説明

車両周辺表示装置

【課題】
表示を切り替えることなく、一般色覚者及び色弱者の双方が車両からの距離感
を確実に掴むことができる周辺表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の車両周辺表示装置1は、カメラ17により撮影された車両周辺の映像と、車両から所定距離離間した位置を示す距離目安線22を、車内に設けられた表示器13に重畳して表示する。距離目安線22は、距離目安線本体22aと、距離目安線本体22aに沿って表示される付加部22b、22cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺を表示する装置に関するものであり、特に、車両の縦列駐車や並列駐車の際に、車両の周辺映像と車両からの距離感を認識するための距離目安線とを、重畳して表示する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、縦列駐車や車庫入れ等の駐車に不慣れな初心者を駐車操作時に補助する方法が知られている。例えば、特許文献1には、車両の後方にCCDカメラを備え、車両後方の画像を取得してモニタディスプレイに表示し、ステアリング舵角に応じた応じた走行予想軌跡20を前記後方画像に重畳させる駐車補助装置が開示されている。走行予想軌跡20は、車両の進行方向を示す線と、車両からの距離を示す距離目安線とを備えている。距離目安線は、車両に対して近い位置に表示された距離目安線と、この距離目安線より車両から遠い位置に表示される距離目安線とを有している。
【0003】
また、特許文献2には、色弱・色盲の運転者や画面反射の影響を受ける同乗者の視覚に応じた表示設定を行うことにより、交差点における道路区別の識別を容易にする交差点情報表示方法及び道路情報装置が開示されている。具体的に、この表示方法及び表示装置は、「模様+太さ」別の矢印を用いて道路の種類を区別したり、そのほかに形状、色、明暗などの要素を取り入れた「道路の種類と方向別の先行表示の図案」を用いて、運転者などが見やすい表示に自由に編集できるものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1の走行予想軌20は、車両に対して近い位置の線と、遠い位置の線、特に、車両に対して近い位置に表示された距離目安線とそれより遠い位置に表示された距離目安線とが、ほぼ同じ幅の線として表示されている。このため、一般色覚者及び色弱者の双方にとって距離目安線を認識にくいことがある。この場合、距離感を掴むことができず、駐車補助が十分に行われないおそれがある。
【0005】
また、特許文献2の方法及び装置は、色弱者にとって見やすい表示に設定することができるが、車両に対する距離感を認識容易としたものではない。また、特許文献2では、一般色覚者と色弱者のそれぞれに合わせて表示を切り替える必要があるため、それぞれに適した表示に切り替わっていない場合、誤認識、誤操作するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−141474号公報
【特許文献2】特開平7−174576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、表示を切り替えることなく一般色覚者及び色弱者の双方が容易に距離感を掴むことができる距離目安線を表示する車両周辺表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するものは、以下の通りである。
【0009】
(1) カメラにより撮影された車両周辺の映像と、前記車両から所定距離離間した位置を示す距離目安線とを、車内に設けられた表示器に重畳して表示する車両周辺表示装置であって、前記距離目安線は、第1の距離目安線と、該第1の距離目安線より前記車両から離れた位置に表示される第2の距離目安線とを備え、前記第1の距離目安線は、前記第2の距離目安線より太く表示されていることを特徴とする車両周辺表示装置。
【0010】
(2) 前記車両周辺の映像とは、車両進行方向の映像である(1)に記載の車両周辺表示装置。
【0011】
(3) 前記車両周辺表示装置は、さらに、前記第2の距離目安線より車両から離れた位置に表示され、前記第2の距離目安線より細く表示されている第3の距離目安線を備えている(1)または(2)に記載の車両周辺表示装置。
【0012】
(4) 前記車両周辺表示装置は、車両の進行が予想される方向に延びる左右一対の線を、前記映像、前記距離目安線と重畳して表示するものであり、前記距離目安線は、前記左右一対の線に対して左右方向に延びている(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の車両周辺表示装置。
【0013】
(5) 前記第1の距離目安線は、距離目安線本体と、該距離目安線本体に沿って表示された影部とを備えている(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の車両周辺表示装置。
【0014】
(6) 前記第1の距離目安線は、距離目安線本体と、該距離目安線本体に沿って表示された黄色の線とを備えている(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の車両周辺表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記距離目安線は、第1の距離目安線と、該第1の距離目安線より前記車両から離れた位置に表示される第2の距離目安線とを備え、前記第1の距離目安線は、前記第2の目安線より太く表示されている。
【0016】
このような構成であれば、表示を切り替えることなく、一般色覚者及び色弱者の双方が車両からの距離感を確実に掴むことができる。
【0017】
また、本発明の車両周辺の映像とは、車両進行方向の映像であることが好ましい。
【0018】
このような構成であれば、表示を切り替えることなく、一般色覚者及び色弱者の双方が進行方向における車両からの距離感を確実に掴むことができる。
【0019】
また、前記車両周辺表示装置は、さらに、前記第2の距離目安線より車両から離れた位置に表示され、前記第2の距離目安線より細く表示されている第3の距離目安線を備えていることが好ましい。
【0020】
このような構成であれば、表示を切り替えることなく、一般色覚者及び色弱者の双方が車両からの距離感を確実に掴むことができる。
【0021】
また、本発明の前記車両周辺表示装置は、車両の進行が予想される方向に延びる左右一対の線を、前記映像、前記距離目安線と重畳して表示するものであり、前記距離目安線は、前記左右一対の線に対して左右方向に延びていることが好ましい。
【0022】
このような構成であれば、駐車時において、表示を切り替えることなく、一般色覚者及び色弱者の双方が車両からの距離感を確実に掴むことができる。
【0023】
本発明の前記第1の距離目安線は、距離目安線本体と、該距離目安線本体に沿って表示された影部とを備えている。
【0024】
このような構成であれば、距離目安線本体が画面に対して沈みこむことが防止されるとともに、色弱者においては、車両から近い位置に表示される距離目安線に対する視認性が向上する。
【0025】
本発明の前記距離目安線本体は、距離目安線本体と、該距離目安線本体に沿って表示された黄色の線とを備えていることが好ましい。
【0026】
このような構成であれば、車両から近い位置に表示される距離目安線に対する色弱者に対する視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の車両周辺表示装置のシステム構成図である。
【図2】図2は、並列駐車補助時における表示器の画面を示す図である。
【図3】図3は、図2に示す画面に表示された予想進路線を示す図である(説明の便宜上、予想進路線のみ抜き出した図である。)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の車両周辺表示装置のシステム構成図であり、図2は、並列駐車時における表示器の画面を示す図、図3は、図2に示す予想進路線を示す図である(説明の便宜上、図2から予想進路線のみ抜き出した図である。)。
【0030】
図1ないし図3に示す実施例は、本発明の車両周辺表示装置を、並列駐車する際の駐車補助装置に適用した例である。
【0031】
本発明の車両周辺表示装置(駐車補助装置)1は、図1に示すように、制御部16と、車両の後方を撮影するカメラ17と、ステアリングホイール(以下、ステアリングと称す)の操舵角を検出するステアリングセンサ2と、トランスミッションのシフトレバーのリバース状態を検出するレバースイッチ3と、縦列駐車か並列駐車など駐車形態を選択する駐車スイッチ4と、従動輪の左右の車輪速度を検出する右車輪速センサ5及び左車輪側センサ6と、スピーカー8と、表示器13と、駐車区画検出用画像認識用装置15とを備えている。
【0032】
制御部16は、図2に示すように、制御を司るCPU11と、表示器13にグラフィックスを描画するグラフィックス描画回路12と、グラフィックス信号とカメラ17からの撮像画像を重ね合わせるスーパーインポーズ回路9と、カメラ画像から同期信号を抽出してグラフィックス描画回路12へ供給する同期分離回路10と、カメラ17からの信号を受けて駐車区画の画像認識を行う駐車区画検出用の画像認識装置15と、音声合成出力をスピーカ8に出力する音声合成回路7とを備えている。尚、画像認識装置15は、制御部16に別体で設けられていてもよい。
【0033】
制御部16には、図2に示すように、カメラ17、ステアリングセンサ2、シフトレバーリバーススイッチ3、駐車スイッチ4、および、車輪速センサ5,6からの信号が入力されており、これらの信号を基に制御部16は表示器13の画面14上に、車両の後方画像と後述する予想進路線20と重畳表示できるようになっており、また、スピーカー8がドライバに対して、音声を発生するようになっている。
【0034】
上記のような構成を有する車両周辺表示装置1において、車両の電源がイグニッションオンモードのとき、シフトレバーをリバースにすると、表示器13の画面表示が駐車補助画面になり、図2に示すように、画面14上に車両後方映像及び予想進路線20とが重畳して表示される。この状態で、画面上には、例えば、並列駐車、縦列駐車の駐車補助を作動させるための選択スイッチ(駐車スイッチ4)が表示される。本発明の実施例では、並列駐車の駐車補助が選択されている。
【0035】
画面14には、後方画像に予想進路線20が重畳表示されるため、ドライバは画面14または後方を目視しながらステアリングを操舵し、適切な位置に保持しバックすれば良い。その後、駐車スペースの駐車区画35内に水平に入った段階でステアリングをまっすぐにし、最後端までバックすれば正しく駐車区画35に入ることができ、駐車操作時の適切な補助が行われる。
【0036】
予想進路線20は、図2に示すように、ステアリング操作と連動して可変し車両の進行が予想される方向に延びる左右一対の線21と、ステアリング操作と連動して可変して車両からの所定距離を示す距離目安線22,23,24とを備えている。また、表示器13の画面14には、車両をまっすぐ後退させたときの進路の目安を示す車幅延長線25も、
後方画像と重畳して表示されている。車幅延長線は、車両が直進状態となっているとき、予想進路線20と重なるものとなっている。なお、図2の符号30は、車両のバンパーである。
【0037】
距離目安線22,23,24は、第1の距離目安線22と、第1の距離目安線23より車両から離間して配置された第2の距離目安線23と、第2の距離目安線23より車両から離間して配置された第3の距離目安線24とを備えている。また、距離目安線22,23,24は、図2、図3に示す実施例では、左右一対の線に対して車幅方向(図2の左右方向)に延びている。具体的には、第1の距離目安線22及び第2の距離目安線23は、一端及び他端が左右一対の線21の途中に接するように表示され、第3の距離目安線24は、左右一対の線21の車両に対して遠位側の端部を結ぶように表示されている。
【0038】
第1の距離目安線22は、例えば、車両のバンパー後端から約0.5m先に配置されており、第2の距離目安線23は、車両のバンパー後端から約1.0m先に配置されている。操縦者は、これらの距離目安線を見て、駐車目標位置に対する車両の位置を認識することができる。本発明の実施例において、第1の距離目安線22は、車両から一番近い位置に表示される線である。
【0039】
図2に示すように、第1の距離目安線22は、第2の距離目安線23より太く表示されている。また、第2の距離目安線23は、第3の距離目安線24より太く表示されている。言い換えると、距離目安線22,23,24は、車両に近づくにつれて太くなるように表示されている。
【0040】
このように構成することにより、第1の距離目安線22が第2の距離目安線23と比較して、第2の距離目安線23が第3の距離目安線24と比較して、より近くにあると確実に認識することができるため、一般色覚者及び色弱者の双方が距離感を確実に掴むことができる。例えば、第1の距離目安線22が赤色で表示されている場合、赤色に感度が弱い人は、第1の距離目安線22が暗く見え、第1の距離目安線の認識が容易でないことがあるが、本発明のように第2の距離目安線より太く表示することにより、第2の距離目安線に対する遠近感を感じることができるため、距離感を確実に掴むことができる。
【0041】
第1の距離目安線22は、距離目安線本体22aと、距離目安線本体22aに沿って表示され距離目安線本体22aと明暗差を有する付加部22b,22cとを備えていることが好ましい。
【0042】
言い換えると、本発明のように明暗差を有する複数の線を車両進行方向に重ねて第1の距離目安線22を形成することが好ましい。
【0043】
具体的に、図2、図3に示す実施例において、第1の距離目安線22は、距離目安線本体22aと、第1の距離目安線本体22aの車両側に沿って表示された影部22bと、第1の距離目安線本体22aの車両から離れた位置に表示されたハイライト22cを備えている。なお、本発明では、距離目安線本体22aの車両進行方向両側に付加部が表示されているがこれに限定されず、片側にのみ付加部が表示されてもよい(例えば、影部、ハイライトの一方のみ表示されていてもよい。)。
【0044】
また、距離目安線本体22aは、一般色覚者に対して注意を喚起する色であることが好ましい。このような色としては、赤色等であることが好ましい。影部22bの色としては、黒色等であることが好ましい。また、ハイライト22cとしては、色弱者が認識しやすいため黄色であることが好ましい。
【0045】
また、第1の距離目安線を構成する異なる色の線は、図2に示す実施例(距離目安線本体22a、影部22b、ハイライト22c)では、互いに太さが異なるものであるが、ほぼ同じ太さの線を重ねて表示してもよい。
【0046】
また、第1の距離目安線22を構成する距離目安線本体22aは、第2の距離目安線23より太く表示されていることが好ましい。
【0047】
なお、本発明の実施例では、距離目安線は、実線として表示されているが、これに限定されず、破線、一点鎖線等距離の目安になる線であればいかなる線であってもよい。距離目安線の概念には、複数の矩形マーカーが一直線上に配置されるものも含まれる。また、第1の距離目安線は、左右一対の線21間全体に渡って表示されていることに限定されず、左右一対の線21付近のみに表示されていてもよい。なお、本発明の実施例では、距離目安線は、3本表示されているが、2本または4本以上表示されていてもよい。
【0048】
また、左右一対の線21は、距離感を掴みやすくするため、車両に近づくにつれて、太くなるように表示されていることが好ましい。また、予想進路線20のうち、第1の距離目安線を除いた部分は、黄色に表示されている。
【0049】
なお、車幅延長線25は、色弱者の視認性を考慮して青色であることが好ましい。また、車幅延長線25は、車両に近づくにつれて太くなるように表示されていてもよい。
【0050】
なお、本発明の車両周辺表示装置は、並列駐車のための駐車補助装置への適用に限定されず、縦列駐車のための駐車補助装置、側方への駐車時(道路脇への駐車)のための駐車補助装置等に適用されてもよい。また、駐車補助装置の前進誘導装置に適用されてもよい。また、本発明の周辺表示装置は、駐車補助装置以外の装置に適用されてもよい。本発明でいう車両周辺とは、後方、前方、側方を含む概念である。また、本発明における車両周辺の映像は、本発明の実施例のように、バックモニタカメラにて撮像される映像に限定されず、フロントカメラ、サイドカメラにより撮像される映像であってよい。また、周辺表示装置としては、上述した構成に限定されない。
【符号の説明】
【0051】
1 車両周辺表示装置(駐車補助装置)
2 ステアリングセンサ
3 シフトレバーリバーススイッチ
4 駐車スイッチ
5 右車輪速センサ
6 左車輪速センサ
7 音声合成回路
8 スピーカー
9 スーパーインポーズ回路
10 同期分離回路
11 CPU
12 グラフィックス描画回路
13 表示器
14 画面
15 駐車区画検出用画像認識装置
17 カメラ
20 予想進路線
21 左右一対の線(車両進行方向に延びる線)
22 第1の距離目安線
22a 距離目安線本体
22b 影部
23 第2の距離目安線
24 第3の距離目安線
25 車幅延長線
30 バンパー
35 駐車区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラにより撮影された車両周辺の映像と、前記車両から所定距離離間した位置を示す距離目安線とを、車内に設けられた表示器に重畳して表示する車両周辺表示装置であって、前記距離目安線は、距離目安線本体と、該距離目安線本体の下側に沿って表示される影部とを備えていることを特徴とする車両周辺表示装置。
【請求項2】
カメラにより撮影された車両周辺の映像と、前記車両から所定距離離間した位置を示す距離目安線とを、車内に設けられた表示器に重畳して表示する車両周辺表示装置であって、前記距離目安線は、距離目安線本体と、該距離目安線本体の下側に沿って表示される黒色の付加部とを備えていることを特徴とする車両周辺表示装置。
【請求項3】
前記車両周辺とは、車両の後方である請求項1または2に記載の車両周辺表示装置。
【請求項4】
前記車両周辺表示装置は、車両の進行が予想される方向に延びる左右一対の線を、前記映像、前記距離目安線と重畳して表示するものであり、前記距離目安線は、前記左右一対の線に対して左右方向に延びている請求項3に記載の車両周辺表示装置。
【請求項5】
前記距離目安線は、前記左右一対の線の間に表示される請求項4に記載の車両周辺表示装置。
【請求項6】
前記距離目安線は、前記左右一対の線の付近のみに表示される請求項5に記載の車両周辺表示装置。
【請求項7】
前記距離目安線本体は、赤色である請求項6に記載の車両周辺表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−63770(P2013−63770A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262233(P2012−262233)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2006−308085(P2006−308085)の分割
【原出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】