説明

蹴込み引き出し用連結部材及びそれを用いた蹴込み引き出し

【課題】前板が重量物であっても堅固に支持可能な蹴込み引き出し用連結部材及びそれを用いた蹴込み引き出しを提供する。
【解決手段】蹴込み引き出しの引き出し本体20と前板10とを連結する蹴込み引き出し用連結部材30を、前板10が取り付けられる前方の上側垂直部31と、引き出し本体20が取り付けられる後方の下側垂直部32と、上側垂直部31の下部と下側垂直部32の上部とを連結する水平部33とで構成する。その場合、水平部33と下側垂直部32とで蹴込みKを形成し、そして、水平部33を上下に壁面33a,33bを有する二重壁構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き出し本体と前板とを連結する蹴込み引き出し用連結部材及びそれを用いた蹴込み引き出しに関し、台所用家具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キッチンキャビネットのようにフロアに設置される台所用家具の最下部は、蹴込みと称して後方へ引き込んだ形状とされており、この蹴込みに引き出しを設けてスペースの有効活用を図ることがある。例えば特許文献1には、図7に示すように、ステンレス鋼板をプレス曲げ加工してなる第1部材Aと、アルミニウムを押出加工してなる第2及び第3部材B,Cとを組み付けた収納ポケットPを有する前板本体に、図示しない引き出し本体が連結された構成の蹴込み引き出しが開示されている。その場合、第1部材Aは、上下の垂直部A1,A2とこれらを連結する水平部A3とを有し、さらに、上側垂直部A1の上部は取っ手部A4とされている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−218642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載の第1部材Aは、ステンレス鋼板を折り曲げただけの構造であるため、厚みの薄い水平部A3の剛性が低く、矢印xで示す重量負荷に弱い。すなわち、矢印x方向に重量負荷があった場合、水平部A3は、傾向として第2及び第3部材B,C側を支点として下方に撓み、その結果、取っ手部A4と直上方の引き出しDの下端との間の隙間が拡大するという不具合が生じることがある。
【0005】
そこで、本発明は、蹴込み引き出しの前部の剛性を高くすることができる蹴込み引き出し用連結部材及びそれを用いた蹴込み引き出しの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
まず、請求項1に記載の発明は、蹴込み引き出しの引き出し本体と前板とを連結する蹴込み引き出し用連結部材であって、前記前板が取り付けられる前方の上側垂直部と、前記引き出し本体が取り付けられる後方の下側垂直部と、前記上側垂直部の下部と下側垂直部の上部とを連結する水平部とを有し、前記水平部と下側垂直部とで引き出しの蹴込みを形成するようになっていると共に、前記水平部は、上下に壁面を有する二重壁構造とされていることを特徴とする。
【0008】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の蹴込み引き出し用連結部材において、前記下側垂直部は、前後に壁面を有する二重壁構造とされていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の蹴込み引き出し用連結部材において、前記下側垂直部の前面の上下に、該前面を覆う面材の上縁部及び下縁部をそれぞれ保持するための下側が開放された溝部及び上側が開放された溝部が互いに対向して設けられていることを特徴とする。
【0010】
一方、請求項4に記載の発明は、引き出し本体と前板とを有し、キッチンキャビネットの蹴込みに設けられる蹴込み引き出しであって、前記引き出し本体と前板とが前記請求項1または請求項2に記載の蹴込み引き出し用連結部材を用いて連結されていることを特徴とする。
【0011】
そして、請求項5に記載の発明は、引き出し本体と前板とを有し、キッチンキャビネットの蹴込みに設けられる蹴込み引き出しであって、前記引き出し本体と前板とが前記請求項3に記載の蹴込み引き出し用連結部材を用いて連結されており、且つ、該連結部材の下側垂直部の前面の上下に設けられた溝部に、該前面を覆う面材が保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
まず、請求項1に記載の発明によれば、上側垂直部と下側垂直部と水平部とでなる蹴込み引き出し用連結部材において、水平部を上下に壁面を有する二重壁構造としたので、水平部に剛性を付与させることができる。したがって、蹴込み引き出しの前部の剛性を高くすることができる。
【0013】
次に、請求項2に記載の発明によれば、連結部材の下側垂直部を前後の壁面を有する二重壁構造としたことにより、下側垂直部に剛性を付与させることができると共に、軽量化を維持しつつ厚みを確保することができるようになる。したがって、蹴込み引き出しにおける前後方向の寸法を変更せずに、この下側垂直部に従来の下側前板を代用させることが可能となり、また、構造の簡素化を図ることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、下側垂直部の前面の上下に、互いに対向する溝部を設けたので、この前面を覆う面材は、その上縁部及び下縁部を保持する前記両溝部によって前記前面に確実に保持されるようになる。
【0015】
そして、引き出し本体と前板とを有する蹴込み引き出しにおいて、請求項4に記載の発明によれば、前記請求項1及び請求項2に記載の発明により得られた作用と同様の作用が得られ、さらに、請求項5に記載の発明によれば、前記請求項3に記載の発明により得られた作用と同様の作用が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
本発明は、図1に示すキッチンキャビネット1に適用されている。このキッチンキャビネット1は、フロアFに設置されるベースキャビネット2上部にワークトップ3が載置された構成とされている。そして、ベースキャビネット2の最下部に蹴込みKが設けられており、この蹴込みKに、蹴込み引き出し(以下、単に引き出しという)4が、二点鎖線で示すように引き出し自在に備えられている。
【0018】
図2に示すように、引き出し4は、前方の前板10と、後方の引き出し本体20と、これらを連結する連結部材30とを有している。また、引き出し本体20は、左右の側板21,21と、両側板21,21を下部で連結する底板(図示せず)と、同じく後部で連結する背板(図示せず)とを有し、収納スペースが形成されている。また、連結部材30の下部前面には、蹴込み面材(以下、単に面材という)40が取り付けられており、左右の端面には、サイドカバー50,50が取り付けられている。そして、この引き出し4は、図示しないガイド機構を介して引き出し自在とされている。
【0019】
図2及び図3に示す連結部材30は、左右に延びるアルミニウム製の押出成形品であり、前板10が取り付けられる前方の上側垂直部31と、引き出し本体20が取り付けられる後方の下側垂直部32と、上側垂直部31の下部と下側垂直部32の上部とを連結する水平部33とを有し、側面視で略Z字状に形成されている。その場合、水平部33と下側垂直部32とで蹴込みKが形成されている。
【0020】
まず、上側垂直部31は、正面視で凸字板状に形成されており、前板10を取り付けるための複数のビス孔31a…31aが設けられている。なお、この上側垂直部31の形状は凸字状に限定されず、矩形状であってもよい。
【0021】
次に、水平部33は、上下に壁面33a,33bを有し、内部空間33cを含む二重壁構造とされている。また、上側壁面33aの左右両側には、サイドカバー50を取り付けるための各前後一対の貫通孔(図2及び図3に右側の一対のみ示す)33d,33dが設けられている。
【0022】
次に、下側垂直部32は、前後に壁面32a,32bを有すると共にこれらの壁面32a,32bを上下方向の中央近傍で結合する仕切壁32cを有し、上下二つの内部空間32d,32eを含む二重壁構造とされている。また、後側壁面32bの左右両側には、引き出し本体20を取り付けるための各上下一対のビス孔(図3に右側の一対のみ示す)32f,32fが設けられており、同じく左右両側の下端近傍には、サイドカバー50を取り付けるための貫通孔(図2及び図3に右側のみ示す)32gが設けられている。なお、後側壁面32bにおけるビス孔32f,32fが設けられた箇所は、若干厚肉とされている。
【0023】
そして、下側垂直部32の前面上下に、下側が開放された溝部33eと上側が開放された溝部32hとが互いに対向して設けられており、各溝部33e,32hに上下各縁部が保持されて、下側垂直部32の前面を覆う前記面材40が保持されている。その場合、前記上側溝部33eは、水平部33の下側壁面33bの後端が凹設されて形成されており、前記下側溝部32hは、下側垂直部32の前側壁面32aの下端がL字状に延設されて形成されている。なお、面材40には、例えば合板の表面にステンレス鋼板が貼付された構成のものが用いられる。面材40の取り付けは、一方の側方から上下の溝部33e,32h間に挿入すればよい。さらに、面材40を、例えば両面粘着テープ等を用いて下側垂直部32の前面に固定してもよい。
【0024】
図4及び図5に示すサイドカバー50は、側面視でL字状に形成されたポリプロピレン樹脂製であり、L字状の側面部51と、側面部51の上縁から連結部材30の水平部33の上面つまり上側壁面33aに沿って延設された上面片52と、同じく縦長部分の前縁から連結部材30の下側垂直部32の前面つまり前側壁面32aひいては面材40に沿って少し延設された短冊状の前面片53と、同じく後縁下部から連結部材30の下側垂直部32の後面つまり後側壁面32bに沿って延設された台形状の後面片54と、同じく縦長部分の下縁から連結部材30の下側垂直部32の下端に沿って少し延設された底面片55とを有している。
【0025】
また、上面片52の下面には、前後一対の円柱状のボス52a,52aが突設されている。これらのボス52a,52aは、連結部材30の水平部33の上側壁面33aに設けられた貫通孔33d,33dに上方から嵌入するものである(図2及び図3も参照)。そして、後面片54には、前方に向けて一つの円柱状のボス54aが突設されている。このボス54aは、連結部材30の下側垂直部32の後側壁面32bに設けられた貫通孔32gに後方から嵌入するものである(図2及び図3も参照)。
【0026】
これにより、サイドカバー50は、連結部材30の端面に確実に取り付けられ、図2及び図3にも示すように、連結部材30の端面に加えて面材40の端面も覆うことになり、側方からの美観を良好に維持することができる。
【0027】
そして、このサイドカバー50を連結部材30の端面に取り付けるときには、サイドカバー50の上面片52を連結部材40の水平部33に上方から近づけ、後面片54を若干押し広げながら、上方のボス52a,52aを貫通孔33d,33dに、下方のボス54aを貫通孔32gに嵌入させればよい。また、下方のボス54aの貫通孔32gへの嵌入をスムーズにするため、このボス54aの頂部(図4及び図5においては、頂部の左側)を斜めに切り欠いてもよい。
【0028】
なお、本実施の形態では、引き出し4を引き出した状態で床面Fとの間の間隔が極力狭くなるようにとの配慮から、図3を参照すると、連結部材30と引き出し本体20との取り付け関係は、引き出し4を収納した状態で、下側垂直部32の下端と床面Fとの間の間隔は約20mmに設定されている。
【0029】
以上のように構成したことにより、まず、上側垂直部31と下側垂直部32と水平部33とでなる蹴込み引き出し用連結部材30において、水平部33を上下に壁面33a,33bを有する二重壁構造としたので、水平部33に剛性を付与させることができる。したがって、蹴込み引き出し4の前部の剛性を高くすることができる。すなわち、本実施の形態のように、上側垂直部31に取り付けた前板10が重量物であっても、図3に矢印xで示す重量負荷に抗して堅固に支持されるようになる。
【0030】
次に、連結部材30の下側垂直部32を前後の壁面32a,32bを有する二重壁構造としたことにより、下側垂直部32に剛性を付与させることができると共に、軽量化を維持しつつ厚みを確保することができるようになる。したがって、蹴込み引き出しの前後方向の寸法を変更せずに、この下側垂直部32に従来の下側前板を代用させることが可能となり、また、構造の簡素化を図ることができる。
【0031】
また、下側垂直部32の前面の上下に、互いに対向する溝部33e,32hを設けたので、この前面を覆う面材40は、その上縁部及び下縁部を保持する前記両溝部33e,32hによって前記前面に確実に保持されるようになる。
【0032】
そして、前記連結部材30を用いて引き出し本体20と前板10とを連結したことにより、前述したような特徴を有する蹴込み引き出しが実現する。
【0033】
次に、連結部材の変形例について説明する。
【0034】
図6に示すように、この場合の連結部材30′では、引き出し本体20が取り付けられる下側垂直部32′が中実体つまり厚肉板状であること以外は前記実施の形態で説明したと同じ構成であり、前板10が取り付けられる板状の上側垂直部31′と、上下の壁面33a′,33b′と内部空間33c′とを有する二重壁構造の水平部33′とを有している。また、下側垂直部32′の前面に上下の溝部33e′,32h′が設けられており、これらの溝部33e′,32h′を介して面材40が取り付けられている。
【0035】
そして、この連結部材30′の端面に前述したと同様のサイドカバー50を取り付けるため、水平部33′の上面つまり上側壁面33a′には貫通孔33d′,33d′が、下側垂直部32′の後面には孔32g′が設けられている。
【0036】
これにより、この構成の場合にも、上側垂直部31′に取り付けた前板10が重量物であっても、矢印xで示す重量負荷に抗して堅固に支持されるようになる。また、下側垂直部32′の厚みは、用途に応じて適宜加減される。
【0037】
なお、本発明は、具体的に詳述した前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨に沿うものであればよい。
【0038】
例えば、連結部材30,30′の水平部33,33′に、上下の壁面33a,33b:33a′,33b′を結合する仕切壁を設けてもよい。これにより、水平部33,33′の剛性を一層向上させることができる。
【0039】
そして、前記実施の形態では、下側垂直部32,32′の前面に、面材40を取り付けるための溝部33e,32h:33e′,32h′を設けたが、用途に応じてこれらの溝部33e,32h:33e′,32h′を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、蹴込み引き出しの前部の剛性を高くすることができる蹴込み引き出し用連結部材及びそれを用いた蹴込み引き出しが提供され、本発明は、台所用家具の技術分野に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係るキッチンキャビネットの斜視図である。
【図2】蹴込み引き出しの斜視図である。
【図3】連結部材の構成を示す図2のI−I線による断面図である。
【図4】サイドカバーの構成を示す斜視図である。
【図5】同じくサイドカバーの構成を示す図4のII方向からの矢視図である。
【図6】連結部材の変形例を示す断面図である。
【図7】従来の蹴込み引き出しの要部断面図である。
【符号の説明】
【0042】
4 蹴込み引き出し
10 前板
20 引き出し本体
30,30′ 連結部材
31,31′ 上側垂直部
32,32′ 下側垂直部
32a,32a′ 前側壁面
32b,32b′ 後側壁面
32h,32h′ 下側溝部
33,33′ 水平部
33a,33a′ 上側壁面
33b,33b′ 下側壁面
33e,33e′ 上側溝部
40 蹴込み面材(面材)
K 蹴込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蹴込み引き出しの引き出し本体と前板とを連結する蹴込み引き出し用連結部材であって、
前記前板が取り付けられる前方の上側垂直部と、
前記引き出し本体が取り付けられる後方の下側垂直部と、
前記上側垂直部の下部と下側垂直部の上部とを連結する水平部とを有し、
前記水平部と下側垂直部とで引き出しの蹴込み部位を形成するようになっていると共に、
前記水平部は、上下に壁面を有する二重壁構造とされていることを特徴とする蹴込み引き出し用連結部材。
【請求項2】
前記請求項1に記載の蹴込み引き出し用連結部材において、
前記下側垂直部は、前後に壁面を有する二重壁構造とされていることを特徴とする蹴込み引き出し用連結部材。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の蹴込み引き出し用連結部材において、
前記下側垂直部の前面の上下に、該前面を覆う面材の上縁部及び下縁部をそれぞれ保持するための下側が開放された溝部及び上側が開放された溝部が互いに対向して設けられていることを特徴とする蹴込み引き出し用連結部材。
【請求項4】
引き出し本体と前板とを有し、キッチンキャビネットの蹴込みに設けられる蹴込み引き出しであって、
前記引き出し本体と前板とが前記請求項1または請求項2に記載の蹴込み引き出し用連結部材を用いて連結されていることを特徴とする蹴込み引き出し。
【請求項5】
引き出し本体と前板とを有し、キッチンキャビネットの蹴込みに設けられる蹴込み引き出しであって、
前記引き出し本体と前板とが前記請求項3に記載の蹴込み引き出し用連結部材を用いて連結されており、且つ、
該連結部材の下側垂直部の前面の上下に設けられた溝部に、該前面を覆う面材が保持されていることを特徴とする蹴込み引き出し。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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