説明

車両用ガラスアンテナ及び車両用窓ガラス

【課題】本発明は、DABなどのデュアルバンドに対応可能な受信特性を備えた、車両用ガラスアンテナ及び該車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【解決手段】給電部18を起点に第1の方向に延伸するアンテナエレメント1と、アンテナエレメント1の延伸の終端部を起点に第1の方向に対して略直角な方向である第2の方向に延伸するアンテナエレメント2と、アンテナエレメント2の延伸の終端部を起点に第1の方向に対して逆方向である第3の方向に延伸するアンテナエレメント3と、アンテナエレメント3の延伸の終端部を起点に第2の方向に延伸するアンテナエレメント4とを備えることを特徴とする、車両用ガラスアンテナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ導体及び給電部が車両用窓ガラスに設けられた車両用ガラスアンテナに関する。また、その車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、デジタルオーディオ放送(Digital Audio Broadcasting:DAB)を受信可能な車両用ガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。DABは、174〜240MHzのband III(バンド3)と1452〜1492MHzのL band(Lバンド)の2つの異なる周波数帯から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−327009号公報
【特許文献2】特開2000−307321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述のDABのように周波数帯域がデュアルバンドの場合、帯域が離れているため、両方の帯域に対応可能な十分な受信性能を持つ車両用ガラスアンテナを設計・製造することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、DABなどのデュアルバンドに対応可能な受信特性を備えた、車両用ガラスアンテナ及び該車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ガラスアンテナは、
アンテナ導体及び給電部が車両用窓ガラスに設けられた車両用ガラスアンテナであって、
前記アンテナ導体は、
前記給電部を起点に第1の方向に延伸する第1のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第1の方向に対して略直角な方向である第2の方向に延伸する第2のアンテナエレメントと、
前記第2のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第1の方向に対して逆方向である第3の方向に延伸する第3のアンテナエレメントと、
前記第3のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第2の方向に延伸する第4のアンテナエレメントとを備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記アンテナ導体は、
前記第4のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第3の方向に延伸する第5のアンテナエレメントと、
前記第5のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第2の方向に対して逆方向である第4の方向に延伸する第6のアンテナエレメントとを備えてもよい。
【0008】
さらに、本発明は、本発明に係る車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、DABなどのデュアルバンドに対応可能な受信特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ500の平面図である。
【図2】導体長x3を変化させたときの、アンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図3】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ600の平面図である。
【図4】ガラスアンテナ500とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図5】ガラスアンテナ500とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図6】AMガラスアンテナの形態別の、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図7】最高位の線条導体21とアンテナエレメント4とがオーバーラップしている形態図である。
【図8】距離w18を変化させたときの、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図9】ガラスアンテナ600とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図10】短絡場所の違いによる、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図11】ガラスアンテナ600の全周が囲まれているパターン図である。
【図12】AMガラスアンテナの有無による、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図13】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ700の平面図である。
【図14】マッチング回路Mの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとする。また、それらの図面は、窓ガラスの面を対向して見たときの図であって、窓ガラスが車両に取り付けられた状態での車内視(又は、車外視)の図であり、図面上での左右方向が水平方向に相当する。また、例えば、窓ガラスが車両の後部に取り付けられるリアガラスである場合、図面上での左右方向が車幅方向に相当する。なお、本発明は、リアガラスに限定されず、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスであってもよい。また、平行、直角などの方向は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ500の平面図である。車両用ガラスアンテナ500は、アンテナ導体及び給電部を車両用窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。車両用ガラスアンテナ500は、給電部18を起点に水平方向に略直角である第1の方向に延伸する第1のアンテナエレメントであるアンテナエレメント1と、アンテナエレメント1の第1の方向への延伸の終点である終端部1gを起点に第1の方向に対して略直角な方向(すなわち、水平方向)である第2の方向に延伸する第2のアンテナエレメントであるアンテナエレメント2と、アンテナエレメント2の第2の方向の延伸の終点である終端部2gを起点に第1の方向に対して逆向きの方向(図1では、第1の方向に対して平行で逆向きの方向、つまり第1の方向に対して180°反対の上方向)である第3の方向に延伸する第3のアンテナエレメントであるアンテナエレメント3と、アンテナエレメント3の第3の方向の延伸の終点である終端部3gを起点に第2の方向に終端部4gまで延伸する第4のアンテナエレメントであるアンテナエレメント4とを、アンテナ導体として備えた構造である。なお、アンテナ導体の角は曲率を有して折れ曲がっていてもよい。また終端部とは、アンテナエレメントの延伸する終端であってもよいし、その終端手前の導体部分である終端近傍であってもよい。
【0013】
車両用ガラスアンテナ500は、単極(モノポール)アンテナであって、アンテナ導体により得られる受信信号が正極側(ホット側)の給電部18から取り出し可能になっており、その受信信号が受信機(不図示)に伝達される。単極アンテナの場合、窓ガラス12が取り付けられる車両の車体開口部やその近傍部がグランドとして使用可能な部位であるとよい(いわゆるボディーアースがとれる)。車両用ガラスアンテナ500は、車体開口部の上縁部又は下縁部の近傍に給電部18が配置される場合に好適な形態である。図1の場合、車体開口部の上縁部15aの近傍に配置されている。
【0014】
給電部18は、受信機に接続される給電線が電気的に接続される給電点である。給電線としてAV線を用いる場合は、給電部18と車両側に設置された増幅器とを接続し、増幅器のグランドにボディーアースをとる。このとき、AV線と給電部18とを電気的に接続するためのコネクタを給電部18に実装する構成にすることによって、AV線を給電部18に取り付けしやすくなる。
【0015】
窓ガラス12にアース部19(例えば、図13参照)を設ける場合には、給電部18に同軸ケーブルの内部導体を電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体とアース部19とが電気的に接続される。同軸ケーブルと給電部18及びアース部19とを電気的に接続するためのコネクタを給電部18及びアース部19に実装する構成にすることによって、同軸ケーブルを給電部18及びアース部19に取り付けしやすくなる。
【0016】
アース部19は、給電部18及び給電部18に電気的に接続されるアンテナエレメント1等のアンテナ導体に接しないように、給電部18の周辺に近接して配置されていればよい。図13の場合、アース部19は、給電部18の右側に、給電部18に離間して配置されている。アース部19は、給電部18の左側に、給電部18に離間して配置されていてもよい。
【0017】
給電部18に実装されるコネクタに給電部18から取り出せる受信信号を増幅するための増幅回路が内蔵されている場合には、その増幅回路のグランドを同軸ケーブルの外部導体等のグランド部位に電気的に接続し、その増幅回路の入力側に給電部18が電気的に接続され、その増幅回路の出力側に同軸ケーブルの内部導体が接続されるとよい。
【0018】
給電部18の形状は、給電部18に直接取り付けられる給電線の先端形状又は給電部18と給電線とを接続するための接続部材の形状(例えば、コネクタの実装面や接触端子の形状)に応じて決めるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0019】
図13に示したアース部19の形状についても、給電部18と同様である。また、給電部19とアース部19との離間距離についても、給電部18及びアース部19に直接取り付けられる給電線の先端形状又は給電部18及びアース部19と給電線とを接続するための接続部材の形状(例えば、コネクタの実装面や接触端子の形状)に応じて決めるとよい。
【0020】
図1は、方形状の給電部18を示している。給電部18の下辺上にアンテナエレメント1との接続点1sが位置する。図1の接続点1sは、給電部18の下辺の中心点であるが、下辺上の任意の位置でもよく、給電部18の右辺(又は左辺)と下辺の交点としてもよい。
【0021】
アンテナエレメント1は、接続点1sを起点に下方向(第1の方向)に終端部1gを終点として延伸されればよい。
【0022】
アンテナエレメント2は、終端部1gを起点に左方向(第2の方向)に終端部2gを終点として延伸されればよい。右方向(すなわち、第2の方向と180°反対方向)に延伸されてもよい。アンテナエレメント2の延伸方向(第2の方向)は、窓ガラス12が車体開口部に取り付けられている状態において、水平方向に平行又は略平行であることが、平行でない場合に比べアンテナ利得向上の点で好適である。
【0023】
アンテナエレメント3は、終端部2gを起点に上方向(第3の方向)に終端部3gを終点として延伸されればよい。
【0024】
アンテナエレメント4は、終端部3gを起点に左方向(第2の方向)に終端部4gを終点として延伸されればよい。アンテナエレメント2が右方向に延伸されている場合には、アンテナエレメント4はアンテナエレメント2の延伸方向と同じ右方向に延伸されればよい。
【0025】
図1(車内視又は車外視)は、リアガラス12に本発明に係るガラスアンテナが設けられている実施形態であって、リアガラス12の右上側領域を示している。リアガラス12には、複数本のヒータ線と該複数本のヒータ線に給電する複数本(図1では1本のみ記載)のバスバとが設けられ、該複数本のヒータ線と該複数本のバスバとでデフォガ30が構成されている。図1において、30aは最高位のヒータ線、30bは片側のバスバである。図1では、アンテナエレメント2が最高位のヒータ線30aと平行になるように、ガラスアンテナ500はデフォッガ30の上側余白領域に配置されている。
【0026】
本発明において、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、その第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとし、λg2=λ02・kとするとき、アンテナエレメント1の導体長x1とアンテナエレメント2の導体長x2とアンテナエレメント3の導体長x3とアンテナエレメント4の導体長x4とを総和した全長(x1+x2+x3+x4)は、0.25・λg1〜0.41・λg1、特には0.27・λg1〜0.39・λg1であることが、アンテナ利得の向上の点で好ましい結果が得られ、第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯の電波を感度良く受信することができる。
【0027】
すなわち、ガラスアンテナ500の形状によれば、全長(x1+x2+x3+x4)は第1の放送周波数帯で共振する長さに基づいて設定されているものの、第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波についても感度良く受信することができる。
【0028】
例えば、第1の放送周波数帯としてバンド3(174〜240MHz)を設定した場合、その中心周波数は207MHzであり、207MHzにおけるλg1は927.5mmであり、また、第2の放送周波数帯としてLバンド(1452〜1492MHz)を設定した場合、その中心周波数は1472MHzであり、1472MHzにおけるλg2は130.4mmである。
【0029】
したがって、具体的には、全長(x1+x2+x3+x4)は230〜380mm(特には250〜360mm)であることが、バンド3及びLバンドでのアンテナ利得の向上の点で好ましい。
【0030】
また、本発明において、所望の第1の放送周波数帯とその第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、アンテナエレメント1の導体長x1が、0.075・λg1〜0.16・λg1、特には0.086・λg1〜0.13・λg1であることが、アンテナ利得の向上の点で好ましい結果が得られ、第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯の電波を感度良く受信することができる。具体的には、導体長x1が、70mm〜150mm、特には80mm〜120mm以下であることが、アンテナ利得の向上の点で好ましい。
【0031】
また、本発明において、所望の第1の放送周波数帯とその第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、アンテナエレメント3の導体長x3が、0.086・λg1以下、特には0.075・λg1以下であることが、バンド3でのアンテナ利得の向上の点で好ましい結果が得られる。具体的には、導体長x3が、80mm以下、特には70mm以下であることが、バンド3でのアンテナ利得の向上の点で好ましい。
【0032】
アンテナエレメント3の導体長x3が、0.064・λg1以上であることが、第1の放送周波数帯でのアンテナ利得の向上の点で好ましい結果が得られる。具体的には、導体長x3が、60mm以上であることが、バンド3でのアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0033】
また、車体開口部の縁部(フランジ)の近くに配設されるアンテナエレメント4は、車体開口部の縁部との最短距離を27mm以上とすることが好ましい。その結果、車体の影響によるアンテナ利得の低下を改善することができる。図1の場合、上縁部15aとアンテナエレメント4との最短距離w01を27mm以上とすることが好ましい。
【0034】
さらには、第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯でのアンテナ利得が高いアンテナパターンとして、図3に示されるような、図1のパターンに対してアンテナエレメントがさらに折り畳まれたアンテナパターンであってもよい。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ600の平面図である。図1と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。ガラスアンテナ600は、アンテナエレメント1,2,3,4と、アンテナエレメント4の第2の方向の延伸の終点である終端部4gを起点に第3の方向に延伸する第5のアンテナエレメントであるアンテナエレメント5と、アンテナエレメント5の第3の方向の延伸の終点である終端部5gを起点に第2の方向に対して逆向きの方向(図3では、第2の方向に対して平行で逆向きの方向、つまり第2の方向に対して180°反対の右方向)である第4の方向に終端部6gまで延伸する第6のアンテナエレメントであるアンテナエレメント6とを、アンテナ導体として備えた構造である。アンテナエレメント6は、給電部18やアンテナエレメント1に交差しないように、給電部18やアンテナエレメント1との間に間隙を設けて終端部6gまで延伸する。
【0036】
本発明において、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、その第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとし、λg2=λ02・kとするとき、アンテナエレメント1の導体長x1とアンテナエレメント2の導体長x2とアンテナエレメント3の導体長x3とアンテナエレメント4の導体長x4とアンテナエレメント5の導体長x5とアンテナエレメント6の導体長x6とを総和した全長(x1+x2+x3+x4+x5+x6)は、0.25・λg1〜0.41・λg1、特には0.27・λg1〜0.39・λg1であることが、アンテナ利得の向上の点で好ましい結果が得られ、第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯の電波を感度良く受信することができる。
【0037】
すなわち、ガラスアンテナ600の形状によれば、全長(x1+x2+x3+x4+x5+x6)は第1の放送周波数帯で共振する長さに基づいて設定されているものの、第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波についても感度良く受信することができる。
【0038】
したがって、具体的には、全長(x1+x2+x3+x4+x5+x6)は230〜380mm(特には250〜360mm)であることが、バンド3及びLバンドでのアンテナ利得の向上の点で好ましい。
【0039】
また、車体開口部の縁部(フランジ)に近接するアンテナエレメント6は、車体開口部の縁部との最短距離を27mm以上とすることが好ましい。その結果、車体の影響によるアンテナ利得の低下を改善することができる。図3の場合、上縁部15aとアンテナエレメント6との最短距離w02を27mm以上とすることが好ましい。
【0040】
さらには、第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯でのアンテナ利得が高いアンテナパターンとして、図1のアンテナ導体500に近接して囲むような形状の独立導体20Dが追加されたアンテナパターンであってもよい。本発明において、独立導体20Dはアンテナ導体500の第2の方向側のみに近接して設けられていても良いし、第4の方向側のみに近接して設けられていてもよい。
【0041】
図4は、アンテナエレメント1,2,3,4を備えるアンテナ導体500を囲むような形状の独立導体20Dがリアガラス12に設けられた場合のパターン図である。図1と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。独立導体20Dは、アンテナ導体500に対して無給電導体に相当する。独立導体20Dは、例えば、デフォッガ30の上側余白領域に配置されたAM放送受信用のAMガラスアンテナであってもよい。
【0042】
すなわち、アンテナ導体500と直流的に接続されず、かつ近接している独立導体20D(図4の場合、AMアンテナ)が車両用窓ガラス12の空白領域に設けられており、その独立導体20Dがアンテナエレメント3より第2の方向側の空白領域とアンテナエレメント1より第4の方向側の空白領域に設けられていると、バンド3及びLバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。
【0043】
アンテナ導体500と独立導体20Dとは、バンド3及びLバンドのアンテナ利得向上の点で、容量結合されているとよい。
【0044】
この独立導体20Dは、第2の方向に平行な方向に並走し且つ給電部18と異なる第2の給電部(図4には不図示だが、例えば、AMアンテナの給電部)に電気的に接続される複数の線条導体を備える場合、AM放送の周波数帯の受信に利用できる点で好ましい。
【0045】
図4において、独立導体20DであるAMアンテナのアンテナパターンは、アンテナ導体500の第1の方向側と第2の方向側と第4の方向側とをわたって取り囲むパターンである。すなわち、アンテナ導体500は、第1の方向側と第2の方向側と第4の方向側とがAMアンテナのパターンによって囲まれた空白領域13に配置されている。
【0046】
独立導体20Dは、アンテナエレメント3より第2の方向側の空白領域に配置された複数の線条導体(21〜26)から構成される第1の線条導体群と、アンテナエレメント1より第4の方向側の空白領域に配置された複数の線条導体(51〜55,26)から構成される第2の線条導体群とを備える。線条導体26は、第2の方向側の空白領域と第4の方向側の空白領域の両方に配置されるように、アンテナエレメント2とデフォッガ30との間の空白領域を通過している。アンテナ導体500が配置されている空白領域13は、第1の線条導体群と第2の線条導体群とによって囲まれている。また、21g〜25gは、線条導体21〜25の第4の方向の延伸の終点であるアンテナ導体500側の先端部(終端部)である。51g〜55gは、線条導体51〜55の第2の方向の延伸の終点であるアンテナ導体500側の先端部(終端部)である。
【0047】
また、独立導体20Dに含まれる複数の線条導体の中の隣り合う線条導体のうち、一方の線条導体のアンテナ導体500側の先端部が他方の線条導体と短絡線により接続されてなる短絡部を少なくとも一つ有してもよい。例えば、図4において、先端部21gと先端部22gとの間を第1の方向に平行な方向に延伸する短絡線により接続することによって一つの短絡部が形成される。また、先端部55gと線条導体26との間を短絡線により接続することによって一つの短絡部が形成される。
【0048】
この短絡部が形成される場合、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、0.027・λg1以下であることが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.022・λg1以下であることが好ましい。具体的には、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、25mm以下、特には20mm以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0049】
さらに、本発明において、所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、アンテナ導体に含まれる第2の方向に平行な方向に延伸するアンテナエレメントのうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、独立導体に含まれる複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体とは、その最近接の線条導体を第1の方向に投影したときにその最近接のアンテナエレメントが0.043・λg1以下の長さで重複することが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.011・λg1以下であることが好ましい。具体的には、その重複長さは、40mm以下、特には10mm以下、更には重複しないことが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0050】
また、本発明において、複数の線条導体のうちアンテナ導体側に対向した先端部を有する線条導体の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に接続されていない、つまり、図4に例示されるように、全てオープン(開放端)になっていることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。各開放端は、アンテナ導体に向けて車幅方向に開口した部位であり、複数の線条導体の中の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に設けられている。例えば、図4において、先端部21gと先端部22gとの間に、アンテナ導体に向けて開口している一つの開放端が形成されている。また、先端部55gと線条導体26との間に、アンテナ導体に向けて開口している一つの開放端が形成されている。
【0051】
上述したガラスアンテナには、補助アンテナ導体は付設されていない。しかし、これに限定されず、インピーダンスマッチング、位相調整及び指向性調整等のために、アンテナエレメントに接続導体を介して又は介さずに、略T字状、略L字状、ループ状等の補助アンテナエレメントが付設されていてもよい。
【0052】
図13に示されるように、例えば、上述したガラスアンテナは、補助アンテナ導体7を備えてもよい。窓ガラス12に設けられる補助アンテナ導体7は、給電部18の下辺を起点に下方向(第1の方向)にアンテナエレメント1に並走して延伸し、アンテナエレメント2の手前まで、アンテナエレメント1の延伸方向に対して第2の方向側(左側)の領域上を延伸する。
【0053】
また本発明は図13に示されるような双極(ダイポール)アンテナであってもよい。図13の車両用ガラスアンテナ700は、双極アンテナであって、負極側(コールド側(グランド側))のアース部19を接地基準として、正極側(ホット側)の給電部18からアンテナ導体により得られる受信信号が取り出し可能になっており、その受信信号が受信機(不図示)に伝達される。双極アンテナの場合、給電部18とアース部19とは、車両用窓ガラス板12が取り付けられる車体開口部の縁部に沿う方向に配置されるとよい。また、窓ガラス板12が取り付けられる車両の車体開口部やその近傍部がグランドとして使用不可能な部位であれば(例えば、当該部位が、ボディーアースから電気的に浮いている場合や、ボディ自体が樹脂などの非導電性部材である場合であれば)、受信性能の向上に限らず配置の自由度においても双極アンテナは好適な態様である。
【0054】
また、アンテナ導体からなる導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。さらに、アンテナ導体が形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。
【0055】
車両に対する窓ガラス板の取り付け角度は、水平方向に対し、15〜90°、特には、30〜90°が好ましい。
【0056】
アンテナ導体は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを窓ガラス板の車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、窓ガラス板の車両側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラスに接着剤等により形成してもよく、窓ガラス自身の内部に設けてもよい。給電部18についても同様である。
【0057】
また、窓ガラスの面上に隠蔽膜を形成し、この隠蔽膜の上にアンテナ導体の一部分又は全体を設けてもよい。隠蔽膜は黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見ると、隠蔽膜により隠蔽膜上に設けられているアンテナ導体の部分が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。図示の構成では、給電部とアンテナ導体の少なくとも一部を隠蔽膜上に形成させることで、車外視において導体の細い直線部分のみを見ることになり、デザイン上好ましい。
【実施例】
【0058】
[例1]
図1に示すガラスアンテナ500の形態を実際の車両のリアガラスの車内視右上側に取り付けることにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、アンテナエレメント3の導体長x3を変化させて、ガラスアンテナ500の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を測定した。
【0059】
このときの図1に示すガラスアンテナ500の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :10mm
x3 :70mm
x4 :130mm
とする。なお、ガラスアンテナ500の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0060】
アンテナ利得の測定は、窓ガラスを水平方向に対して15°傾斜させて取り付けられた自動車に対して電波を放射し、角度2°毎に自動車を360°回転させて測定した。電波は垂直偏波であり、周波数をバンド3とLバンドのそれぞれの範囲で10MHz毎に変化させた。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。アンテナ利得は、半波長ダイポールアンテナ(band III及びL bandの両方)を基準とし、半波長ダイポールアンテナが0dBとなるように標準化した。
【0061】
図2は、アンテナエレメント3の導体長x3を変化させたときの、上述の方向によって取得したアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、図2において、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。
【0062】
図2に示されるように、アンテナエレメント3の導体長x3を短くすることによってアンテナ利得が増加する。したがって、アンテナエレメントの導体長x3を80mm以下(特には、70mm以下)にすることによって、優れたアンテナ利得が得られることがわかる。
【0063】
[例2]
続いて、ガラスアンテナ500が独立導体20Dで囲まれるパターンを実際のリアガラスに取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製し、独立導体20Dの短絡部を変化させて、ガラスアンテナ500の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を測定した。図4の独立導体20Dの各部の基本寸法は、
w1 :375mm
w2 :200mm
w3〜w7 :20mm
w8 :20mm
w9 :10mm
w10 :10mm
w11 :1070mm
w12 :150mm
w13 :130mm
w14 :30mm
w15 :175mm
w16 :10mm
w17 :10mm
とする。w1は、複数の線条導体21〜26を各線条導体の中心付近で短絡する中間短絡線28と複数の線条導体21〜26を各線条導体の左側先端部同士(ガラスアンテナ500側と反対側の先端部同士)を短絡する左側短絡線27との車幅方向の距離である。w2は、中間短絡線28と線条導体21(22)の先端部21g(22g)との車幅方向の距離である。w3〜w7は、各線条導体間の間隔長である(線条導体51〜55,26についても同様)。w8は、独立導体20Dの線条導体のうち最低位の線条導体26とデフォッガ30のバスバ30bと30c間のヒータ線のうち最高位のヒータ線30aとの距離である。w9は、線条導体26とアンテナエレメント2との距離である。w10は、ガラスアンテナ500のアンテナエレメント4と独立導体20Dの線条導体21との車幅方向の最短距離である(図4の場合、先端部21g(22g)と先端部4gとの距離である)。w11は、ヒータ線30aの長さである。w12は、車体開口部の上縁部15aとヒータ線30aとの距離である。w13は、先端部21g,22gと先端部23g〜25gとの距離である。w14は、先端部23g〜25gと先端部51g〜55gとの距離である。w15は、複数の線条導体51〜55,26を各線条導体の右側先端部同士を短絡する右側短絡線29と先端部51g〜55gとの距離である。w16は、先端部23g〜25gとアンテナエレメント3との距離である。w17は、先端部51g〜55gとアンテナエレメント1との距離である。なお、AMガラスアンテナ20Dの各アンテナエレメント及び短絡線の導体幅は0.8mmである。
【0064】
また、独立導体のその他の形状として、図5に示したAMガラスアンテナ20E〜20Hの形状をガラスアンテナ500のパターンの周囲に取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製した。図5の各パターンにおいて、符号や寸法や左半分の形態は一部省略しているが、その省略部分は図4のパターンと同様である。
【0065】
図4,5に示したこれらの5種類のAMガラスアンテナのパターンを実際のリアガラスに取り付けることにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、それぞれの車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。アンテナ利得の測定は、例1と同じ方法である。
【0066】
図6は、独立導体の形態別の、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「0」は、各線条導体のガラスアンテナ500のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ500に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図4のパターンの場合である。「20」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)と線条導体22(52)とを短絡線で接続させることにより短絡部が形成されて、線条導体22と線条導体26との間及び線条導体52と線条導体26との間に開放端が形成されている図5(d)のパターンの場合である。「40」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)と線条導体22,23(52,53)とを短絡線で接続させることにより短絡部が形成されて、線条導体23と線条導体26との間及び線条導体53と線条導体26との間に開放端が形成されている図5(c)のパターンの場合である。「80」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)を有する線条導体21(51)と線条導体22(52)との間に開放端が形成されて、線条導体22と線条導体26との間及び線条導体52と線条導体26との間に短絡部が形成されている図5(b)のパターンの場合である。「100」は、各線条導体のガラスアンテナ500のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていることにより、開放端が無く全ての先端部に短絡部が形成された図5(a)のパターンの場合である。
【0067】
図5(a)のパターンの場合、複数の線条導体の中の隣り合う線条導体の間に形成されたアンテナ導体側に開口している開口部の第1の方向成分の長さをその複数の線条導体の中の各隣り合う線条導体の全てについて総和した長さに対して、その開口部の第1の方向成分の長さを短絡線により閉じられた開口部(すなわち、短絡部)の全てについて総和した長さが、100%に相当する。図5(b)の場合は、80%に相当する。図5(c)の場合は、40%に相当する。図5(d)の場合は、20%に相当する。
【0068】
図6に示されるように、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21(51)が短絡線と接続されていると(図6の「20」の場合)、線条導体22〜26(52〜26)同士の間が開放端となっていても、全て開放端である場合(図6の「0」の場合)に比べ、バンド3が悪化していることがわかる。一方、線条導体21(51)と線条導体22(52)との間が開放端となることにより、線条導体22〜26(52〜56)が短絡線と接続していたとしてもバンド3は向上する(図6の「80」の場合)。つまり、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21(51)の先端部21g(51g)が短絡線と接続する場合、当該短絡線の長さを短くすることが好ましい。
【0069】
したがって、所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、車両用窓ガラス12の周縁部12aに最近接の先端部21g(51g)と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、0.027・λg1以下、特には0.022・λg1以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。具体的には、25mm以下、特には20mm以下であることが好ましい。
【0070】
[例3]
続いて、例2で好ましい結果が得られた図4のパターンについて、図7に示されるように、最高位の線条導体21とアンテナエレメント4とが上下方向にオーバーラップしている重複長さw18を変化させて、ガラスアンテナ500の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。
【0071】
図8は、距離w18を変化させたときの、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。
【0072】
図8に示されるように、重複長さw18を短くするにしたがってアンテナ利得が増加している。特に、重複長さw18を40mm以下にすることによって、特には重複長さw18を10mm以下にすることによって、バンド3でのアンテナ利得は向上する。そして、重複長さw18が0mm未満、すなわちオーバーラップさせないことが、バンド3でのアンテナ利得向上の点で更に好ましい。
【0073】
[例4]
続いて、ガラスアンテナ600が独立導体20Iで囲まれるパターンと独立導体自体が設けられていないパターンとをそれぞれ実際のリアガラスに取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製し、独立導体20Iの短絡部を変化させて、ガラスアンテナ600の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を測定した。アンテナ利得の測定は、例1と同じ方法である。
【0074】
独立導体20I自体が設けられていない図3のパターンの場合のガラスアンテナ600の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :20mm
x3 :70mm
x4 :50mm
x5 :20mm
x6 :50mm
とする。なお、ガラスアンテナ600の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0075】
図9は、独立導体20Iを配置した場合のパターン図である。独立導体20Iの各部の基本寸法は、
w2 :270mm
w13 :50mm
w14 :40mm
とする。それ以外の寸法は、図4と同様である。
【0076】
図10は、独立導体の形態別の、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ600に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図9のパターンの場合である。「Short」は、図9のパターンにおいて、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていることにより、開放端が無い場合である。「Without-AM」は独立導体自体が設けられていない図3のパターンの場合である。
【0077】
図10に示されるように、独立導体自体を設けない場合のガラスアンテナ600を基準にすると、独立導体をアンテナエレメント3の左側及びアンテナエレメント1の右側に設けた場合、独立導体の形態によってバンド3とLバンドのアンテナ利得が向上しないことがある。例4の場合、独立導体の先端部が全て短絡されているパターンだと、独立導体自体を設けない場合に比べてアンテナ利得が悪くなるが、独立導体の先端部が全て開放端であるパターンにすることによって、独立導体自体を設けない場合と同等までバンド3とLバンドのアンテナ利得改善し、好ましい。
【0078】
[例5]
さらに、図11に示されるように、アンテナ導体を独立導体で囲ってもよい。独立導体20Jの線条導体21がアンテナエレメント6の上縁部側の空白領域に延伸している。
【0079】
独立導体20J自体が設けられていない図3のパターンの場合のガラスアンテナ600の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :10mm
x3 :60mm
x4 :65mm
x5 :10mm
x6 :65mm
とする。なお、ガラスアンテナ600の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0080】
図11における独立導体20Jの各部の基本寸法は、
w13 :65mm
w14 :30mm
とする。それ以外の省略部分については、例4と同様である。
【0081】
図12は、独立導体がない場合と独立導体で四方を囲まれた場合の、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ600に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図11のパターンの場合である。「Without-AM」はAMガラスアンテナ自体が設けられていない図3のパターンの場合である。
【0082】
図12に示されるように、アンテナ導体600側を全て開放端にすることによって、独立導体自体がない場合に比べ、バンド3とLバンドの両方のアンテナ利得が向上する。
【0083】
[例6]
図13に示したガラスアンテナ700に関して、補助アンテナ導体7が有る場合と無い場合について、ガラスアンテナ700の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。さらに、図14に示されるマッチング回路Mが有る場合と無い場合についても、ガラスアンテナ700の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。
【0084】
図14は、マッチング回路Mの回路図である。Zaは、給電部18とアース部19から見た、窓ガラスに設けられたアンテナ導体の入力インピーダンスを示す。アンテナ導体の入力インピーダンスZaは、アンテナ導体の線路の延伸方向にインダクタンス成分を寄生的に有し、アンテナ導体の線路間にキャパシタンス成分を寄生的に有している。インダクタンス成分とキャパシタンス成分のバランスが良くない場合、共振周波数が移動し、マッチングの劣化や峡帯域などが発生してしまう。
【0085】
そこで、インダクタンス成分とキャパシタンス成分のアンバランスによるアンテナ利得の低下を抑えるため、マッチング回路Mを追加する。マッチング回路Mを追加することによって、入力インピーダンスZaに含まれるインダクタンス成分とキャパシタンス成分のバランスを調整することができる。
【0086】
マッチング回路Mは、キャパシタCとインダクタLとを接続したLC回路である。キャパシタCは、給電部18に直列接続されたアンテナ導体に直列に挿入される容量素子である。インダクタLは、給電部18とアース部19との線路間方向に並列に挿入される誘導素子である。マッチング回路Mは、外部との接点部である端子61〜64を備える。キャパシタCの一端が端子61に接続され、キャパシタC1の他端が端子63に接続される。インダクタLの一端が端子63に接続され、インダクタLの他端が端子62と64に接続される。
【0087】
アンプ等の信号処理装置に接続された同軸ケーブル70の信号線(内部導体)71が端子61に接続され、同軸ケーブル70の接地線(外部導体)72の一端が端子62に接続され、同軸ケーブル70の接地線72の他端が車体等のアース部位に接続される。マッチング回路Mの端子63は給電部18上にハンダ等によって実装され、端子64はアース部19上にハンダ等によって実装される。
【0088】
一方、マッチング回路Mを追加せずに、同軸ケーブル70と給電部18及びアース部19とを接続する場合、アンプ等の信号処理装置に接続された同軸ケーブル70の信号線71が給電部18に直接接続され、接地線72の一方の端部がアース部19に直接接続され、接地線72のもう一方の端部が車体等のアース部位に接続される。
【0089】
【表1】

表1は、マッチング回路Mの有無及び補助アンテナ導体7の有無による、ガラスアンテナ700のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。表1において、バンド3のアンテナ利得の平均値とは、170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値であり、Lバンドのアンテナ利得の平均値とは、1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値である。
【0090】
表1を測定したときの図13に示したガラスアンテナ700の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :10mm
x3 :60mm
x4 :130mm
x7 :30mm
とする。なお、ガラスアンテナ700の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0091】
表1を測定したときの図14内の各定数は、
インダクタLのインダクタンス :220nH
キャパシタCのキャパシタンス :4pF
同軸ケーブル70の特性インピーダンス :50Ω
とする。
【0092】
表1に示されるように、補助アンテナ導体7を設けた場合、設けない場合に比べて、Lバンドのアンテナ利得が向上する。また、マッチング回路Mを設けた場合、設けない場合に比べて、バンド3のアンテナ利得を向上させることができる。
【符号の説明】
【0093】
1〜6 アンテナエレメント
7 補助アンテナ導体
12 窓ガラス
13 空白領域
15 窓の車体開口縁
18 給電部
19 アース部
20D〜20J 独立導体(AMアンテナ)
21〜26,51〜55 線条導体(AMアンテナのアンテナエレメント)
27 左側短絡線
28 中間短絡線
29 右側短絡線
30 デフォッガ
61,62 端子
70 同軸ケーブル
71 信号線
72 接地線
500,600 ガラスアンテナ(又は、アンテナ導体)
C キャパシタ
L インダクタ
M マッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ導体及び給電部が車両用窓ガラスに設けられた車両用ガラスアンテナであって、
前記アンテナ導体は、
前記給電部を起点に第1の方向に延伸する第1のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第1の方向に対して略直角な方向である第2の方向に延伸する第2のアンテナエレメントと、
前記第2のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第1の方向に対して逆向きの方向である第3の方向に延伸する第3のアンテナエレメントと、
前記第3のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第2の方向に延伸する第4のアンテナエレメントとを備えることを特徴とする、車両用ガラスアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ導体は、
前記第4のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第3の方向に延伸する第5のアンテナエレメントと、
前記第5のアンテナエレメントの延伸の終端部を起点に前記第2の方向に対して逆向きの方向である第4の方向に延伸する第6のアンテナエレメントとを備える、請求項1に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項3】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記アンテナ導体の全長が、0.25・λg1〜0.41・λg1である、請求項1又は2に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナ導体の全長が、230〜380mmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項5】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記第3のアンテナエレメントの導体長が、0.086・λg1以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項6】
前記第3のアンテナエレメントの導体長が、80mm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項7】
前記アンテナ導体に離間した独立導体が前記車両用窓ガラスの空白領域に設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項8】
前記独立導体は、前記第2の方向に並走する複数の線条導体を備え、
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に、前記アンテナ導体に向けて開口している開放端を、前記隣り合う線条導体の全てについて有する、請求項7に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項9】
前記独立導体は、前記第2の方向に並走する複数の線条導体を備え、
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体同士が、該隣り合う線条導体の少なくとも一方の前記アンテナ導体側の先端部を起点として短絡線により接続される短絡部を少なくとも一つ有する請求項7に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項10】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する前記短絡線の前記第1の方向成分の長さは、0.027・λg1以下である、請求項9に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項11】
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する前記短絡線の前記第1の方向成分の長さは、25mm以下である、請求項9又は10に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項12】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記第2の方向に平行な方向に延伸する前記アンテナエレメントのうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、前記複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体とは、
前記最近接の線条導体を前記第1の方向に投影したときに前記最近接のアンテナエレメントが0.043・λg1以下の長さで重複する、請求項8から11のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項13】
前記第2の方向に平行な方向に延伸する前記アンテナエレメントのうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、前記複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体との関係において、
前記最近接の線条導体を前記第1の方向に投影したときに前記最近接のアンテナエレメントと重複する長さが、40mm以下である、請求項8から12のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項14】
前記第2の方向が、前記車両用窓ガラスが車両に取り付けられる状態において、水平又は略水平な方向である、請求項1から13のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項15】
前記給電部に近接させたアース部を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項16】
前記給電部を起点に前記第1の方向に延伸する補助アンテナ導体を備える、請求項15に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項17】
前記アンテナ導体に前記給電部を介して容量素子が直列接続され、前記給電部と前記アース部との間に誘導素子が接続される、請求項15又は16に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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