説明

貯湯式給湯装置

【課題】放熱ロスを減少させて熱効率のよい貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】深夜時間帯以外の時間帯の加熱手段による沸き増し時の沸き上げ目標温度を決定すると共に、深夜時間帯以外の時間帯の沸き増しを行わせる沸き増し制御手段41を備え、浴槽水の追い焚き加熱が行われた後は、予め設定された所定の高温度を沸き上げ目標温度とし、沸き増し動作時には切換手段29を中間戻し管28側へ切り換えて加熱手段21で所定の高温度に加熱した湯水を貯湯タンク1中間部へ戻すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱手段で加熱された湯を貯湯する貯湯タンク内上部に浴槽水等の外部流体を加熱するための間接熱交換器を備えた貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、特許文献1に示されるように、ヒートポンプ式加熱手段によって加熱された高温の湯を貯湯タンクの上部から戻して積層する通常沸き上げ動作で貯湯し、貯湯タンク内の上部に設けられた間接熱交換器によって浴槽等の水を貯湯タンク内の熱で循環加熱できるようにすると共に、間接熱交換器よりも下方にヒートポンプ式加熱手段で加熱した高温の湯を戻す中間戻し管を接続し、貯湯タンク側面上下に複数設けられた貯湯温度センサによって中間戻し管よりも上方の間接熱交換器付近の湯温が間接加熱の効率が悪い温度まで低下したことを検出すると、ヒートポンプ式加熱手段で加熱した高温の湯を中間戻し管から戻して間接熱交換器付近を昇温する中間沸き上げ動作を行うようにしたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−207202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこの従来のものでは、中間沸き上げを行う際は、貯湯温度より高い温度に沸き上げて戻すようにしているため、沸き上げの直後に浴槽の追い焚きが行われない場合は、放熱ロスが増加してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク底部に接続された給水管と、前記貯湯タンク頂部に接続された出湯管と、前記貯湯タンク下部から取り出した湯水を前記貯湯タンク上部へ戻す加熱循環回路と、前記加熱循環回路途中に設けられ湯水を加熱する加熱手段と、前記加熱循環回路途中に設けられ前記貯湯タンクの湯水を前記加熱循環回路に流動させる加熱循環ポンプと、前記貯湯タンク内上部に設けられ前記貯湯タンク内の湯水の熱で浴槽水を追い焚き加熱する間接熱交換器と、前記加熱循環回路の前記加熱手段よりも下流側から分岐され前記間接熱交換器よりも下方の前記貯湯タンク中間部に接続された中間戻し管と、前記加熱手段で加熱された湯水を前記加熱循環回路を介して前記貯湯タンク上部へ戻すか前記中間戻し管を介して前記貯湯タンク中間部へ戻すかを切り換える切換手段と、前記貯湯タンク側面の上下方向に複数設けられ前記貯湯タンク内の湯水の温度を検出するための貯湯温度センサと、深夜時間帯以外の時間帯の前記加熱手段による沸き増し時の沸き上げ目標温度を決定すると共に、深夜時間帯以外の時間帯の沸き増しを行わせる沸き増し制御手段と、を備え、前記沸き増し制御手段は、浴槽水の追い焚き加熱が行われた後は、予め設定された所定の高温度を沸き上げ目標温度とし、沸き増し動作時には前記切換手段を前記中間戻し管側へ切り換えて前記加熱手段で前記所定の高温度に加熱した湯水を前記貯湯タンク中間部へ戻すようにした。
【0006】
また、前記深夜時間帯での沸き上げ目標温度は、以下の式から算出された値に基づいた温度とし、深夜時間帯以外での沸き上げ目標温度は75℃以上の予め設定された所定の高温度とした。

沸き上げ目標温度={(出湯熱量−残湯熱量)/(タンク容量−残湯量)}+給水温度
【0007】
また、前記加熱手段を、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒と水とで熱交換させる冷媒水熱交換器と、冷媒圧力を減圧する減圧手段と、液冷媒を蒸発させる蒸発器とを備えたヒートポンプ式加熱手段とした。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、浴槽水の追い焚きを行った後に沸き増しの沸き上げ目標温度を高く設定するので、追い焚き前は放熱ロスを減少でき、また、追い焚き後は間接熱交換器の能力を素早く増加することができ、さらに、追い焚きを行わない場合には高温度の沸き増しを行わないのでシステム効率が向上する。
【0009】
また、出湯熱量に応じた分を深夜時間帯に沸き上げるため、沸き上げ目標温度が低めになって放熱ロスが減り、追い焚き熱量に応じた分は、貯湯タンクの貯湯温度が低下した際に沸き上げて間接熱交換器付近を昇温するので、必要な分を必要なときに沸き上げることとなり、十分な追い焚き能力を確保できる。
【0010】
また、追い焚き能力を確保するための沸き増し運転を行っても余剰となる熱量が最小限となるので、深夜時間帯の開始時の残湯量が減少することとなり、ヒートポンプ式加熱手段の場合は加熱効率が向上して、総合的な熱効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同一実施形態の作動を説明するためのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯するステンレス製の貯湯タンク、2は貯湯タンク1底部に市水を給水する給水管、3は貯湯タンク1頂部から出湯する出湯管、4は給水管2から分岐された給水バイパス管、5は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを給湯設定温度になるように混合する給湯混合弁、6は給湯混合弁5で混合された湯が流通する給湯管、7は給湯管6からの湯を給湯する給湯栓、8は給湯管6途中に設けられ給湯温度を検出する給湯温度センサ、9は給湯管6途中に設けられ給湯量を検出する給湯流量センサ、10は給水管2に設けられ市水の給水圧を一定の圧力に減圧する減圧弁、11は貯湯タンク1内の過圧を逃がす過圧逃がし弁である。
【0013】
12は浴槽、13は貯湯タンク1内の上部に設けられ貯湯タンク1内の湯の熱で浴槽水を加熱するための間接熱交換器、14は浴槽12と間接熱交換器13とを浴槽水が循環可能に接続するフロ循環回路、15はフロ循環回路14途中に設けられ浴槽水を循環させるフロ循環ポンプ、16は給湯管6から分岐されフロ循環回路14に接続された湯張り管、17は湯張り管16途中に設けられ湯張り管16を開閉する湯張り開閉弁、18はフロ循環回路14途中に設けられ浴槽12から間接熱交換器13へ流れる浴槽水の温度を検出するフロ温度センサである。ここで、間接熱交換器13はステンレス管を螺旋状に巻回した構成としている。
【0014】
19は間接熱交換器13の下方の貯湯タンク1中間部から出湯させて出湯管3へ合流させるための中間出湯管、20は中間出湯管19と出湯管3との合流点に設けられて貯湯タンク1の上部からの湯と貯湯タンク1の中間部からの湯の何れか一方あるいは両方を混合して給湯混合弁5の湯側に流入させるための中間切替弁である。
【0015】
21は加熱手段としてのヒートポンプ式加熱手段で、冷媒を圧縮する圧縮機22と、冷媒と水とを熱交換する冷媒水熱交換器23と、冷媒の圧力を減圧する減圧器24と、液冷媒を蒸発させる蒸発器25とを備え、蒸発器25で吸熱した冷媒を圧縮機22で圧縮して冷媒水熱交換器23を介して水を加熱するようにしている。このヒートポンプ式加熱手段21には冷媒として二酸化炭素冷媒が用いられ、高圧側が超臨界状態となることにより水を90℃の高温まで加熱することができるものである。
【0016】
26は貯湯タンク1の下部と冷媒水熱交換器23の水側と貯湯タンク1の上部とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路、27は加熱循環回路26途中に設けられた加熱循環ポンプ、28は加熱循環回路26の冷媒水熱交換器23よりも下流側で分岐され貯湯タンク1の中間部とを接続する中間戻し管、29は冷媒水熱交換器23で加熱された湯を加熱循環回路26を介して貯湯タンク1上部へ戻すか中間戻し管28を介して貯湯タンク1中間部へ戻すかを切り換える三方弁より成る切換手段である。ここで中間戻し管28は貯湯タンク1の間接熱交換器13の上端より下方の貯湯タンク1の側面に接続されており、間接熱交換器13の下端付近に接続されているのが好ましい。
【0017】
30は冷媒水熱交換器23へ流入する水の温度を検出する入水温度センサ、31は冷媒水熱交換器23で加熱された湯の温度を検出する沸き上げ温度センサ、32は貯湯タンク1の側面の上下方向に複数設けられた貯湯温度センサで、貯湯タンク1内の湯水の温度を検出するためのものであり、上から32a、32b、32c、32d、32e、32fと呼ぶ。なお、これら貯湯温度センサ32a〜fの内、32bは間接熱交換器13の中間部付近かつ中間戻し管28よりも上方の貯湯温度を検出する位置に設けられ、32cは間接熱交換器13の下端より下方かつ中間戻し管28よりも下方の貯湯温度を検出する位置に設けられているものである。
【0018】
33はリモコンで、給湯装置に関する各種の情報(給湯設定温度、フロ設定温度、残湯量、給湯装置の作動状態等)を表示する表示部34と、給湯設定温度およびフロ設定温度を設定操作するための温度設定スイッチ35と、浴槽12へ一定量の湯張りを指示する湯張りスイッチ36と、浴槽水の追焚きを指示する追焚きスイッチ37とを備えている。
【0019】
38は給湯温度センサ8、給湯流量センサ9、フロ温度センサ18、入水温度センサ30、沸き上げ温度センサ31、貯湯温度センサ32a〜fの検出値が入力され、フロ循環ポンプ15、湯張り開閉弁17、圧縮機22、減圧器24、加熱循環ポンプ27、切換手段29の作動を制御すると共に、リモコン33と通信可能に接続された制御手段である。この制御手段38は、予め給湯装置の作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、時計機能を有しているものである。
【0020】
また、制御手段38には、リモコン33で設定された給湯設定温度と最下部の貯湯温度センサ32が検出した最低温度から推定される給水温度と給湯流量センサ9で検出する給湯流量から一日に貯湯タンク1から外部に供給した出湯熱量を算出する出湯熱量算出手段39と、深夜時間帯での沸き上げ目標温度を前日の出湯熱量に基づいて決定する沸き上げ目標温度決定手段40と、浴槽水の加熱が行われた後は予め設定された所定の高温度を沸き上げ目標温度とし、深夜時間帯以外の時間帯の沸き増し時には前記切換手段を前記中間戻し管側へ切り換えて前記加熱手段で前記所定の高温度に加熱した湯水を前記貯湯タンク中間部へ戻すようにして沸き増しを行わせる沸き増し制御手段41とが設けられている。
【0021】
次に、給湯動作について説明すると、給湯栓7が開かれると、貯湯タンク1の底部に給水管2から市水が流入すると共に貯湯タンク1の頂部から出湯管3あるいは中間出湯管19を介して高温の湯が出湯し、制御手段38は給湯温度センサ8で検出する給湯温度がリモコン33の温度設定スイッチ35で設定された給湯設定温度になるよう給湯混合弁5の開度を調整し、給湯栓7から給湯設定温度の湯が給湯され、給湯栓7が閉じられることで給湯動作が終了する。
【0022】
このとき、貯湯タンク1の中間部の湯温が給湯設定温度よりも高い場合は、中間切替弁20は中間出湯管19側を開いて出湯管3側を閉じるように切り替えられ、貯湯タンク1中間部の湯が貯湯タンク1上部の湯よりも優先して出湯される。また、貯湯タンク1の中間部の湯温が給湯設定温度よりも低い場合は、中間切替弁20は出湯管3側を開いて中間出湯管19側を閉じるように切り替えられ、給湯設定温度の給湯を確実に行うようにしている。
【0023】
この給湯時には、貯湯タンク1の底部へ流入した水は給水管2の断面積に比べて十分に大きな断面積を持つ貯湯タンク1内で十分に減速され、高温の湯の層をほとんど乱すことなく下方から水の層を形成する。そして、貯湯タンク1上部の高温の湯と貯湯タンク1下部の低温の水とが接する温度境界層Lが形成される。そして、給湯量が増加するにつれて貯湯タンク1上部の高温の湯の層が減少すると共に貯湯タンク1下部の水の層が増加し、温度境界層Lが上昇する。この温度境界層Lは所定の温度差があればそれぞれの温度に基づく比重の違いによって混じり合うことがないもので、時間の経過に伴う熱伝導によって温度境界層Lの厚みが増し徐々に温度勾配が緩くなっていくものである。
【0024】
次に、通常の沸き上げ動作について説明する。
深夜時間帯になったことを制御手段38が認識すると、沸き上げ目標温度決定手段40は、出湯熱量算出手段39で算出した出湯熱量と、貯湯温度センサ32a〜fで検出する貯湯タンク1内の残湯熱量と、最下部の貯湯温度センサ32fで検出する給水温度とに基づいて、下記の式から深夜時間帯での温度を算出し、算出した温度を5℃刻みの温度に切り上げて沸き上げ目標温度を決定する。
【0025】
沸き上げ目標温度={(出湯熱量−残湯熱量)/(タンク容量−残湯量)}+給水温度

ここで、タンク容量は貯湯タンク1の容量に基づいて予め定められた値(ここでは貯湯タンク1の容量から深夜時間帯の開始時まで確保しておくべき最低貯湯量を減じた値)を用い、残湯量は貯湯温度センサ32a〜fでヒートポンプ式加熱手段21での再沸き上げが難しい所定の温度(例えば50℃)以上の湯の分布状態から残湯量を検出するようにしている。
【0026】
そして、制御手段38は、沸き上げる湯量(タンク容量−残湯量)と沸き上げ目標温度とヒートポンプ式加熱手段21の定格加熱能力とから深夜時間帯の終了時刻前に翌日に必要な熱量が沸き上がるような加熱開始時刻をピークシフト演算によって算出する。
【0027】
そして、現在時刻が加熱開始時刻に到達すると、制御手段38は圧縮機22と減圧器24と加熱循環ポンプ27を駆動制御すると共に、切換手段29を貯湯タンク1の上部側が冷媒水熱交換器23と連通する状態とし、目標の沸き上げ温度に加熱した湯を加熱循環回路26を介して貯湯タンク1の上部から積層して貯湯する通常沸き上げ動作を行い、翌日に必要な熱量が沸き上がるとする通常沸き上げ動作を終了する。
【0028】
次に、湯張り動作について説明すると、リモコン33の湯張りスイッチ36が操作されると、制御手段38は湯張り開閉弁17を開いて給湯温度センサ8で検出する給湯温度がリモコン33の温度設定スイッチ35で設定されたフロ設定温度になるように給湯混合弁5の開度を調整して適温の湯を湯張りし、給湯流量センサ9が所望の湯張り流量を積算すると湯張り開閉弁17を閉じて湯張り動作を終了する。
【0029】
そして、湯張り動作が終了してから予め定めた一定時間は、浴槽水の温度をフロ設定温度に保つ保温動作を行う。この保温動作について説明すると、制御手段38は所定のインターバル時間毎にフロ循環ポンプ15を駆動させ、浴槽水をフロ循環回路14に循環させてフロ温度センサ18で浴槽水の温度を検出する。浴槽水の温度がフロ設定温度より低い場合はフロ循環ポンプの駆動を継続し、間接熱交換器13から貯湯タンク1内上部の湯の熱を吸熱して浴槽水を加熱する。フロ温度センサ18が検出する温度がフロ設定温度を検出するとフロ循環ポンプ15の駆動を終了し、再度インターバル時間が経過すると同じ動作を繰り返す。そして、予め定めた一定時間が終了するとこの保温動作を終了する。
【0030】
また、リモコン33の追焚きスイッチ37が操作されたときの追焚き動作について説明すると、浴槽水の温度をフロ設定温度+一定温度(例えば2℃)まで追い焚きするように、制御手段38はフロ循環ポンプ15を駆動させ、浴槽水を間接熱交換器13へ循環させ、間接熱交換器13から貯湯タンク1内上部の湯の熱を吸熱して浴槽水を加熱する。そして、フロ温度センサ18が検出する温度がフロ設定温度+一定温度を検出するとフロ循環ポンプ15の駆動を終了して追焚き動作を終了する。
【0031】
次に、沸き増し動作について説明すると、深夜時間帯以外の昼間の時間帯においで、間接熱交換器13の高さ付近の貯湯温度センサ32で検出する貯湯温度が所定の温度を下回ったことを検出したら、沸き増し制御手段41は、ヒートポンプ式加熱手段21を作動させて、貯湯量あるいは貯湯温度を増加させる沸き増し運転を行う。
【0032】
図2は沸き増し動作を説明するフローチャート図で、制御手段38は、中間戻し管28より上方かつ間接熱交換器13付近に位置する貯湯温度センサ32bが浴槽水の加熱能力あるいは加熱効率が一定以上低下する第1所定温度(例えば60℃)まで低下したことを検知すると(ステップS1)、深夜時間帯の終了時刻から現在までの間に浴槽12の追い焚きを行ったことがあるかどうかを判断し(ステップS2)、行ったことがない場合は深夜沸き上げステップS3へ進み、沸き増し制御手段41はヒートポンプ式加熱手段21で沸き上げる沸き増し目標温度を深夜時間帯での沸き上げ目標温度と同一温度に設定する。なお、前記ステップS2では、深夜時間帯の終了時刻から現在までの間に追焚きスイッチ37が押されたか否かで浴槽12の追い焚きを行ったか否かを判別するようにしても良い。
【0033】
そして、制御手段38は、切換手段29をヒートポンプ式加熱手段21と貯湯タンク1の上部が連通する側へ切り換え(ステップS3)、圧縮機22と減圧器24とを駆動制御してヒートポンプ式加熱手段21と加熱循環ポンプ27を駆動して、沸き上げ温度センサ31で検出する温度が沸き増し目標温度となるように沸き増し動作を開始する(ステップS4)。なお、この沸き増し動作時には、ヒートポンプ式加熱手段21で沸き増した湯を、中間戻し管28を介して貯湯タンク1の中間部へ戻すようにしてもよい。
【0034】
このとき、貯湯タンク1上部から貯湯タンク1内に戻された湯は、湯水の温度境界層Lをそのまま押し下げ、湯量を増加する。そして、温度境界層Lが低い位置に移動され、中間戻し管28の下方に位置する貯湯温度センサ32cが第2所定温度(ここでは65℃)以上を検知すると(ステップS5)、圧縮機22と減圧器24とを駆動停止してヒートポンプ式加熱手段21と加熱循環ポンプ27の作動を停止させて沸き増し動作を終了する(ステップS6)。
【0035】
一方、前記ステップS2で深夜時間帯の終了時刻から現在までの間に浴槽12の追い焚きを行ったことがある場合は、ステップS7へ進み、沸き増し制御手段41はヒートポンプ式加熱手段21で沸き上げる沸き増し目標温度を予め設定された所定の高温度(ここでは、75℃)に設定し(ステップS7)、切換手段29をヒートポンプ式加熱手段21と中間戻し管28が連通する側へ切り換え(ステップS8)、圧縮機22と減圧器24とを駆動制御してヒートポンプ式加熱手段21と加熱循環ポンプ27を駆動して、沸き上げ温度センサ31で検出する温度が沸き増し目標温度となるように沸き増し動作を開始する(ステップS9)。
【0036】
このとき、貯湯タンク1中間部から貯湯タンク1内に戻された高温の湯は間接熱交換器13付近の湯水の昇温に寄与し、湯水の温度境界層Lをそのまま押し下げるよう温度境界層Lよりも上部の高温の湯を増加すると共に、貯湯タンク1内底部の低温の水がヒートポンプ式加熱手段21へ供給される。
【0037】
そして、制御手段38は、中間戻し管28より上方かつ間接熱交換器13の下端より上方に位置する貯湯温度センサ32bが浴槽水の加熱能力あるいは加熱効率が良い第3所定温度(例えば70℃)以上を検出すると(ステップS10)、圧縮機22と減圧器24とを駆動停止してヒートポンプ式加熱手段21を停止すると共に加熱循環ポンプ27も停止して、沸き増し動作を停止させるようにしている(ステップS6)。
【0038】
このように本発明によれば、、浴槽水の追い焚きを行う前に貯湯量が不足する場合は、深夜時間帯での沸き上げ目標温度での沸き増し運転を行うので、高効率で素早く湯量を増やすことができると共に放熱ロスも抑制することができ、浴槽水の追い焚きを行ってから貯湯熱量が不足する場合は、所定の高温度での沸き増し運転を行い、間接熱交換器13付近の貯湯タンク1中間部に戻すので、追い焚きの加熱能力あるいは加熱効率を素早く向上することができる。
【0039】
また、出湯熱量に応じた分を深夜時間帯に沸き上げるため、沸き上げ目標温度が低めになって放熱ロスが減り、追い焚き熱量に応じた分は、貯湯タンク1の貯湯温度が低下した際に沸き上げるので、必要な分を必要なときに沸き上げることとなり、十分な追い焚き能力を確保できる。
【0040】
また、追い焚き能力を確保するための沸き増し運転を行っても余剰となる熱量が最小限となるので、深夜時間帯の開始時の残湯量が減少することとなり、ヒートポンプ式加熱手段の場合は加熱効率が向上して、総合的な熱効率を向上することができる。
【0041】
なお、本発明はこの一実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で改変することを妨げるものではない。例えば、加熱手段21としてヒートポンプ式ではなくヒータ式の加熱手段としてもよい。また、切換手段29としは三方弁にに限られるものではなく、例えば加熱循環回路26の貯湯タンク1上部側と中間戻し管28にそれぞれ開閉弁を設け、一方のみが開く構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 貯湯タンク
2 給水管
3 出湯管
13 間接熱交換器
21 ヒートポンプ式加熱手段
22 圧縮機
23 冷媒水熱交換器
24 減圧器
25 蒸発器
26 加熱循環回路
27 加熱循環ポンプ
28 中間戻し管
29 切換手段
32 貯湯温度センサ
41 沸き増し制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク底部に接続された給水管と、前記貯湯タンク頂部に接続された出湯管と、前記貯湯タンク下部から取り出した湯水を前記貯湯タンク上部へ戻す加熱循環回路と、前記加熱循環回路途中に設けられ湯水を加熱する加熱手段と、前記加熱循環回路途中に設けられ前記貯湯タンクの湯水を前記加熱循環回路に流動させる加熱循環ポンプと、前記貯湯タンク内上部に設けられ前記貯湯タンク内の湯水の熱で浴槽水を追い焚き加熱する間接熱交換器と、前記加熱循環回路の前記加熱手段よりも下流側から分岐され前記間接熱交換器よりも下方の前記貯湯タンク中間部に接続された中間戻し管と、前記加熱手段で加熱された湯水を前記加熱循環回路を介して前記貯湯タンク上部へ戻すか前記中間戻し管を介して前記貯湯タンク中間部へ戻すかを切り換える切換手段と、前記貯湯タンク側面の上下方向に複数設けられ前記貯湯タンク内の湯水の温度を検出するための貯湯温度センサと、深夜時間帯以外の時間帯の前記加熱手段による沸き増し時の沸き上げ目標温度を決定すると共に、深夜時間帯以外の時間帯の沸き増しを行わせる沸き増し制御手段と、を備え、前記沸き増し制御手段は、浴槽水の追い焚き加熱が行われた後は、予め設定された所定の高温度を沸き上げ目標温度とし、沸き増し動作時には前記切換手段を前記中間戻し管側へ切り換えて前記加熱手段で前記所定の高温度に加熱した湯水を前記貯湯タンク中間部へ戻すようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記深夜時間帯での沸き上げ目標温度は、以下の式から算出された値に基づいた温度とし、深夜時間帯以外での沸き上げ目標温度は75℃以上の予め設定された所定の高温度としたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。

沸き上げ目標温度={(出湯熱量−残湯熱量)/(タンク容量−残湯量)}+給水温度
【請求項3】
前記加熱手段を、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒と水とで熱交換させる冷媒水熱交換器と、冷媒圧力を減圧する減圧手段と、液冷媒を蒸発させる蒸発器とを備えたヒートポンプ式加熱手段としたことを特徴とする請求項2記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−127856(P2011−127856A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288566(P2009−288566)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】