説明

調光器

【課題】調光範囲の下限における供給電力の調整が容易に行える調光器を提供する。
【解決手段】調光器1は、調光器本体20の前面に回転自在に配置された回転ハンドル29と、照明負荷への供給電力を回転ハンドル29の設定位置に応じて変化させることによって、照明負荷を所定の調光範囲で調光点灯させる調光制御部を備える。調光器本体20の前側にはカバー40が着脱自在に取り付けられる。調光器本体20の前面には、カバー40の裏面に設けられた突起と対向する位置にタクトスイッチ31が配置されている。カバー40が外されると、タクトスイッチ31の押釦31aがカバー40の突起で押されなくなるため、調光器1の動作モードが調整モードに切り替えられ、回転ハンドル29の操作に応じて、照明負荷への供給電力の下限値が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、調光信号に応じて放電灯に供給する電力を制御することによって、放電灯を調光点灯させる放電灯点灯装置があった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−149408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高輝度で低消費電力の発光ダイオードが照明用途に使用されつつあり、従来の白熱電球と同じ口金を有するLED電球も提供されている。このようなLED電球が、位相制御方式でランプを調光する機能を備えた調光器と組み合わせて使用される場合、LED電球は、電球毎に最低点灯電圧のバラツキが大きいため、LED電球を交換した際に調光下限でLED電球が点灯しない可能性があった。そのため例えば個々のLED電球毎に調光下限値を調整する必要があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、調光範囲の下限における供給電力の調整が容易に行える調光器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の調光器は調光操作部と調光制御部と調光下限設定部とモード切替部とを備える。調光操作部は、照明負荷の調光レベルを設定するためにユーザが操作する。調光制御部は、調光操作部の操作に応じて照明負荷への供給電力を変化させることによって、照明負荷を所定の調光範囲において所望の調光レベルで調光点灯させる。調光下限設定部は、調光範囲の下限において照明負荷に供給される供給電力を調整する。モード切替部は、調光制御部が調光操作部の操作に応じて照明負荷を調光点灯する点灯制御モード、及び、調光範囲の下限において照明負荷に供給される供給電力を調光下限設定部が調光操作部の操作に応じて調整する調整モードのうちの何れかに動作モードを切り替える。
【0007】
この調光器において、調光制御部及び調光下限設定部を収納し前面に調光操作部が配置された調光器本体と、少なくとも調光操作部を露出させた状態で調光器本体の前面を覆うようにして調光器本体に着脱自在に取り付けられるカバーとを備えることも好ましい。モード切替部は、カバーの着脱状態を検出する検出手段を有し、カバーが調光器本体に取り付けられた状態では点灯制御モードに、カバーが調光器本体から外された状態では調整モードに切り替える。
【0008】
この調光器において、モード切替部によって点灯制御モードに切り替えられた状態では、調光操作部の操作範囲が照明負荷の調光範囲に対応する。また、モード切替部によって調整モードに切り替えられた状態では、調光操作部の操作範囲が、調光範囲の下限における供給電力の調整可能範囲に対応することも好ましい。
【0009】
この調光器において、照明負荷が消灯している状態で発光する位置表示用の発光部と、消灯時とは異なる点灯状態で発光部を発光させることによって調整モードに切り替えられたことを報知する報知部とを備えることも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モード切替部を用いて調整モードに切り替えた状態で調光操作部を操作することによって、調光範囲の下限において照明負荷に供給される供給電力を調整することができる。したがって、個々の照明負荷で点灯開始電圧のばらつきが大きい場合でも、調光範囲の下限における供給電力を調整することによって、照明負荷を確実に点灯させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の調光器を示し、(a)は化粧プレートが外された状態の外観斜視図、(b)は化粧プレート及びカバーが外された状態の外観斜視図である。
【図2】同上の調光器を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)は下面図である。
【図3】同上の調光器を示し、(a)は分解斜視図、(b)はカバーを裏側から見た斜視図である。
【図4】同上の調光器のブロック図である。
【図5】(a)は全波整流器の出力電圧V1の波形図、(b)はゼロクロス検出部の出力信号S1の波形図、(c)はスイッチング素子Q1のオン/オフ状態を示す波形図、(d)は照明負荷3に印加される電圧V2の波形図である。
【図6】同上の回転ハンドルの操作位置と調光レベルとの関係を示す説明図である。
【図7】同上の調光器の他例を示し、(a)は化粧プレートが外された状態の外観斜視図、(b)は化粧プレート及びカバーが外された状態の外観斜視図である。
【図8】同上の調光器のまた別の例を示し、(a)は化粧プレートが外された状態の外観斜視図、(b)は化粧プレート及びカバーが外された状態の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の調光器について図面を参照して説明する。
【0013】
図4は調光器1の概略的なブロック図である。この調光器1は、外部回路が接続される接続端子T1,T2と、全波整流器DB1と、スイッチング素子Q1と、調光制御部11と、ゼロクロス検出部12と、調光操作部13と、モード切替部14と、発光部15と、記憶部16とを備えている。
【0014】
接続端子T1,T2間には、外部回路として、商用交流電源2と、LED電球のような照明負荷3との直列回路が接続されている。また接続端子T1,T2には、全波整流器DB1の交流入力端子がそれぞれ接続されている。
【0015】
全波整流器DB1は、接続端子T1,T2から入力される交流電圧を全波整流して直流に変換する。全波整流器DB1の直流出力端子間には、例えばサイリスタ(SCR)からなるスイッチング素子Q1が接続されている。
【0016】
ゼロクロス検出部12は、全波整流器DB1によって全波整流された後の電圧V1と、所定のしきい値Vth1との高低を比較することによって、交流電源電圧のゼロクロスを検出する。ゼロクロス検出部12から出力される信号S1の信号レベルは、電圧V1がしきい値Vth1よりも低ければローレベル(L)になり、電圧V1がしきい値Vth1よりも高ければハイレベル(H)になる(図5(a)(b)参照)。したがって、交流電源電圧のゼロクロス付近では、ゼロクロス検出部12の出力信号S1はローレベル(L)になる。
【0017】
調光操作部13は、操作子の回転位置に応じて抵抗値が変化する電源スイッチ付きの回転ボリューム(図示せず)からなり、後述のモード切替部14によって点灯制御モードに切り替えられた場合と調整モードに切り替えられた場合とで異なる用途に用いられる。すなわち、点灯制御モードにおいては調光操作部13は照明負荷3の調光レベルを設定するために用いられ、調整モードにおいては調光範囲の下限において照明負荷3に供給される供給電力を設定するために用いられる。点灯制御モードにおいて、ユーザが回転ボリュームの操作子をオフ位置に移動させると、調光制御部11がスイッチング素子Q1をオフさせて、照明負荷3を消灯させる。また点灯制御モードにおいて、ユーザが操作子をオフ位置から所望の回転位置まで移動させると、調光制御部11は、回転ボリュームの抵抗値をもとに照明負荷3への供給電力を制御し、回転位置に応じた調光レベルで照明負荷3を点灯させる。また調整モードにおいて、ユーザが操作子をオフ位置から所望の回転位置まで移動させると、調光下限設定部としての調光制御部11は、回転ボリュームの抵抗値をもとに、調光範囲の下限において照明負荷3に供給される供給電力を設定する。
【0018】
モード切替部14は、調光制御部11の動作モードを、照明負荷3を調光点灯する点灯制御モード、及び、調光範囲の下限において照明負荷3に供給される供給電力を設定する調整モードのうちの何れかに切り換えるために用いられる。モード切替部14は、調光器本体20の前面に押釦31aが配置されたタクトスイッチ31からなり、押釦31aが押された状態ではタクトスイッチ31が例えばオンになって、調光制御部11の動作モードが点灯制御モードに切り替えられる。また、押釦31aが押されていない状態ではタクトスイッチ31が例えばオフになって、調光制御部11の動作モードが調整モードに切り替えられる。
【0019】
調光制御部11は例えばマイコンなどをその構成要素として備え、モード切替部14によって動作モードが切り替えられる。点灯制御モードにおいては、調光制御部11は、ゼロクロス検出部12の出力S1がローレベルからハイレベルに反転した時点から、調光操作部13を用いて設定された調光レベルに対応した時間が経過すると、スイッチング素子Q1をオン状態に切り替える。そして、調光制御部11は、次のゼロクロスがくるまでスイッチング素子Q1をオン状態で動作させる(図5(c)参照)。これにより、図5(d)に示すように照明負荷3に供給される電圧V2の位相角が調整され、照明負荷3への供給電力が調整されるので、設定に応じた調光レベルで照明負荷3が点灯させられる。ここで、導通位相角(交流電源の半周期においてスイッチング素子Q1が導通している期間)が大きくなるほど、照明負荷3への供給電力が大きくなり、照明負荷3の光出力が明るくなる。また調整モードにおいては、調光下限設定部としての調光制御部11は、調光操作部13の操作量に応じて、調光範囲の下限において照明負荷3に供給される供給電力を決定し、この値を記憶部16に記憶させる。
【0020】
発光部15は例えば発光ダイオードからなり、発光部15の発光が調光器1の外部から視認可能な状態で配置されており、発光部15の点灯状態(点灯、点滅、消灯)は調光制御部11によって制御される。調光制御部11は、照明負荷3を消灯させている状態で発光部15を点灯させることによって、調光器1の位置表示を行う。また調光制御部11は、調整モードに切り替えられると、所定の時間間隔で発光部15を点滅させることによって、調整モードに切り替わったことをユーザに報知する。
【0021】
記憶部16は不揮発性のメモリからなり、調整モードにおいて調光制御部11によって調整された供給電力の値を記憶する。
【0022】
次に、この調光器1の構造を図1〜図3に基づいて説明する。尚、以下の説明では特に断りが無い限り、図2(a)に示す向きにおいて上下左右の方向を規定し、図2(b)の左側を前側、右側を後側として説明を行うこととする。
【0023】
この調光器1は、調光器本体20と、調光器本体20の前面を覆うようにして調光器本体20に取り付けられるカバー40とを主要な構成として備えている。
【0024】
調光器本体20は、合成樹脂により前面が開口した箱状に形成された後ボディ21と、合成樹脂により後面が開口した前ボディ22とを結合することによって略箱状に形成されている。前ボディ22の上面及び下面の後端からは、後方に向かってそれぞれ突出する係止片23が2個ずつ設けられている。後ボディ21の上面及び下面には、各係止片23の孔23aにそれぞれ対応する部位に突起24が設けられている。而して、互いの開口部を塞ぐようにして後ボディ21の前側に前ボディ22を被せ、各係止片23の孔23aに対応する突起24を係止させることによって、後ボディ21と前ボディ22とが結合されるようになっている。
【0025】
この調光器本体20の内部には、図4に示した接続端子T1,T2、全波整流器DB1、スイッチング素子Q1、調光制御部11、ゼロクロス検出部12、調光操作部13、モード切替部14、発光部15、記憶部16などの回路部品が収納されている。
【0026】
調光器本体20は、埋込配線器具用に規格化された金属製の取付枠50に取付可能であり、所謂2個モジュール寸法に形成されている。ここで、取付枠50に3個まで並べて取付可能な埋込配線器具の大きさを1個モジュール寸法といい、1個モジュール寸法の埋込配線器具を上下方向に2個並べたのと略同じ大きさを2個モジュール寸法と言う。
【0027】
調光器本体20の前部を構成する前ボディ22の上下両側面には、前側寄りの端縁の左右両側位置に凹溝28がそれぞれ設けられている。また前ボディ22の前面(つまり調光器本体20の前面)には、調光器本体20内に収納された回転ボリューム(図示せず)の回転軸(操作子)に連結された略円盤形の回転ハンドル29が、回転自在に取り付けられている。この回転ハンドル29の前面には、設定位置の目印となる溝29aが設けられている。前ボディ22の前面の右下隅には、他の部位よりも後側に凹んだ凹部30が設けられている。この凹部30にはモード切替部14を構成するタクトスイッチ31の押釦31aが配置されている。さらに、前ボディ22の前面には、調光器本体20の内部に収納された発光部15の発光を外部に透過させるランプカバー33が、回転ハンドル29の下側に配置されている。
【0028】
調光器本体20の後部を構成する後ボディ21の後面には、調光器本体20の内部に電線を挿入するための2個の電線挿通孔34が開口するとともに、2個の電線挿通孔34に隣接して工具差込孔35が開口している(図2(c)参照)。調光器本体20の内部には、各電線挿通孔34から挿入された電線が接続される速結形の端子装置(図示せず)が収納されており、これらの端子装置で上述の接続端子T1,T2が構成される。また、工具差込孔35から挿入された工具(例えばマイナスドライバーなど)の先端で、速結形の端子装置を構成する鎖錠ばね(図示せず)を電線から離れる方向に押し撓めることによって、端子装置から電線を容易に取り外すことができる。尚、速結形の端子装置については従来周知であるから、その説明は省略する。
【0029】
また調光器本体20の前側(すなわち前ボディ22の前側)にはカバー40が着脱自在に取り付けられる。カバー40は合成樹脂により矩形板状に形成されており、回転ハンドル29を通すための丸穴41が中央に開口し、丸穴41の下側にはランプカバー33を通すための長孔42が開口している。カバー40の裏面には、図3(b)に示すように、前ボディ22の上下両側面に対応する位置から後方に突出する係止片43が設けられ、係止片43の先端の爪43aを凹溝28に係止させることによって、カバー40が調光器本体20に取り付けられる。また、カバー40の裏面には、タクトスイッチ31の押釦31aに対応する部位から後方に突出し、調光器本体20に取り付けられた状態で押釦31aを押圧する丸棒状の突起44が設けられている。尚、カバー40の前面には、丸穴41の周りに、回転ハンドル29の回転範囲を示す表示が印字等の方法で形成されている。図1の例では、小さいドットD1が調光範囲の下限位置を、大きいドットD2が調光範囲の上限位置を示し、ドットD1,D2及びドットD1,D2間を結ぶ弧状の線L1が回転ハンドル29の可動範囲を示している。また電源スイッチのオフ位置を示す「OFF」という文字が、小さいドットD1の右側に設けられている。
【0030】
また、調光器本体20の前部を構成する前ボディ22の左右両側面には、取付枠50の左右の側片51に設けられた孔53にそれぞれ係止する2個で1組の係止爪25が上側寄りに設けられている。調光器本体20は、係止爪25を孔53に係止させることによって取付枠50に取り付けられる。調光器本体20が取付枠50に取り付けられた状態では、取付枠50の中央の窓孔50aから調光器本体20の前面の略全体が前方に突出している(図1(a)(b)参照)。尚、前ボディ22の左右両側面には、係止爪25が設けられた部位の上側及び下側に、後端側が開放されたスリット26が設けられており(図3参照)、一対のスリット26で挟まれた突片27が左右方向において撓み自在となっている。この突片27の後端部に設けられた突起27aが押されて、突片27が内側に撓められると、係止爪25が孔53の外側に出て、係止爪25が孔53から外れるので、調光器本体20を取付枠50から取り外すことができる。尚、取付枠50の上下の枠片52には、造営面に埋設された埋込ボックスにネジ止めするための固定ネジを挿通する長穴55が設けられている。また上下の枠片52には、パネル材からなる造営材(図示せず)を取付枠50との間で挟み込むための挟み金具(図示せず)が引掛係止する引掛穴56や、造営材に取付枠50を直接ネジ固定するための固定ネジが挿通される丸穴57が設けられている。取付枠50は、上記した取付方法のうち、設置場所に合わせて選択された何れかの取付方法を用いて造営面に取り付けられる。
【0031】
取付枠50の前側には、図1及び図3に示すように、取付枠50の窓孔50aよりも上下方向の長さが長く且つ幅広の窓孔61を備えたプレート枠60が取り付けられる。取付枠50の上側及び下側の枠片52にはねじ穴54がそれぞれ設けられている。また、プレート枠60の上側及び下側の枠片62には、ねじ穴54に対向する位置に貫通孔63がそれぞれ設けられている。而して、プレート枠60の貫通孔63に通された固定ネジ(図示せず)がねじ穴54にねじ込まれることによって、プレート枠60が取付枠50に固定される。
【0032】
またプレート枠60の前側には、取付枠50や、プレート枠60を固定する固定ネジの頭などを隠して外観の見栄えを向上させる化粧プレート70が取り付けられる。化粧プレート70は、プレート枠60の窓孔61に比べて若干小さめの窓孔71を備え、裏面の爪(図示せず)をプレート枠60の左右の枠片に設けられた係止孔64に係止させることによって、プレート枠60に取り付けられる。プレート枠60に化粧プレート70が取り付けられた状態では、化粧プレート70の窓孔71から調光器1の前面が露出している。
【0033】
尚、取付枠50に、2個モジュール寸法の調光器本体20のみが取り付けられ、残りの1個分の取付位置が空いている場合、プレート枠60の窓孔61が完全に塞がれないため、この隙間を塞ぐブランクカバー80がプレート枠60に取り付けられている。
【0034】
本実施形態の調光器1は以上のような構成を有しており、以下のようにして造営面に施工される。施工者は、取付枠50の後側から調光器本体20を取付枠50に近付け、調光器本体20の左右両側の係止爪25を取付枠50の孔53に係止させることによって、調光器本体20を取付枠50に取り付ける。次に施工者は、造営面(図示せず)の裏側に配線された電線を、造営面に設けられた取付用孔(図示せず)から表側に引き出して、先端側の被覆を剥いた後、電線挿通孔34に挿入して、端子装置に接続する。そして、施工者は、調光器1に接続された電線の余長分を取付用孔に押し込んだ後、調光器本体20の後部を取付用孔に挿入した状態で取付枠50を造営面に固定する。次に施工者は、前ボディ22の凹溝28に係止片43の爪43aを係止させることによって、カバー40を調光器本体20の前側に取り付けた後、取付枠50の前側にプレート枠60及び化粧プレート70を取り付けて、施工作業を完了する。
【0035】
この施工完了状態では、カバー40の裏面に設けられた突起44がタクトスイッチ31の押釦31aを押圧しており、調光制御部11は、モード切替部14を構成するタクトスイッチ31からの接点信号に基づいて、動作モードを点灯制御モードに切り換えている。また、回転ハンドル29及びランプカバー33はそれぞれカバー40の丸穴41、長孔42から露出しているので、カバー40が接続されている状態でも回転ハンドル29の操作が可能であり、またランプカバー33を通して発光部15の発光を視認できる。尚、プレート枠60に化粧プレート70が取り付けられた状態では、窓孔71とカバー40との間に指や工具を入れる隙間がなく、カバー40の取り外しが行えないようになっている。
【0036】
調光制御部11の動作モードが点灯制御モードに切り替えられた状態では、回転ハンドル29の操作範囲(「OFF」の位置を除いたドットD1とドットD2の間の操作範囲)が照明負荷3の調光範囲に対応している。
【0037】
点灯制御モードにおいて、ユーザが回転ハンドル29を左回りに回転させて、回転ハンドル29の溝29aを「OFF」の位置に合わせると、回転ボリュームの電源スイッチがオフになる。この時、調光制御部11は、スイッチング素子Q1を常時オフさせて、照明負荷3への電力供給を遮断し、照明負荷3を消灯させる。また調光制御部11は、発光部15を常時点灯させて、調光器1の設置位置をユーザに報知する。
【0038】
一方、点灯制御モードにおいて、ユーザが回転ハンドル29を右回りに回転させ、回転ハンドル29の溝29aをドットD1,D2間の所定位置に合わせると、回転ボリュームの電源スイッチがオンになり、調光制御部11が回転ハンドル29の回転位置に応じた調光レベルで照明負荷3を調光点灯させる。例えば調光制御部11は、回転ボリュームと固定抵抗器とで構成される直列回路に定電圧を印加し、回転ボリュームの両端電圧を検出することによって、回転ボリュームの抵抗値を検出する。そして、調光制御部11は、ゼロクロス検出部12の出力信号S1がローレベルからハイレベルに反転した時点から、回転ハンドル29の回転位置(つまり回転ボリュームの抵抗値)に応じた時間が経過した時点で、スイッチング素子Q1を導通させる。その後、調光制御部11は、交流電源のゼロクロスがくるまでスイッチング素子Q1をオンさせ続けており、スイッチング素子Q1の導通位相角を回転ハンドル29の回転位置に応じた値とすることで、照明負荷3が調光点灯される。
【0039】
ここで、図6は、回転ハンドル29に回転軸(操作子)が連結された回転ボリュームの抵抗値Xと調光レベルYとの関係を示している。抵抗値Xが最小値X0のときに調光レベルYが最小レベルaになり、抵抗値Xが最大値X1のときに調光レベルYが最大レベルYmaxになるとすると、抵抗値Xと調光レベルYとの関係は以下の式(1)で表される。尚、調光レベルYが最大レベルYmaxの時の照明負荷3への供給電力は予め設定されており、調光レベルYが最小レベルaの時の照明負荷3への供給電力は、調整モードにおいて調光操作部13を用いて設定され、その設定値は記憶部16に記憶されている。
【0040】
【数1】

【0041】
上述のようにユーザが回転ハンドル29を回転させて、回転ハンドル29に回転軸が連結された回転ボリュームの抵抗値を変化させると、調光制御部11が、調光操作部13からの入力(すなわち回転ボリュームの抵抗値)をもとに、スイッチング素子Q1を導通させる位相角を決定する。そして、調光制御部11は、ゼロクロス検出部12がゼロクロスを検出した時点(すなわち、出力信号S1がローからハイに立ち上がった時点)から、回転ボリュームの抵抗値によって決定された時間が経過した時点でスイッチング素子Q1を導通させる。スイッチング素子Q1は、調光制御部11によってオフからオンに切り替えられると、次のゼロクロスがくるまで導通し続ける。以上の動作を商用交流電源2の半周期毎に繰り返すことで、照明負荷3には調光制御部11によって導通位相角が決定された交流電圧V2が供給され、回転ハンドル29の回転位置に応じた調光レベルで照明負荷3が調光点灯させられる。
【0042】
ここで、照明負荷3の調光範囲は最小レベルaと最大レベルYmaxの間となるが、調整モードに切り替えられた状態でユーザが調光操作部13を操作することによって、調光範囲の下限(すなわち最小レベルa)において照明負荷3に供給される供給電力を設定することができる。調光範囲の下限における供給電力を設定したい場合、ユーザは、プレート枠60から化粧プレート70を取り外した後に、調光器本体20からカバー40を取り外す。カバー40が外されると、モード切替部14を構成するタクトスイッチ31の押釦31aが押されなくなり、調光制御部11の動作モードが点灯制御モードから調整モードに切り替わる。調光制御部11は、その動作モードが調整モードに切り替えられると、発光部15を点滅させることによって、調整モードに切り替わったことをユーザに報知する。調整モードにおいては、回転ハンドル29の操作範囲(「OFF」の位置を除いたドットD1とドットD2の間の操作範囲)が、調光範囲の下限における供給電力の調整可能範囲(例えば上限値の0〜20%の範囲)に対応する。ユーザが回転ハンドル29を所望の位置まで回転させると、調光下限設定部たる調光制御部11は、回転ハンドル29の回転位置(すなわち回転ボリュームの抵抗値)に応じて調光範囲の下限における供給電力を決定する。その後、ユーザがカバー40を調光器本体20に取り付けると、カバー40の突起44で押釦31aが押され、調光制御部11は調整モードから点灯制御モードへと動作モードを切り換える。この時、調光制御部11は、調整モードを終了する際の回転ハンドル29の位置から求めた供給電力の調整値を記憶部16に記憶させる。
【0043】
以後の点灯制御モードでは、調光制御部11は、記憶部16に記憶された調光範囲の下限(最小レベルa)における供給電力と、回転ハンドル29の回転位置に応じて変化する抵抗値Xと、上記の式(1)を用いて調光レベルを決定し照明負荷3を調光点灯させる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の調光器1は調光操作部13と調光制御部11と調光下限設定部(本実施形態では調光制御部11が兼用)とモード切替部14とを備えている。調光操作部13は、照明負荷3の調光レベルを設定するためにユーザが操作する。調光制御部11は、調光操作部13の操作に応じて照明負荷3への供給電力を変化させることによって、照明負荷3を所定の調光範囲において所望の調光レベルで調光点灯させる。
調光下限設定部たる調光制御部11は、調光範囲の下限において照明負荷3に供給される供給電力を調整する。モード切替部14は、調光制御部が調光操作部13の操作に応じて照明負荷3を調光点灯する点灯制御モード、及び、調光範囲の下限において照明負荷3に供給される供給電力を調光下限設定部たる調光制御部11が調光操作部13の操作に応じて調整する調整モードのうちの何れかに、調光制御部11の動作モードを切り替える。
【0045】
これにより、ユーザは、モード切替部14を用いて調整モードに切り替えた状態で、調光操作部13を用いて調光範囲の下限において照明負荷3に供給される供給電力を調整することができる。したがって、個々の照明負荷3毎に調光範囲の下限における供給電力を調整できるから、LED電球のように点灯開始電圧のばらつきが大きい場合でも、調光範囲の下限における供給電力を調整することによって、調光範囲の最小レベルにおいてLED電球を確実に点灯させることができる。また、1つの調光操作部を調光レベルの設定用と調光範囲の下限における供給電力の設定用とに兼用することができ、部品点数を削減できる。
【0046】
また、本実施形態の調光器1は調光器本体20とカバー40とを備えている。調光器本体20は、調光制御部11及び調光下限設定部(本実施形態では調光制御部11が兼用)を収納し、調光操作部13を構成する回転ハンドル29が前面に配置されている。カバー40は、少なくとも調光操作部(回転ハンドル29)を露出させた状態で調光器本体20の前面を覆うようにして調光器本体20に着脱自在に取り付けられる。モード切替部14は、カバー40の着脱状態を検出する検出手段(本実施形態ではカバー40の突起44で押釦31aが押されるタクトスイッチ31からなる)を備えている。モード切替部14は、カバー40が調光器本体20に取り付けられた状態では点灯制御モードに、カバー40が調光器本体20から外された状態では調整モードに動作モードを切り替える。
【0047】
これにより、カバー40を着脱するだけで、動作モードを点灯制御モード又は調整モードに切り替えることができ、別途の操作が不要になる。またカバー40を調光器本体20に取り付けることによって、調整モードから点灯制御モードへ確実に戻すことができる。
【0048】
また、モード切替部14によって点灯制御モードに切り替えられた状態では、調光操作部13の操作範囲(電源スイッチのOFF位置を除いた、ドットD1からドットD2までの範囲)が照明負荷3の調光範囲(調光範囲の最小レベルと最大レベルの間)に対応する。そして、モード切替部14によって調整モードに切り替えられた状態では、調光操作部13の操作範囲が、調光範囲の下限における供給電力の調整可能範囲に対応する。
【0049】
ここで、照明負荷3の調光範囲は最小レベル(例えば0〜20%の間)から最大レベル(100%)であるのに対して、調光範囲の下限における供給電力の調整可能範囲は例えば0〜20%の間であり、調光範囲に比べて狭い範囲となっている。したがって、調整モードにおいて調光操作部13の操作範囲を、調光範囲の下限における供給電力の調整可能範囲に対応させることで、調光範囲の下限における供給電力をより細かく設定することができる。
【0050】
また調光器1は、照明負荷3が消灯している状態で発光する位置表示用の発光部15と、消灯時とは異なる点灯状態で発光部15を発光させることによって調整モードに切り替えられたことを報知する報知部(本実施形態では調光制御部11からなる)とを備える。
【0051】
これにより、報知部たる調光制御部11が、調整モードにおいて消灯時とは異なる点灯状態で発光部15を発光させることによって、動作モードが調整モードに切り替えられたことをユーザに報知することができる。また、動作モードが調整モードに切り替えられたことを報知するために、位置表示用の発光部15を利用しているので、位置表示用の発光部15とは別に報知用の発光部を備える場合に比べて部品数を削減できる。尚、本実施形態では発光部15を点滅させることによって調整モードに切り替わったことを報知しているが、例えば発光色を替えることによって調整モードに切り替わったことを報知してもよい。また、本実施形態では発光部15の点灯状態で調整モードに切り替わったことを報知しているが、ブザーやスピーカのように音で報知してもよい。また、発光ダイオードのように光を出力するものと、ブザーやスピーカのように音を出力するものを両方共に備え、光と音の両方で報知を行ってもよい。
【0052】
ところで、上述の実施形態では、モード切替部14がカバー40の着脱を検出する検出手段(タクトスイッチ31)を備え、カバー40の装着状態を検出すると点灯制御モードに、カバー40の装着が検出できなければ調整モードに切り替えているが、モード切替部14は上記の形態に限定されず、ユーザ自身が切替操作を行うものでもよい。
【0053】
例えば図7に示すように調光器本体20の前面に操作子32aが配置されたスライドスイッチ32でモード切替部14を構成してもよい。この場合は、ユーザがカバー40を取り外し、操作子32aの位置を切り替えることによって、調光制御部11の動作モードが点灯制御モード又は調整モードの何れかに切り替えられるようになっている。ユーザは、操作子32aを用いて調整モードに切り換えた状態で、回転ハンドル29を操作して調光範囲の下限における供給電力を設定する。その後、ユーザが操作子32aを操作して動作モードを点灯制御モードに切り替えると、調光制御部11は、調光下限における供給電力の設定値を記憶部16に記憶させ、点灯制御モードで照明負荷3の調光制御を行う。
【0054】
また図8に示すように調光器本体20の前面に押釦36aが配置されたタクトスイッチ36でモード切替部14を構成してもよい。この場合は、カバー40の裏面に押釦36aを押す突起が設けられておらず、カバー40が調光器本体20に取り付けられた状態では、タクトスイッチ36の押釦36aがカバー40によって押されていない状態となっている。ここで、ユーザがカバー40を取り外し、タクトスイッチ36の押釦36aを所定時間以上長押しすると、調光制御部11は、タクトスイッチ36からの接点入力に基づいて、動作モードを点灯制御モードから調整モードに切り換える。そして、調光下限における照明負荷3への供給電力を設定した後、ユーザがタクトスイッチ36の押釦36aを所定時間以上長押しすると、調光制御部11は、調光下限における供給電力の設定値を記憶部16に記憶させた後、動作モードを点灯制御モードに切り換える。このように、ユーザがタクトスイッチ36の押釦36aを所定時間以上長押しする毎に、調光制御部11の動作モードが点灯制御モード又は調整モードに交互に切り替えられるようになっている。
【0055】
尚、上記の実施形態では調光操作部13を電源スイッチ付きの回転ボリュームで構成し、回転ハンドル29の溝29aが「OFF」の位置にくるように回転ハンドル29を回転させることによって、照明負荷3を消灯させているが、商用交流電源2及び照明負荷3の直列回路と調光器1との間にスイッチを接続し、スイッチのオン/オフによって照明負荷3の点灯/消灯を切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 調光器
3 照明負荷
11 調光制御部(調光下限設定部)
13 調光操作部
14 モード切替部
20 調光器本体
29 回転ハンドル(調光操作部)
40 カバー
31 タクトスイッチ
31a 押釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明負荷の調光レベルを設定するためにユーザが操作する調光操作部と、
前記調光操作部の操作に応じて前記照明負荷への供給電力を変化させることによって、前記照明負荷を所定の調光範囲において所望の調光レベルで調光点灯させる調光制御部と、
前記調光範囲の下限において前記照明負荷に供給される供給電力を調整する調光下限設定部と、
前記調光制御部が前記調光操作部の操作に応じて前記照明負荷を調光点灯する点灯制御モード、及び、前記調光範囲の下限において前記照明負荷に供給される供給電力を前記調光下限設定部が前記調光操作部の操作に応じて調整する調整モードのうちの何れかに動作モードを切り替えるモード切替部とを備えたことを特徴とする調光器。
【請求項2】
前記調光制御部及び前記調光下限設定部を収納し、前面に前記調光操作部が配置された調光器本体と、少なくとも前記調光操作部を露出させた状態で前記調光器本体の前面を覆うようにして前記調光器本体に着脱自在に取り付けられるカバーとを備え、
前記モード切替部は、前記カバーの着脱状態を検出する検出手段を有し、前記カバーが前記調光器本体に取り付けられた状態では前記点灯制御モードに、前記カバーが前記調光器本体から外された状態では前記調整モードに切り替えることを特徴とする請求項1記載の調光器。
【請求項3】
前記モード切替部によって前記点灯制御モードに切り替えられた状態では、前記調光操作部の操作範囲が前記照明負荷の調光範囲に対応し、
前記モード切替部によって前記調整モードに切り替えられた状態では、前記調光操作部の操作範囲が、前記調光範囲の下限における供給電力の調整可能範囲に対応することを特徴とする請求項1又は2の何れか記載の調光器。
【請求項4】
前記照明負荷が消灯している状態で発光する位置表示用の発光部と、
消灯時とは異なる点灯状態で前記発光部を発光させることによって前記調整モードに切り替えられたことを報知する報知部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の調光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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