説明

負荷試験装置

【課題】負荷トルクの変動に対して、回転数がどの程度一定で保持することができるのかを検証することができる簡易な構成の負荷試験装置を提供することにある。
【解決手段】予め定めた回転数で回転駆動する試験対象となる被試験駆動装置に負荷トルクを作用させる負荷作用部と、前記被試験駆動装置に作用している実際の負荷を検出する負荷検出部と、を備えた負荷試験機であって、前記負荷作用部は、被試験駆動装置の駆動軸に連結固定される測定子と、該測定子を把持する把持機構と、該把持機構の把持力を調整可能とする把持力可変手段と、を備え、前記把持機構の把持部と測定子との接触面間のすべり摩擦トルクを負荷トルクとして載荷することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータやエアタービン等の流体圧を利用して駆動される各種回転駆動装置の特性、特に回転駆動装置に変動負荷を加えて回転数がどの程度変化するかの検証に使用される負荷試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモータ等の特性試験機は、回転中のモータに負荷を加え、その負荷の大きさとモータのトルクが釣り合う時点のトルクを測定し、回転数とトルクの関係をモータの回転数−トルク曲線として利用されている。実際の選定にあたっては、使用条件での負荷がトルク曲線以下となるような特性のモータが選定され、モータの回転数が制御されている。
しかし、この特性曲線からは、負荷トルクが変動した場合に、回転数が一定に保たれるか否かは定かではなく、実際に使用してみないと分からないというのが現状である。このような回転数の変動は、たとえば工作機械の場合には、切削面や研削面の加工精度に影響するため、重要な特性である。
【0003】
そこで従来の特性試験機を用い、負荷を変動させてモータの回転数の変動を検出することが考えられるが、市販品では2万rpm程度までの試験機が一般的で、たとえば、10万rpm程度の高速回転まで試験することができるものはなかなか見当たらない。
特に、近年、工作機械の主軸のモータとしてエア圧を利用した高速回転のモータが利用されており、このような高速回転域での特性を検証することが要請されている。
【0004】
なお、従来の特性試験機としては、たとえば、特許文献1に記載のように、パウダクラッチを利用したものが知られているが、このようなパウダクラッチを利用したものは構造が複雑でコストも嵩み、高速回転域ではパウダが変質してしまうおそれがある。
また、一般的に負荷モータを加えるものが知られているが、この場合も装置が複雑でコストもかさみ、制御系が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−151618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した要請に応えるべくなされたもので、負荷の変動に対して、回転数がどの程度一定で保持することができるのかを検証することができる簡易な構成の負荷試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、予め定めた回転数で回転駆動する試験対象となる被試験駆動装置に負荷トルクを作用させる負荷作用部と、
前記被試験駆動装置に作用している実際の負荷を検出する負荷検出部と、を備えた負荷試験装置であって、
前記負荷作用部は、被試験駆動装置の駆動軸に連結固定される測定子と、該測定子を把持する把持機構と、該把持機構の把持力を調整可能とする把持力可変手段と、を備え、前記把持機構の把持部と測定子との接触面間のすべり摩擦トルクを負荷トルクとして載荷することを特徴とする。
【0008】
また、上記構成に加えて、回転数を検出する回転数検出器を備え、負荷検出手段によって検出される負荷変動に応じて回転数の変動を計測可能としたことを特徴とする。
また、前記把持機構による測定子の把持部を冷却する冷却手段を有することが好ましい。
より具体的には、基台と、基台に対して回転自在に設けられる回転台と、を有し、負荷作用部は回転台に装着され、被試験駆動装置は回転台の回転軸と駆動軸が同軸上に位置するように基台に対して固定され、回転台と基台の間に、回転台の回転方向に互いに当接する当接部を設け、該当接部に負荷検出部としての荷重センサを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負荷作用部を、把持部によって測定子を挟む把持機構によって構成し、把持部と測定子との接触面間に摩擦トルクを作用させるだけという非常に簡単な機構で、負荷を作用させることができ、把持力を調整するだけで、負荷を変動させることができる。
また、検出子の寸法、形状を変えるだけで、種々の駆動装置に対応することが可能である。
【0010】
回転数の検出は駆動装置側の制御系で検出できれば駆動装置側の検出器からの情報を利用することができるが、回転数測定手段を設けておけば、制御系側で回転数検出ができない場合でも検出可能で、制御系側に回転数検出部があっても、その回転数を検証することができるし、回転数検出の制度を任意に設定することが可能である。
さらに、冷却手段を設けておけば、滑り接触部の昇温を低減し、より一層の高速回転が可能となる。
また、負荷作用部を回転台に装着し、被試験駆動装置は回転台の回転軸と駆動軸が同軸上に位置するように基台に対して固定し、回転台と基台の間に負荷検出部を配置することで、より簡単にトルクの検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の負荷試験装置の原理的な構成を示すもので、同図(A)は平面構成図、同図(B)は縦方向に断面にして示す概略図である。
【図2】(A)は測定子がディスク形状の場合の装置構成の概略図、(B)は測定結果の一例を示すグラフである。
【図3】図3(A)は本発明の負荷試験装置のより具体的な構成を示す図、(B)は回転数検知部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係る負荷試験装置の概略構成を示している。
すなわち、この負荷試験装置1は、予め定めた回転数で回転駆動する試験対象となる被試験駆動装置100に負荷トルクを作用させる負荷作用部10と、被試験駆動装置100に作用している実際の負荷を検出する負荷検出部20と、回転数を検出する回転数検出器30と、を備え、これらの構成部分が、基台200と、基台200に対してベアリング210を介して回転自在に指示される回転台220に組み付けられている。
【0013】
この実施例では、負荷作用部10は回転台220に取り付けられ、基台200側に支持部材を介して被試験駆動装置100が取り付けられる。
負荷作用部10は、被試験駆動装置の駆動軸にカップリング14を介して連結固定される測定子11と、測定子11を把持する把持機構12と、把持機構12の把持力を可変とする把持力可変手段としての把持力調整部13と、を備え、把持機構12の把持部と測定子11との把持面間のすべり摩擦トルクを負荷トルクTとして載荷するようになっている

被試験駆動装置100としては、エアタービンのような高速回転の駆動装置に適用可能であるが、電動モータでもかまわないし、種々の回転駆動装置への負荷試験が可能である。
【0014】
把持機構12は、たとえば、一対の把持片121,121と、把持片121,121を
接離させるアクチュエータ122とを有している。把持片121,121は平行移動する構成でもよいし、開閉する構成でもよい。把持片121は一対でなくてもよく、3つ以上でよい。アクチュエータ122は、空気圧、油圧等の流体圧シリンダで駆動してもよいし、電気モータを利用するものであってもよい。
把持力調整部13は、流体圧シリンダを利用する場合には、流体圧を制御する圧力制御弁等によって構成され、電動モータの場合には電流値等が制御される。
【0015】
試験用測定子11としては、図示例では断面円形上のピンゲージによって構成されている。なお、試験用測定子としては、図2(A)に示すような円形のディスク部11aを有するディスクゲージであってもよい。この場合には、把持片121,121によってディスク部11aの表裏両面を、回転軸と平行方向に挟みつけて負荷を加えればよい。また、2点鎖線で示すように、ディスク部11aの外周を把持するようにしてもよい。
【0016】
負荷検出部20は、回転台220と基台200の間に、回転台220の回転方向に互いに当接する当接部を設け、当接部に負荷検出部としての荷重センサ21を設けたものである。すなわち、基台200と回転台220の間には、回転台220の回転方向に互いに接触するように、荷重センサ21と、荷重センサ21に当接する押圧部22とが設けられている。図示例では、荷重センサ21は基台200側に固定され、押圧部22が回転台220側に設けられている。もちろん、荷重センサ21を回転台220に、押圧部22を基台200側に設けてもよい。この例では荷重センサは、圧電素子によって構成され、荷重を電圧変化に変換し、回転台220の中心Oから荷重センサ21までの回転半径Rから、トルクが検出可能となっている。
負荷検出部20としては、このような荷重センサによって荷重を検出するだけでなく、測定子11のねじり方向の歪み検出し、ねじり変形からトルクを算出するようにしてもよいし、その他、トルクに関わる力を電気信号に変換するもの、トルクによる変位を電気信号に変換する種々の方式を適用することができる。
回転数検出器30は、基台200側に設けられ、測定子11の機械的な回転をパルス信号等の電気信号に変換するエンコーダである。
【0017】
上記荷重センサ21および回転数検出器30からの検出情報は、コンピュータ16に入力される。コンピュータ16は、荷重センサ21からの情報から予め記憶されている回転半径Rから負荷トルクを算出し、データを蓄積する。コンピュータ16は、特に図示しないが、中央処理演算部(CPU)と、データおよび各種プログラムを記憶するメモリを有しており、トルク情報と同時に回転数検出器30からのパルス情報が読み込まれ、負荷トルクと関連付けて回転数のデータが記憶され、必要に応じて、記憶された負荷トルクおよび回転数をモニタ17に表示、あるいはプリンタ等に出力可能となっている。
また、コンピュータ16によって、把持力調整部13を制御するようにしてもよい。たとえば、流体圧アクチュエータの場合には、指令値に応じて圧力調整弁を制御すればよい。もっとも、流体圧アクチュエータの調整は手動で行うようにしてもよい。また、コンピュータ16によって、被試験駆動装置100の回転数制御を行うようにしてもよい。
【0018】
また、測定中の摩擦摺動によって発熱した接触部を冷却するために、冷却手段としての冷却槽18を設けてもよい。冷却槽18の冷却媒体は、たとえば水が用いられ、冷却槽18を回転台220に配置し、把持機構12と測定子11の接触部を冷却媒体中に沈めるよ
うにしてもよい。
冷却手段としては、その他、流水等の冷却媒体を把持機構12と測定子11の接触部に流すようにしてもよいし、冷却ファンによって冷却風を吹きかけるようにしてもよいし、ペルチェ素子等によって冷却するようにしてもよい。
【0019】
図3には、図1の装置をより具体化した装置構成を示している。
図1と同一の構成部分については同一の符号を付して説明は省略する。
図示例では、被試験駆動装置100として、空気圧で回転駆動されるエアタービンのスピンドルを例示している。
負荷作用部10を構成する把持機構12には、平行クランプが用いられている。そして、冷却槽18に把持片121を上方から浸漬するために、把持片121は、把持機構12の本体部から冷却槽18に向けて上下に長く、先端部分で測定子11を挟み付ける構成となっている。
また、回転数検出器30が設けられ、基台200に立設されるシャフト41の固定された取付板43に設けられている。取付板43は、シャフト41から測定子11に向けて水平に伸び、一端がシャフト41に固定されるステー42に取り付けられ、測定子11側の先端が測定子11を挟むように一対の腕部が分岐しており、図3(B)に示すように、この腕部の一方にLED等の発光部31が、他方にフォトセンサ等の受光部32が設けられ、各腕部には発光部31から受光部32に向けて光を通すための穴30aが設けられている。シャフト11には、切欠き11bが設けられ、発光部31から受光部32に向けて延びる光が切欠き11bに一致すると透過し、切欠き11b以外の部分では遮光するようになっており、シャフト11の1回転で一回ずつ受光パルスを発生する。回転数検出器30の構成は、これに限定されるものではなく、種々の構成を採用することができることはもちろんであり、要するに、シャフト11の回転変位、あるいはシャフト11が連結される駆動装置の駆動軸の機械的な回転変位を電気信号に変換して検出するような種々の手段を採用し得る。
【0020】
上記構成の負荷試験装置においては、次のようにして負荷が加えられ、トルク変動が測定される。
まず、基台200から支柱201を介して回転台220の上方に配置されるヘッド部202に、被試験駆動装置100を取り付ける。被試験駆動装置100に対応するピンゲージよりなる測定子11を連結し、測定子支持部によって支持する。
そして、被試験駆動装置100を予め任意に設定した所定の回転数(試験をしたい回転数)で回転制御する。被試験駆動装置100に連結されている測定子11も所定回転数で回転しており、この測定子11を、把持機構12のアクチュエータ122を駆動して把持片121,121によって所定の値で挟みつけ、測定子11を介して被試験駆動装置100に負荷として制動トルクTを付与する。この制動トルクTの反力が検出トルクTcとして把持機構12を備えた荷重作用部10を通じて回転台220に作用し、回転台200が図中時計回り方向に回転しようとし、センサ当接部22が荷重センサ21に押し付けられる。この押し付け荷重の大きさが電圧情報に変換されてコンピュータ16に送られ、コンピュータ16によって予め記憶されている回転半径Rから検出トルクTcが算出され、その算出値がたとえば、モニタ17に表示される。
【0021】
一方、回転数検出手段としての回転数検出器30からの情報がコンピュータ16に入力され、コンピュータ16によって回転数が算出される。
そして、把持力調整部13によって、把持機構12の把持力を、連続的、あるいは段階的に変化させることにより、変動した際の回転数の変化がモニタされる。
図2(B)は、回転数変化の試験結果の一例である。この例では、負荷荷重を連続的に大きくしたもので、検出トルクTが限界トルクTmaxに達すると回転数Nが低下する状態
を示しており、限界トルクTmaxまでは一定回転数が保持される状態を示している。
このように、負荷作用部10を、測定子11を挟む把持機構12によって構成し、把持機構12との接触面間の摩擦トルクを作用させるだけという非常に簡単な機構で、把持力を変化させることにより、簡単に変動負荷を作用させることができる。また、測定子11の寸法、形状を変えるだけで、種々の駆動装置に対応することが可能である。
【0022】
回転数Nの検出は被試験駆動装置100側の制御系で検出できれば、被試験駆動装置100側の回転数情報を利用することができるが、回転数測定手段としての回転数検出器30を設けておけば、制御系側で回転数検出ができない場合でも検出可能で、回転数検出の精度を任意に設定することが可能である。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 負荷試験装置
10 負荷作用部
11 測定子
11a ディスク部
12 把持機構
121 把持片
122 アクチュエータ
13 把持力調整部
14 カップリング
16 コンピュータ
17 モニタ
18 冷却槽
20 負荷検出部
21 荷重センサ
22 押圧部
30 回転数検出器
31 発光部、32 受光部
100 被試験駆動装置
101 駆動軸
200 基台
210 ベアリング
220 回転台
O 中心
R 回転半径
T 制動トルク(負荷)
Tc 検出トルク
Tmax 限界トルク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた回転数で回転駆動する試験対象となる被試験駆動装置に負荷を作用させる負荷作用部と、
前記被試験駆動装置に作用している実際のトルクを検出する負荷検出部と、を備えた負荷試験装置であって、
前記負荷作用部は、被試験駆動装置の駆動軸に連結固定される測定子と、該測定子を把持する把持機構と、該把持機構の把持力を調整可能とする把持力可変手段と、を備え、前記把持機構の把持部と測定子との接触面間のすべり摩擦トルクを負荷として載荷することを特徴とする負荷試験装置。
【請求項2】
回転数を検出する回転数検出器を備え、負荷検出手段によって検出される負荷変動に応じて回転数の変動を計測可能としたことを特徴とする請求項1に記載の負荷試験装置。
【請求項3】
把持機構による測定子の把持部を冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷試験装置。
【請求項4】
基台と、基台に対して回転自在に設けられる回転台と、を有し、負荷作用部は回転台に装着され、被試験駆動装置は回転台の回転軸と駆動軸が同軸上に位置するように基台に対して固定され、回転台と基台の間に回転台の回転方向に互いに当接する当接部を設け、該当接部に負荷検出部としての荷重センサを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一の項に記載の負荷試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−47906(P2011−47906A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198953(P2009−198953)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(597137682)トークシステム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】