説明

超音波探傷用ウェッジ、これを備えている装置及びシステム

【課題】超音波探傷センサと被検体の表面との間の気泡の排除を促進する。
【解決手段】被検体Sの表面に対向する被検体対向面22と、被検体の表面から遠ざかる向きに、被検体対向面から凹んでいる気泡滞留凹部25と、超音波探傷センサ10が装着されるセンサ装着面21と、水を被検体の表面に供給する供給部30と、が形成されている。供給部は、センサ装着面21から気泡滞留凹部の底面26に貫通していると共に、水の受入口32a,32bと連通し、受入口で受け入れられた水で満たされる超音波伝播室40と、を有する。気泡滞留凹部25は、超音波伝播室40の被検体側開口42の縁のうち、超音波探傷センサ10の走査方向と反対側の反走査方向側縁の全縁から反対側に広がっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷センサが装着され、この超音波探傷センサと被検体との間に超音波の伝播媒質を供給する超音波探傷用ウェッジ、これを備えている装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体を超音波探傷する場合、超音波探傷センサと被検体との間に超音波の伝播媒質を供給するウェッジを設けることがある。超音波探傷センサと被検体との間の伝播媒質中に気泡が存在すると、超音波探傷センサは、この気泡を被検体の傷として誤検知することがある。
【0003】
このため、従来より、気泡の排除を促す技術が開発されている。例えば、以下の特許文献1に記載のウェッジでは、被検体対向面に、伝播媒質である水の流出口である開口から、超音波探傷センサの走査方向に対して垂直な方向に伸びる溝を形成し、被検体の表面と被検体対向面との間から排出される水の流量を増やすことで、超音波探傷センサと被検体の表面との間の気泡の排除を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−107387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術は、確かに、超音波探傷センサと被検体の表面との間の気泡の排除を促進でき、優れた技術である。しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、例えば、水の流出口である開口中、超音波探傷センサの走査方向に対して垂直な方向の中央に、気泡が存在している場合、この気泡が溝に至るまでに時間がかかり、この気泡をセンサで検知する可能性が高い、という問題点がある。言い換えると、特許文献1に記載の技術では、気泡排除の促進が不十分である、という問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、より気泡の排除を促進することができる超音波探傷用ウェッジ、これを備えている装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するための超音波探傷用ウェッジは、
超音波探傷センサが装着され、該超音波探傷センサと被検体との間に超音波の伝播媒質を供給する超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記被検体の表面に対向する被検体対向面と、前記被検体の表面から遠ざかる向きに、前記被検体対向面から凹んでいる気泡滞留凹部と、前記超音波探傷センサが装着されるセンサ装着面と、前記伝播媒質を前記被検体の表面に供給する供給部と、が形成され、
前記供給部は、前記伝播媒質を受け入れる受入口と、前記センサ装着面から前記気泡滞留凹部の底面に貫通していると共に、該受入口と連通し、該受入口で受け入れられた前記伝播媒質で満たされる超音波伝播室と、を有し、前記気泡滞留凹部は、前記超音波伝播室から該気泡滞留凹部に臨む被検体側開口の縁のうち、前記センサ装着面に装着された前記超音波探傷センサの予め定められた走査方向と反対側の反走査方向側縁の全縁から該反対側に広がっている、ことを特徴とする。
【0008】
当該ウェッジでは、超音波伝播室の被検体側への延長上に気泡が位置しても、ウェッジの走査方向への移動により、この気泡は、被検体側開口の回りに形成されている気泡滞留凹部内において、このウェッジに対して相対的に走査方向と反対側に直ちに移動してしまう。このため、当該ウェッジによれば、傷の誤検知の一因になる気泡排除の促進を図ることができる。
【0009】
ここで、前記ウェッジにおいて、前記超音波探傷センサの前記予め定められた走査方向として、第一走査方向と、該第一走査方向と正反対の向きの第二走査方向とがあり、前記気泡滞留凹部は、前記被検体側開口の縁のうち、前記第一走査方向側の全縁から該第一走査方向側に広がっていると共に、該被検体側開口の縁のうち、前記第二走査方向側の全縁から該第二走査方向側に広がっていてもよい。
【0010】
当該ウェッジでは、第一走査方向、及びこの第一走査方向と正反対の向きの第二走査方向の両方向へ超音波探傷センサを走査する場合でも、超音波伝播室の被検体側への延長上に位置している気泡を、この位置から直ちに排除することができる。
【0011】
また、前記ウェッジにおいて、前記気泡滞留凹部の側壁面のうちで、前記走査方向とは反対側の側壁面は、該気泡滞留凹部の底面から前記被検体対向面側へ向かうに連れて、前記反対側へ次第に向かう面を成していてもよい。
【0012】
当該ウェッジでは、気泡滞留凹部内に溜まった気泡が被検体対向面と被検体の表面との間の隙間に入り込み易くなり、気泡滞留凹部内の気泡の排出を促すことができる。
【0013】
また、前記ウェッジにおいて、前記供給部は、前記受入口及び前記超音波伝播室と連通し、該超音波伝播室の周面であって、少なくとも、前記走査方向側の周面部分及び前記反対側の周面部分に沿って広がっている均圧室を有していてもよい。
【0014】
当該ウェッジでは、受入口からの伝播媒質が均圧室内で分散化し、超音波伝播室の周方向での各位置から、この超音波伝播室に流入する伝播媒質の流量の均等化を図ることができる。このため、当該ウェッジでは、超音波伝播室内に伝播媒質の淀みが発生し難くなり、超音波伝播室内で気泡が滞留することがなくなり、超音波伝播室内からスムーズに気泡を排出することができる。
【0015】
また、前記ウェッジにおいて、前記均圧室と前記超音波伝播室との境界部には、仕切り壁が形成され、該仕切り壁には、該均圧室から該超音波伝播室に貫通し、該超音波伝播室の外周の周方向に並んでいる多数の貫通孔が形成されていてもよい。
【0016】
当該ウェッジでは、超音波伝播室の周方向での各位置から、この超音波伝播室に流入する伝播媒質の流量の均等化をより図ることができる。
【0017】
また、前記ウェッジにおいて、前記仕切り壁の前記超音波伝播室側の面は、該超音波伝播室の周面と面一であってもよい。当該ウェッジでは、仕切り壁を設けているものの、仕切り壁の超音波伝播室側の面が超音波伝播室の周面と面一であるため、超音波伝播室内での超音波の不規則な反射を抑えることができ、傷の検知精度の低下を抑えることができる。
【0018】
また、前記ウェッジにおいて、前記多数の貫通孔の前記超音波伝播室側の開口は、前記超音波伝播室から前記センサ装着面に臨むセンサ側開口と前記被検体側開口とのうち、該被検体側開口側に寄った位置に形成されていてもよい。
【0019】
当該ウェッジでは、仕切り壁の貫通孔が、センサ感度の低い被検体側開口側に寄っているため、この貫通孔での超音波の反射による検知精度の低下を抑えることができる。
【0020】
また、前記ウェッジにおいて、前記均圧室には、前記受入口からの前記伝播媒質が前記超音波伝播室へ流入する向きに貫通する孔が形成されている多孔板が配置されていてもよい。
【0021】
当該ウェッジでは、均圧室内の各位置での流速分布が均一化するため、超音波伝播室の周面の周方向での各位置から、この超音波伝播室に流入する伝播媒質の流量の均等化をより図ることができる。
【0022】
また、前記ウェッジにおいて、前記供給部は、複数の前記受入口を有していてもよい。当該ウェッジでは、超音波伝播室の周方向での各位置から、超音波伝播室に流入する伝播媒質の流量の均等化をより図ることができる。
【0023】
また、前記ウェッジにおいて、前記均圧室は、前記超音波伝播室の周面であって、前記走査方向側の周面部分に沿って広がっている第一均圧部と、該走査方向側とは反対側の周面部分に沿って広がっている第二均圧部と、を有し、前記供給部は、前記第一均圧部に前記伝播媒質を流入させる前記受入口としての複数の第一受入口を有すると共に、前記第二均圧部に該伝播媒質を流入させる前記受入口としての複数の第二受入口を有し、複数の前記第一受入口からの前記伝播媒質を前記第一均圧部に流入させる複数の均圧室流入口、及び、複数の前記第二受入口からの前記伝播媒質を前記第二均圧部に流入させる複数の均圧室流入口は、前記超音波伝播室の周面の周方向に並んで形成されていてもよい。
【0024】
当該ウェッジでは、均圧室の第一均圧部内及び第二均圧室内のそれぞれで伝播媒質の分散化を図ることができるため、超音波伝播室の周方向での各位置から、超音波伝播室に流入する伝播媒質の流量の均等化をより図ることができる。
【0025】
また、前記ウェッジにおいて、前記被検体対向面上であって、前記気泡滞留凹部から離れた位置には、該被検体対向面と前記被検体の表面との間に前記伝播媒質中の気泡が通れる隙間を確保するための隙間確保部が形成されていてもよい。
【0026】
当該ウェッジでは、隙間確保部により、被検体対向面と被検体の表面との間に伝播媒質中の気泡が通れる隙間が確保されるため、気泡滞留凹部から、被検体対向面と被検体の表面との間に入ってきた気泡の排出を促すことができる。
【0027】
また、前記ウェッジにおいて、前記隙間確保部には、前記被検体対向面から立ち上がっている第一側面と第二側面とが形成され、前記第一側面と前記第二側面とは互いに交差し、交差している箇所が鋭角な角を形成し、前記隙間確保部は、該隙間確保部の部分のうちで前記角が前記被検体側開口に最も近くてもよい。
【0028】
当該ウェッジでは、ウェッジの走査方向への移動により、被検体対向面と被検体の表面との間の気泡が、被検体対向面に対して相対的に反走査方向に移動し、その過程で、隙間確保部に接触しても、この隙間確保部は気泡の移動に対して抵抗の小さい形状を成しているため、被検体対向面と被検体の表面との間から気泡をスムーズに排除することができる。
【0029】
また、前記ウェッジにおいて、前記被検体対向面には、前記伝播媒質との親和性を高める親和性向上処理が施されていてもよい。当該ウェッジでは、気泡滞留凹部から、被検体対向面と被検体の表面との間に入ってきた気泡の排出を促すことができる。
【0030】
また、前記問題点を解決するための超音波探傷装置は、
前記ウェッジと、前記ウェッジの前記センサ装着面に装着される前記超音波探傷センサと、を備えていることを特徴とする。
【0031】
当該超音波探傷装置でも、前記ウェッジを備えているため、傷の誤検知の一因になる気泡排除の促進を図ることができる。
【0032】
また、前記問題点を解決するための超音波探傷システムは、
前記超音波探傷装置と、前記伝播媒質の供給源と前記ウェッジの前記受入口とを接続する伝播媒質供給ラインと、前記伝播媒質供給ライン中に設けられ、前記供給源からの前記伝播媒質中の気体を除く脱気器と、を備えていることを特徴とする。
【0033】
当該超音波探傷システムでも、前記ウェッジを備えているため、傷の誤検知の一因になる気泡排除の促進を図ることができる。さらに、当該超音波探傷システムでは、脱気器を備えているため、供給源からウェッジに入る伝播媒質から、気体を排除することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、超音波伝播室の被検体側への延長上に気泡が位置しても、ウェッジの走査方向への移動により、この気泡は、被検体側開口の回りに形成されている気泡滞留凹部内において、このウェッジに対して相対的に走査方向と反対側に直ちに移動してしまう。このため、本発明によれば、傷の誤検知の一因になる気泡排除の促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る第一実施形態における超音波探傷装置の展開斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1におけるIII矢視図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態における超音波探傷システムの構成図である。
【図5】本発明に係る第二実施形態における超音波探傷装置の展開斜視図である。
【図6】図5におけるVI−VI線断面図である。
【図7】図5におけるVII矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る超音波探傷システムの各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
「第一実施形態」
まず、本発明に係る第一実施形態としての超音波探傷システムについて、図1〜図4を用いて説明する。
【0038】
本実施形態の超音波探傷システムは、図4に示すように、超音波探傷装置1と、この超音波探傷装置1を被検体Sの表面に沿って移動させる移動機構2と、超音波の伝播媒質である水の供給源と超音波探傷装置1とを接続する水供給ライン7と、この水供給ライン7中に設けられている脱気器8及び気泡除去フィルタ9と、を備えている。
【0039】
超音波探傷装置1は、超音波を被検体Sに向けて発信すると共に被検体Sからの超音波の反射波を受信する超音波探傷センサ(以下、単にセンサとする)10と、このセンサ10が装着され、センサ10と被検体Sの表面との間に超音波伝播媒質である水を供給するウェッジ20と、を有している。
【0040】
本実施形態において、水の供給源は、例えば、水道蛇口である。水供給ライン7は、この水蛇口に接続されている。この水供給ライン7中に設けられる脱気器8は、水中に含まれている気体の分圧を低下させて、この気体を排除する減圧式の脱気器8である。この脱気器8は、真空ポンプ8aと、水が流入し、真空ポンプ8aにより減圧される真空チャンバー8bとを備えている。水供給ライン7中で、この脱気器8よりも下流側には、気泡除去フィルタ9が配置されている。なお、脱気器8としては、水を加熱して、水の飽和気体濃度を低下させ、溶存気体の脱気を図る加熱式を採用してもよい。
【0041】
センサ移動機構2は、超音波探傷装置1を被検体Sの表面に押付ける押付機構3と、被検体Sの表面に押付けられた超音波探傷装置1を被検体Sの表面に沿って移動させる走査機構4と、を備えている。走査機構4は、超音波探傷装置1の走査方向に伸びるレール5と、このレール5に沿って移動する台車6と、を有している。なお、本実施形態の超音波探傷装置1は、被検体Sの下方から、被検体Sを超音波探傷するものである。このため、押付機構3は、超音波探傷装置1を下から上に押し上げるものである。また、ウェッジ20は、被検体Sの下側に配置され、センサ10は、このウェッジ20の下側に配置される。
【0042】
センサ10は、図1に示すように、超音波を被検体Sに向けて発信すると共に被検体Sからの超音波の反射波を受信する超音波入出力面11を有している。この超音波入出力面11は、長方形を成している。このセンサ10は、この長方形の超音波入出力面11の短手方向のうち、一方の方向が第一走査方向で、正反対向きの方向が第二走査方向になっている。なお、以下では、説明の便宜上、長方形の超音波入出力面11の短手方向をY方向、その長手方向をX方向、超音波入出力面11に垂直な方向をZ方向とする。
【0043】
ウェッジ20には、図1〜図3に示すように、センサ10の超音波入出力面11に対向するセンサ装着面21と、被検体Sの表面と対向する被検体対向面22と、この被検体対向面22から凹んでいる気泡滞留凹部25と、被検体Sの表面に水を供給する供給部30と、前述の押付機構3に接続される接続フランジ29と、が形成されている。
【0044】
被検体対向面22は、ウェッジ20の(+)Z側に形成され、センサ装着面21は、ウェッジ20の(−)Z側に形成されている。接続フランジ29は、ウェッジ20の(−)Z側であって、センサ装着面21を挟んで(±)X側のそれぞれ形成されている。この接続フランジ29には、X方向に貫通する軸孔29aが形成されており、この軸孔29aに押付機構3と接続するためのピン12が挿通される。よって、このウェッジ20は、このピン12を中心として揺動可能である。
【0045】
供給部30は、水を受け入れる受入口32a,32bと、センサ装着面21から気泡滞留凹部25の底面26に貫通している超音波伝播室40と、受入口32a,32b及び超音波伝播室40のそれぞれに連通している均圧室35と、を有している。
【0046】
超音波伝播室40からセンサ装着面21に臨むセンサ側開口41、及び超音波伝播室40から気泡滞留凹部25の底面26に臨む被検体側開口42は、開口縁の形状及びサイズが互いに同じで、長方形の超音波入出力面11よりも僅かに小さいものの、この超音波入出力面11の形状及びサイズに対応している。具体的に、センサ側開口41及び被検体側開口42のX方向の幅寸法は、超音波入出力面11の長手方向の長さ寸法より僅かに短く、そのY方向の幅寸法は、超音波入出力面11の短手方向の長さ寸法より僅かに短い。
【0047】
気泡滞留凹部25は、X方向に長い被検体側開口42の縁のうち、第一走査方向である(+)Y方向側の全縁から(+)Y方向に広がっていると共に、第二走査方向である(−)Y方向側の全縁から(−)Y方向に広がっている。気泡滞留凹部25の開口及び底面26は、いずれも長方形で、その長手方向がX方向を向き、その短手方向がY方向を向いている。気泡滞留凹部25の開口及び底面26のX方向の幅寸法は、被検体側開口42のX方向の幅寸法と一致し、そのY方向の幅寸法は、被検体側開口42のY方向の幅寸法より大きい。具体的に、気泡滞留凹部25の開口及び底面26の(+)Y側の縁は、被検体側開口42の(+)Y側の縁から、(+)Y側へ、例えば、10mm程度の位置に形成され、気泡滞留凹部25の開口及び底面26の(−)Y側の縁は、被検体側開口42の(−)Y側の縁から、(−)Y側へ、例えば、10mm程度の位置に形成されている。また、気泡滞留凹部25の深さ寸法は、例えば、5mm程度である。
【0048】
均圧室35は、超音波伝播室40のZ方向のほぼ中央部分であって、この超音波伝播室40の周面のうち、第一走査方向である(+)Y方向側の全周面から(+)Y方向に広がっていると共に、第二走査方向である(−)Y方向側の全周面から(−)Y方向に広がっている。この均圧室35は、直方体形状を成し、直方体の表面のうち、一対の対向している面は、それぞれ(±)X方向を向き、他の一対の対向している面は、それぞれ(±)Y方向を向き、残りの一対の対向している面は、それぞれ(±)Z方向を向いている。この均圧室35のX方向の幅寸法は、気泡滞留凹部25の開口及び底面26のX方向の幅寸法、及び、被検体側開口42のX方向の幅寸法と一致している。また、この均圧室35のY方向の幅寸法は、気泡滞留凹部25の開口及び底面26のY方向の幅寸法よりも大きい。
【0049】
この均圧室35で、超音波伝播室40を基準にして、第一走査方向である(+)Y方向側に広がっている空間が第一均圧部35aを成し、第二走査方向である(−)Y方向側に広がっている空間が第二均圧部35bを成す。
【0050】
ウェッジ20には、その(−)Z側の表面から第一均圧部35aに貫通する3つの第一貫通孔31aと、その(−)Z側の表面から第二均圧部35bに貫通する3つの第二貫通孔31bと、が形成されている。第一貫通孔31aで、ウェッジ20の(−)Z側の表面を臨む開口が第一受入口32aを成し、第一均圧部35aに臨む開口が第一均圧室流入口33aを成している。また、第二貫通孔31bで、ウェッジ20の(−)Z側の表面を臨む開口が第二受入口32bを成し、第二均圧部35bに臨む開口が第二均圧室流入口33bを成している。3つの第一貫通孔31aは、X方向に並び、互いの間隔が等間隔である。また、3つの第二貫通孔31bも、X方向に並び、互いの間隔が等間隔である。なお、ここでは、第一貫通孔31a及び第二貫通孔31bの数量がいずれも3つであるが、さらに多くてもよい。
【0051】
ウェッジ20は、製造上の都合により、被検体対向面22が形成されている被検体側ウェッジフレームFaと、センサ装着面21が形成されているセンサ側ウェッジフレームFbと、両者を接続するネジ(不図示)とを有して構成されている。なお、被検体側ウェッジフレームFa及びセンサ側ウェッジフレームFbは、いずれも、音響インピーダンスの値が水の音響インピーダンスに近い材料、例えば、ナイロン、アクリル、ポリスチレン等の樹脂で形成されている。また、ウェッジフレームFa,Fbにおいて、水の流れに接する表面の粗度を出来る限り細かくすることが気泡を排除するうえで好ましい。
【0052】
被検体側ウェッジフレームFaには、前述の被検体対向面22の他、気泡滞留凹部25、被検体側開口42が形成されている。また、センサ側ウェッジフレームFbには、前述のセンサ装着面21の他、センサ側開口41、第一及び第二受入口32a,32b、接続フランジ29が形成されている。また、均圧室35及び超音波伝播室40は、いずれも、2つのウェッジフレームの協同により形成されている。
【0053】
本実施形態の超音波探傷システムで被検体Sを超音波探傷する際には、まず、水供給源からの水を脱気器8及び気泡除去フィルタ9を介して、ウェッジ20に供給する。この水は、ウェッジ20の複数の第一受入口32aから均圧室35の第一均圧部35aに流入すると共に、複数の第二受入口32bから均圧室35の第二均圧部35bに流入する。各均圧部35a,35bに流入した水は、ウェッジ20の超音波伝播室40を満たし、被検体側開口42から外部に流出する。
【0054】
次に、押付機構3を駆動させて、ウェッジ20の被検体対向面22を被検体Sの表面に押付ける。このとき、被検体側開口42から流出した水は、気泡滞留凹部25と被検体Sの表面との間、被検体対向面22と被検体Sの表面との間の隙間と経て、これらの間から排出される。
【0055】
次に、ウェッジ20のセンサ装着面21に装着されているセンサ10を駆動する。すると、センサ10の超音波入出力面11から超音波が発信され、超音波伝播室40及び気泡滞留凹部25を満たしている水を介して、この超音波が被検体Sに達する。この超音波は、被検体Sの表面や、被検体Sの内部の傷等、音響インピーダンスが変化する箇所で反射し、一部が、気泡滞留凹部25及び超音波伝播室40を満たしている水を介して、センサ10の超音波入出力面11に入射する。センサ10は、超音波入出力面11に入射した超音波の反射波を電気信号に変換して、これを出力する。すなわち、センサ10の駆動により、被検体Sの超音波探傷が開始される。
【0056】
次に、走査機構4を駆動させて、超音波探傷装置1を第一又は第二走査方向に移動させる。この超音波探傷装置1の第一又は第二走査方向への移動により、この走査方向における超音波探傷が行われる。
【0057】
ところで、背景技術の欄で前述したように、センサ10の超音波入出力面11と被検体Sとの間の水中に気泡が存在すると、センサ10は、この気泡を被検体Sの傷として誤検知することがある。センサ10の超音波入出力面11と被検体Sとの間の気泡には、水供給源の水中に既に含まれている気泡が超音波伝播室40内に流入したものや、超音波探傷装置1を走査する過程で、ウェッジ20の被検体対向面22と被検体Sの表面との間に噛み込まれた気体が気泡として、センサ10の超音波入出力面11と被検体Sとの間に移動してきたものがある。
【0058】
本実施形態では、水供給源の水中に既に含まれている気泡に関しては、水供給ライン7中に設けられている脱気器8及び気泡除去フィルタ9で除去する。しかしながら、水供給源の水中に既に含まれている気泡の全てを、脱気器8及び気泡除去フィルタ9で除去できない場合がある。また、気泡除去フィルタ9から流出した水に溶け込んでいた気体が、水の温度変化による飽和気体濃度変化で、気泡になる場合もある。これらの気泡は、ウェッジ20に対する水の流入及び流出と同様、ウェッジ20の複数の第一受入口32aから均圧室35の第一均圧部35aに流入すると共に、複数の第二受入口32bから均圧室35の第二均圧部35bに流入し、超音波伝播室40を経て、被検体側開口42から外部に流出する。
【0059】
仮に、受入口32a,32bからの水が、超音波伝播室40の周面の周方向での各位置から、この超音波伝播室40に均等な流量で流入しない場合には、この超音波伝播室40内に水の淀みが発生し、ここに気泡が一時的に滞留してしまうことがある。すなわち、センサ10の超音波入出力面11と被検体Sとの間に、気泡が滞留してしまうことがある。
【0060】
そこで、本実施形態では、超音波伝播室40の上流側に均圧室35を設け、受入口32a,32bからの水の分散化を図り、超音波伝播室40の周面の周方向での各位置から、この超音波伝播室40に流入する水の流量の均等化を図っている。しかも、本実施形態では、均圧室35の第一均圧部35a及び第二均圧部35bに対する水の流入位置を分散化しているので、超音波伝播室40の周面の周方向での各位置から、この超音波伝播室40に流入する水の流量の更なる均等化を図ることができる。このため、超音波伝播室40内に水の淀みが発生し難く、仮に、水の淀みが発生したとしても極めて小さい淀みになる。この結果、本実施形態では、脱気器8や気泡除去フィルタ9で除去できなかった気泡等が存在していたとしても、この気泡は、超音波伝播室40内で滞留することなく、スムーズに被検体側開口42から気泡を排出することができる。
【0061】
また、本実施形態では、超音波伝播室40の(+)Z側への延長上に位置する気泡Bは、図2に示すように、被検体側開口42の回りに形成されている気泡滞留凹部25内において、ウェッジ20の走査方向への移動により、このウェッジ20に対して相対的に走査方向と反対側に直ちに移動してしまい、センサ10の超音波入出力面11と被検体Sとの間には気泡が存在しなくなる。なお、超音波伝播室40の(+)Z側への延長上に位置する気泡は、被検体側開口42から排出されたものや、ウェッジ20の被検体対向面22と被検体Sの表面との間に噛み込まれた気体が気泡として、センサ10の超音波入出力面11と被検体Sとの間に移動してきたものである。
【0062】
以上のように、本実施形態では、水中の気泡の排除を促進させることができる。
【0063】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る第二実施形態としての超音波探傷システムについて、図5〜図7を用いて説明する。
【0064】
本実施形態の超音波探傷システムは、第一実施形態の超音波探傷システムに対して、ウェッジのみが異なっている。よって、以下では、本実施形態の超音波探傷システムのウェッジ20Aについて説明する。
【0065】
本実施形態のウェッジ20Aには、第一実施形態と同様、センサ装着面21、被検体対向面22、気泡滞留凹部25A、供給部30A、接続フランジ29が形成されている。供給部30Aは、受入口32a,32bと、超音波伝播室40と、均圧室35と、を有している。また、このウェッジ20Aも、第一実施形態と同様、被検体対向面22が形成されている被検体側ウェッジフレームFaと、センサ装着面21が形成されているセンサ側ウェッジフレームFbと、両者を接続するネジ(不図示)とを有して構成されている。
【0066】
本実施形態では、超音波伝播室40と均圧室35との境界部には、仕切り壁45が形成されている。具体的には、均圧室35の第一均圧部35aと超音波伝播室40との境界部と、均圧室35の第二均圧部35bと超音波伝播室40との境界部とには、仕切り壁45が形成されている。すなわち、超音波伝播室40の周面のうちの(+)Y側の周面に沿った位置と、超音波伝播室40の周面のうちの(−)Y側の周面に沿った位置とに、仕切り壁45が形成されている。この仕切り壁45の超音波伝播室40側の壁面46は、この仕切り壁45を基準にして、(+)Z側及び(−)Z側に位置する超音波伝播室40の周面44と面一である。この仕切り壁45は、センサ側ウェッジフレームFbの一部として形成されており、音響インピーダンスの値が水の音響インピーダンスに近いナイロン等の樹脂で形成されている。なお、仕切り壁45は、被検体側ウェッジフレームFaの一部として形成してもよいし、ウェッジフレームFa,Fbとは別体として形成してもよい。
【0067】
各仕切り壁45には、Y方向に貫通する、つまり、各均圧部35a,35bから超音波伝播室40に貫通する多数の貫通孔47が形成されている。多数の貫通孔47は、X方向に等間隔で一列に並んでおり、Z方向では、センサ側開口41と被検体側開口42とのうち、被検体側開口42側に寄っている。貫通孔47の孔径は、例えば、4mm程度である。
【0068】
均圧室35の第一均圧部35a及び第二均圧部35b内には、多孔板48及び仕切り板49が設置されている。多孔板48は、各均圧部35a,35b内を(±)Y方向に仕切る板に、Y方向に貫通する多数の孔を形成したものである。この孔の孔径は、例えば、2mm程度である。この多孔板48は、Y方向において、各均圧部35a,35bに水を流入させるための均圧室流入口33a,33bの位置よりも、超音波伝播室40側に位置している。また、仕切り板49は、各均圧部35a,35b内をX方向に均等に3つに仕切る板である。この仕切り板49によりX方向に仕切られた各空間のX方向のほぼ中間に、均圧室流入口33a,33bが存在する。多孔板48及び仕切り板49は、いずれも、例えば、ステンレスや樹脂等で形成されている。なお、多孔板48は、各均圧部35a,35bに複数枚ずつ設けてもよい。また、仕切り板49は、均圧室流入口33a,33bの数量により適宜変更できる。また、前述した仕切り壁45及び多孔板48のうちの少なくとも一方を設けておいてもよい。
【0069】
気泡滞留凹部25Aの側壁面のうちで、第一走査方向である(+)Y方向側の側壁面27は、(+)Z側に向かうに連れて、第一走査方向である(+)Y方向側に曲がる曲面を成している。また、第二走査方向である(−)Y方向側の側壁面27は、(+)Z側に向かうに連れて、第二走査方向である(−)Y方向側に曲がる曲面を成している。なお、気泡滞留凹部25Aの(±)Y方向側の側壁面27の(+)Z側の部分は、曲面を成していなくてもよく、(+)Z側に向かうに連れて、被検体側開口42から遠ざかる向きに傾斜しているテーパ面であってもよいし、テーパ面と曲面とを滑らかに繋いだ面でもよい。
【0070】
被検体対向面22上には、被検体対向面22と被検体Sの表面との間に、気泡滞留凹部25Aからの気泡が通れる隙間を確保するための隙間確保部50が設けられている。この隙間確保部50は、被検体対向面22上であって、気泡滞留凹部25Aから(+)Y方向側に離れた位置と、気泡滞留凹部25Aから(−)Y方向側に離れた位置とに設けられている。
【0071】
各隙間確保部50は、図7に示すように、いずれも、(−)Z側から見た形状が二等辺三角形形状を成している。この間隔確保部50で、被検体対向面22から立ち上がっている側面のうち、二等辺に対応する二つの側面(第一側面、第二側面)52,53が互いに交差して形成される角、つまり、この二等辺三角形の頂角51は、鋭角である。この隙間確保部50は、二等辺三角形の中心軸がY方向を向き、且つ隙間確保部50中でその頂角51が最も気泡滞留凹部25に近くなっている。この隙間確保部50は、樹脂粘着テープを二等辺三角形状に切って、これを被検体対向面22上に張り付いたものでもよいし、二等辺三角形形状の硬質樹脂片を被検体対向面22上に固定したものであってもよい。また、被検体側ウェッジフレームFaと一体成形したものであってもよい。
【0072】
また、本実施形態の被検体対向面22には、親水性を高める親水処理が施されている。具体的な親水処理の方法としては、例えば、アルコール、水溶性ポリマー、界面活性剤を含む噴射剤を被検体対向面22にスプレーする方法、メチルシリケート等の親水性材を被検体対向面22にコーティングする方法等がある。
【0073】
以上、本実施形態でも、第一実施形態と同様、ウェッジ20Aに、複数の受入口32a,32b、均圧室35、気泡滞留凹部25Aを形成しているので、水中の気泡の排除を促すことができる。
【0074】
さらに、本実施形態では、均圧室35内に多孔板48を配置し、均圧室35と超音波伝播室40との境目に多数の貫通孔47が形成されている仕切り壁45を設けたので、均圧室35内のX方向の各位置での流速分布、均圧室35から超音波伝播室40に流入するX方向の各位置での流速分布を均一化でき、X方向に伸びている超音波伝播室40内でのX方向の各位置での流速分布の均一化を図ることできる。このため、本実施形態では、第一実施形態よりも、超音波伝播室40内に水の淀みが発生し難くなり、仮に、水の淀みが発生したとしても極めて小さい淀みになり、気泡は、超音波伝播室40内で滞留することなく、スムーズに被検体側開口42から排出することができる。
【0075】
なお、仕切り壁45の超音波伝播室40側の壁面46は、前述したように、超音波伝播室40の周面44と面一であり、しかも、この仕切り壁45は、センサ側ウェッジフレームFbの一部として、音響インピーダンスの値が水の音響インピーダンスに近いナイロン等の樹脂で形成されているため、本実施形態では、仕切り壁45を設けているものの、仕切り壁45の超音波伝播室40側の壁面46での超音波の反射による検知精度の低下を抑えることができる。また、この仕切り壁45の貫通孔47は、センサ側開口41側に比べてセンサ感度の低い被検体側開口42側に寄っているため、この貫通孔47での超音波の反射による検知精度の低下を抑えることができる。
【0076】
また、本実施形態では、気泡滞留凹部25Aの(±)Y方向側の側壁面27を曲面で形成しているため、図6に示すように、この気泡滞留凹部25A内に溜まった気泡Bが被検体対向面22と被検体Sの表面との間の隙間に入り込み易くなり、気泡滞留凹部25A内の気泡Bの排出を促すことができる。さらに、本実施形態では、被検体対向面22と被検体Sの表面との間の隙間が、隙間確保部50により気泡の通れる隙間になっている上に、この隙間確保部50の形状が、図7に示すよう、第一走査方向である(+)Y方向、及び第二走査方向である(−)Y方向への気泡Bの移動に抵抗の少ない形状になっており、しかも、被検体対向面22に親水性処理が施されているため、気泡滞留凹部25Aから、被検体対向面22と被検体Sの表面との間に入ってきた気泡Bの排出を促すことができる。
【0077】
なお、以上の実施形態では、超音波の伝播媒質がいずれも水であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、オイル等であってもよい。また、受入口32a,32bは、ウェッジ20,20Aの底面に限られず、他の位置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1:超音波探傷装置、8:脱気器、10:超音波探傷センサ、11:超音波入出力面、20,20A:ウェッジ、21:センサ装着面、22:被検体対向面、25:気泡滞留凹部、30,30A:供給部、31a,31b:貫通孔、32a,32b:受入口、33a,33b:均圧室流入口、35:均圧室、35a:第一均圧部、35b:第二均圧部、40:超音波伝播室、41:センサ側開口、42:被検体側開口、45:仕切り壁、47:貫通孔、48:多孔板、49:仕切り板、50:隙間確保部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探傷センサが装着され、該超音波探傷センサと被検体との間に超音波の伝播媒質を供給する超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記被検体の表面に対向する被検体対向面と、
前記被検体の表面から遠ざかる向きに、前記被検体対向面から凹んでいる気泡滞留凹部と、
前記超音波探傷センサが装着されるセンサ装着面と、
前記伝播媒質を前記被検体の表面に供給する供給部と、
が形成され、
前記供給部は、前記伝播媒質を受け入れる受入口と、前記センサ装着面から前記気泡滞留凹部の底面に貫通していると共に、該受入口と連通し、該受入口で受け入れられた前記伝播媒質で満たされる超音波伝播室と、を有し、
前記気泡滞留凹部は、前記超音波伝播室から該気泡滞留凹部に臨む被検体側開口の縁のうち、前記センサ装着面に装着された前記超音波探傷センサの予め定められた走査方向と反対側の反走査方向側縁の全縁から該反対側に広がっている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記超音波探傷センサの前記予め定められた走査方向として、第一走査方向と、該第一走査方向と正反対の向きの第二走査方向とがあり、
前記気泡滞留凹部は、前記被検体側開口の縁のうち、前記第一走査方向側の全縁から該第一走査方向側に広がっていると共に、該被検体側開口の縁のうち、前記第二走査方向側の全縁から該第二走査方向側に広がっている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記気泡滞留凹部の側壁面のうちで、前記走査方向とは反対側の側壁面は、該気泡滞留凹部の底面から前記被検体対向面側へ向かうに連れて、前記反対側へ次第に向かう面を成している、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記供給部は、前記受入口及び前記超音波伝播室と連通し、該超音波伝播室の周面であって、少なくとも、前記走査方向側の周面部分及び前記反対側の周面部分に沿って広がっている均圧室を有する、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記均圧室と前記超音波伝播室との境界部には、仕切り壁が形成され、該仕切り壁には、該均圧室から該超音波伝播室に貫通し、該超音波伝播室の周面の周方向に並んでいる多数の貫通孔が形成されている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記仕切り壁の前記超音波伝播室側の面は、該超音波伝播室の周面と面一である、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記多数の貫通孔の前記超音波伝播室側の開口は、前記超音波伝播室から前記センサ装着面に臨むセンサ側開口と前記被検体側開口とのうち、該被検体側開口側に寄った位置に形成されている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか一項に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記均圧室には、前記受入口からの前記伝播媒質が前記超音波伝播室へ流入する向きに貫通する孔が形成されている多孔板が配置されている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記供給部は、複数の前記受入口を有する、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項10】
請求項4から8のいずれか一項に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記均圧室は、前記超音波伝播室の周面であって、前記走査方向側の周面部分に沿って広がっている第一均圧部と、該走査方向側とは反対側の周面部分に沿って広がっている第二均圧部と、を有し、
前記供給部は、前記第一均圧部に前記伝播媒質を流入させる前記受入口としての複数の第一受入口を有すると共に、前記第二均圧部に該伝播媒質を流入させる前記受入口としての複数の第二受入口を有し、
複数の前記第一受入口からの前記伝播媒質を前記第一均圧部に流入させる複数の均圧室流入口、及び、複数の前記第二受入口からの前記伝播媒質を前記第二均圧部に流入させる複数の均圧室流入口は、前記超音波伝播室の周面の周方向に並んで形成されている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記被検体対向面上であって、前記気泡滞留凹部から離れた位置には、該被検体対向面と前記被検体の表面との間に前記伝播媒質中の気泡が通れる隙間を確保するための隙間確保部が形成されている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記隙間確保部には、前記被検体対向面から立ち上がっている第一側面と第二側面とが形成され、
前記第一側面と前記第二側面とは互いに交差し、交差している箇所が鋭角な角を形成し、
前記隙間確保部は、該隙間確保部の部分のうちで前記角が前記被検体側開口に最も近い、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の超音波探傷用ウェッジにおいて、
前記被検体対向面には、前記伝播媒質との親和性を高める親和性向上処理が施されている、
ことを特徴とする超音波探傷用ウェッジ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の超音波探傷用ウェッジと、
前記超音波探傷用ウェッジの前記センサ装着面に装着される前記超音波探傷センサと、
を備えていることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項15】
請求項14に記載の超音波探傷装置と、
前記伝播媒質の供給源と前記超音波探傷用ウェッジの前記受入口とを接続する伝播媒質供給ラインと、
前記伝播媒質供給ライン中に設けられ、前記供給源からの前記伝播媒質中の気体を除く脱気器と、
を備えていることを特徴とする超音波探傷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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