説明

調光体及び合わせガラス

【課題】 電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の遮蔽性を向上した調光体及び合わせガラスを提供する。
【解決手段】 調光体1は、ラテックスから成る透明なポリマーフィルム2と、ネマティック液晶の棒状分子3が封入された液晶カプセル4から成る液晶層5とを備え、ネマティック液晶の棒状分子3の複屈折率Δnを0.08≦Δn≦0.14に設定し、カプセル径D1を1.5μm≦D1≦4.5μmの範囲内、カプセル径分布D3/D2をD3/D2≦9.0の範囲内となるように設定し、且つ液晶比率(V1)を0.4≦V1≦0.9の範囲内となるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶物質を有する調光体及び該調光体を備える合わせガラスに関し、特に、視野制御可能な調光体及び該調光体を備える合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電流駆動型のEC素子に代わり、電圧駆動型の調光素子が合わせガラスに適用されている。例えば、電圧駆動型の調光素子として、曲線的な配列相のネマティック(NCAP:Nematic Curviliner Aligned Phase)液晶調光体が知られており、このネマティック液晶調光体は、液晶物質により構成され、耐久性に優れると共に、大面積化が容易である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、このような調光体は、複数の空孔に液晶が封入された調光機能を有する液晶層と、間に当該液晶層を挟持する一対のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)から成り、透明導電膜が当該液晶層に接する各々のPETフィルムの対向面に配設され、この一対の透明導電膜を介して液晶層に電圧を印加する。そして、液晶層は多数の空孔を有する透明なポリマーフィルムからなり、当該空孔の各々は液晶が封入されることによって液晶カプセルを形成する。
【0004】
この調光体では、電圧無印加時には液晶分子が液晶カプセルの壁の曲面に沿って整列し、液晶カプセルを透過する透過光の進行方向に沿って配列していないので、当該透過光の光路を曲折したり、液晶カプセルとポリマーフィルムの境界層において入射光を散乱したりして液晶層を乳白色にする。一方、この調光体では、電圧印加時には液晶分子は発生する電界方向に沿って整列し、このとき、ポリマーフィルムの屈折率npと液晶分子の常光線屈折率noが一致するような材料から液晶層が構成されていると、液晶カプセルとポリマーフィルムの境界層が光学的に存在しない状態となり、液晶層に入射した透過光をそのまま透過させることができ、これにより液晶層を透明にする。
【0005】
以上のような原理から、当該調光体は、電圧無印加時には入射光の散乱により視野を遮断し、電圧印加時には入射光をそのままの状態で透過することにより視野を確保するという視野制御機能を有する。
【0006】
当該調光体に含有される液晶カプセルの作製方法として、電極付き対向基板間に、光重合硬化性のモノマーと液晶とを含有する溶解物を配置し、溶解物の相を制御し、光照射を行い、光重合硬化して得られた樹脂がマトリックスを形成して相分離を固定することによって調光体を製造する方法(例えば、特許文献2参照)や、高分子前駆体と高分子化反応に不活性な液体との混合物を塗布し、高分子化反応を行った後、高分子化反応に不活性な液体のみを溶出させることにより、高分子微小粒子が連鎖状に連なった構造体で構成されている多孔性高分子薄膜を作製し、該多孔性高分子薄膜の空孔に液晶材料を充填させて調光体を製造する方法(例えば、特許文献3参照)等を用いて、その液晶カプセルを作製した調光体がある。
【0007】
また、液晶の複屈折率、液晶比率、液晶カプセルの平均粒径、液晶カプセルの分散性等の各パラメータを調整することにより、電圧印加時の視野角、透過性、電圧無印加時の遮蔽性等の性能を制御した調光体もある(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特表昭58−501631号公報
【特許文献2】特開平11−119199号公報
【特許文献3】特開平07−199158号公報
【特許文献4】特開2004−302192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光重合硬化性のモノマーと液晶とを含有する溶解物に光照射することにより製造した調光体では、液晶比率、相溶温度、光重合硬化条件等の制御すべきパラメータの数が多いため、液晶の粒径や粒径分布を所望の値に制御することが困難であり、調光素子として十分な機能を発揮することができないことがあった。
【0009】
また、多孔性高分子薄膜の空孔に液晶材料を充填させて製造した調光体では、空孔の大きさ等が所望の値に制御された多孔性高分子薄膜を安定して形成することができず、調光素子として十分な機能を発揮することができないことがあった。また、製造工程が多孔性高分子薄膜(マトリックス)形成及び液晶注入の2工程から成り、複雑なものであった。
【0010】
また、液晶の複屈折率、液晶比率、液晶カプセルの平均粒径、液晶カプセルの分散性等の各パラメータを調整することにより、電圧印加時の視野角、透過性、電圧無印加時の遮蔽性等の性能を改善した調光体においては、電圧印加時の低ヘイズ化は達成できるものの、液晶カプセルの表面積が十分大きくないために、同時に電圧無印加時の遮蔽性をも更に向上させた調光体を得ることは困難であった。ここで、遮光性を向上させるために、単に小さな粒径を有する液晶カプセルの割合を増加させ、液晶カプセルの表面積を大きくすると、粒径が小さすぎて、長波長側の可視光が液晶カプセルを回折並びに透過することによって、逆に遮蔽性が低下してしまう。
【0011】
本発明の目的は、上記のような課題を解決し、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の遮蔽性を向上した調光体及び合わせガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の調光体は、複数の空孔を有し且つ当該空孔の各々に液晶材料が封入された液晶層と、間に前記液晶層を挟持する少なくとも一方が透明の一対の基板と、該基板の各々における液晶層に接する対向面に配設された透明導電膜とを備える調光体において、前記液晶材料の複屈折率Δnが0.08≦Δn≦0.14の範囲にあり、前記空孔と同体積の真球体における積算分布において、体積小側からの積算割合が50%である換算直径としてのカプセル径D1が1.5μm≦D1≦4.5μmの範囲にあり、前記空孔と同体積の真球体における積算分布において、体積小側からの積算割合が90%以下である領域における最大直径D3と体積小側からの積算割合が10%以下である領域における最大直径D2との比としてのカプセル径分布D3/D2がD3/D2≦9.0の範囲にあり、前記液晶層に含まれる液晶材料の固形分重量換算による液晶比率V1が0.4≦V1≦0.9の範囲にあることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の調光体は、請求項1記載の調光体において、前記カプセル径D1及び前記複屈折率Δnとの積Δn*D1が0.45≧Δn*D1≧0.20の範囲にあり、前記カプセル径分布D3/D2が2.5*D1≧D3/D2の範囲にあることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の調光体は、請求項1又は2記載の調光体において、前記液晶層の膜厚d1が10μm≦d1≦25μmの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の調光体は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調光体において、前記透明導電膜間に電圧を印加しない時の波長800nmの平行光線の透過率Tpが4.7%以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の調光体は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調光体において、 前記透明導電膜間に電圧を印加した時のヘイズが10%以下であることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項6記載の合わせガラスは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調光体を備えることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項7記載の製造方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調光体を製造する製造方法であって、液晶材料及びニュートン流体を攪拌する攪拌ステップと、前記攪拌された液晶材料及びニュートン流体を基板に塗布する塗布ステップとを備えることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の製造方法は、請求項7記載の製造方法において、前記ニュートン流体の粘度は130cp以下であることを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の製造方法は、請求項7又は8記載の製造方法において、前記攪拌ステップにおける液晶材料及びニュートン流体を攪拌する攪拌部の温度が20〜40℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液晶材料の複屈折率Δnが0.08≦Δn≦0.14の範囲にあり、空孔と同体積の真球体における積算分布において、体積小側からの積算割合が50%である換算直径としてのカプセル径D1が1.5μm≦D1≦4.5μmの範囲にあり、空孔と同体積の真球体における積算分布において、体積小側からの積算割合が90%以下である領域における最大直径D3と体積小側からの積算割合が10%以下である領域における最大直径D2との比としてのカプセル径分布D3/D2がD3/D2≦9.0の範囲にあり、液晶層に含まれる液晶材料の固形分重量換算による液晶比率V1が0.4≦V1≦0.9の範囲にあるので、液晶カプセル粒径の均一性を高めて、所望の大きさのカプセル径を有する液晶カプセルの割合を増加させることにより、液晶カプセルの表面積を大きくし、可視光を効果的に散乱させることができ、もって電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の遮蔽性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る調光体について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る調光体の断面図である。
【0024】
図1において、調光体1は、複数の空孔を有するラテックスから得られる透明なポリマーフィルム2、及び上記空孔の各々にネマティック液晶の棒状分子3が封入されることによって形成された液晶カプセル4から成る液晶層5と、間に液晶層5を挟持する一対のPETフィルム6a,bと、該一対のPETフィルム6a,bの各々における液晶層5に接する対向面に配設された透明導電膜7a,bとを備え、調光体1において一対の透明導電膜7a,bを介して液晶層5に電圧を印加する。
【0025】
この調光体1では、液晶層5への電圧無印加時にはネマティック液晶の棒状分子3が液晶カプセル4の壁の曲面に沿って整列し、液晶カプセル4を透過する透過光の進行方向に沿って配列しないので、透過光の光路を曲折したり、液晶カプセル4及びポリマーフィルム2の境界層において入射光を散乱して液晶層5を乳白色にする。一方、この調光体1では、液晶層5への電圧印加時、ネマティック液晶の棒状分子3が発生する電界方向に沿って整列し、このとき、ポリマーフィルム2の屈折率npとネマティック液晶の棒状分子3の常光線屈折率noが一致するような材料から液晶層5が構成されていると、液晶カプセル4とポリマーフィルム2の境界層が光学的に存在しない状態となり、液晶層5に入射した透過光をそのまま透過させることができ、これによって液晶層5を透明にする。
【0026】
以上のような原理から、当該調光体1は、電圧無印加時には入射光の散乱により視野を遮断し、電圧印加時には入射光をそのままの状態で透過することにより視野を確保するという視野制御機能を有する。
【0027】
次に、調光体1の製造方法について説明する。
【0028】
調光体1は、液晶材料と水に溶解させた水溶性高分子(水性相)若しくは樹脂エマルション(ラテックス)とを混合して攪拌することにより得られた塗布液を透明導電膜7aが形成されたPETフィルム6a上に塗布し、透明導電膜7bが形成されたPETフィルム6bを貼り合わせるエマルション法によって作製される。
【0029】
詳しくは、まず、PETフィルム6a,bの各々において、その片面上にITO膜からなる透明導電膜7a,bを形成する。
【0030】
次いで、ポリマーフィルム用ラテックスと液晶材料を含むエマルジョンを作製する。液晶材料と水性相とを混合してエマルジョンを作製し、該作製されたエマルジョンをラテックスに添加するか、又は、液晶材料をラテックスに直接添加し、必要によって水性相を加え、ミキサーで混合してエマルジョンを作製する。
【0031】
ミキサーとしては、ブレンダー、コロイドミル、ホモジナイザー等が使用できる。このミキサーの運転条件を制御して、液晶カプセル4のカプセル径D1及びカプセル径分布D3/D2を所望の値に制御することができる。
【0032】
さらに、作製されたエマルジョン中のラテックスを架橋するため架橋剤を添加する。当該架橋剤の添加量は、ラテックスの固形分量に対応して、この固形分量相当のラテックスの全てを架橋可能な量に設定される。
【0033】
そして、得られたエマルジョンをナイフブレード等の手段によって、透明導電膜7a上にフィルム状に塗布して乾燥させ、ラテックスの架橋を進行させて、液晶層5を形成する。
【0034】
次いで、形成された液晶層5に透明導電膜7bが接するようにPETフィルム6bを貼り合わせる。
【0035】
また、液晶を用いた調光体1において、液晶の複屈折率Δnが小さいと電圧印加時のヘイズが小さくなるという性質があるので、ネマティック液晶の棒状分子3の複屈折率Δnは小さく設定される。具体的には、複屈折率Δnが0.14より大きいと十分に低いヘイズが得られない一方、複屈折率Δnが0.08より小さいと電圧無印加時の遮蔽性が不足するため、ネマティック液晶の棒状分子3の複屈折率Δnは0.08≦Δn≦0.14に設定される。
【0036】
さらに、液晶カプセル4のカプセル径D1については、カプセル径D1<1.5であると、液晶カプセル4の粒径の小径化に伴って、表面積が増大し、透過光の散乱量が増加して可視域での平均透過率は低くなるものの、長波長側の光が液晶カプセル4を回折並びに透過することにより、電圧無印加時の遮蔽性が低下する。ここで、遮蔽性を向上するためには、電圧無印加時の長波長側の光、特に800nm付近の波長域の光を遮断する必要がある。具体的には、電圧無印加時の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)が4.7%≧Tpの範囲に設定されることが望ましい。一方、カプセル径D1>4.5であると、液晶カプセル4の粒径の大径化に伴って液晶カプセル4の表面積が減少し散乱量が低下して、電圧無印加時の遮蔽性が低下する。従って、調光体1では、カプセル径D1が1.5≦D1≦4.5の範囲内に設定され、複屈折率Δnとカプセル径D1との積Δn*D1が0.45≧Δn*D1≧0.20の範囲に設定されるのが好ましい。
【0037】
ここで、Δnが一定であるとすると、0.20>D1*Δnの範囲ではカプセル径D1が小さすぎ、D1*Δn>0.45の範囲ではカプセル径D1が大きすぎて、共に好ましくない。
【0038】
一般に、遮蔽性を向上するには、液晶層5の膜厚(d1)を厚くするのが効果的であるが、単純に液晶層5の膜厚(d1)を厚くするだけでは、電圧印加時のヘイズが高くなり、調光体1に必要とされる性能を達成できない。一方、液晶層5の膜厚(d1)が薄すぎると、電圧印加時の低ヘイズ化は達成できるものの、電圧無印加時の遮蔽性を十分確保することができない。従って、電圧無印加時の遮蔽性と電圧印加時のヘイズを両立するためには、液晶層5の膜厚(d1)が10≦d1≦25μmの範囲にあることが好ましい。
【0039】
また、液晶層5において、大きな粒径を有する液晶カプセル4の割合が増加すると、液晶カプセル4の表面積が減少して、透過光の可視域における散乱が減少し、電圧無印加時の遮蔽性が低下する。ここで液晶カプセル4の表面積を大きくするために、小さな粒径を有する液晶カプセル4の割合を増加させることが考えられるが、粒径が小さすぎると、長波長側の光が液晶カプセル4を回折並びに透過しやすくなり、電圧無印加時の遮蔽性が低下してしまう。さらに、大きすぎる粒径や小さすぎる粒径を有する液晶カプセル4の比率が増加すると、電圧印加時のヘイズが高くなり、必要とされる調光体1の性能は得られない。
【0040】
従って、調光体1では、液晶カプセル4の粒径の均一性を向上することによって、液晶カプセル4の表面積を増大して、光を効果的に散乱するようにし、さらに、所望の大きさの粒径を有する液晶カプセル4の割合を増加して、可視光を効果的に散乱するようにする。具体的には、カプセル径分布D3/D2がD3/D2≦9.0の範囲内となるように設定されると共に、カプセル径D1とカプセル径分布D3/D2が2.5*D1≧D3/D2の関係、より好ましくは、2.3*D1≧D3/D2の関係を満たすように設定する。
【0041】
また、液晶カプセル4の粒径の均一性を高めるためには、水性相又はラテックスがニュートン流体に近いこと、具体的には水性相として、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HMC)、及びメチルセルロース(MC)等のセルロース誘導体や、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)、及びポリビニルピロリドン(PVP)等の合成系の水溶性高分子や、それらの混合物を用い、また、ラテックスとして、例えば、ウレタン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、及びエポキシ樹脂エマルション等の合成樹脂エマルションや、各々の共重合体から成る樹脂エマルションを用いることが好ましい。
【0042】
ここで、ニュートン流体とは、せん断応力が流速勾配に比例する流体のことであり、加えた力(ズリ応力)と変位速度(ズリ速度)との間に比例関係が成立する。すなわち、水性相又はラテックスがニュートン流体に近く、溶液内に一定のズリ応力がかかる場合には、容器内の粘度差は小さく均一性の高い液晶カプセルが得られる。
【0043】
しかし、水性相又はラテックスの固形分濃度が増加すると粒子間の相互作用(水素結合)により、上記比例関係が崩れることになる。
【0044】
その結果、容器内の回転ムラによるズリ応力の分布が発生する。すなわち液晶カプセル4と水性相との界面、又は液晶カプセル4とラテックスとの界面に生じるズリ応力の分布が発生し、粒径が均一な液晶カプセル4を作製することができない。すなわち液晶カプセル4の粒径の均一性を高めるためには、水性相又はラテックスの粘度を調整する必要がある。
【0045】
図2は、水性相としてのNeorez R−967(ゼネカ社製)の粘度と温度との関係を示すグラフである。
【0046】
図2において、◇は固形分が35%であって攪拌速度20rpmで攪拌したNeorez R−967を示し、□は固形分が35%であって攪拌速度50rpmで攪拌したNeorez R−967を示し、△は固形分が40%であって攪拌速度20rpmで攪拌したNeorez R−967を示し、■は固形分が40%であって攪拌速度50rpmで攪拌したNeorez R−967を示す。
【0047】
Neorez R−967(ゼネカ社製)の粘度を調整する方法としては、水添加又は攪拌時の温度制御がある。具体的には水性相又はラテックスの粘度を130cp以下に調整することが好ましい。また、攪拌時の温度を20℃乃至40℃の範囲に制御することが好ましい。
【0048】
即ち、水性相として、固形分が40%であって攪拌速度50rpmで攪拌すると共に30℃〜40℃に調整したNeorez R−967(ゼネカ社製)や、固形分が35%であって攪拌速度50rpmで攪拌すると共に20℃〜40℃に調整したNeorez R−967(ゼネカ社製)を用いることにより、粘度を130cp以下にすることができ、もって液晶カプセル4の粒径の均一性を高めることができる。
【0049】
また、液晶層5を形成するエマルジョン中に含まれる固形分重量換算による液晶比率(液晶材料の重量/エマルジョンの固形分の重量)V1は、0.4≦V1≦0.9の範囲内となるように設定されるが、電圧印加時の透明性と電圧無印加時の遮蔽性をより安定して達成するためには、液晶比率V1をより狭い範囲で管理することが有利であり、0.5≦V1≦0.8の範囲にあることがより好ましい。V1<0.4の範囲の液晶比率では、液晶カプセル4の量が不足するため、液晶カプセル4とポリマーフィルム2との界面における散乱が不十分であって、電圧無印加時の遮蔽性が不十分である。また、V1>0.9の範囲の液晶比率では、ラテックスの比率が低いため、液晶カプセル4の形状を保持することが困難となる。
【0050】
以上より、本実施の形態に係る調光体1では、ネマティック液晶の棒状分子3の複屈折率Δnが0.08≦Δn≦0.14に設定され、カプセル径D1が1.5≦D1≦4.5の範囲内となるように設定され、カプセル径分布D3/D2がD3/D2≦9.0の範囲内となるように設定され、且つ液晶比率(V1)が固形分に換算して0.4≦V1≦0.9の範囲内となるように設定されるので、液晶カプセル4の粒径の均一性を向上することによって、液晶カプセル4の表面積を増大し、所望の大きさの粒径を有する液晶カプセル4の割合を増加し、可視光を効果的に散乱するようにして、電圧無印加時の遮蔽性と電圧印加時の透明性のバランスをよくすることができ、もって測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を4.7%≧Tpの範囲に設定すると共に、交流100V、周波数50Hzのサイン波である電圧を印加したときのヘイズをヘイズ≦10.0%の範囲に設定することができる。
【0051】
また、透明性を確保するためには、40V〜140Vの範囲内の交流で作動することが好ましい。なお、60V〜120Vの範囲内の交流であるとより好ましい。
【0052】
40Vより小さいと液晶の配向が不十分で十分な透明性が得られない一方で、140Vより大きいと液晶の配向は十分であり透明性は確保できるものの、フィルム内に流れる電流が増加し、液晶及びマトリックスの劣化が生じ性能の長期安定性が損なわれる可能性がある。
【0053】
本実施の形態に係る調光体1における液晶は、ネマティック液晶の棒状分子3に限定されるものではなく、コレステリック液晶及びスメクティック液晶を用いてもよい。
【0054】
本実施の形態に係る調光体1におけるポリマーフィルム2は、その屈折率nとネマティック液晶等の液晶材料の常光線屈折率noとが近似する材料であって、液晶材料を複数のカプセル状に保持できるものであればよく、無機及び有機の種類を問わずに用いることができるが、特に、PETフィルム6上に形成された透明導電膜7との接着性、及び光学的均一性を有するラテックスが好ましく、これにより物理的耐久性に優れた調光体1を提供することができる。
【0055】
また、本実施の形態に係る調光体1における透明導電膜7が形成されたPETフィルム6の代わりに、インジウム鉱酸化物(ITO)膜や錫酸化物(SnO)膜が表面に形成されたガラス板やプラスチックフィルム等を用いてもよい。
【実施例】
【0056】
次に、本発明に係る実施例を具体的に説明する。
【0057】
(実施例1)
液晶JM1000XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.096)にラテックス粒子35重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を40℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.62のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.60であった。
【0058】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは23.3μmであった。
【0059】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は3.8μmであり、カプセル径分布D3/D2は6.5であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.7であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.36であった。
【0060】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=4.2%、ヘイズ=7.6%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の高遮蔽性を実現できることが分かった。
【0061】
(実施例2)
液晶JM1004XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.132)にラテックス粒子35重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を40℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.68のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.66であった。
【0062】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは20.0μmであった。
【0063】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は2.8μmであり、カプセル径分布D3/D2は4.8であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.7であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.37であった。
【0064】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=1.8%、ヘイズ=8.8%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の高遮蔽性を実現できることが分かった。
【0065】
(実施例3)
液晶JM1004XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.132)にラテックス粒子35重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を40℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.72のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.70であった。
【0066】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは13.7μmであった。
【0067】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は2.7μmであり、カプセル径分布D3/D2は4.9であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.8であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.36であった。
【0068】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=3.8%、ヘイズ=5.1%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の高遮蔽性を実現できることが分かった。
【0069】
(実施例4)
液晶JM1000XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.096)にラテックス粒子35重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を40℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.62のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.60であった。
【0070】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは21.0μmであった。
【0071】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は4.0μmであり、カプセル径分布D3/D2は7.5であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.9であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.39であった。
【0072】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=2.5%、ヘイズ=9.4%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の高遮蔽性を実現できることが分かった。
【0073】
(実施例5)
液晶JM1000XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.096)にラテックス粒子35重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を40℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.72のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.70であった。
【0074】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは20.6μmであった。
【0075】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は3.7μmであり、カプセル径分布D3/D2は6.5であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.8であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.35であった。
【0076】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=4.7%、ヘイズ=5.4%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の高遮蔽性を実現できることが分かった。
【0077】
(実施例6)
液晶JM1000XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.096)にラテックス粒子35重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を40℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.62のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.60であった。
【0078】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは23.4μmであった。
【0079】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は4.1μmであり、カプセル径分布D3/D2は7.8であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.9であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.40であった。
【0080】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=4.5%、ヘイズ=7.8%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持しつつ、電圧無印加時の高遮蔽性を実現できることが分かった。
【0081】
(比較例1)
液晶JM1000XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.096)にラテックス粒子40重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を10℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.62のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.60であった。
【0082】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは22.0μmであった。
【0083】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は5.0μmであり、カプセル径分布D3/D2は11.0であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は2.2であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.48であった。
【0084】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=6.6%、ヘイズ=8.1%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持することができるものの、電圧無印加時の高遮蔽性を実現することができないことが分かった。
【0085】
(比較例2)
液晶JM1004XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.132)にラテックス粒子40重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を10℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.62のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.60であった。
【0086】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは23.3μmであった。
【0087】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は5.6μmであり、カプセル径分布D3/D2は9.0であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.6であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.74であった。
【0088】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=2.9%、ヘイズ=10.1%であり、電圧無印加時の高遮蔽性を実現することができるものの、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持することができないことが分かった。
【0089】
(比較例3)
液晶JM1000XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.096)にラテックス粒子40重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を10℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.62のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.60であった。
【0090】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは28.5μmであった。
【0091】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は11.4μmであり、カプセル径分布D3/D2は9.2であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は0.8であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは1.09であった。
【0092】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=9.3%、ヘイズ=6.6%であり、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持することができるものの、電圧無印加時の高遮蔽性を実現することができないことが分かった。
【0093】
(比較例4)
液晶JM1004XX(チッソ社製、複屈折率Δn=0.132)にラテックス粒子40重量%を含むNeorez R−967(ゼネカ社製)を添加した後、攪拌部を10℃に保持しつつ、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製)を用いて撹拌し、液晶比率が0.72のエマルジョンを得た。次いで、該エマルジョンをゆっくり攪拌しながら架橋剤CX−100(ゼネカ社製)をエマルジョンに対して3重量%の割合で添加した。そして、架橋剤が添加されたエマルジョンをドクターブレードを用いて、ITO膜付きPETフィルム上に塗布し、乾燥した。なお、架橋剤が添加された(最終的に得られた)エマルジョンの液晶比率は0.70であった。
【0094】
そして、塗布されたエマルジョンの乾燥後、該エマルジョンをもう一枚のITO膜付きPETフィルムと貼合わせ、調光体を得た。当該調光体の厚みは25.9μmであった。
【0095】
また、上記調光体における液晶カプセルをレーザー回折式粒度分布測定器SALD−1100(島津製作所製)を用いて評価した結果、カプセル径D1は5.2μmであり、カプセル径分布D3/D2は9.2であった。ここで、カプセル径分布D3/D2とカプセル径D1との比D3/(D1*D2)は1.8であり、カプセル径D1と複屈折率Δnとの積D1*Δnは0.68であった。
【0096】
このようにして得られた調光体の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を瞬間マルチ測光システムMCPD−1000(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、サイン波/100V/50Hzである低電圧を印加したヘイズをヘーズメータによって測定した結果、測定結果は、Tp=1.7%、ヘイズ=13.9%であり、電圧無印加時の高遮蔽性を実現することができるものの、電圧印加時の低ヘイズ化性能を維持することができないことが分かった。
【0097】
実施例1〜6及び比較例1〜4の結果について、表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1より、ネマティック液晶の棒状分子3の複屈折率Δnが0.08≦Δn≦0.14に設定され、カプセル径D1が1.5μm≦D1≦4.5μmの範囲内、カプセル径分布D3/D2がD3/D2≦9.0の範囲内となるように設定され、且つ液晶比率(V1)が固形分に換算して0.4≦V1≦0.9の範囲内となるように設定されると、電圧無印加時の測定波長800nmにおける平行光線透過率(Tp)を4.7%≧Tpの範囲に設定すると共に、電圧印加時のヘイズをヘイズ≦10.0%の範囲に設定することができることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施の形態に係る調光体の断面図である。
【図2】水性相としてのNeorez R−967(ゼネカ社製)の粘度と温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0101】
1 調光体
2 ポリマーフィルム
3 ネマティック液晶
4 液晶カプセル
5 液晶層
6 PETフィルム
7 透明導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空孔を有し且つ当該空孔の各々に液晶材料が封入された液晶層と、間に前記液晶層を挟持する少なくとも一方が透明の一対の基板と、該基板の各々における液晶層に接する対向面に配設された透明導電膜とを備える調光体において、前記液晶材料の複屈折率Δnが0.08≦Δn≦0.14の範囲にあり、前記空孔と同体積の真球体における積算分布において、体積小側からの積算割合が50%である換算直径としてのカプセル径D1が1.5μm≦D1≦4.5μmの範囲にあり、前記空孔と同体積の真球体における積算分布において、体積小側からの積算割合が90%以下である領域における最大直径D3と体積小側からの積算割合が10%以下である領域における最大直径D2との比としてのカプセル径分布D3/D2がD3/D2≦9.0の範囲にあり、前記液晶層に含まれる液晶材料の固形分重量換算による液晶比率V1が0.4≦V1≦0.9の範囲にあることを特徴とする調光体。
【請求項2】
前記カプセル径D1及び前記複屈折率Δnとの積Δn*D1が0.45≧Δn*D1≧0.20の範囲にあり、前記カプセル径分布D3/D2が2.5*D1≧D3/D2の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の調光体。
【請求項3】
前記液晶層の膜厚d1が10μm≦d1≦25μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の調光体。
【請求項4】
前記透明導電膜間に電圧を印加しない時の波長800nmの平行光線の透過率Tpが4.7%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調光体。
【請求項5】
前記透明導電膜間に電圧を印加した時のヘイズが10%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調光体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調光体を備えることを特徴とする合わせガラス。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調光体を製造する製造方法であって、液晶材料及びニュートン流体を攪拌する攪拌ステップと、前記攪拌された液晶材料及びニュートン流体を基板に塗布する塗布ステップとを備えることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
前記ニュートン流体の粘度は130cp以下であることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記攪拌ステップにおける液晶材料及びニュートン流体を攪拌する攪拌部の温度が20〜40℃であることを特徴とする請求項7又は8記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−33533(P2007−33533A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212838(P2005−212838)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】