説明

誘電体共振部品

【課題】共振器数が増大した場合においても、機械的強度の低下が防止され、低コストで実装効率の高い誘電体共振部品を提供する。
【解決手段】対応する細長い形状を持つ互いに平行な第1及び第2の面21,22を有し且つこれらの面に対応する細長い形状を持つ誘電体ブロック2と、第1の面から第2の面にかけて形成され誘電体ブロックの長手方向に沿って配列された複数の貫通孔30と、貫通孔内に形成された内導体31と、貫通孔に対応して形成される共振器同士を結合させるように第1の面にて内導体から延びた結合電極33と、誘電体ブロックの外面に形成された外導体32とを含む。誘電体ブロックは長手方向に関する少なくとも一部の領域においてコ字形状部を有し、コ字形状部の両端部の外導体が付された面同士は接合体50により互いに接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体ブロックに複数の共振器を形成してなり、マイクロ波帯などの高周波帯で使用される、誘電体フィルタや誘電体送受共用器などの誘電体共振部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの移動体通信機器は、アンテナにより送受信する信号を通過帯域フィルタなどのフィルタを介して、所望の周波数帯のみを送受信することができるように構成されている。このような機能性電子部品である誘電体フィルタや誘電体送受共用器などの誘電体共振部品としては、誘電体ブロックを用い、これに複数の共振器を作りこんでなる一体型のものがしばしば用いられる。
【0003】
しかるに、近年、移動体通信機器、特に基地局用途のものにおいて高性能化が要請されており、これに伴い移動体通信機器に用いられる誘電体共振部品にも高性能化が要請されている。そのため、より多くの共振器を単一の誘電体ブロックに作り込んで高性能化が図られている。この場合、誘電体ブロックが長手方向に長くなりすぎて機械的強度が低下しやすくなるという問題があった。また、最近においては、実装効率の高い誘電体共振部品が要請されており、長手方向にあまり長すぎる誘電体共振部品には、実装効率の低下を招くという問題もあった。
【0004】
このような問題を回避するために、たとえば特許文献1には、2つの誘電体フィルタを分割して作製し、それぞれを電気的及び機械的に接合する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、誘電体ブロックを途中で湾曲させてU字形状とすることで実装効率の向上を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3010568号公報
【特許文献2】特開昭62−73801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、部品点数が増加し、更に組立作業によるコストアップの問題が生じる。また、電気的な整合がとりにくく、誘電体共振部品の特性がばらつくという問題が生じる。たとえば、高周波の誘電体共振部品に適用する場合には、金属端子のインダクタンス成分がインピーダンス整合を悪化させ、また、金属端子の部分から高周波が漏洩し性能を悪化させる。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法では、機械的強度の低下の問題は依然として解決されない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高性能化に応えるべく誘電体共振部品の共振器数が増大した場合においても、機械的強度の低下が防止され、低コストで実装効率の高い誘電体共振部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
対応する細長い形状を持つ互いに平行な第1の面及び第2の面を有し且つ前記第1の面及び前記第2の面の細長い形状に対応する細長い形状を持つ誘電体ブロックと、該誘電体ブロックの前記第1の面から前記第2の面にかけて形成され前記誘電体ブロックの長手方向に沿って配列された複数の貫通孔と、該貫通孔内に形成された内導体と、前記貫通孔に対応して形成される共振器同士を結合させるように前記第1の面にて前記内導体から延びた結合電極と、前記誘電体ブロックの外面に形成された外導体と、を含んでなる誘電体共振部品であって、
前記誘電体ブロックは前記長手方向に関する少なくとも一部の領域においてコ字形状部を有しており、該コ字形状部の両端部の前記外導体が付された面同士は接合体により互いに接合されていることを特徴とする誘電体共振部品、
が提供される。
【0011】
本発明の一態様においては、前記接合体は、接合剤と該接合剤により前記コ字形状部の両端部に接合された接合部材とからなる。本発明の一態様においては、前記誘電体共振部品は、更に、前記第1の面を略覆うように配置された電磁シールドカバーを備えている。本発明の一態様においては、前記誘電体共振部品は、前記接合部材の代わりに前記第1の面を略覆うように配置された電磁シールドカバーを備えており、該電磁シールドカバーの一部は前記接合剤を介して前記コ字形状部の両端部の前記外導体が付された面と接合される。本発明の一態様においては、前記電磁シールドカバーは、前記誘電体ブロックの前記第2の面と略同一の面に沿って延びた誘電体共振部品固定用突出部を有する。
【0012】
本発明の一態様においては、前記接合体により互いに接合される前記コ字形状部の両端部の面は、前記誘電体ブロックの長手方向の両端面である。本発明の一態様においては、前記接合体により互いに接合される前記コ字形状部の両端部の面は、前記誘電体ブロックの前記第1の面である。
【0013】
本発明の一態様においては、前記接合体により互いに接合される前記コ字形状部の両端部の面は、前記誘電体ブロックの外面であって互いに対向する内側面である。
【0014】
本発明の一態様においては、前記接合体は接合剤のみからなる。
【0015】
本発明の一態様においては、前記誘電体ブロックは誘電体セラミックからなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘電体ブロックのコ字形状部の両端部において外導体の付された面同士を接合体により互いに接合させたことで、共振器数が増大した場合においても、機械的強度の低下が防止され、低コストで実装効率の高い誘電体共振部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による誘電体共振部品の第1の実施形態を示す模式的分解斜視図である。
【図2】第1の実施形態の誘電体共振部品を示す模式的斜視図である。
【図3】第1の実施形態の誘電体共振部品を示す模式的部分拡大平面図である。
【図4】本発明による誘電体共振部品の第2の実施形態を示す模式的部分拡大平面図である。
【図5】本発明による誘電体共振部品の第3の実施形態を示す模式的部分拡大平面図である。
【図6】本発明による誘電体共振部品の第4の実施形態を示す模式的分解斜視図である。
【図7】第4の実施形態の誘電体共振部品を示す模式的斜視図である。
【図8】第4の実施形態における外部回路との接続形態の一例を示す模式的部分拡大断面図である。
【図9】本発明による誘電体共振部品の第5の実施形態を示す模式的斜視図である。
【図10】本発明による誘電体共振部品の第6の実施形態を示す模式的分解斜視図である。
【図11】第4の実施形態の誘電体共振部品を示す模式的部分断面図である。
【図12】本発明による誘電体共振部品の第7の実施形態を示す模式的分解斜視図である。
【図13】第1の実施形態の誘電体共振部品の第2の面を示す模式的平面図である。
【図14】第3の実施形態の誘電体共振部品を示す第1の面から見た模式的平面図である。
【図15】第3の実施形態の誘電体共振部品を示す第2の面から見た模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は本発明による誘電体共振部品の第1の実施形態を示す模式的分解斜視図であり、図2は本実施形態の誘電体共振部品の模式的斜視図である。また、図3は本実施形態の誘電体共振部品の模式的部分拡大平面図である。本実施形態においては、誘電体共振部品は誘電体フィルタである。図13は、本実施形態の誘電体共振部品の第2の面を示す模式的平面図である。
【0020】
本実施形態の誘電体フィルタは誘電体ブロック2を有する。誘電体ブロック2の材質としては、たとえば誘電体セラミックを使用することができ、特に比誘電率εが10程度のフォルステライト系セラミックを使用することができる。
【0021】
誘電体ブロック2は、第1の面21及び第2の面22を有する。第1の面21は上面である。第2の面22は、下面であり、第1の面21から距離Hを隔てて第1の面21と反対向き且つ平行に位置しており、第1の面21に対応する形状を持つ。これらの第1の面21及び第2の面22の形状は、細長い形状であり、具体的にはコ字形状である。本発明でいうコ字形状とは、互いに略平行に延びた2つの部分の一端部同士を接続部分で接続した形状を指し、該接続部分の形状が直線状であるものも曲線状であるものも含むものとする。図では、接続部分の形状が曲線状(円弧状)であるものが示されている。これは、U字に近い形状であるが、本発明でいうコ字形状に含まれるものとする。
【0022】
かくして、誘電体ブロック2は、第1の面21及び第2の面22の細長い形状に対応する細長い形状即ちコ字形状を持つ。このようなコ字形状を持つ誘電体ブロック2の部分をコ字形状部ということにする。本実施形態では、コ字形状部は誘電体ブロック2の長手方向に関する全体の領域を占めている。
【0023】
誘電体ブロック2は、第1の面21及び第2の面22の周縁同士を連ねる面を有する。この面は、誘電体ブロック長手方向の2つの端面23,24、並びにコ字形状の外側の面25及び内側の面26からなる。2つの端面23,24は、同一平面上に位置する。かくして、誘電体ブロック2の外面は、第1の面21、第2の面22、端面23,24、外側面25及び内側面26からなる。
【0024】
図2に示されるように、誘電体ブロック2は、外形寸法において、高さがHであり、長さがLであり、幅がWである。但し、細長いコ字形状を考慮すると、その長手方向に直交する断面の寸法は、高さがHであり、幅がW’である。また、互いに平行に延びる部分の長さはL’である。Hは4mm〜25mm、Lは60mm〜130mm、Wは25mm〜60mm、W’は9mm〜25mmおよびL’は50mm〜115mmであることが好ましい。より具体的な形態としては、Lはたとえば約70mmであり、Wはたとえば約35mmであり、Hはたとえば約10mmである。また、L’はたとえば約55mmであり、W’はたとえば約15mmである。また、Lは3W以内が好ましい。さらに、Wは3W’以内が好ましい。
【0025】
図3に示されるように、誘電体ブロック2の長手方向の端部同士は、距離Dだけ隔てられている。即ち、誘電体ブロック2の長手方向の端部において、互いに対向する内側面26同士の間隔がDである。Dはたとえば約4mmである。
【0026】
図1に示されるように、誘電体ブロック2には、第1の面21から第2の面22にかけて形成された円形断面形状の複数の貫通孔30が形成されている。各貫通孔30は、外側面25及び内側面26更には端面23,24に沿って上下方向に延びている。また、複数の貫通孔30は、誘電体ブロック長手方向に沿って、即ち外側面25及び内側面26に沿って、コ字形状に配列されている。各貫通孔30の内面には、内導体31が付されている。
【0027】
第1の面21を除く誘電体ブロック2の外面には外導体32が付されている。かくして、第1の面21が開放面とされ且つ第2の面22が短絡面とされて、貫通孔30のそれぞれに対応して1/4波長型の共振器が形成される。第1の面21には、各内導体31に接続された(即ち各内導体31から延びた)結合電極33が付されている。この結合電極33の形状は、図示されるものに限定されず、所要の結合が得られるものであれば適宜変更してもよい。尚、第1の面21には、外導体32に接続された結合調整電極(図示されていない)が付されていてもよい。これらの結合電極33および結合調整電極により互いに隣接する共振器同士の所要の結合がとられる。
【0028】
誘電体ブロック2の第1の面21には、誘電体ブロック2の両端の近傍すなわち端面23,24の近傍に、入出力電極34,35が形成されている。入出力電極34,35は、それぞれ結合電極33を介して両端の共振器に結合しており、外部回路と接続される。
【0029】
本実施形態では、誘電体ブロック2の両端部は、接合体50により互いに接合されている。具体的には、誘電体ブロック2の両端部の外導体32が付された端面23,24同士が接合体50により互いに接合されている。即ち、本実施形態では、接合体50により互いに接合されるコ字形状部の両端部の面は、誘電体ブロック2の長手方向の両端面23,24である。
【0030】
図3に示されるように、接合体50は、接合剤51と該接合剤により両端面23,24に接合された接合部材52とからなる。接合剤51としては、たとえば接着剤または半田を用いることができる。接合部材52としては、たとえば厚さ約1mmの鉄系金属板を用いることができる。接合部材52の大きさは、たとえば高さH×幅Wまたはそれより若干小さいものとすることができる。但し、接合剤51及び接合部材52は、以上に示したものに限定されるものではない。
【0031】
このような構造にすることで、高機能を得るために共振器数を多くしても、誘電体ブロック2をコ字形状としたことによりLの増大が抑えられ、しかも、誘電体ブロック2の両端部の外導体32の付された端面23,24同士を接合体50により互いに接合させたことで、機械的強度の低下が防止される。かくして、低コストで実装効率の高い誘電体フィルタが提供される。
【0032】
[第2の実施形態]
図4は本発明による誘電体共振部品の第2の実施形態を示す模式的部分拡大平面図である。図4は、上記第1の実施形態に係る図3と同様の部分を示すものである。
【0033】
本実施形態は、誘電体ブロック2の両端部同士を互いに接合する接合体50の具体的構成を除いて、第1の実施形態と同一である。
【0034】
本第2の実施形態では、接合体50により互いに接合されるコ字形状部の両端部の面は、誘電体ブロック2の外面であって互いに対向する内側面26である。接合体50は、接合部材52の形状及び寸法を除いて、第1の実施形態のものと同様である。
【0035】
このような構造にすることで、第1の実施形態で得られる作用効果に加えて、両端面23,24を同一平面上に位置させる必要がなく、誘電体ブロック2の形状における自由度が増加するという作用効果も得られる。
【0036】
[第3の実施形態]
図5は本発明による誘電体共振部品の第3の実施形態を示す模式的部分拡大平面図である。図5は、上記第1の実施形態に係る図3及び上記第2の実施形態に係る図4と同様の部分を示すものである。また、図14は、第3の実施形態の誘電体共振部品を示す第1の面から見た模式的平面図である。さらに、図15は、第3の実施形態の誘電体共振部品を示す第2の面から見た模式的平面図である。
【0037】
本実施形態は、誘電体ブロック2の両端部の形状と該両端部同士を互いに接合する接合体50の具体的構成とを除いて、第2の実施形態と同一である。
【0038】
本第3の実施形態では、誘電体ブロック2の両端部において、互いに近接するように突出した突出部27を有する。該突出部における内側面26同士の距離はたとえば1mmである。また、突出部27の長手方向(図5、図14及び図15における左右方向)の距離は例えば2mm〜15mmとすることができる。
【0039】
接合体50は、接合剤51と接合部材52とから構成することができる。また、突出部27を設けることにより内側面26同士の距離が短くなっているので、接合部材52を用いることなく接合剤51のみから構成することもできる。
【0040】
このような構造にすることで、第2の実施形態で得られる作用効果に加えて、接合体50の構成を簡素化でき、部品点数を削減できるという作用効果も得られる。
【0041】
[第4の実施形態]
図6は本発明による誘電体共振部品の第4の実施形態を示す模式的分解斜視図であり、図7は本実施形態の誘電体共振部品の模式的斜視図である。また、図8は本実施形態の誘電体共振部品の模式的部分拡大断面図である。
【0042】
本実施形態は、電磁シールドカバーを備え該電磁シールドカバーの一部が接合部材として機能することを除いて、第1の実施形態と同一である。
【0043】
電磁シールドカバー10は、誘電体ブロック2の第1の面21を略覆うように配置されている。具体的には、電磁シールドカバー10は、誘電体ブロック2の第1の面21の開放域(外導体が形成されていない領域部)から隔てられて該開放域を覆うように配置されており、たとえば厚み0.3mm〜0.8mm程度の金属板を成形したものからなる。電磁シールドカバー10の材質は、導電性であれば良く、例えば鉄系の金属、特に表面をすずめっきした鉄などを用いることができる。電磁シールドカバー10は、第1の面21の上方にて水平に位置する第1部分101と、第1部分101の端縁の一部から下向きに延びた第2部分102と、第1部分101の端縁の他の一部から下向きに延びた第3部分103とを有する。第2部分102は、誘電体ブロック2の外側面25及び内側面26に付された外導体32に接続されており、これにより第1部分101による第1の面(開放域)21からの電波漏洩を抑制する作用が得られる。
【0044】
一方、第3部分103は、誘電体ブロック2の端面23,24と対向するように位置しており、第1の実施形態の接合部材52と同様な機能を有する。即ち、第3部分103は、接着剤により誘電体ブロック2の端面23,24に接合されており、かくして接合体50を構成している。
【0045】
このような電磁シールドカバー10を具備することで、良好な電磁シールド効果を発揮して高い電気特性を得ると共に、機械的強度の高められた誘電体フィルタを少ない部品点数で低コストにて提供することができる。
【0046】
尚、図8は本実施形態における外部回路との接続形態の一例を示す模式的部分断面図である。図8に示されるように、入出力電極34には同軸型接続ケーブル12の内部導体が接続されており、該接続ケーブル12によって誘電体フィルタが外部回路と接続される。接続ケーブル12の外部導体は、たとえば電磁シールドカバー10の第3部分103に接続される。
【0047】
誘電体フィルタと外部回路との接続方法については、上記の限りではなく、必要に応じて公知の他の方法が用いられ、同軸型の接続コネクタを用いたものでも良いし、リードピンを用いたものでも良い。
【0048】
コ字形状の互いに略平行に延びた2つの部分の一端部同士を接続する接続部分に対応する電磁シールドカバー10の部分の形状は、図6によれば、大略台形状とされている。すなわち、上記接続部分に対応する電磁シールドカバー10の部分の形状は、上記2つの部分から互いに近づくように延びた2つの傾斜辺と、該傾斜辺の先端同士を結ぶ直線とにより規定される全体として山型の形状となっている。但し、上記接続部分に対応する電磁シールドカバー10の部分の形状は、これに限定されるものではなく、例えば、誘電体ブロック2の接続部分の曲線状(円弧状)に対応するように滑らかな円弧状になっていても良い。また、誘電体ブロック2の接続部分が直線状の場合には、直線状でも良い。
【0049】
[第5の実施形態]
図9は本発明による誘電体共振部品の第5の実施形態を示す模式的斜視図である。
【0050】
本実施形態は、電磁シールドカバーが誘電体ブロックの第2の面と略同一の面に沿って延びた誘電体共振部品固定用突出部を有することを除いて、第4の実施形態と同一である。
【0051】
本第5の実施形態では、電磁シールドカバー10の第2部分102が誘電体共振部品固定用突出部104を有する。誘電体共振部品固定用突出部104は、誘電体ブロック2の第2の面22と略同一の面に沿って延びていて、ビスなどの固定手段の通過を許容する開口が設けられている。
【0052】
誘電体フィルタは、誘電体ブロック2の第2の面22を実装面として(すなわち第2の面22を実装基板に向けて)、実装基板(例えば通信機器の回路基板)に実装される。
【0053】
電磁シールドカバー10を以上のような構造にすることで、誘電体フィルタを実装する場合、電磁シールドカバー10を固定手段により実装基板に直接的に固定することができる。かくして、新たに固定用金具を取り付ける必要がなく、部品点数が削減され、コストダウンを図ることができる。
【0054】
[第6の実施形態]
図10は本発明による誘電体共振部品の第6の実施形態を示す模式的分解斜視図であり、図11は本実施形態の誘電体共振部品の模式的部分拡大断面図である。
【0055】
本実施形態は、誘電体ブロック2の第1の面21にも、端面23,24と隣接する領域にまで外導体32が延出しており、この第1の面21上の外導体32に電磁シールドカバー10の第3部分103を含んでなる接合体50が接合されていることを除いて、第4の実施形態と同一である。第6の実施形態においては、電磁シールドカバー10が接合部材52を兼ねている。
【0056】
即ち、電磁シールドカバー10の第3部分103は、下端縁部が水平且つ外向きに折り曲げられており、この下端縁部の下面が接合剤51により誘電体ブロック2の第1の面21まで延びた外導体32に接合されている。
【0057】
このような構造にすることで、第4の実施形態で得られる作用効果に加えて、両端面23,24を同一平面上に位置させる必要がなく、誘電体ブロック2の形状における自由度が増加するという作用効果も得られる。また、別途接合部材52を準備する必要はなく、部品点数をさらに削減することができる。
【0058】
[第7の実施形態]
図12は本発明による誘電体共振部品の第7の実施形態を示す模式的分解斜視図である。本実施形態においては、誘電体共振部品は誘電体送受共用器である。
【0059】
本実施形態では、コ字形状の誘電体ブロック2の互いに略平行に延びた2つの部分のうちの一方の側に4個の共振器により送信側フィルタFtが形成されており、他方の側に4個の共振器により受信側フィルタFrが形成されている。コ字形状の誘電体ブロック2の2つの部分同士を接続する接続部分には、第1の面21において、送信側フィルタFt及び受信側フィルタFrの双方と結合する送受共通電極36が形成されている。入出力電極34は送信信号入力電極として機能し、入出力電極35は受信信号出力電極として機能し、送受共通電極36は送信信号出力電極及び受信信号入力電極として機能する。送受共通電極36はアンテナ等の送受信手段に接続される。
【0060】
誘電体ブロック2の材質は、第1の実施形態及び第4の実施形態のものと同一である。誘電体ブロック2の寸法は、図2に示される表記に従えば、Hは4mm〜25mm、Lは60mm〜130mm、Wは25mm〜60mm、W’は9mm〜25mmおよびL’は50mm〜115mmであることが好ましい。より具体的な形態としては、Lはたとえば約70mmであり、Wはたとえば約35mmであり、Hはたとえば約10mmである。また、L’はたとえば約55mmであり、W’はたとえば約15mmである。また、Lは3W以内が好ましい。さらに、Wは3W’以内が好ましい。
【0061】
本実施形態によれば、共振器数が多い一体型誘電体送受共用器であっても、第4の実施形態と同様に、誘電体ブロック2をコ字形状としたことによりLの増大が抑えられ、誘電体ブロック2の両端部の外導体32の付された端面23,24同士を接合体により互いに接合させたことで、機械的強度の低下が防止され、更に接合部材としても機能する電磁シールドカバー10を用いたことで、良好な電磁シールド効果を発揮して高い電気特性を得ると共に、機械的強度の高められた実装効率の高い誘電体送受共用器を少ない部品点数で低コストにて提供することができる。
【0062】
[その他の実施形態]
以上の実施形態では、寸法、個数及び形状などについて、特定のものが記載されているが、本発明は、それらに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0063】
たとえば、誘電体ブロック2に形成される共振器の数は、長さLが約70mmの場合には、たとえば7または8とすることができるが、これに限定されず、適宜変更が可能である。
【0064】
また、接合体50が接合される誘電体ブロック2の端部の面としては、上記のような端面、内側面または第1の面の他に、第2の面、更には、これら端面、内側面、第1の面及び第2の面のうちの2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、以上の誘電体フィルタに係る実施形態の内容を誘電体送受共用器に適用することも可能である。
【0066】
また、以上の実施形態ではコ字形状部は誘電体ブロック2の長手方向に関する全体の領域を占めている(形状がコの字に限定され、コの字の先端部に接続された他の部分を有しない形態をいう)が、本発明はそれに限定されるものではなく、誘電体ブロックはその長手方向に関する少なくとも一部の領域においてコ字形状部を有していればよい。すなわち、誘電体ブロックはコ字形状部に接続された他の部分を有するものであってもよい。他の部分としては、コ字形状部の端部に接続された膨出部分等が例示される。この膨出部分には、共振器及び入出力電極を配置することができる。
【符号の説明】
【0067】
2 誘電体ブロック
21 第1の面
22 第2の面
23,24 端面
25 外側面
26 内側面
27 突出部
30 貫通孔
31 内導体
32 外導体
33 結合電極
34,35 入出力電極
36 送受共通電極
50 接合体
51 接合剤
52 接合部材
10 電磁シールドカバー
101 第1部分
102 第2部分
103 第3部分
104 誘電体共振部品固定用突出部
12 同軸型接続ケーブル
Ft 送信側フィルタ
Fr 受信側フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する細長い形状を持つ互いに平行な第1の面及び第2の面を有し且つ前記第1の面及び前記第2の面の細長い形状に対応する細長い形状を持つ誘電体ブロックと、該誘電体ブロックの前記第1の面から前記第2の面にかけて形成され前記誘電体ブロックの長手方向に沿って配列された複数の貫通孔と、該貫通孔内に形成された内導体と、前記貫通孔に対応して形成される共振器同士を結合させるように前記第1の面にて前記内導体から延びた結合電極と、前記誘電体ブロックの外面に形成された外導体と、を含んでなる誘電体共振部品であって、
前記誘電体ブロックは前記長手方向に関する少なくとも一部の領域においてコ字形状部を有しており、該コ字形状部の両端部の前記外導体が付された面同士は接合体により互いに接合されていることを特徴とする誘電体共振部品。
【請求項2】
前記接合体は、接合剤と該接合剤により前記コ字形状部の両端部に接合された接合部材とからなることを特徴とする、請求項1に記載の誘電体共振部品。
【請求項3】
前記誘電体共振部品は、更に、前記第1の面を略覆うように配置された電磁シールドカバーを備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の誘電体共振部品。
【請求項4】
前記誘電体共振部品は、前記接合部材の代わりに前記第1の面を略覆うように配置された電磁シールドカバーを備えており、該電磁シールドカバーの一部は前記接合剤を介して前記コ字形状部の両端部の前記外導体が付された面と接合されることを特徴とする、請求項2に記載の誘電体共振部品。
【請求項5】
前記電磁シールドカバーは、前記誘電体ブロックの前記第2の面と略同一の面に沿って延びた誘電体共振部品固定用突出部を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の誘電体共振部品。
【請求項6】
前記接合体により互いに接合される前記コ字形状部の両端部の面は、前記誘電体ブロックの長手方向の両端面であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項7】
前記接合体により互いに接合される前記コ字形状部の両端部の面は、前記誘電体ブロックの前記第1の面であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項8】
前記接合体により互いに接合される前記コ字形状部の両端部の面は、前記誘電体ブロックの外面であって互いに対向する内側面であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項9】
前記接合体は接合剤のみからなることを特徴とする、請求項8に記載の誘電体共振部品。
【請求項10】
前記誘電体ブロックは誘電体セラミックからなることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−199623(P2012−199623A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60714(P2011−60714)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】