説明

誤差補正の方法

座標計測機を使用する加工対象物測定値の誤差補正の方法であって、加工対象物を測定するステップと、所定の誤差関数、検索テーブルまたはマップから再現可能な測定誤差を決定するステップと、加工対象物が測定される際に、少なくとも加速度の関数を測定し、及び、再現不可能な測定誤差を計算するステップと、トータルの誤差を決定するために、再現可能及び再現不可能な誤差を結合するステップと、加工対象物の測定値を補正するために、トータルの誤差を使用するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標位置決め装置を備える加工対象物の測定に関する。座標位置決め装置は、座標計測機(CCM)、工作機械、手動の座標測定アーム、および検査ロボットを含む。特に、本発明は加工対象物の測定値の誤差の補正に関する。
【背景技術】
【0002】
加工対象物が生産され後に、機械の可動範囲内の3つの直交する方向x、y、zに駆動されるプローブが設置された中空軸を有する座標計測機(CCM)において当該加工対象物を検査をすることが通常行われている。また、工程管理の一部として工作機械に設置されたプローブを使って、加工対象物を検査することが通常行われている。
【0003】
機械の動的な変形により起こされる不正確さは、機械を低速で動作させ、プローブが加工対象物表面に接触しながら非常にゆっくり移動させることよって減少させることができる。
【0004】
本出願人の最先の特許である特許文献1は、接触トリガープローブを使用して測定が実行される際に、機械の動的な変形を補償する方法を開示している。高速で測定が実行される時には、必要な加速度が機械およびプローブが設置される中空軸の動的な変形を引き起こす可能性があり、それにより、加工対象物の測定値に、誤差を生じさせる。これは、プローブに加速度計を設け、それにより、接触トリガープローブが加工対象物の測定を実行したときの動的な変形を決定することで、克服される。加速度しきい値によって実行される測定は、低い加速度で繰り返される。
【0005】
本出願人の先願の米国特許である特許文献2は、座標計測機(CCM)を使って一連の加工対象物を検査する方法を開示している。各所定方向のプローブ移動に関して、コンピュータに保存されその後の測定値のために使われる一組の補正オフセットを与えるための、基準ボールなどの参照対象物に対してプローブを低速で接触させることにより、最初に、プローブがキャリブレーションまたは初期化される。
【0006】
測定される第1の加工対象物は、CCMテーブルに置かれ、正確な測定値の取得を可能にするために、一組の加工対象物の表面のポイントが低速で測定される。第1の加工対象物の測定は、高速で繰り返され、低速測定値および高速測定値の差が計算され、保存される。個々の測定されたポイントについて保存された誤差値は、高速における機械構造の動的な変形の計算に入れられる。
【0007】
測定される次の加工対象物は、CCMテーブルにセットアップされて、測定値は高速で取得される。この速度において、測定値は不正確であるけれども、再現可能である。個々の高速な測定値は、対応する保存された誤差値に付加され、そして、高速な読み取りにより引き起こされた誤差を補償することにより調整される。
【0008】
特許文献3は、一連の加工対象物を検査する方法を開示し、最初に、例えば、形状計測機のような高い精度の機械において加工品がキャリブレーションされ、それから、座標位置決め装置に置かれる。加工品は座標位置決め装置において高速に測定されて、誤差関数またはマップは、キャリブレーションされた加工品の既知の形状と座標位置決め装置において測定された加工品の測定された形状との違いから生成される。この誤差関数またはマップは、高速で座標位置決め装置において測定された加工対象物の順次の測定値を補正するために使用される。これは、座標位置決め装置に誤差マップが必要でない点で有利である。
【0009】
特許文献2と特許文献3に開示された方法は、機械の挙動が再現可能に維持される速度で有効に作動する。機械の駆動システムがスムーズであるほど、より高い速度で補正マップで補正できないほどの動的な誤差の無いことを可能とする。
【0010】
いくつかの座標位置決め機械は、高速において重大な駆動振動を示す。振動を起こす誤差の主要な原因は、機械の機械的な駆動及び制御系である。これらの振動(一般に5Hzより高い)により起こされた誤差は、振動が測定誤差を起こす高い速度において再現不可能な挙動を引き起こす際に、上記した動的な誤差の補償の方法には適していない。
【0011】
特許文献4は、プローブの加速度を測定するために、加速度計を使用することにより、加速度により引き起こされた測定誤差を減らす方法を記述している。加速度信号は、補正信号を提供するための速度フィードバック制御ループにおいて使用される動作部の速度信号を生み出すために積分される。
【0012】
特許文献5は、機械のパーツの振動によりCCMの位置測定機器により引き起こされた座標測定誤差を補正する方法を開示している。機械の動作部の加速度は、例えば、加速度計により測定され、加速度の値は、機械部分の変位を示している信号を生成するために二重積分される。機械の一部の変位を示している信号は、機械の位置測定機器から生成される。2つの変位信号を処理して、動作部の振動のために機械により引き起こされた変位の測定値を補正するために、データ統合アルゴリズムが用いられる。
【0013】
【特許文献1】米国特許4,333,238号明細書
【特許文献2】米国特許4,991,304号明細書
【特許文献3】国際公開03/074968号明細書
【特許文献4】米国特許6,412,329号明細書
【特許文献5】欧州特許1311799号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の方法のいずれも、低周波誤差(一般に、0〜5Hz)を補正しようとする際に、加速度計のドリフトとノイズにより問題が生じ、結果として、補正の精度が低いという不利益を有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定の誤差補正の方法であって、
(a)加工対象物を測定し;
(b)所定の誤差関数、検索テーブル又はマップから再現可能な測定誤差を決定し;
(c)少なくとも前記加速度の関数を測定し、加工対象物が測定されるときの再現不可能な測定誤差を計算し、
(d)ステップ(b)と(c)におけるトータルの誤差を決定するために、再現可能及び再現不可能な誤差を合わせ;及び
(e)ステップ(d)において決定されているトータルの誤差を使用して加工対象物の測定値を補正する、
各ステップを適宜の順序で備える方法を提供する。
【0016】
本方法は、再現可能および再現不可能な誤差の両方が与えられたとき、加工対象物のより正確なテーブル示を可能にする。
【0017】
再現可能な誤差は、一般的には、低周波誤差である(例えば、5Hz未満)。これらは、例えば、プローブの遠心力に起因している。再現不可能な誤差は、一般に、高周波誤差である(例えば、5Hzより高い)。これらは、例えば、機械振動に起因している。
【0018】
CCMは、一般的には、約5〜15Hzの周波数で機械的にデカップリングし、約5Hzより高いデータは、機械振動を含み、それにより、再現不可能であることを意味する。
【0019】
再現不可能な誤差は、加速度計を使って決定できる。
【0020】
本方法は、所定の誤差関数、検索テーブル、または、マップを決定するステップを含む。
【0021】
ステップ(b)における所定の誤差関数、検索テーブル、またはマップは、測定速度(好適には、高速)で既知の寸法の加工品を測定することにより決定され、測定誤差は、既知および測定された寸法の差から決定される。
【0022】
加工品は、測定される一連の加工対象物ののうちの一の加工対象物を含む。1つを備える。代替的には、加工品は、加工対象物の特徴と同様な寸法及び形状を有する特徴を有する。
【0023】
加工品の形態は、座標位置決め装置において低速で前記加工品を測定することによって決定できる。代替的には、加工品の形態は、例えば形状計測機などの別個の高い精度の座標位置決め装置において前記加工品を測定することにより決定できる。
【0024】
ステップ(b)における所定の誤差関数、検索テーブル、またはマップは、ある周波数の範囲でプローブを振動させながらプローブで加工品の測定値を取得することにより決定できる。測定誤差は、既知および測定された寸法の差から決定される。従って、誤差関数、検索テーブル、またはマップは、プローブ加速度と測定誤差のとの関係から作成できる。
【0025】
ステップ(a)において加工品を測定するステップは、加工品を走査することを含む。本発明の第2の観点は、加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定値の誤差補正の装置を提供し、この装置は、(a)加工対象物を測定し;
(b)所定の誤差関数、検索テーブル又はマップから再現可能な測定誤差を決定し;
(c)加工対象物が測定される際に、少なくとも加速度の関数を測定し、及び、再現不可能な測定誤差を計算し、
(d)ステップ(b)と(c)におけるトータルの誤差を決定するために、再現可能及び再現不可能な誤差を結合し;及び
(e)ステップ(d)において決定されているトータルの誤差を使用して加工対象物の測定値を補正する、
ステップを適宜の順序で実行するのに適合するコントローラを備える。
【0026】
本発明の第3の観点は、加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定値の誤差補正の方法であって、
加工対象物測定プローブによって加工品を走査しながら、同時にプローブで加速度または加速度の関数を決定し;
測定誤差を決定するために、加工品の測定された測定値を加工品の既知の寸法と比較し;
プローブにおける少なくとも加速度または加速度の関数を測定誤差に関係づける誤差関数、マップまたは検索テーブルを生成し;
加工対象物を順次走査しながら、同時に少なくとも加速度または加速度の関数を決定し、
前記測定された加速度または加速度の関数と誤差関数、マップまたは検索テーブルから測定補正量を特定する、
各ステップを備える。
【0027】
前記誤差関数、マップ、または検索テーブルは、他の変数を含んでいる。
例えば、他の変数は速度を含む。
【0028】
本発明の第4の観点は、加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定値の誤差補正の装置であって、
加工対象物測定プローブによって加工品を走査しながら、同時にプローブにおける加速度または加速度の関数を決定し;
測定誤差を決定するために、加工品の測定された測定値を加工品の既知の寸法と比較し;
プローブにおける少なくとも加速度または加速度の関数を測定誤差に関連させる、誤差関数、マップまたは検索テーブルを生成し;
加工対象物を順次走査しながら、同時にプローブにおける少なくとも加速度または加速度の関数を決定し;
前記測定された加速度または加速度の関数と誤差関数、マップまたは検索テーブルから測定補正量を特定する、
各ステップを適宜の順序で実行するのに適した装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の好適な実施形態は、添付図面を参照した実施例により記述される。
【0030】
図1は、測定される加工対象物14が配置されるテーブル12を備える座標計測機(CCM)10を示す。好適には、これは、生産工程からの一連の実質的に同一の加工対象物の各々をテーブル上の少なくとも名目上同じ位置及び原点位置に配置する自動手段(図示しない)によってなされる。他のタイプのプローブ(接触トリガープローブを含む)も使用可能であるが、加工対象物接触先端部22をもつ可撓性のスタイラス20を有するアナログプローブ16は、機械の中空軸18に設置される。中空軸とプローブは、コンピュータによりコントロールされたx、y、およびz駆動の動作の下でx、y、およびz方向に共に移動する。x、y、およびzスケール(スケールの出力のためのカウンターを含む)は、プローブ16が設置される中空軸18の位置の瞬間の座標を3次元に示す。プローブスタイラス20の変形を示すプローブ16からの信号は、スタイラス先端22、したがって、加工対象物14の表面の位置を計算するために、CCMのx、y、およびzスケールからの測定値と結合される。
【0031】
代替的には、接触トリガープローブによって、プローブが加工対象物の表面に接触したことを示す信号が、スケールからの出力を確定し、そして、コンピュータは、加工対象物表面のx、y、z座標の測定値を取得する。
【0032】
加工対象物の走査の間、半径方向の測定誤差が、プローブが移動、または、静止の時の両方において検出される。これは機械構造体の振動に起因する。プローブの半径方向の速度が、走査の間小さい(一方で、接線速度が相対的に高い)の間小さいと、測定誤差におけるこの半径方向速度の効果は小さい。これは、加工対象物に接近する際に、半径方向の測定誤差がプローブの高い半径方向速度のために引き起こされる接触トリガー測定におけるケースとは逆である。
【0033】
ここまで説明したような機械は従来のものである。コンピュータなどのコントローラ8は、プローブ16に加工対象物14の表面を走査させる、または、必要な検査操作のための加工対象物のすべての必要な寸法と形状を取得するのに十分な、異なる複数のポイントで加工対象物の表面に接触する接触トリガープローブのためのプログラムを含んでいる。このコントローラは、以下に説明するようにその後のステップをコントロールするために使用される。
【0034】
加速度計24は、中空軸18とプローブ16のハウジングとの間に直接的に連結されたハウジングに備わる。図2は、加速度計を示し、これは、例えば、ベース26と自由マス28の間で接続された周知の構成の圧電クリスタル25を備える。出力30X、30Y、30Zは、x、y、およびz方向においてマスにそれぞれ作用している初期の力について生成された電流を伝えるために、圧電クリスタルから引き出される。従って、加速度計は、x、y、およびzにおいてプローブにより得られた加速度を測定する。代替的には、加速度計は、微細加工されたシリコンから形成される。プローブの加速度を測定可能ないずれのタイプの加速度計でも使用できる。
【0035】
本発明の第1の実施形態は図3のフローチャートに関連して説明される。加工対象物は座標計測機のテーブルに置かれる。
【0036】
加工対象物は高い速度38で測定され、加速度計からの出力40は機械スケール42によって同時に記録される。
【0037】
加速度計40からの出力はハイパスフィルタ44でフィルタリングされ、その結果は、二重積分46されて、位置測定値48を生成する。この位置測定値は、高い周波数の加速度により起こされた測定誤差である。
【0038】
機械スケール42の出力は、高周波誤差50について補正された測定値を生成するために、位置測定値48により補正される。この測定値50は、所定の低周波誤差マップ36をステップ52に適用することによって低周波誤差について補正される。これは、高い及び低い周波数の誤差について補正された測定値54を生成する。
【0039】
所定の誤差マップは各種の方法で決定できる。図4は、所定の誤差マップまたは関数を決定する第1の方法を示す。この方法において、加工品が座標計測機の、好適には、テーブルの前/後の加工対象物と同じ位置と原点位置に置かれる。加工品は、測定される一連の加工対象物の中の加工対象物を含む。代替的には、加工品は、一連の加工対象物における特徴の寸法及び配置と実質的に適合する特徴を有する。
【0040】
加工品は、加工品の正確な形状を決定するためにプローブにより低い速度56で測定される。加工品をゆっくり測定することによって、動的な誤差が取り除かれる。さらに、キャリブレーションされたプローブ及び機械の使用は、静的な誤差が最小化されることを保証する。それにより、加工品の正確な測定は達成される。
【0041】
加工品は、その時加工対象物接触プローブによって高い速度58で測定される。好適には、加工対象物は遅い及び速い走査のための同じ位置及び同じ原点位置にとどまる。
【0042】
測定誤差の高周波要素は、高速の走査データ60から取り除かれる。これは、ローパスフィルタで測定データをフィルタリングする、または、図3のステップ48において前に決定された高周波測定誤差を取り除くことによって達成できる。
【0043】
それにより、加工品の表面の個々の測定されたポイントについて、正しい位置および高速で測定された位置が知られる。表面のそのポイントと関連する低周波再現可能動的誤差は、そのポイントの既知の位置(遅い走査56で決定される)と、高周波要素60が取り除かれた高速で測定されたそのポイントの測定値との間の差を取得することにより決定できる。従って、再現可能誤差(寸法および低周波数の形状)を補償する低周波誤差関数またはマップ62が、生成される。
【0044】
図5において、低周波誤差の所定の関数またはマップを決定する第2の方法は説明される。この方法において、加工品の形態は、例えば形状計測機または真円度測定機などの別個の高い精度機械64においてそれを測定することによって決定される。これは、CCMを幾何学的誤差について補正する必要がないという利点を有する。これは、CCMが通常のキャリブレーションを必要としないので、プロセスをスピードアップし、キャリブレーションコストを削減できる点でも有利である。
【0045】
加工品は、その後の測定65が実行される機械において加工対象物接触プローブによって高速に測定される。上で説明された第1の方法では、高周波誤差要素は速い走査データ66から除去される。前述のように、これは、ローパスフィルタを使うこと、または、図3のステップ48において決定したデータを使うことによって実行される。所定の誤差関数またはマップ68は、加工品64の既知の寸法の差、高い精度の機械でそれを測定すること、および、CCMで高周波要素66が除去された高速で測定された寸法から決定される。
【0046】
図6において、低周波誤差の所定の誤差関数またはマップを決定する第3の方法を説明する。
【0047】
プローブは、加工品70の表面に対して置かれ、スタイラス先端が表面と接触してとどまる間、プローブはある周波数の範囲で振動する(72)。これは正弦波振動を含む。プローブの加速度は、加工品76の測定と同時に加速度計により測定される(74)。プローブの加速度は、機械スケールを読み取り、そのスケール測定値を2重差分することによって決定できる。高周波要素は、加工品76の測定された測定値と加速度データの両方から除去される(75、77)。前述したように、これは、ローパスフィルタを使う、または、図3のステップ45において決定されたデータを使うことにより実行される。代替的には、ステップ75について、これは、ステップ74において得られた加速度データを使って実行される。測定誤差80は、加工品76(高周波要素が除去された(75))の測定値および加工品78の既知の寸法の差から決定される。誤差関数またはマップ82は、加速度74を測定誤差80と関係づけて生成される。
【0048】
正弦波振動は、2つ以上の誤差要素が決定されることを可能にするために、加工品の2つ以上の位置で実行される。その位置は、機械駆動を適合させる方向にある(例えば、システムのX及びY軸と位置合わせされる)。好適には、これらは計算の容易のために90度隔たる。誤差関数またはマップが、測定誤差の要素を加速度と関係づけて作成されると、対応する誤差補正は加工品のいかなる測定にも適用できる。
【0049】
図7は、加工品の測定されたおよび補正された位置測定値を示す。ライン84は、誤差補正のないスケール出力を示す。ライン86は、高周波誤差について補正された測定値を示している。ライン88は、高周波及び低周波誤差の双方について補正された測定値を示している。
【0050】
図8を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。
【0051】
加工品はCCMに置かれ、高速90で測定される。中空軸92の加速度は、加速度計により測定される。機械スケールは、加速度92によって同時に読み取られる(94)。
【0052】
加速度計により測定された加速度92は、ハイパスフィルタ96でフィルタリングされ、高周波誤差と関連する測定誤差100を生成するために二重積分される(98)。
【0053】
スケール出力94は、加速度の測定値104を生成するために二重積分される(102)。これは、ローパスフィルタ106でフィルタリングされる。代替的には、加速度データは、点線93により示されるように加速度計92から取得される。測定誤差108へ加速度を関連付ける所定の低周波誤差関数またはマップは、低周波測定誤差110を生成するためにフィルタリングされた加速度測定値に適用される。所定の低周波誤差関数またはマップは、図6に関連して説明された方法により決定できる。ステップ102-110は、図4ないし図6を参照して説明したような低周波測定誤差を決定する方法により置換できる。高周波測定誤差100と低周波測定誤差110は、誤差補正測定値112を生成するために、機械スケール測定値94に適用される。
【0054】
上記の実施形態においては、誤差関数またはマップは、簡便のためにx及びy加速度要素のみを含む。しかしながら、誤差関数またはマップは、x、y、およびz加速度要素を含む。z加速度要素が含まれるためには、高速の加工品の測定は、zにおける加速度を含む測定プロフィールを持たなければならず、例えば、それは、合成角を含んでいてもよく、あるいは、球上のら旋状の走査を含み得る。
【0055】
使用される機械において加速度計がキャリブレーションされることが好ましく、加速度計および機械の感度を適合させ、検出された振動と変形誤差の正確な相互関係を許容する。
【0056】
加速度計をキャリブレーションする1つの方法は、基準球などの固定された対象物に対してプローブのスタイラス先端を位置決めすること、および、加速度計からの出力を読み取りながら、周波数掃引によって機械を駆動することである。固定された対象物の寸法の明らかな変化は、加速度計から測定された振動と関係付けられる。
【0057】
この方法は、基準球やリングゲージなどの既知の形状の加工品を走査することによって達成できる。より高い周波数誤差要素は、加工品測定データにおいて、認識される形状リップル誤差を結果として生じさせる。形状リップル誤差と加速度計出力の間の数学的な関係が、システムをキャリブレーションするために計算される。
【0058】
最も正確な結果のために、加速度計は表面検出プローブに直接配置される。しかしながら、測定点に直接的に配置することは、実際的ではないが、より近いほうが好ましい。
【0059】
振動/高周波要素は、他の方法でも測定できる。例えば、好適には、非接触な手段により、変位が測定されるバネ系に吊り下げられたマスである。
【0060】
整合フィルタが、全周波数範囲を横切って測定が補正されるために使用される。
【0061】
高周波数及び低周波数の加速度により生成された測定誤差を結合するために、データ組み合わせアルゴリズムが用いられる。
【0062】
本発明の第3の実施形態においては、加速度を測定誤差に関係づける検索テーブルが作成される。
【0063】
検索テーブルが作成されるように、ある周波数範囲を横切る加速度と一致している一組の測定データが決定されなければならない。このデータは、図6において説明される正弦波振動を使って決定できる。
【0064】
検索テーブルのためのデータは、また、加速度を記録しながら、既知の寸法の加工品を数回測定することによって決定できる。従って、ある範囲の加速度データ及び測定データは、加工品のいくつかの位置について作成され、検索テーブルを作成するために使用できる。
【0065】
検索テーブルのために必要なデータを作成する別の方法は、図9において説明される。加工品は、表面に沿った経路を動きながら、表面116に対してプローブ先端114を半径方向に振動させることによって測定される。この方法において、ある歯にの加速度データ及び測定データが作成される。
【0066】
検索テーブルが作成されると、スケール測定値は、図10を参照して記述されるように、誤差される補正される。加工品は、スケール測定値122及び加速度124を同時に記録しながら、測定される(120)。加速度124は加速度計から決定できる。代替的には、スケール測定値122からのデータは、点線により示されるように、加速度出力を生成するために二重微分される。検索テーブル126は、測定誤差128を決定するために、加速度計出力124に適用される。測定誤差128は、スケール測定値122に測定値補正130を生成し、それから、補正された測定値132を生成するために用いられる。
【0067】
検索テーブルは、誤差マップまたは関数と置き換えても良い。検索テーブル(または、誤差マップまたは関数)は、加速度を除いた変数を含んでいる。例えば、検索テーブルは速度データを含んでいる。これは、直接に測定され、または、スケール測定値または加速度計測定値から取得される。
【0068】
この方法は、高周波数及び低周波数の加速度の双方を引き起こす誤差について補正し、これら2つを区別しない。全ての上記実施形態のCCMは、固定ベッドおよび可動プローブを備える。しかしながら、本実施形態は、固定プローブ(あるいは、一の軸線方向にのみ可動)及び移動するベッドを備える機械にも適している。このケースにおいては、プローブの加速度というよりも、ベッドの加速度が測定される。これは、加速度計を機械ベッドに配置することにより達成できる。すべてのケースにおいて、移動部分の加速度は、機械スケールに対して測定される。
【0069】
本発明の実施形態のすべては、かなりの大きさの振動をもつ機械を使う高速測定を可能にする。
【0070】
本方法のすべては、例えば、光学式または静電容量式のプローブなどの非接触プローブを使用するのに適当である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】座標計測機(CCM)の概略図である。
【図2】図1の加速度計の詳細を示す図である。
【図3】発明の第1の具体化のフローチャートである。
【図4】図3の所定の誤差マップまたは関数を決定する第1の方法のフローチャートである。
【図5】図4の所定の誤差マップまたは関数を決定する第2の方法のフローチャートである。
【図6】図5の所定の誤差マップまたは関数を決定する第3の方法のフローチャートである。
【図7】補正されていない測定データと、高い及び低い周波数の加速度について補正された測定データを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態でフローチャートである。
【図9】加工品の表面を走査しながら、半径方向に振動するプローブを示す図である。
【図10】発明の第3の実施形態のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定の誤差補正の方法であって、
(a)加工対象物を測定し;
(b)所定の誤差関数、検索テーブル又はマップから再現可能な測定誤差を決定し;
(c)少なくとも前記加速度の関数を測定し、加工対象物が測定されるときの再現不可能な測定誤差を計算し、
(d)ステップ(b)と(c)におけるトータルの誤差を決定するために、再現可能及び再現不可能な誤差を合わせ;及び
(e)ステップ(d)において決定されているトータルの誤差を使用して加工対象物の測定値を補正する、
各ステップを適宜の順序で備える方法。
【請求項2】
前記再現可能な誤差は、低周波誤差である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低周波誤差は、5Hz未満の周波数を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記再現不可能な誤差は、高周波誤差である、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記高周波誤差は、5Hzより高い周波数を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記再現不可能な誤差が、加速度計を使って決定される、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、所定の誤差関数、検索テーブル、またはマップを決定するステップを含む、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)における所定の誤差関数、検索テーブル、またはマップは、既知の寸法の加工品を特定の測定速度で測定することにより決定され、前記測定誤差は、既知および測定された寸法の違いから決定される、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記加工品は、測定される一連の加工対象物において、当該加工対象物の1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加工品が、前記加工対象物の特徴と同様のサイズと形の特徴を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記加工品の形態が、前記座標位置決め装置上で前記加工品を低速で測定することによって決定される、請求項8ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記加工品の形態が、別個の高い精度座標配置装置において測定することにより決定される、請求項8ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)の所定の誤差関数、検索テーブル、またはマップは、ある範囲の周波数で前記プローブを振動させながら、前記プローブによって加工品の測定指示値を取得することによって決定される、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a)において加工対象物を測定しているステップが加工対象物を走査することを含む、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項15】
加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定値の誤差補正の装置であって、
(a)加工対象物を測定し;
(b)所定の誤差関数、検索テーブル又はマップから再現可能な測定誤差を決定し;
(c)加工対象物が測定される際に、少なくとも加速度の関数を測定し、及び、再現不可能な測定誤差を計算し、
(d)ステップ(b)と(c)におけるトータルの誤差を決定するために、再現可能及び再現不可能な誤差を結合し;及び
(e)ステップ(d)において決定されているトータルの誤差を使用して加工対象物の測定値を補正する、
ステップを適宜の順序で実行するのに適した装置。
【請求項16】
加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定値の誤差補正の方法であって、
加工対象物測定プローブによって加工品を走査しながら、同時にプローブで加速度または加速度の関数を決定し;
測定誤差を決定するために、加工品の測定された測定値を加工品の既知の寸法と比較し;
プローブにおける少なくとも加速度または加速度の関数を測定誤差に関係づける誤差関数、マップまたは検索テーブルを生成し;
加工対象物を順次走査しながら、同時に少なくとも加速度または加速度の関数を決定し、
前記測定された加速度または加速度の関数と誤差関数、マップまたは検索テーブルから測定補正量を特定する、
各ステップを備える方法。
【請求項17】
誤差関数、マップ、または検索テーブルが他の変数を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記他の変数は、速度を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
加工対象物が装置のベッドに設置され、加工対象物検出プローブが前記ベッドに対して個々の加工対象物との関係を検出する位置と測定値が取得される位置とに移動され、少なくともベッドに対するプローブの加速度の関数を測定するための手段が備わる座標位置決め装置を使用して測定された加工対象物の測定値の誤差補正の装置であって、
加工対象物測定プローブによって加工品を走査しながら、同時にプローブにおける加速度または加速度の関数を決定し;
測定誤差を決定するために、加工品の測定された測定値を加工品の既知の寸法と比較し;
プローブにおける少なくとも加速度または加速度の関数を測定誤差に関連させる、誤差関数、マップまたは検索テーブルを生成し;
加工対象物を順次走査しながら、同時にプローブにおける少なくとも加速度または加速度の関数を決定し;
前記測定された加速度または加速度の関数と誤差関数、マップまたは検索テーブルから測定補正量を特定する、
各ステップを適宜の順序で実行するのに適した装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−534198(P2009−534198A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505946(P2009−505946)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001430
【国際公開番号】WO2007/122362
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】