説明

踏面清掃装置

【課題】摩耗が少ない案内機構を有する踏面清掃装置を提供する。
【解決手段】車輪の踏面清掃装置は、シリンダ(1)と、前記シリンダ(1)内に摺動自在に挿入され、前記シリンダ(1)内に導入された流体圧により移動可能なトルク受ロッド(2)と、前記トルク受ロッド(2)を付勢するリターンスプリング(4)と、前記トルク受ロッド(2)の端に取り付けられる研摩部(3)と、前記トルク受ロッドの移動を軸方向に制限する案内機構(20)と、を備える。前記案内機構は、前記トルク受ロッド(2)の外周面において軸方向に延在する溝(37)と、前記シリンダ(1)に回転可能に取付けられ前記溝に嵌合するピン(12)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の踏面清掃装置、及び、その踏面清掃装置を備える鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に軌道上を走行する鉄道車両は長距離の走行中に車輪の踏面に錆、ゴミ、砂利等が付着し、これらのゴミ等が踏面と軌道間に介在することによって軌道を損傷し、異音を発生し、最悪の場合には脱線するおそれもある。
【0003】
特許文献1は、鉄道車両の車体に組付けられ、鉄道車両の走行中に、踏面に付着しているゴミ等を取り除く従来の踏面清掃装置を開示する。この踏面清掃装置は、車輪の踏面に当接する研摩部が取り付けられたトルク受ロッドを有する。トルク受ロッドは、リターンスプリングにより付勢された状態で、空気圧によりシリンダ内を摺動する。また、踏面清掃装置は、トルク受ロッドの移動を軸方向内に制限して研摩部の回転を防止する案内機構を有する。この機構は、トルク受ロッドの外周に設けた溝と、シリンダに取付けられてこの溝に嵌合するピンとからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−225945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の案内機構は、ピンがトルク受ロッドの溝に嵌合するため、ピンや溝の摩耗が大きく、寿命が短いという問題やトルク受ロッドの移動を軸方向内に制限できなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みて、摩耗が少ない案内機構を有する踏面清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る踏面清掃装置は、シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入され、前記シリンダ内に導入された流体圧により移動可能なトルク受ロッドと、 前記トルク受ロッドを付勢するリターンスプリングと、前記トルク受ロッドの端に取り付けられる研摩部と、前記トルク受ロッドの移動を軸方向に制限する案内機構と、を備える。前記案内機構は、前記トルク受ロッドの外周面において軸方向に延在する溝と、前記シリンダに回転可能に取付けられ前記溝に嵌合するピンと、を備える。
【0008】
さらに、前記案内機構は、前記ピンを前記シリンダに回転可能に支持するベアリングを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、踏面清掃装置において、案内機構のピンが回転可能に取付けられているため、案内機構のピンや溝の摩耗が減少する。また、案内機構の寿命が延び、踏面清掃装置において、案内機構を交換する回数が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】踏面清掃装置の側面図である。
【図2】踏面清掃装置の一部断面図である。
【図3】案内機構の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1と図2にもとづいて説明する。図1は、実施形態に係る踏面清掃装置の側面図である。図2は、実施形態に係る踏面清掃装置のシリンダの軸(図1のII-IIの方向)に沿った一部断面図である。
【0012】
図1のように、本実施形態に係る車輪の踏面清掃装置は、ブラケット36を介して鉄道車両の台車に取付けられ、研摩部3を車輪の踏面に摺接させて研摩し、踏面の外面に付着したゴミ、砂利等を取り除いて清掃する。
【0013】
図2のように、踏面清掃装置は、シリンダ1と、トルク受ロッド2と、研摩部3と、リターンスプリング4と、案内機構20とを備える。水平なシリンダ1は図1のように、ブラケット36に結合する。ピストンロッド型のトルク受ロッド2は、シール16を介してシリンダ1内に摺動自在に挿入される。トルク受ロッド2は、シリンダ1内に常に水平方向に案内されて摺動し、研摩部3から受ける車輪の接線方向の力はトルク受ロッド2を介してシリンダ1が担持している。シリンダ1は、トルク受ロッド2との気密性を保ちつつ滑らかに往復するために耐摩耗性のライナー部1bを有する。トルク受ロッド2は、研摩部3側の一端に蓋部2aと外端フランジ2bとを有する。シリンダ1の基端部1aとトルク受ロッド2の外端フランジ2bとの間には、ダストの侵入を防止するブーツ14が取付けられている。
【0014】
研摩部3は、トルク受ロッド2の外端フランシ2bに着脱自在に結合した研摩子受け3aと、研摩子受け3aの端部に着脱自在に取付けた研摩子3bと、を備える。研摩子3bの弯曲面3cは、車輪の踏面に摺接する。
【0015】
キャップ(蓋)6は、シリンダ1の後端部に対してOリング等を介して結合される。キャップ6は中空に形成されると共に、流体圧の一種としての空気圧を供給するコネクタ30が取付けられている。なお、流体圧として、油圧を使用することもできる。
【0016】
支持桿5は、シリンダ1に設けたキャップ6に取付けられ、トルク受ロッド2内を通過して延びる。なお、トルク受ロッド2は中空に形成されている。リターンスプリング4は、トルク受ロッド2の内周に設けたシート24と、支持桿5の端部に設けた座部10との間に介装される。リターンスプリング4は、トルク受ロッド2をシリンダ1内に引き込む方向に付勢する。
【0017】
コネクタ30から供給された空気圧は、キャップ6内を通してトルク受ロッド2の端面とリターンスプリング4の端部に作用し、リターンスプリング4を圧縮しながらトルク受ロッド2をシリンダ1の外部に押し出し車輪方向に伸長させる。トルク受ロッド2が伸長すると、研摩部3が移動し、研摩部3の弯曲面3cが走行中の回転する車輪の踏面に摺接する。研摩部3によるゴミ等の除去が終了し空気圧の供給が停止されると、トルク受ロッド2は、リターンスプリング4の復元力によって、トルク受ロッド2と研摩部3と共に後退して元の位置(空気圧を供給する前の位置)に戻る。
【0018】
案内機構20は、トルク受ロッド2の移動を軸方向に制限して案内し、これによりトルク受ロッド2と研摩部3の軸方向の周りでの回転を防止している。案内機構20は、トルク受ロッド2の外周面においてロッド軸方向に延在する軸方向溝37と、シリンダ1に回転可能に取付けられ軸方向溝37に嵌合するピン12からなる。本実施形態において、ピン12は円柱状の形状を有する柱状部材である。ピン12は、ベアリング13を介してシリンダ1に取り付けられ、ベアリング13は、ピン12をシリンダ1に対して回転可能に支持する。本実施形態において、ベアリング13として、複数の円柱状のニードル(針部)13aを有するニードルベアリングが好ましいが、他のベアリングとして、ボールベアリング、プレーンベアリング等も使用できる。ピン12とベアリング13は、シリンダ1にねじ込めるボルト25と一体化されており、シリンダ1に対して着脱でき容易に交換可能である。
【0019】
また、トルク受ロッド2は外周に外周溝38を備える。トルク受ロッド2の外周溝38内には、外周に多数ののこぎり歯状の溝を備えたラッチ受け8が、トルク受ロッド2の軸方向(又はシリンダ1の軸方向)に関して移動自在に挿入されている。ラッチ7の先端が歯状の溝のいずれかと選択的に係合する。
【0020】
ロッド状のラッチ7は、シリンダ1に設けられ、ラッチ受け8と選択的に係合する。シリンダ1には、直径方向に向けてガイド筒39が起立し、ガイド筒39の中央において、ラッチ7が移動できるように挿入される。ラッチ7は、通常、スプリング19で押されてその先端がラッチ受け8と係合する。ラッチ7の外端を指でスプリング19に抗して引き出した場合、ラッチ受け8との係合が解消されて、ラッチ受け8が移動する。
【0021】
ラッチ受け8は、トルク受ロッド2の後退ストロークを規制する。例えば、研摩部3の弯曲面3cが摩耗した場合、その摩耗した肉厚分の距離だけトルク受ロッド2とラッチ受け8は押し出される。トルク受ロッド2が後退しないように、ラッチ受け8は、押し出された量に応じてトルク受ロッド2の位置を規制する。これによって研摩部3が摩耗しても、研摩部3と車輪の踏面との距離を常にある一定の範囲に保持できる。
【0022】
次に、本実施形態の効果について述べる。本実施形態によると、踏面清掃装置は、トルク受ロッド2の移動を軸方向に制限する案内機構20を有する。案内機構20は、トルク受ロッド2の外周面に軸方向に延在する溝37と、回転可能にシリンダ1に取付けられて溝37に嵌合するピン12と、を備える。これにより、トルク受ロッド2が、空気圧の供給と停止の繰り返しにより、繰り返し往復移動をする場合でも、案内機構20のピン12又は溝37の摩耗が防止できる。さらに、トルク受ロッド2の移動が軸方向に好適に制限され、研摩部の回転が防止され、踏面清掃装置の良好な清掃動作が維持される。また、この踏面清掃装置を備える鉄道車両は、車輪の踏面が好適に清掃される。
【0023】
例えば、図3のように、溝37の長さ方向のある位置において、溝37の一方の壁面37aの摩擦係数が他方の壁面37bの摩擦係数より大きい場合、ピン12に対してトルク受ロッド2(ひいては溝37の壁面37a)が移動しても、ピン12は回転するため、摩擦係数の大きい壁面37aによるピン12の摩耗が防止できる。逆に、溝37の長さ方向のある位置において、溝37の一方の壁面37aの摩擦係数が他方の壁面37bの摩擦係数より小さい場合、ピン12に対してトルク受ロッド2(ひいては溝37の壁面37b)が移動しても、ピン12は図3とは逆方向に回転するため、摩擦係数の大きい壁面37bによるピン12の摩耗が防止できる。
【0024】
また、案内機構20は、ピン12をシリンダ1に対して回転可能に支持するベアリング13を備えてよい。ベアリング13により、簡便にピン12を回転させることができる。
【0025】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0026】
1 シリンダ
2 トルク受ロッド
3 研摩部
4 リターンスプリング
12 ピン
13 ベアリング
20 案内機構
37 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入され、前記シリンダ内に導入された流体圧により移動可能なトルク受ロッドと、
前記トルク受ロッドを付勢するリターンスプリングと、
前記トルク受ロッドの端に取り付けられる研摩部と、
前記トルク受ロッドの移動を軸方向に制限する案内機構と、を備え、
前記案内機構は、前記トルク受ロッドの外周面において軸方向に延在する溝と、前記シリンダに回転可能に取付けられ前記溝に嵌合するピンと、を備えることを特徴とする車輪の踏面清掃装置。
【請求項2】
前記案内機構は、前記ピンを前記シリンダに対して回転可能に支持するベアリングを備えることを特徴とする請求項1に記載の踏面清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−183912(P2012−183912A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48085(P2011−48085)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)