説明

超微細気泡水

【課題】長時間に亘ってナノバブルを保持できしかも生物に対する活性効果などに優れた超微細気泡水(ナノバブル水)を提供することを目的とする。
【解決手段】浄化水に1種または2種以上のイオン化ミネラルを含有したイオン化ミネラル液を0.1〜0.3重量%添加するとともにこの浄化水に直径が50μm以下の微細気泡を発生させ、さらに25KHz〜30KHzの超音波を照射して微細気泡に物理的刺激を与えて調製する。この超微細気泡水によれば、溶存酸素量が増加してナノバブルを浄化水中に長期間保持できるだけでなく電気伝導率も向上するので生物に対する活性効果などに優れ、食品分野だけでなく化粧品分野をはじめ広いの用途に供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超微細気泡水に関するものであり、一層詳細には、ナノレベルの気泡を長時間に亘って保持できる超微細気泡水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
常圧下において水中で発生した50μm以下の微細気泡はマイクロバブルと言われている。
このマイクロバブルは、通常の気泡が浮力によって浮上したのち破裂、消滅するのとは異なって時間が経過するにしたがい縮小して消滅しやがては水に完全に溶解する性質があることから、例えば、養殖業等における魚介類の酸素欠乏などを改善する手段として使用されている。
【0003】
一般に、水は表面張力が高いため、通常のバブリング操作では直径100μm以下の気泡を生成することはできないが、水と空気の気液2相を流体力学的にせん断したり、特殊な方法で混合操作することにより直径が50μm以下のマイクロバブルを生成させることができる。
具体的には、円筒型の容器に圧入した気液混合水を高速回転させて遠心分離させる方式(特許文献1)、あるいは、渦巻きポンプを用いて気液を混合させたのち、この気液混合体を筒体に送り、筒体中に設けた螺旋羽根の高速回転で撹拌混合するとともに筒体内壁に設けた突起によりさらに気泡を分断して微細化するようにした泡風呂用などを主目的とした方式(特許文献2)などが採用されている。
【0004】
一方、マイクロバブルよりもさらに直径が小さい1μm以下の超微細気泡はナノバブルと呼ばれている。
このナノバブルは、生物に対する活性化や殺菌などの面においてマイクロバブルよりも遥かに優れた効果を得られることから食品業界などで注目を集めているが、ナノバブルは、通常、マイクロバブルが自然消滅する際もしくは圧壊時などにおいて発生するものであり、しかも表面張力の作用により自己加圧されているので発生後急速に溶解して長時間に亘っては存在しない。
【0005】
なお、界面活性剤や有機物を利用して直径が1μm程度もしくはそれ以下で安定して存在できるナノバブルも確認されてはいるが、これは界面活性剤や有機物の強い殻に包まれたバブルであるため周囲の水とは隔絶された存在となっており、また界面活性物質や有機物など溶質の量が増えると溶存酸素量が減少することになるので生物に対する活性効果や殺菌効果などの機能を期待することができなかった。
【0006】
【特許文献1】 特開2002−143885号公報
【0007】
【特許文献2】 特開2005−245817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような事情から、例えば、放電装置などを使用してマイクロバブルに物理的刺激を与えることによりナノバブルを発生させるなどの試みがなされてはいるが、得られるナノバブルは瞬間的なものに過ぎず、実用・商業レベルには至っていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、この発明では、長時間に亘ってナノバブルを保持できしかも生物に対する活性効果などの機能に優れた超微細気泡水(ナノバブル水)を提供することを目的とする。
【0010】
この目的を達成するため、本発明では、水道水などの上水から不純物などを除去した浄化水に1種または2種以上のイオン化ミネラルを含有したイオン化ミネラル液を0.1〜0.3重量%添加するとともにこの浄化水に直径が50μm以下の微細気泡を発生させ、さらにこの微細気泡に25KHz〜30KHzの超音波を照射して微細気泡に物理的刺激を与えることにより超微細気泡水(ナノバブル水)を調製することを特徴とするものである。
【0011】
この場合、浄化水に添加するイオン化ミネラル液としては、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠混合液とし、この混合液を30〜40℃に保温して所定の麹菌を加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月熟成させて抽出した醗酵熟成液を使用するのが好適である。
【0012】
また、浄化水に微細気泡を発生させる際、エレクトロンを供給すればさらに好適である。
【0013】
なお、このようにして得られた超微細気泡水に塩を1.0重量%、または塩と糖分を夫々1.0重量%添加することにより蘇生処理水として調製すれば、得られた蘇生処理水は生物の細胞水と略同等な成分仕様となるので、例えば、食品の品質向上に特に便宜であり、さらにこの蘇生処理水の水温を4℃〜15℃に保持した状態で使用すればさらに好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る超微細気泡水によれば;
(1)溶質量が増えるにも拘らず微細気泡水(マイクロバブル水)に比べてその溶存酸素量を50%〜150%程度増加させることができるので、生物に対する活性作用や殺菌等の機能・効果を飛躍的に向上させることができる。
(2)イオン化ミネラル液を添加した浄化水に発生させた微細気泡は物理的刺激でナノレベルの気泡となり、このナノバブルはミネラルの作用によって浄化水中への自然溶解が阻止され安定的に水溶液中に浮遊するので長期間の保存が可能となるだけでなく、ラジカルな酸素も含まないので食品分野に加えて化粧品分野など新たな用途に使用することができる。
(3)超微細気泡水に1.0重量%の塩または夫々1.0重量%の塩と糖分を添加した蘇生処理水は生物の細胞水と略同等な成分仕様となるので生物の活性化作用を向上させることができる。
(4)水温を4℃〜15℃に保持した蘇生処理水は細胞への浸透力が増すので活性効果を迅速に得ることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る超微細気泡水の最良な実施の形態を例示して以下詳細に説明する。
【0016】
図1において、参照符号10は本発明に係る超微細気泡水を製造する装置を示し、この超微細気泡水製造装置10は、直径が50μm以下の微細気泡(マイクロバブル)を発生させる微細気泡発生装置12を備えており、該微細気泡発生機構12は取水管14および送水管16を介して容器18に接続されている。
この場合、微細気泡発生装置12としては、例えば、円筒型の容器に空気を混合した水を導入したのちこれを高速回転して遠心分離する型式の装置、あるいは、渦巻きポンプの回動により生成した気液混合体を筒体中の螺旋羽根の高速回転でさらに撹拌混合するととも気泡を筒体内壁の突起でさらに分断して微細化する型式の装置など公知の装置を適宜選択して使用することができる。
【0017】
一方、容器18内には水道水などの上水をろ過したのちさらに逆浸透(RO)膜で処理した所定量の浄化水20が貯留されており、貯留された浄化水20は取水管14を介して微細気泡発生装置12に取り込まれ、図示しない気泡発生機構によって気体(空気)が注入混合されて送水管16を介して容器18に環流される。そしてこの循環により容器18内の浄化水は微細気泡(マイクロバブル)が存在するマイクロバブル浄化水となる。
また、容器18の底部には、マイクロバブル浄化水に物理的刺激を与えるための超音波発生装置22が配設されており、内側壁下部にはマイクロバブル浄化水にエレクトロン(−e)を供給するためのエレクトロン供給装置24が配設されている。
【0018】
このように構成される超微細気泡水製造装置10を使用して、本発明に係る超微細気泡水を調製するに際しては、容器18内に貯留した浄化水20に1種または2種以上のイオン化ミネラルを含有したイオン化ミネラル液26を0.1〜0.3重量%添加するとともに微細気泡発生装置12を駆動して浄化水20に微細気泡(マイクロバブル)を発生させ、さらに超音波発生装置22を駆動して25KHz〜30KHzの超音波を照射してマイクロバブル浄化水中の微細気泡に物理的刺激を与えればよい。なお、微細気泡発生装置12を駆動すると浄化水20は微細気泡により白濁様を呈し(図1a)、超音波発生装置22を駆動するとこの微細気泡が急速に縮小していき底のほうから次第に透明化していく(図1b)。
また、超音波の照射に同期してエレクトロン供給装置24を使用してマイクロバブル浄化水にエレクトロン(−e)を供給するのが好ましい。
【0019】
なお、浄化水に添加するイオン化ミネラル液26としては、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠混合液とし、この混合液を30〜40℃に保温して所定の麹菌を加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月熟成させることにより原料に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛などのミネラル成分を抽出した醗酵熟成液を使用する。
この場合、イオン化ミネラル液の添加量が0.1重量%未満であるとマイクロバブルをナノバブル化が充分おこなえず、また添加量が0・3重量%を超過すると費用対効果の点で問題が生じることになる。
【0020】
また、マイクロバブル浄化水は、取水管14および送水管16を介して容器18と微細気泡発生装置12を循環させるので、マイクロバブルに物理的刺激を与える超音波は連続的に照射するのを原則とするが、間歇的に照射してもよいことは言うまでもない。
なお、超音波の波長が25KHz以下であるとマイクロバブルへの物理的刺激が弱くて溶存酸素の増加量が僅かとなり、また30KHz以上で物理的刺激をしても溶存酸素の増加はほとんどない。
【0021】
このように超音波の照射によって物理的刺激を与えられたマイクロバブル浄化水中の微細気泡(マイクロバブル)は急速に縮小してナノバブル化する。
この時、微細気泡周囲に存在しているイオン化ミネラル(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛などのミネラル成分)はこれらの微細気泡の縮小が急激に生じるため気泡の縮小に伴って急速に濃縮され、気泡周囲に極めて強い高電場を形成することになる。
この高電場の存在のもとで気液界面に存在する水素イオンや水酸化物イオンは気泡周囲に存在する、例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛など反対符号の電荷を持つプラスイオンと結合して気泡周囲に無機質(ミネラル)の殻を形成する。
そしてこの無機質(ミネラル)の殻は気泡(内の気体)の水中への自然溶解を阻止することになり、したがって物理的刺激によって生成したナノレベルの気泡(超微細気泡)は溶解することなく長時間にわたり安定的に浄化水中に浮遊することになるのである。
【0022】
なお、ナノバブルは1μm以下の極めて微小な気泡であるため、水中では浮力をほとんど受けることがなく、通常の気泡のように浮上して水表面で破裂することもほとんどない。
【0023】
このようにして得られた本発明に係る超微細気泡水は、ナノバブルを内部に加圧した状態で維持できるので長期間にわたり保存が可能となり、また、濃縮された表面電荷により極めて強い電場が形成されるのでナノバブル内部や周囲の水溶液に強力な影響を与える力を持ち、生理的な活性効果や殺菌効果、化学的な反応性等が飛躍的に向上して、食品の活性だけでなく化粧品、エステ、美容室、理容室など広範な分野への応用が可能となるものである。
【0024】
実験例
図1に示されている容器18に浄化水を10Lを入れ、微細気泡発生装置10を駆動して微細気泡水(マイクロバブル水=対照水A)を得た。
次に、イオン化ミネラル液10ccを添加した浄化水10Lを別の容器18に入れ、微細気泡発生装置12を駆動して微細気泡を発生させながら超音波(28KHz、600W)を10分照射するとともにエレクトロン(−e)を供給して本発明に係る超微細気泡水Bを得た。
また、イオン化ミネラル液を10cc、自然天日塩100g、砂糖100gを添加した浄化水10Lをさらに別の容器18に入れ、微細気泡発生装置12を駆動して微細気泡を発生させながら超音波(28KHz、600W)を10分照射するとともにエレクトロン(−e)を供給して本発明に係る蘇生処理水Cを得た。
さらに、前記と同様の手順で調製した蘇生処理水Cに所定量の氷塊を投入してその水温を10℃に保持した低温蘇生処理水Dを得た。
【0025】
そしてこのようにして得られた対照水A、超微細気泡水B、蘇生処理水C、低温蘇生処理水Dの溶存酸素率(図2参照)および対照水A、超微細気泡水B、蘇生処理水Cの導電率を夫々計測した(図3参照)。
【0026】
この計測結果によると、超微細気泡水B、蘇生処理水C、低温蘇生処理水Dの溶存酸素率は、対照水Aの溶存酸素率に比べると時間が経過しても高い数値を保持しており、対照水Aの溶存酸素率をおおよそ100(図2点線)とした場合、50%〜最大で150%程度増加している。
これは、超音波の照射による物理的刺激によってマイクロバブルがナノレベルの気泡となり、しかもこの気泡はその周囲に濃縮され高電場を形成するミネラルの作用によって水中への自然溶解が阻止され安定的にかつ長期間に亘って存在すること示しており、ミネラルとエレクトロンの供給によりラジカルな酸素も含まない気泡水となっているからである。
そしてこの事実は、本発明に係る超微細気泡水B、蘇生処理水C、低温蘇生処理水Dは長期間の保存が可能で生物に対する活性作用や殺菌作用が飛躍的に向上することを示し、食品分野だけでなく化粧品分野など新たな用途に使用可能となるものである。
【0027】
また、超微細気泡水Bおよび蘇生処理水Cの導電率は、対照水Aにおける導電率の100倍以上の値を示している。これはイオン溶解(電解質)に加えて振動(物理的刺激)をかけたのでイオン単体のブラウン運動が飛躍的に上昇したからであり、これによって、物資に対するアタックが早くなるので食品などの蘇生を短時間で達成することができるものである。
【0028】
なお、前述の実施の形態においては、浄化水に発生させる微細気泡自体の内容についてはとくに言及せず大気を前提として説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、例えば、殺菌効果のあるオゾンをバブリングしたのち超音波を照射して超微細気泡水とすれば、空気中では散逸しやすいオゾンを常温、常圧下で含みしかも保存性にも優れたナノバルブオゾン水を簡単に調製することができ、このように超微細気泡にする気体を適宜選択することにより新たな用途開発を行うことが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る超微細気泡水を製造する際に好適に使用される超微細気泡水製造装置を示す模式図であって、aは超音波発生装置のOFF状態を示し、bは超音波発生装置のON状態の説明図である。
【図2】本発明に係る超微細気泡水B、蘇生処理水C、低温蘇生処理水Dと対照水(マイクロバブル水)Aの溶存酸素率を示す特性曲線図である。
【図3】本発明に係る超微細気泡水B、蘇生処理水Cと対照水(マイクロバブル水)Aの導電率を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
【0030】
10・・超微細気泡(ナノバブル)水製造装置、
12・・微細気泡(マイクロバブル)発生装置、
14・・取水管、
16・・送水管、
18・・容器、
20・・浄化水、
22・・超音波発生装置
24・・エレクトロン供給装置、
26・・イオン化ミネラル液、
A・・対照水(マイクロバブル水)、
B・・超微細気泡水(ナノバブル水)、
C・・蘇生処理水、
D・・低温蘇生処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化水に1種または2種以上のイオン化ミネラルを含有したイオン化ミネラル液を0.1〜0.3重量%添加するとともにこの浄化水に直径が50μm以下の微細気泡を発生させ、さらに25KHz〜30KHzの超音波を照射して微細気泡に物理的刺激を与えて調製することを特徴とする超微細気泡水。
【請求項2】
浄化水に添加するイオン化ミネラル液は、澱粉及び/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠混合液とし、この混合液を30〜40℃に保温して所定の麹菌を加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月熟成させて抽出した醗酵熟成液である請求項1に記載の超微細気泡水。
【請求項3】
浄化水に微細気泡を発生させる際、エレクトロンを供給してなる請求項1又は2に記載の超微細気泡水。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の超微細気泡水に塩を1.0重量%、または塩と糖分を夫々1.0重量%添加して調製することからなる蘇生処理水。
【請求項5】
水温を4℃〜15℃に保持してなる請求項4に記載の蘇生処理水。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−226386(P2009−226386A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107271(P2008−107271)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(591135200)
【出願人】(501110134)株式会社関門海 (14)
【出願人】(502218455)
【Fターム(参考)】