説明

走行車両型の作物剪定機

【課題】
大豆等の畝に植える作物の剪定を行うにあたって、能率の良い安全な乗用型の作物剪定機を提供する。
【解決手段】
刈刃(10)は左右一対で構成し、剪定作業時には左右の刈刃(10)を同一直線状に配置し、走行車両(T)の左右幅より外側まで延びる構成とし、非作業時にはスライド機構により左右それぞれの刈刃(10)を走行車両(T)の左右幅の範囲までスライドすることを特徴とする請求項1記載の走行車両型の作物剪定機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の草丈の高さを揃える剪定機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大豆の草丈の高さを揃える走行車両型の剪定機について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4340844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の走行車両型の剪定機は刈刃が走行車両の左右幅内のため剪定能率が低かった。本発明は剪定能率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる技術的課題を解決するために次のような技術的手段を講じる。
請求項1記載の発明は、走行車両(T)の前側に横長姿勢の刈刃(10)を設け、刈刃(10)の左右両側は走行車両(T)の左右幅より外側まで延びる構成とした走行車両型の作物剪定機とする。
【0006】
これにより、走行車両幅以上の作物の剪定を一度に行えるため、剪定作業能率が良い。
請求項2記載の発明は、刈刃(10)は左右一対で構成し、剪定作業時には左右の刈刃(10)を同一直線状に配置し、走行車両(T)の左右幅より外側まで延びる構成とし、非作業時にはスライド機構により左右それぞれの刈刃(10)を走行車両(T)の左右幅の範囲までスライドすることを特徴とする請求項1記載の走行車両型の作物剪定機とする。
【0007】
これにより、剪定作業を行うときには刈刃を走行車両の外側まで延ばし、走行するときには刈刃を走行車両の左右幅内にスライドさせることで安全に走行できる。
請求項3記載の発明は、左右一対の刈刃(10)それぞれの外側両端部には内側に向かって送風する送風機(11)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の走行車両型の作物剪定機とする。
【0008】
これにより、剪定された草を集めることができる中できる。また、刈刃に選定された草が絡みつくのを低減できる。
請求項4記載の発明は、左右それぞれの刈刃(10)を走行車両(T)の左右幅の範囲までスライドさせるときに、刈刃(10)が上下方向に重なる姿勢とすべく、一方の刈刃(10a)を横軸心に回動して他方の刈刃(10b)と異なる位相に移動させてからスライドさせることを特徴とする請求項2記載の走行車両型の作物剪定機とする。
【0009】
そのため、刈刃を合理的に走行位置に収納できる。
請求項5は、左右それぞれの刈刃(10)を走行車両(10)の左右幅の範囲までスライドさせたときに、一方の刈刃(10b)を刈取可能姿勢とし、他方の刈刃(10a)を非刈取姿勢とすることを特徴とする請求項2から請求項4いずれか記載の走行車両型の作物剪定機とする。
【0010】
刈刃を走行位置に収納しても、一方の刈刃で剪定作業を可能にすることで、作物の圃場の隣接地に塀等の障害物があったり、人用の通路があった場合に、刈刃が障害物や人に当接することなく剪定作業ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、作物の剪定作業の能率が高く、また、安全な剪定作業や路上走行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】刈刃ユニットを剪定位置にしたことを示す平面図
【図2】刈刃ユニットを収納位置にしたことを示す平面図
【図3】刈刃ユニットを剪定位置にしたことを示す正面図
【図4】刈刃ユニットを収納位置にしたことを示す正面図
【図5】一方の刈刃ユニットを回動した状態を示す正面図
【図6】刈刃ユニットを剪定位置にしたことを示す側面図
【図7】刈刃ユニットを収納位置にしたことを示す側面図
【図8】刈刃の姿勢を変更したことを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の走行車両型の作物剪定機について説明する。
この実施の形態では走行車両Tの進行方向を前後方向と呼び、進行方向と交差する方向を左右方向と呼ぶ。また、走行車両の左右方向を外側・内側と呼ぶ。
【0014】
左右一対の前輪及び後輪からなる走行車輪1を機体フレーム2に支持し、ボンネット3、ステアリングハンドル4、運転座席5、ステップフロア8を備えた乗用型の走行車両Tの前側に左右一対の刈刃ユニットK(K1,K2)を設ける。
【0015】
機体フレーム2の左右両側それぞれの前部に取付けるリンク機構6を設け、リンク機構6の前端には走行車両Tの前側に左右方向に延びる支持アーム7を取付け、刈刃ユニットKは支持アーム7側に支持される構成としている。リンク機構6はシリンダ等(図示せず)で昇降動作可能とし、リンク機構6の昇降動作と共に刈刃ユニットKを昇降動作する。
【0016】
刈刃ユニットKは平面視で左右方向に横長姿勢のバリカン型の刈刃10(10a,10b)と、左右端部に設ける送風機11(11a,11b)と、送風機11の下方に刈刃10を駆動するギア等の駆動機構を収容した駆動機構ボックス12(12a,12b)と、送風機11及び刈刃10を駆動する刈刃エンジン13(13a,13b)を備える。また、刈刃ユニットKは刈刃10の前側かつ上方にあって刈刃と並行した姿勢に設けるガイド体14(14a,14b)を設け、刈刃10の後側には刈刃10で剪定した作物を内側に案内する案内板15(15a,15b)を設けている。案内板15は左右外側から内側に向かって斜め後ろ姿勢に設けている。
【0017】
刈刃ユニットKは左右一対に設け、左右それぞれの刈刃10を同一直線上に略水平姿勢に設け、それぞれの内端を接近して対向し、それぞれの外端を走行車両Tの左右外側まで延びる構成とし、さらに刈刃の左右両外端の外側にそれぞれ刈刃エンジン13、送風機11、駆動機構ボックス12を配置する構成である。送風機11は送風口s(s1,s2)をそれぞれ刈刃10の外端の上方に配置し、かつ内側に向かって送風するよう設けている。
【0018】
刈刃ユニットKはそれぞれ左右方向にスライド可能に構成している。具体的には支持アーム7に固定姿勢で取付けるスライド受けアーム20(20a,20b)と、スライド受けアーム20に対して左右方向にスライドするスライドアーム21(21a,21b)を設け、スライドアーム21側に刈刃10、送風機11、駆動機構ボックス12、刈刃エンジン13、ガイド体14、案内板15を支持し、スライドアーム21のスライド動作に伴い、共に刈刃ユニットKとして一体的にスライドする構成である。
【0019】
スライド受けアーム20には一対の燃料タンク22(22a,22b)を取付けている。
剪定作業について説明する。
【0020】
刈刃10を走行車両Tの外側まで延びる状態とし、走行前に左右それぞれの刈刃エンジン13を始動(本実施の形態では左右それぞれリコイルスタータ式)すると、刈刃10が駆動を開始する。そして、オペレータは、運転座席5に着座し、リンク機構昇降レバー23を操作して刈刃10の切断位置Eを所望の高さ位置に設定して走行車両Tを圃場で走行させる。圃場は畝Uに作物Mを植えており、走行車輪1は畝U間を走行し、走行車輪1の内側の畝Uと外側の畝Uの作物Mにわたって一度に作物の上部M1を切断して草丈を揃える剪定作業を行う。
【0021】
切断された作物Mの上部M1は、送風機11の送風口s1からの送風で内側に向かって吹き飛ばされ、かつ案内板15に案内されて内側に寄せられて圃場に落下する。そのため、剪定され切断された作物の草が刈刃10に絡みつくのを防止している。また、切断された草を集中的に案内できるため、作業後に集めやすくすることができる。
【0022】
次に、路上を走行したり、走行車輪1内の畝だけを剪定作業する場合について説明する。
一方の刈刃ユニットK1を回動軸25によって横軸芯周りに上方に回動させる。
【0023】
すると、刈刃10aが上向きになる(図5参照)。
そして、その状態の姿勢で内側に向かってスライドさせると共に、他方の刈刃ユニットK2をそのままの姿勢で内側に向かってスライドさせる。すると、二つの刈刃ユニット(K1,K2)が上下方向に重なり合い、かつ、いずれの刈刃ユニット(K1,K2)も走行車両の左右幅の範囲内に略入る(図4参照)。
【0024】
そのため、路上等の走行時に刈刃10が走行車両の左右外側に出ないので、人や障害物に当たることを防止し、安全に走行することができる。
刈刃ユニットKをスライドするときにはロックハンドル26(26a,26b)を操作することでロック解除及びロックをでき構成としている。ロックハンドル26は複数個所に適宜設けている。
【0025】
この走行時の姿勢で、刈刃10bを水平姿勢に保っている側(すなわち切断作業姿勢)の刈刃ユニットK2側の刈刃エンジン13を始動し、走行することで走行車輪1の内側の畝Uの作物Mの剪定作業を行うことができる。このとき、刈刃10aを上側に向けた側(すなわち非切断作業姿勢)の刈刃ユニットK1は切断作業姿勢の刈刃ユニットK2の上方に位置する構成とすることで、非切断作業姿勢の刈刃ユニットK1が作物に絡むことを防止することができる。また、圃場の隣接地に塀等の障害物等が存在する場合に、刈刃10を走行車両Tの左右幅の範囲内で剪定作業をすることで、刈刃が人や障害物に当接せず安全な剪定作業を行える。
【0026】
図8は一方の刈刃10の姿勢を内側に向かって後ろ斜め姿勢に変更したことを示している。この刈刃の姿勢を変更するにはボルト27(27a,27b)を緩めると長孔28(28a,28b)に沿って案内板15aと刈刃10aの角度が変更する。そして姿勢を変更したほうの刈刃ユニットK1を少しだけ内側にスライド(矢印)すると、姿勢を変更した側の刈刃10aの内端が他方の刈刃10bの内端の後方に位置することが可能となる。
【0027】
これは、剪定作業時に左右の刈刃10の隙間Bを無くして作業を行いたいと考えている作業者のためである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本実施の形態の作物は主として大豆であるが、圃場の草丈を均一に剪定したい作物ならば適用できる。
【符号の説明】
【0029】
10(10a,10b) 刈刃
11(11a,11b) 送風機
20(20a,20b) スライド受けアーム
21(21a,21b) スライドアーム
T 走行車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両の前側に横長姿勢の刈刃を設け、刈刃の左右両側は走行車両の左右幅より外側まで延びる構成とした走行車両型の作物剪定機。
【請求項2】
刈刃は左右一対で構成し、剪定作業時には左右の刈刃を同一直線状に配置し、走行車両の左右幅より外側まで延びる構成とし、非作業時にはスライド機構により左右それぞれの刈刃を走行車両の左右幅の範囲までスライドすることを特徴とする請求項1記載の走行車両型の作物剪定機。
【請求項3】
左右一対の刈刃それぞれの外側両端部には内側に向かって送風する送風機を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の走行車両型の作物剪定機。
【請求項4】
左右それぞれの刈刃を走行車両の左右幅の範囲までスライドさせるときに、刈刃が上下方向に重なる姿勢とすべく、一方の刈刃を横軸心に回動して他方の刈刃と異なる位相に移動させてからスライドさせることを特徴とする請求項2記載の走行車両型の作物剪定機。
【請求項5】
左右それぞれの刈刃を走行車両の左右幅の範囲までスライドさせたときに、一方の刈刃を刈取可能姿勢とし、他方の刈刃を非刈取姿勢とすることを特徴とする請求項2から請求項4いずれか記載の走行車両型の作物剪定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27332(P2013−27332A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164225(P2011−164225)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】