説明

貯湯式給湯システム

【課題】追い焚き湯切れに対する耐力を向上することのできる貯湯式給湯システムを提供すること。
【解決手段】本発明の貯湯式給湯システムは、水を加熱して湯にする加熱手段2と、加熱手段2により加熱された湯が上部側から導入され、水源からの水が下部側から導入されるタンク1と、タンク1内の上部から導出した湯を需要端側に給湯する給湯回路と、タンク1内の上部から導出した湯を浴槽水と熱交換させる追い焚き回路と、タンク1内の上部側から下部側に向かって高温層、中温層および低温層がある場合に、高温層と中温層とを混合させることによりタンク1内の上部の温度を低下させるタンク内混合手段(タンク混合用配管308および混合用ポンプ34)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱手段により沸き上げた高温の湯を貯湯タンクに貯めておき、給湯負荷の発生に応じて、貯湯タンク内から湯を取り出して給湯する貯湯式給湯システムが広く用いられている。一般に、貯湯式給湯システムは、瞬間式給湯システム等と比べて、加熱手段の加熱能力が比較的小さい、加熱手段の起動時における能力の立ち上りが遅い、等の特徴がある。このため、貯湯式給湯システムでは、給湯負荷の発生に対して湯切れが生じることのないように、事前に貯湯タンクに湯を貯めておく必要がある。一方、エネルギー効率の観点からは、貯湯タンクに蓄えた熱量をできるだけ有効に活用することが求められる。
【0003】
また、湯栓からの湯の放出による給湯だけでなく、貯湯タンク内から取り出した高温の湯と浴槽から循環する浴槽水とを熱交換することによって浴槽の追い焚きを行う機能を有する貯湯式給湯システムも知られている。このような貯湯式給湯システムでは、追い焚きに要する熱負荷に対する湯切れ(以下、「追い焚き湯切れ」と称する)の発生を防止する必要もある。
【0004】
下記特許文献1には、貯湯式給湯システムにおける追い焚き湯切れを防止するために、浴水を追い焚きするための必要追い焚き熱量を求める追い焚き熱量演算手段と、貯湯タンク内に貯えられた残湯熱量を求める残湯熱量演算手段とを設け、残湯熱量が必要追い焚き熱量より小さいときに加熱手段を制御して沸き上げ運転させる技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、風呂追い焚き手段で浴槽の湯水に与えた熱量を演算して記憶する熱量演算記憶手段と、この熱量演算記憶手段に記憶された熱量に基づいて沸き上げ温度を補正する沸き上げ温度補正手段とを設ける技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−226011号公報
【特許文献2】特開2009−281658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、従来の技術では、追い焚き湯切れを防止するためにタンクに追加で沸き上げを行った後に給湯が行われた場合には、追い焚きに利用可能な熱量がタンク内に十分に残らないおそれがある。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、追い焚き湯切れに対する耐力を向上することのできる貯湯式給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る貯湯式給湯システムは、水を加熱して湯にする加熱手段と、加熱手段により加熱された湯が上部側から導入され、水源からの水が下部側から導入されるタンクと、タンク内の上部から導出した湯を需要端側に給湯する給湯回路と、タンク内の上部から導出した湯を浴槽水と熱交換させる追い焚き回路と、タンク内の上部側から下部側に向かって高温層、中温層および低温層がある場合に、高温層と中温層とを混合させることによりタンク内の上部の温度を低下させるタンク内混合手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タンク内の上部側から下部側に向かって高温層、中温層および低温層がある場合に、高温層と中温層とを混合させることによりタンク内の上部の温度を低下させることができる。これにより、給湯の際にタンクから導出される湯の温度が低下し、給湯の後にタンク内に残る、追い焚きに利用可能な熱量を増加させることができる。このため、追い焚き湯切れに対する耐力を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムを示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムにおける信号の流れを表すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態1における特徴的な動作を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態1および比較例について、給湯の前後における給湯有効蓄熱量および追い焚き有効蓄熱量をまとめた表である。
【図5】本発明の実施の形態2の貯湯式給湯システムを示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態2の貯湯式給湯システムの要部を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2の貯湯式給湯システムの他の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3の貯湯式給湯システムの要部を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3の貯湯式給湯システムの要部を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4の貯湯式給湯システムの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
実施の形態1.
≪機器構成≫
図1は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムを示す構成図である。図1に示すように、本実施形態の貯湯式給湯システムは、タンク1、加熱手段2、加熱用ポンプ31、追い焚き用ポンプ32、浴槽用ポンプ33、混合用ポンプ34、混合弁4、追い焚き熱交換器5、浴槽6、加熱用配管301、給水用配管302、導出用配管303、混合用配管304、給湯用配管305、浴槽往き配管306a、浴槽戻り配管306b、追い焚き往き配管307a、追い焚き戻り配管307b、タンク混合用配管308および制御手段100等を備えている。
【0014】
以下の説明において、「タンク1の上部」とは、タンク1の最上部(頂部)に限定されるものではなく、最上部に近い高さの範囲を含む。また、「タンク1の下部」とは、タンク1の最下部(底部)に限定されるものではなく、最下部に近い高さの範囲を含む。
【0015】
加熱用配管301は、タンク1の下部と加熱手段2とを接続するとともに、加熱手段2とタンク1の上部とを接続している。加熱用配管301の途中には、加熱用ポンプ31が設けられている。加熱手段2は、水を沸き上げて高温の湯とするものであり、例えばヒートポンプサイクルを用いて構成される。給水用配管302は、市水等の水源からの水を供給するものであり、タンク1の下部に接続されている。タンク1内には、給水用配管302から供給される水を下側から貯留し、加熱手段2で沸き上げられた高温の湯を上側から貯留することができる。水は温度が高くなるほど比重が軽くなる。このため、タンク1内の鉛直方向の温度分布は、上側が高温となり、下側が低温となる。
【0016】
導出用配管303(給湯回路)は、タンク1の上部と、混合弁4とを接続している。混合弁4には、給水用配管302から分岐した混合用配管304と、給湯用配管305とが更に接続されている。タンク1から導出用配管303を通って供給される湯と、混合用配管304から供給される水とを混合弁4にて混合することにより、温度調節された湯が生成され、この温度調節された湯が給湯用配管305を通って、入浴用の浴槽6、蛇口、シャワー等の需要端に供給される。
【0017】
追い焚き熱交換器5は、タンク1から供給される湯と、浴槽6から循環する浴槽水とを熱交換することによって、浴槽水を加熱するものである。追い焚き往き配管307aは、タンク1の上部と追い焚き熱交換器5とを接続している。追い焚き戻り配管307bは、追い焚き熱交換器5から追い焚き用ポンプ32を経由してタンク1の所定高さに接続されている。本実施形態では、追い焚き熱交換器5、追い焚き往き配管307a、追い焚き戻り配管307bおよび追い焚き用ポンプ32により、追い焚き回路が構成されている。
【0018】
浴槽往き配管306aは、追い焚き熱交換器5と浴槽6とを接続している。浴槽戻り配管306bは、浴槽6から浴槽用ポンプ33を経由して追い焚き熱交換器5に接続されている。浴槽往き配管306aおよび浴槽戻り配管306bからなる浴槽側回路により、浴槽6から浴槽水が追い焚き熱交換器5に循環する。
【0019】
タンク混合用配管308(混合回路)は、その一端がタンク1の上部に接続され、他端がタンク1の上部と下部との間の部位(好ましくは中間の高さより上の部位)に接続されている。タンク混合用配管308の途中には、混合用ポンプ34が設けられている。本実施形態では、タンク混合用配管308および混合用ポンプ34により、タンク内混合手段が構成される。
【0020】
制御手段100は、加熱手段2、加熱用ポンプ31、追い焚き用ポンプ32、浴槽用ポンプ33、混合用ポンプ34、および混合弁4の動作を制御する。また、制御手段100には、例えば浴室や台所に設置されるリモコン等のユーザーインターフェース装置(図示せず)が、有線または無線により通信可能に接続されている。
【0021】
また、タンク1には、高さ方向(鉛直方向)に間隔をおいて、6個の貯湯温度センサ501a〜501f(温度分布検出手段)が設けられている。これらの貯湯温度センサ501a〜501fによれば、タンク1の内の貯湯温度を、鉛直方向の分布とともに検出することができる。なお、貯湯温度センサの個数は、これに限定されるものではなく、タンク1内の鉛直方向の温度分布を検出可能な個数であればよい。
【0022】
加熱用配管301には、加熱手段2の下流側にて加熱後の湯温を検出する沸上温度センサ502が設けられている。給水用配管302には、給水温度を検出する給水温度センサ504が設けられている。タンク1の最上部には、タンク1から導出される湯の温度を検出するための導出温度センサ503が設けられている。給湯用配管305には、混合弁4から流出して需要端に供給される湯の温度を検出する給湯温度センサ505が設けられている。浴槽戻り配管306bには、浴槽6から追い焚き熱交換器5に流れ込む浴槽水の温度を検出する浴槽戻り温度センサ506が設けられている。なお、この浴槽戻り温度センサ506は、定期的に浴槽用ポンプ33を運転させることにより、浴槽6の温度を検出する手段として利用してもよい。給湯用配管305には、需要端に供給される湯量を検出する給湯流量センサ601が設けられている。追い焚き戻り配管307bには、追い焚き熱交換器5からタンク1に戻る湯(以下、「追い焚き戻り湯」と称する)の温度を検出する追い焚き戻り湯温度センサ507(追い焚き戻り湯温度取得手段)が設けられている。なお、追い焚き戻り湯温度取得手段としては、追い焚き戻り湯温度センサ507で追い焚き戻り湯温度を直接検出することに代えて、追い焚き用ポンプ32の回転数、浴槽用ポンプ33の回転数、導出温度センサ503および浴槽戻り温度センサ506の検出温度等からの推定によって追い焚き戻り湯温度の値を取得するものであってもよい。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムにおける信号の流れを表すブロック図である。図2に示すように、制御手段100は、蓄熱量算出手段101、必要熱量予測手段104、加熱制御手段105、目標温度設定手段107、ポンプ制御手段108等を有している。
【0024】
制御手段100には、時刻検出手段であるタイマー、貯湯温度センサ501a〜501f、沸上温度センサ502、導出温度センサ503、給水温度センサ504、給湯温度センサ505、浴槽戻り温度センサ506、追い焚き戻り湯温度センサ507および給湯流量センサ601からの情報が入力される。この制御手段100は、入力されたこれらの情報に基づいて、加熱手段2、加熱用ポンプ31、追い焚き用ポンプ32、浴槽用ポンプ33、混合用ポンプ34、混合弁4を制御する。
【0025】
目標温度設定手段107は、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示等に基づいて、追い焚き運転によって浴槽6を昇温(保温を含む。以下同じ。)する際の目標温度(以下、「浴槽目標温度」と称する)を設定する。
【0026】
蓄熱量算出手段101は、需要端への給湯に利用可能な蓄熱量(以下、「給湯有効蓄熱量」と称する)と、追い焚きに利用可能な蓄熱量(以下、「追い焚き有効蓄熱量」と称する)を算出する。給湯有効蓄熱量は、貯湯温度センサ501a〜501fで検出されるタンク内温度分布の情報と、給水温度センサ504の給水温度情報とに基づいて算出される。一般的には、給水温度をエネルギーの基準温度としてタンク内温度分布を積分することによって給湯有効蓄熱量が算出される。ここでは、一般的な所定の給湯温度(例えば40℃)以下の領域を積分しないようにして給湯有効蓄熱量を算出してもよい。
【0027】
追い焚き有効蓄熱量は、同じく貯湯温度センサ501a〜501fによるタンク内温度分布情報と、目標温度設定手段107で設定された浴槽目標温度とに基づいて算出される。一般的には、浴槽6を浴槽目標温度に昇温するために利用できる湯の温度(例えば浴槽目標温度+5℃)を追い焚き有効温度とし、この追い焚き有効温度をエネルギーの基準温度としてタンク内温度分布を積分することによって追い焚き有効蓄熱量が算出される。追い焚き有効温度は、目標温度設定手段107で設定された浴槽目標温度に基づいて設定してもよく、あるいは一般的な所定の浴槽目標温度(例えば40℃)基づいて設定してもよい。
【0028】
必要熱量予測手段104は、現時点以降に給湯に必要な熱量(以下、「給湯必要熱量」と称する)と、現時点以降に追い焚きに必要な熱量(以下、「追い焚き必要熱量」と称する)とを予測する。給湯必要熱量は、過去のユーザーの給湯使用実績や、最低減保証する既定の設計基準、などの情報に基づいて予測される。追い焚き必要熱量は、過去のユーザーの追い焚き使用実績や、現在の浴槽6の温度および湯量の状況や、最低減保証する既定の設計基準、などの情報に基づいて予測される。
【0029】
加熱制御手段105は、算出された給湯有効蓄熱量、追い焚き有効蓄熱量、給湯必要熱量、および追い焚き必要熱量に基づいて、沸き上げを行う必要があるかどうかを判定し、沸き上げを行う必要がある場合には加熱手段2および加熱用ポンプ31を起動して沸き上げ運転を行う。
【0030】
ポンプ制御手段108は、加熱用ポンプ31、追い焚き用ポンプ32、浴槽用ポンプ33、混合用ポンプ34の回転数をそれぞれ制御し、各ポンプの循環量(流量)を調節する。
【0031】
以上、本実施の形態1における貯湯式給湯システムの構成について説明した。次に、本実施の形態1における貯湯式給湯システムの動作について説明する。なお、以下の説明において、具体的な数値を示して動作を説明する場合があるが、その場合の数値は一例であり、本発明がその数値に限定されるものではない。
【0032】
≪基本的な動作≫
まず、本実施の形態1における貯湯式給湯システムの基本的な動作を説明する。タンク1には、給水用配管302を通じて低温の水が下部から流入し、貯留される。沸き上げ運転を行う際には、加熱手段2および加熱用ポンプ31が駆動され、タンク1内の水が下部から加熱用配管301に引き込まれ、加熱手段2に導かれる。加熱手段2は、導かれた水を加熱して、高温の湯に沸き上げる。沸き上げられた高温の湯は、加熱用配管301を通じてタンク1に上部から流入し、貯留される。
【0033】
このような沸き上げ運転を行う場合としては、次の2つがある。1つは、電気料金の低い時間帯(夜間時間帯)に、想定される一日分の給湯必要熱量および追い焚き必要熱量の大部分をタンク1に蓄熱する目的で沸き上げを行う場合である。もう1つは、タンク1の蓄熱量が減少した際に、湯切れを防止する目的で、給湯必要熱量および追い焚き必要熱量を確保する分だけ、追加で沸き上げを行う場合である。
【0034】
需要端に湯を供給する際には、タンク1に貯留された湯が上部から導出用配管303へ流出し、混合弁4に導かれる。このとき、取り出された湯と同量の水が給水用配管302からタンク1の下部に流入する。混合弁4は、タンク1から供給される湯と、混合用配管304から供給される水とを混合させ、給湯用配管305を通じて、蛇口、シャワー、浴槽6などの需要端へ供給する。
【0035】
次ぎに、浴槽6の追い焚き運転について説明する。追い焚き運転を行う際には、追い焚き用ポンプ32および浴槽用ポンプ33が駆動される。これにより、タンク1に貯留された湯が上部から追い焚き往き配管307aへ流出し、追い焚き熱交換器5に導かれる。このタイミングと概ね同時に、浴槽6内の浴槽水は、浴槽戻り配管306bを通って、追い焚き熱交換器5に導かれる。追い焚き熱交換器5で浴槽水へ熱を与えて温度の低下したタンク系統の湯(追い焚き戻り湯)は、追い焚き戻り配管307bを通ってタンク1内に戻る。追い焚き熱交換器5で熱を受け取って温度の上昇した浴槽水は、浴槽往き配管306aを通って浴槽6に戻る。このような追い焚き運転は、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示により強制的に開始されるか、あるいは、浴槽戻り温度センサ506によって定期的に検出される浴槽温度が目標温度設定手段107により設定された浴槽目標温度よりも所定量以上低くなったときに自動的に開始される。その後、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示により強制的に追い焚き運転が終了されるか、あるいは、浴槽戻り温度センサ506によって検出される浴槽温度が上記浴槽目標温度よりも所定量以上高くなったときに自動的に追い焚き運転が終了する。
【0036】
≪特徴的な動作≫
図3は、本実施形態における特徴的な動作を説明するための図である。以下、図3を参照して、本実施形態における特徴的な動作について説明する。
【0037】
ここでは、図3の左上欄に示すように、容量370Lのタンク1内の蓄熱量が減少して残湯量が50℃・50Lになった後、必要熱量を確保するために追加沸き上げが行われた場合を想定する。給水温度は10℃とし、追加沸き上げされた湯量は70℃・50Lとする。追加沸き上げ後のタンク1内には、上部から下部に向かって、追加沸き上げによって形成された70℃・50Lの高温層と、追加沸き上げ前に残っていた湯で構成される50℃・50Lの中温層と、沸き上げされていない10℃・270Lの低温層とが存在する。
【0038】
この追加沸き上げの後、本実施形態では、図3の左下欄に示すように、混合用ポンプ34を駆動し、タンク混合用配管308に湯を循環させることにより、50℃・50Lの中温層と、70℃・50Lの高温層とを混合させる。これにより、両者が混合して60℃・100Lの湯が生成され、タンク1内の上部の温度は70℃から60℃に低下する。なお、本実施形態では、タンク混合用配管308を上から下に湯が流れる循環方向としているが、この逆の循環方向であってもよい。
【0039】
この後、需要端において給湯需要が発生し、40℃・100Lの湯が需要端に供給されるものとする。この場合、混合弁4では、タンク1から供給される60℃・60Lの湯と、混合用配管304から供給される10℃・40Lの低温水とを混合して、40℃・100Lの湯を生成して需要端に給湯する。このため、給湯後のタンク1内の残湯量は、図3の右下欄に示すように、60℃・40Lとなる。このときにタンク1内に残る追い焚き有効蓄熱量は、追い焚き有効温度を45℃とすると、(60℃−45℃)×40L=600kcalとなる。
【0040】
一方、比較例として、追加沸き上げの後、中温層と高温層とを混合させることなく、40℃・100Lの湯を需要端に供給した場合について説明する。この場合には、70℃の湯がタンク1から混合弁4に供給されるので、混合弁4では、タンク1から供給される70℃・50Lの湯と、混合用配管304から供給される10℃・50Lの低温水とを混合して、40℃・100Lの湯を生成して需要端に給湯する。このため、給湯後のタンク1内の残湯量は、図3の右上欄に示すように、50℃・50Lとなる。このときにタンク1内に残る追い焚き有効蓄熱量は、追い焚き有効温度を45℃として、(50℃−45℃)×50L=250kcalとなる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、比較例と比べ、給湯後に残る追い焚き有効熱量を250kcalから600kcalへ増大させることができる。これは、中温層と高温層とを混合することにより、タンク1内の上部の温度を70℃から60℃に低下させているので、給湯時にタンク1から導出される湯の温度が低下し、給湯によるエクセルギーロスが低減することによるものである。このようにして、本実施形態では、追加沸き上げの後に給湯需要が発生した場合に、給湯後にタンク内に残る追い焚き有効熱量を増大させることができる。このため、追い焚き湯切れに対する耐力が向上し、追い焚き湯切れを抑制することができる。
【0042】
図4は、上述した本実施形態および比較例について、給湯の前後における給湯有効蓄熱量および追い焚き有効蓄熱量をまとめた表である。図4に示すように、給湯有効蓄熱量については、給湯の前後共、本実施形態と比較例とで同じである。すなわち、中温層と高温層との混合によって給湯有効蓄熱量が減少することはない。以上のように、本実施形態では、比較例と比べて、追加沸き上げの湯量を増大することなく、給湯後に残る追い焚き有効蓄熱量を増大させることができる。このため、エネルギー消費を抑制しつつ、追い焚き湯切れに対する耐力を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態では、タンク1の上部と、タンク1の上部と下部との間の部位とを接続するタンク混合用配管308にタンク1内の湯を循環させることにより、タンク1内の高温層と中温層とを確実に混合し、タンク1内の上部の温度を迅速に低下させることができる。
【0044】
なお、本実施形態において、高温層とは、加熱手段2による追加沸き上げによって形成された湯、または所定の温度範囲(加熱手段2の沸き上げ温度に対応する温度範囲、例えば65℃〜90℃)の湯である。中温層とは、加熱手段2による追加沸き上げ前にタンク1内に残っていた湯、または高温層の下限値より低く且つ所定温度(例えば45℃または追い焚き有効温度)以上の温度範囲の湯である。低温層とは、沸き上げされていない水、または中温層の下限値より低い温度範囲の水である。
【0045】
実施の形態2.
次に、図5乃至図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0046】
図5は、本発明の実施の形態2の貯湯式給湯システムを示す構成図である。以下に説明するように、本実施の形態2では、タンク1内を混合する混合回路と、追い焚き回路とを、全部または一部で共通化することにより、省コストの簡易な構成で実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0047】
図5に示すように、追い焚き戻り配管307bは、追い焚き熱交換器5と、タンク1の上部と下部との間の部位(好ましくは中間の高さより上の部位)とを接続している。図6は、本発明の実施の形態2の貯湯式給湯システムの要部を示す図である。図6に示すように、タンク1内の高温層と中温層とを混合する際には、追い焚き用ポンプ32を駆動し、タンク1内の上部の湯を、追い焚き往き配管307a、追い焚き熱交換器5、追い焚き戻り配管307bに循環させ、タンク1の上部と下部との間の部位に戻す。これにより、タンク1内の高温層と中温層とが混合してタンク1内の上部の温度が低下し、実施の形態1と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、実施の形態1におけるタンク混合用配管308および混合用ポンプ34が不要となるので、省コスト化が図れる。
【0048】
また、本実施形態では、図6に示すように、追い焚き戻り配管307bがタンク1に接続された戻し口には、追い焚き戻り配管307bからタンク1内に流入した湯の流れ方向を規制する流路規制部材11が設けられている。この流路規制部材11により、追い焚き戻り配管307bからタンク1内に流入した湯の流れ方向は、上方向または斜め上方向に規制される。本実施形態では、このような構成により、タンク1内の高温層と中温層とを混合する際に、混合される領域を戻し口より上の領域に確実に制限することができるので、設計した領域より下方の領域まで混合されてしまうことを確実に抑制することができる。また、追い焚き運転においては、追い焚き戻り湯をタンク1内の上方に向けて流入させることにより、追い焚き戻り湯とタンク1内の上部の高温水との混合を促進し、追い焚き戻し口より下方の領域との混合を抑制することができる。なお、実施の形態1のタンク混合用配管308がタンク1に接続された戻し口においても、上記と同様に、タンク混合用配管308からタンク1内に流入した湯の流れ方向が上方向または斜め上方向になるように構成してもよい。
【0049】
図7は、本発明の実施の形態2の貯湯式給湯システムの他の構成例を示す図である。本実施形態では、図7に示すように、追い焚き熱交換器5をバイパスするバイパス流路307cと、流路を追い焚き熱交換器5側とバイパス流路307c側とに切り替え可能な流路切替弁307dとを設け、タンク1内の高温層と中温層とを混合する際には、流路切替弁307dをバイパス流路307c側に切り替えるようにしてもよい。これにより、タンク1内の高温層と中温層とを混合する際には、循環する湯は追い焚き熱交換器5を通過せずバイパス流路307cを通過するので、追い焚き熱交換器5での放熱ロスを回避することができる。このため、給湯の後に残る追い焚き有効蓄熱量を更に増加させることができる。
【0050】
図7に示す構成例においては、追い焚き往き配管307aおよび追い焚き戻り配管307bの一部とバイパス流路307cとにより、混合回路が構成される。この場合においても、混合回路と追い焚き回路とが一部で流路を共通化されているので、配管やポンプ等の回路部品を削減でき、省コスト化が図れる。
【0051】
実施の形態3.
次に、図8および図9を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態1または2との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0052】
図8および図9は、本発明の実施の形態3の貯湯式給湯システムの要部を示す図である。図8に示すように、本実施形態の貯湯式給湯システムにおいては、タンク1内の上部から導出した湯をタンク1内の上部に戻すタンク混合用配管309と、このタンク混合用配管309に湯を循環させる混合用ポンプ34とにより、タンク内混合手段が構成されている。すなわち、タンク混合用配管309に湯を取り出す取出口と、タンク混合用配管309からの湯をタンク1内に戻す戻し口とは、共に、タンク1の上部に設けられている。
【0053】
タンク1内の高温層と中温層とを混合する際には、混合用ポンプ34を駆動する。これにより、タンク混合用配管309からタンク1内に戻って下方に流れる噴流が影響する範囲において、タンク1内の上部側の領域が混合される。したがって、混合用ポンプ34の循環量を回転数によって制御することにより、混合される領域の範囲を調節することができる。
【0054】
タンク1内の高温層と中温層とを混合する際、所定の追い焚き有効温度(例えば45℃)以下の低温水の領域まで混合すると、給湯の後に残る追い焚き有効熱量が減少する場合がある。そこで、タンク1内の高温層と中温層とを混合する際には、タンク1内の鉛直方向の温度分布を検出し、追い焚き有効温度以上の中温層と高温層とを混合することが望ましい。これにより、給湯の後に残る追い焚き有効熱量をより確実に増大させることができる。
【0055】
本実施形態では、タンク1内の高温層と中温層とを混合する際、タンク1内の鉛直方向の温度分布を検出し、追い焚き有効温度以上の領域が混合されるように混合用ポンプ34の循環量を制御することにより、混合される領域の範囲を調節することができる。例えば、図8に示すように、追い焚き有効温度以上の中温層と高温層との範囲が小さい場合(図8の上段)には、混合用ポンプ34の循環量を小さくすることによって混合領域の範囲を小さくし、追い焚き有効温度以上の中温層と高温層との範囲とが大きい場合(図8の下段)には、混合用ポンプ34の循環量を大きくすることによって混合領域の範囲を大きくすることができる。このようにして、タンク1内の鉛直方向の温度分布に応じて、適切な領域(追い焚き有効温度以上の領域)の範囲で中温層と高温層とを混合することにより、給湯の後に残る追い焚き有効蓄熱量を更に増加させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、図9に示すように、タンク混合用配管309からの湯をタンク1内の上部に戻す戻し口には、タンク混合用配管309からタンク1内に流入した湯の流れ方向を規制する流路規制部材12が設けられている。この流路規制部材12により、タンク混合用配管309からタンク1内に流入した湯の流れ方向は、タンク混合用配管309への取出口から遠ざかる方向に規制される。本実施形態では、このような構成により、タンク1内の高温層と中温層とを混合する際に、タンク混合用配管309からタンク1内に戻った湯が取出口側に流れることを確実に抑制することができるので、ショートサイクルによって混合が不十分となることを防止し、より確実に混合することができる。
【0057】
実施の形態4.
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態4について説明するが、上述した実施の形態1乃至3との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0058】
図10は、本発明の実施の形態4の貯湯式給湯システムの要部を示す図である。図10に示すように、本実施形態の貯湯式給湯システムにおいては、タンク1内の上方に配置されたスクリュープロペラ(回転子、攪拌子)35と、このスクリュープロペラ35を回転駆動するモータ36とが備えられている。本実施形態では、この攪拌手段としてのスクリュープロペラ35およびモータ36により、タンク内混合手段が構成されている。
【0059】
タンク1内の高温層と中温層とを混合する際には、モータ36を駆動してスクリュープロペラ35を回転させる。これにより、スクリュープロペラ35によって形成される下降水流が影響する範囲において、タンク1内の上部側の領域が混合される。したがって、スクリュープロペラ35の回転数を制御することにより、混合される領域の範囲を調節することができる。これにより、実施の形態3と同様の効果が得られる。なお、攪拌手段の構成は、スクリュープロペラ35およびモータ36に限定されるものではなく、タンク1内の上部側の領域を攪拌可能であれば如何なる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 タンク
2 加熱手段
4 混合弁
5 追い焚き熱交換器
6 浴槽
11,12 流路規制部材
31 加熱用ポンプ
32 追い焚き用ポンプ
33 浴槽用ポンプ
34 混合用ポンプ
35 スクリュープロペラ
36 モータ
100 制御手段
301 加熱用配管
302 給水用配管
303 導出用配管
304 混合用配管
305 給湯用配管
306a 浴槽往き配管
306b 浴槽戻り配管
307a 追い焚き往き配管
307b 追い焚き戻り配管
307c バイパス流路
307d 流路切替弁
308,309 タンク混合用配管
501a〜501f 貯湯温度センサ
502 沸上温度センサ
503 導出温度センサ
504 給水温度センサ
505 給湯温度センサ
506 浴槽戻り温度センサ
507 追い焚き戻り湯温度センサ
601 給湯流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して湯にする加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された湯が上部側から導入され、水源からの水が下部側から導入されるタンクと、
前記タンク内の上部から導出した湯を需要端側に給湯する給湯回路と、
前記タンク内の上部から導出した湯を浴槽水と熱交換させる追い焚き回路と、
前記タンク内の上部側から下部側に向かって高温層、中温層および低温層がある場合に、前記高温層と前記中温層とを混合させることにより前記タンク内の上部の温度を低下させるタンク内混合手段と、
を備える貯湯式給湯システム。
【請求項2】
前記タンク内の蓄熱量が減少した後に前記加熱手段による追加沸き上げが行われた場合に、前記タンク内混合手段は、前記追加沸き上げにより形成された前記高温層と、前記追加沸き上げ前に前記タンク内に残っていた湯で構成される前記中温層とを混合させる請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項3】
前記タンク内混合手段は、前記タンク内の混合が行われる領域の範囲を調節可能である請求項1または2記載の貯湯式給湯システム。
【請求項4】
前記タンク内の鉛直方向の温度分布を検出する温度分布検出手段を備え、
前記タンク内混合手段は、前記検出された温度分布に基づいて、前記タンク内の混合が行われる領域の範囲を調節する請求項3記載の貯湯式給湯システム。
【請求項5】
前記タンク内混合手段は、
一端が前記タンク内の上部に連通し、他端が前記タンク内の上部と下部との間の部位に連通する混合回路と、
前記混合回路に湯を循環させる混合用ポンプと、
を含む請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項6】
前記追い焚き回路と前記混合回路とが少なくとも一部で流路が共通化されている請求項5記載の貯湯式給湯システム。
【請求項7】
前記混合回路は、前記追い焚き回路の追い焚き熱交換器をバイパスするバイパス流路と、前記追い焚き熱交換器と前記バイパス流路とを切り替える流路切替弁とを有し、
前記タンク内の前記高温層と前記中温層とを混合させる際には、前記流路切替弁を前記バイパス流路側に切り替える請求項6記載の貯湯式給湯システム。
【請求項8】
前記混合回路の湯を前記タンクの前記間の部位に導入する戻し口は、前記タンク内に流入した湯の流れ方向が上方向または斜め上方向となるように構成されている請求項5乃至7の何れか1項記載の貯湯式給湯システム。
【請求項9】
前記タンク内混合手段は、
前記タンク内の上部から導出した湯を前記タンク内の上部に戻す混合回路と、
前記混合回路に湯を循環させる混合用ポンプと、
を含み、
前記混合用ポンプの循環量によって、前記タンク内の混合が行われる領域の範囲を調節可能である請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項10】
前記タンク内混合手段は、
前記タンクの上部に設けられた取出口から導出した湯を前記タンクの上部に設けられた戻し口に戻す混合回路と、
前記混合回路に湯を循環させる混合用ポンプと、
を含み、
前記戻し口は、前記タンク内に流入した湯の流れ方向が前記取出口から遠ざかる方向となるように構成されている請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項11】
前記タンク内混合手段は、前記タンク内の湯を攪拌する撹拌手段を含む請求項1記載の貯湯式給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−64536(P2013−64536A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203078(P2011−203078)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】