、安定設置を達成できると言う点で、本発明が意図した固定設置面への家具装着脚としてでは無くむしろ移動性の家具類製品に対する家具装着脚、つまり段差吸収型家具装着脚として機能する特徴を発揮するのである。
【0029】
図5は、このような複数脚を有した家具類製品(テーブル)20の各脚装着部22に、本発明の実施の形態に係る段差吸収型家具装着脚10を装着し、段差の有る床面30へ同家具類製品を設置した状態を示した略示図である。そして、人Pが上方から押すようにして荷重を掛けて家具脚10によって段差を吸収している様子を示したものである。本例では、4本の脚の装着部22に夫々段差吸収型家具装着脚10を取付け、上方からの負荷荷重を掛けることで、段差吸収を図っているが、3本脚や5本脚等種々の家具類製品20に適応可能なことは、自明であろう。
このように、摩擦環16と弾性体15′との均衡による段差吸収を図ると、家具製品が設置面に非固定で設置されて利用される過程において、例えば、人が机やテーブルから急に離れる等で同人が寄りかかりによって下方へ掛けていた負荷力を急に解放した時にも、素早く対応して家具製品の跳ね上がりを抑止して安定な設置状態を維持することが可能となる。
【0030】
勿論、家具製品を設置面上で移動させた場合に、移動前と移動後との間で設置面の段差状態が変化しても夫々の位置での段差を吸収して家具製品の安定を維持できる作用を遂行することは、既述の通りである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る段差吸収型家具装着脚は、家具製品の脚下端に装着されて、コンクリート床面等のように不整表面や起伏が十分に除去されていないことから、設置面に段差を有したような設置面で家具製品を設置して利用する時に、その段差を特別に高さ調節などの調節作業を実施することを要せずに吸収し、設置面へ安定に家具製品を設置し得るようにしたものである。しかも、設置面に非固定的に設置されて利用時に家具製品が所要に応じて設置位置を移動されるような場合でも、移動後の位置で再びその位置に発生している段差を吸収して家具製品を安定に設置保持し得ると共に、設置後に家具類製品に別に荷重負荷が付加されたり、荷重が解除されたりしたような場合でも、その荷重変化に対応して家具装着脚が追従して伸縮し、常に家具製品の安定を保持することを可能にするものである。よって、店舗等のコンクリートの打ち放し床面等に家具製品としてテーブルや机、椅子等を設置利用するとき、床面の歪や起伏による段差が発生している際でも同家具製品を安定的に設置可能とするから、極めて産業上の利用性も高いのである。
【0032】
しかも、本発明の実施形態に係る段差吸収型の家具装着脚10は、その構成要素である、結合子11、カバー要素12、ピストン子14、弾性体15′、摩擦環16、シリンダ要素13等を組み立てて行く過程で、ねじ止め、接着、ピン固定、その他の要素や組立て上の特別の工具を要することがないので、組立てに要する人工や手間を簡素化し得る利点を有し、また家具類製品の設置現場でその脚の装着脚部に簡単に取付けでき、必要に応じて内部の摩擦環16を交換する等の作業も簡単に実行できる利点がある。その上、家具類製品の設置現場では段差吸収に対してただ単に上方から負荷荷重を掛ければ良いだけであることから、使用勝手が極めて高いと言う利点も有している。なお、結合子11のねじ杆には、緩み止めの処置を施して結合子11の抜け止めを図るようにすることもできる。更に、カバー要素12の中心孔12aは、結合子11のねじ杆11bの径寸法に応じて予め大小孔径を変更することは、カバー要素12の成型加工段階で簡単に選定、対応することができることは、容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(イ)及び(ロ)は、本発明の実施形態における設置面段差吸収型の家具装着脚の構成と作用とを説明する全体斜視図と分解図。
【図2】上述した本発明の実施形態に係る設置面段差吸収型の家具装着脚の図1におけるA−A線による断面図。
【図3】(イ)、(ロ)は、同段差吸収型家具装着脚の相対変位前と相対変位後の状態を示す正面図。
【図4】本実施形態に用いられる特殊断面を有した摩擦環の形状を詳示した断面図。
【図5】本発明に係る家具装着脚の脚主部の使用例を示す略示斜視図。
【符号の説明】
【0034】
10:家具装着脚
11:結合子
11a’:下端
12 :カバー要素
13:シリンダ要素
13a:足部
13b:ばね受け胴
14:ピストン子
14a:筒部
14b:皿形部
14c:ばね受け胴
14d:環状溝
14e:空気孔
15:ばね要素
15′:弾性体
16:摩擦環
16a、16b:環状山形部分
20:家具類製品
22:脚装着部
30:段差のある床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏や不整による段差を有した設置面へ非固定に家具を安定設置可能にするための家具装着脚において、
家具脚が有する装着部に結合される先端結合部とその他端側の基端部とを有する結合子と、
該結合子とピストン子とを包持するとともに該ピストン子との間で前記結合子の前記基端部を挟持することにより三者一体化されたカバー要素と、
前記カバー要素のピストン子を相対変位可能に受承しつつ該カバー要素に嵌着されて設置面への足部として設けられるシリンダ要素と、
前記カバー要素の内部に内挿され、前記ピストン子と前記シリンダ要素との間に装填される弾性体と、
前記ピストン子に嵌着されるとともに前記シリンダ要素に摺接状態に設けられた摩擦環と、
を具備して構成され、前記家具脚を介して掛けられる負荷に対応したピストン子とシリンダ要素との相対変位によって前記設置面の段差を吸収して家具を設置可能なことを特徴とする設置面段差吸収型の家具装着脚。
【請求項2】
前記弾性体をコイルばねで形成するとともに前記摩擦環を前記コイルばねのバネ剛さに準じた摺接抵抗力を発揮可能な環状弾性リングによって構成したことを特徴とする請求項1に記載の設置面段差吸収型の家具装着脚。
【請求項3】
前記環状弾性リングは、前記シリンダ要素との摺接部を有すると共に該摺接部は摺接、変位方向に分離した複数の環状摺接部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の設置面段差吸収型の家具装着脚。
【請求項4】
前記シリンダ要素に対して前記カバー要素が相対変位可能であるとともに該カバー要素の内周域と、該シリンダ要素の外周域とに該相対変位方向における前記両要素の分離を阻止する外れ止め係合部を具備したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の設置面段差吸収型の家具装着脚。
【請求項5】
前記ピストン子は、前記シリンダ要素に対する摺接変位時の空気抜き孔を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の設置面段差吸収型の家具装着脚。
【請求項6】
家具脚に装着されて家具設置面における波打ち等の段差を吸収して家具を安定設置せしめ得る設置面段差吸収型の家具装着脚において、
前記家具脚の端部に設けた装着部に装着、結合される結合脚を包持すると共にキャップ状に形成されたカバー要素と、該キャップ状カバー要素の周壁部に所定量の上下変位が可能に係合し、下底面を前記家具設置面に対する設置面とする中空シリンダ形状の足要素と、前記カバー要素と前記足要素との間の内部空間内に具備され、前記カバー要素に対して前記足要素を前記所定量の上下範囲内において相互に対向する弾発力と摩擦力とのバランス下で変位保持させることによって前記段差吸収を遂行可能にする段差吸収機構と、を具備して構成されたことを特徴とする設置面段差吸収型の家具装着脚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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