説明

車両の後方情報装置

【課題】ハイマウントストップランプの小型化を可能とし、後方視認カメラを上下方向に併設して車両後端部上方の車両中心位置への外付け設置を可能とした車両の後方情報装置の提供を図る。
【解決手段】プロテクタ30およびハイマウントストップランプ11の半導体型光源12が固設されたランプブラケット15が放熱性剛性部材で構成されて、半導体型光源12の発熱の放熱効果が高められることにより高輝度タイプの半導体型光源12の採用が可能となる。これにより、ハイマウントストップランプ11の車幅方向の短小化が可能となり、プロテクタ30内にハイマウントストップランプ11と後方視認カメラ20とを上下方向に併設して、車両後端部上方の車両中心位置への外付けが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動信号表示機能と、車両後部の下側周りの外部状況監視機能とを併有する後方情報装置、とりわけ、荷室タイプのトラックにおける後方情報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷室タイプのトラックの中でも、中型トラックでは、自車の制動操作を後続車両が視認し易いようにハイマウントストップランプの設置が義務付けられている。
【0003】
ハイマウントストップランプは、保安基準から車両中心に設置位置が規制されている。
【0004】
従って、荷室タイプのトラックの場合、ハイマウントストップランプは、トラックの荷室後端部の外部上方中心位置に外付けされることになる。
【0005】
ハイマウントストップランプは、光源として発光ダイオード(LED)等の自発光半導体型光源が用いられ、その多数個を車幅方向に列設配置した横長の構成として、所要の点灯視認性が得られるようにしている。
【0006】
このようにハイマウントストップランプが横長に構成されていると、これをトラックの荷室後端部の上方位置に外付けすると、障害物等との干渉度合いが大きくなって、ハイマウントストップランプの損傷が懸念される。
【0007】
また、荷室タイプのトラックにあっては、荷室後端部の外部上方位置に後方視認カメラを設置して、該後方視認カメラで撮影された車両の後端部下側周りの外部状況の映像をドライバーが視認して、車両の安全な後退操作を行えることが望まれる。
【0008】
この後方視認カメラは、ドライバーの視認性を高める上からは、車両後端部が左右対称に映像内に入る位置に、即ち、車両中心位置に設置することが望ましい。しかし、前述のようにハイマウントストップランプが車両中心位置に車幅方向に横長に占有してしまうと、後方視認カメラはハイマウントストップランプの一側方向に位置をずらした配置とせざるを得なくなってしまう。
【0009】
一方、普通乗用車等の小型車両における車室内設置タイプのハイマウントストップランプには、特許文献1に示されているように、横長のハイマウントストップランプのケース内に、後続車両の距離や方向等、自車の後方情報を検出するセンサをストップランプ光源と上下方向に併設したものが知られている。このセンサとして、CCDカメラ等のステレオ視カメラが用いられ、該ステレオ視カメラがケースの車幅方向中心位置で横長のLEDランプ光源群の下側に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−320000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示された車室内設置タイプのハイマウントストップランプを荷室タイプのトラックに適用しようとしても、荷室タイプのトラックでは前述のようにハイマウントストップランプが荷室後端部の車両中心位置に外付けされることになるため、横長のハイマウントストップランプが障害物等と干渉する度合いが大きくなることに変わりはない。
【0012】
そこで、本発明はハイマウントストップランプにおける半導体型光源の高輝度化を可能として、その配設数量を可及的に少なく抑えて該ハイマウントストップランプの小型化を実現でき、該ハイマウントストップランプと、車両後部の下側周りの外部状況を撮影する後方視認カメラとを上下方向に併設して、何れも車両の後端部上方の車両中心位置への外付け設置を可能とした車両の後方情報装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両の後方情報装置にあっては、車両の後端部上方位置で、外部に露出して固定された放熱性剛性部材からなるボックス状のプロテクタと、前記プロテクタ内に配設され、車両後部の下側周りの外部状況を撮影する後方視認カメラと、半導体型光源を有し、前記プロテクタ内に後方視認カメラと上下方向に併設されたハイマウントストップランプと、を備え、前記ハイマウントストップランプは、前記半導体型光源が放熱性剛性部材からなるランプブラケットに固設され、該ランプブラケットを前記プロテクタの内側面に重合,固定して取付けられていることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プロテクタおよびハイマウントストップランプの半導体型光源が固設されたランプブラケットが、何れも放熱性剛性部材で構成されているので、半導体型光源の発熱をランプブラケットからプロテクタに良好に伝達できて高い放熱効果を得ることができる。
【0015】
従って、発熱量の大きな高輝度タイプの半導体型光源の採用が可能で、可及的に少ない光源配設数量で所要の点灯視認性を確保できて、ハイマウントストップランプの小型化、特に車幅方向の短小化が可能となる。
【0016】
この結果、ハイマウントストップランプと後方視認カメラとを上下方向に併設したプロテクタを小型化できて、障害物等との干渉度合いを小さくすることができる。
【0017】
そして、ハイマウントストップランプと後方視認カメラは、車両中心位置に上下方向に併設することが可能であるため、ハイマウントストップランプの保安基準と、後方視認カメラによる車両後部の下側周りの外部状況視認性の確保との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の対象とする車両の側面説明図。
【図2】本発明に係る後方情報装置の一実施形態を示す分解斜視図。
【図3】図2に示した後方情報装置の組立て状態を示す正面図。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を車両として、キャビン後部に荷室を備えた荷室タイプのトラックを例に採って図面と共に詳述する。
【0020】
図1に示すトラック1は、キャビン2の後部に積載荷物を格納する荷室3を備えている。
【0021】
前記荷室3の後端部上方の車両中心位置に、車両の制動信号表示機能と、車両後部の下側周りの外部状況監視機能とを併有する後方情報装置10が外付けして設置されている。
【0022】
後方情報装置10は、図2に示すようにハイマウントストップランプ11と、後方視認カメラ20と、これらハイマウントストップランプ11と後方視認カメラ20とを内包して保護するプロテクタ30と、を備えている。
【0023】
ハイマウントストップランプ11は、トラック1のフットブレーキの制動信号にもとづいて点灯表示して、後続車両に注意を喚起するものである。
【0024】
このハイマウントストップランプ11は、図3,図4に示すように、光源として半導体型光源12が用いられている。
【0025】
半導体型光源12は、発光ダイオード(LED)や有機ELおよび無機ELを含むエレクトロルミネッセンス(EL)など、半導体に電圧を印加することによって得られるルミネッセンス(発光現象)を利用した光源である。
【0026】
本実施形態では、半導体型光源12として基板12b上に定電圧で高輝度発光する2つの発光部12aを左右方向に並設した、所謂、高輝度LEDが用いられている。半導体型光源12は、基板12bを後述するランプブラケット15面に重合してねじ部材14aにより締結固定され、発光部12aおよび基板12bを内包して覆うアウターレンズ13の左右方向両端部を、このランプブラケット15にねじ部材14bにより締結固定して、ハイマウントストップランプ11が構成される。
【0027】
プロテクタ30は、その内側にハイマウントストップランプ11と後方視認カメラ20とを上下方向に併設して、これらを内包して保護するもので、本実施形態ではプロテクタ30の上段にハイマウントストップランプ11が、下段に後方視認カメラ20が配設されている。
【0028】
このプロテクタ30は、放熱性剛性部材、例えば耐腐触性と放熱性に優れたステンレス鋼材をもって、下側を開放した略方形のボックス状に構成されている。
【0029】
プロテクタ30の後壁30aの上側中央部には、ハイマウントストップランプ11のアウターレンズ13を外部に露出配置するための開窓部31が設けられ、左右側壁30bにはこのハイマウントストップランプ11を取付けるためのランプ取付孔32が設けられている。
【0030】
ランプ取付孔32は、ハイマウントストップランプ11を前後方向に位置調整可能なように前後方向の長孔として形成されている。
【0031】
ハイマウントストップランプ11のランプブラケット15は、プロテクタ30と同質材、即ち、耐腐触性と放熱性に優れたステンレス鋼材からなる。
【0032】
このランプブラケット15は、左右両側縁にプロテクタ30の左右側壁30bの内側面に重合する取付片16が前方に向けて曲折成形されている。取付片16にはねじ孔16aが形成され、該取付片16をプロテクタ30の左右側壁30bの内側面に重合した状態で、ねじ部材19を前記ランプ取付孔32を通してねじ孔16aに螺合することによって、ハイマウントストップランプ11がプロテクタ30内の左右方向中心位置に固定される。
【0033】
ランプブラケット15の上下縁の左右側部には、上下各1対の位置決め片17,18が前方に向けて略水平に曲折成形されている。
【0034】
上側の位置決め片17がプロテクタ30の上壁30cの内側面に重合し、下側の位置決め片18が後述する遮光壁36の上縁に摺接することで、ハイマウントストップランプ11の上下方向の位置決めが行われる。
【0035】
プロテクタ30の上壁30cと前壁30dとの連設コーナー部の中央部には、ハイマウントストップランプ11に設けられた図外の通電用ハーネスを外部に引き出すための開口33が設けられている。
【0036】
プロテクタ30の前壁30dには、前記開口33の下方に後述するカメラブラケット23を受容するための切欠部34が、下縁側から切欠形成されている。
【0037】
プロテクタ30は、トラック1における荷室3の後端部上方の車両中心位置で、前壁30dを車体外板4に重合して図外のねじ部材により締結固定される。前壁30dには、車体外板4に対するねじ止め固定のため、前記切欠部34の左右両側部分にねじ挿通孔35が設けられている。
【0038】
後方視認カメラ20は、プロテクタ30の下側開放部に、レンズ部21を後ろ斜め下方に向けた状態で配設されている。
【0039】
後方視認カメラ20のアウターケース22には、支軸22aを介してカメラブラケット23が上下方向に相対回動可能に連結されている。
【0040】
カメラブラケット23はプロテクタ30と同質材で構成され、ベース部23aと、該ベース部23aの左右両側縁から曲折成形されて後方視認カメラ20を前記支軸22aを介して回動可能に支持する1対のアーム部23bとで構成されている。このカメラブラケット23は、プロテクタ30の前壁30dに設けられた切欠部33に嵌装し得る大きさに構成され、ベース部23aには、これを車体外板4にねじ止め固定するためのねじ挿通孔24が設けられている。
【0041】
後方視認カメラ20は、プロテクタ30の下側開放部に挿入され、上段のハイマウントストップランプ11と同様にプロテクタ30の左右方向中心位置において、カメラブラケット23をプロテクタ30の前壁30dの切欠部33に嵌装して、該プロテクタ30とは独立して車体外板4に図外のねじ部材により締結固定される。
【0042】
このような後方視認カメラ20の配置により、該後方視認カメラ20がハイマウントストップランプ11の有効配光角度θの範囲の外側に位置される。また、後方視認カメラ20の視野角度θの向きは、カメラブラケット23に対し後方視認カメラ20を上下方向に回動することによって微調整される。
【0043】
また、本実施形態にあっては、プロテクタ30の下側開放部の後縁、即ち、プロテクタ30の後壁30aの下縁に、内側に向けて斜め上方に立ち上がり、後方視認カメラ20とハイマウントストップランプ11との間に延出する遮光壁36が曲折成形されている。
【0044】
以上の構成からなる本実施形態の後方情報装置10によれば、プロテクタ30およびハイマウントストップランプ11の半導体型光源12が固設されたランプブラケット15が、何れも放熱性剛性部材であるステンレス鋼材で構成されているので、半導体型光源12の発熱をランプブラケット15からプロテクタ30に良好に伝達できて高い放熱効果を得ることができる。
【0045】
特に、本実施形態にあっては、ランプブラケット15の左右両端部の取付片16がプロテクタ30の左右側壁30bの内側面に重合して面接触し、ランプブラケット15上縁の左右1対の位置決め片17がプロテクタ30の上壁30cの内側面に重合して面接触しているので、該ランプブラケット15からプロテクタ30への熱伝達がより一層良好に行われて高い放熱効果が得られる。
【0046】
従って、高輝度LEDに代表されるように発熱量の大きな高輝度タイプの半導体型光源12であっても、高い放熱作用によって熱影響による照明効果の低下を回避することができる。これにより、高輝度タイプの半導体型光源12を採用することによって、本実施形態のように左右2つの発光部12aを備えた高輝度LEDを半導体型光源12として用いて、可及的に少ない光源配設数量で所要の点灯視認性を確保できるので、ハイマウントストップランプ11の小型化、特に車幅方向の短小化が可能となる。
【0047】
この結果、ハイマウントストップランプ11と後方視認カメラ20とを上下方向に併設したプロテクタ30を小型化できて、障害物等との干渉度合いを小さくすることができる。また、万一、後方情報装置10が障害物等と干渉しても、ハイマウントストップランプ11と後方視認カメラ20は、ステンレス鋼材等の剛性部材からなるプロテクタ30に内包されて保護されているため、前記干渉による破損等を防止することができる。
【0048】
そして、ハイマウントストップランプ11と後方視認カメラ20は、車両中心位置に上下方向に併設されているので、ハイマウントストップランプ11の保安基準と、後方視認カメラ20による車両後部外側の下側周りの状況視認性の確保との両立を図ることができる。
【0049】
ここで、特に本実施形態にあっては、後方視認カメラ20がプロテクタ30の下側開放部に配設され、ハイマウントストップランプ11がこの後方視認カメラ20の上方位置に配設されているので、ハイマウントストップランプ11の配光が後方視認カメラ20の映像内に入りにくく、ハレーションによる映像障害を生起するのを回避することができる。しかも、このようなハイマウントストップランプ11と後方視認カメラ20との上下関係配置とすることによって、後方視認カメラ20をハイマウントストップランプ11の有効配光角度θの範囲外に配置できて、前記ハレーションによる映像障害防止効果が高められる。特に、本実施形態では、プロテクタ30の下側開放部の後縁には、後方視認カメラ20とハイマウントストップランプ11との間に延出する遮光壁36が設けられているので、前記ハレーションによる映像障害防止効果をより一層高めることができる。
【0050】
また、後方視認カメラ20はカメラブラケット23を備えていて、このカメラブラケット23がプロテクタ30と独立して車体外板14に固定されているので、ハイマウントストップランプ11の半導体型光源12の交換が必要となった場合に、後方視認カメラ20を車体外板14側に残したままプロテクタ30を車体外板14から外して半導体型光源12の交換を行え、後方視認カメラ20の煩瑣な取付調整を伴わずに済む利点がある。
【0051】
なお、前記実施形態ではプロテクタ30およびランプブラケット15をステンレス鋼材で構成した例を開示したが、この他、放熱性と剛性の高いアルミダイカスト製としてもよい。また、車両は前記荷室タイプのトラックに限定されるものでないことは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1…トラック(車両)
4…車体外板
10…後方情報装置
11…ハイマウントストップランプ
12…半導体型光源
15…ランプブラケット
23…カメラブラケット
24…後方視認カメラ
30…プロテクタ
36…遮光壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後端部上方位置で、外部に露出して固定された放熱性剛性部材からなるボックス状のプロテクタと、
前記プロテクタ内に配設され、車両後部の下側周りの外部状況を撮影する後方視認カメラと、
半導体型光源を有し、前記プロテクタ内に後方視認カメラと上下方向に併設されたハイマウントストップランプと、を備え、
前記ハイマウントストップランプは、前記半導体型光源が放熱性剛性部材からなるランプブラケットに固設され、該ランプブラケットを前記プロテクタの内側面に重合,固定して取付けられていることを特徴とする車両の後方情報装置。
【請求項2】
前記プロテクタは下側開放部を備え、
前記後方視認カメラは、この下側開放部に後方視認可能に配設され、
前記後方視認カメラの上方位置に前記ハイマウントストップランプが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の後方情報装置。
【請求項3】
前記プロテクタの下側開放部の後縁には、前記後方視認カメラとハイマウントストップランプとの間に延出する遮光壁が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の後方情報装置。
【請求項4】
前記後方視認カメラはカメラブラケットに取付けられ、該カメラブラケットが前記プロテクタと独立して車体外板に固定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の車両の後方情報装置。
【請求項5】
前記後方視認カメラが、ハイマウントストップランプの有効配光角度範囲の外側に配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の後方情報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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