説明

路面の凍結防止方法及び路面センサー

【課題】 路面の凍結を防止する方法であって、供給熱量が必要最小限とする凍結防止方法の提供。
【解決手段】路面と同等の表面熱放射量を有する同構造の模擬路面を複数設けて熱量計測盤A,B,Cとし、各々の熱量計測盤A、B、Cを異なった温度に設定すると共に表面温度を一定に保つように熱量を供給する。各々に要した単位時間毎の熱量を基に温度と熱量の関係をグラフ化して求めた延長曲線において供給する熱量がゼロになる架空の熱量計測盤の温度を求め、実際の路面表面温度を非接触で測定した値をその延長曲線に対応させて得た熱量を路面表面が路盤下を含めた他から供給されている全熱量として計測し、これを基に不足する熱量を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
路面と同等の表面熱放射量を有する同構造の複数の模擬路面を設けて熱量計測盤とし、各々の表面温度を一定に保つように異なった温度を設定して熱量を供給し、各々に要した単位時間毎の熱量を基に温度と熱量の関係をグラフ化して求めた延長曲線において供給する熱量がゼロになる架空の熱量計測盤の温度を求めるとともに、実際の路面表面温度を比接触で測定した値をその延長曲線に対応させて得た熱量を路面表面が路盤下を含めた他から供給されている全熱量として計測し、凍結防止に必要な熱量を制御する方法と、路面に撒布する凍結防止剤の濃度を決定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(路面凍結によるスリップ事故発生の原因)
凍結によるスリップ事故の大半は夜間に発生し、その時の気象状況は放射冷却によって路面表面が気温以下に低下して氷点下になる場合が多く、特に橋梁部は路盤からの熱供給を受けられないので路盤を有する路面より温度が下がり易い状況にある。路盤を有する路面であっても日中の太陽熱を受けにくい日影部は気温より路面表面温度が低くなり、橋梁部と同じ現象が発生する。
【0003】
路面温度が気温より低下する場合、路温が0℃以上の時は空気中の水分が付着して結露状態になり、路面が氷点下で水分が付着する場合は霜になる。アスファルト面に結露した水分が氷結した場合は、路面がアスファルトと同じ色の黒い状態で氷結するのでドライバーは凍結を認識し難く、道路関係者はブラックアイスと言って恐れている。
【0004】
路面に霜が付着した場合は路面が白くなるのでドライバーは積雪と誤認してスリップし易い状態の認識は容易であるが、カーブやブレーキ操作等で車輌の等速直線運動を阻害する要因が加わるとスリップによる事後が発生する。また、散水融雪等で人為的に路面へ水を撒く場合は散水後に路面に残留する水が氷結してブラックアイス状態になる。
【0005】
また、積雪した路面は日中の太陽輻射熱やプラスの気温で積雪表面が解けて滑り易くなり、夜間の放射冷却等で積雪表面の水分が氷結すると圧雪した凍結路面になりスリップ事故が発生し易い。従来、これらの凍結を防止する方法として、路面に熱を加える設備を設けるか、又は凍結防止剤を撒布している。
【0006】
(路面に熱を加えて凍結を防止する現状技術の問題点)
路面に熱を加えて凍結を防止する方法は、一般的に路面表面下約10cmに埋設したヒーターで加温し、そして路面温度を同じ深さに埋設した温度感知器で7〜10℃前後を保つように制御されている。 熱を加えて凍結を防止する設備は電熱量に換算すると1m2当り約150〜250Wの範囲で施工している場合が多い。
【0007】
これらの設備では路面下の温度を一定に保つ為、気象変動による路面表面の熱放出量と無関係に熱供給を行なう事になり、表面温度が必要以上に上昇する時間が長く無駄な熱量を路面に与えている。また、路面表面から放出する熱量が供給量を超える場合は表面温度が氷点下になる状況を判断する機能を持ち得ないので、氷結でスリップし易い状態になっても判断できないといった問題もある。
【0008】
これらの課題を解決する既存技術に特許第2840919号に係る「降雪融解熱量及び凍結防止熱量の連続計測制御一体化装置、及び凍結防止制御方法」があるが、この方法は模擬路面の熱量計測盤に積雪させる必要があることから、凍結を計測する温度は雪が解けない氷点下1℃程度に設定する必要があり、凍結防止熱量として正確な熱量を求められない欠点を有す。更に、実際の路面温度を計測していないので実路面と熱量計測盤の関係を無視した方法と言える。また、この方法による凍結防止に必要な熱量値は路面の水分が保有する潜熱量を含めた値で氷結後の氷点下1℃を保つ熱量とも言え、凍結防止熱量としての正確さに欠けている。
【0009】
(凍結防止剤を撒布して凍結を防止する現状技術の問題点)
凍結防止剤散布による凍結防止方法は、凍結防止剤が路面に滞留する水に溶けた水溶液の氷点降下を利用するもので溶液濃度に依存し、例えば、塩化カルシウム溶液10%の凍結温度は約マイナス6℃、15%では約マイナス11℃、20%では約マイナス18℃となる。
【0010】
また、積雪路面への凍結防止剤散布は、滑らかで滑り易い積雪面を氷点降下で積雪表面を解かして高濃度溶液が混じったザラザラ状態の雪面を形成し、冬用タイヤで制動摩擦を得るものである。積雪面は放射冷却や気温・周辺物体からの熱放射等を含め、路面が受ける全ての熱収支によって到達する温度は気温より低くなる場合が多くあり、凍結防止剤撒布でこの温度より低い状態にして雪面のザラザラ状態を確保している。
【0011】
積雪の無い路面や積雪面への凍結防止剤散布量を決定するにおいて、従来技術では放射冷却や気温・周辺物体からの熱放射等を含め路面が受ける全ての熱収支によって到達する表面温度が計測できないので、必要以上に凍結防止剤を撒布する状態にある。ちなみに、凍結防止剤の撒布判断は長年の経験で得た人の感に頼り、撒布量は1m2当り30〜50gを目安に行っている場合が多く、路面に積雪が無い状態を基準に溶液濃度で約10%を目標として凍結を防止している。
【特許文献1】特許第2840919号に係る「降雪融解熱量及び凍結防止熱量の連続計測制御一体化装置、及び凍結防止制御方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
路面に熱を加えて凍結を防止する方法では、放射冷却や気温・周辺物体からの熱放射、並びに路盤から供給される熱量を含めた路面が自然に受ける全ての熱収支によって到達している表面温度を知り、路面表面温度を凍結しない0℃よりやや高い温度に保つに要する熱量を演算して必要な熱量を加えることにより無駄のない理想的な凍結防止方法が求められている。
【0013】
また、従来から行っている人の感に頼って定性的に凍結防止剤を撒布する方法では、積雪の無い路面や積雪路面が放射冷却や気温・周辺物体からの熱放射、並びに、路盤から供給される熱量を含めた路面が受ける全ての熱収支によって到達する表面温度を知り、その温度に対応する濃度の決定が出来ず、時には過度に撒布し、時には不足して事故が生じる現状の対処方法の改善が求められている訳で、本発明はこれら問題点の解決を図る為の凍結防止方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
路面に熱を加えて凍結を防止する方法と凍結防止剤撒布での凍結防止方法の2つの課題を解決するに当り、路面と同等の表面熱放射量を有する同じ部品構成で製作した複数の模擬路面を設けて熱量計測盤とし、各々の表面温度を一定に保つように異なった温度を設定して熱量を供給し、各々に要した単位時間毎の熱量を基に温度と熱量の関係をグラフ化して求めた延長曲線において供給する熱量がゼロになる架空の熱量計測盤の温度を求める。
【発明の効果】
【0015】
そこで、路面に熱を加えて凍結を防止する方法の場合、計測時間毎に得られるこの延長曲線を基に、実際の路面表面温度を凍結しない目標温度、例えば1.0℃より下回り始めた場合は、その温度を延長曲線に対応させて1.0℃を保つ為に不足する熱量を供給する制御を行う。従って、必要最小限の熱量にて凍結防止を行うことが出来る。一方、凍結防止剤撒布による凍結防止方法の場合、延長曲線で得た熱量がゼロになる架空の熱量計測盤の温度は、その時点の気象がもたらす路面の最低温度に近似するので、その温度に対応する凍結防止剤の溶液濃度が決定できる。従って、凍結防止剤を必要最小限の撒布量とすることが出来る。
【実施例】
【0016】
図1は熱量計測盤の構成を示し、模擬路面材1、熱電対2、電気発熱体3、及び断熱材4で構成している。図2はセンサーの構成を示したもので、該センサーは3個の熱量計測盤A・B・Cを有し、熱量計測盤A・B・Cの熱電対で測定する基準温度を兼ねた白金測温体を用いた気温計測器5を設け、並びに、熱量供給と信号演算器6、それに非接触路温計7を一体化して構成している。
【0017】
図3は、熱量計測盤A・B・Cで5分間計測した値を1 m21分単位に換算して各々の熱量と温度の関係をグラフに表して延長曲線を描いたものである。熱量計測盤Aの設定温度は1℃で1.1kcal/ m2分、Bは3℃で2.0kcal/ m2分、Cは5℃で3.4kcal/ m2分を計測している。そこで、これら3点を結んで延長曲線を描き、熱量がゼロになる温度を求めたところ約−3℃である。熱量を計測した5分間の平均気温は−1℃、非接触で測定した路面温度の平均は2℃で、延長曲線から路面は約1.5kcal/ m2分の熱供給を得ていることが解り、気温が−1℃と路温
より低いので、熱量の殆どは路盤から供給されていることが解る。
【0018】
ところで、路面に熱を加える凍結防止設備において、路面温度を3℃に設定した場合を想定すると、不足する熱量は(2.0kcal/ m2分)−(1.5kcal/ m2分)=0.5kcal/ m2分 として求まり、この熱量を自動制御で加えれば約3℃を保つことが可能となり、路盤から自然に供給される熱量を有効に利用できる。
【0019】
一方、凍結防止剤を撒布する場合、延長曲線から熱量がゼロになる温度が約−3℃であるから、路温は−3℃以下にはならない事が解り−3℃で氷結しない溶液濃度を求めることが出来る。ちなみに、塩化カルシウム溶液の-3℃の氷結濃度は約6%である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】熱量計測盤構成の具体例。
【図2】本発明のセンサー構成図。
【図3】熱量計測盤ABCで得られる延長曲線グラフ。
【符号の説明】
【0021】
1 模擬路面材
2 熱電対
3 電気発熱体
4 断熱材
5 気温測定器
6 信号演算器
7 非接触路温計













【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と同等の表面熱放射量を有する同構造の模擬路面を複数設けて熱量計測盤とし、各々の熱量計測盤を異なった温度に設定すると共に表面温度を一定に保つように熱量を供給し、各々に要した単位時間毎の熱量を基に温度と熱量の関係をグラフ化して求めた延長曲線において供給する熱量がゼロになる架空の熱量計測盤の温度を求め、実際の路面表面温度を非接触で測定した値をその延長曲線に対応させて得た熱量を路面表面が路盤下を含めた他から供給されている全熱量として計測し、これを基に不足する熱量を供給することを特徴とする路面の凍結防止方法。
【請求項2】
路面と同等の表面熱放射量を有する同構造の模擬路面を複数設けて熱量計測盤とし、各々の熱量計測盤を異なった温度に設定すると共に表面温度を一定に保つように熱量を供給し、各々に要した単位時間毎の熱量を基に温度と熱量の関係をグラフ化して求めた延長曲線において供給する熱量がゼロになる架空の熱量計測盤の温度を求め、該温度を路面が到達する最低温度に定めることでこの温度で氷結しない凍結防止剤の水溶液濃度を求めて撒布することを特徴とする路面の凍結防止方法。
【請求項3】
路面の熱放出量を非接触で測定して、路面が到達する最低温度及び路面凍結防止に必要な供給熱量を求めることが出来る路面センサーにおいて、複数の熱量計測盤A,B,C・・を有し、該熱量計測盤A,B,C・・は模擬路面材、熱電対、電気発熱体、及び断熱材で構成し、熱電対で測定する基準温度を兼ねた白金測温体を用いた気温計測器を設け、並びに、熱量供給と信号演算器、それに非接触路温計を一体化して構成したことを特徴とする路面センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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