説明

車両用クリーナ装置

【課題】 車両用電源装置にかかる負担の軽減化を図りつつ効率的に被洗浄体に付着した雪や氷等の融氷、融雪、解氷等を行いつつ洗浄を行うことのできる車両用クリーナ装置を提供する。
【解決手段】 本発明の車両用クリーナ装置1は、洗浄液10aを貯留する洗浄液貯留タンク4と洗浄液貯留タンク4から圧送される洗浄液10aを被洗浄体3に向けて噴射するクリーニングノズル装置6との連通経路の途中に、洗浄液貯留タンク4よりも貯留容量が少なくかつ洗浄液10aを一時的に貯留して暖めるためのヒータ11を有する加熱用タンク5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クリーナ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用クリーナ装置には、洗浄液貯留タンクにヒータを設け、洗浄液貯留タンクに貯留されている洗浄液をヒータで加熱し、ポンプによりその洗浄液貯留タンク内の加熱された洗浄液をクリーニングノズル装置から被洗浄体に向けて噴射する構成のものが知られている(例えば、特許文献等1参照。)。この従来の車両用クリーナ装置は、ウインドウに付着した雪や氷を融氷、融雪、解氷するのに用いられる。
【特許文献1】実開平5−16524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この従来の車両用クリーナ装置を用いて、例えば、ヘッドランプ前面のレンズに付着した雪や氷の融氷、融雪等を行うために、洗浄液貯留タンク内の洗浄液を瞬時に適温に昇温させるには、1KW(キロワット)以上の容量を有するヒータが必要となり、車両側電源装置に大きな負担がかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的は、車両側電源装置にかかる負担の軽減化を図りつつ効率的に被洗浄体に付着した雪や氷等の融氷、融雪、解氷等を行いつつ洗浄を行うことのできる車両用クリーナ装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両用クリーナ装置は、洗浄液を貯留する洗浄液貯留タンクと前記洗浄液貯留タンクから圧送される洗浄液を被洗浄体に向けて噴射するクリーニングノズル装置との連通経路の途中に、前記洗浄液貯留タンクよりも貯留容量が少なくかつ前記洗浄液を一時的に貯留して暖めるためのヒータを有する加熱用タンクが設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の車両用クリーナ装置は、前記加熱用タンクが、入り口側が前記洗浄液貯留タンクに連通されかつ出口側が前記クリーニングノズル装置に連通されしかも入り口側と出口側との間が蛇腹形状の貯留室とされた貯留部を有し、該貯留部が断熱材料を介して被覆され、前記入り口側と前記出口側とには、前記貯留部の熱損失を防止する熱損失防止弁が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の車両用クリーナ装置は、前記加熱用タンクには前記貯留部に温度センサが設けられ、前記ヒータを前記温度センサによって制御する制御回路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の車両用クリーナ装置によれば、洗浄液貯留タンクを一次タンクとし、この一次タンクよりも貯留容量の少ない二次タンクを加熱用タンクとして用い、二次タンク内に存在する洗浄液を加熱して噴射させ、被洗浄体を洗浄する構成となっているので、車両側電源装置にかかる負担の軽減化を図りつつ効率よく被洗浄体に付着している雪や氷等の融雪、融氷、解氷等を行いつつ被洗浄体を洗浄することができる。
【0009】
請求項2に記載の車両用クリーナ装置によれば、貯留部の貯留室を蛇腹形状とし、かつ、貯留部を断熱材料で被覆すると共に、貯留部の入り口側と出口側とに貯留部の熱損失を防止する熱損失防止弁を設けたので、より一層効率良く、貯留室内の洗浄液を加熱することができる。
【0010】
請求項3に記載の車両用クリーナ装置によれば、制御回路により加熱用タンク内の洗浄液の温度制御を行っているので、電力消耗を極力抑制しつつ貯留室内の洗浄液の温度を適温に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係わる車両用クリーナ装置をヘッドランプクリーナシステムに用いた発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0012】
図1は本発明に係わるヘッドランプクリーナシステムの説明図であって、この図1において、1は車両用クリーナ装置、2はヘッドランプ、3はそのヘッドランプ2に設けられた被洗浄体としての前面レンズである。
【0013】
車両用クリーナ装置1は、洗浄液を貯留する一次タンクとしての洗浄液貯留タンク4、二次タンクとして洗浄液を加熱する加熱用タンク5、クリーニングノズル装置6から大略構成されている。
【0014】
加熱用タンク5は、図2に拡大して詳細に示すように、その入り口側が導管7を介して洗浄液貯留タンク4に接続され、その出口側が導管8を介してクリーニングノズル装置6に接続されている。導管7、導管8は耐圧ホースから構成され、加熱用タンク5は洗浄液貯留タンク4から圧送される洗浄液を前面レンズ3に向けて噴射するクリーニングノズル装置6との連通経路の途中に存在している。クリーニングノズル装置6はシリンダ6Aとピストン6Bと噴射ノズル6Cとから大略構成されている。
【0015】
その加熱用タンク5はアウタータンク5Aとインナータンク5Bとからなり、アウタータンク5Aとインナータンク5Bとの間に断熱空間5Cが形成されている。その断熱空間5Cは真空状態であるのが望ましいが、この断熱空間5Cに発泡製樹脂を充填してアウタータンク5Aとインナータンク5Bとを断熱する構成とすることもできる。そのアウタータンク5Aはインナータンク5Bを被覆して断熱する断熱材として機能する。
【0016】
インナータンク5Bは貯留部9を有し、その貯留部9の入り口側と出口側との間が蛇腹形状の貯留室10とされる。その貯留部9は、例えば貯留室10を蛇腹状に構成するための整流リブ9aを有する。
【0017】
その貯留部9にはヒータ(例えば、ニクロム線)11が設けられ、このヒータ11は貯留室10に存在する洗浄液を加熱するのに用いられる。そのヒータ11の熱はインナータンク5Bの壁部、整流リブ9aを介して貯留室10内の洗浄液10aに伝熱される。
【0018】
その貯留部9の入り口側と出口側とには、貯留室10の熱損失を防止する熱損失防止弁12、13が設けられている。
【0019】
加熱用タンク5の貯留容量は、洗浄液貯留タンク4の貯留容量よりも少なく、ここでは、加熱用タンク5の貯留容量は、後述するクリーニングノズルから噴射される洗浄液10aの量の数回分に相当する量を貯留できることとされて、洗浄液貯留タンク4から圧送されて貯留室10内に流入した洗浄液が連続的に加熱用タンク5から流出する際に適温に昇温される程度の容量とされている。
【0020】
加熱用タンク5には貯留部9に温度センサ14が設けられ、温度センサ14とヒータ11とは制御回路15に接続され、この制御回路15には車両側電源装置(図示を略す)から電源が供給され、制御回路15はヒータ11を温度センサ14の測定結果に基づいて制御すると共に電動ポンプ16を制御するのに用いられる。
【0021】
その加熱用タンク5に存在する洗浄液は、その制御回路15によって適温に維持されるが、ここでは、適温とは、融氷、融雪を考慮する観点から極力高い温度であることを意味する。
【0022】
なお、メタノールを含む洗浄液の場合、メタノールの沸点を考慮すると75度C以下が薬剤の品質維持の観点からの限界であるので、適温とは75度Cよりも若干低い温度を意味し、人体への誤噴射を考慮した場合には、適温とは60度C前後の温度を意味する。
【0023】
その制御回路15は、例えば図示を略すエンジンの始動によりオンされる。なお、車両側電源装置の保護を図るため、電流が一度にニクロム線に流れるのを防止するための保護回路を制御回路15に設けておくのが望ましい。
【0024】
制御回路15がオンすると、温度センサ14の測定結果に基づいてヒータ11が通電され、貯留室10内の洗浄液10aが加熱される。貯留室10は断熱されているので、かつ、貯留室10内の入り口側と出口側とには熱損失防止弁12、13が設けられているので、保熱性が高く、従って、車両側電源装置の電力消費量を抑制しつつ効率良く洗浄液10aの加熱を行うことができる。また、貯留室10が蛇腹形状に形成されているので、洗浄液10aの受熱面積を確保することができ、熱交換効率の向上も図られる。
【0025】
この発明の実施の形態によれば、図示を略すスイッチを操作すると、電動ポンプ16が作動され、洗浄液貯留タンク4内の洗浄液10aは導管7を経由して加熱用タンク5に向けて圧送される。
【0026】
熱損失防止弁12はその電動ポンプ16による圧送力により開弁され、洗浄液貯留タンク4内の洗浄液10aが貯留室10内に流入する。一方、貯留室10内の加熱された洗浄液10aはその電動ポンプ16による圧送力により熱損失防止弁13を開弁させ、導管8を介してクリーニングノズル装置6に導かれる。
【0027】
そのクリーニングノズル装置6に導かれた加熱された洗浄液10aは、その噴射ノズル6Cからヘッドランプ2の例えば前面レンズ3に向けて噴射され、例えば、前面レンズ3に着雪している雪が融雪されると共に、洗浄液10aにより前面レンズ3の汚れが除去される。
【0028】
一方、加熱用タンク5内に流入した洗浄液10aは、そのヒータ11により効率良く加熱され、洗浄液貯留タンク4から圧送される洗浄液10aは加熱用タンク5内をその入り口側から出口側に通過する際に瞬時に昇温される。
【0029】
以上、発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、加熱用タンク5をクリーニングノズル装置6に近接して設ける構成とすれば、加熱用タンク5の若干の漏れ熱により、クリーニングノズル装置6の凍結防止を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係わる車両用クリーナ装置をヘッドランプクリーニングシステムに適用した発明の実施の形態の概要を示す説明図である。
【図2】本発明に係わる車両用クリーナ装置の詳細構成を示す拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…車両用クリーナ装置
3…前面レンズ(被洗浄体)
4…洗浄液貯留タンク
5…加熱用タンク
6…クリーニングノズル装置
10a…洗浄液
11…ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を貯留する洗浄液貯留タンクと前記洗浄液貯留タンクから圧送される洗浄液を被洗浄体に向けて噴射するクリーニングノズル装置との連通経路の途中に、前記洗浄液貯留タンクよりも貯留容量が少なくかつ前記洗浄液を一時的に貯留して暖めるためのヒータを有する加熱用タンクが設けられていることを特徴とする車両用クリーナ装置。
【請求項2】
前記加熱用タンクは、入り口側が前記洗浄液貯留タンクに連通されかつ出口側が前記クリーニングノズル装置に連通されしかも入り口側と出口側との間が蛇腹形状の貯留室とされた貯留部を有し、該貯留部が断熱材を介して被覆され、前記入り口側と前記出口側とには、前記貯留部の熱損失を防止する熱損失防止弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用クリーナ装置。
【請求項3】
前記加熱用タンクには前記貯留部に温度センサが設けられ、前記ヒータを前記温度センサによって制御する制御回路を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用クリーナ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−160103(P2006−160103A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355197(P2004−355197)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】