説明

車両用の防音効果を有する積層グレイジングアッセンブリー

【課題】空気力学的騒音及び外部騒音に対して改善された防音性能を有しながら且つ固体伝播騒音に対しても良好な防音効果を有するグレイジングアッセンブリーを提案すること。
【解決手段】車両用の防音効果を有するグレイジングアッセンブリーであって、少なくとも1枚のガラス板と、温度範囲10〜60℃及び振動数範囲50〜10,000Hzにおいて、損失角tanδが0.6より大きく、せん断弾性指数G’が2×10N/cmより小さい中間層フィルムとを含む積層グレイジングアッセンブリーから成ることを特徴とする上記グレイジングアッセンブリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に固体伝播騒音に対して改善された遮音性能を有する、車両用、特に自動車用グレイジングアッセンブリーに関する。
【背景技術】
【0002】
防音効果を有するグレイジングアッセンブリー(glazing assembly)は建物の窓に用いられているが、同様に、自動車への使用もますます増えている。建物用の防音グレイジングアッセンブリーは比較的厚くてもよいが、自動車の製造には、厚さが一般に約6mmを超えない積層(laminated)グレイジングアッセンブリーが用いられる。従って、この場合、グレイジングアッセンブリーの2枚のガラス板の間の中間層として、比較的薄い層であっても非常に効率的な騒音防止効果を生じる粘弾性ポリマーを用いるのが適している。このポリマーはまた、長期的に、すなわち自動車の寿命期間中、自動車用グレイジングアッセンブリーに用いられるポリマーに課せられる条件を全て満たすものでなければならない。これらの条件としては特に、濁り度が低いこと、透明度が高いこと、紫外線に対する良好な耐性を有することなどがある。そのほかに、これらのポリマーは、当該ポリマーと隣接する層との接合面において耐久性があり且つ優れた品質の接合が確実に得られるものでなければならず、更に、高温においても低温においても、良好な騒音の減衰性が保持できるものでなければならない。最後に騒音防止層は、このグレイジングアッセンブリーの安全ガラスとしての特性を損なうものであってはならない。粘弾性アクリルポリマーは、騒音防止層として特に適していると認められている。
【0003】
文献EP−0,532,478−A2号から、自動車用グレイジングとしても適した、粘弾性アクリルポリマー中間層から成る防音効果を有する積層グレイジングアッセンブリーが知られている。この既知の積層グレイジングアッセンブリーの場合、2枚のガラス板を分離している中間層は、脂肪族ポリウレタン5〜50重量%と、種々のアクリルモノマーの光重合しうる混合物15〜85重量%と、通常の重合添加剤とから成る、重合しうるモノマー組成物から形成されている。モノマー混合物を、2枚のガラス板を分離するスペース中に注入して、紫外照射により重合を開始させる。既知のこの防音効果を有する積層グレイジングアッセンブリーは、大量生産には適していない。その理由は、ガラス板間に導入されるモノマー混合物の重合を伴う製造方法自体が、比較的コストのかかるものだからである。
【0004】
積層グレイジングアッセンブリーの工業的製造方法の場合、予め製造されているポリマーフィルムと2枚のガラス板との接合は、一般に加熱加圧下に実施される。騒音減衰性が良好な積層グレイジングアッセンブリーを製造するためのこのタイプの方法は、文献EP−0,457,190−A1号によって知られている。この既知の方法の場合、予め製造された騒音減衰率が高いポリマーフィルムが用いられているが、このポリマーフィルムは少なくとも2層から構成されている。そのうちの1つの層は、第一に定義されるポリビニルアセタールと可塑剤とから製造されており、もう1つの層は、別に定義されるポリビニルアセタールと可塑剤とから製造されている。
【0005】
良好な騒音減衰性を有する粘弾性アクリルポリマーはまた、薄いフィルムの形態のものとして知られている。これらの騒音防止フィルムは、積層グレイジングアッセンブリーの製造のために用い得る。この際、これらのフィルムは、特にポリビニルブチラールから成る2枚の熱可塑性フィルムの間に挿入され、且つ、該熱可塑性フィルム及び外側の2枚のガラス板と接合される。この時、接合は加熱加圧下での積層グレイジングアッセンブリーの通常の製造方法を用いて行われる。このタイプの防音効果を有するグレイジングアッセンブリーは、良好な騒音減衰率を示すが、時間が経過するにつれて、アクリルポリマーは濁り、騒音減衰性が低下し、その結果積層グレイジングアッセンブリーは使用不能になる。
【0006】
他方、例えば電車又は自動車のような近代的輸送手段において、快適性に関係する品質すべての中で、静けさは重要な要素になっている。実際、機械、熱、可視性などから来るその他の不快要素源は、少しずつ制御されている。しかしながら音に関する快適性の改善には新たな困難性があるが、空気力学的騒音、すなわち移動中の車両と空気との摩擦によって発生する騒音は、少なくとも部分的に、それ自体、その発生源において処理することができるようになった。すなわちエネルギーの節約のために、車両の形状が修正され、大気中への侵入(penetration)が改善され、それ自体が騒音源である乱流が減らされた。外部の空気力学的騒音源と、乗客が居る内部空間とを分けている車両の壁のうちで、明らかにグレイジングアッセンブリーは処理が最も難しいものである。不透明な壁に用いられるペースト状又は繊維状吸収剤を用いることはできず、実際的な理由又は重量の問題によって、厚さを増すことは考えられない。欧州特許EP−B1−0,387,148号は、重さ及び/又は厚さをそれほど増加させることなく、空気力学的騒音に対して良好な遮断性を示すグレイジングアッセンブリーを提案している。従ってこの特許は、中間層の曲げ減衰定数(flexural damping factor)υ=△f/fが0.15より大きい積層グレイジングアッセンブリーを提案している。これの測定は、厚さが各々4mmである2枚のガラスの間に樹脂が挿入された積層ガラスで出来ている長さ9cm、幅3cmの積層ストリップを衝撃励振して、f(第一モードの共鳴振動数)及び△f(振幅A/√2[Aは振動数fにおける最大振幅である]におけるピークの幅)を測定して実施される。この音響減衰率は、800Hzより大きいどの振動数においても、2000Hzまでは1オクターブあたり9dB増加し且つこれより大きい振動数においては1オクターブあたり3dB増加する対照の率から、5dB以上は異なっていない。さらには対照の率に対するこの音響減衰率の差違の標準偏差σは、依然として4dBより小さい。2枚のガラスの厚さは、同一であって、2.2mmであってよい。従ってこの特許は、車両の空気力学的騒音に対する遮音の問題に対して一般的な解決法を提供してくれる。
【0007】
しかしながら、例えばエンジン音、回転音、又はサスペンション音のような騒音も同時に処理されなければならない。これらの異なるタイプの騒音は既にその音源において、あるいは一部その伝播中において、空中伝播(特に吸収性ライニング)又は固体伝播(例えばエラストマー連結部品)において処理がなされている。グレイジングアッセンブリーに関しては、欧州特許EP−B1−0,100,701号は、道路騒音に対して良好な防音効果を有する、すなわちこれらの騒音が空気中で伝播される時に良好な遮音を生じるグレイジングアッセンブリーを提案している。
【0008】
この特許によるグレイジングアッセンブリーの1つは、少なくとも1つの積層グレイジングアッセンブリーを備えている。積層グレイジングアッセンブリーの樹脂は、この樹脂の2mmの層によって結合された、厚さ4mmの2枚のガラス板を有する積層グレイジングアッセンブリーから成る、長さ9cm、幅3cmのストリップが、同じ長さ、同じ幅で、厚さ4mmのガラスのストリップの臨界振動数とは、多くとも35%だけ異なる臨界振動数を有する様なものである。この特許によるグレイジングアッセンブリーは、道路交通に対して優れた音響減衰率を示す。
【0009】
これに対して、固体伝播騒音、すなわち固体を介して伝達される騒音の防止に対するグレイジングアッセンブリーの処理は、これよりも実施が難しい。実際、グレイジングの振動による騒音の伝達を回避するには、連結部品の使用では不十分であることが分っている。この点については、エンジンのある特定の回転速度において、乗客が感知し得るうなり音が、不快感を引起こすことが確認されている。実際にエンジンの回転は振動を発生し、この振動は例えば車体に伝達され、従って連鎖作用によってグレイジングに伝わる。衝撃が与えられた物体が受けるエネルギーは、振動現象を発生させ、衝撃の直後に再び自由になった物体は、その物体固有のモードで振動することが知られている。振動数は各振動モードに関連する。振幅は当初の励振、すなわち衝撃のスペクトル成分(調べられている振動数における衝撃の大きさ)及び衝撃のインパクトゾーンに依存する。モードの変形量は、衝撃が振動の節において生じるか又は振動の節以外において生じるかに依存する。
【0010】
固有のモードが励起されるためには、次のことが必要である:
(1)衝撃点で引起こされた変形が、該モードの振動節上に位置しないこと、
(2)衝撃エネルギースペクトルが、該モードの共鳴振動数において、成分を有すること。
【0011】
この後者の条件は、ほとんど常に満たされる。その理由は、非常に短い衝撃は実質的に均一なエネルギースペクトルを示すからである。
【0012】
第一の条件も同様に満たされるが、例えばその端部が自由なストリップについては、すべてのモードを励起するためには、これらの端部の1つを叩くだけで十分である。
【0013】
この場合の適用において、固体励振は周辺的なものであり、本発明者らは次のことを証明した。すなわち、エンジンのある特定の振動数において、すなわちエンジンのある特定の回転速度において、各々ある振動モードを有するグレイジングと車両の室内を結合させることによって、この場合エンジンに由来する騒音の放射から生じるうなり音が、グレイジングを介して増幅されることを証明した。当然のことながら、これらの現象の原因であるエンジンの回転速度は、車両の各タイプに特有のものであり、従って単一の値として一般化することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本出願人は、前記特許において提案された条件とは異なる独自の条件に対応する樹脂を用いて積層ガラス薄板を結合して、固体伝播可聴音の特に満足すべき減衰性であって、これまで得られたものよりもはるかに優れた減衰性を提供し得ることを見いだした。
【0015】
本発明は、遮音性、特に固体励振を介してグレイジングアッセンブリーにより放射される騒音の減少を可能にする特性を有する、車両用グレイジングアッセンブリーを提供することを目的とする。
【0016】
本発明はまた、加工性に優れ且つ騒音減衰性が良好であるという利点が得られ、更に、良好な光学特性及び長期間に亙る非濁り特性を保持する、防音効果を有する積層グレイジングアッセンブリーを得ることをも目的とする。
【0017】
本発明のもう1つの目的は、空気力学的騒音及び外部騒音に対して改善された防音性能を有しながら且つ固体伝播騒音に対しても良好な防音効果を有するグレイジングアッセンブリーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
車両の防音効果、特に固体伝播騒音に対する防音効果を提供するために、本発明によるグレイジングアッセンブリーは、少なくとも1枚のガラス板と、温度範囲10〜60℃及び振動数範囲50〜10,000Hzにおいて、損失角(loss factor)tanδが0.6より大きく、せん断弾性指数(shear modulus)G’が2×10N/cmより小さい中間層フィルムとを含む積層グレイジングアッセンブリーから成る。この材料の力学的特徴の測定は、後で定義される測定条件下において、粘度分析器、例えばMetravib粘度分析器で実施する。
【0019】
本発明の技術によって、積層グレイジングアッセンブリーから成る防音効果を有するグレイジングアッセンブリーを得ることができる。この積層グレイジングアッセンブリーの中間層フィルムによって、エンジンに由来し、特に車体によって伝達された振動の減衰が得られる。この減衰は、例えばグレイジングの振動モードの放射が非常に少なくなって、室内の振動モードとの結合がなくなるような減衰であり、これはエンジンの回転速度に無関係なものである。
【0020】
本発明の変形例によれば、減衰性を与える中間層フィルムが、普通の防音性能を有する少なくとも1つのフィルムと組合わされる。従って、防音性能の低下を伴わずに、高価な防音フィルムの厚さの一部を安価な「普通の」フィルムで代替することができ、同時に、例えば機械的強度特性及びこのようなフィルムから得ることができるあらゆる範囲の特性、すなわち色、紫外線防止、光の拡散等における著しい改良が得られる。
【0021】
本発明の好ましい変形例によれば、中間層フィルムは、厚さが0.05〜1.0mmの熱可塑性アクリルポリマーフィルムであり、このフィルムは、厚さが0.01〜0.1mmのポリエステルフィルムと、厚さが0.3〜0.8mmの熱可塑性接着剤層とを挿入して、ガラス板に結合される。本発明によれば、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートの薄いフィルムも同様に、アクリルポリマーフィルムと熱可塑性接着剤層との間に挿入される。
【0022】
この構造の積層グレイジングアッセンブリーは、通常の製造方法によって問題なく製造でき、従って大量生産にも適しているだけでなく、アクリルポリマーと熱可塑性接着剤層との間に薄いPETフィルムを添加することによって、アクリルポリマーフィルムのあらゆる不利な影響を排除することができることが確認された。この熱可塑性接着剤層は、好ましくは積層グレイジングアッセンブリー製造に通常用いられているポリビニルブチラールフィルムから成る。実際、アクリルポリマーフィルムがポリビニルブチラールフィルムと直接接触している場合、PVBフィルムの可塑剤粒子は、アクリルポリマー中に拡散されて、そこで明らかな濁り作用と騒音減衰性低下を引起こす。驚くべきことに、PETフィルムは、厚さが非常に薄くて50μm以下しかない場合でさえ、PVBフィルム中の可塑剤の拡散に対する完全なバリアーとなる。そのほかにこれらの表面特性によって、PETフィルムは、通常のPVBフィルムとの結合と同程度に良好に、熱可塑性アクリレートフィルムと結合する。従って本発明による積層グレイジングアッセンブリーは、長期強度及び安全性をも包含する、あらゆる要求事項を満たしている。
【0023】
最も単純な実施態様において、本発明による積層グレイジングアッセンブリーは、前記フィルムがPVB/PET/アクリレート/PET/PVBという層の順序で挿入された2枚のガラス板から成る。同様に通常のPVBフィルムを、その他の材料から出来ている熱可塑性接着剤フィルム、特に適切な熱可塑性ポリウレタンから出来ているこのようなフィルムと代えてもよいことは明らかである。
【0024】
もう1つの実施態様によれば、本発明による積層グレイジングアッセンブリーは、1枚のみのガラス板から成る。このガラス板は、取り付けられた状態において、外部に向けられており、一方室内に向いている積層グレイジングアッセンブリーの表面は、十分な摩耗耐性を有するポリマー層から形成されている。このようなガラスと合成材料から製造されるグレイジングアッセンブリーは、重量及び安全性に関してある種の長所を有し、これらはそれ自体として様々な形態で知られている。
【0025】
せん断弾性指数G’が、0℃における106.5Pa〜60℃における104.5Paの間であって、且つ温度範囲0〜60℃における損失角tanδが、約0.8〜1である、粘弾性アクリルポリマーから成るフィルムが、特に本発明に適していることが確認された。例えばそのいくつかは、3M社の「Scotchdamp−Polymere」という名称で販売されている製品である。これらの製品は、可塑剤を含まず、減衰性が大きな温度範囲に亙って得られるようなアクリルポリマーである。減衰性が温度範囲0〜60℃にある、ISD 112という型の製品が特に適切であることが証明された。
【0026】
本発明の有利な変形例によれば、積層グレイジングアッセンブリー層の1つ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムには、赤外放射を反射する層が備えられている。
【0027】
本発明はまた、特に固体によって伝達される振動の減衰性を生じる中間層フィルムにも関する。
【0028】
本発明の1実施態様によれば、積層グレイジングアッセンブリーは、同じ厚みの2枚のガラス板を備える。この共通の厚さは、2.2mmであり得る。従って本発明の技術によって、全体の厚さが比較的薄い防音効果を有するグレイジングアッセンブリーが得られる。
【0029】
本発明の特別な実施態様によれば、騒音減衰性を生じる中間層フィルムは、可塑剤とポリビニルアセタール樹脂とをベースとしている。
【0030】
本発明の有利な実施態様によれば、騒音減衰性を生じる中間層フィルムのせん断弾性指数G’は、10〜2×10N/cmである。
【0031】
好ましくは本発明による積層グレイジングアッセンブリーは、固体伝播する騒音の減衰に用いられる。
【0032】
本発明によるグレイジングアッセンブリーは、固体伝播騒音に対する良好な遮断が得られ、並びに空気力学的騒音及び同様に外部騒音に対しても良好な遮断が得られるという利点を有する。
【0033】
中間層フィルムの力学的特徴決定は、下記の測定条件下に、Metravib粘度分析器型の粘度分析器で実施される:
− 正弦応力(sinusoidal stress);
− 次の大きさの2つの直方体から成るいわゆる二重せん断試験片:
厚さ = 3.31mm
幅 = 10.38mm
高さ = 6.44mm;
− 動的振幅(dynamic amplitude):静止位置の周り±5mm;
− 振動数範囲:5〜700Hz;
− 温度範囲:−20℃〜+60℃。
【0034】
粘度分析器によって、温度及び振動数の正確な条件下において、材料の試料を変形応力に付し、この材料を特徴付ける流動学的パラメーター全体を得て、処理することができる。
【0035】
各温度における、振動数の関数として、力、変異及び位相角の測定生データの利用によって、特に下記のパラメーターを計算することができる:
− 弾性成分(elastic component)(又はせん断弾性指数)G’;
− 損失角度のタンジェント(又は損失角)tanδ。
【0036】
このようにして、振動数/温度の等価の法則を用いて、種々の温度に対する振動数の関数として、G’及びtanδの主要曲線を描くことができる。
【0037】
これらの主要曲線を用いて、ガラス転移帯域を示す。従ってガラス転移点における減衰が計算される。
【0038】
実際、減衰が最高になるのはこのガラス転移点においてである。
【0039】
本発明の技術により、固体伝播騒音の良好な減衰効果を有する中間層フィルムを含む、車両用の積層グレイジングアッセンブリーが提供される。この減衰効果は、空気力学的騒音及び外部騒音に対する遮断規準にも合い得るものである。従って、本発明のグレイジングアッセンブリーは、良好な一般的防音効果を提供する。
【実施例】
【0040】
本発明のその他の利点及び特徴は、添付図面を参照して下記記載において、明らかになるであろう。
【0041】
図1は、本発明による積層グレイジングアッセンブリーの第一実施態様を示す。
【0042】
図2は、本発明による積層グレイジングアッセンブリーの第二実施態様を示す。
【0043】
図3は、通常の積層グレイジングアッセンブリー及び図1に示された積層グレイジングアッセンブリーの、振動数の関数としての減衰度を示す。
【0044】
図1は、フロントガラスに用いられている積層グレイジングアッセンブリーの構造の断片的断面図であるが、このグレイジングアッセンブリーは、ますますサイドウインドウ及びリヤウインドウにも用いられるようになっている。場合によってはわずかに異なる厚さの珪酸塩ガラス板と共に、同じ構造を、自動車のフロントグレイジングアッセンブリー及びリヤウインドウに用いることができるのはもちろんである。
【0045】
積層グレイジングアッセンブリーは、各々厚さが1.6〜3mmの2枚の珪酸塩ガラス板1、2、各々厚さが0.38mmの2つのポリビニルブチラール層3、4、2枚の薄いPETフィルム5、6、及びこれらのフィルム間に挿入されている粘弾性アクリルポリマーフィルム7から成る。PETフィルム5、6は、各々厚さが0.05mmである。フィルム7は、3M社のISD 112型の、厚さ0.05mmのScotchdampポリマーフィルムである。種々の層は、積層グレイジングアッセンブリーの製造に通常用いられている方法で並置され、加熱加圧下に接合される。
【0046】
PETフィルム5、又はPETフィルム6は、赤外放射を反射する層系の1つの面に配置されてもよい。このような赤外放射を反射する積層グレイジングアッセンブリーは、騒音減衰性のほかに、入射する熱放射に対しても高い遮熱作用を有する。さらに本発明による積層グレイジングアッセンブリーは、PETフィルムの組込みによって、騒音の侵入を防ぐ効果が高まり、従ってこのようにして非常に快適性の高い自動車用グレイジングが製造できる。
【0047】
図2に示された積層グレイジングアッセンブリーは、1枚の珪酸塩ガラス板10しか備えていない。例えば厚さ4mmの珪酸塩ガラス板10は、組立てられた状態で、自動車の外側へ向けられている。厚さ0.76mmのPVB層11が、珪酸塩ガラス板10に結合されている。PVB層11には、厚さ0.05mmのPETフィルム12、厚さ0.05mmのISD 112型のScotchdampポリマーフィルム13、及び厚さ0.1mmのPETフィルム14が続く。このPETフィルムは、開放されている方の表面に摩耗耐性層15が備えられている。前記第一実施態様の場合のように、PETフィルム12、又はPETフィルム14は、この場合も同様に、赤外放射を反射する層が備えられていてもよい。この層は例えば、銀の機能層から成る、真空方法によって貼り付けられた多重層である。
【0048】
図3に示された図表によって、本発明によって達成された騒音減衰の改善が証明される。この図表には、通常の構造の積層グレイジングアッセンブリー(曲線A)及び図1に記載された構造の積層グレイジングアッセンブリー(曲線B)についての振動数の関数としての騒音減衰(dB表示)が示されている。測定は、80×50cmの平らな積層グレイジングアッセンブリーに対して実施される。珪酸塩ガラス板の厚さは、どちらの場合も2.1mmである。曲線Aの減衰態様を示す比較モデルは、次の構造:すなわち、ガラス(2.1mm)/PVB(0.76mm)/ガラス(2.1mm)を有しており、一方、本発明によるモデルは次の構造:すなわち、ガラス(2.1mm)/PVB(0.38mm)/PET(0.05mm)/アクリルポリマー(0.05mm)/PET(0.05mm)/PVB(0.38mm)/ガラス(2.1mm)を有する。
【0049】
これらの結果から、本発明によるグレイジングアッセンブリーの減衰度は、振動数スペクトルの最も大きい部分から離れた部分において、比較グレイジングアッセンブリーの減衰度より優れていることが分る。しかしながら、特に約200〜300Hzの区域、及び約3000Hzに等しい振動数の区域において、グレイジングアッセンブリーの減衰曲線が、通常の積層グレイジングアッセンブリーの場合に最も大きなへこみを示しており、従って全体として、本発明の積層グレイジングアッセンブリーによって騒音減衰のかなり大きい改善が得られる。
【0050】
(発明の効果)
本発明の技術により、固体伝播騒音の良好な減衰効果を有する中間層フィルムを含む、車両用の積層グレイジングアッセンブリーが提供される。この減衰効果は、空気力学的騒音及び外部騒音に対する遮断規準にも合い得るものである。従って、本発明のグレイジングアッセンブリーは、良好な一般的防音効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による積層グレイジングアッセンブリーの第一実施態様を示す。
【図2】本発明による積層グレイジングアッセンブリーの第二実施態様を示す。
【図3】通常の積層グレイジングアッセンブリー及び図1に示された積層グレイジングアッセンブリーの、振動数の関数としての減衰度を示す。
【符号の説明】
【0052】
1,2,10 珪酸塩ガラス板
3,4,11 ポリビニルブチラール層
5,6,12,14 PETフィルム
7 粘弾性アクリルポリマーフィルム
13 Scotchdampポリマーフィルム(ISD 112型)
15 摩耗耐性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の防音効果を有するグレイジングアッセンブリーであって、少なくとも1枚のガラス板と、温度範囲10〜60℃及び振動数範囲50〜10,000Hzにおいて、損失角tanδが0.6より大きく、せん断弾性指数G’が2×10N/cmより小さい中間層フィルムとを含む積層グレイジングアッセンブリーから成ることを特徴とする上記グレイジングアッセンブリー。
【請求項2】
前記中間層フィルムが、普通の防音性能を有する少なくとも1つのフィルムと組合わされていることを特徴とする、請求項1に記載のグレイジングアッセンブリー。
【請求項3】
中間層フィルムが、厚さ0.05〜1.0mmの熱可塑性アクリルポリマーフィルム(7;13)であること、及びこのフィルム(7;13)が、厚さ0.01〜0.1mmのポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルム(5、6;12)と、厚さ0.3〜0.8mmの熱可塑性接着剤フィルム(3、4、11)とが挿入されたガラス板(1、2、10)と結合されていることを特徴とする、請求項2に記載のグレイジングアッセンブリー。
【請求項4】
各々、熱可塑性接着剤フィルム(3、4)及びポリエステルフィルム(5、6)を介して、熱可塑性アクリルフィルム(7)と結合されている2枚のガラス板(1、2)から成ることを特徴とする、請求項3に記載のグレイジングアッセンブリー。
【請求項5】
ガラス板(10)、熱可塑性接着剤フィルム(11)、熱可塑性接着剤フィルム(11)とアクリルポリマーフィルム(13)との間に挿入されたポリエステルフィルム(12)、及びアクリルポリマーフィルム(13)のもう1つの面と並置され且つその開放されている表面に耐摩耗層(15)を備えたポリエステルフィルム(14)を含むことを特徴とする、請求項3に記載のグレイジングアッセンブリー。
【請求項6】
熱可塑性フィルム(7、13)は、せん断弾性指数G’が、60℃における104.5Pa〜0℃における106.5Paであって、且つ温度範囲0〜60℃における損失角tanδが、約0.8〜1である、可塑剤を含まないアクリルポリマーから製造されている粘弾性ポリマーから成ることを特徴とする、請求項3〜5のうちの1項に記載のグレイジングアッセンブリー。
【請求項7】
積層グレイジングアッセンブリーの層の1つ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムに、赤外放射を反射する層が備えられていることを特徴とする、請求項1〜6のうちの1項に記載のグレイジングアッセンブリー。
【請求項8】
防音効果を有する積層グレイジングアッセンブリーの中間層として使用することが意図されているフィルムであって、温度範囲10〜60℃及び振動数範囲50〜10,000Hzにおいて、損失角tanδが0.6より大きく、せん断弾性指数G’が2×10N/cmより小さいことを特徴とするフィルム。
【請求項9】
前記フィルムが、普通の防音性能を有する少なくとも1つのフィルムと組合わされていることを特徴とする、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが、厚さ0.05〜1.0mmの熱可塑性アクリルポリマーフィルム(7;13)であること、及びこのフィルム(7;13)が、厚さ0.01〜0.1mmのポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルム(5;6;12)と、厚さ0.3〜0.8mmの熱可塑性接着剤フィルム(3;4;11)とが挿入された少なくとも1枚のガラス板(1;2;10)と結合されていることを特徴とする、請求項9に記載のフィルム。
【請求項11】
熱可塑性フィルム(7、13)は、せん断弾性指数G’が、60℃における104.5Pa〜0℃における106.5Paであって、且つ温度範囲0〜60℃における損失角tanδが、約0.8〜1である、可塑剤を含まないアクリルポリマーから出来ている粘弾性ポリマーから成ることを特徴とする、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
可塑剤とポリビニルアセタール樹脂とをベースとすることを特徴とする、請求項8又は9に記載のフィルム。
【請求項13】
少なくとも1枚のガラス板と中間層フィルムから成る積層グレイジングアッセンブリーの、固体伝播する騒音を減衰するための使用において、積層グレイジングアッセンブリーの中間層は、温度範囲10〜60℃及び振動数範囲50〜10,000Hzにおいて、損失角tanδが0.6より大きく、せん断弾性指数G’が2×10N/cmより小さいことを特徴とする使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302552(P2007−302552A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108107(P2007−108107)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【分割の表示】特願平9−324835の分割
【原出願日】平成9年11月26日(1997.11.26)
【出願人】(595052644)
【Fターム(参考)】