説明

走行型茶葉摘採機

【課題】 走行型茶葉摘採機のコンテナから、トラックへの茶葉の乗せ替えを合理化して、重心が低く転倒の危険のすくない、構造が簡単で、取出し操作がし易い、安価な機体を提供する。
【解決手段】 走行型茶葉摘採機のコンテナを周囲壁、底板、天井蓋で構成し、底板を周囲壁に対して摺動可能とし、底板を押し上げることで、コンテナに収容した茶葉を取り出す。更に、取出し時にはコンテナを後方に傾ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採する摘採機に関するものであって、摘採した茶葉を収容するコンテナを備えた走行型茶葉摘採機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナを備えた走行型茶葉摘採機としては、円筒形のコンテナを備えた特開2000−60269に示すものや、方形のコンテナを備えた特開2000−125643に示すものがある。後者は方形コンテナの底板を開閉して茶葉を取出すものである。また、コンテナの底板をベルトコンベヤ状にしたものとしては、特開2001−61328に示すものがある。
【特許文献1】特開2000−60269号公報
【特許文献2】特開2000−125643号公報
【特許文献3】特開2001−61328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
走行型茶葉摘採機で摘採された茶葉は、製茶工場に運ぶ為に搬送用のトラックに積み替える必要がある。特開2000−125643に示すものでは、茶葉の入ったコンテナを、トラックの荷台の高さまで持ち上げ、コンテナの底板を開いて、茶葉をトラックの荷台に落下させて積み替えている。特開2001−61328に示すものでも、やはり茶葉の入ったコンテナを、トラックの荷台の高さまで持ち上げ、コンテナの周囲枠を水平に移動させて、ベルトコンベヤ状の底の上に乗っている茶葉をトラックの荷台に落下させている。
【0004】
両者共に、摘採した茶葉の詰まったコンテナを高く持上げる為の装置を必要とする。更に、茶葉の詰まった重いコンテナを高く持上げる為、重心が高くなり、機体が非常に不安定となり、転倒の危険がある。
【0005】
この発明は、茶葉をトラックに積み替える際、重いコンテナを高く持上げることなく、積み替えの出来る走行型茶葉摘採機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決する為に、請求項1の発明では、茶畝を跨いで走行する門型の機体に、茶畝上面に臨む摘採装置と、この摘採装置により摘採された茶葉の搬送装置と、摘採された茶葉を収容するコンテナを備えた走行型茶葉摘採機において、
上記コンテナは周囲壁と底板、天井蓋よりなる容器であり、コンテナ上部に搬送装置が接続され、底板は周囲壁に対して摺動可能とし、底板を押し上げることによって、コンテナに収容した茶葉を排出するという手段を用いる。
【0007】
底板を押し上げるという動作をすれば、コンテナ内の茶葉は底板で押し上げられ、コンテナ上部から排出されることになる。従って、コンテナ自体を高く持上げなくてもよい。
【0008】
請求項2の発明では、上記コンテナは茶葉の搬送ダクトが接続する前面壁、その対面になる後面壁、その両側を囲む側面壁と底板、天井蓋で構成される方形の容器であるという手段を用いる。
【0009】
摘採装置で摘採された茶葉は、搬送ダクトが接続しているコンテナ前面壁の上部から、コンテナ内に投入され、コンテナ内を落下して、方形の底板の上に堆積する。天井蓋は開閉自在とし、底板を押し上げて茶葉をコンテナ上部から排出するときは開ける。
【0010】
請求項3の発明では、上記コンテナの後面壁を輸送帯で構成し、底板の上昇に合わせて、輸送帯を動かすという手段を用いる。
【0011】
請求項1、2の発明で底板で茶葉を押し上げるとき、茶葉は周囲の壁を擦りながら上昇する。このとき茶葉と壁面に摩擦抵抗が生じる。この発明のように、後面壁を輸送帯で構成すれば、後面壁は茶葉と一緒に移動するので、後面壁とは摩擦抵抗を生じない。従って、底板を押し上げる力を減らすことが出来る。
【0012】
請求項4の発明では、摘採した茶葉を収容するときは、コンテナを直立させて搬送ダクトと接続させ、茶葉を排出するときは、コンテナを傾けるという手段を用いる。
【0013】
摘採した茶葉を収容するとき、コンテナを直立させていると、コンテナ上部に投入された茶葉は、平均的に底板の上に堆積する。直立しているときは、周囲の側壁に平均に掛かっている茶葉の圧力も、コンテナを傾けると、茶葉は下側になった壁面に圧力が掛かり、上側になった壁面と茶葉の間には空間が生じて摩擦抵抗が無くなる。従って、底板を押し上げて茶葉を排出するときの力を少なくすることが出来る。また、搬送ダクトの接続している壁面が上側になるように傾ければ、接続している搬送ダクトをコンテナから離すことが出来る。
【0014】
更に、コンテナを傾けることで、コンテナの先端を摘採機の機体の外側に張り出すことが出来るので、排出する茶葉をトラックの荷台の上に放出することが出来る。
【0015】
請求項5の発明では、周囲壁に沿ってガイドレールを設け、ガイドレール内を移動する移動体と底板を繋ぐという手段を用いる。
【0016】
茶葉を押し上げる底板には偏った荷重が掛かる。従って案内がないと底板は傾いてしまう。周囲の側壁に沿ってガイドレールを設け、ガイドレール内を移動する移動体に底板を固定すれば、底板が傾くのを防ぐことが出来る。
【0017】
請求項6の発明では、周囲壁に沿ってガイドレールを設け、ガイドレール内を移動する移動体と底板を繋ぐと共に、底板を後面壁の輸送帯と繋ぐという手段を用いる。
【0018】
請求項3の発明のように、後面壁を輸送帯で構成した場合、輸送帯の端に底板をつなげば、輸送帯を動かすとき底板も同時に移動させることが出来る。しかし、そのままでは底板は傾いてしまう。このとき、周囲壁に沿ってガイドレールを設け、ガイドレール内を移動する移動体と底板を繋げば、底板の傾くのを防ぎ、平らに茶葉を押し上げることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
従来のコンテナ式走行型茶葉摘採機に比べて、構造が簡単で、製造コストを安く出来る。取出し時に、コンテナを高く持上げなくてもよいので、機体の重心が低くなり、転倒の危険がない。コンテナを高く持上げる為の複雑なリンク機構がないので、取出し操作も簡単になり、早く済ますことができる。
【0020】
従来のコンテナ方式では、大量の茶葉が一度に搬送用トラックに落下するので茶葉を傷めると共に、コンテナが急に空になる反動で摘採機が転倒する危険もある。この発明では茶葉が、少しずつ排出されるので茶葉も傷めず、取出し時に、機体の重心も少しずつ移動するので危険が少ない。
【0021】
請求項3の発明によれば、取出し事に茶葉と後面壁の摩擦抵抗を無くすことが出来るので、少ない力で取出しができる。大量の茶葉を収容する大型のコンテナを作るとき、特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面に基づいて、実施例を説明する。図1はこの発明の走行型茶葉摘採機の側面図であり、茶葉搬送用のトラックに積み替える要領を示している。図2は走行型茶葉摘採機の正面図である。
【0023】
1、2は無端輸送帯で出来た走行装置、3は茶畝を跨いで左右の走行装置1、2を繋ぐ門型枠、4は摘採装置であって、茶畝の形状に合わせて湾曲した摘採刃が付いている。5、6はファンであって、フレキシブルなホース7、8で摘採装置4に接続している。9、9’は摘採された茶葉を収容するコンテナである。コンテナ9の周囲壁は、搬送ダクト10を吹き上げて茶葉を運んできた圧力風を抜け易くする為に、外孔板又はネット状の壁で構成されている。
【0024】
コンテナ9は茶葉を取出す為に傾けた状態を示しており、9’は茶葉を受け入れる為に直立させ、茶葉の搬送ダクト10と接続した状態を示している。11は摘採装置4を上下させる為の昇降枠であり、コンテナ9もこの上に乗せてあり、昇降枠11と共に上下する。11’は昇降枠を茶葉摘採の位置まで下げた状態を示す。12”はコンテナの底板であり、コンテナ内の茶葉を押し出す為に、コンテナの先端まで移動した状態を示している。12’は下端まで戻った状態を示す。13、14はコンテナ9の左右壁に沿って設けたガイドレールであり、ガイドレール13、14内を移動体15が動くようになっている。16は天井蓋であって、茶葉取出しのときは開く。コンテナ9は支点17を中心として傾斜させることが出来る。18は茶葉搬送用のトラックである。
【0025】
図3は請求項2の実施例であって、コンテナを傾けて茶葉を取出す状態を示す縦方向の断面図、図4は移動体15と底板12の関係を示す横方向の断面図である。12は底板であり、茶葉取出しの為にコンテナの中央に移動してきた状態を示している。19は底板の支えであり、移動体15と連結してあり底板12が倒れるのを防いでいる。移動体15はスプロケット20,21に渡されたチェン22と繋げてあり、スプロケット20,21を廻すと、チェン22に引っ張られて移動する。23は前面壁であり、搬送ダクト接続部24が付いている。31は後面壁であり、コンテナ9を傾けたとき、こちらが下側となり、茶葉25の荷重はこちらに掛かることになる。26はコンテナ9の両側面壁である。
【0026】
図5は請求項3の実施例であって、コンテナを傾けて茶葉を取出す状態を示す縦方向の断面図、図6は移動体15と底板12、および輸送帯27で構成した後面壁の関係を示す横方向の断面図である。スプロケット28、29にはチェン30が渡してあり、輸送帯27がチェン全長の半分だけに取り付けてある。
【0027】
次に、この実施例の動作順序を説明する。まず走行装置1、2を畝間に合わせて機体を茶畝に乗り入れる。コンテナ9を9’の直立の位置にすると、搬送ダクト接続部24は24’の位置になり、搬送ダクト10と接続する。次いで昇降枠11を降下させ、摘採装置4を4’の位置にし、茶樹の高さに合わせる。そのまま機体をゆっくりと前進させ摘採を開始する。
【0028】
摘採装置4には刈刃が付いていて茶葉を刈り取る。摘採装置4の背後には、ファン5、6からの圧力風がホース7、8で送りこまれ、摘採された茶葉は搬送ダクト10内を吹き上げられて、直立したコンテナ9’の上部から落下し、底板12の上に堆積する。コンテナ9’が茶葉で満杯になると、摘採作業を中断して、機体を茶畝の外に移動し、図1に示すように機体の後部にトラック18を横付けする。昇降枠11を一番上まで上昇させ、コンテナ9を最高位置にあげる。そしてコンテナ9を後方に約45度傾け、コンテナ9の先端がトラック18の上に来るようにする。
【0029】
次いで、スプロケット20、21を回転させ、チェン22によって移動体15をガイドレール13、14に沿って、ゆっくりとコンテナ9の上方に引き上げる。
【0030】
底板12は移動体15に取付けてあるので、移動体15と一緒に茶葉25を押し上げながら、上方に移動する。押された茶葉25は後面壁31の上を滑って、コンテナ9の上端から押出され、トラック18に投下される。天井蓋16は一端をコンテナ9とヒンジ接続とし、開閉自在としてあって茶葉取出しの時は開く。底板12は12”の位置まで移動し、完全に茶葉25を排出する。この為、ガイドレール13、14の先端はコンテナ9より長く張出してある。
【0031】
トラック18への茶葉25の投入が完了したら、コンテナ9の底まで底板を戻し、コンテナ9を再び直立の位置に戻し、昇降枠11を摘採装置4が茶樹の高さに来るまで下降させ、再び摘採作業を始める。
【0032】
次に、請求項3に示す後面壁を輸送帯で構成したものの実施例を図5、図6によって説明する。27はネット状の輸送帯であって、スプロケット28、29に張設したチェン30の片面に取付けてあり、コンテナ9の後面壁を構成している。輸送帯27の後端は底板12と繋いである。底板支え19は移動体15に固定されている。図1に示すように、コンテナ9を一番上まで持上げてから、支点17を中心として傾けて、スプロケット28、29を廻し、チェン30によって、輸送帯27を上方に動かす。輸送帯27と繋がった底板12、輸送帯27の上の茶葉25も上方に移動する。上端からはみ出した茶葉25はトラック18内に落下する。上端ではコンテナ9内の茶葉を完全に排出するように、底板は12”の位置まで進ませる。このとき移動体15も上端より外に出るので、ガイドレール13、14は上端より長く張出す。
【0033】
茶葉の取出しが終わったら、チェン30を逆転させ、底板を戻し、コンテナ9を直立させ、摘採装置4を茶樹の高さまで降下させて、再び摘採作業を始める。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の走行型茶葉摘採機の側面図。(茶葉搬送用のトラックに積み替える状態を示している。)
【図2】この発明の走行型茶葉摘採機の正面図。
【図3】請求項2の発明のコンテナの縦方向の断面図。
【図4】図3の横断面図。
【図5】請求項3の発明のコンテナの縦方向の断面図。
【図6】図5の横断面図。
【符号の説明】
【0035】
1、2 走行装置
3 門型枠
4 摘採装置
5、6 ファン
7、8 ホース
9、9’ コンテナ
10 搬送ダクト
11、11’ 昇降枠
12、12’、12” 底板
13、14 ガイドレール
15 移動体
16 天井蓋
17 支点
18 トラック
19 底板の支え
20、21 スプロケット
22 チェン
23 前面壁
24、24’ 搬送ダクト接続部
25 茶葉
26 両側面壁
27 輸送帯
28、29 スプロケット
30 チェン
31 後面壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨いで走行する門型の機体に、茶畝上面に臨む摘採装置と、この摘採装置により摘採された茶葉の搬送装置と、摘採された茶葉を収容するコンテナを備えた走行型茶葉摘採機において、
上記コンテナは周囲壁と底板、天井蓋よりなる容器であり、コンテナ上部には搬送装置である搬送ダクトが接続され、底板は周囲壁に対して摺動可能とし、底板を押し上げることによって、コンテナ内に収容した茶葉を排出することを特徴とした走行型茶葉摘採機。
【請求項2】
上記コンテナは茶葉の搬送ダクトが接続する前面壁、その対面になる後面壁、その両側を囲む側面壁と底板、天井蓋で構成される方形の容器であることを特徴とした請求項1記載の走行型茶葉摘採機。
【請求項3】
上記コンテナの後面壁を輸送帯で構成し、底板の上昇に合わせて、輸送帯を動かすことを特徴とした請求項1または2記載の走行型茶葉摘採機。
【請求項4】
摘採した茶葉を収容するときは、コンテナを直立させて搬送ダクトと接続させ、茶葉を排出するときは、コンテナを傾けることを特徴とした請求項1、2または3記載の走行型茶葉摘採機。
【請求項5】
周囲壁に沿ってガイドレールを設け、ガイドレール内を移動する移動体と底板を繋いだことを特徴とした請求項1、2、3または4記載の走行型茶葉摘採機。
【請求項6】
周囲壁に沿ってガイドレールを設け、ガイドレール内を移動する移動体と底板を繋ぐと共に、底板を後面壁の輸送帯と繋いだことを特徴とした請求項3記載の走行型茶葉摘採機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−118796(P2009−118796A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297412(P2007−297412)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【Fターム(参考)】