誘電体フィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信装置
【課題】 小型化が可能な誘電体フィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信装置を提供する。
【解決手段】 誘電体ブロック10と、誘電体ブロック10を取り囲んでキャビティを形成する遮蔽導体20とを備え、誘電体ブロック10は、長さ方向の中央部に形成された凹部11と、長さ方向に垂直な第1方向に突き出た凸部とを備え、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、長さ方向および第1方向の両方に対して垂直な第2方向に平行であるとともに、全て同じ向きである第1共振モードと、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、第2方向に平行であるとともに、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードと、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、第1方向に平行である第3共振モードとを利用して通過帯域を形成する誘電体フィルタとする。
【解決手段】 誘電体ブロック10と、誘電体ブロック10を取り囲んでキャビティを形成する遮蔽導体20とを備え、誘電体ブロック10は、長さ方向の中央部に形成された凹部11と、長さ方向に垂直な第1方向に突き出た凸部とを備え、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、長さ方向および第1方向の両方に対して垂直な第2方向に平行であるとともに、全て同じ向きである第1共振モードと、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、第2方向に平行であるとともに、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードと、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、第1方向に平行である第3共振モードとを利用して通過帯域を形成する誘電体フィルタとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化が可能な誘電体フィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャビティ内に複数の誘電体ブロックを配置して複数の共振器を形成し、それら複数の共振器を相互に電磁気的に結合させて構成した誘電体フィルタが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−98503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて提案されたような従来の誘電体フィルタは、複数の誘電体ブロックをキャビティ内に配置する必要があるため、小型化が困難であるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、小型化が可能な誘電体フィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の誘電体フィルタは、誘電体ブロックと、該誘電体ブロックを取り囲んでキャビティを形成する遮蔽導体とを少なくとも有しており、前記誘電体ブロックは、長さ方向の中央部に形成された凹部と、前記長さ方向に垂直な第1方向に突き出た凸部とを少なくとも有しており、前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記長さ方向および前記第1方向の両方に対して垂直な第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで同じ向きである第1共振モードの共振周波数と、前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードの共振周波数と、前記誘電体ブロックの前記凸部における電界の向きが、前記第1方向に平行である第3共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の誘電体フィルタは、前記第1の誘電体フィルタにおいて、2つの前記凸部を有しており、前記第1共振モードの共振周波数と、前記第2共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが同じ向きである第4共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の誘電体フィルタは、前記第1または第2の誘電体フィルタにおいて、前記誘電体ブロックの少なくとも一部分を該一部分と間隔を開けて取り囲むとともに、前記
誘電体ブロックと一体的に形成された誘電体容器をさらに有しており、該誘電体容器の外面に配置された導体によって前記遮蔽導体の少なくとも一部が構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の無線通信モジュールは、前記第1の誘電体フィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の無線通信装置は、前記無線通信モジュールと、前記RF部に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誘電体フィルタによれば、小型化が可能な誘電体フィルタを得ることができる。
【0012】
本発明の無線通信モジュールによれば、小型化が可能な無線通信モジュールを得ることができる。
【0013】
本発明の無線通信装置によれば、小型化が可能な無線通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の誘電体フィルタを模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。
【図3】図1に示す誘電体フィルタの縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。
【図5】図4に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。
【図6】図4に示す誘電体フィルタの縦断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。
【図8】図7に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。
【図9】図7に示す誘電体フィルタの縦断面図である。
【図10】図7に示す誘電体フィルタの水平断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の第4の例の無線通信装置を模式的に示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタの電気特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタの電気特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の誘電体フィルタを添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態の第1の例)
図1は、本発明の実施の形態の第1の例の誘電体フィルタを模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。図3は、図1に示す誘電体フィルタの縦断面図である。なお、図1においては、構造をわかりやすくするために、遮蔽導体20を透視した状態を示している。
【0016】
本例の誘電体フィルタは、図1〜図3に示すように、誘電体ブロック10と、遮蔽導体20とを備えている。
【0017】
誘電体ブロック10は、誘電体で形成されている。また、誘電体ブロック10は、長さ方向(図のx軸方向)の中央部に、長さ方向に垂直な第1方向(誘電体ブロック10の幅方向であり、図のy軸方向)に突出した凸部14と、長さ方向および第1方向の両方に垂直な第2方向(誘電体ブロック10の高さ方向であり、図のz軸方向)に凹んだ凹部11とを備えている。
【0018】
凹部11は、誘電体ブロック10を幅方向(図のy方向)に貫通しており、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における両端は、凹部11に対して高さが高い凸部12,13となっている。
【0019】
凸部14は、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の中央部(凹部11の中央部)に位置しており、幅方向(図のy軸方向)の両側に突き出ている。また、凸部14は、長方形の平板状であり、誘電体ブロック10の幅方向の一方(図の+y方向)の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15を備えている。テーパー部15には導体が配置されており、このテーパー部15に配置された導体によって、凸部14に誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)の電界が励振される。
【0020】
遮蔽導体20は、直方体の箱状の導体であり、誘電体ブロック10を取り囲むように配置されている。遮蔽導体20は、キャビティ(共振空洞)を形成しており、キャビティ内に誘電体ブロック10が収容されている。また、遮蔽導体20は、誘電体ブロック10の下面全体と、誘電体ブロックの凸部12,13,14の上面とに接するように配置されている。さらに、遮蔽導体20は、誘電体ブロック10の幅方向(図のy方向)における凸部14の両端部に接するとともに、誘電体ブロック10の凸部14以外の部分における側面(図のz方向に平行な面)と間隔を開けて配置されている。そして、遮蔽導体20が形成するキャビティの中央に誘電体ブロック10が配置されている。また、遮蔽導体20は、基準電位(グランド電位)に接続される。
【0021】
また、遮蔽導体20における、誘電体ブロック10の凸部12,13の下側(図の−z方向側)に位置する部分には、それぞれ開口25,26が形成されている。そして、誘電体ブロック10の下面(図の−z方向側の表面)の、遮蔽導体20の開口25,26を介して外部に露出している部分には、遮蔽導体20と間隔を開けて、端子電極31,32が配置されている。すなわち、誘電体ブロック10の下面において、凸部12の下側に位置する開口25を介して露出している部分には端子電極31が配置されており、凸部13の下側に位置する開口26を介して露出しているには端子電極32が配置されている。
【0022】
このような構成を備える本例の誘電体フィルタは、例えば、端子電極31から電気信号が入力されると、電界の向きが誘電体ブロックの高さ方向(図のz軸方向)であり、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における一方側と他方側とで電界の向きが同じであり、キャビティ内の誘電体ブロック10の長さ方向に定在波の振幅極大の点が1つ存在するような共振(キャビティ内に半波長分の波が存在する共振)が生じ、それが第1の共振モードとなる。
【0023】
また、電界の向きが誘電体ブロックの高さ方向(図のz軸方向)であり、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで電界の向きが逆向きになって、キャビティ内の誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)に定在波の振幅極大の点が2つ存在するような共振(キャビティ内に1波長分の波が存在する共振)が生じ、それが第2の共振モードとなる。なお、第2の共振モードにおける定在波の振幅極大の点の近傍に凸部12,13がそれぞれ位置するようにされている。また、誘電体ブロック10の長さ方向(
図のx軸方向)の寸法が大きくなるにつれて、第1および第2の共振モードの共振周波数は低くなる。
【0024】
そして、凸部14のテーパー部15に配置された導体によって、誘電体ブロック10の凸部14に、電界の向きが誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)であり、誘電体ブロック10の高さ方向(図のz軸方向)に定在波が1つ存在するような共振(凸部14内に半波長分の波が存在する共振)が生じ、それが第3の共振モードとなる。なお、凸部14の高さ方向(図のz軸方向)の寸法が大きくなるにつれて、第3の共振モードの共振周波数は低くなる。なお、誘電体ブロック10内の誘電率が、キャビティ内の他の領域の誘電率に比べて高いため、第1〜第3の共振モードにおいて、電界の殆どは誘電体ブロック10の内部に集中して存在する。
【0025】
キャビティ内が一様の場合には、第2の共振モードの周波数は第1の共振モードの周波数の2倍になるが、本例の誘電体フィルタは、キャビティ内に誘電体ブロック10が配置されており、誘電体ブロック10の長さ方向の中央に凹部11が形成されている。そして、凹部11内は空気で満たされているため、凹部11内の誘電率は、その他の誘電体ブロック10の誘電率よりも低くなる。
【0026】
第1の共振モードでは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の中央部で電界がもっとも強く、そこから誘電体ブロック10の長さ方向の両側に向かうにしたがって電界が弱くなり、図のx軸方向におけるキャビティの両端部(遮蔽導体20に接する部分)で電界の大きさが0となるような電界の分布となる。このため、第1の共振モードの共振周波数は、誘電体ブロック10の長さ方向の中央部に凹部11が形成されて、その部分の誘電率が低くなることの影響を大きく受ける。よって、誘電体ブロック10に凹部11を形成することによって、第1の共振モードの共振周波数は、高周波側に大きくシフトする。なお、凸部14が突出する方向(図のy軸方向)は、凹部11が凹む方向(図のz軸方向)に対して垂直であることが望ましく、凸部14における誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の寸法は、凹部11における誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の寸法によりも小さいことが望ましい。または、凹部11が凹む方向(図のz軸方向)に凸部14が突出しないようにすることが望ましい。これにより、第1の共振モードの共振周波数を高周波側へのシフトさせる凹部11の効果を凸部14が阻害するのを低減することができる。
【0027】
これに対して、第2の共振モードは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)におけるキャビティの両端部(遮蔽導体20に接する部分)に加えて、誘電体ブロック10の長さ方向における中央部でも、電界の大きさがほぼ0になる。このため、第2の共振モードの共振周波数は、誘電体ブロック10の長さ方向の中央部に凹部11が形成されて、その部分の誘電率が低くなることの影響をあまり受けない。よって、誘電体ブロック10に凹部11を形成することによって、第2の共振モードの共振周波数は、高周波側へ僅かしかシフトしない。
【0028】
このようにして、本例の誘電体フィルタは、第1の共振モードの共振周波数を高周波側にシフトさせて、第2の共振モードの共振周波数に近づけることができる。よって、主に誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の寸法と、凸部14の高さ方向(図のz軸方向)の寸法とを適宜設定することにより、第1〜第3の共振モードの共振周波数が全てフィルタの通過帯域内の周波数であるように設定することができる。
【0029】
すなわち、本例の誘電体フィルタは、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、高さ方向(図のz軸方向)に平行であるとともに、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで同じ向きである第1共振モードの共振周波数と、誘電体ブロック
10の内部における電界の向きが、高さ方向(図のz軸方向)に平行であるとともに、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードの共振周波数と、誘電体ブロック10の凸部14における電界の向きが、幅方向(図のy軸方向)に平行である第3共振モードの共振周波数とが、フィルタの通過帯域内の周波数であるように設定されている。よって、本例の誘電体フィルタは、第1共振モードと、第2共振モードと、第3共振モードとを利用して通過帯域を形成することができる。よって、本例の誘電体フィルタによれば、広い通過帯域を有するバンドパスフィルタを容易に得ることができる。
【0030】
このように、本例の誘電体フィルタは、端子電極31から電気信号が入力されると、第1〜第3の共振モードの共振周波数を含んだ周波数帯域の電気信号が選択的に端子電極32から出力されて、バンドパスフィルタとして機能する。なお、第1〜第3の共振モードの共振周波数は、誘電体ブロック10の長さおよび凸部14の高さや、誘電体ブロック10の比誘電率や、凹部11の大きさや、キャビティの形状等によって適宜調整することができる。
【0031】
また、本例の誘電体フィルタによれば、1つの誘電体ブロック10およびそれを取り囲む遮蔽導体20によってフィルタを構成できるので、小型化が可能な誘電体フィルタを得ることができる。
【0032】
さらに、本例の誘電体フィルタによれば、遮蔽導体20が誘電体ブロック10の側面と間隔を開けて誘電体ブロック10を取り囲んでいることから、共振のQ値を高くすることができるとともに、高次モード共振を通過帯域から高周波側へ遠ざけることができる。
【0033】
(実施の形態の第2の例)
図4は、本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。図5は、図4に示す誘電体フィルタの下面(図の−z方向の端面)を示す平面図である。図6は、図4に示す誘電体フィルタの模式的な縦断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
本例の誘電体フィルタは、図4〜図6に示すように、誘電体ブロック10と、誘電体容器40と、遮蔽導体20とを有している。
【0035】
誘電体容器40は、誘電体ブロック10と一体化されており、誘電体ブロック10の一部とともに、上面が開口した直方体の箱状の形状を形成している。すなわち、箱の底部が、誘電体ブロック10の底部(図の−z方向側の端部)に接合されて一体化されており、箱の側壁が、凸部14における図のy軸方向の両端部に接合されて一体化されている。そして、誘電体ブロック10の凸部14以外の部分における側面(図のz方向に平行な面)の大部分と間隔を開けて、その側面の大部分を取り囲むように配置されている。すなわち、誘電体容器40は、誘電体ブロック10の少なくとも一部分を、その一部分と間隔を開けて取り囲むとともに、誘電体ブロック10と一体的に形成されている。また、誘電体容器40は、誘電体ブロック10と同じ誘電体材料を用いて、誘電体ブロック10と一体的に形成されている。
【0036】
遮蔽導体20は、導体21および導体板22によって構成されている。導体21は、誘電体ブロック10の一部および誘電体容器40によって形成された直方体の箱の外側の表面に配置されている。すなわち、導体21は、誘電体ブロック10の底面(図の−z方向の端面)と、凸部14における図のy軸方向の両端面と、箱のその他の部分を構成する誘電体容器40の外面とに配置されている。導体板22は、誘電体容器40および誘電体ブ
ロック10の上面(図の+z方向の端面)に配置されて導体21に接続されている。すなわち、誘電体容器40の外面(外側の表面)に配置された導体21によって遮蔽導体20の一部が構成されている。
【0037】
このような構成を備える本例の誘電体フィルタによれば、誘電体ブロック10と誘電体容器40とを同一の誘電体によって一体成形することができるとともに、誘電体容器40の外面に形成した導体21と、導体板22とによって遮蔽導体20を構成することができるので、製造が容易な誘電体フィルタを得ることができる。
【0038】
(実施の形態の第3の例)
図7は、本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。図8は、図7に示す誘電体フィルタの下面(図の−z方向の端面)を示す平面図である。図9は、図7に示す誘電体フィルタの模式的な縦断面図である。図10は、図7に示す誘電体フィルタの模式的な水平断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の第2の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
本例の誘電体フィルタは、図7〜図10に示すように、誘電体ブロック10と、誘電体容器40と、遮蔽導体20とを有している。そして、誘電体ブロック10は、形状が互いに等しい2つの凸部14a,14bを有している。
【0040】
凸部14a,14bのそれぞれは、幅方向の両側に突き出た長方形の平板状である。また凸部14a,14bのそれぞれは、誘電体ブロック10の幅方向(図の+y方向)の一方の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15を備えている。そして、テーパー部15には導体が配置されており、このテーパー部15に配置された導体によって、凸部14a,14bに誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)の電界が励振される。具体的には、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも幅方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが同じ向きである第4共振モードと、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも幅方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードとが生じる。
【0041】
また、凸部14a,14bは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の両端部付近に形成されており、凸部12,13と一体化されている。すなわち、凸部14aは、誘電体ブロック10の−x方向側の端部付近(凸部12の中央部付近)に形成されており、凸部12と一体化されている。また、凸部14bは、誘電体ブロック10の+x方向側の端部付近(凸部13の中央部付近)に形成されており、凸部13と一体化されている。なお、凸部14a,14bは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における中央の両側に分けて配置されており、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における中央に対して対称に配置されるのが望ましい。これにより、特性の優れた誘電体フィルタを得ることができる。また、凸部14a,14bは、第2の共振モードにおける定在波の振幅極大の点の近傍にそれぞれ配置されるのが望ましく、これにより、第4の共振モードおよび第5の共振モードを効率的に励振することができる。
【0042】
本例の誘電体フィルタは、第1共振モードの共振周波数と、第2共振モードの共振周波数と、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも第1方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが同じ向きである第4共振モードの共振周波数と、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも第1方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードの共振周波数とが、フィルタの通過帯域内の周
波数であるように設定されている。なお、第4の共振モードおよび第5の共振モードは、前述した第3の共振モードに含まれる。よって、本例の誘電体フィルタは、第1の共振モード,第2の共振モード,第3の共振モードおよび第4の共振モードを利用して通過帯域を形成することができる。よって、本例の誘電体フィルタによれば、さらに広い通過帯域を有するバンドパスフィルタを容易に得ることができる。
【0043】
本例および前述した実施の形態の第1〜第3の例の誘電体フィルタにおいて、誘電体ブロック10の材質としては、エポキシ樹脂等の樹脂や例えば誘電体セラミックス等のセラミックスを用いることができる。例えば、BaTiO3,Pb4Fe2Nb2O12,TiO2等を含有する誘電体セラミック材料が好適に用いられる。遮蔽導体20および端子電極31,32の材質としては、例えば、Ag,Ag−Pd,Ag−Pt等のAg合金を主成分とする導電材料やCu系,W系,Mo系,Pd系導電材料等が好適に用いられる。
【0044】
(実施の形態の第4の例)
図11は本発明の実施の形態の第4の例の無線通信装置80を模式的に示すブロック図である。本例の無線通信装置80は、図11に示すように、無線通信モジュール81と、無線通信モジュール81に接続されたアンテナ82とを備えている。無線通信モジュール81は、アンテナ82に接続されたRF部83と、RF部83に接続されたベースバンド部84とを備えている。
【0045】
ベースバンド部84は、ベースバンドIC87を備えており、ベースバンド信号を処理する機能を有している。RF部83は、ベースバンド部84に接続されたRFIC86と、RFIC86およびアンテナ82に接続された、図1〜図10に示した本発明の実施の形態の第1〜第3の例の誘電体フィルタ85とを備えており、ベースバンド信号の変調後および復調前のRF信号を処理する機能を有している。また、ベースバンド信号が変調されてなるRF信号または受信したRF信号における通信帯域以外の信号を誘電体フィルタ85によって減衰させている。
【0046】
このような構成を有する本例の無線通信モジュール81および無線通信装置80によれば、小型化が可能な本発明の誘電体フィルタ85を用いて通信信号の濾波を行うことから、小型化が可能な無線通信モジュール81および小型化が可能な無線通信装置80を得ることができる。
【0047】
(変形例)
本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0048】
前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、誘電体ブロック10の上面に、幅方向に貫通した凹部11が形成された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、誘電体ブロック10の上面に、幅方向に貫通しない凹部11が形成されるようにしても構わない。
【0049】
また、前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、誘電体ブロック10の上面に凹部11が形成された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、誘電体ブロック10の側面や下面に凹部11が形成されるようにしても構わない。
【0050】
さらに、前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、直方体状の誘電体ブロック10に直方体状の凹部11が形成された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、角が丸められて楕円形に近い形状の誘電体ブロック10であっても良いし、球形に近い形状の凹部11であっても構わない。
【0051】
またさらに、遮蔽導体20で形成されたキャビティ内における、誘電体ブロック10以外の部分は、空気が存在しても、真空であってもよく、さらには、誘電体ブロック10よりも比誘電率が小さいものが充填されていても構わない。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の誘電体フィルタの具体例について説明する。
【0053】
まず、図4〜図6に示した本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタの電気特性を、有限要素法を用いたシミュレーションによって算出した。シミュレーションにおいては、誘電体ブロック10の比誘電率は70とした。誘電体ブロック10は、図4〜図6に示したように、直方体の基本形状に対して凹部11および凸部14が形成された形状である。基本形状である直方体の寸法は、長さ方向(図のx軸方向)の寸法を39mmとし、幅方向(図のy軸方向)の寸法を6mmとし、高さ方向(図のz軸方向)の寸法を22mmとした。
【0054】
凹部11は、基本形状である直方体の長さ方向(図のx軸方向)の中央の上面に形成されており、図のx軸方向の寸法が24mmであり、図のz軸方向の深さが20mmであり、誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)に貫通する形状とした。凸部14は、基本形状である直方体の長さ方向(図のx軸方向)の中央の側面に形成されており、図のy軸方向の寸法が14.4mmであり、図のz軸方向の寸法が22mmであり、厚み(図のx軸方向の寸法)が2mmである平板状とした。また、凸部14は、誘電体ブロック10の幅方向の一方(図の+y方向)の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15を備えた形状とした。遮蔽導体20で囲まれたキャビティは、長さ方向(図のx軸方向)の寸法が49mmで、幅方向(図のy軸方向)の寸法が14.4mmで、高さ方向(図のz軸方向)の寸法が22mmの直方体の側面(図の+y方向の端面)と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分に、45°でカットされたテーパー部15が設けられた形状とした。誘電体容器40の厚みは2mmとした。
【0055】
このシミュレーション結果を図12のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は周波数であり、縦軸は減衰量である。また、実線が通過特性を示し、破線が反射特性を示している。このグラフによれば、良好な通過特性を有する3段のバンドパスフィルタが得られていることがわかる。
【0056】
次に、図7〜図10に示した本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタの電気特性を、有限要素法を用いたシミュレーションによって算出した。シミュレーションにおいて、誘電体ブロック10の比誘電率は70とした。誘電体ブロック10の形状は、図4〜図10に示したように、直方体の基本形状に対して凹部11および凸部14a,14bを形成した形状とした。基本形状である直方体の寸法は、長さ方向(図のx軸方向)の寸法を39.18mmとし、幅方向(図のy軸方向)の寸法を6mmとし、高さ方向(図のz軸方向)の寸法を22.5mmとした。
【0057】
凹部11は、基本形状である直方体の上面に形成されており、長さ方向(図のx軸方向)の寸法が24.22mmであり、図のz軸方向の深さが21.5mmであり、誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)に貫通する形状とした。
【0058】
凸部14a,14bは、幅方向(図のy軸方向)の寸法が14.4mmであり、高さ方向(図のz軸方向)の寸法が22.5mmであり、厚み(図のx軸方向の寸法)が1.92mmの平板状であるとともに、誘電体ブロック10の幅方向の一方(図のy方向)の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15
を備えた形状とした。遮蔽導体20で囲まれたキャビティは長さ方向(図のx軸方向)の寸法が49mmで、幅方向(図のy軸方向)の寸法が14.4mmで、高さ方向(図のz軸方向)の寸法が22.5mmの直方体の側面(図の+y方向の端面)と上面(図の+z
方向の端面)とが接する部分に、45°でカットされたテーパー部が設けられた形状とした。誘電体容器40の厚みは、底面(図の−z方向の端面)で1mmとし、その他の部分で2mmとした。
【0059】
このシミュレーション結果を図13のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は周波数であり、縦軸は減衰量である。また、実線が通過特性を示し、破線が反射特性を示している。このグラフによれば、良好な通過特性を有する4段のバンドパスフィルタが得られていることがわかる。
【0060】
これらの結果により、本発明の効果が確認できた。
【符号の説明】
【0061】
10:誘電体ブロック
11:凹部
12,13,14,14a,14b:凸部
20:遮蔽導体
40:誘電体容器
80:無線通信装置
81:無線通信モジュール
82:アンテナ
83:RF部
84:ベースバンド部
85:誘電体フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化が可能な誘電体フィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャビティ内に複数の誘電体ブロックを配置して複数の共振器を形成し、それら複数の共振器を相互に電磁気的に結合させて構成した誘電体フィルタが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−98503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて提案されたような従来の誘電体フィルタは、複数の誘電体ブロックをキャビティ内に配置する必要があるため、小型化が困難であるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、小型化が可能な誘電体フィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の誘電体フィルタは、誘電体ブロックと、該誘電体ブロックを取り囲んでキャビティを形成する遮蔽導体とを少なくとも有しており、前記誘電体ブロックは、長さ方向の中央部に形成された凹部と、前記長さ方向に垂直な第1方向に突き出た凸部とを少なくとも有しており、前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記長さ方向および前記第1方向の両方に対して垂直な第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで同じ向きである第1共振モードの共振周波数と、前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードの共振周波数と、前記誘電体ブロックの前記凸部における電界の向きが、前記第1方向に平行である第3共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の誘電体フィルタは、前記第1の誘電体フィルタにおいて、2つの前記凸部を有しており、前記第1共振モードの共振周波数と、前記第2共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが同じ向きである第4共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の誘電体フィルタは、前記第1または第2の誘電体フィルタにおいて、前記誘電体ブロックの少なくとも一部分を該一部分と間隔を開けて取り囲むとともに、前記
誘電体ブロックと一体的に形成された誘電体容器をさらに有しており、該誘電体容器の外面に配置された導体によって前記遮蔽導体の少なくとも一部が構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の無線通信モジュールは、前記第1の誘電体フィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の無線通信装置は、前記無線通信モジュールと、前記RF部に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誘電体フィルタによれば、小型化が可能な誘電体フィルタを得ることができる。
【0012】
本発明の無線通信モジュールによれば、小型化が可能な無線通信モジュールを得ることができる。
【0013】
本発明の無線通信装置によれば、小型化が可能な無線通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の誘電体フィルタを模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。
【図3】図1に示す誘電体フィルタの縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。
【図5】図4に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。
【図6】図4に示す誘電体フィルタの縦断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。
【図8】図7に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。
【図9】図7に示す誘電体フィルタの縦断面図である。
【図10】図7に示す誘電体フィルタの水平断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の第4の例の無線通信装置を模式的に示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタの電気特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタの電気特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の誘電体フィルタを添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態の第1の例)
図1は、本発明の実施の形態の第1の例の誘電体フィルタを模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す誘電体フィルタの下面を示す平面図である。図3は、図1に示す誘電体フィルタの縦断面図である。なお、図1においては、構造をわかりやすくするために、遮蔽導体20を透視した状態を示している。
【0016】
本例の誘電体フィルタは、図1〜図3に示すように、誘電体ブロック10と、遮蔽導体20とを備えている。
【0017】
誘電体ブロック10は、誘電体で形成されている。また、誘電体ブロック10は、長さ方向(図のx軸方向)の中央部に、長さ方向に垂直な第1方向(誘電体ブロック10の幅方向であり、図のy軸方向)に突出した凸部14と、長さ方向および第1方向の両方に垂直な第2方向(誘電体ブロック10の高さ方向であり、図のz軸方向)に凹んだ凹部11とを備えている。
【0018】
凹部11は、誘電体ブロック10を幅方向(図のy方向)に貫通しており、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における両端は、凹部11に対して高さが高い凸部12,13となっている。
【0019】
凸部14は、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の中央部(凹部11の中央部)に位置しており、幅方向(図のy軸方向)の両側に突き出ている。また、凸部14は、長方形の平板状であり、誘電体ブロック10の幅方向の一方(図の+y方向)の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15を備えている。テーパー部15には導体が配置されており、このテーパー部15に配置された導体によって、凸部14に誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)の電界が励振される。
【0020】
遮蔽導体20は、直方体の箱状の導体であり、誘電体ブロック10を取り囲むように配置されている。遮蔽導体20は、キャビティ(共振空洞)を形成しており、キャビティ内に誘電体ブロック10が収容されている。また、遮蔽導体20は、誘電体ブロック10の下面全体と、誘電体ブロックの凸部12,13,14の上面とに接するように配置されている。さらに、遮蔽導体20は、誘電体ブロック10の幅方向(図のy方向)における凸部14の両端部に接するとともに、誘電体ブロック10の凸部14以外の部分における側面(図のz方向に平行な面)と間隔を開けて配置されている。そして、遮蔽導体20が形成するキャビティの中央に誘電体ブロック10が配置されている。また、遮蔽導体20は、基準電位(グランド電位)に接続される。
【0021】
また、遮蔽導体20における、誘電体ブロック10の凸部12,13の下側(図の−z方向側)に位置する部分には、それぞれ開口25,26が形成されている。そして、誘電体ブロック10の下面(図の−z方向側の表面)の、遮蔽導体20の開口25,26を介して外部に露出している部分には、遮蔽導体20と間隔を開けて、端子電極31,32が配置されている。すなわち、誘電体ブロック10の下面において、凸部12の下側に位置する開口25を介して露出している部分には端子電極31が配置されており、凸部13の下側に位置する開口26を介して露出しているには端子電極32が配置されている。
【0022】
このような構成を備える本例の誘電体フィルタは、例えば、端子電極31から電気信号が入力されると、電界の向きが誘電体ブロックの高さ方向(図のz軸方向)であり、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における一方側と他方側とで電界の向きが同じであり、キャビティ内の誘電体ブロック10の長さ方向に定在波の振幅極大の点が1つ存在するような共振(キャビティ内に半波長分の波が存在する共振)が生じ、それが第1の共振モードとなる。
【0023】
また、電界の向きが誘電体ブロックの高さ方向(図のz軸方向)であり、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで電界の向きが逆向きになって、キャビティ内の誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)に定在波の振幅極大の点が2つ存在するような共振(キャビティ内に1波長分の波が存在する共振)が生じ、それが第2の共振モードとなる。なお、第2の共振モードにおける定在波の振幅極大の点の近傍に凸部12,13がそれぞれ位置するようにされている。また、誘電体ブロック10の長さ方向(
図のx軸方向)の寸法が大きくなるにつれて、第1および第2の共振モードの共振周波数は低くなる。
【0024】
そして、凸部14のテーパー部15に配置された導体によって、誘電体ブロック10の凸部14に、電界の向きが誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)であり、誘電体ブロック10の高さ方向(図のz軸方向)に定在波が1つ存在するような共振(凸部14内に半波長分の波が存在する共振)が生じ、それが第3の共振モードとなる。なお、凸部14の高さ方向(図のz軸方向)の寸法が大きくなるにつれて、第3の共振モードの共振周波数は低くなる。なお、誘電体ブロック10内の誘電率が、キャビティ内の他の領域の誘電率に比べて高いため、第1〜第3の共振モードにおいて、電界の殆どは誘電体ブロック10の内部に集中して存在する。
【0025】
キャビティ内が一様の場合には、第2の共振モードの周波数は第1の共振モードの周波数の2倍になるが、本例の誘電体フィルタは、キャビティ内に誘電体ブロック10が配置されており、誘電体ブロック10の長さ方向の中央に凹部11が形成されている。そして、凹部11内は空気で満たされているため、凹部11内の誘電率は、その他の誘電体ブロック10の誘電率よりも低くなる。
【0026】
第1の共振モードでは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の中央部で電界がもっとも強く、そこから誘電体ブロック10の長さ方向の両側に向かうにしたがって電界が弱くなり、図のx軸方向におけるキャビティの両端部(遮蔽導体20に接する部分)で電界の大きさが0となるような電界の分布となる。このため、第1の共振モードの共振周波数は、誘電体ブロック10の長さ方向の中央部に凹部11が形成されて、その部分の誘電率が低くなることの影響を大きく受ける。よって、誘電体ブロック10に凹部11を形成することによって、第1の共振モードの共振周波数は、高周波側に大きくシフトする。なお、凸部14が突出する方向(図のy軸方向)は、凹部11が凹む方向(図のz軸方向)に対して垂直であることが望ましく、凸部14における誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の寸法は、凹部11における誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の寸法によりも小さいことが望ましい。または、凹部11が凹む方向(図のz軸方向)に凸部14が突出しないようにすることが望ましい。これにより、第1の共振モードの共振周波数を高周波側へのシフトさせる凹部11の効果を凸部14が阻害するのを低減することができる。
【0027】
これに対して、第2の共振モードは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)におけるキャビティの両端部(遮蔽導体20に接する部分)に加えて、誘電体ブロック10の長さ方向における中央部でも、電界の大きさがほぼ0になる。このため、第2の共振モードの共振周波数は、誘電体ブロック10の長さ方向の中央部に凹部11が形成されて、その部分の誘電率が低くなることの影響をあまり受けない。よって、誘電体ブロック10に凹部11を形成することによって、第2の共振モードの共振周波数は、高周波側へ僅かしかシフトしない。
【0028】
このようにして、本例の誘電体フィルタは、第1の共振モードの共振周波数を高周波側にシフトさせて、第2の共振モードの共振周波数に近づけることができる。よって、主に誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の寸法と、凸部14の高さ方向(図のz軸方向)の寸法とを適宜設定することにより、第1〜第3の共振モードの共振周波数が全てフィルタの通過帯域内の周波数であるように設定することができる。
【0029】
すなわち、本例の誘電体フィルタは、誘電体ブロック10の内部における電界の向きが、高さ方向(図のz軸方向)に平行であるとともに、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで同じ向きである第1共振モードの共振周波数と、誘電体ブロック
10の内部における電界の向きが、高さ方向(図のz軸方向)に平行であるとともに、誘電体ブロック10の長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードの共振周波数と、誘電体ブロック10の凸部14における電界の向きが、幅方向(図のy軸方向)に平行である第3共振モードの共振周波数とが、フィルタの通過帯域内の周波数であるように設定されている。よって、本例の誘電体フィルタは、第1共振モードと、第2共振モードと、第3共振モードとを利用して通過帯域を形成することができる。よって、本例の誘電体フィルタによれば、広い通過帯域を有するバンドパスフィルタを容易に得ることができる。
【0030】
このように、本例の誘電体フィルタは、端子電極31から電気信号が入力されると、第1〜第3の共振モードの共振周波数を含んだ周波数帯域の電気信号が選択的に端子電極32から出力されて、バンドパスフィルタとして機能する。なお、第1〜第3の共振モードの共振周波数は、誘電体ブロック10の長さおよび凸部14の高さや、誘電体ブロック10の比誘電率や、凹部11の大きさや、キャビティの形状等によって適宜調整することができる。
【0031】
また、本例の誘電体フィルタによれば、1つの誘電体ブロック10およびそれを取り囲む遮蔽導体20によってフィルタを構成できるので、小型化が可能な誘電体フィルタを得ることができる。
【0032】
さらに、本例の誘電体フィルタによれば、遮蔽導体20が誘電体ブロック10の側面と間隔を開けて誘電体ブロック10を取り囲んでいることから、共振のQ値を高くすることができるとともに、高次モード共振を通過帯域から高周波側へ遠ざけることができる。
【0033】
(実施の形態の第2の例)
図4は、本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。図5は、図4に示す誘電体フィルタの下面(図の−z方向の端面)を示す平面図である。図6は、図4に示す誘電体フィルタの模式的な縦断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
本例の誘電体フィルタは、図4〜図6に示すように、誘電体ブロック10と、誘電体容器40と、遮蔽導体20とを有している。
【0035】
誘電体容器40は、誘電体ブロック10と一体化されており、誘電体ブロック10の一部とともに、上面が開口した直方体の箱状の形状を形成している。すなわち、箱の底部が、誘電体ブロック10の底部(図の−z方向側の端部)に接合されて一体化されており、箱の側壁が、凸部14における図のy軸方向の両端部に接合されて一体化されている。そして、誘電体ブロック10の凸部14以外の部分における側面(図のz方向に平行な面)の大部分と間隔を開けて、その側面の大部分を取り囲むように配置されている。すなわち、誘電体容器40は、誘電体ブロック10の少なくとも一部分を、その一部分と間隔を開けて取り囲むとともに、誘電体ブロック10と一体的に形成されている。また、誘電体容器40は、誘電体ブロック10と同じ誘電体材料を用いて、誘電体ブロック10と一体的に形成されている。
【0036】
遮蔽導体20は、導体21および導体板22によって構成されている。導体21は、誘電体ブロック10の一部および誘電体容器40によって形成された直方体の箱の外側の表面に配置されている。すなわち、導体21は、誘電体ブロック10の底面(図の−z方向の端面)と、凸部14における図のy軸方向の両端面と、箱のその他の部分を構成する誘電体容器40の外面とに配置されている。導体板22は、誘電体容器40および誘電体ブ
ロック10の上面(図の+z方向の端面)に配置されて導体21に接続されている。すなわち、誘電体容器40の外面(外側の表面)に配置された導体21によって遮蔽導体20の一部が構成されている。
【0037】
このような構成を備える本例の誘電体フィルタによれば、誘電体ブロック10と誘電体容器40とを同一の誘電体によって一体成形することができるとともに、誘電体容器40の外面に形成した導体21と、導体板22とによって遮蔽導体20を構成することができるので、製造が容易な誘電体フィルタを得ることができる。
【0038】
(実施の形態の第3の例)
図7は、本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタを模式的に示す分解斜視図である。図8は、図7に示す誘電体フィルタの下面(図の−z方向の端面)を示す平面図である。図9は、図7に示す誘電体フィルタの模式的な縦断面図である。図10は、図7に示す誘電体フィルタの模式的な水平断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の第2の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
本例の誘電体フィルタは、図7〜図10に示すように、誘電体ブロック10と、誘電体容器40と、遮蔽導体20とを有している。そして、誘電体ブロック10は、形状が互いに等しい2つの凸部14a,14bを有している。
【0040】
凸部14a,14bのそれぞれは、幅方向の両側に突き出た長方形の平板状である。また凸部14a,14bのそれぞれは、誘電体ブロック10の幅方向(図の+y方向)の一方の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15を備えている。そして、テーパー部15には導体が配置されており、このテーパー部15に配置された導体によって、凸部14a,14bに誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)の電界が励振される。具体的には、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも幅方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが同じ向きである第4共振モードと、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも幅方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードとが生じる。
【0041】
また、凸部14a,14bは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)の両端部付近に形成されており、凸部12,13と一体化されている。すなわち、凸部14aは、誘電体ブロック10の−x方向側の端部付近(凸部12の中央部付近)に形成されており、凸部12と一体化されている。また、凸部14bは、誘電体ブロック10の+x方向側の端部付近(凸部13の中央部付近)に形成されており、凸部13と一体化されている。なお、凸部14a,14bは、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における中央の両側に分けて配置されており、誘電体ブロック10の長さ方向(図のx軸方向)における中央に対して対称に配置されるのが望ましい。これにより、特性の優れた誘電体フィルタを得ることができる。また、凸部14a,14bは、第2の共振モードにおける定在波の振幅極大の点の近傍にそれぞれ配置されるのが望ましく、これにより、第4の共振モードおよび第5の共振モードを効率的に励振することができる。
【0042】
本例の誘電体フィルタは、第1共振モードの共振周波数と、第2共振モードの共振周波数と、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも第1方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが同じ向きである第4共振モードの共振周波数と、2つの凸部14a,14bにおける電界の向きがどちらも第1方向(図のy軸方向)に平行であり、且つ2つの凸部14a,14bにおける電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードの共振周波数とが、フィルタの通過帯域内の周
波数であるように設定されている。なお、第4の共振モードおよび第5の共振モードは、前述した第3の共振モードに含まれる。よって、本例の誘電体フィルタは、第1の共振モード,第2の共振モード,第3の共振モードおよび第4の共振モードを利用して通過帯域を形成することができる。よって、本例の誘電体フィルタによれば、さらに広い通過帯域を有するバンドパスフィルタを容易に得ることができる。
【0043】
本例および前述した実施の形態の第1〜第3の例の誘電体フィルタにおいて、誘電体ブロック10の材質としては、エポキシ樹脂等の樹脂や例えば誘電体セラミックス等のセラミックスを用いることができる。例えば、BaTiO3,Pb4Fe2Nb2O12,TiO2等を含有する誘電体セラミック材料が好適に用いられる。遮蔽導体20および端子電極31,32の材質としては、例えば、Ag,Ag−Pd,Ag−Pt等のAg合金を主成分とする導電材料やCu系,W系,Mo系,Pd系導電材料等が好適に用いられる。
【0044】
(実施の形態の第4の例)
図11は本発明の実施の形態の第4の例の無線通信装置80を模式的に示すブロック図である。本例の無線通信装置80は、図11に示すように、無線通信モジュール81と、無線通信モジュール81に接続されたアンテナ82とを備えている。無線通信モジュール81は、アンテナ82に接続されたRF部83と、RF部83に接続されたベースバンド部84とを備えている。
【0045】
ベースバンド部84は、ベースバンドIC87を備えており、ベースバンド信号を処理する機能を有している。RF部83は、ベースバンド部84に接続されたRFIC86と、RFIC86およびアンテナ82に接続された、図1〜図10に示した本発明の実施の形態の第1〜第3の例の誘電体フィルタ85とを備えており、ベースバンド信号の変調後および復調前のRF信号を処理する機能を有している。また、ベースバンド信号が変調されてなるRF信号または受信したRF信号における通信帯域以外の信号を誘電体フィルタ85によって減衰させている。
【0046】
このような構成を有する本例の無線通信モジュール81および無線通信装置80によれば、小型化が可能な本発明の誘電体フィルタ85を用いて通信信号の濾波を行うことから、小型化が可能な無線通信モジュール81および小型化が可能な無線通信装置80を得ることができる。
【0047】
(変形例)
本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0048】
前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、誘電体ブロック10の上面に、幅方向に貫通した凹部11が形成された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、誘電体ブロック10の上面に、幅方向に貫通しない凹部11が形成されるようにしても構わない。
【0049】
また、前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、誘電体ブロック10の上面に凹部11が形成された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、誘電体ブロック10の側面や下面に凹部11が形成されるようにしても構わない。
【0050】
さらに、前述した実施の形態の第1〜第3の例においては、直方体状の誘電体ブロック10に直方体状の凹部11が形成された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、角が丸められて楕円形に近い形状の誘電体ブロック10であっても良いし、球形に近い形状の凹部11であっても構わない。
【0051】
またさらに、遮蔽導体20で形成されたキャビティ内における、誘電体ブロック10以外の部分は、空気が存在しても、真空であってもよく、さらには、誘電体ブロック10よりも比誘電率が小さいものが充填されていても構わない。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の誘電体フィルタの具体例について説明する。
【0053】
まず、図4〜図6に示した本発明の実施の形態の第2の例の誘電体フィルタの電気特性を、有限要素法を用いたシミュレーションによって算出した。シミュレーションにおいては、誘電体ブロック10の比誘電率は70とした。誘電体ブロック10は、図4〜図6に示したように、直方体の基本形状に対して凹部11および凸部14が形成された形状である。基本形状である直方体の寸法は、長さ方向(図のx軸方向)の寸法を39mmとし、幅方向(図のy軸方向)の寸法を6mmとし、高さ方向(図のz軸方向)の寸法を22mmとした。
【0054】
凹部11は、基本形状である直方体の長さ方向(図のx軸方向)の中央の上面に形成されており、図のx軸方向の寸法が24mmであり、図のz軸方向の深さが20mmであり、誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)に貫通する形状とした。凸部14は、基本形状である直方体の長さ方向(図のx軸方向)の中央の側面に形成されており、図のy軸方向の寸法が14.4mmであり、図のz軸方向の寸法が22mmであり、厚み(図のx軸方向の寸法)が2mmである平板状とした。また、凸部14は、誘電体ブロック10の幅方向の一方(図の+y方向)の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15を備えた形状とした。遮蔽導体20で囲まれたキャビティは、長さ方向(図のx軸方向)の寸法が49mmで、幅方向(図のy軸方向)の寸法が14.4mmで、高さ方向(図のz軸方向)の寸法が22mmの直方体の側面(図の+y方向の端面)と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分に、45°でカットされたテーパー部15が設けられた形状とした。誘電体容器40の厚みは2mmとした。
【0055】
このシミュレーション結果を図12のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は周波数であり、縦軸は減衰量である。また、実線が通過特性を示し、破線が反射特性を示している。このグラフによれば、良好な通過特性を有する3段のバンドパスフィルタが得られていることがわかる。
【0056】
次に、図7〜図10に示した本発明の実施の形態の第3の例の誘電体フィルタの電気特性を、有限要素法を用いたシミュレーションによって算出した。シミュレーションにおいて、誘電体ブロック10の比誘電率は70とした。誘電体ブロック10の形状は、図4〜図10に示したように、直方体の基本形状に対して凹部11および凸部14a,14bを形成した形状とした。基本形状である直方体の寸法は、長さ方向(図のx軸方向)の寸法を39.18mmとし、幅方向(図のy軸方向)の寸法を6mmとし、高さ方向(図のz軸方向)の寸法を22.5mmとした。
【0057】
凹部11は、基本形状である直方体の上面に形成されており、長さ方向(図のx軸方向)の寸法が24.22mmであり、図のz軸方向の深さが21.5mmであり、誘電体ブロック10の幅方向(図のy軸方向)に貫通する形状とした。
【0058】
凸部14a,14bは、幅方向(図のy軸方向)の寸法が14.4mmであり、高さ方向(図のz軸方向)の寸法が22.5mmであり、厚み(図のx軸方向の寸法)が1.92mmの平板状であるとともに、誘電体ブロック10の幅方向の一方(図のy方向)の端面と上面(図の+z方向の端面)とが接する部分が45°でカットされたテーパー部15
を備えた形状とした。遮蔽導体20で囲まれたキャビティは長さ方向(図のx軸方向)の寸法が49mmで、幅方向(図のy軸方向)の寸法が14.4mmで、高さ方向(図のz軸方向)の寸法が22.5mmの直方体の側面(図の+y方向の端面)と上面(図の+z
方向の端面)とが接する部分に、45°でカットされたテーパー部が設けられた形状とした。誘電体容器40の厚みは、底面(図の−z方向の端面)で1mmとし、その他の部分で2mmとした。
【0059】
このシミュレーション結果を図13のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は周波数であり、縦軸は減衰量である。また、実線が通過特性を示し、破線が反射特性を示している。このグラフによれば、良好な通過特性を有する4段のバンドパスフィルタが得られていることがわかる。
【0060】
これらの結果により、本発明の効果が確認できた。
【符号の説明】
【0061】
10:誘電体ブロック
11:凹部
12,13,14,14a,14b:凸部
20:遮蔽導体
40:誘電体容器
80:無線通信装置
81:無線通信モジュール
82:アンテナ
83:RF部
84:ベースバンド部
85:誘電体フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体ブロックと、該誘電体ブロックを取り囲んでキャビティを形成する遮蔽導体とを少なくとも有しており、
前記誘電体ブロックは、長さ方向の中央部に形成された凹部と、前記長さ方向に垂直な第1方向に突き出た凸部とを少なくとも有しており、前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記長さ方向および前記第1方向の両方に対して垂直な第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで同じ向きである第1共振モードの共振周波数と、
前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードの共振周波数と、
前記誘電体ブロックの前記凸部における電界の向きが、前記第1方向に平行である第3共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とする誘電体フィルタ。
【請求項2】
2つの前記凸部を有しており、前記第1共振モードの共振周波数と、前記第2共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが同じ向きである第4共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項3】
前記誘電体ブロックの少なくとも一部分を該一部分と間隔を開けて取り囲むとともに、前記誘電体ブロックと一体的に形成された誘電体容器をさらに有しており、該誘電体容器の外面に配置された導体によって前記遮蔽導体の少なくとも一部が構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の誘電体フィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載の誘電体フィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部とを少なくとも有していることを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信モジュールと、前記RF部に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とする無線通信装置。
【請求項1】
誘電体ブロックと、該誘電体ブロックを取り囲んでキャビティを形成する遮蔽導体とを少なくとも有しており、
前記誘電体ブロックは、長さ方向の中央部に形成された凹部と、前記長さ方向に垂直な第1方向に突き出た凸部とを少なくとも有しており、前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記長さ方向および前記第1方向の両方に対して垂直な第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで同じ向きである第1共振モードの共振周波数と、
前記誘電体ブロックの内部における電界の向きが、前記第2方向に平行であるとともに、前記誘電体ブロックの前記長さ方向における一方側と他方側とで逆向きである第2共振モードの共振周波数と、
前記誘電体ブロックの前記凸部における電界の向きが、前記第1方向に平行である第3共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とする誘電体フィルタ。
【請求項2】
2つの前記凸部を有しており、前記第1共振モードの共振周波数と、前記第2共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが同じ向きである第4共振モードの共振周波数と、前記2つの凸部における電界の向きがどちらも前記第1方向に平行であり、且つ前記2つの凸部における電界の向きが互いに逆向きである第5共振モードの共振周波数とが通過帯域内の周波数であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項3】
前記誘電体ブロックの少なくとも一部分を該一部分と間隔を開けて取り囲むとともに、前記誘電体ブロックと一体的に形成された誘電体容器をさらに有しており、該誘電体容器の外面に配置された導体によって前記遮蔽導体の少なくとも一部が構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の誘電体フィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載の誘電体フィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部とを少なくとも有していることを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信モジュールと、前記RF部に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とする無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−217119(P2012−217119A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156817(P2011−156817)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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