説明

超音波実装ツール及び電子部品の実装装置

【課題】ホーンが軸方向に伸縮する横振動だけでなく、上下方向に撓むたわみ振動が生じないようにした超音波実装ツールを提供することにある。
【解決手段】断面形状が四角形状のホーン22と、ホーンの軸方向の一端に接続されホーンを軸方向に超音波振動させる振動子23と、ホーンの外面の4つの面のうちの1つの面の振動が最大となる部分に突設された半導体チップを保持するツール部24と、ホーンの外面の1つの面と対向する面の振動が最大となる部分に設けられホーンがツール部の質量によって軸方向と異なる方向に超音波振動するのを阻止するバランス部材27具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板に半導体チップなどの電子部品を超音波振動によって実装する超音波実装ツール及び電子部品の実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電子部品であるバンプ付きの半導体チップを被実装部材としてのポリイミド製のテープ状部材などの基板に実装する場合、この半導体チップに押圧荷重と超音波振動を与えて上記基板に実装する方法が知られている。つまり、半導体チップを基板の被接合面に所定の圧力で加圧しながら超音波振動を与え、基板に形成されたリードと半導体チップのバンプとの接触部分を接合させるというものである。
【0003】
このような実装は超音波実装ツールを用いて行われる。超音波実装ツールは断面形状が四角形状をなしたホーンを有する。このホーンの長手方向の一端には振動子が接続固定されている。この振動子には超音波発振器が接続される。この超音波発振器は上記振動子にたとえば40kHzの高周波電圧を印加する。それによって、振動子が駆動されて超音波振動するから、その振動波によって上記ホーンも超音波振動する。つまり、ホーンは長手方向である、横方向に超音波振動する。
【0004】
上記ホーンの軸方向の中途部の振動が最大となる部分の下面には上記半導体チップを吸着保持するツール部が突出形成されている。このツール部の下端面である、吸着面には複数の吸引孔が開口形成されていて、この吸引孔に生じる吸引力によって上記半導体チップが上記吸着面に吸着保持される。
【0005】
上記ツール部に半導体チップが吸着保持されたならば、上記超音波実装ツールを下降させて半導体チップを基板に所定の圧力で押圧し、それと同時に超音波実装ツールを軸方向に超音波振動させることで、上記半導体チップを上記基板に実装するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4288363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ホーンには上述したように下面に上記ツール部が設けられている。ホーンの下面にツール部を設けると、そのツール部によって上記ホーンの軸線を中心とする下側部分と上側部分との質量のバランスが損なわれることになる。
【0008】
そのため、上記ホーンを上記振動子によって超音波振動させると、上記ホーンの下側部分と上側部分との質量のアンバランスによって上記ホーンは軸方向に伸縮する超音波振動(横振動)だけでなく、軸方向と交差する上下方向にも超音波振動することになる。つまり、ホーンは軸方向に伸縮するだけでなく、上下方向に撓みながら超音波振動する。
【0009】
そのため、上記ツール部に保持された半導体チップを基板に対して均一に押圧できなくなるため、実装不良を招くということがあったり、半導体チップの厚さが薄い場合には欠けや割れが発生する虞がある。
【0010】
さらに、ホーンが撓みながら振動することで、ホーンの円滑な伸縮方向への超音波振動が妨げられる。そのため、ホーンに加わる負荷が大幅に増大するため、上記ホーンの発振効率が大きく低下するということがある。
【0011】
この発明は、振動子によってホーンを超音波振動させたときに、このホーンが撓み方向に超音波振動せずに、伸縮振動である、軸方向にだけ超音波振動させることができるようにした超音波ツール及びこの超音波ツールを用いた電子部品の実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、電子部品を被実装部材に押圧荷重と超音波振動によって実装するための超音波実装ツールであって、
断面形状が四角形のホーンと、
このホーンの軸方向の一端に接続され上記ホーンを上記軸方向に超音波振動させる振動子と、
上記ホーンの外面の4つの面のうちの1つの面の振動が最大となる部分に設けられた上記電子部品を保持するツール部と、
上記ホーンの外面の上記1つの面と対向する面の振動が最大となる部分に設けられ上記ホーンが上記ツール部の質量によって上記軸方向と異なる方向に超音波振動するのを阻止するバランス部材と
を具備したことを特徴とする超音波実装ツールにある。
【0013】
上記ホーンには軸方向の中途部と両端部との3箇所に振動が最大となる部分を有し、
上記ツール部は上記1つの面の軸方向の中途部の振動が最大となる部分に設けられ、上記バランス部材は上記ツール部の軸方向の両端部の振動が最大となる2つの部分に均等な質量に分割されて設けられることが好ましい。
【0014】
上記ホーンには軸方向の一端部と他端部との2箇所に振動が最大となる部分を有し、
上記ツール部は上記1つの面の軸方向の一端部の振動が最大となる部分に設けられ、上記バランス部材は上記ツール部の軸方向の一端部の上記1つの面と対向する面に設けられることが好ましい。
【0015】
上記バランス部材は、上記ツール部と同じ質量であることが好ましい。
【0016】
上記バランス部材の質量は、上記ツール部の質量に、このツール部が上記電子部品を被実装部材に押圧するときの荷重に対応する質量を加えた質量であることが好ましい。
【0017】
上記ツール部は板状のベースに一体的に形成されていて、上記ベースは上記ホーンの外面の上記1つの面に着脱可能にねじ止め固定されることが好ましい。
【0018】
この発明は、電子部品を被実装部材に押圧荷重と超音波振動によって実装するための電子部品の実装装置であって、
上下方向と水平方向のうちの少なくとも上下方向に駆動される可動部と、
上面に上記被実装部材が載置されるステージと、
上記可動部に取り付けられ上記電子部品を保持してこの電子部品に超音波振動を付与し、その超音波振動と上記可動部の下降による押圧力とで上記電子部品を上記ステージ上の上記被実装部材に実装する超音波実装ツールを具備し、
上記超音波実装ツールは請求項1に記載された構成であることを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ホーンの外面のツール部が設けられた1つの面と対向する面の振動が最大となる部分に、上記ホーンが上記ツール部の質量によって上記軸方向と異なる方向に超音波振動するのを阻止するバランス部材を設けるようにした。
【0020】
そのため、上記振動子によって上記ホーンを超音波振動させたとき、このホーンは軸方向に伸縮しながら振動し、上記軸方向と交差する撓み方向に振動するということがなくなるから、被実装部材に対する電子部品の実装を確実に、しかもホーンの発振効率を低下させることなく行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施の形態の実装装置の概略的構成を示す側面図。
【図2】図1の実装装置の正面図。
【図3】超音波実装ツールのホーンのツール部とバランス部材が取り付けられた部分を拡大して示す図。
【図4】超音波実装ツールのホーンの断面図。
【図5】この発明の第2の実施の形態を示す超音波実装ツールの正面図。
【図6】この発明の第3の実施の形態を示す超音波実装ツールの正面図。
【図7】この発明の第4の実施の形態を示す超音波実装ツールのホーンの断面図。
【図8】この発明の第5の実施の形態を示す超音波実装ツールのホーンの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図4はこの発明の第1の実施の形態を示す。図1は後述する構成の超音波実装ツール21が用いられた実装装置の側面図で、図2は正面図である。図1に示すように、この実装装置は装置本体1を備えている。この装置本体1にはYガイド体2がY方向に沿って設けられ、このYガイド体2にはY可動体3が矢印で示すY方向に駆動可能に設けられている。
【0023】
上記Y可動体3の前端面には上下方向に所定間隔で離間した一対のXガイド体4がX方向に沿って設けられている。このXガイド体4にはX可動体5が駆動可能に設けられている。このX可動体5は側面形状が逆L字状に形成されていて、この垂直壁5aの外面に上記Xガイド体4に移動可能に係合する受け部6が設けられている。
【0024】
上記X可動体5の垂直壁5aの内面には上下方向に沿って一対のZガイド体7がX方向に所定間隔で離間して設けられている。このZガイド体7にはZ可動体8が矢印Zで示す上下方向に駆動可能に設けられている。このZ可動体8の上面と、上記X可動体5の水平壁5bの下面との間には複数、たとえば4つのばね11が張設されていて、上記Z可動体8を上昇方向に付勢している。
【0025】
上記X可動体5の水平壁5bの上面にはシリンダやリニアモータなどのZ駆動源12が軸線を垂直にして設けられている。このZ駆動源12のロッド13の先端には押圧部材14が設けられている。この押圧部材14は上記Z可動体8の上面に回転軸線を水平にして設けられたローラ15に当接している。したがって、上記Z駆動源12のロッド13が突出方向に付勢されると、上記Z可動体8をばね11の復元力に抗して下降方向に駆動させることができるようになっている。
【0026】
上記Z可動体8の下面にはθ駆動源16が設けられている。このθ駆動源16によって回転駆動されるθ可動体17には超音波実装ツール21が取り付けられている。この超音波実装ツール21は図4に示すように断面形状が四角形状をなしたホーン22を有する。このホーン22の長手方向一端には振動子23が連結固定されている。
【0027】
上記振動子23には図示しない発振器が接続されていて、この発振器からたとえば40kHzの高周波電圧が上記振動子23に印加される。それによって、上記振動子23が駆動され、この振動子23とともに上記ホーン22が超音波振動する。つまり、上記ホーン22は図2に示す軸線O方向に伸縮する横振動をする。
【0028】
上記ホーン22の長さ寸法は、上記振動子23で発生する超音波振動の1波長の長さに設定されている。それによって、上記ホーン22には長手方向の中央部及び両端部の3箇所に超音波振動の腹となる、振幅が最大となる部分があり、そのうちの長手方向中央部の下面にはツール部24が設けられている。
【0029】
上記ツール部24は、図3と図4に示すように四角形状の第1のベース部24aを有し、この第1のベース部24aの一側面(下面)には後述する電子部品としての鎖線で示す矩形状の半導体チップCに対応する大きさの矩形状をなした保持加圧部25が第2のベース部25aを介して設けられている。なお、保持加圧部25は第2のベース部25aを設けずに、第1のベース部24aに直接、設けるようにしてもよい。
【0030】
上記第1のベース部24aは、上記ホーン22の下面にねじ26aによって着脱可能に取り付け固定されている。上記保持加圧部25には図示しない吸引孔が開口形成されている。この吸引孔には図示しない吸引ポンプの吸引力が作用するようになっていて、それによって上記保持加圧部25には上記半導体チップCが吸着保持される。
【0031】
上記ホーン22の上面には、下面に設けられた上記ツール部24に対応する長手方向の中央部である、振動波の腹の部分に、上記ツール部24の上記ねじ26aを含む質量と同じ質量のバランス部材27が設けられている。
【0032】
上記バランス部材27は、上記ツール部24とほぼ同じ大きさの矩形状の第1の板材27aの上面にこれよりも小さな第2の板材27bを接合してなり、上記第1の板材27aの四隅部を上記ホーン22の上面にねじ26bによって着脱可能に取り付け固定されている。そして、ねじ26bを含む上記バランス部材27の質量が上記ツール部24の質量と同じになるよう設定されている。なお、上記バランス部材27は上記ホーン22と一体形成してもよい。
【0033】
図4に示すように、上記ホーン22は上述したように断面の外形状が四角形状であるが、放電加工などによって周囲に薄い板状の側壁22aを残し、四隅部には軸方向に貫通する4つの貫通孔22bが穿設されている。それによって、上記ホーン22は4つの側壁22a及びこの4つの側壁22aによって囲まれた十字状の芯部22cによって構成されている。つまり、この芯部22cは中心部から上下方向と左右方向に同じ長さで突出する4つの突出部22dを有する形状となっている。
【0034】
上記ホーン22に軸方向に貫通する4つの貫通孔22bを形成することで、このホーン22の質量が大幅に低減されている。たとえば、4つの貫通孔22bの面積を、ホーン22の全体の断面積の2分の1とすれば、ホーン22の質量を、このホーン22が中実の場合の約半分にすることができる。
【0035】
図1と図2に示すように、上記ホーン22の上面には、このホーン22と同じ幅寸法で、長さ寸法がホーン22よりも短い帯板状のブラケット28が長手方向中央部の下面を上記バランス部材27の第2の板材27bの上面に接触させて設けられている。このブラケット28の両端部はそれぞれねじ29によって上記ホーン22の横振動が最小となる、振動波の節の部分に連結固定されている。なお、ねじ29は上記ホーン22の芯部22cにねじ込まれている。
【0036】
上記ブラケット28の両端部分と上記バランス部材27に接触した部分との間の部分は、この部分の剛性をブラケット28の他の部分よりも低くする低剛性部28aに形成されている。上記低剛性部28aはブラケット28の幅方向に貫通する空洞によって形成されている。この空洞はブラケット28の長手方向に沿って長いH形状で、隅部は応力集中を避けるようR状に形成されている。
【0037】
したがって、上記ブラケット28を上記ホーン22に上記バランス部材27を介して固定するため、ブラケット28の両端部のねじ29をホーン22に締め込むと、ブラケット28の空洞部30が形成された低剛性部28aが弾性変形して湾曲する。
【0038】
そのため、ブラケット28の両端部分をホーン22にねじ29によって連結固定しても、このブラケット28の長手方向中央部分とバランス部材27とは面接触状態が維持されることになる。
【0039】
上記ブラケット28は、上記バランス部材27に接触した部分の上面が上記θ可動体17の下面に取り付け固定される。したがって、上記超音波実装ツール21はX、Y、Z及びθ方向に駆動可能となっている。
【0040】
図1と図2に示すように、上記超音波実装ツール21の下方にはヒータ31aが内蔵されたステージ31が配設されている。このステージ31は、詳細は図示しないがX、Y、及びZ方向に駆動可能となっている。ステージ31の上面にはポリイミド製のテープ状部材などの基板32が供給載置される。
【0041】
上記基板32に対して上記超音波実装ツール21のツール部24が位置決めされて下降する。それによって、ツール部24に保持された半導体チップCがZ可動体8による加圧力と、ホーン22の横振の超音波振動によって上記基板32に圧着される。
【0042】
このように構成された実装装置においては、超音波実装ツール21の振動子23を作動させてホーン22を超音波振動させる。そして、このホーン22のツール部24の保持加圧部25に吸着保持されて上記ホーン22とともに超音波振動する半導体チップCを、基板32に所定の加圧力で押圧する。それによって、上記半導体チップCは上記基板32に実装されることになる。
【0043】
上記ホーン22は下面の振動の振幅が最大となる腹の部分にツール部24が設けられ、上面の上記ツール部24と対応する部分には上記ツール部24と同じ質量のバランス部材27が設けられている。それによって、上記ホーン22は軸線Oを中心とする下側部分と上側部分の質量が同じに設定されている。
【0044】
そのため、ホーン22を振動子23によって超音波振動させると、このホーン22は軸線Oを中心とする下側部分と上側部分の質量が同じであるため、軸方向に対して伸縮する横方向だけに超音波振動し、上下方向に振動することがない。つまり、ホーン22は上下方向に撓みながら超音波振動するということがない。
【0045】
それによって、上記ツール部24の保持加圧部25に吸着保持された半導体チップCは基板32の板面に対して平行方向に振動するから、半導体チップCを損傷させるようなことなく、基板32に確実に圧着することができる。
【0046】
しかも、半導体チップCが基板32の板面に対して平行に振動することで、ホーン22が軸線0方向に対して円滑に伸縮しながら超音波振動するから、ホーン22が撓んで振動する場合に比べ、ホーン22に加わる負荷が増大することで、ホーン22の発振効率が大きく低下するということのない。つまり、ホーン22の発振効率を充分に高めることができる。
【0047】
上記ホーン22には軸方向に貫通する4つの貫通孔22bが形成されている。それによって、ホーン22の質量は貫通孔22bが形成されていない中実状の場合に比べて大幅に低減されている。つまり、超音波実装ツール21の質量が低減される。
【0048】
上記ホーン22の質量が低減されれば、このホーン22のツール部24の保持加圧部25によって半導体チップCを図示しない受け渡しツールから受け取ってステージ31上の基板32に実装するために、上記超音波実装ツール21(ホーン22)を水平方向及び上下方向に移動させて位置決めする際、その移動及び位置決めに要するタクトタイムを大幅に短縮することができるばかりか、停止時の超音波実装ツール21の振動を抑制することができる。
【0049】
つまり、ホーン22の水平方向及び上下方向に対する移動と位置決めは、このホーン22の質量に大きく左右されることになるから、ホーン22の質量が低減されることで、ホーン22の移動及び位置決めに要するタクトタイムを短縮し、振動を抑制することで、半導体チップCの実装効率及び実装精度を向上させることができることになる。
【0050】
上記実施の形態では、ねじ26bを含むバランス部材27の質量を、ねじ26aを含むツール部24の質量と同じに設定した。ところで、基板32に実装される半導体チップCがたとえば数mm角程度の小さな場合には、実装時に半導体チップCを基板32に加圧する加圧力があまり大きくない。
【0051】
そのため、半導体チップCの実装時にホーン22が加圧力の反力として受ける力もあまり大きくならないから、その反力がツール部22の下面側に質量として作用してツール部22に撓み振動が生じることはほとんどない。
【0052】
つまり、バランス部材27の質量をツール部24の質量と同じに設定することで、ホーン22に撓み振動が発生するのを防止することができる。
【0053】
しかしながら、半導体チップCの大きさがたとえば数十mm角程度に大きくなると、実装時の加圧力も大幅に増大するから、ホーン22に作用する反力も大きくなり、その反力に相当する質量がホーン22の下面側に付加されたとみなすことができる。
【0054】
したがって、半導体チップCが大きくなって半導体チップCの実装時の加圧力が大きくなる場合には、バランス部材27の質量を、ホーン22に作用する実装時の加圧力の反力を加味した質量に設定する。すなわち、バランス部材27の質量に加圧力の半分を加味すればよい。
【0055】
それによって、半導体チップCを基板32に実装する際の加圧力が増大してその反力がホーン22の下面に加わっても、その反力を加味した質量のバランス部材27によってホーン22に撓み振動が発生するのを防止することができる。
【0056】
つまり、バランス部材27の質量は、基板32に半導体チップCを実装するときの加圧力の大きさ、つまり半導体チップCの大きさを考慮して設定することで、半導体チップCを実装するときの加圧力が変化した場合でも、ホーン22に撓み振動が生じるのを防止することができる。
【0057】
上記ホーン2の上面に設けられたバランス部材27にはブラケット28が圧接するから、上記ブラケット28の圧接力がバランス部材27の質量を実質的に増大させることになる。
【0058】
したがって、バランス部材27の質量を、ホーン22に作用する実装時の加圧力の反力とともに、上記バランス部材27に対するブラケット28の圧接力を加味して設定することで、超音波振動するホーン22に撓み振動が生じるのをさらに確実に防止することができる。
【0059】
上記バランス部材27は上記ホーン22の上面にねじ26bによって着脱可能に取り付けられている。そのため、バランス部材27を異なる質量のものに交換する際、その交換を容易に行なうことができる。
【0060】
上記ツール部24は、その第1のベース部24aの四隅部が上記ホーン22の下面にねじ26aによって着脱可能に取り付けられている。そのため、長期の使用によって上記ツール部24の保持加圧部25が所定以上に磨耗した場合、上記ツール部24の交換を容易に行なうことができる。
【0061】
ところで、従来、上記ツール部24はホーン22の下面にねじ込み方式で着脱可能に取り付けられていた。その場合、磨耗したツール部24を取り外し、新たなツール部24をホーン2の下面にねじ込むと、上記ツール部24の保持加圧部25の上記ホーン22の下面に対する取り付け角度が元の状態から周方向に数度ずれるということが発生し易かった。
【0062】
しかしながら、上記ツール部24はホーン22の下面にねじ26aによって着脱可能に取り付ける構造としている。そのため、ツール部24を新たなものに交換した場合にも、その保持加圧部25の上記ホーン22の下面に対する取り付け角度を元の状態と同じ角度、つまり常に一定の角度に設定することができる。
【0063】
それによって、ツール部24を交換しても、保持加圧部25の取り付け角度が周方向にずれるのを防止できるから、保持加圧部25による半導体チップCの保持状態がずれ、基板32に対する半導体チップCの実装精度の低下を招くのを防止することができる。
【0064】
上記第1の実施の形態では、上記ホーン22の長さ寸法を振動子23で発生する超音波振動の1波長とすることで、上記ホーン22の長手方向の中途部及び両端部の3箇所が超音波振動の振幅が最大となる腹となる。
【0065】
そして、そのうちの、長手方向中央部の上面、つまりツール部24が設けられた下面に対応する上面に、ツール部24と同じ質量或いはホーン22に作用する実装時の加圧力の反力を加味した質量のバランス部材27を設けるようにした。
【0066】
それに代わって、図5に示す第2の実施の形態のように、バランス部材をツール部24の半分の質量の2つのバランス部材27c,27cに分割し、各バランス部材27c,27cを、上記ホーン22の長手方向両端部の振幅が最大となる部分の上面にそれぞれねじ26b(図示せず)によって着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0067】
その場合、同図に鎖線で示すように、ブラケット28の下面に凸部28bを設け、この凸部28bをホーン22の上面に圧接させれば、超音波実装ツール21をθ可動体17にブラケット28を介して取り付けることができる。
【0068】
このように、バランス部材27c,27cを2つに分けて設けるようにしても、第1の実施の形態と同様、ホーン22の軸線Oを中心とする下側部分と上側部分との質量のバランスを同じにすることができるから、ホーン22を超音波振動させたときに、このホーン22に圧縮方向の横振動以外の、撓み振動が発生するのを防止することができる。
【0069】
図6はこの発明の第3の実施の形態である。第1の実施の形態では超音波実装ツール21のホーン22の長さ寸法を、振動子23で発生する超音波振動の1波長の長さに設定したが、この実施の形態ではホーン22の長さ寸法が超音波振動の波長の半分の長さに設定されている。
【0070】
その場合、上記ホーン22に軸方向の両端部が超音波振動の振幅が最大となる腹となるから、ツール部24とバランス部材27は上記ホーン22に軸方向の先端部或いは振動子23側の後端部、この実施の形態では先端部に設ける。
【0071】
このような構成であっても、上記第1の実施の形態と同様、ホーン22を伸縮方向にだけ確実に超音波振動させることができる。
【0072】
図7は放電加工されるホーン22の断面形状の変形例を示す第4の実施の形態である。この実施の形態ではホーン22に形成される芯部22cを上記第1の実施の形態の十字形状から、中心部から左右方向に突出した2つの突出部22dを除去した形状となっている。この場合、ホーン22の軸方向に貫通する貫通孔22bは上記芯部22cの左右に位置する2つとなる。
【0073】
このような形状とすることで、芯部22cが4つの突出部22dを有する場合に比べてさらにホーン22の質量を低減することができるから、半導体チップCの実装時におけるタクトタイムをより一層、短縮することが可能となる。
【0074】
なお、この第4の実施の形態において、図示はしないが、上記芯部22cの中芯部に貫通孔22bを形成し、ホーン22の質量をさらに低減させるようにしてもよい。
【0075】
図8はホーン22の変形例を示す第5の実施の形態で、この実施の形態では上記ホーン22の芯部22cの形状が第1の実施の形態のように十字状の場合であって、ホーン22に放電加工によって貫通孔22bを形成する代わりに、芯部22cだけを放電加工によって形成し、この芯部22cの周囲に、4枚の板材34を上記芯部22cの各突出部22dの端面にねじ止め或いは接着などの固定手段によって固定して設け、上記ホーン22を構成するようにしている。
【0076】
なお、隣り合う各板材34の側端は、接着や溶接などの手段で固定してもよいし、固定しなくてもよいが、固定した方が芯部22cと板材34とが一体的に確実に超音波振動し易くなる。
【0077】
上記第1の実施の形態ではツール部24とバランス部材27をホーン22と別体とし、ホーン22の下面と上面にそれぞれねじ26a,26bによって着脱可能に取り付けるようにしたが、ホーン22を放電加工する際に、上記ツール部24とバランス部材27をホーン22と一体加工するようにしてもよい。その場合、ねじ26a,26bが不要になるから、上記ツール部24とバランス部材27の質量に上記ねじ26a,26bの質量は含まれないことになる。
【0078】
また、上記ツール部24とバランス部材27をホーン22にねじ止め固定する場合であっても、ねじ26aと26bを同じ質量とすれば、これらの質量を無視できるから、バランス部材27をツール部24と同じ質量とすればよい。
【0079】
また、上記各実施の形態では半導体チップCの質量を考慮せず、ツール部24の質量に対してバランス部材27の質量を設定したが、半導体チップCのサイズが大きくなった場合にはこの半導体チップCの質量も考慮してバランス部材27の質量を設定した方がよい。
【0080】
それによって、ホーン22の超音波振動がより一層、撓み方向に振動するのが防止された横振動となるから、半導体チップCの実装を発振効率の低下を招くことなく、確実に行なうことが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
21…超音波実装ツール、22…ホーン、23…振動子、24…ツール部、24a…ベース部、25…保持加圧部、27…バランス部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を被実装部材に押圧荷重と超音波振動によって実装するための超音波実装ツールであって、
断面形状が四角形のホーンと、
このホーンの軸方向の一端に接続され上記ホーンを上記軸方向に超音波振動させる振動子と、
上記ホーンの外面の4つの面のうちの1つの面の振動が最大となる部分に設けられた上記電子部品を保持するツール部と、
上記ホーンの外面の上記1つの面と対向する面の振動が最大となる部分に設けられ上記ホーンが上記ツール部の質量によって上記軸方向と異なる方向に超音波振動するのを阻止するバランス部材と
を具備したことを特徴とする超音波実装ツール。
【請求項2】
上記ホーンには軸方向の中途部と両端部との3箇所に振動が最大となる部分を有し、
上記ツール部は上記1つの面の軸方向の中途部の振動が最大となる部分に設けられ、上記バランス部材は上記ツール部の軸方向の両端部の振動が最大となる2つの部分に均等な質量に分割されて設けられることを特徴とする請求項1記載の超音波実装ツール。
【請求項3】
上記ホーンには軸方向の一端部と他端部との2箇所に振動が最大となる部分を有し、
上記ツール部は上記1つの面の軸方向の一端部の振動が最大となる部分に設けられ、上記バランス部材は上記ツール部の軸方向の一端部の上記1つの面と対向する面に設けられることを特徴とする請求項1記載の超音波実装ツール。
【請求項4】
上記バランス部材は、上記ツール部と同じ質量であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波実装ツール。
【請求項5】
上記バランス部材の質量は、上記ツール部の質量に、このツール部が上記電子部品を被実装部材に押圧するときの荷重に対応する質量を加えた質量であることを特徴とする請求項1又乃至3のいずれかに記載の超音波実装ツール。
【請求項6】
上記ツール部は板状のベースに一体的に形成されていて、上記ベースは上記ホーンの外面の上記1つの面に着脱可能にねじ止め固定されることを特徴とする請求項1記載の超音波実装ツール。
【請求項7】
電子部品を被実装部材に押圧荷重と超音波振動によって実装するための電子部品の実装装置であって、
上下方向と水平方向のうちの少なくとも上下方向に駆動される可動部と、
上面に上記被実装部材が載置されるステージと、
上記可動部に取り付けられ上記電子部品を保持してこの電子部品に超音波振動を付与し、その超音波振動と上記可動部の下降による押圧力とで上記電子部品を上記ステージ上の上記被実装部材に実装する超音波実装ツールを具備し、
上記超音波実装ツールは請求項1に記載された構成であることを特徴とする電子部品の実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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