説明

車両用シート

【課題】専用のテーブル位置保持機構を設ける必要をなくし、テーブル装置の構成を簡略化する。
【解決手段】車両用シート1は、テーブル11の格納状態においてテーブル11を内部に格納するためのボックス10(格納部材)を備える。ボックス10には、テーブル11をボックス10の内部に出し入れするための開口部が形成され、かつ、この開口部を開閉するように第1の蓋体13が設けられる。第1の蓋体13は、テーブル11の展開状態においてテーブル11の下側に位置してこのテーブル11を支持するように構成される。これにより、テーブル11の格納状態においてテーブル11を覆い隠す第1の蓋体13は、テーブル11の展開状態においてはテーブル11を支持する部材として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル装置を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両等のシートに付随して設けられるテーブル装置が開示されている。このテーブル装置は、シートクッションの側部にあるアームレストの下にテーブルを格納し、このテーブル使用時は、アームレスト先端を中心にテーブルを回転しながら引き上げ、所定位置まで引き上げ後にテーブル面が上面となるようにテーブルを展開する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3549029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記テーブル装置では、テーブルを展開状態に保持するために、テーブルとアームレストとの間にテーブル位置保持機構が必要となる。このテーブル位置保持機構は、テーブル上に置かれるものを考慮すると、相当の強度が必要であり、そのため、テーブル装置の構成が複雑となり、大型化し、コスト高となる問題がある。
本発明は、このような問題に鑑み、テーブルの位置保持をテーブル周辺の部材で兼ねさせることにより、専用のテーブル位置保持機構を設ける必要をなくし、テーブル装置の構成を簡略化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、格納状態と展開状態とに切り替えることができるテーブルを備えた車両用シートである。この車両用シートは、テーブルの格納状態においてテーブルを内部に格納するための格納部材を備えている。格納部材には、テーブルを格納部材の内部に出し入れするための開口部が形成され、かつ、この開口部を開閉するように第1の蓋体が設けられている。第1の蓋体は、テーブルの展開状態においてテーブルの下側に位置してこのテーブルを支持するように構成されている。
第1発明によれば、テーブルの格納状態においてこのテーブルを覆い隠す第1の蓋体は、テーブルの展開状態においてはこのテーブルを支持する部材として用いられる。これにより、専用のテーブル位置保持機構を設ける必要をなくし、テーブル装置全体の構成を簡略化することができる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、テーブルは、このテーブルの支柱部を介して格納部材の内部の構造体に連結され、第1の蓋体には、テーブルの展開状態においてこのテーブルの支柱部に対応する位置に切欠部が形成され、かつ、この切欠部を開口部の開閉とは独立して開閉するように第2の蓋体が設けられ、テーブルの展開状態において、第2の蓋体を開けて第1の蓋体を閉めた状態で、第1の蓋体にテーブルの支柱部を支持させるものである。
第2発明によれば、第1の蓋体に切欠部が形成されているため、テーブルの展開状態において第1の蓋体を閉めて、この第1の蓋体にテーブルの支柱部を支持させながら格納部材の内部を覆い隠すことができる。また、テーブルの格納状態においては、第2の蓋体を閉めることにより上記切欠部から格納部材の内部が見えないようにすることができる。これにより、テーブルの展開状態および格納状態の両方の状態において、テーブル装置の見栄えの悪化を低減させることができる。
【0007】
本発明の第3発明は、上記第1または第2発明において、テーブルは、格納部材の開口部を介して格納状態と展開状態との間で移動され、第1の蓋体は、格納部材の開口部を閉める際に、上記テーブルの移動軌跡を横切るように設定されるものである。
第3発明によれば、テーブルを展開状態として第1の蓋体を閉めるだけで、第1の蓋体はテーブルを格納状態に戻らないように受け止めて支持することができる。
【0008】
本発明の第4発明は、上記第1ないし第3発明のいずれかにおいて、第1の蓋体は、第1の付勢部材によりこの第1の蓋体を閉める向きに付勢されているものである。
第4発明によれば、第1の蓋体を開けてテーブルを展開状態とした後で、この第1の蓋体が第1の付勢部材の付勢力により自動的に閉められる。これにより、テーブルを展開状態としたときに、このテーブルを第1の蓋体に自動的に支持させることができる。
【0009】
本発明の第5発明は、上記第2ないし第4発明のいずれかにおいて、第1の蓋体は、格納部材の開口部に対して回動することでこの開口部を開閉し、第2の蓋体は、上記第1の蓋体の回動方向と同じ方向に回動することで切欠部を開閉し、かつ、第2の付勢部材により第2の蓋体を閉める向きに付勢されているものである。
第5発明によれば、第1の蓋体が格納部材の開口部を閉めるときにテーブルが展開状態である場合は、第2の蓋体はテーブルの支柱部と干渉して自動的に開いた状態となる。また、第1の蓋体が格納部材の開口部を閉めるときにテーブルが格納状態である場合は、第2の蓋体は第2の付勢部材の付勢力により自動的に閉められる。これにより、第2の蓋体を直接操作しなくても切欠部を開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を表す斜視図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】上記実施形態の側面図である。
【図4】上記実施形態の内部構造を表す斜視図である。
【図5】上記実施形態の内部構造を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
始めに、一実施形態に係る車両用シート1の構成について、図1ないし図5を用いて説明する。この車両用シート1には、図1に示すように、そのアームレスト14の下側にボックス10が付随して設けられている。ボックス10の内部のメインフレーム(図示省略)には、ヒンジサポート12Cおよびフレームサポート12Dが一体に接合されている。このフレームサポート12Dには、枠状に形成されたサブフレーム12(図4参照)が一体に連結されている。そして、ボックス10の内部には、上記サブフレーム12に沿って格納スペース12Bが形成されている。
上記格納スペース12Bには、図1ないし図3に示すように、テーブル11が格納されるようになっている(以下、この状態を「格納状態」ともいう。)。このテーブル11は、図1に示すように、上記格納スペース12Bから引き出して展開することで使用可能となる(以下、この状態を「展開状態」ともいう。)ように構成されている。すなわち、ボックス10は本発明における「格納部材」として機能する。
上記ヒンジサポート12Cは本発明における「構造体」に相当し、テーブル11の支柱部11Aを回動軸11B(図3参照)を中心として垂直方向に回動可能に連結している。また、ボックス10は、上記展開状態および格納状態において図示しないロック機構によりテーブル11の回動をロックし、このロックを解除することでテーブル11の回動を許容するように構成されている。
【0012】
上記テーブル11を格納状態から展開状態に移行させる際には、まず格納スペース12B内のテーブル11を上記回動軸11Bを中心として引き上げる方向(図3で見て時計回り方向)に回動させる。ついで、テーブル11を所定の位置まで回動させた後にテーブル11の天板部11Cを水平に展開する。これにより、テーブル11は、図1に示すように、その天板部11Cを車両用シート1においてシートバック20の前側かつシートクッション21の上側の位置に展開させた展開状態に移行する。
また、テーブル11を展開状態から格納状態に移行させる際には、まずテーブル11の天板部11Cを垂直に折り畳んで格納スペース12Bに格納可能な状態とする。ついで、テーブル11を上記回動軸11Bを中心として押し下げる方向(図3で見て反時計回り方向)に回動させる。これにより、テーブル11は、図1および図2に示すように、その天板部11Cを垂直に立てた状態で上記格納スペース12Bに格納した格納状態に移行する。
【0013】
ボックス10には、図4および図5に示すように、テーブル11を上述した格納スペース12B(図4参照)に出し入れするための開口部12Aが形成されている。また、サブフレーム12には、上記開口部12Aを開閉するように回動する第1の蓋体13(図2参照)が設けられている。
すなわち、第1の蓋体13は、その蓋体フレーム13E(図5参照)に複数(本実施形態では3個)形成された係止孔13G(図5参照)のそれぞれに、図示しない係止部材を介してカバー部13F(図2参照)を係止させて組み付けることにより形成される。そして、第1の蓋体13は、図3ないし図5に示すように、上記蓋体フレーム13Eが複数個(本実施形態では2個)のヒンジ12Eを介してサブフレーム12に連結されることにより、回動軸13Dを中心に水平方向に回動するようになっている。
【0014】
上記第1の蓋体13は、図1ないし図5に示すように、テーブル11の展開状態においてテーブル11の下側に位置してテーブル11の支柱部11Aを下側から支持するように構成されている。すなわち、テーブル11の格納状態においてテーブル11を覆い隠す第1の蓋体13は、テーブル11の展開状態においてはテーブル11を支持する部材として用いられる。これにより、従来のテーブル装置のように専用のテーブル位置保持機構を設ける必要をなくし、テーブル装置全体の構成を簡略化することができる。
【0015】
上記第1の蓋体13には、図5に示すように、テーブル11の展開状態においてテーブル11の支柱部11Aに対応する位置に切欠部13Aが形成されている。また、第1の蓋体13には、図1および図2に示すように、第1の蓋体13とは独立して回動して上記切欠部13Aを開閉する第2の蓋体13Bが設けられている。そして、第1の蓋体13は、図1ないし図5に示すように、テーブル11の展開状態において、第2の蓋体13Bを開けた状態で第1の蓋体13を閉めることで、テーブル11の支柱部11Aを支持するように構成されている。
すなわち、第1の蓋体13には切欠部13Aが形成されているため、テーブル11の展開状態において第1の蓋体13を閉めることで、この第1の蓋体13にテーブル11の支柱部11Aを支持させながらボックス10の内部を覆い隠すことができる。これにより、テーブル11の展開状態において、ボックス10の見栄えの悪化を低減させることができる。
また、上記切欠部13Aは第2の蓋体13Bにより第1の蓋体13とは独立して開閉されるため、テーブル11の格納状態においては、第2の蓋体13Bを閉めることにより切欠部13Aからボックス10の内部が見えないようにすることができる。これにより、テーブル11の格納状態において、ボックス10の見栄えの悪化を低減させることができる。
【0016】
ここで、第1の蓋体13は、ボックス10の開口部12Aを閉める際に、テーブル11の回動軌跡を横切るようにその回動軌跡が設定されている。すなわち、第1の蓋体13は、図3に示すように、回動軸13Dを中心に水平方向に回動するように設定されている。また、テーブル11は、上述した回動軸11Bを中心に垂直方向に回動することで、下側の格納スペース12B(図4参照)から展開状態における位置まで引き上げられるように設定されている。
そして、テーブル11が展開状態における位置に引き上げられて第1の蓋体13が閉められた状態では、図5に示すように、テーブル11の支柱部11Aが第1の蓋体13の切欠部13Aに臨んで設けられた台座部13Hに載置される。このため、第1の蓋体13は、テーブル11を下側の格納スペース12B(図4参照)に向かって回動させないように支持する。これにより、テーブル11を展開状態として第1の蓋体13を閉めるだけで、第1の蓋体13はテーブル11の支柱部11Aを格納状態に戻らないように受け止めてこの支柱部11Aを支持することができる。
【0017】
また、上述した複数個のヒンジ12Eのうち少なくとも1個(本実施形態では上側のヒンジ12E)には、図4および図5に示すように、コイルばね13Cが取り付けられている。このコイルばね13Cは、第1の蓋体13をこの第1の蓋体13により上述した開口部12Aを閉める向きに常時付勢している。ここで、コイルばね13Cが本発明における「第1の付勢部材」に相当する。
すなわち、第1の蓋体13は、この第1の蓋体13を開けてテーブル11を展開状態とした後で、コイルばね13Cの付勢力によりボックス10の開口部12Aを自動的に閉めるようになっている。これにより、テーブル11を展開状態としたときに、このテーブル11を第1の蓋体13に自動的に支持させることができる。
【0018】
ところで、第2の蓋体13Bの回動方向は、第1の蓋体13の回動方向と同じ方向(すなわち水平方向)に設定されている。また、第2の蓋体13Bには、図示しない第2の付勢部材から上記第2の蓋体13Bにより上述した切欠部13Aを閉める向きの付勢力が常時かけられている。
このため、第1の蓋体13がボックス10の開口部12Aを閉めるときにテーブル11が展開状態である場合は、図1および図2に示すように、第2の蓋体13Bはテーブル11の支柱部11Aと干渉して自動的に外側に向かって開いた状態となる。また、第1の蓋体13がボックス10の開口部12Aを閉めるときにテーブル11が格納状態である場合は、第2の蓋体13Bは上記第2の付勢部材の付勢力により上述した切欠部13Aを自動的に閉める。これにより、第2の蓋体13Bを直接操作しなくても切欠部13Aを開閉することができる。
【0019】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
1.テーブルの展開状態において第1の蓋体が開いた状態でテーブルを支持する構成を用いることができる。ただし、この場合はテーブルの展開状態においてボックスの開口部が覆われず、ボックスの見栄えが悪くなるおそれがある。
2.第1の蓋体および第2の蓋体の移動は回動に限定されず、スライドなど適宜設定することができる。
3.第1の蓋体または第2の蓋体が脱着可能に取り付けられている構成を用いることができる。
4.第1の蓋体から切欠部と第2の蓋体とを省略することができる。
5.テーブルをボックスの格納スペースから引き出す構成は回動に限定されず、スライドなど適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 車両用シート
10 ボックス(格納部材)
11 テーブル
11A 支柱部
11B 回動軸
11C 天板部
12 サブフレーム
12A 開口部
12B 格納スペース
12C ヒンジサポート(構造体)
12D フレームサポート
12E ヒンジ
13 第1の蓋体
13A 切欠部
13B 第2の蓋体
13C コイルばね
13D 回動軸
13E 蓋体フレーム
13F カバー部
13G 係止孔
13H 台座部
14 アームレスト
20 シートバック
21 シートクッション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納状態と展開状態とに切り替えることができるテーブルを備えた車両用シートであって、
前記テーブルの前記格納状態において前記テーブルを内部に格納するための格納部材を備え、
前記格納部材には、前記テーブルを前記格納部材の内部に出し入れするための開口部が形成され、かつ、当該開口部を開閉するように第1の蓋体が設けられ、
前記第1の蓋体は、前記テーブルの前記展開状態において前記テーブルの下側に位置して当該テーブルを支持するように構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記テーブルは、当該テーブルの支柱部を介して前記格納部材の内部の構造体に連結され、前記第1の蓋体には、前記テーブルの前記展開状態において前記テーブルの前記支柱部に対応する位置に切欠部が形成され、かつ、当該切欠部を前記開口部の開閉とは独立して開閉するように第2の蓋体が設けられ、前記テーブルの前記展開状態において、前記第2の蓋体を開けて前記第1の蓋体を閉めた状態で、当該第1の蓋体に前記テーブルの前記支柱部を支持させることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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