説明

路面復旧装置

【課題】 溝掘削・整正からアスファルト等の舗装材の均しまでを一つの装置で行うことができる路面復旧装置を提供する。
【解決手段】 復旧予定路面に沿って走行する走行体に設けられた回動自在なアームと、このアームに取り付けられた基板と、この基板に高さ位置調整可能に取り付けられ、前記砕石の掘削・整正と前記舗装材の均しを行う掻土板と、前記掻土板の高さ位置を、掘削・整正する溝の深さに応じた高さ位置と、前記舗装材を均す高さ位置との間で調整自在にする調整機構と、前記掻土板の少なくとも一方に配置して前記基板に取り付けられ、前記掻土板が掻き出した砕石又は舗装材が前記掻土板の側方に流出しないようにする側板と、前記側板の下端に取り付けられ、地表面に接する案内部材とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体等を埋設した砕石の表面を掘削・整正して所定深さの溝を形成し、この溝内に所定高さで舗装材を均す路面復旧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路に形成した溝内にガス管や水道管、下水管、電話線等の管体を埋設した後は、前記溝内に砂,土砂,砕石を投入して前記管体を埋め戻し、アスファルト等の舗装材を敷設して路面の復旧を行っている。
図15は、上記したような路面復旧作業の手順を説明する概略図で、前記溝と直交する方向に道路を断面した正面図である。まず、図15(a)に示すように、地表面(道路)1を掘削・整正して溝1aを形成し、この溝1aの底部に管体2を配置する。この後、図15(b)に示すように、砕石3を溝1a内に投入して管体2を埋設する。図15(c)に示すように、砕石3を転圧した後、図15(d)に示すように、砕石3の表面を掘削・整正して所定深さの溝3aを形成する。
【0003】
そして、図15(e)に示すように、この溝3aに舗装材であるアスファルト4を投入し、地表面から予め確保した高さでアスファルト4を断面台形状に均す。最後に、ローラ等を使って、図15(f)に示すようにアスファルト4の表面が地表面1と同じ高さになるまで転圧する。
上記の工程のうち、(d)における溝3aは主としてパワーショベル等の作業機械を使って行っているが、位置や深さ決めに熟練を要し時間がかかり、(e)におけるアスファルト4の均しはスコップやレーキを使った手作業で行っているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の道路復旧作業は、厚さや平坦性を高度に仕上げるのは熟練者でも容易ではなく、時間や労力がかかってコスト的な問題がある上、資源上の無駄も多く、仕上がった路面に過度の凹凸があると走行時に不快感を与えるという問題がある。さらに、作業による交通規制が長時間に及ぶと、物流に悪影響を与えるという問題がある。
ところで、特許文献1には、履帯間よりも狭幅の排土板を利用して、溝掘削・整正を可能にしたパワーショベル等の作業機械が提案されている。
【0005】
この文献に記載の技術は、溝掘削・整正の作業負担と作業時間を大幅に削減することができるものであり、注目に値する提案である。しかし、排土板に応じた固定幅の溝しか掘削・整正することができず、パワーショベル等に設けられた排土板をそのまま用いているため、パワーショベル等では追随できない凹凸のある路面では、掘削・整正された溝の深さが不均一になることがあるという問題がある。また、上記文献に記載の作業機械は、溝掘削・整正しか行うことができず、アスファルトの均しは人手に頼らざるを得ないという欠点がある。
【0006】
特許文献2に記載の舗装用ユニットフィニッシャは、小型で狭隘な箇所へも入り込んできめ細かい舗装作業を行うことができるようにしたもので、この作業機械によれば、アスファルトの均し作業を自動化することができる。
しかし、この文献に記載されたような専用の作業機械は大掛かりかつ高価で、小規模の道路復旧作業に使用すると却ってコスト高になるという問題がある。
【0007】
特許文献3に記載の工事用路面均し装置は、削溝用の均し板と、アスファルト均し用のブレードと、アスファルトの両面を面取り成形する面取りとを有し、溝掘削・整正からアスファルト等の舗装材の均しを別々の装置で行うことができるものであるが、特許文献1と同様にパワーショベル等に設けられた排土板をそのまま用いたり、ダンプカー等で牽引したりしているため、パワーショベルやダンプカー等では追随できない凹凸のある路面では、掘削・整正された溝の深さやアスファルトの均し面が不均一になることがあるという問題は解決することができない。
【0008】
また、これら文献に記載の技術では、舗装材を均した後に、そのまま転圧を行っているため、復旧路面の表面の平滑性が低く、品質が低いという問題がある。このような問題は、均した後に、舗装材の表面を加熱・加圧し、転圧をすれば解決できるが、工程が増えて、コスト高になるという問題がある。
【特許文献1】特開平9−177119号公報
【特許文献2】特開2002−47612号公報
【特許文献3】特開2002−69921号公報
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、第一の目的は、路面の形状に精密に追随させた溝掘削・整正からアスファルト等の舗装材の均しまでを一つの装置で行うことができ、管路工事等の後の道路復旧作業が容易になって短時間かつ低コストで行うことができ、熟練者でなくても仕上げを高精度に行うことのできる路面復旧装置の提供を目的とする。
第二の目的は、表面の平滑性が高い高品質の復旧路面を、工程数を増やすことなく、簡単かつ低コストで得ることのできる路面復旧装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、管体等を埋設した砕石の表面を掘削・整正して所定深さの溝を形成し、この溝内に投入された舗装材を所定の高さ及び形状に均す路面復旧用の路面復旧装置であって、復旧予定路面に沿って走行する走行体に設けられた昇降自在又は回動自在なアームと、このアームに取り付けられた基板と、この基板に高さ位置調整可能に取り付けられ、前記砕石の掘削・整正と前記舗装材の均しを行う掻土板と、前記掻土板の高さ位置を、掘削・整正する溝の深さに応じた高さ位置と、前記舗装材を均す高さ位置との間で調整自在にする調整機構と、前記掻土板の少なくとも一方に配置して前記基板に取り付けられ、前記掻土板が掻き出した砕石又は舗装材が前記掻土板の側方に流出しないようにする側板と、地表面に接するように前記アーム,前記基板又は前記側板に取り付けられた案内部材と、この案内部材の前記掻土板近傍に設けられ、前記案内部材を前記地表面に弾性的に押し付ける押圧点とを有する構成としてある。
【0011】
本発明の路面復旧装置は、例えば、パワーショベル等の走行体に設けられた排土板取り付け用の回動自在なアームにダンパー機能を備えさせて、取り付けることができる。ダンパー機能を備えているのであれば、油圧シリンダ又はエアシリンダ等で昇降されるアームの先端に取り付けてもよい。ゴムやばねを介して、アームに路面復旧装置を取り付けるようにしてもよい。前記掻土板の高さ位置を掘削・整正する溝の深さに応じた高さ位置に調整し、砕石に食い込ませた状態で走行体を走行させることで、所定の深さの溝を掘削・整正することができる。また、前記掻土板の高さ位置を、前記舗装材を均す高さ位置に調整し、舗装材を投入した前記溝に沿って走行体を走行させることで、前記舗装材を所定の高さに均すことができる。
本発明の路面復旧装置では、前記掻土板近傍の押圧点で前記案内部材を弾性的に地表面に押し付けつつ移動するので、地表面の凹凸に従って前記掻土板が上下しつつ、一定深さの溝形成することができるとともに地表面の凹凸に従った一定高さに舗装材を均すことができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記側板の内側に着脱自在に取り付けられ、前記側板の移動とともに前記舗装材の側面を所定形状に形成する成形部材を有する構成としてある。この構成によれば、舗装材を投入した前記溝に沿って走行体を走行させることで、前記舗装材を所定の高さ及び所定の形状に均すことができる。
前記掻土板は、掘削・整正する溝に応じて、その幅を変更できるようにするのがよい。掻土板を基板に対して交換可能としてもよいが、幅調整機構を設けることで、幅変更の作業が容易になる。例えば、請求項3に記載するように、前記掻土板が、前後に重ね合わせた表板及び裏板と、前記表板又は前記裏板の上端に設けられ、前記裏板又は前記表板と係合しつつ前記表板又は前記裏板を吊り下げるスライドガイドとを有し、前記スライドガイドで案内しながら前記表板と前記裏板とを幅方向に相対的にずらすことで、前記掻土板の幅寸法を調整可能とするとよい。また、基板に対する側板の取り付け位置も、前記前記掻土板の幅や高さに応じて調整可能とするとよい。このようにすることで、あらゆる幅の溝形成に側板の位置を対応させることが可能になる。
なお、前記案内部材の厚みは、請求項4に記載するように、前記地表面から前記舗装材の均し高さよりも大きくするとよい。このようにすることで、常時一定の押圧力を案内部材に付与しつつ、溝の掘削・整正及び舗装材の均しを行うことができる。
【0013】
本発明の他の実施形態は、請求項5に記載するように、前記掻土板が、前後に重ね合わせた表板と裏板とを有するとともに、前記表板と前記裏板との重ね合わせ角度が変更可能である構成としてある。
このようにすることで、アスファルトの面に傾斜角をつけることができる。
この場合、調整機構を、請求項6に記載するように、前記表板と前記裏板とを昇降させる昇降手段と、この昇降手段と前記表板及び前記裏板とを点接触状態又は線接触状態で支持する支持手段とを有する構成とするとよい。
また、本発明のさらに他の実施形態では、請求項7に記載するように、前記側板の先端又は前記案内部材の先端に、前記地表面上の土砂や砕石,舗装材を前記側板の間に取り込む第一の導入手段を設けた構成としてある。
このようにすることで、地表面上にこぼれた土砂や砕石,舗装材を、砕石の掘削・整正作業や舗装材の均し作業を行いながら、側板の間に取り込むことができる。
また、請求項8に記載するように、前記側板に、前記舗装材を前記成形部材の内側に向けて導入する第二の導入手段を設けてもよい。
このようにすることで、より多くの舗装材を成形部材の内側に取り込むことができ、均したときの舗装材の密度をより高めることができる。
【0014】
本発明の第二の目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、前記掻土板よりも後方に、前記掻土板により均された前記舗装材の表面を滑らかにする加熱コテを設けた構成としてある。
この場合、請求項10に記載するように、前記加熱コテの高さ位置を調整する高さ調整手段を設けて、舗装材の均し高さに応じて加熱コテの高さ位置を調整できるようにするとよい。
また、舗装材に加熱コテを押し付けながら前記加熱コテを前進させると、加熱コテの前方に舗装材の隆起が発生しようとする。このような隆起の発生は、
請求項11に記載するように、前記加熱コテの前記舗装材に押し付けられる部分を円弧状に形成し、かつ、前記加熱コテをアームや走行体のフレームに対して揺動自在に設けることで、抑制することができる。
さらに、請求項12に記載するように、前記加熱コテが、幅方向に分割された少なくとも二つのコテ本体を有し、各コテ本体が互いに傾斜角度調整可能に連結されたものであってもよい。
また、前記加熱コテは、請求項13に記載するように、幅方向に位置調整可能とするとよい。
このようにすることで、舗装材の均し幅が変化しても、これに応じて、加熱コテの押圧ポイントを舗装材の最適位置に常に位置させることができる。また、例えば、下向き「く」の字状に屈曲・傾斜した均し面の傾斜角変化位置に応じて、左右のコテ本体の位置決めを行うことができる。
なお、請求項9〜請求項13に記載の加熱コテは、請求項1〜請求項8に記載の路面復旧装置を前提としているが、請求項1〜8に記載の路面復旧装置以外の路面復旧装置にも適用が可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、管体埋設工事等において、溝掘削・整正から舗装材の均しまでを一台の路面復旧装置で行うことができ、これら工事の後の路面復旧作業を短時間かつ低コストで行うことができる。また、熟練者でなくても、仕上げを高精度に行うことができる。
さらに、昇降自在又は回動自在なアームにダンパー機能を備えさせて路面復旧装置を取り付け、かつ、掻土板近傍の押圧点で案内部材を地表面に押し付けることで、走行体が追随できないような路面の凹凸に前記アームが追随して昇降又は回動し、多少の凹凸がある路面であっても一定深さの溝を掘削・整正することができるとともに一定高さに舗装材を均すことができる。
【0016】
また、前記表板と前記裏板との重ね合わせ角度を変更可能とすることで、舗装材の均しを行う際に、前記舗装材の表面に所望の角度を付けることができる。
さらに、第一の導入部材を設けることで、地表面上の異物を除去して、前記異物に起因する舗装材の均し面の凹凸や溝の底面の凹凸を無くすことができ、より品質の高い路面復旧が可能になる。また、第二の導入部材を設けることで、舗装材を高密度で隙間なく均すことが可能になり、より品質の高い路面復旧が可能になる。
【0017】
また、請求項9〜13に記載の加熱コテを設けることで、舗装材を均した直後に舗装材の表面を加熱・加圧して表面を滑らかにすることができる。また、この作業は、舗装材の均し作業と同時に行うことができるので、作業工程が増えることもない。そのため、簡単でコスト増もなく、高品質の復旧路面を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の路面復旧装置の一実施形態にかかり、その概略構成を説明する斜視図、図2(a)は掻土板の表板を裏板に対して横方向にずらして掻土板を拡幅させたときの状態を示す斜視図、図2(b)は、表板を裏板に対して横方向にずらしたときの様子を説明する要部の部分拡大平面図である。
【0019】
図1に示すように、路面復旧装置10は、走行体であるパワーショベル等の作業機械のアームや、油圧シリンダ又はエアシリンダ等で昇降されるアームにダンパー機能を備えさせ、このアームの先端に設けることができる。前記ダンパー機能は、掘削・整正時に生じる負荷に抗して、前記アームを回動又は移動させないようにするとともに、路面に凹凸がある場合は、この凹凸に追随して、走行体に対して前記アーム回動又は移動させるものである。ダンパー機能は、油圧シリンダやエアシリンダに供給される流体の圧力を調整することによって得ることができるし、路面復旧装置10とアームとの間にゴムやバネ等の弾性体を介在させることによっても得ることができる。
【0020】
路面復旧装置10は、前記アームの先端に取り付けられる基板10aと、この基板10aに高さ位置調整自在に取り付けられた掻土板11と、基板10aに取り付けられ掻土板11の両側に配置された一対の側板12,12と、この側板12,12の対向面にボルト14a等で着脱自在に取り付けられたアスファルトの側面均し用の成形部材14(他方の側板12のものは図には現れない)と、側板12,12の下端に取り付けられ、地表面1に接するソリ状のスキッド13,13とを有する。
【0021】
この実施形態の掻土板11は、二枚の平板を重ね合わせた構造となっていて、基板10aに対してボルト等で固定された裏板112と、この裏板112の表面に重ね合わされた表板111と、表板111の上端に取り付けられたL字状のスライドガイド113とを有している。そして、L字状のスライドガイド113を裏板112の上端縁に係合させ、スライドガイド113によって表板111を裏板112から吊り下げた状態で、ボルト111b(図2(b)参照)等で表板111を裏板112又は基板10aに固定する。このような構成の掻土板11は、表板111と裏板112とを相対的に横方向にスライドさせることで、図2(a)に示すように、掘削・整正する溝3aの幅の変更に応じて、掻土板11の幅を容易に変更できるという利点がある。
【0022】
なお、例えば図2(b)に示すように、表板111の端縁111aの全部又は一部を裏板112側に折り曲げ、折り曲げた表板111の端縁111aを裏板112に当接させることで、掻土板11の幅を拡げた状態で溝3aを掘削・整正するときの表板111の変形を抑制することができる。また、図2に示すように、スライドガイド113の長手方向の幅を、側板12,12間の最大幅又は幅変更後の掻土板11の最大幅と同一若しくはこれより大きく形成することで、このスライドガイド113を使って、砕石やアスファルトの後方へのこぼれを防止することができる。
【0023】
また、掻土板11は、例えば、図6に示すような高さ調整ボルト11aと固定用ボルト11bとの組み合わせにより、基板10aに対する高さ位置を調整できるようになっている。図6に示す例では、逆L字状の基板10aの上端面に対面するようにブラケット11cを掻土板11の上端近傍に形成し、ナットを溶着する等して形成したブラケット11cの螺旋孔に高さ調整ボルト11aを螺入する。そして、この高さ調整ボルト11aで掻土板11の高さを調整した後、基板10aの上端面に立設したアンカーボルト等の固定用ボルト11bにナットを締め付けて、基板10aに対する掻土板11の高さ位置を決定する。
【0024】
この実施形態の側板12,12は、図1及び図2(a)に示すように、基板10aの幅方向に張り出すフランジ部12aを有している。フランジ部12aには、側板12,12を基板10aに取り付けるためのボルト12cが挿通する孔12bが貫通形成されている。一方、基板10aには、ボルト12cが挿通する孔10bが貫通形成されていて、孔12b及び孔10bを挿通したボルト12cにナットを締め付けることで、側板12,12が基板10aに固定される。
【0025】
二つの側板12,12のうち、少なくとも裏板112に対して表板111をスライドさせるときに干渉する方の側板12は、表板111のスライド量と同じ分だけ基板10aにおける取り付け位置を変更できるようにする。
この実施形態では、基板10aの孔10bを左右方向に長軸を有する長孔として形成し、孔10bにおけるボルト12cの挿通位置を変更できるようにすることで、側板12,12間の間隔を変更できるようにしている。
また、二つの側板12,12のフランジ部12a,12aに形成する孔12b,12bは、後述するスキッド13,13の摩耗等に応じて側板12,12の高さ位置を調整できるように、上下方向に長軸を有する長孔に形成するのが好ましい。
【0026】
側板12,12の下端に取り付けるスキッド13,13は、地表面1に対して滑りがよく、かつ、容易に摩耗しないものであれば材質や形状は問わない。
樹脂や金属の他、ゴムでも形成することができる。スキッド13,13の後端は、掻土板11よりも若干後方に突出している。そして、スキッド13,13と掻土板11との境界部分は、溝3aを掘削・整正する際やアスファルトを均す際に、パワーショベルの排土板等で掻土板11に押し下げ力を付与する押圧点21aとして形成されている。
【0027】
なお、スキッド13,13の厚みは、地表面からのアスファルトの均し高さより大きくするのがよく、この実施形態の路面復旧装置10を使って均すことのあるアスファルトの前記均し高さうちの最大値よりも若干大きくするのが好ましい。
成形部材14は、アスファルトを均したときにアスファルトの両側にテーパ面を形成するための傾斜面14bを有しているが、この傾斜面14bの下端縁はスキッド13,13の下端に位置させるのが好ましい。そのため、スキッド13,13の摩耗等に応じて側板12,12における成形部材14の高さ位置を調整できるように、取り付け用のボルト14aを挿通させる側板12の孔12dを、上下方向に長軸を有する長孔として形成するとよい。
【0028】
掻土板11を使って溝3aを掘削・整正する際には、掻土板11の下端は、掘削・整正しようとする溝3aの深さに応じた寸法分だけスキッド13,13よりも下方に位置させる。例えば、掘削・整正した後の溝3aの深さを地表面から50mmとする場合には、掻土板11の下端をスキッド13,13の下面から50mm−α(αは整正時の転圧による沈下分を考慮した寸法)分だけ下方に位置させる。
【0029】
また、掻土板11を使ってアスファルト4を均す場合には、掻土板11の下端は、アスファルトの均し高さに応じた寸法分だけスキッド13,13よりも上方に位置させる。例えば、アスファルトの均し高さを溝3aの掘削・整正面から50mmとする場合は、掻土板11の下端をスキッド13,13の下端から50mm+β(βは予盛を考慮した寸法)分だけ上方に位置させる。
【0030】
図3は、上記構成の路面復旧装置10を、走行体であるパワーショベル20の排土板21に取り付けた全体図である。パワーショベル20は、道路復旧工事等で使用される一般的なもので、アーム24によって移動自在なバケット23の他に、アーム22によって上下方向に回動自在な排土板21を備えている。
基板10aは、溶接によって排土板21に固定してもよいが、パワーショベル20を他の用途にも使用することを考慮して、ボルト等で着脱可能に取り付けるのが好ましい。この場合、排土板21の下端縁が押圧点21aに位置するようにする。掻土板11を使って溝3aを掘削・整正する際及びアスファルトの均しを行う際には、押圧点21aに当接する排土板21及びスキッド13によって掻土板11に常時押し下げ力が付与されているので、パワーショベル20が追随できないような地表面1の凹凸であっても、この凹凸に追随してアーム22が揺動しながら、復旧区間の全長にわたって一定深さの溝3aを形成することができるとともに、地表面の凹凸に従った一定高さにアスファルトを均すことができる。
【0031】
これを、図4(a)(b)を参照しつつ説明する。図4の例は溝3aを掘削・整正する場合であるが、アスファルトの均しを行う場合も同様であるので、アスファルトの均しを行う場合については図示及び詳細な説明は省略する。
図4(a)(b)に示すように、地表面1に凹凸があっても、掻土板11には押圧点21aを介して常に押し下げ力が付与されているので、スキッド13及び排土板21を介してアーム22を揺動させつつ、掻土板11が地表面1の凹凸に追随して上下に移動し、溝3aの深さを一定に保つことができる。
【0032】
次に、図5〜図7及び図15を参照しつつ、本発明の路面復旧装置10による路面復旧の手順について説明する。
図5は、この実施形態の路面復旧装置のモード切替状態を示す正面図で、(a)は溝掘削・整正時における初期モードを、(b)は溝掘削・整正時における幅変更モードを、(c)はアスファルトを均す際に掻土板を上昇させたときのモードを示している。
【0033】
溝3aを掘削・整正する時は、掻土板11及び側板12を図5(a)の状態にしておく。すなわち、掻土板11は、その下端が形成しようとする溝3aの深さに応じた寸法だけスキッド13の下面から突出するように、予め基板10aに対する高さ位置が調整されている。なお、この調整作業は、アーム22とともに排土板21を上昇させ、掻土板11を地表面1から浮かび上がらせた状態で行う。また、溝3aを掘削・整正する時は、パワーショベル20のバケット23等と干渉しないようにするために、成形部材14は取り外しておくとよい。さらに、溝3aの幅に応じて掻土板11の幅を変更する必要があるときは、図5(b)に示すように、表板111と裏板112とをずらすとともに、一方の側板(図の右側の側板)12の基板10aにおける取り付け位置を変更する。
【0034】
図6は、路面復旧装置10で溝3aを形成する手順を説明するもので、(a)は溝掘削・整正時における路面復旧装置10の様子を示す側面図、(b)は(a)の正面図、(c)は溝形成後の様子を示す道路の断面正面図である。また、図7は、路面復旧装置10でアスファルトを均す手順を説明するもので、(a)は溝内にアスファルトを投入したときの状態を示す道路の断面正面図、(b)はアスファルトを均すときの路面復旧装置の様子を示す側面図、(c)は(b)の正面図、(d)は路面復旧装置10で均されたアスファルトの様子を示す道路の断面正面図である。
【0035】
まず、図15(c)に示すように砕石3で溝1aが埋め戻されて転圧された状態から、アーム22とともに排土板21及び掻土板11を下降させ、スキッド13の下面が地表面1に接地するまで掻土板11を砕石3に没入させる。
この状態でパワーショベル20を前進させると、図6(b)(c)に示すように、掻土板11によって砕石3が掻き取られるとともにその底部が平坦面に整正され、溝3aが形成される。掻き取られた砕石3は、左右の側板12,12によって溝3aの両側に流出することがない。掻き取られた砕石3が一定量に達したときは、例えばパワーショベル20に備えられたバケット23を使って、側板12,12と掻土板11との間の砕石3を排出すればよい。復旧区間の全長にわたって繰り返すことで、図6(c)に示すように、砕石3が地表面1から一定深さの所まで掘削・整正されて、図15(d)と同様の状態になる。
【0036】
次いで、図5(c)及び図7を参照しながら、溝3a内に投入されたアスファルトを均す手順について説明する。
アスファルト4を均す際には、図5(c)に示すように、掻土板11の下端縁がアスファルト4の均し適した高さになるように、調整ボルト11aと固定用ボルト11bとを使って掻土板11の高さ位置を調整する。そして、側板12,12に、成形部材14,14を取り付ける。
【0037】
まず、図7(a)に示すように、溝3aの中にアスファルト4を投入する。この作業は、従来と同じである。そして、図7(b)に示すように、溝3aに沿って、路面復旧装置10を移動させる。これにより、アスファルト4が溝3aの内部全体に拡がりつつ、その上面が掻土板11によって予め設定された高さで均される。
【0038】
さらに、アスファルト4の両側面は成形部材14によってテーパ面に形成される。路面復旧装置10を溝3aの一端から他端まで移動させることで、溝3aには図7(d)に示すようなアスファルト4の均し面が完成する。側板12,12と掻土板11との間の余剰のアスファルト4は、前記したようにバケット23を使って排出してもよいし、スコップ等を使って手作業で排出してもよい。
以後は、アスファルト4をローラ等で転圧して、図15(f)に示すように仕上げればよい。
【0039】
次に、図8〜図10を参照しながら、本発明の第二の実施形態について説明する。図8〜図10は、本発明の第二の実施形態にかかり、図8(a)は掻土板の正面図、図8(b)は掻土板と側板との連結構造の一例を示す部分拡大図、(c)は、この実施形態の掻土板により形成されるアスファルトの均し面の一例を示す図、図9(a)は、この実施形態における高さ調整機構の一例を示すもので前記高さ調整機構を掻土板の裏側から見た図、(b)は(a)のこの実施形態の高さ調整機構に設けられる回動支持体の拡大図、(c)は(b)の回動支持体の別の実施形態を示す図、図10は、図9(a)(b)で示した回動支持体の具体的な構成を説明する斜視図である。
なお、以下の説明では、先の実施形態と共通する部材及び部位には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0040】
この実施形態では、先の実施形態と同様に、掻土板11を構成する表板111と裏板112とを左右方向にスライドさせてその幅を調整することができるだけでなく、図8に示すように、重ね合わせの角度(図8(a)において角度αで示す角度)も調整自在で、アスファルト4の均し面を図8(c)に示すような所望角度の傾斜面とすることが可能である。
この場合、表板111と裏板112との重ね合わせの角度を変更しても、側板12が垂直を保つことができるように、掻土板11と側板12との関係は、例えば図8(b)に示すように構成するとよい。
【0041】
すなわち、側板12には上下方向に長軸を有する長孔12eが形成され、この長孔12eを挿通させたボルト122,ワッシャ123及びナット124でL型のブラケット121を側板12に固定する。
L型のブラケット121の他の面には、左右方向に長軸を有する長孔121aが形成され、この長孔121aにボルト122を挿通させる。ボルト122は、表板111に形成した螺旋孔に螺入する。
このようにして、ボルト122で側板121とブラケット121とを表板111に固定する。なお、特に図示はしないが、裏板112側についても同様である。
【0042】
このようにすることで、表板111及び裏板112の高さ位置を変えても、長孔12eに挿通させたボルト122の位置を変えることで対応することができる。また、表板111及び裏板112の重ね合わせの角度を変えても、長孔121a(及び必要に応じて長孔12e)に挿通したボルト122(及び必要に応じて長孔12eを挿通させたボルト122)の位置を変えることで、対応することができる。
この実施形態の路面復旧装置によれば、例えば、図8(c)(i)(ii)に示すようなアスファルト4の均し面を得ることができる。
【0043】
(i)の例では、下向きの「く」の字状に屈曲状に傾斜した地表面1,1の傾斜に応じて、アスファルト4の均し面を山形状にしている。(ii)の例では、段差のある地表面1,1の高さに応じて、アスファルト4の均し面を途中で屈曲させている。なお、図8(c)(i)(ii)のいずれの場合においても、図中の点線は転圧後のアスファルト面を示している。
本発明の路面復旧装置は、スキッド13で基板10a,排土板21,表板111及び裏板112を地表面1よりも高いところに位置させているので、図8(c)(i)(ii)に示すような路面の復旧作業を行う場合において、基板10a(排土板21含む),表板111及び裏板112の端部が地表面1に接しないようにさせることができる。
このように、この実施形態によれば、多種多様な地表面1の形状に応じた路面の復旧工事に本発明の路面復旧装置を適用することが可能になる。
【0044】
図9に示すように、高さ調整機構16は、表板111と裏板112とを昇降させるために基板10aのほぼ中央に配置されたジャッキ165と、このジャッキ165とともに表板111及び裏板112のそれぞれを支持するボルト161とを有している。表板111及び裏板112には、それぞれ、貫通状の長孔111c,112cが形成され、この長孔111c,112cをボルト161が挿通するとともに、長孔111c,112cの上下から、一対のナット162,162を締め付けて、ボルト161に表板111及び裏板112を固定する。
【0045】
ジャッキ165と裏板112のフランジとの間、表板111のフランジと裏板112のフランジとの間、ナット162,162の間には、表板111及び裏板112と点接触状態で接触する球状又は円柱状の回動支持体164が配置される。
回動支持体10の具体的構成の一例を図10に示す。
図10(a)は、球状体164a((i)のもの)又は円柱体164c(同(ii)のもの)の中央に貫通孔164b,164dが形成され、この貫通孔164b,164dをボルト161が挿通している。このタイプの回動支持体10は、構成が簡単で安価に製造できるという利点がある。なお、回動支持体10として図10(a)の球状体164a又は円柱体164cを使用する場合は、図9(b)(c)に示すような座金162aを設けるのが好ましい。
【0046】
図10(a)の球状体164a又は円柱体164cは、構成は簡単ではあるものの、貫通孔164b,164dをボルト161が挿通しているため、理想的な点接触状態又は線接触状態とは言い難い。そのため、図10(b)に示す例では、ボルト161が挿通する貫通孔166aが中央に形成された支持板166の一面に、ボール166b((i)のもの)又はコロ166c((ii)のもの)が支持体166d,166eで回転自在に支持されている。
【0047】
上記したような回動支持体164は、球状の場合は一点で、円柱状の場合は線で、表板111及び裏板112に接触しているので、表板111及び裏板112の重ね合わせ角度が変化しても、その接触位置を自在に変えて表板111及び裏板112を支持することができる。表板111及び裏板112の重ね合わせ角度を変える場合は、ジャッキ165で表板111及び裏板112の重ね合わせ部分を昇降させる。この場合、必要があれば、上方のナット162だけを軽く緩める。
【0048】
なお、(c)のように、上下のナット162の間に球状支持体164を配置してもよい。このようにすれば、ナット162を緩めることなく、ジャッキ165の昇降動作だけで、表板111及び裏板112の重ね合わせ角度を変えることができる。
【0049】
次に、図11を参照しながら、本発明の第三の実施形態について説明する。
図11(a)は、本発明の第三の実施形態にかかる路面復旧装置の全体斜視図、(b)は、成形部材に取り付けた第二の導入板の拡大正面図である。
この実施形態では、図11(a)に示すように、スキッド13,13の先端には、地表面1上にこぼれた土砂や砕石,アスファルト等を、砕石の掘削・整正作業やアスファルトの均し作業を行いながら側板12,12の間に取り込む第一の導入板180,180が、取付部材181を介して、ボルト181aで取り付けられている。
【0050】
第一の導入板180,180は、金属のような剛体で形成してもよいが、ゴムや樹脂のような弾性体で形成してもよい。また、スキッド13,13の先端に取り付けられる本体部分を金属で形成し、地表面1に接する部分をゴムや樹脂のような弾性体で形成してもよい。さらに、ボルト181aの頭部と取付部材181との間にバネやゴム、樹脂ブロック等の弾性体を介在させることで、地表面1に対する第一の導入板180,180の押し付け力を調整することが可能になる。なお、第一の導入板180,180は、アスファルト等を側板12,12の間に取り込むことができればよく、スキッド13,13の先端に限らず、例えば側板12,12の先端に取り付けてもよい。
【0051】
また、図11(a)に示すように、第一の導入板180,180は、側板12,12に対してその取付角度を変更できるように取り付けられるのがよい。そして、地表面1上の土砂や砕石,アスファルト等を側板12,12の間に取り込む場合は、図11(a)中実線で示すように第一の導入板180,180を内側に差し向け、土砂や砕石,アスファルト等を側板12,12よりも外側に排除する場合は、同仮想線で示すように外側に差し向ける。
この実施形態によれば、第一の導入板180,180によって、スキッド13,13が移動する地表面1からは異物が除去されるので、アスファルト4の均し面や溝3aの底面に前記異物に起因する凹凸が形成されず、より品質の高い路面復旧が可能になる。
【0052】
さらに、この実施形態では、図11(a)(b)に示すように、側板12,12のそれぞれに取り付けられた成形部材14,14に、側板12,12の間に取り込まれたアスファルト4を成形部材14,14の傾斜面14bに向けて導く第二の導入板17,17が取り付けられている(図11(b)において、アスファルト4が取り込まれる方向を矢印Iで示す)。第二の導入板17,17は、鋼板等の板状の部材の一部を折り曲げて形成することができる。この第二の導入板17,17も、アスファルト4を成形部材14,14の傾斜面14b,14bに向けて導くことができるのであれば、成形部材14,14に限らず、例えば側板12,12に取り付けてもよい。
【0053】
成形部材14,14に対する第二の導入板17,17の取付位置は、先端側、途中部位、後端側のいずれでもよいが、アスファルト4は、均しを行う直前に成形部材14,14の傾斜面14b,14bに取り込まれて高密度で成形されるようにするのがよい。第二の導入板17,17の取付位置は、成形部材14,14の中間部位よりも後方が好ましく、可能な限り後端側に設けるのがより好ましい。
【0054】
次に、図12を参照しながら、掻土板11の直後に設けられ、掻土板11により均されたアスファルト4の表面を滑らかにする加熱コテの一実施形態について説明する。
図12は、本発明の路面復旧装置に設けられる加熱コテの一実施形態にかかり、(a)はその全体構成を説明する斜視図、(b)は加熱コテの作用を説明する図である。
【0055】
加熱コテ30は、アスファルト4の表面を加熱しつつ滑らかに仕上げるコテ本体310と、このコテ本体310を、高さ位置調整自在に走行体のフレーム又はアームに取り付ける取付部320とから概略構成される。
コテ本体310は、側面視して部分円弧状に形成され、部分円弧状の表面がアスファルトに押し当てられながら走行体とともに移動する。コテ本体310の加熱は、バーナーや電熱器、着火した炭等を用いることができる。
この実施形態の加熱コテ30は、コテ本体310が左右二つの分割体311、312に分割されていて、かつ、分割体311,312は、連結角度が調整可能な連結金具313により連結されている。
【0056】
図12(b)は、連結金具313の一例を説明するための部分拡大図である。もちろん、分割体311,312の連結角度が調整可能であれば、連結金具の構成は以下に説明するものには限定されない。
L字状の連結金具313は、分割体311,312のそれぞれの対応する位置に背中合わせに配置され、溶接等により固定されている。分割体311,312の間には、分割体311,312の角度を調整するための角度調整楔314が挿入される。分割体311,312の角度は、図8(c)に示すようなアスファルト4の均し面の傾斜角度に一致させる。角度調整楔314を挿入した後、連結金具313,313及び角度調整楔314を挿通させたボルト315の一端にナット316を螺入して締め付けることで、分割体311,312は角度調整楔314のテーパ角に応じた角度、つまり、アスファルト4の均し面の傾斜角に一致した角度に設定される。
【0057】
取付部320は、コテ本体310に取り付けられたベース321と、このベース321に先端が回転自在に支持され、かつ、軸線方向に進退移動しないように取り付けられた螺旋軸322と、この螺旋軸322と螺合するナット323と、このナット323を走行体のフレーム又はアームに取り付けるブラケット324と、ベース321に取り付けられ、ナット323の相対的な昇降動作を案内する円筒状のガイド325とを有している。
【0058】
螺旋軸322の上端は、ほぼ水平方向に屈曲されて螺旋軸322を手動で回転させるためのハンドル322aが形成されている。
ガイド325の側面には、ナット323に一体に取り付けられたブラケット324が挿通する溝325aが上端から下端まで形成されている。
ガイド325とベース321とは、溶接やボルト締め等でしっかりと固定してもよいが、ベース321に対してガイド325がある程度揺動できるように取り付けてもよい。例えば、図示するように、ベース321に立設したピン321aを、ガイド325の下端に形成されたフランジ325bの貫通孔に挿通させ、フランジ325bから突出するピン321aに抜け止めピン321bを係合させてもよい。
走行体のフレーム又はアームにブラケット324を介して加熱コテ30を取り付けた状態で、ハンドル322aを回転させると、螺旋軸322とナット323との作用によってコテ本体310が昇降する。
【0059】
コテ本体310をアスファルト4の均し面に押し付ける押圧ポイントは、コテ本体310に対する取付部320の取付位置によって決定される。コテ本体310は、最適な押圧ポイントでアスファルト4の均し面に押し付けられるのが好ましい。
そのため、この実施形態の加熱コテ30では、取付部320はコテ本体310に対して幅方向に位置調整自在に取り付けられている。例えば、図示の例のように、取付部320のベース321がボルト326で分割体311の上縁部分に取り付けられるようにするとともに、前記上縁部分に形成した長孔311aに沿って、ボルト326の締付位置を調整できるようにする。
このようにすることで、例えば、図13(a)から図13(b)のように、アスファルト4の均し面の幅が変化しても、この変化に応じて、押圧ポイントPを最適位置に移動させることができる。
【0060】
また、アスファルト4の均し面が水平面4aと傾斜面4bとを有する場合において、水平面4aと傾斜面4bとの境界の位置(傾斜角変化位置T)が、例えば図13(a)の位置から図13(c)の位置に変化した場合は、この変化に応じて分割体311,312の境界部分の位置を変化させるとともに、押圧ポイントPの位置も変化させる必要がある。そこで、この実施形態では、走行体等に対するブラケット324の固定位置を幅方向に調整できるようにしてある。これにより、加熱コテ30の幅方向の位置調整と押圧ポイントPの位置調整が可能になる。
【0061】
図14は、上記構成の加熱コテ30の作用を説明する図である。
図14(a)は、溝3aの掘削・整正時を示している。溝3aの掘削・整正時には、加熱コテ30は排土板21の後方で待機している。このとき、加熱コテ30のコテ本体310は、地表面1よりも若干高く、かつ、アスファルト4を均す際の掻土板11の下端縁の高さ位置よりも低い位置に予め位置決めしてある。
【0062】
図14(b)は、アスファルト4の均し時を示している。アスファルト4は、掻土板11によって均される。コテ本体310の高さ位置は、均しの終えたアスファルト4を加熱・加圧して表面を平滑に仕上げる高さ位置に予め設定されているため、均しの終えたアスファルト4の表面が、ただちに加熱コテ30によって表面が平滑に仕上げられる。
すなわち、本発明の加熱コテ30によれば、アスファルト4の均しと加熱コテ30による平滑化とが同時に行われるわけである。そのため、アスファルト4の表面を平滑に仕上げる専用の工程が不要となり、低コストで品質の高い復旧路面を得ることができる。
また、アスファルト4に加熱コテ30を押し付けながら前進させると、加熱コテ30の前方にアスファルトの隆起が発生しようとするが、本発明の加熱コテ30のように、加熱コテ30を揺動自在にすることで、このような隆起の発生を抑制することができる。
なお、アスファルト4の均し中に、何らかの理由で均し作業を一時的に停止させる必要がある場合は、加熱コテ30によるアスファルト4の過剰な加熱を防止するために、加熱コテ30を加熱する熱源を遮断するか、ハンドル322aを操作して、加熱コテ30を上昇させ、アスファルト4から離間させるとよい。
【0063】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限られるものではない。
例えば、上記の説明では走行体としてパワーショベルを一例に挙げて説明したが、路面復旧装置10を移動させて溝3aの掘削・整正やアスファルト4等のアスファルトの均しを行うことができるのであれば、ダンプ等の他の走行体を利用することができる。また、上記の説明のように走行体の前部に装着するだけでなく、走行体の後部に路面復旧装置を装着して引っ張りながら作業を行うことも可能である。
【0064】
また、上記の説明では、案内部材としてのソリ状のスキッド13,13を例に挙げて説明しているが、地表面の凹凸に倣うことができるものであれば案内部材の形態はソリ状のスキッド13,13に限らず、ローラ状のものなど他のものとすることができる。さらに、上記の説明では、案内部材は側板12,12の下端に取り付けているが、基板10aや排土板21,アーム22等に取り付けることも可能である。
また、上記の説明で掻土板11は二枚の平板を重ね合わせた構造となっているものとして説明したが、掻土板11は一枚の平板から構成されているものであってもよく、掘削する溝幅を変更する際には、前記平板を当該溝幅に応じたものに取り替えるようしてもよい。
【0065】
さらに、第二の実施形態では、掻土板11の昇降はジャッキ165を用いて行うものとして説明したが、掻土板11を昇降させて予め設定された高さ位置に位置決めすることができるのであれば、ジャッキ16に限らずシリンダやボールネジ・ナット機構等を用いることも可能である。
【0066】
また、上記の第三の実施形態では、第一の導入板と第二の導入板の両方を設けているが、いずれか一方を設けたものであってもよい。さらに、第三の実施形態は、第一の実施形態の路面復旧装置をベースとしているが、第二の実施形態の路面復旧装置をベースとするものであってもよい。
【0067】
さらに、アスファルト4の表面を滑らかにする加熱コテ30は、上記の態様のものに限らず、他の種々の態様のものであってもよい。例えば、傾斜角度の付いてない平坦な舗装材の表面を仕上げるだけなら、加熱コテ30は特に左右分割形としなくてもよいし、連結角度を調整できるようにする必要もない。また、常に一定高さに舗装材の表面を仕上げるのであれば、高さ調整機構も特に設けなくてもよい。また、コテ本体310の前方で舗装材隆起の問題が発生しないのであれば、コテ本体310をアームや走行体に対して揺動自在に設ける必要もない。
【0068】
さらに、上記の説明で加熱コテ30のコテ本体310は二分割形であるとして説明したが、三分割形又はそれ以上であってもよい。
また、上記の実施形態で説明した加熱コテ30のように、コテ本体310を2以上に分割した場合は、分割体(上記の実施形態では分割体311,312)のそれぞれに取付部320を設けてもよい。このようにすることで、分割体(311,312)のそれぞれにおいて、押圧ポイントPを最適位置に位置決めすることができるという利点がある。さらに、この場合は、各分割形311,312の角度が、各取付部320によって決定されるので、上記で説明したような角度調整用楔314等によって連結角度を調整する必要も特にない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、ガス管や水道管、下水管、電話線等の工事を行った後の路面復旧作業に広範に適用が可能である。また、本発明の加熱コテは、本発明の路面復旧装置に限らず、他の路面復旧装置にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の路面復旧装置の一実施形態にかかり、その概略構成を説明する斜視図である。
【図2】(a)は掻土板の表板を裏板に対して横方向にずらして掻土板を拡幅させたときの状態を示す斜視図、(b)は、表板を裏板に対して横方向にずらしたときの様子を説明する要部の部分拡大平面図である。
【図3】この実施形態の路面復旧装置を走行体であるパワーショベルの排土板に取り付けた一例を示す側面図である。
【図4】地表面に凹凸があった場合に路面復旧装置が当該凹凸に追随して姿勢を変更する様子を示す側面図である。
【図5】この実施形態の路面復旧装置のモード切替状態を示す正面図で、(a)は溝掘削・整正時における初期モードを、(b)は溝掘削・整正時における掻土板の幅変更モードを、(c)はアスファルトを均す際に掻土板を上昇させたときのモードを示している。
【図6】路面復旧装置で溝を形成する手順を説明するもので、(a)は溝掘削・整正時における路面復旧装置の様子を示す側面図、(b)は(a)の正面図、(c)は溝形成後の様子を示す道路の断面正面図である。
【図7】路面復旧装置でアスファルトを均す手順を説明するもので、(a)は溝内にアスファルトを投入したときの状態を示す道路の断面正面図、(b)はアスファルトを均すときの路面復旧装置の様子を示す側面図、(c)は(b)の正面図、(d)は路面復旧装置で均されたアスファルトの様子を示す道路の断面正面図である。
【図8】図8(a)は掻土板の正面図、図8(b)は掻土板と側板との連結構造の一例を示す部分拡大図、(c)は、この実施形態の掻土板により形成されるアスファルトの均し面の一例を示す図である。
【図9】図9(a)は、この実施形態における高さ調整機構の一例を示すもので前記高さ調整機構を掻土板の裏側から見た図、(b)は(a)のこの実施形態の高さ調整機構に設けられる回動支持体の拡大図、(c)は(b)の回動支持体の別の実施形態を示す図である。
【図10】図9(a)(b)で示した回動支持体の具体的な構成を説明する斜視図である。
【図11】本発明の第三の実施形態の路面復旧装置にかかり、(a)は路面復旧装置の全体斜視図、(b)は成形部材に取り付けた第二の導入板の拡大正面図である。
【図12】本発明の路面復旧装置に設けられる加熱コテの一実施形態にかかり、(a)はその全体構成を説明する斜視図、(b)は連結部の詳細を説明する拡大断面図である。
【図13】均し面の変化に対応した加熱コテの位置調整の様子を説明する図である。
【図14】加熱コテの作用を説明する図で、(a)は掘削・整正時の状態を、(b)はアスファルトの均し時の状態を示している。
【図15】ガス管や水道管、下水管、電話線等の工事を行った後の道路復旧の作業手順を説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
1 地表面(路面)
2 管体
3 砕石
3a 溝
4 アスファルト(舗装材)
10 路面復旧装置
10a 基板
11 掻土板
111 表板
112 裏板
113 スライドガイド
12 側板
13 スキッド
14 成形部材
21 排土板
22 アーム
30 加熱コテ
310 コテ本体
320 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体等を埋設した砕石の表面を掘削・整正して所定深さの溝を形成し、この溝内に投入された舗装材を所定の高さ及び形状に均す路面復旧用の路面復旧装置であって、
復旧予定路面に沿って走行する走行体に設けられた昇降自在又は回動自在なアームと、
このアームに取り付けられた基板と、
この基板に高さ位置調整可能に取り付けられ、前記砕石の掘削・整正と前記舗装材の均しを行う掻土板と、
前記掻土板の高さ位置を、掘削・整正する溝の深さに応じた高さ位置と、前記舗装材を均す高さ位置との間で調整自在にする調整機構と、
前記掻土板の少なくとも一方に配置して前記基板に取り付けられ、前記掻土板が掻き出した砕石又は舗装材が前記掻土板の側方に流出しないようにする側板と、
地表面に接するように前記アーム,前記基板又は前記側板に取り付けられた案内部材と、
この案内部材の前記掻土板近傍に設けられ、前記案内部材を前記地表面に弾性的に押し付ける押圧点と、
を有することを特徴とする路面復旧装置。
【請求項2】
前記側板の内側に着脱自在に取り付けられ、前記側板の移動とともに前記舗装材の側面を所定形状に形成する成形部材を有することを特徴とする請求項1に記載の路面復旧装置。
【請求項3】
前記掻土板が、前後に重ね合わせた表板及び裏板と、前記表板又は前記裏板の上端に設けられ、前記裏板又は前記表板と係合しつつ前記表板又は前記裏板を吊り下げるスライドガイドとを有し、前記スライドガイドで案内しながら前記表板と前記裏板とを幅方向に相対的にずらすことで、前記掻土板の幅寸法を調整可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の路面復旧装置。
【請求項4】
前記案内部材の厚みを、前記地表面から前記舗装材の均し高さよりも大きくしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の路面復旧装置。
【請求項5】
前記掻土板が、前後に重ね合わせた表板と裏板とを有するとともに、前記表板と前記裏板との重ね合わせ角度が変更可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の路面復旧装置。
【請求項6】
請求項5に記載の路面復旧装置において、前記調整機構が、前記表板と前記裏板とを昇降させる昇降手段と、この昇降手段と前記表板及び前記裏板とを点接触状態又は線接触状態で支持する支持手段とを有することを特徴とする路面復旧装置。
【請求項7】
前記側板の先端又は前記案内部材の先端に、前記地表面上の土砂や砕石,舗装材を前記側板の間に取り込む第一の導入手段を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の路面復旧装置。
【請求項8】
前記側板に、前記舗装材を前記成形部材の内側に向けて導入する第二の導入手段を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の路面復旧装置。
【請求項9】
前記掻土板よりも後方に、前記掻土板により均された前記舗装材の表面を滑らかにする加熱コテを設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の路面復旧装置。
【請求項10】
前記加熱コテの高さ位置を調整する高さ調整手段を設けたことを特徴とする請求項9に記載の路面復旧装置。
【請求項11】
前記加熱コテの前記舗装材に押し付けられる部分が円弧状に形成され、かつ、揺動自在に設けられていることを特徴とする請求項9又は10に記載の路面復旧装置。
【請求項12】
前記加熱コテが、幅方向に分割された少なくとも二つのコテ本体を有し、各コテ本体が互いに傾斜角度調整可能に連結されることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の路面復旧装置。
【請求項13】
前記加熱コテが、幅方向に位置調整可能であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の路面復旧装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−162043(P2009−162043A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131420(P2008−131420)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【特許番号】特許第4204012号(P4204012)
【特許公報発行日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(503100773)株式会社関組 (3)
【Fターム(参考)】