説明

車両及び作業機

【課題】盗難を防止するためにエンジンの始動制御を行う機能を備えた車両及び作業機の提供。
【解決手段】イモビライザユニットにキーIDが入力された場合(S11:YES)、そのキーIDが予め登録されたキーIDであるか否かを判断する(S12)。予めキーIDであると判断した場合(S12:YES)、ユニットIDの読出しを行い(S14)、読出したユニットIDをエンジンコントローラへ送信する(S15)。エンジンコントローラは、受信したユニットIDにより使用者が認証できると判断したとき(S16:YES)、エンジンを始動する(S17)。一方、認証できないと判断したとき(S16:NO)、機能制限を行い(S18)、エンジンを始動する(S19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難を防止するためにエンジンの始動制御を行う機能を有する車両及び作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の盗難を防止する目的でイモビライザなどの盗難防止システムを搭載した車両が普及している。盗難防止システムは、トランスポンダを内蔵したイグニションキーから暗証コードを取得し、取得した暗証コードに基づいて認証処理を行う認証装置と、この認証装置での認証結果に応じてエンジンの始動を許可したり、禁止したりする制御装置とを備えていることが一般的である。
【0003】
また、盗難防止の効果を高めるために、エンジン始動直後においてイグニションキーから取得した第1のコードが予め登録されたコードであるか否かを認証装置にて判定し、予め登録された第1のコードを取得した場合には、第2のコードをエンジン制御装置に送信し、エンジン制御装置にて2回目の認証処理を行うようにした車両用盗難防止装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3388648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用盗難防止装置は、第1のコード及び第2のコードに基づいて使用者が認証されない場合には、エンジンを停止させることにより車両の盗難を防止することを目的としているため、例えば、サービスマンなどの第三者が車両を移動させることは想定されていない。特に、トラクタ、コンバインなどの農作業機においては、何らかの理由により圃場の中央付近で農作業機が停止してしまった場合、サービスマンなどが圃場から修理・点検しやすい場所へ移動させることを行うが、顧客から正当なイグニションキーを預かるまで作業を開始することができないという問題点を有している。また、盗難防止装置自体が故障している場合には、移動させることができないという問題点を有している。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、認証手段により使用者が認証されない場合、動作を制限した状態でエンジンを作動させる構成とすることにより、緊急に移動させる必要がある場合などにおいて、動作を制限した状態で使用を許可することができる車両及び作業機を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、認証手段により使用者が認証されない場合、エンジンを始動すると共に、作業部による作業を制限する構成とすることにより、緊急に作業を行う必要がある場合などにおいて、動作を制御した状態で使用を許可することができる作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る車両は、エンジンの動力により走行する車両において、使用者に対する認証を行う認証手段と、該認証手段により使用者が認証されない場合、動作を制限した状態で前記エンジンを作動させる手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1発明にあっては、認証手段により使用者が認証されない場合、動作を制限した状態でエンジンを作動させるようにしているため、例えば、サービスマンなどが移動させたい
場合に、顧客から正当なイグニションキーを預からずとも一時的に移動させることが可能となる。すなわち、機能を制限することによって車両の使用が一時的なものに限定される。
【0009】
第2発明に係る車両は、回転数又はトルクの上限値を制限した状態で前記エンジンを作動させるようにしてあることを特徴とする。
【0010】
第2発明にあっては、回転数又はトルクの上限値が規定されるため、車両の常用を困難にすることができ、盗難防止の効果が得られる。
【0011】
第3発明に係る作業機は、第1発明又は第2発明に記載の車両と、該車両を走行させるエンジンの動力により所定の作業を行う作業部とを備えることを特徴とする。
【0012】
第3発明にあっては、エンジンの動力により所定の作業を行う作業部を備えているため、トラクタ、コンバイン等の農作業機への適用が可能となる。
【0013】
第4発明に係る作業機は、前記車両が備える認証手段により使用者が認証されない場合、前記作業部による作業を制限する手段を備えることを特徴とする。
【0014】
第4発明にあっては、使用者が認証されない場合には、作業部による作業が制限されるため、作業機の常用を困難にすることができ、盗難防止の効果が得られる。
【0015】
第5発明に係る作業機は、エンジンと、該エンジンの動力により所定の作業を行う作業部とを備えた作業機において、使用者に対する認証を行う認証手段と、該認証手段により使用者が認証されない場合、前記エンジンを始動すると共に、前記作業部による作業を制限する手段を備えることを特徴とする。
【0016】
第5発明にあっては、認証手段により使用者が認証されない場合、エンジンは始動するが、作業部による作業は制限されるため、作業機の常用を困難にすることができ、盗難防止の効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
第1発明による場合は、認証手段により使用者が認証されない場合、動作を制限した状態でエンジンを作動させるようにしている。したがって、例えば、サービスマンなどが移動させたい場合には、顧客から正当なイグニションキーを預からずとも一時的に移動させることができる。すなわち、機能を制限することによって車両の使用を一時的なものに限定することができるため、盗難を抑止することができる。
【0018】
第2発明による場合は、回転数又はトルクの上限値を規定している。したがって、車両の常用を困難にすることができ、車両盗難を抑止することができる。
【0019】
第3発明による場合は、エンジンの動力により所定の作業を行う作業部を備えているため、トラクタ、コンバイン等の農作業機への適用が可能となる。
【0020】
第4発明による場合は、使用者が認証されない場合には、作業部による作業を制限する。したがって、作業機の常用を困難にすることができ、作業機の盗難を抑止することができる。
【0021】
第5発明による場合は、認証手段により使用者が認証されない場合、エンジンは始動するが、作業部による作業は制限される。したがって、機能を制限することによって車両の
使用を一時的なものに限定することができ、作業機の盗難を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る車両及び作業機の適用例としてトラクタ及びコンバインを挙げ、その実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は本実施の形態に係るトラクタの制御系の構成を説明するブロック図である。トラクタの制御系は、イモビライザユニット110、エンジンコントローラ130、及び作業機コントローラ150の各装置と、これらを相互に接続するCAN通信バス100とにより構成されている。各装置は、CAN通信バス100を介して通信を行うことにより、通信先の装置に搭載されているハードウェアの状態を把握できるように構成されている。
【0023】
イモビライザユニット110は、イグニションキー10に内蔵されたトランスポンダ11からキー固有のコード(以下、キーIDという)を受信するために、ループコイルなどにより構成されるアンテナ110aを備えている。イモビライザユニット110は、アンテナ110aにて受信したキーIDが正当なキーIDであるか否かを判定するために、EEPROM112に予め記憶されているキーIDと照合を行う。イモビライザユニット110にてキーIDの照合を行い、そのキーIDが認証された場合、次に、イモビライザユニット110の固有のコード(以下、ユニットIDという)をエンジンコントローラ130へ送信する。
【0024】
一般に、エンジン148を始動させるためのイグニションキー10は複数用意され、それぞれに対して固有のキーIDが割り当てられる。この場合、イモビライザユニット110では複数のキーIDに対する照合を行う必要があるため、EEPROM112には、照合用のキーIDを適宜の数だけ記憶するためのキーID記憶領域112aが確保される。図1に示した例は、「KEY01」,…,「KEY06」の6つのキーIDが登録されている。また、EEPROM112は、1つのユニットIDを記憶するためのユニットID記憶領域112bが確保される。図1に示した例では、「UNT01」のユニットIDが登録されている様子が示されている。
【0025】
エンジンコントローラ130は、イモビライザユニット110から送信されるユニットIDを受信したとき、そのユニットIDが正当なIDであるか否か、すなわち、正当なイモビライザユニット110が接続されているか否かを判定するために、照合用のユニットIDを記憶するEEPROM132を備えている。図1に示した例では、EEPROM132内に確保されたユニットID記憶領域132aに「UNT01」のユニットIDが登録されている。
【0026】
エンジンコントローラ130は、受信したユニットIDをEEPROM132に登録されているユニットIDと照合し、受信したユニットIDを認証した場合に始めてエンジンを始動させる。このとき、エンジンコントローラ130は、燃料噴射ポンプ145を作動させると共に、スタータリレー146に対して所定の制御信号を出力する。スタータリレー146に所定の制御信号が入力された場合、スタータモータ147が駆動され、スタータモータ147の駆動力によりエンジン148が始動される。
【0027】
また、本発明ではキーID及びユニットIDにより使用者を認証できない場合であっても、機能を制限した状態でエンジン148を始動できるように構成している。このため、サービスマンなどがトラクタを移動させる必要がある場合などにおいて、顧客から正当なイグニションキー10を預からずとも移動させることが可能となる。
【0028】
以下、CAN通信バス100に接続されている各装置の構成について説明する。図2は
イモビライザユニット110の内部構成、及びイモビライザユニット110に接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。イモビライザユニット110は、CPU111、EEPROM112、CANドライバ113、入力インタフェース114、出力インタフェース115、変調/復調回路116を備える。出力インタフェース115にはランプ122が接続されている。また、変調/復調回路116にはトランスポンダ11から送信されるキーIDを受信するためのアンテナ110aが接続されている。
【0029】
CPU111は、ROM111a、RAM111b、CAN−I/O111cを内蔵する。ROM111aには前述した各種ハードウェアを制御するための制御プログラムが予め格納されている。CPU111は、この制御プログラムを実行してハードウェアの制御を行うことにより、アンテナ110a及び変調/復調回路116を通じて受信するキーIDについて認証処理を行い、キーIDを認証する場合、自身を特定するためのユニットIDをエンジンコントローラ130へ送信する。なお、RAM111bには前記制御プログラムの実行中に生成される各種データが一時的に記憶される。また、CAN−I/O111cにはCANドライバ113が接続されており、CAN通信バス100を介して送受信される各種信号が入力される。
【0030】
図3はエンジンコントローラ130の内部構成、及びエンジンコントローラ130に接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。エンジンコントローラ130は、CPU131、EEPROM132、CANドライバ133、入力インタフェース134、出力インタフェース135を備える。
【0031】
入力インタフェース134に接続される入力機器としては、イグニションスイッチ140、エンジン回転数センサ141、エンジントルクセンサ142、エンジン水温センサ143、エンジンオイル量センサ144などが挙げられる。また、出力インタフェース135に接続される出力機器としては、燃料噴射ポンプ145、スタータリレー146などが挙げられる。スタータリレー146に所定の制御信号が入力された場合、スタータモータ147が駆動され、スタータモータ147の駆動力によりエンジン148が始動する。
【0032】
CPU131は、ROM131a、RAM131b、CAN−I/O131cを内蔵する。ROM131aには前述した各種ハードウェアを制御するための制御プログラムが予め格納されている。RAM131bには、制御プログラムの実行中に生成される各種データが一時的に記憶される。CAN−I/O131cにはCANドライバ133が接続されており、CAN通信バス100を介して送受信される各種信号が入力される。CPU131は、EEPROM132に予め格納されている制御プログラムを実行することにより、前述したハードウェアの制御を行い、CANドライバ133を通じて受信するユニットIDについて認証処理を行うと共に、ユニットIDを認証した場合、燃料噴射ポンプ145、スタータリレー146などを作動させ、エンジン148を始動させる。また、認証できない場合であっても、CPU131は、EEPROM132に予め格納された機能制限テーブル132bに従って機能制限を行った上で、エンジン148を始動させる。ここで、機能制限とは、エンジン148の回転数又はトルクを低く抑えたり、作業機コントローラ150が制御するハードウェアの動作を停止させたりすることをいう。機能制限する項目は機能制限テーブル132bによって規定される。そのため、機能制限テーブル132bには、エンジン回転数、トルクの上限値、動作を停止させるハードウェアの情報が登録されている。
【0033】
図4は作業機コントローラ150の内部構成、及び作業機コントローラ150に接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。作業機コントローラ150は、CPU151、EEPROM152、CANドライバ153、入力インタフェース154、出力インタフェース155を備える。
【0034】
入力インタフェース154に接続される入力機器としては、走行機体の前進/後進を切替えるための前後進切替機構の操作具の位置を検知するリバーサースイッチ161、作業機への動力伝達を入切するためのPTO変速機構操作具の位置を検知するPTO駆動スイッチ162、主変速操作具の位置(角度)を検知する主変速レバー角度センサ163、左右の後輪のみを駆動する2輪駆動状態、左右の前輪及び左右の後輪の周速度が等しくなるように駆動する4輪駆動状態、前輪を後輪の周速度よりも速くなるように駆動する前輪増速状態の各モードを切替えるためのモード切替スイッチ164、走行機体の車速を検知する車速センサ165、作業機の駆動回転数を検知するPTO回転センサ166などが挙げられる。また、出力インタフェース155に接続される出力機器としては、走行機体の前進/後進を切替えるための前後進切替電磁弁171、走行機体の前輪の周速度が後輪の周速度よりも速くなるように駆動するための前輪増速電磁弁172、走行機体を4輪駆動状態とするための4駆動電磁弁173、作業機への動力伝達を入切するためのPTO電磁弁174、ブレーキを入切するためのブレーキ電磁弁175、警告ランプ176などが挙げられる。
【0035】
CPU151は、ROM151a、RAM151b、CAN−I/O151cを内蔵する。ROM151aには前述した各種ハードウェアを制御するための制御プログラムが予め格納されている。RAM151bには、制御プログラムの実行中に生成される各種データが一時的に記憶される。CAN−I/O151cにはCANドライバ153が接続されており、CAN通信バス100を介して送受信される各種信号が入力される。CPU151は、ROM151aに格納された制御プログラムを実行してハードウェアの制御を行うことにより、入力インタフェース154を通じて入力された各種信号がどのような作業を要求しているか判断し、その判断結果に基づいて各種電磁弁171〜175を制御することにより要求された作業を実行するようにしている。
【0036】
以下、トラクタのエンジン148を始動させる際の動作について説明する。図5はエンジン148を始動させる際の認証処理の手順を説明するフローチャートである。イモビライザユニット110は、まず、アンテナ110a及び変調/復調回路116を通じて入力される信号の有無を検出することにより、キーIDが入力されたか否かを判断する(ステップS11)。キーIDが入力されていないと判断した場合(S11:NO)、キーIDが入力されるまで待機する。
【0037】
キーIDが入力されたと判断した場合(S11:YES)、イモビライザユニット110は、入力されたキーIDとEEPROM112のキーID記憶領域112aに予め登録されているキーIDとの照合を行い、入力されたキーIDがイモビライザユニット110に登録されているキーIDに一致するか否かを判断する(ステップS12)。
【0038】
入力されたキーIDが登録されているキーIDに一致しないと判断した場合(S12:NO)、イモビライザユニット110は警報通知を行う(ステップS13)。具体的には、キーIDによる認証が不能である旨を示す信号をCPU111が生成し、生成した信号をCANドライバ113を通じてエンジンコントローラ130へ送信する。警報通知の後、処理をステップS11へ戻す。
【0039】
一方、入力されたキーIDが登録されているキーIDに一致すると判断した場合(S12:YES)、イモビライザユニット110は、EEPROM112のユニットID記憶領域112bからユニットIDの読出しを行い(ステップS14)、読出したユニットIDをCANドライバ113を通じてエンジンコントローラ130へ送信する(ステップS15)。
【0040】
エンジンコントローラ130は、CAN通信バス100を介してイモビライザユニット
110から送信されるユニットIDを受信した場合、エンジンコントローラ130は、受信したユニットIDとEEPROM132のユニットID記憶領域132aに予め登録されているユニットIDとの照合を行い、受信したユニットIDが登録されているユニットIDに一致するか否かを判断することによって使用者を認証できるか否かを判断する(ステップS16)。両IDが一致していると判断した場合、使用者を認証できると判断する。一方、受信したユニットIDと登録されているユニットIDとが一致しないと判断した場合、及びユニットIDを受信する前にステップS13で送信される警報通知を受信した場合、使用者を認証できないと判断する。なお、受信したユニットIDと登録されているユニットIDとが一致しないと判断した場合、イモビライザユニット110の不正交換であると判断し、エンジン148を始動させない警報処理を行ってもよい。
【0041】
エンジンコントローラ130は使用者を認証できると判断した場合(S16:YES)、出力インタフェース135を通じて燃料噴射ポンプ145及びスタータリレー146に所定の制御信号を出力し、スタータリレー146によって作動されるスタータモータ147の駆動力によりエンジン148を始動させる(ステップS17)。
【0042】
一方、使用者を認証できないと判断した場合(S16:NO)、エンジンコントローラ130は機能制限を行い(ステップS18)、エンジン148を始動させる(ステップS19)。例えば、エンジン回転数の上限値を機能制限テーブル132bにより規定している場合、エンジンコントローラ130は、規定されている上限値とエンジン回転数センサ141により得られるエンジン回転数とを比較し、計測したエンジン回転数が上限値を越えないように出力インタフェース135から制御信号を出力し、エンジン回転数の制御を行う。また、機能制限としてPTOの回転を制御する場合、PTOの回転を制御する旨の情報をエンジンコントローラ130から作業機コントローラ150へ通知する。通知を受けた作業機コントローラ150は、PTO駆動スイッチ162がオンとなった場合であっても、PTO電磁弁174に対して制御信号を出力しないように制御する。他の作業部を制御する場合も同様である。
【0043】
このように、機能制限した状態でエンジンの始動が可能となるため、例えば、サービスマンがトラクタを移動させたい場合などに、顧客から正当なイグニションキー10を預からずとも一時的な移動が可能となる。また、機能制限により常用を困難にすることでトラクタの盗難が防止される。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態1ではトラクタについて説明したが、トラクタ以外の作業機に適用することができることは勿論のことである。本実施の形態では、コンバインに適用した形態について説明する。なお、コンバインの制御系の構成、イモビライザユニット110及びエンジンコントローラ130の構成については実施の形態1と全く同様である。
【0045】
図6はコンバインが備える作業機コントローラの内部構成、及び作業機コントローラに接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。この作業機コントローラ250は、CPU251、EEPROM252、CANドライバ253、入力インタフェース254、出力インタフェース255を備える。
【0046】
入力インタフェース254に接続される入力機器としては、走行クラッチが「切」かつ駐車ブレーキが「入」の状態を検知する走行主クラッチペダルスイッチ261、脱穀クラッチを入切する脱穀クラッチスイッチ262、排出オーガのクラッチを入切するための排出オーガクラッチスイッチ263、縦搬送装置を移動調節して扱ぎ深さを調節する扱ぎ深さ調節スイッチ264、刈取部を昇降させるための刈取部昇降スイッチ265、刈取クラッチを入切するための刈取クラッチスイッチ266、副変速の高速/低速を切替えるため
の副変速高低切替スイッチ267などが挙げられる。また、出力インタフェース255に接続される出力機器としては、脱穀部への動力伝達を入切するための脱穀クラッチ電磁弁271、刈取部への動力伝達を入切するための刈取クラッチ電磁弁272、刈取部を昇降移動させる機構への動力伝達を入切するための刈取部昇降電磁弁273、副変速の高速/低速を切替える副変速電磁弁274、排出オーガを駆動するオーガクラッチモータ275、扱ぎ深さを調節する扱ぎ深さ調節モータ276などが挙げられる。
【0047】
CPU251は、ROM251a、RAM251b、CAN−I/O251cを内蔵する。ROM251aには前述した各種ハードウェアを制御するための制御プログラムが予め格納されている。RAM251bには、制御プログラムの実行中に生成される各種データが一時的に記憶される。CAN−I/O251cにはCANドライバ253が接続されており、CAN通信バス100を介して送受信される各種信号が入力される。CPU251は、EEPROM252に格納されている制御プログラムを実行することにより、入力インタフェース254を通じて入力された各種信号がどのような作業を要求しているか判断し、その判断結果に基づいて各種電磁弁271〜274及び各種モータ275,276の駆動を制御することにより要求された作業を実行するようにしている。
【0048】
実施の形態1と同様に、エンジンコントローラ130のEEPROM132に格納された機能制限テーブル132bは、使用者を認証できない場合に実行する機能制限の内容を規定する。例えば、使用者でない場合であっても脱穀作業は許可するが、刈取作業は許可しない場合、刈取クラッチ電磁弁272への制御信号を禁止し、脱穀クラッチ電磁弁271への制御信号の出力を許可する旨の情報を機能制限テーブル132bに登録しておく。そして、実際に機能制限を行う際、その旨の情報をエンジンコントローラ130から作業機コントローラ250へ通知し、通知を受けた作業機コントローラ250が、刈取クラッチ電磁弁272に対して制御信号を出力しないことにより刈取作業を制限するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施の形態に係るトラクタの制御系の構成を説明するブロック図である。
【図2】イモビライザユニットの内部構成、及びイモビライザユニットに接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。
【図3】エンジンコントローラの内部構成、及びエンジンコントローラに接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。
【図4】作業機コントローラの内部構成、及び作業機コントローラに接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。
【図5】エンジンを始動させる際の認証処理の手順を説明するフローチャートである。
【図6】コンバインが備える作業機コントローラの内部構成、及び作業機コントローラに接続される入出力機器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
10 イグニションキー
11 トランスポンダ
100 CAN通信バス
110 イモビライザユニット
111 CPU
112 EEPROM
130 エンジンコントローラ
131 CPU
132 EEPROM
145 燃料噴射ポンプ
146 スタータリレー
147 スタータモータ
148 エンジン
150 作業機コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力により走行する車両において、
使用者に対する認証を行う認証手段と、該認証手段により使用者が認証されない場合、動作を制限した状態で前記エンジンを作動させる手段とを備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
回転数又はトルクの上限値を制限した状態で前記エンジンを作動させるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両と、該車両を走行させるエンジンの動力により所定の作業を行う作業部とを備えることを特徴とする作業機。
【請求項4】
前記車両が備える認証手段により使用者が認証されない場合、前記作業部による作業を制限する手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
エンジンと、該エンジンの動力により所定の作業を行う作業部とを備えた作業機において、
使用者に対する認証を行う認証手段と、該認証手段により使用者が認証されない場合、前記エンジンを始動すると共に、前記作業部による作業を制限する手段を備えることを特徴とする作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−290619(P2007−290619A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122396(P2006−122396)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】