走行車両
【課題】 従来技術のものでは、前進高速域及び後進高速域でエンジンの変速回転速度を共に高速側へ連動させる構成が複雑で、変速操作精度の正確性を欠く問題があつた。
本発明の課題は、上記従来の問題点を解消し、変速操作連動構成を簡単にして、変速操作精度の向上を図ることにある。
【解決手段】 本発明は、変速ア−ムを一方向に操作することにより、前進高速域から前後進中立域を介して後進高速域まで変速できる前後進変速装置を備え、当接カムにより変速ア−ムに連繋され該変速ア−ムに連動して、カム形状によって前後進中立域から前進高速域及び後進高速域への作動で同じ方向に作動し、別の変速装置を高速側へ操作する連動ア−ムを設けてあることを特徴とする。
本発明の課題は、上記従来の問題点を解消し、変速操作連動構成を簡単にして、変速操作精度の向上を図ることにある。
【解決手段】 本発明は、変速ア−ムを一方向に操作することにより、前進高速域から前後進中立域を介して後進高速域まで変速できる前後進変速装置を備え、当接カムにより変速ア−ムに連繋され該変速ア−ムに連動して、カム形状によって前後進中立域から前進高速域及び後進高速域への作動で同じ方向に作動し、別の変速装置を高速側へ操作する連動ア−ムを設けてあることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機やトラクタ等に利用される走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、アクセルペダルは、アクセル操作回動ア−ムと位置決め軸に設けられたア−ムとが2本の上下操作ロッドにて連繋されてあり、変速レバ−を中立位置から前進最高速位置又は後進最高速位置に向けて操作するほど、ア−ムの回動により上操作ロッド又は下操作ロッドを押してアクセル操作回動ア−ムを一方向又は他方向に回動させて操作ワイヤ−を引っ張ってアクセル操作機構を全開方向に向けて作動させエンジンの回転を上げるようにした技術が存在する。
【特許文献1】特開2003−333907号公報(図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来技術のものでは、前進高速域及び後進高速域でエンジンの変速回転速度を共に高速側へ連動させる構成が複雑で、変速操作精度の正確性を欠く問題があつた。
【0004】
本発明の課題は、上記従来の問題点を解消し、変速操作連動構成を簡単にして、変速操作精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0006】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、変速ア−ムを一方向に操作することにより、前進高速域から前後進中立域を介して後進高速域まで変速できる前後進変速装置を備え、当接カムにより変速ア−ムに連繋され該変速ア−ムに連動して、カム形状によって前後進中立域から前進高速域及び後進高速域への作動で同じ方向に作動し、別の変速装置を高速側へ操作する連動ア−ムを設けてあることを特徴とする。
【0007】
変速ア−ムの一方向への回動操作に伴い、走行速度が前後進中立域から前進高速域まで変速され、変速ア−ムの他方向への回動操作に伴い、前後進中立域から後進高速域まで変速される。
【0008】
変速ア−ムの一方向又は他方向への回動操作で当接カムが連動ア−ムを直接作動して、別の変速装置、例えば、エンジンの変速回転速度を高速側に変速操作する。
【0009】
このように別の変速装置への連動構成が従来のような複雑な構成を要せず、簡単な構成で足り、しかも、その連動構成はカム機構によるため、作動が正確で安定する。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、連動ア−ムを付勢する付勢手段により、変速ア−ムを前後進中立域へ付勢する構成としてあることを特徴とする。
【0011】
連動ア−ムの付勢手段が変速ア−ムの前後進中立保持機構を兼用することになり、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、前進高速域及び後進高速域で別の変速装置を共に高速側へ連動させる構成が簡単であり、しかも、変速操作精度の正確化及び安定化を図ることができる。
【0013】
また、請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、連動ア−ムの付勢手段が変速ア−ムの前後進中立保持機構を兼用できるので、変速ア−ムの付勢手段が不要となり安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0015】
図1及び図2は、走行車両の一例として乗用田植機を示すものであり、車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部には上面に操作パネル4aを有する操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置が設置され、また、車体後方部には昇降可能な苗植付部6が装備されている。操縦装置の後側に運転席9が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジンEが搭載されている。
【0016】
苗植付部6は、車体の後部に昇降リンク機構7を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ8の伸縮作動により昇降する構成としている。昇降リンク機構7には苗植付部6の昇降位置を検出する昇降リンクセンサ14が設けられている。
【0017】
また、この苗植付部6には、左右に往復動する苗載タンク11、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆を有する植付装置12,12…、苗植付面を滑走しながら整地するサイドフロ−ト13S及びセンタフロ−ト13C等を備えている。センタフロ−ト13Cには、該フロ−トの迎い角を検出するフロ−ト迎い角センサが設けられ、該センサからの信号が制御部に入力されるようになっている。
【0018】
エンジンEの回転動力は、エンジン出力軸16からベルト17を介して油圧式無段変速装置(HST)18の入力軸19に伝えられ、HST18の出力軸からミッションケ−ス10のミッション入力軸に伝えられるようになっている。
【0019】
なお、前記苗植付部6への動力伝達は、前記ミッションケ−ス10内のミッション装置から取り出される作業機用取出伝動軸37を介して車体後部に設けた植付クラッチケ−ス38内に伝達され、そこから植付伝動軸39によって苗植付部6へ伝達されるようになっている。
【0020】
ステアリングハンドル5近くには変速レバ−(HSTレバ−)20が配置され、この変速レバ−20の「中立」位置を挟む前後方向の操作でHST18を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。つまり、変速レバ−20の操作位置を変速レバ−センサ(HSTレバ−センサ)21で検出し、それに応じてHSTモ−タ22によりピニオンギヤ23、減速扇形ギヤ24、作動ロッド25を介して変速ア−ム(トラニオンア−ム)26を回動操作し、HST18の斜板角度を変えて速度調節するものであり、変速レバ−20が「中立」位置にある時は速度が零で、変速レバ−を前進操作域に操作すると中立位置からの距離に応じた速度の前進速となり、後進操作域に操作すると中立位置からの距離に応じた速度の後進速となる。なお、前記変速ア−ム(トラニオンア−ム)26部には、該ア−ム位置を検出するポテンションセンサとしてトラニオンア−ムセンサ27を設けている。変速ア−ム位置を直接センサ27で感知することにより中立位置精度の向上を図ることができる。また、HSTモ−タ22をボンネット15内に配置するようにすると、泥や水のかかる恐れがなくなり、品質確保が容易にできる。
【0021】
変速ア−ム26はトラニオン軸26aと共に回動する構成であり、この変速ア−ム26には当接カム28を突設し、該当接カム28によりアクセル用連動ア−ム30を作動させるべく連動構成している。該アクセル用連動ア−ム30は、一端側の支軸Qを支点として揺動作動するよう枢支して設け、連動ア−ムの他端側にはエンジンEのスロットルア−ム32に連繋するアクセルワイヤ33を連動連結している。また、この連動ア−ム30には前記接当カム28の接当する側において中立位置Nを起点として前進カム31Fと後進カム31Rが形成され、そして、その前進側と後進側とではカム形状が異なり、それぞれに対応して適切な連動変速ができるようになっている。また、連動ア−ム30を付勢する手段として、前記スロットルア−ム32にトルクスプリング34を設けることにより、前記変速ア−ム26を前後進中立域へ付勢する構成としている。
【0022】
変速レバ−20を前後進中立域から前進高速位置まで操作すると、HSTモ−タ22により変速ア−ム26が回動し、この変速ア−ム26の回動に伴って前進速度が高速域まで変速される。そして、同時に変速ア−ム26の回動動作に連動して当接カム28がアクセル用連動ア−ム30を押して該連動ア−ムを支軸Q周りに回動作動させ、アクセルワイヤ33を引っ張ってスロットルア−ム32を全開方向に作動させエンジンEの回転を高速側にアップする。
【0023】
また、変速レバ−20を前後進中立域から後進高速位置まで操作すると、HSTモ−タ22の作動で変速ア−ム26を回動させ、この変速ア−ム26の回動に伴い後進速度が高速域まで変速される。これと同時に変速ア−ム26の回動動作に連動して当接カム28がアクセル用連動ア−ム30を押して該連動ア−ムを支軸Q周りに回動作動させ、アクセルワイヤ33を引っ張ってスロットルア−ム32を全開方向に作動させエンジンEの回転を高速側にアップする。
【0024】
図6に示すように、車体カバ−40のステップ部には、HST18の上方に対応する部分を開放して開口部41を設けている。この開口部41はステップ上のシ−ト(マット)42によって覆うようにし、かつ、シ−トの一部をシ−ト開閉部42aによって開閉自在な構成としている。そして、シ−ト開閉部42aをめくり上げると、開放された開口部41を通じて変速ア−ム26やアクセル連動ア−ム30等を運転位置からフット(足)操作できるように構成している。このフット操作を容易にするため、例えば、当接カム28やアクセル連動ア−ム30に対するアクセルワイヤ33の連結ピン43等を上方に高く突出させておけば、これをもってフット操作が容易にでき、電気系統などの故障対応策として便利である。しかも、この開口部からHSTのメンテナンスも容易に行うことができる。
【0025】
また、前記操作ボックス4の下方部位には、有段変速操作される主変速レバ−46があり、機体を路上走行させる「移動」位置、機体走行及び苗植付部共に動力の伝動を断つ「中立}位置、通常植付作業等で機体走行及び苗植付部共に駆動する「植付」位置等を設け、ミッションケ−ス内の主変速部の伝動を切り替えるようになっており、そして、この主変速レバ−にはその操作位置を検出する主変速レバ−センサ47が設けられ、該センサから制御部へ検出信号が入力されるようになっている。
【0026】
更に、車体後部には、走行車体の前後方向での傾斜角を検出するピッチングセンサ48が設けられ、該センサから制御部へ検出信号が入力されるようになっている。
【0027】
次に、図7び図8に示す実施例について説明する。
【0028】
制御部44の入力側には、HSTレバ−(変速レバ−)20の操作位置を検出するHSTレバ−センサ(変速レバ−センサ)21、変速ア−ム(トラニオンア−ム)の位置を検出するトラニオンア−ムセンサ27、センタフロ−ト13Cの迎い角を検出するフロ−ト迎い角センサ45、苗植付部6の昇降位置を検出する昇降リンクセンサ14、主変速レバ−46の操作位置を検出する主変速レバ−センサ47が接続されてあり、これら各種の検出情報に基づいて制御部44の出力側に設けられたHSTモ−タ22が作動制御されるようになっている。
【0029】
フロ−ト迎い角センサ45の検出に基づいて、センタフロ−トが垂れ下がり状態(苗植付部対地浮上状態)のときは、路上走行と判断して、HSTレバ−の急激な操作に関係なくモ−タ22により遅いスピ−ドでトラニオンア−ムを作動させることにより、路上でのレバ−操作時に、急停止、急発進を防止できる。また、昇降リンクセンサ14の検出に基づいて、苗植付部6が高い位置で昇降制御されるときは、耕盤が深い深田であると判断して、上記同様遅いスピ−ドでトラニオンア−ムを作動させることにより、急な増減速を防止して変速時の車輪2,3のスリップ走行を防止する。また、主変速レバ−センサ47の検出に基づいて、主変速レバ−46が高速である路上走行速(移動速)の位置に操作されているときは、上記同様遅いスピ−ドでトラニオンア−ムを作動させることにより、急な増減速を防止してオペレ−タに不快感を与えないようにしている。そして、上述の場合以外、すなわちセンタフロ−トが接地状態で且つ苗植付部6が低い位置で昇降制御され且つ主変速レバ−46が路上走行速以外(植付速)のときは、苗植付等の圃場内での通常状態の走行と判断して、HSTレバ−操作と合せて早くトラニオンア−ムを作動させることによって変速操作に対する変速作動の追従性を高め、植付時における畦際での瞬時の停止、並びに畦への乗り上げを防止できる。
【0030】
更に、図9及び図10に示す実施例について説明すると、制御部44の入力側には、HSTレバ−20の操作位置を検出するHSTレバ−センサ21、走行車体の前後傾斜を検出するピッチングセンサ48が接続されてあり、これら各種の検出情報に基づいて制御部44の出力側に設けられたHSTモ−タ22が作動制御されるようになっている。つまり、HSTレバ−20の操作によってHSTレバ−センサ21が操作位置を検出し、その検出値に応じてHSTモ−タ22が作動して走行速度が変速制御される。そこで、機体の前後方向の前上がり傾斜角が所定値以上に大きく傾斜すると、ピッチングセンサ48による傾斜角検出結果に基づき、HSTモ−タ22が作動し、HSTレバ−センサ値より所定量減速側に対応するトラニオンセンサ値となるように制御される。また、車体の前上がり傾斜が所定角以上に達しない場合には、HSTレバ−センサ値に対応するトラニオンア−ムセンサ値となるようHSTモ−タを制御する。以上のように、湿田等において本機が所定以上の前上がり傾斜状態で走行する場合には、自動的にHSTが減速されるので、エンジンの出力不足を回避することができ、走行性能が安定することになる。尚、圃場の凹凸等で一時的に本機が傾斜することにより減速されて、頻繁に増減速を繰り返すことでオペレ−タに違和感を与えるのを防止するべく、本機の前上がり傾斜状態を所定時間以上継続して検出する場合のみ減速する構成とし、深田や湿田等の走行負荷が大きい場合に適確に減速するようにしてもよい。また、本機の前上がり傾斜状態で変速装置18のみを減速させてエンジンEの回転は減速させない構成とすれば、エンジンの出力不足を円滑に回避することができる。
【0031】
また、上記のようにHSTとアクセルを連動した構成のものにおいて、HSTレバ−の操作位置に対してHSTトラニオンア−ムの開度及びアクセル開度をそれぞれ図11の(a),(b)に示すような関係に設定する。すなわち、レバ−の操作位置と変速比(HSTトラニオンア−ムの開度レバ−の操作位置)との関係を、前記レバ−の操作位置が低速域のときは該レバ−の変化に対して前記変速比の変化が小さくなり、前記レバ−の操作位置が高速域のときは該レバ−の変化に対して前記変速比の変化が大きくなるように、制御部44により図11の(a)のように曲線状に設定する。また、レバ−の操作位置とアクセル開度(スロットルア−ム32の操作位置)との関係を、前記レバ−の操作位置が低速域のときは該レバ−の変化に対して前記アクセル開度の変化が大きくなり、前記レバ−の操作位置が高速域のときは該レバ−の変化に対して前記アクセル開度の変化が小さくなるように、連動ア−ム30のカム形状を適宜設定することによって図11の(b)のように曲線状に設定し、低速域でのエンジンの出力不足を防止している。これにより、エンジンEから変速装置18を介して車輪2,3へ伝動されることから、レバ−の操作位置と本機の車速との関係は、前記(a)+前記(b)により得られる図11の(c)に示すような比例的な関係となり、オペレ−タがレバ−により所望の車速に容易に操作することができ、変速操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】田植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】同上要部の平面図
【図4】HSTの操作連動構成を示す側面図
【図5】同上平面図
【図6】同上要部の斜視図
【図7】制御ブロック図
【図8】フロチャ−ト
【図9】制御ブロック図
【図10】フロ−チャ−ト
【図11】HSTレバ−位置とHSTトラニオンア−ム開度及びアクセル開度 との関係を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 走行車体 18 油圧式無段変速装置(HST)
20 変速レバ− 21 変速レバ−センサ
22 HSTモ−タ 26 変速ア−ム
27 トラニオンア−ムセンサ 28 当接カム
30 アクセル用連動ア−ム 31F 前進カム
31R 後進カム 32 スロットルア−ム
33 アクセルワイヤ 34 付勢手段(トルクスプリング)
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機やトラクタ等に利用される走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、アクセルペダルは、アクセル操作回動ア−ムと位置決め軸に設けられたア−ムとが2本の上下操作ロッドにて連繋されてあり、変速レバ−を中立位置から前進最高速位置又は後進最高速位置に向けて操作するほど、ア−ムの回動により上操作ロッド又は下操作ロッドを押してアクセル操作回動ア−ムを一方向又は他方向に回動させて操作ワイヤ−を引っ張ってアクセル操作機構を全開方向に向けて作動させエンジンの回転を上げるようにした技術が存在する。
【特許文献1】特開2003−333907号公報(図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来技術のものでは、前進高速域及び後進高速域でエンジンの変速回転速度を共に高速側へ連動させる構成が複雑で、変速操作精度の正確性を欠く問題があつた。
【0004】
本発明の課題は、上記従来の問題点を解消し、変速操作連動構成を簡単にして、変速操作精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0006】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、変速ア−ムを一方向に操作することにより、前進高速域から前後進中立域を介して後進高速域まで変速できる前後進変速装置を備え、当接カムにより変速ア−ムに連繋され該変速ア−ムに連動して、カム形状によって前後進中立域から前進高速域及び後進高速域への作動で同じ方向に作動し、別の変速装置を高速側へ操作する連動ア−ムを設けてあることを特徴とする。
【0007】
変速ア−ムの一方向への回動操作に伴い、走行速度が前後進中立域から前進高速域まで変速され、変速ア−ムの他方向への回動操作に伴い、前後進中立域から後進高速域まで変速される。
【0008】
変速ア−ムの一方向又は他方向への回動操作で当接カムが連動ア−ムを直接作動して、別の変速装置、例えば、エンジンの変速回転速度を高速側に変速操作する。
【0009】
このように別の変速装置への連動構成が従来のような複雑な構成を要せず、簡単な構成で足り、しかも、その連動構成はカム機構によるため、作動が正確で安定する。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、連動ア−ムを付勢する付勢手段により、変速ア−ムを前後進中立域へ付勢する構成としてあることを特徴とする。
【0011】
連動ア−ムの付勢手段が変速ア−ムの前後進中立保持機構を兼用することになり、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、前進高速域及び後進高速域で別の変速装置を共に高速側へ連動させる構成が簡単であり、しかも、変速操作精度の正確化及び安定化を図ることができる。
【0013】
また、請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、連動ア−ムの付勢手段が変速ア−ムの前後進中立保持機構を兼用できるので、変速ア−ムの付勢手段が不要となり安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0015】
図1及び図2は、走行車両の一例として乗用田植機を示すものであり、車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部には上面に操作パネル4aを有する操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置が設置され、また、車体後方部には昇降可能な苗植付部6が装備されている。操縦装置の後側に運転席9が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジンEが搭載されている。
【0016】
苗植付部6は、車体の後部に昇降リンク機構7を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ8の伸縮作動により昇降する構成としている。昇降リンク機構7には苗植付部6の昇降位置を検出する昇降リンクセンサ14が設けられている。
【0017】
また、この苗植付部6には、左右に往復動する苗載タンク11、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆を有する植付装置12,12…、苗植付面を滑走しながら整地するサイドフロ−ト13S及びセンタフロ−ト13C等を備えている。センタフロ−ト13Cには、該フロ−トの迎い角を検出するフロ−ト迎い角センサが設けられ、該センサからの信号が制御部に入力されるようになっている。
【0018】
エンジンEの回転動力は、エンジン出力軸16からベルト17を介して油圧式無段変速装置(HST)18の入力軸19に伝えられ、HST18の出力軸からミッションケ−ス10のミッション入力軸に伝えられるようになっている。
【0019】
なお、前記苗植付部6への動力伝達は、前記ミッションケ−ス10内のミッション装置から取り出される作業機用取出伝動軸37を介して車体後部に設けた植付クラッチケ−ス38内に伝達され、そこから植付伝動軸39によって苗植付部6へ伝達されるようになっている。
【0020】
ステアリングハンドル5近くには変速レバ−(HSTレバ−)20が配置され、この変速レバ−20の「中立」位置を挟む前後方向の操作でHST18を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。つまり、変速レバ−20の操作位置を変速レバ−センサ(HSTレバ−センサ)21で検出し、それに応じてHSTモ−タ22によりピニオンギヤ23、減速扇形ギヤ24、作動ロッド25を介して変速ア−ム(トラニオンア−ム)26を回動操作し、HST18の斜板角度を変えて速度調節するものであり、変速レバ−20が「中立」位置にある時は速度が零で、変速レバ−を前進操作域に操作すると中立位置からの距離に応じた速度の前進速となり、後進操作域に操作すると中立位置からの距離に応じた速度の後進速となる。なお、前記変速ア−ム(トラニオンア−ム)26部には、該ア−ム位置を検出するポテンションセンサとしてトラニオンア−ムセンサ27を設けている。変速ア−ム位置を直接センサ27で感知することにより中立位置精度の向上を図ることができる。また、HSTモ−タ22をボンネット15内に配置するようにすると、泥や水のかかる恐れがなくなり、品質確保が容易にできる。
【0021】
変速ア−ム26はトラニオン軸26aと共に回動する構成であり、この変速ア−ム26には当接カム28を突設し、該当接カム28によりアクセル用連動ア−ム30を作動させるべく連動構成している。該アクセル用連動ア−ム30は、一端側の支軸Qを支点として揺動作動するよう枢支して設け、連動ア−ムの他端側にはエンジンEのスロットルア−ム32に連繋するアクセルワイヤ33を連動連結している。また、この連動ア−ム30には前記接当カム28の接当する側において中立位置Nを起点として前進カム31Fと後進カム31Rが形成され、そして、その前進側と後進側とではカム形状が異なり、それぞれに対応して適切な連動変速ができるようになっている。また、連動ア−ム30を付勢する手段として、前記スロットルア−ム32にトルクスプリング34を設けることにより、前記変速ア−ム26を前後進中立域へ付勢する構成としている。
【0022】
変速レバ−20を前後進中立域から前進高速位置まで操作すると、HSTモ−タ22により変速ア−ム26が回動し、この変速ア−ム26の回動に伴って前進速度が高速域まで変速される。そして、同時に変速ア−ム26の回動動作に連動して当接カム28がアクセル用連動ア−ム30を押して該連動ア−ムを支軸Q周りに回動作動させ、アクセルワイヤ33を引っ張ってスロットルア−ム32を全開方向に作動させエンジンEの回転を高速側にアップする。
【0023】
また、変速レバ−20を前後進中立域から後進高速位置まで操作すると、HSTモ−タ22の作動で変速ア−ム26を回動させ、この変速ア−ム26の回動に伴い後進速度が高速域まで変速される。これと同時に変速ア−ム26の回動動作に連動して当接カム28がアクセル用連動ア−ム30を押して該連動ア−ムを支軸Q周りに回動作動させ、アクセルワイヤ33を引っ張ってスロットルア−ム32を全開方向に作動させエンジンEの回転を高速側にアップする。
【0024】
図6に示すように、車体カバ−40のステップ部には、HST18の上方に対応する部分を開放して開口部41を設けている。この開口部41はステップ上のシ−ト(マット)42によって覆うようにし、かつ、シ−トの一部をシ−ト開閉部42aによって開閉自在な構成としている。そして、シ−ト開閉部42aをめくり上げると、開放された開口部41を通じて変速ア−ム26やアクセル連動ア−ム30等を運転位置からフット(足)操作できるように構成している。このフット操作を容易にするため、例えば、当接カム28やアクセル連動ア−ム30に対するアクセルワイヤ33の連結ピン43等を上方に高く突出させておけば、これをもってフット操作が容易にでき、電気系統などの故障対応策として便利である。しかも、この開口部からHSTのメンテナンスも容易に行うことができる。
【0025】
また、前記操作ボックス4の下方部位には、有段変速操作される主変速レバ−46があり、機体を路上走行させる「移動」位置、機体走行及び苗植付部共に動力の伝動を断つ「中立}位置、通常植付作業等で機体走行及び苗植付部共に駆動する「植付」位置等を設け、ミッションケ−ス内の主変速部の伝動を切り替えるようになっており、そして、この主変速レバ−にはその操作位置を検出する主変速レバ−センサ47が設けられ、該センサから制御部へ検出信号が入力されるようになっている。
【0026】
更に、車体後部には、走行車体の前後方向での傾斜角を検出するピッチングセンサ48が設けられ、該センサから制御部へ検出信号が入力されるようになっている。
【0027】
次に、図7び図8に示す実施例について説明する。
【0028】
制御部44の入力側には、HSTレバ−(変速レバ−)20の操作位置を検出するHSTレバ−センサ(変速レバ−センサ)21、変速ア−ム(トラニオンア−ム)の位置を検出するトラニオンア−ムセンサ27、センタフロ−ト13Cの迎い角を検出するフロ−ト迎い角センサ45、苗植付部6の昇降位置を検出する昇降リンクセンサ14、主変速レバ−46の操作位置を検出する主変速レバ−センサ47が接続されてあり、これら各種の検出情報に基づいて制御部44の出力側に設けられたHSTモ−タ22が作動制御されるようになっている。
【0029】
フロ−ト迎い角センサ45の検出に基づいて、センタフロ−トが垂れ下がり状態(苗植付部対地浮上状態)のときは、路上走行と判断して、HSTレバ−の急激な操作に関係なくモ−タ22により遅いスピ−ドでトラニオンア−ムを作動させることにより、路上でのレバ−操作時に、急停止、急発進を防止できる。また、昇降リンクセンサ14の検出に基づいて、苗植付部6が高い位置で昇降制御されるときは、耕盤が深い深田であると判断して、上記同様遅いスピ−ドでトラニオンア−ムを作動させることにより、急な増減速を防止して変速時の車輪2,3のスリップ走行を防止する。また、主変速レバ−センサ47の検出に基づいて、主変速レバ−46が高速である路上走行速(移動速)の位置に操作されているときは、上記同様遅いスピ−ドでトラニオンア−ムを作動させることにより、急な増減速を防止してオペレ−タに不快感を与えないようにしている。そして、上述の場合以外、すなわちセンタフロ−トが接地状態で且つ苗植付部6が低い位置で昇降制御され且つ主変速レバ−46が路上走行速以外(植付速)のときは、苗植付等の圃場内での通常状態の走行と判断して、HSTレバ−操作と合せて早くトラニオンア−ムを作動させることによって変速操作に対する変速作動の追従性を高め、植付時における畦際での瞬時の停止、並びに畦への乗り上げを防止できる。
【0030】
更に、図9及び図10に示す実施例について説明すると、制御部44の入力側には、HSTレバ−20の操作位置を検出するHSTレバ−センサ21、走行車体の前後傾斜を検出するピッチングセンサ48が接続されてあり、これら各種の検出情報に基づいて制御部44の出力側に設けられたHSTモ−タ22が作動制御されるようになっている。つまり、HSTレバ−20の操作によってHSTレバ−センサ21が操作位置を検出し、その検出値に応じてHSTモ−タ22が作動して走行速度が変速制御される。そこで、機体の前後方向の前上がり傾斜角が所定値以上に大きく傾斜すると、ピッチングセンサ48による傾斜角検出結果に基づき、HSTモ−タ22が作動し、HSTレバ−センサ値より所定量減速側に対応するトラニオンセンサ値となるように制御される。また、車体の前上がり傾斜が所定角以上に達しない場合には、HSTレバ−センサ値に対応するトラニオンア−ムセンサ値となるようHSTモ−タを制御する。以上のように、湿田等において本機が所定以上の前上がり傾斜状態で走行する場合には、自動的にHSTが減速されるので、エンジンの出力不足を回避することができ、走行性能が安定することになる。尚、圃場の凹凸等で一時的に本機が傾斜することにより減速されて、頻繁に増減速を繰り返すことでオペレ−タに違和感を与えるのを防止するべく、本機の前上がり傾斜状態を所定時間以上継続して検出する場合のみ減速する構成とし、深田や湿田等の走行負荷が大きい場合に適確に減速するようにしてもよい。また、本機の前上がり傾斜状態で変速装置18のみを減速させてエンジンEの回転は減速させない構成とすれば、エンジンの出力不足を円滑に回避することができる。
【0031】
また、上記のようにHSTとアクセルを連動した構成のものにおいて、HSTレバ−の操作位置に対してHSTトラニオンア−ムの開度及びアクセル開度をそれぞれ図11の(a),(b)に示すような関係に設定する。すなわち、レバ−の操作位置と変速比(HSTトラニオンア−ムの開度レバ−の操作位置)との関係を、前記レバ−の操作位置が低速域のときは該レバ−の変化に対して前記変速比の変化が小さくなり、前記レバ−の操作位置が高速域のときは該レバ−の変化に対して前記変速比の変化が大きくなるように、制御部44により図11の(a)のように曲線状に設定する。また、レバ−の操作位置とアクセル開度(スロットルア−ム32の操作位置)との関係を、前記レバ−の操作位置が低速域のときは該レバ−の変化に対して前記アクセル開度の変化が大きくなり、前記レバ−の操作位置が高速域のときは該レバ−の変化に対して前記アクセル開度の変化が小さくなるように、連動ア−ム30のカム形状を適宜設定することによって図11の(b)のように曲線状に設定し、低速域でのエンジンの出力不足を防止している。これにより、エンジンEから変速装置18を介して車輪2,3へ伝動されることから、レバ−の操作位置と本機の車速との関係は、前記(a)+前記(b)により得られる図11の(c)に示すような比例的な関係となり、オペレ−タがレバ−により所望の車速に容易に操作することができ、変速操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】田植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】同上要部の平面図
【図4】HSTの操作連動構成を示す側面図
【図5】同上平面図
【図6】同上要部の斜視図
【図7】制御ブロック図
【図8】フロチャ−ト
【図9】制御ブロック図
【図10】フロ−チャ−ト
【図11】HSTレバ−位置とHSTトラニオンア−ム開度及びアクセル開度 との関係を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 走行車体 18 油圧式無段変速装置(HST)
20 変速レバ− 21 変速レバ−センサ
22 HSTモ−タ 26 変速ア−ム
27 トラニオンア−ムセンサ 28 当接カム
30 アクセル用連動ア−ム 31F 前進カム
31R 後進カム 32 スロットルア−ム
33 アクセルワイヤ 34 付勢手段(トルクスプリング)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速ア−ムを一方向に操作することにより、前進高速域から前後進中立域を介して後進高速域まで変速できる前後進変速装置を備え、当接カムにより変速ア−ムに連繋され該変速ア−ムに連動して、カム形状によって前後進中立域から前進高速域及び後進高速域への作動で同じ方向に作動し、別の変速装置を高速側へ操作する連動ア−ムを設けてあることを特徴とする走行車両。
【請求項2】
連動ア−ムを付勢する付勢手段により、変速ア−ムを前後進中立域へ付勢する構成としてあることを特徴とする請求項1記載の走行車両。
【請求項1】
変速ア−ムを一方向に操作することにより、前進高速域から前後進中立域を介して後進高速域まで変速できる前後進変速装置を備え、当接カムにより変速ア−ムに連繋され該変速ア−ムに連動して、カム形状によって前後進中立域から前進高速域及び後進高速域への作動で同じ方向に作動し、別の変速装置を高速側へ操作する連動ア−ムを設けてあることを特徴とする走行車両。
【請求項2】
連動ア−ムを付勢する付勢手段により、変速ア−ムを前後進中立域へ付勢する構成としてあることを特徴とする請求項1記載の走行車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−9829(P2006−9829A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183904(P2004−183904)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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