説明

車両用のケーブル中継端子台

【課題】車両内で2本のケーブルを繋ぐ中継端子台であり、ブラケットの取り付けに関し作業性を向上する。
【解決手段】車両用ケーブル中継端子台10は、樹脂製の端子台本体4と、樹脂製の端子台カバー2と、中継端子台を車体に取り付けるための金属細長板状のブラケット8を備える。端子台本体4は、2本のケーブルの端子を接触させたまま収納するケースである。端子台本体4にはブラケット8を挿通するガイド部6が設けられている。また、端子台カバー2には、ガイド部6に挿通されたブラケット8の孔8aに係合する先端鉤状のロック部3が設けられている。ブラケット8を挿入していくとロック部3の鉤状の先端がブラケット8に設けられた孔8aに嵌合し、ブラケット8が抜け止めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内(例えばエンジンコンパートメント内)で、ケーブル(ハーネス)の端部同士を電気的に接続し、接続部を外部から遮蔽するケーブル中継端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(ハイブリッド車含む)が普及し、車両のエンジンコンパートメント内にはモータやインバータなど、搭載される電子機器が増えている。そのため、エンジンコンパートメント内に配線されるケーブルの量も増大している。車両の組み立て効率を考慮すると、電子機器から出ているケーブルは、機器の外部で連結する方がよい場合もある。2本のケーブルの先端同士を電気的に接続し、接続部を外部から遮蔽するボックスを本明細書ではケーブル中継端子台(あるいは単に中継端子台)と称する。なお、リレーボックスなど、ケーブル同士を接続するだけなくスイッチも含むボックスも中継端子台の範疇に入る。中継端子台にも組み立て易さやコストに配慮した工夫が求められる。中継端子台の改良の一例として、特許文献1には作業性と経済性に優れたリレーボックスが開示されている。特許文献1のリレーボックスは、車体に取り付けると同時にアース接続できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−27825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中継端子台そのものは、成形し易さ、及び、絶縁性の観点から樹脂で作られることが多い。他方、車体への取り付けには強度が高い金属が用いられる。従って中継端子台は、樹脂製の本体から金属製の取り付け部品(ブラケット)が伸びている形態を有する。中継端子台とブラケットは強固に繋がっていなければならないが、ブラケットをボルト等で中継端子台に止めるのは作業効率が悪い。本明細書は、金属製のブラケットの中継端子台への取り付け機構に関して作業性を向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する新規な車両用ケーブル中継端子台(中継端子台)は、樹脂製の端子台本体と、樹脂製の端子台カバーと、中継端子台を車体に取り付けるための金属細長板状のブラケットを備える。ブラケットには抜け止め用の孔が設けられている。端子台本体は、2本のケーブル先端の金属端子を接触させたまま収納するケースである。端子台本体にはブラケットを挿通するガイド部が設けられている。また、端子台カバーには、ガイド部に挿通されたブラケットの孔に係合する先端鉤状のロック部が設けられている。
【0006】
ガイド部とロック部の好適な一形態を説明する。ガイド部は、端子台カバーが取り付けられる面とは反対側の面からブラケットを挿入するように端子台本体に設けられている。別言すれば、ガイド部は、ケース状の端子台本体の側面に設けられており、ケース底側からケース開口側に向けてブラケットが挿通されるように設けられている。端子台カバーに設けられたロック部は、ガイド部に挿通されたブラケットを抜け止めする部分である。ロック部は、挿通後のブラケット先端に対向する位置から、ブラケットの挿通方向に逆向するように細長く伸びている。ロック部の先端はテーパ状でありテーパの後端に続いて段差が設けられておりテーパと段差によって鉤型が形成されている。ブラケットが挿通されるとテーパがブラケット先端に当たり細長のロック部自体が湾曲してブラケットの挿通を許容する。ブラケットがさらに進むとブラケットに設けられた孔に鉤状の段差が嵌合してブラケットが抜け止めされる。
【0007】
細長いロック部は先端がテーパ状でありブラケットを挿通する際、テーパがブラケット先端に当たり、ロック部先端はブラケットを避けるように湾曲するからブラケットを容易にガイド部の奥まで挿通することができる。ブラケットをガイド部の奥まで挿通すると、ブラケットに設けられた孔にロック部のテーパ後の段差が係合して抜け止めが達成される。
【0008】
上記中継端子台の一つの特徴は、ブラケットは端子台本体のガイド部に挿通されるが、ブラケットを抜け止めする細長いロック部は端子台カバーに設けられている点にある。細長いロック部を端子台本体ではなく端子台カバーに設けることによって、中継端子台本体の厚み(ケースの深さに相当)に対してロック部の長さを比較的に長くすることができる。ロック部は先端テーパ状の細長い形状でありブラケット挿入に伴って湾曲するが、長さを確保したことで湾曲時に発生する応力が小さくて済む。樹脂製のロック部は応力が大きいと変形時に破損する虞があるが、ロック部の長さをできるだけ長くしたことで湾曲時の応力が小さくて済み、破損する可能性が小さい。本明細書が開示する新規な中継端子台は、ブラケットの固定(抜け止め)が簡単であり、しかも、抜け止め機構が丈夫である。
【0009】
本明細書が開示する中継端子台は、さらに、端子台本体と端子台カバーの一方に突起が設けられており他方に突起に係合する挿通孔が設けられているとよい。端子台カバーを端子台本体に組み合わせる際、突起が挿通孔に嵌ることで端子台本体と端子台カバーの相対的な位置が定まる。突起と挿通孔を備えることで、組み立て性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】中継端子台の分解図である。
【図2】X方向から見た端子台本体の部分平面図である。
【図3】図1のIII−III線における断面図である(分解図)。
【図4】図1のIII−III線の断面に対応する組み上がり時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、ケーブル中継端子台10(中継端子台)の分解斜視図を示す。図2は、図1の座標系におけるX軸方向から見たときの端子台本体4の部分平面図である。図3と図4は、図1のIII−III線における断面図である。ただし、図3は図1に対応しており、端子台本体4、端子台カバー2、及び、ブラケット8が分離している状態を示しており、図4はそれらが組み上がった状態を示している。
【0012】
中継端子台10は、車両のエンジンコンパートメント内において、高電圧のバッテリ(不図示)からインバータ(不図示)へ電力を伝送するケーブルをインバータ脇で中継する端子台である。中継端子台10は、バッテリへと繋がるケーブル92と、インバータへと繋がるバスバー90を電気的に接続する。「バスバー」とは、大電流に耐えられるように金属棒を使った通電部材である。即ち、「バスバー」はケーブルの一態様である。中継端子台10では、バスバー90の端部に取り付けられた金属端子90aと、ケーブル92の先端に取り付けられた金属端子92aを重ね、それらを中継端子台本体4から伸びているケーブル止めボルト5に通し、ナット94で締めつけて固定する。中継端子台10は、ブラケット8を介してインバータ(不図示)の筐体に固定される。
【0013】
中継端子台10は、2本のケーブル90、92の先端の金属端子を収容し固定する端子台本体4と、端子台本体4の開口に被せてケーブルを遮蔽する端子台カバー2と、ブラケット8を備える。端子台本体4と端子台カバー2は、PPS樹脂(ポリフェニレンスルファイド樹脂)製であり、射出成形法により作られる。端子台カバー2の側面の複数個所に係合フック2bが設けられており、端子台カバー2を端子台本体4の開口に合わせると、係合フック2bが端子台本体4側面の爪4bと係合し、端子台カバー2が端子台本体4に固定される。端子台カバー2が取り付けられると、2本のケーブルの先端の金属端子が外部から遮蔽され、絶縁が確保される。
【0014】
ブラケット8は、金属(例えば鉄)製である。ブラケット8は、金属製の細長板状であり、途中で湾曲している。ブラケット8には2個の孔が設けられている。一つは、ブラケット8を端子台本体4に固定するための端子台係合孔8aであり、他の一つは、ブラケット8を(中継端子台10を)インバータに固定するためのインバータ係合孔8bである。ブラケット8の湾曲は、インバータのブラケット取り付け部の角度と、取り付け後の中継端子台10の望ましい角度に合わせて調整されている。
【0015】
端子台カバー2を端子台本体4に取り付け、ブラケット8をガイド部6に通すと、ロック部3の鉤状の先端が端子台係合孔8aに係合しブラケット8が固定される。次に、ガイド部6とロック部3の形状を詳しく説明する。
【0016】
ガイド部6は、端子台本体4に一体成形されており、ロック部3は端子台カバー2に一体成形されている。端子台本体4の側面に設けられたガイド部6は、図のYZ平面(図2)で見ると相互に対向する一対の鉤状の突起であり、その鉤状の突起がX方向に伸びている突条である。一対の鉤の溝部6aにブラケット8が挿通される。端子台本体4は、ケーブルを収容するケースであり、ガイド部6の突条は、ケースの底側の端から開口側の端に向かって伸びている。ブラケット8は、ケースの底側からガイド部6に挿通するようになっている。端子台カバー2に設けられたロック部3は、細長い形状をしており、挿通後のブラケット8の先端に対向する位置からブラケット挿通方向に逆向するように伸びている。ロック部3の伸びる方向は図ではX軸の正方向に相当する。端子台カバー2を端子台本体4に取り付けた後にブラケット8をガイド部6に挿通していくと、ブラケット8の先端がロック部3の先端3aに当たる。ロック部3の先端3aはテーパ状になっており、ブラケット8が進行するとテーパ状の先端3aがブラケット8に押しのけられて湾曲し、ブラケット8のさらなる進行が許容される。ロック部3の先端にはテーパに続いて段差3bが設けられており、テーパと段差3bによって先端全体は鉤状となっている。ブラケット8をさらに進行させると、鉤状の先端が端子台係合孔8aに係合する。即ち、ロック部3の湾曲が元に戻るとともに、段差3bが端子台係合孔8aの縁に引っ掛かる。段差3bが端子台係合孔8aの縁に引っ掛かり、ブラケット8の抜け止めが達成される。
【0017】
端子台本体4には、ガイド部6の下側に、ガイド部6の突条と同じ方向に延出している突起7が設けられている。また、端子台カバー2において突起7に対応する部位に挿通孔2aが設けられている。端子台カバー2を端子台本体4に接合する際、突起7が挿通孔2aにぴったりと嵌る。突起7と挿通孔2aは、端子台本体4と端子台カバー2の相互の位置を正確に定める。
【0018】
上記したように、中継端子台10は、端子台カバー2と端子台本体4にワンタッチで嵌め込むことができるとともに、ブラケット8もワンタッチで嵌め込むことができる。端子台カバー2もブラケット8も、一旦嵌め込まれると容易には抜けない。
【0019】
さらに、ブラケット8を抜け止めするロック部3は、図4によく示されているように、端子台カバー2から伸びており、その長さL1は、端子台本体4の厚みL2(底部と開口の間の長さ)に近い長さを確保できている。細長のロック部3は、ブラケット8の挿入に伴って湾曲するが、長さL1が長いので湾曲にともなって発生する応力は小さい。従って、ロック部3は細長であるが破損し難いという利点を有する。
【0020】
実施例の中継端子台10に関する留意点を述べる。実施例の中継端子台10では、端子台本体4に突起7が設けられており、端子台カバー2に突起7と嵌合する挿通孔2aが設けられていた。これとは逆に、端子台カバー2に突起を設け、端子台本体4に突起と嵌合する挿通孔を設けてもよい。また、突起7の先端は先細り状に形成されているとよい。あるいは、挿通孔2aの開口部が、開口の奥側から開口端に向けて広がっていてもよい。いずれの場合も突起と挿通孔を嵌め合わせ易くなる。中継端子台は、2本以上のケーブルを接続するものであってもよい。また、中継端子台は、ケーブルを接続するだけでなく、ケーブル接続に付随する部品、例えば、接続を遮断するリレー等のスイッチやヒューズなどを格納するものであってもよい。
【0021】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0022】
2:端子台カバー
2a:挿通孔
3:ロック部
3a:テーパ部
3b:段差
4:端子台本体
5:ケーブル止めボルト
6:ガイド部
6a:ガイド溝
7:突起
8:ブラケット
8a:端子台係合孔
8b:インバータ係合孔
10:中継端子台
90:バスバー(ケーブル)
90a、92a:端子
92:中継ハーネス(ケーブル)
94:ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のケーブルの端部同士を接続し、接続部を遮蔽する車両用のケーブル中継端子台であり、
2本のケーブルの端子を接触させたまま収納する端子台本体と、
端子台カバーと、
中継端子台を車体に取り付ける金属細長板状のブラケットと、
を備えており、
端子台本体に、ブラケットを挿通するガイド部が設けられており、
端子台カバーに、ガイド部に挿通されたブラケットの孔に係合する先端鉤状のロック部が設けられていることを特徴とするケーブル中継端子台。
【請求項2】
端子台本体と端子台カバーの一方に突起が設けられており他方に突起に係合する挿通孔が設けられており、端子台カバーを端子台本体に組み合わせる際、突起が挿通孔に嵌合して端子台本体と端子台カバーの相対的な位置が定まることを特徴とする請求項1に記載のケーブル中継端子台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate