説明

身体加温具及び加温具付衣服

【課題】身体各部を局部的に加温し、防寒耐力を向上させる身体加温具及び加温具付衣服を提供する。
【解決手段】断熱フィルム1の上面に反射フィルム2を層着し、反射フィルム2の上面へ電熱加温シート3を層着し、該電熱加温シート3の上面へ耐熱フィルム4を被着し、前記電熱加温シート3に電極6を接続した電熱加温シート5と、前記電熱加温シート3へ電気を付与する電池11及び前記電熱加温シート3の加温温度を調整するコントローラー12を収納した電池ボックス10と組み合せたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極寒地などの野外において、身体各部又は一部を加温することを目的とした身体加温具及び加温具付衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来身体の局部を加温する為に、発熱シート付衣服(靴、手袋、腹巻)の提案があり、夫々目的を達成していると推定される。
【0003】
例えば、自己温度制御面状発熱体を靴底内にセットする考案がある。また作業用手袋の甲部へ面状発熱体を外封材で密封した考案の提案がある。
【0004】
更にヒーターを腹巻にセットした温熱バンドの提案がある。
【特許文献1】実用新案登録第3116693号
【特許文献2】実用新案登録第3061750号
【特許文献3】実用新案登録第2583607号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来面状ヒーター又は2枚のフィルム間へ電熱線を敷設し、これに通電して発熱を得ようとする試みがなされている。然し乍ら、面状発熱体であっても、熱効率、強靭性、全体の厚さを小さく収めること、発熱コントロールの難易、耐久性などの幾多の改良点があって、開発中である。
【0006】
また発熱においても、単に加温する場合と、遠赤外線を放射する場合とでは大差がある。また極寒地においては、外部温度が低い為に電池を電源とする場合には、加温効果の低下があるなどの諸々の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記各種問題点に鑑み、外部側に断熱フィルムを用い、熱を内側へ向かわせる為に反射フィルムを介して電熱加温シートを層着し、その上に保護フィルムを被着して前記従来の問題点を解決したのである。
【0008】
即ちこの発明は、断熱フィルムの上面に反射フィルムを層着し、反射フィルムの上面へ電熱加温シートを層着し、該電熱加温シートの上面へ耐熱フィルムを被着し、前記電熱加温シートに電極を接続した電熱加温シートと、前記電熱加温シートへ電気を付与する電池入り制御ボックスと組み合せたことを特徴とする身体加温具である。また、衣服の発明は、請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを衣服類に装着し、これに、電熱加温シートへ通電入力する為の電池入り制御ボックスを付属させたことを特徴とする衣服用身体加温具であり、短靴の中敷部又は長靴の足部へ請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを設置したことを特徴とする加温具付靴であり、帽子又は頭巾の帽体側壁へ請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付帽子である。
【0009】
更に他の発明は、上衣の背部、腰部、又は肩部内側へ請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付上衣であり、また、ベストの背部又は背骨部の両方又は一方に請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付衣服であり、手袋の甲部内側又は手首部へ、請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付手袋である。
【0010】
前記断熱フィルムとしては、発泡ウレタンフィルム(厚さ1mm〜2mm)、反射フィルムとしては、アルミニューム箔又はポリプロフィルムにアルミニューム蒸着した反射フィルム(厚さ0.5mm以下)、電熱加温シート(厚さ0.5mm〜1.0mm、ポリプロフィルムに炭化布をラミネートした)、更に断熱フィルム(例えばウレタンフィルム)を被着し、全体を3mm〜4mmの厚さにまとめる。
【0011】
前記電熱加温シートは、和紙の糸で織成した布を炭化して製造するので、厚くも薄くもできるが、通常の電熱加温シートとしては、厚さ0.5mm〜1.0mmが普通である。また、耐熱性合成樹脂フィルムの一面に、炭素粒を塗布又は印刷して発熱層を設けることもできる。この場合には、炭素粒の径と、フィルムの厚さで全体の厚さが決まるので、厚さは0.3mm〜0.6mmとか自由に設定することができると共に、通電して加温すると、前記炭素粒が離れるので、通電困難となる特性を利用し、自動温度制御の電熱加温シートを得ることができる。
【0012】
このような構造においては、電熱加温シートの温度が自動制御されるので、電源、電圧の不調又はコントローラーの故障などの為に、突然大きい電流が流れるような事故は未然に防止される。
【0013】
従って衣服などに装着しても、上限温度を例えば50℃に定めておけば、火傷を生じるおそれなく、過熱による損傷も皆無となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、電熱加温シートが薄いので、靴、腹巻、上衣、手袋、帽子などに装着する場合に厚さの制約がなく、自由にセットできる効果がある。
【0015】
また面発熱であって、身体へ均等加温できるので、皮膚との関係が安定し、局部過熱による事故を生じる余地がないなどの効果がある。
【0016】
また強靭であって、長期使用に対し十分の耐久性を期待できる効果がある。また柔軟性があるので、装着形状に制約がなく(平面でも凹凸面でも自由)、加圧、引張についても、フィルムの層着により耐力が増加するので、使用中破損などのおそれはないなどの諸効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明は、断熱フィルムの上にアルミ箔を層着し、アルミ箔の上に和紙よりなる織布の炭化シートを層着し、炭化シートの上面を耐熱フィルムで被着した電熱加温シートを、衣服の加温部に装着すると共に、電池入りボックスを組み合せて、この発明の衣服用身体加温具を得た。
【0018】
前記において、電熱加温シートは衣服に縫着し、電池入りボックスはポケットに収容すれば、野外各所へ行った場合であっても、確実に保温を期待することができる。例えば10cmの電熱加温シートに、単4電池4本で、7時間保温(発熱部50℃)ができる。
【実施例1】
【0019】
この発明の実施例を図1について説明すれば、厚さ1.2mmの発泡ポリウレタンフィルム1の上面に厚さ0.2mmのアルミニューム蒸着フィルム2を層着し、その上面に厚さ0.5mmの炭化和紙布3を層着し、両側に電極6、6をセットし、全面に厚さ0.1mmのポリプロフィルム4を被着して、厚さ2mmの遠赤外線を放射する電熱加温シート5が生成された。
【0020】
前記電熱加温シート5のリード線7、7のコード8端にプラグ9を接続し、電池11を収容し、コントローラー12を収容した電池ボックス10のコンセント13に接続すれば、前記電池11の電気により、前記電熱加温シート5を加熱することができる。図中14は調整摘みである。前記電熱加温シート5と、電池ボックス9の組み合せによりこの発明の身体加温具ができる。
【実施例2】
【0021】
この発明の実施例を図2(a)について説明すれば、長靴15の筒状部15aにポケット16を設けて電池ボックス10を収容する。また靴部15bの底と、筒状部15aの内側へ電熱加温シート5を夫々設置し、夫々電池との回路を完結する。図中14は調整摘みである。
【0022】
また図2(b)について説明すれば、編上げ靴17の筒状部17aにポケット18を設けて電池ボックス10を収容し、筒状部17a及び靴底部へ電池加温シート5を夫々設置する。前記において、中敷板34へ電熱加温シート5を埋設すれば、中敷板34を収容するのみで、セットすることができる。
【0023】
この実施例においては、コントローラー12の摘み14により適宜調整して、電池ボックス10をポケット18に収容すれば、適宜の加温温度(例えば40℃)で夫々加温することができる。この場合に、断熱フィルム側を外側にすることは当然である。
【0024】
前記実施例によれば、断熱フィルム1と、反射フィルム2によって、電熱加温シートの熱量は悉く内側向きになることと、遠赤外線の為に発熱が有効に使われ、比較的少電力で、必要な保温効果を得ることができる。
【実施例3】
【0025】
この発明の他の実施例を図3(a)について説明すると、頭巾19の頭部及び首部の内側にかけてこの発明の電熱加温シート5を設置し、その電池ボックス10は、ポケット20に収容する。前記実施例において、電熱加温シート5からコードを伸ばし、ボックスを上衣のポケットへ収納することもできる。
【0026】
次に図3(b)によれば、帽子21の帽体部21aに、電熱加温シート5を設置し、そのコード8を伸ばして、電池ボックス10を上衣のポケットなどに収容すれば、安定して保持することができる。
【実施例4】
【0027】
この発明の実施例を図4について説明すれば、加温帯22の内側に電熱加温シート5を取付け、前記加温帯22の外側に電池ボックス10のポケット23を設けたもので、図中24、25は加温帯仮着用の面ファスナー、26は案内環である。
【0028】
前記実施例に代えて、通常の腹巻27へ、電熱加温シート5を取付けることもできる。この場合に、腹巻27へポケット28を設け、又はコード8を介して電池ボックス10を上衣のポケットへ収容することもできる。前記腹巻27は伸縮編にしてある(図4(e))。
【0029】
また電熱加温シート5をパット29にセットし、前記パット29に紐30、30をつけて、芯体適宜に縛着することもできる。この場合にはパット29の裏側へポケット31を設けて電池ボックスを入れることができる。
【実施例5】
【0030】
この発明の実施例を図5(a)について説明すれば、手袋32の甲部内側(または手首部)にこの発明の電熱加温シート5、5を設置する。この場合に、電池ボックス10は、コード8を介して接続され、例えば上衣のポケットなどに収容される。
【0031】
また図5(b)は、靴下33の足部及び脚部へ、電熱加温シート5を設置した場合の実施例である。また図5(c)は、靴の底敷35へ電熱加温シート5を設置した実施例である。
【0032】
この場合には、電熱加温シート5にはコード8を介して電池ボックス10が接続され、電池ボックス10は、上衣のポケットその他に収容保持される。
【0033】
この発明の実施例を図6について説明すると、図6(a)において、ベスト34の肩部及び背骨部へ電熱加温シート5、5を装着したものである。
【0034】
前記ベスト34を着用すれば、肩又は背骨部を適温(例えば40℃〜50℃)に加熱することができる。
【0035】
前記実施例においては、電熱加温シート5、5を、ベストの肩部へ夫々装着させたが、装着数又は装着場所について、特に制約はない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)この発明の電熱加温シートの実施例の一部を省略した断面拡大図、(b)同じく一部を省略した平面図、(c)同じく電池ボックスの実施例の拡大斜視図。
【図2】(a)同じく長靴に応用した実施例の斜視図、(b)同じく編上げ靴の実施例の斜視図、(c)同じく底敷の平面図。
【図3】(a)同じく頭巾の実施例の斜視図、(b)同じく帽子の実施例の一部を省略した斜視図。
【図4】(a)同じく腹帯の実施例の一部を省略した裏側斜視図、(b)同じく一部を省略した表側斜視図、(c)同じくパットの実施例の一部を省略した裏側斜視図、(d)同じく一部を省略した表側斜視図、(e)同じく腹巻の実施例の斜視図。
【図5】(a)同じく手袋の実施例の斜視図、(b)同じく靴下の実施例の平面図。
【図6】(a)同じくベストの実施例の正面図、(b)同じく背面図。
【符号の説明】
【0037】
1 断熱フィルム
2 反射フィルム
3 電熱加温シート
4 耐熱フィルム
5 電熱加温シート
6 電極
7 リード線
8 コード
9 プラグ
10 電池ボックス
11 電池
12 コントローラー
13 コンセント
14 調整摘み
15 長靴
17 編上げ靴
19 頭巾
21 帽子
22 加温帯
27 腹巻
29 パット
32 手袋
33 靴下

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱フィルムの上面に反射フィルムを層着し、反射フィルムの上面へ電熱加温シートを層着し、該電熱加温シートの上面へ耐熱フィルムを被着し、前記電熱加温シートに電極を接続した電熱加温シートと、前記電熱加温シートへ電気を付与する電池入り制御ボックスと組み合せたことを特徴とする身体加温具。
【請求項2】
請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを衣服類に装着し、これに、電熱加温シートへ通電入力する為の電池入り制御ボックスを付属させたことを特徴とする衣服用身体加温具。
【請求項3】
短靴の中敷部又は長靴の足部へ請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを設置したことを特徴とする加温具付靴。
【請求項4】
帽子又は頭巾の帽体側壁へ請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付帽子。
【請求項5】
上衣の背部、腰部、又は肩部内側へ請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付上衣。
【請求項6】
ベストの背部又は背骨部の両方又は一方に請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付衣服。
【請求項7】
手袋の甲部内側又は手首部の一方又は両方へ、請求項1記載の身体加温具の電熱加温シートを装着したことを特徴とする加温具付手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−304(P2008−304A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172130(P2006−172130)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(303013039)
【Fターム(参考)】