説明

走査型印刷装置、印刷制御方法、印刷制御プログラムが記憶された記憶媒体

【課題】 移動方向に対応した印刷を実行する走査型印刷装置を提供する。
【解決手段】 本発明の走査型印刷装置は、印刷対象上を移動させることにより、印刷対象に文字や模様等の印刷を行う走査型印刷装置において、印刷手段と、当該走査型印刷装置の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出する検出手段と、第一の印刷情報と第二の印刷情報とを記憶する記憶手段と、検出手段によって当該走査型印刷装置の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、記憶手段に記憶された第一の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせ、検出手段によって当該走査型印刷装置の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、記憶手段に記憶された第二の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせる制御手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型印刷装置と、この走査型印刷装置を用いて印刷対象に印刷を行う際の印刷制御方法と、印刷を走査型印刷装置に実現させるための印刷制御プログラムが記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体を把持して手動走査することにより、印刷対象に文字、記号、ロゴ、キャラクタ、マーク等の印刷を行う装置として走査型印刷装置がある。
【0003】
このような走査型印刷装置は、手動で動かすことが容易であり、スタンプのように連続して多数の書類における任意の箇所に印刷を行うことができるため、広く利用されている。また、より快適に使用することができるように、近年様々な提案がなされている。例えば、特開2003−136786号公報(特許文献1)では、内蔵する制御部に、印刷する画像の向きを回転させる画像処理部が設けられて、本体の移動方向が変えにくい場合であっても、所望の向きで画像を印刷することのできる走査型印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−136786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の走査型印刷装置のように、取扱いやすい走査型印刷装置は種々あるも、これらの走査型印刷装置では、連続で印刷作業を行う際、繰返し一つの印刷内容しか印刷することができないといった問題点があった。つまり、印刷内容を変えたい場合は、その都度、入力手段を操作したり、外部機器からのデータを送信するなどの手間を要していた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、入力手段を操作するなどの手間を要することなく、装置本体の動かす方向を変えるという簡単な動作で移動方向に対応した印刷を実行する走査型印刷装置と、該走査型印刷装置を用いた印刷制御方法と、移動方向に対応した印刷を走査型印刷装置に実現させるための印刷制御プログラムが記憶された記憶媒体と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の走査型印刷装置は、印刷対象上を移動させることにより、印刷対象に文字や模様等の印刷を行う走査型印刷装置において、印刷手段と、当該走査型印刷装置の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出する検出手段と、第一の印刷情報と第二の印刷情報とを記憶する記憶手段と、前記検出手段によって当該走査型印刷装置の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、前記記憶手段に記憶された第一の印刷情報に基づいて前記印刷手段に印刷を行わせ、前記検出手段によって当該走査型印刷装置の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、前記記憶手段に記憶された第二の印刷情報に基づいて前記印刷手段に印刷を行わせる制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
そして、前記第一の印刷情報と第二の印刷情報は、予め前記記憶手段に記憶されるものであって、互いに対応していることを特徴とする。
【0009】
前記第一の印刷情報と第二の印刷情報は互いに反対の意味を有する文字列から成ることもある。
【0010】
又、前記第一及び第二の印刷情報は一方が漢字の文字列情報であって、他方が該漢字の文字列情報の読みの情報であることもある。
【0011】
そして、本発明の印刷制御方法は、印刷対象上を移動させることにより、印刷対象に記憶手段に予め記憶された第一の印刷情報と第二の印刷情報の印刷を行なうための印刷制御方法であって、検出手段による走査型印刷装置の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出する検出処理を行うと共に、制御手段によって、検出処理によって検出された走査型印刷装置の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、記憶手段に記憶された第一の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせ、検出処理によって検出された走査型印刷装置の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、記憶手段に記憶された第二の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせる印刷処理を実行することを特徴とする。
【0012】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、走査型印刷装置で印刷する処理を制御手段とされるコンピュータに実現させる制御プログラムが記憶された記憶媒体であって、前記走査型印刷装置の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出する検出処理と、前記検出処理によって検出された前記走査型印刷装置の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、第一の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせ、前記検出処理によって検出された前記走査型印刷装置の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、第二の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせる印刷処理と、を実現するための印刷制御プログラムが記憶されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入力手段を操作するなどの手間を要することなく、装置本体の動かす方向を変えるという簡単な動作で移動方向に対応した印刷を実行する走査型印刷装置と、該走査型印刷装置を用いた印刷制御方法と、移動方向に対応した印刷を走査型印刷装置に実現させるための印刷制御プログラムが記憶された記憶媒体と、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る走査型印刷装置の側面断面を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例に係る走査型印刷装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る走査型印刷装置の記憶手段に記憶される対応情報リストを示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る走査型印刷装置で印刷する場合のメインフローを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る走査型印刷装置のタッチパネルの液晶表示面に表示された画面表示例を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る走査型印刷装置の移動方向検出処理フローを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例に係る走査型印刷装置の動作例を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係る走査型印刷装置の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。本発明の走査型印刷装置1は、印刷対象20上を移動させることにより、印刷対象20に文字や模様等の印刷を行う走査型印刷装置1である。
【0016】
この走査型印刷装置1は、印刷手段としてのインクジェットヘッド6と、走査型印刷装置本体の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出すると共に移動距離を検出する検出手段としてのロータリーエンコーダ9と、複数の第一の印刷情報と第二の印刷情報とから成る対応情報リストを予め記憶している記憶手段としてのROM12と、印刷対象20に印刷する情報として選択された第一及び第二の印刷情報を展開して一時的に記憶する記憶手段としてのRAM13と、検出手段によって当該走査型印刷装置1の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、記憶手段としてのRAM13に記憶された第一の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせ、検出手段によって当該走査型印刷装置1の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、記憶手段としてのRAM13に記憶された第二の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせる制御手段としてのCPU11と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
そして、第一の印刷情報と第二の印刷情報は、互いに対応している情報とされ、この第一及び第二の印刷情報には、例えば、互いに反対の意味を有する文字列や、英語とその訳語、漢字とその読み等の情報を採用することができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。図1は、本発明の実施例に係る走査型印刷装置1の側面断面を示す模式図である。
【0019】
この走査型印刷装置1は、図1に示すように、紙などの印刷対象20上に押し当てながら移動させることで印刷対象20に文字や模様等を印刷する装置である。又、この走査型印刷装置1は、把持することのできる大きさに形成された中空方形状の筐体2を有している。そして、筐体2の上面には液晶表示面上にタッチセンサー面が積層されて成るタッチパネル4が形成されている。
【0020】
このタッチパネル4は、入力されたデータに関する文字や模様等の画像の全部又は一部、各種の設定のための選択メニュー、各種の処理に関するメッセージ等が表示されるものであって、手指やタッチペン等によって各種の設定や、文字データの入力、候補中から印刷データを決定するための選択入力が行えるようになっている。
【0021】
又、図示しない筐体2の側面には印刷を実行させる印刷許可ボタン、電源スイッチなどのスイッチ群が形成されている。そして、筐体2の下面にはインクジェットヘッド6に対応した位置に開口が形成され、筐体2の下方両端部近傍には印刷対象20に接触される車輪8が配設されている。
【0022】
更に、図示しないが、筐体2には、パーソナルコンピュータ等の外部機器と接続するための入力端子、メモリカード等の記憶媒体が挿入される挿入口等も形成されている。
【0023】
そして、筐体2の内部には、インクを吹き付けるノズル列を有するインクジェットヘッド6やインクタンク7、制御部10、電源としての電池等が配設されている。このインクジェットヘッド6は、印刷手段とされるものであり、筐体2の下面の開口に対応して配設され、図示するように、筐体2の車輪8を平面台などに載置された印刷対象20の面に接触させたとき、インクジェットヘッド6のノズルから印刷対象20の面に対して垂直方向にインクを吐出させることで、印刷を行うことができるようになっている。
【0024】
又、車輪8を軸支する一方の車軸にはベルトを介してロータリーエンコーダ9が装着されている。したがって、車輪8を印刷対象20に当てて装置本体を移動させたとき、車輪8の回転に応じたパルス信号がロータリーエンコーダ9から送信されて制御部10に受信され、装置本体の移動方向と移動距離が検出されることとなる。
【0025】
図2は、この走査型印刷装置1の回路構成を示す機能ブロック図である。この走査型印刷装置1は、図2に示すように、CPU11、ROM12、RAM13から成る制御部10、インクジェットヘッド6、ロータリーエンコーダ9、外部機器と接続される入出力インターフェース14等を備える。
【0026】
制御部10は、制御手段とされるマイクロコンピュータとしてのCPU11と、各種の動作を制御するためのシステムプログラムやフォント等が記憶されたROM12と、ワークメモリとしてのRAM13と、から構成される。
【0027】
そして、制御手段とされるCPU11は、入力手段としてのスイッチ群3及びタッチパネル4からの操作信号に応じて、又は、自動でROM12に予め記憶されているシステムプログラム、入出力インターフェース14に接続された外部機器やメモリカードから読み込まれた制御プログラム等を起動させ、RAM13をワークメモリとして回路各部の動作を制御する。
【0028】
ROM12は、記憶手段とされるものであって、タッチパネル4から選択入力された文字列等を印刷するためのプログラム、印刷フォント、表示フォント、記号、模様等が記憶され、CPU11で読取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体としても機能する。又、ROM12には、相互に対応する複数の第一の印刷情報及び第二の印刷情報が対応情報リストとして予め記憶されると共に、第一の印刷情報及び第二の印刷情報として使用者が自由に選んで設定することのできる単語や記号、定型句などのデータが記憶されている。
【0029】
この対応情報リストは、図3に示すように、「合格」及び「不合格」、「許可」及び「禁止」などの相互に反対の意味を有する単語、並びに、「APPROVED」及び「承認」、「URGENT」及び「至急」などの英単語とその訳語、並びに、「雨」及び「あめ」、「雲」及び「くも」などの漢字とその読み、などの相互に対応する複数の第一の印刷情報と第二の印刷情報から構成される。
【0030】
又、第一の印刷情報と第二の印刷情報は、単語である場合に限ることなく「合格です。」及び「不合格です。」、「Thank you.」及び「ありがとうございます。」といった文であってもよい。
【0031】
更に、第一の印刷情報と第二の印刷情報は、上記のように相互に反対する意味であったり、英語及びその訳語や漢字及びその読みである場合に限定されるものでもなく、「良好です。」及び「改善が必要です。」といったような相互に対応する文字列であってもよい。又、「○」及び「×」のような記号、女性用の印刷対象20に印刷する「ハート柄」及び男性用の印刷対象20に印刷する「クローバー柄」のような模様であってもよい。
【0032】
そして、RAM13は、記憶手段とされるものであって、ROM12に記憶された対応情報リストの中から選択された第一及び第二の印刷情報或いはROM12に記憶された単語や定型句などの中から選択設定された第一及び第二の印刷情報と、サイズや文字間隔等の印刷情報が展開された印刷データが記憶される印刷データメモリ、表示手段としてのタッチパネル4の液晶表示面に表示される表示データが記憶される表示データメモリ等の各領域が確保され、印刷処理等に必要なデータを一時的に記憶するレジスタやカウンタ等が設けられている。
【0033】
そして、ロータリーエンコーダ9は、検出手段とされるインクリメンタル式のエンコーダであり、車輪8が回転したときに回転されるスリット列を有する回転板と、該回転板を挟むように配設される2組の発光素子及び受光素子とを備えている。又、このロータリーエンコーダ9は、回転板が回転したときに発光素子から射出されてスリットを通る光を受光素子に受光させることで、走査型印刷装置1の移動量を検出する信号として2相のパルス信号を制御手段に送信する。
【0034】
又、このロータリーエンコーダ9は、パルス弁別回路とアップダウンカウンタを備え、正転/逆転におけるパルス信号のパターンが異なることを利用して(つまり、2相の信号の位相差を利用して)、走査型印刷装置1の移動方向に対応する車輪8の正転/逆転検出信号を制御手段に送信する。即ち、ロータリーエンコーダ9は、装置本体の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出して、当該検出信号を制御手段に送信する。
【0035】
そして、制御手段は、検出手段からの移動量検出信号としてのパルス信号に基づいて、つまり、副走査方向(走査型印刷装置1の進行方向)の移動量に対応して、主走査方向(走査型印刷装置1の進行方向に対して垂直となる方向)に配列されるノズル列から1ライン動作毎にインクが吐出されるように印刷手段とされるインクジェットヘッド6を駆動制御する。
【0036】
具体的には、この走査型印刷装置1は、ロータリーエンコーダ9の回転板に設けられるスリットの間隔を装置本体の1ライン移動量に対応させて形成することで、一つの受光素子からのパルス信号が送られる度に1ラインの印刷を実行することができるようになっている。又、制御手段は、パルス信号の入力をカウントすることにより、装置本体の移動量を算出することで、印刷終了の判定も行う。
【0037】
そして、制御手段は、検出手段からの正転/逆転検出信号に基づいて、印刷手段に印刷させる印刷情報を決定する。つまり、制御手段は、検出手段によって走査型印刷装置1の移動方向が一方の副走査方向である第一の方向であると検出されたときは、第一の印刷情報を記憶手段から呼び出し、当該印刷情報に基づいて印刷手段を駆動制御して印刷手段に印刷を行わせる。同様に、制御手段は、検出手段によって走査型印刷装置1の移動方向が第一の方向に対して180度反対方向の第二の方向であると検出されたときは、第二の印刷情報を記憶手段から呼び出し、当該印刷情報に基づいて印刷手段を駆動制御して印刷手段に印刷を行わせる。
【0038】
つまり、この走査型印刷装置1は、車輪8を印刷対象20に当て、印刷許可ボタンを押した状態で左右の何れか一方(即ち、第一の方向或いは第二の方向)に移動させると、ロータリーエンコーダ9から入力される正転/逆転検出信号に基づいてCPU11が第一の印刷情報或いは第二の印刷情報を記憶手段から呼び出し、ロータリーエンコーダ9から入力される移動量検出信号に応じてCPU11が1ライン動作毎にインクジェットヘッド6のノズル列からインクを吐出させて、記憶手段から呼び出された印刷情報に基づいて印刷対象20に当該装置本体の移動方向に応じた印刷を行うことができる。
【0039】
次に、図4乃至図7を参照して本実施例の走査型印刷装置1における印刷の方法と制御について具体的に述べる。
先ず、図4の制御フローチャートに示すように、この走査型印刷装置1は、使用者が電源スイッチを入れることで電源がON状態となり、制御手段によって、RAM13に記憶されている所定の情報が消去され、初期状態としての印刷情報(例えば、文字サイズや文字同士の間隔)が設定される初期化処理(ステップS101)が行われる。
【0040】
次に、図5に示すように、使用者が入力手段を操作することによって印刷しようとする文字列、模様等を表示手段に表示される対応情報リスト(複数の第一の印刷情報及び第二の印刷情報)の中から選択すると、入力手段から印刷情報選択信号が制御手段に送信される。そして、制御手段は、印刷情報選択信号を受信すると、図4に示したように、選択された一対の第一及び第二の印刷情報を記憶手段であるRAM13に記憶させる印刷情報選択処理(ステップS103)を実行する。このように、表示手段に対応情報リストを表示させることとすれば(図5参照)、使用者は、入力手段を操作することで、印刷対象20に印刷する文字列等をリストの中から容易に選択することができる。
【0041】
尚、使用者が、対応情報リストからではなく、表示手段に表示される単語や定型句などの中から個別に第一の印刷情報及び第二の印刷情報として選択設定した場合は、当該設定された印刷情報が記憶手段であるRAM13に記憶されることとなる。
【0042】
次いで、使用者が、入力手段を操作してサイズ、文字間隔、印刷濃度などの印刷情報を設定すると、入力手段から所定の信号が制御手段に送信され、当該印刷情報が記憶手段であるRAM13に記憶される。そして、制御手段は、印刷情報を記憶手段に記憶させて印刷データを作成するとともに、記憶手段に記憶された印刷情報(即ち、入力手段によって入力された印刷情報)を表示手段に表示させて使用者に印刷される内容を確認させる印刷データ作成処理(ステップS105)を実行する。これにより、使用者は表示手段に表示される印刷情報を確認しながら、当該印刷情報を適宜修正・編集することができる。
【0043】
そして、印刷データ作成処理(ステップS105)が完了すると、当該走査型印刷装置1は印刷待機状態となる。このとき、使用者が、車輪8を印刷対象20に接触させた状態で、当該走査型印刷装置1の入力手段とされる印刷許可ボタンを操作する(例えば、押し続ける)と、制御手段は、印刷許可判定処理(ステップS107)において印刷が許可されたと判定して、移動方向検出処理(ステップS201)が実行される。具体的には、図6の制御フローチャートに示すように、使用者が装置本体を副走査方向の何れか一方に移動させることにより車輪8が回転すると、検出手段から正転/逆転検出信号が制御手段に送信される。
【0044】
そして、制御手段は、正転の検出信号を受信すると、移動方向が第一の方向か否か(即ち、第二の方向か)を判定する移動方向判定処理(ステップS211)において、装置本体の移動方向は第一の方向であると判定し、第一の印刷情報を印刷対象20に印刷する情報として選択する印刷情報選択処理(ステップS221)を実行する。
【0045】
これに対して、制御手段は、逆転の検出信号を受信すると、移動方向判定処理(ステップS211)において、装置本体の移動方向は第二の方向であると判定し、第二の印刷情報を印刷対象20に印刷する情報として選択する印刷情報選択処理(ステップS223)を実行する。
【0046】
そして、印刷情報選択処理(ステップS221、223)が実行されると、図4に示したように、制御手段は、記憶手段に記憶されている第一の印刷情報或いは第二の印刷情報に関する印刷データに基づいて、印刷手段としてのインクジェットヘッド6を検出手段からのパルス信号に応じて1ライン動作毎に駆動制御することで、装置本体の移動距離や移動速度に合わせて印刷処理(ステップS301)を実行する。
【0047】
そして、印刷処理(ステップS301)は、印刷許可ボタンが押されている状態で装置本体を移動させることにより1ライン動作毎に実行されるが、制御手段は、印刷許可ボタンのON/OFFを印刷中監視しており、印刷中或いは印刷終了後に印刷許可ボタンが離されると、制御手段は、印刷許可ボタンがオフ状態となったと判定して(ステップS303)、印刷手段の駆動及び検出手段の動作を停止し、再度印刷許可ボタンが押されるまで印刷待機状態とされる。尚、制御手段は、パルス信号の受信をカウントすることにより印刷範囲における移動距離を算出して印刷終了を自動で判定し、印刷手段及び検出手段の動作を停止させることができるため、所望の内容の印刷が終了した後、印刷許可ボタンを押し続けた状態で装置本体を移動させたとしても印刷が行われることはない。
【0048】
つまり、この走査型印刷装置1を、図7(a)に示すように、第一の方向である右方向に移動許可ボタンを押し続けながら移動させると、印刷情報選択処理(ステップS221)において第一の印刷情報が選択され、例えば、第一の印刷情報としての「合格」という文字列が装置本体の移動に伴い先頭から順に印刷対象20に印刷されることとなる。又、この走査型印刷装置1を、図7(b)に示すように、第二の方向である左方向に移動許可ボタンを押し続けながら移動させると、印刷情報選択処理(ステップS223)において、第二の印刷情報が選択され、第二の印刷情報としての「不合格」という文字列が装置本体の移動に伴い末尾から順に印刷対象20に印刷されることとなる。
【0049】
そして、印刷許可ボタンが離された後、印刷情報が変更されることなく(ステップS305)、別の印刷対象20などに当てられ再度印刷許可ボタンが押され、印刷許可判定処理(ステップS107)において印刷許可が制御手段により判定されると、再び移動方向検出処理(ステップS201)が実行される。つまり、使用者は、走査型印刷装置1を別の印刷対象20に当てる度に印刷許可ボタンを押し、印刷許可ボタンを押した状態で装置本体を左右の何れかに移動させることで、第一の印刷情報或いは第二の印刷情報を、連続して印刷することができる。
【0050】
尚、この走査型印刷装置1は、印刷許可ボタンを設けずに、車輪8に加わる圧力を検出する圧力センサーを設けて、圧力センサーからの検出信号に基づいて印刷許可を判定する構成としてもよい。これにより、装置本体を印刷対象20に押し当てる度に、制御手段に印刷許可判定をさせることができるため、使用者は、より容易に複数の印刷対象20の任意の箇所に連続して印刷することができる。
【0051】
そして、制御手段は、印刷を終了して待機状態とされているときに、使用者による印刷情報の変更操作に対する信号を受信した場合は、印刷情報変更処理(ステップS305)において印刷情報変更有りと判定して、初期化処理(ステップS101)を実行する。
【0052】
したがって、本発明によれば、印刷情報を変更させるための入力手段の操作などの手間を要することなく、走査型印刷装置1の移動方向を変えるという簡単な動作で二種類の印刷内容を使い分けながら複数の印刷対象20の任意の箇所に連続して印刷することができる。又、第一の印刷情報及び第二の印刷情報を予め記憶手段に記憶させておくことで、使用者は、容易に印刷したい文字列等の組み合わせを選択することができる。
【0053】
そして、互いに反対の意味を有する文字列を第一の印刷情報と第二の印刷情報として予め記憶手段に記憶させておくことで、スタンプのように連続して関連した書類の振り分けなどの処理を行うのにより適した印刷をすることができる。
【0054】
更に、予め記憶する第一及び第二の印刷情報を、漢字の文字列情報とその文字列の読みの情報とすることで、知育玩具或いは脳の鍛錬の活性化を目的とするゲームとしても利用することができるため、需要層の拡大を図ることができる。
【0055】
尚、本実施例におけるフローチャートに示した処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体に書き込んだ状態で各種装置に適用したり、通信媒体により伝送して各種装置に適用することも可能である。このように所望の記憶媒体に本実施例で述べた各処理を記憶させ、他のコンピュータ等でプログラムを実行させることにより、本実施例の装置を用いた場合と同様の作用効果が得られる。尚、コンピュータは、本実施例で述べた装置に内蔵されたコンピュータに限定されるわけではなく、記憶媒体に記憶されたプログラムを読取り可能であって、読み取ったプログラムに従って制御動作を行なうCPU等の演算装置を備えているあらゆるコンピュータを含む。
【0056】
そして、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。例えば、第一の印刷情報と第二の印刷情報は、図8に示すように、文字列や模様等を同一として、相互に反転色となるような印刷情報としてもよい。つまり、一方の印刷情報は文字を印刷する情報とし、他方の印刷情報は文字部以外の部分を印刷する情報としてもよい。又、第一及び第二の印刷情報の相互の文字の色或いは文字部以外の色が異なるようにしてもよい。これにより、印刷対象20の色彩に対応して印刷情報を変更することで、様々な印刷対象20において見やすい文字や模様等を印刷することができる。更に、第一及び第二の印刷情報は、文字列を同一として、フォントが異なるようにするなど、様々な印刷情報を記憶させておくことができる。
【0057】
そして、第一の印刷情報と第二の印刷情報は、対応情報リストや自由に選択設定可能な単語や文字列等のデータとして予め記憶手段に記憶させておくこととしたが、これに限定されることなく、入力手段を操作することによって、或いは、外部機器から情報を入力させるなどして、相互に対応しない文字列や模様等を自由に第一の印刷情報及び第二の印刷情報として記憶手段としてのRAM13やメモリカードなどに記憶させ印刷手段に印刷させることとしてもよい。又、対応情報リストをRAM13やメモリカードに記憶させて、適宜第一及び第二の印刷情報を追加したり修正したりすることができるようにしてもよい。
【0058】
更に、走査型印刷装置1の移動方向を検出する検出手段としては、ロータリーエンコーダ9に限ることなく、加速度センサーにより左右の移動方向を検出する場合や装置の左右の車軸に圧力センサーを取付け、右又は左の何れの押圧が強く行われたかにより方向を検出する場合などの様々な手段を採用することができる。
【0059】
そして、上記実施例では、左右方向を第一及び第二の方向とした印刷処理の例を示したが、印刷する文字列等を縦書きとして上下方向を第一及び第二の方向としてもよい。又、上記実施例では、インクジェット方式の走査型印刷装置1についての説明をしたが、これに限定されることなく、熱転写方式などのあらゆる走査型印刷装置1に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 走査型印刷装置 2 筐体
3 スイッチ群 4 タッチパネル
6 インクジェットヘッド 7 インクタンク
8 車輪 9 ロータリーエンコーダ
10 制御部 11 CPU
12 ROM 13 RAM
14 入出力インターフェース 20 印刷対象


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象上を移動させることにより、印刷対象に文字や模様等の印刷を行う走査型印刷装置において、
印刷手段と、
当該走査型印刷装置の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出する検出手段と、
第一の印刷情報と第二の印刷情報とを記憶する記憶手段と、
前記検出手段によって当該走査型印刷装置の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、前記記憶手段に記憶された第一の印刷情報に基づいて前記印刷手段に印刷を行わせ、
前記検出手段によって当該走査型印刷装置の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、前記記憶手段に記憶された第二の印刷情報に基づいて前記印刷手段に印刷を行わせる制御手段と、を備えていることを特徴とする走査型印刷装置。
【請求項2】
前記第一の印刷情報と第二の印刷情報は、予め前記記憶手段に記憶されるものであって、互いに対応していることを特徴とする請求項1に記載の走査型印刷装置。
【請求項3】
前記第一の印刷情報と第二の印刷情報は互いに反対の意味を有する文字列から成ることを特徴とする請求項2に記載の走査型印刷装置。
【請求項4】
前記第一及び第二の印刷情報は一方が漢字の文字列情報であって、他方が該漢字の文字列情報の読みの情報であることを特徴とする請求項2に記載の走査型印刷装置。
【請求項5】
印刷対象上を移動させることにより、印刷対象に記憶手段に予め記憶された第一の印刷情報と第二の印刷情報の印刷を行なうための印刷制御方法であって、
検出手段による走査型印刷装置の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出する検出処理を行うと共に、
制御手段によって、検出処理によって検出された走査型印刷装置の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、記憶手段に記憶された第一の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせ、検出処理によって検出された走査型印刷装置の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、記憶手段に記憶された第二の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせる印刷処理を実行することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項6】
走査型印刷装置で印刷する処理を制御手段とされるコンピュータに実現させる制御プログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記走査型印刷装置の移動方向が第一の方向か第一の方向と逆の第二の方向かを検出する検出処理と、
前記検出処理によって検出された前記走査型印刷装置の移動方向が第一の方向であると検出されたとき、第一の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせ、前記検出処理によって検出された前記走査型印刷装置の移動方向が第二の方向であると検出されたとき、第二の印刷情報に基づいて印刷手段に印刷を行わせる印刷処理と、を実現するための印刷制御プログラムが記憶されたことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−214738(P2010−214738A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63417(P2009−63417)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】