説明

車両用バンパー装置

【課題】高強度で、且つ、強化方法の選択の自由度が高い車両用バンパー装置を、経済的に、効率よく形成できるようにする。
【解決手段】金属板を筒状に成形したバンパー本体1を設け、バンパー本体1における車体側に面する裏面部3と、裏面部3とは反対側に位置する表面部2とに、凹溝部4がそれぞれ形成してあり、表面部2の凹溝部4a及び裏面部3の凹溝部4bどうしは、当接しない状態に、且つ、表面部2と裏面部3との対向方向に少なくともその一部が重なる状態に配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を筒状に成形したバンパー本体を設けて構成してある車両用バンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用バンパー装置としては、例えば、所定断面形状の筒体(例えば、特許文献1参照)となるように帯板を幅方向に折り曲げて成形し、突き合わせた端縁部どうしを溶接で接合して、筒状のバンパー本体が形成されていた。また、そのバンパー本体を、高周波焼入れ等の方法で強化することもあった。
前記筒体の所定断面形状とは、例えば、円形や楕円形や矩形や、それらを組合せた形状であった。
【0003】
【特許文献1】特開2006−240441号公報(図15,図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の車両用バンパー装置によれば、例えば、縦長の矩形断面形状の場合、バンパー本体の表面部から外力が作用した場合に、上下中間部分の平面部から容易に変形し易い。
この変形を抑制するには、図8に示すように、表面部2の上下中間部にリブ20を形成したり、図9に示すように、二つの角筒21を上下に並設して溶接で一体化することが考えられる。
しかし、上述の表面部2にリブ20を形成するものにおいては、例えば、高周波焼入れ等の強化方法を採用する場合、上下二ヵ所に環状断面部分が分離していることから、加熱時の磁束が一方の環状断面部に集まり易く、全体を焼入れ出来ない問題があり、強化方法の選択の自由度が低い欠点がある。
一方、二つの角筒21を接続するものにおいては、溶接の手間が掛かり、且つ、角筒21どうしの重なり部分は、金属板が二枚重ねになり、材料コストが嵩むと共に、重量も増加し、取扱性が悪いという欠点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、高強度で、且つ、強化方法の選択の自由度が高い車両用バンパー装置を、経済的に、効率よく形成できるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、金属板を筒状に成形したバンパー本体を設け、前記バンパー本体における車体側に面する裏面部と、前記裏面部とは反対側に位置する表面部とに、凹溝部がそれぞれ形成してあり、前記表面部の凹溝部及び前記裏面部の凹溝部どうしは、当接しない状態に、且つ、前記表面部と前記裏面部との対向方向に少なくともその一部が重なる状態に配置してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、表面部と裏面部とに、それぞれ凹溝部を形成してあるから、バンパー本体の断面二次モーメントを、単なる縦長矩形断面のバンパー本体に比べて、より大きくすることができ、バンパー本体の全体とした強度アップを図ることが可能となる。
また、特に、バンパー本体の弱軸周りの断面二次モーメントの増加を図り易いから、バンパー本体の表面部に対向方向から作用する外力に対する耐力の向上を図ることができる。
しかも、表面部の凹溝部と裏面部の凹溝部とは、当接しない状態に、且つ、表面部と裏面部との対向方向に少なくともその一部が重なる状態に配置してあるから、外力の作用に伴って前記表面部が裏面部側に撓み変形した場合、表面部の凹溝部の底部分が、裏面部の凹溝部の底部分に当接し、裏面部において表面部からの力を受け止めることができる。
従って、両底部分が当接するまでの外力作用の当初においては、表面部の撓み変形によって衝撃吸収を図りながら、両底部分が当接した後は、裏面部においても外力を受け止めて、より強力に外力支持を叶えることができる。
一方、バンパー本体の断面形状としては、表面部の凹溝部及び裏面部の凹溝部どうしは当接しない状態に形成してあるから、全体として一つの環状の断面を構成することができる。従って、例えば、強化方法として高周波焼入れを採用しても、断面全体を容易に加熱して強化を図ることができる。勿論、他の焼入れ法にも対応することができ、強化方法を選択する上での自由性が高い。
また、一枚の金属帯板を曲げ加工によって筒形状に形成することも可能であるから、端縁部どうしの一ヵ所の溶接のみでバンパー本体を形成でき、従来のように、二つの筒部材を溶接によって一体化する場合に比べて、溶接手間の軽減によって生産効率の向上を図れると共に、コストダウンをも図ることが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記表面部と前記裏面部との対向方向に位置する前記凹溝部どうしは、その対向方向にすべてが重なる状態に配置してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、外力の作用に伴って前記表面部が裏面部側に撓み変形した場合、表面部の凹溝部の底部分が、裏面部の凹溝部の底部分全域に当接し、同一の作用線上での力の伝達が図られ、裏面部において表面部からの力をより強力に受け止めることができる。
従って、バンパー本体の強度アップを、より強力に図ることができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記バンパー本体の前記凹溝部が形成してある部分の断面形状は、前記表面部と前記裏面部とが、表裏対象形状であるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、当該バンパー本体の成形時に、金属製帯板を折り曲げながら、当該形状に加工する際、表裏対象形状にすることで、表面部と裏面部との折り曲げ工程を同時に実施して工程を単純化することができる。
その結果、バンパー本体の成形作業効率を向上させることができ、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の車両用バンパー装置の一実施形態品の横断面を示すもので、当該車両用バンパー装置Bは、図には示さないが、長尺に形成してあり、車両の前面と後面とにそれぞれ横配置にして取付部を介して取り付けられている。
【0014】
前記車両用バンパー装置Bは、金属板を筒状に成形したバンパー本体1を設けて構成してある。
バンパー本体1の基本の横断面形状は、全長にわたって同一で、縦長の矩形筒形状に形成してある。
また、バンパー本体1における車体側に面する裏面部3と、前記裏面部3とは反対側に位置する表面部2とに、凹溝部4がそれぞれ形成してある。
前記表面部2と前記裏面部3の凹溝部4a及び前記裏面部の凹溝部4bどうしは、当接しない状態に、且つ、前記表面部2と前記裏面部3とが、表裏対象形状となる状態に形成してある。
具体的には、素材となる金属帯板の幅方向の所定個所を折り曲げして加工し、最終的に、両方の側縁部をどうしを突きあわせて溶接によって一体化を図ってある。当該バンパー本体1は表裏対象形状に形成してあるから、表面部2と裏面部3との折り曲げ工程を同時に実施して工程を単純化できる。その結果、バンパー本体の成形作業効率を向上させることができ、コストダウンを図ることができる。
また、突合せ部は、当該実施形態においては、バンパー本体1の横断面形状の上面部分に位置している。
【0015】
当該実施形態のバンパー装置Bに、表面部2側から外力が作用した場合、表面部2に凹溝部4aを形成してあることで、平板のみで構成されているものに比べて断面二次モーメントが大きくなり、変形し難い。
また、外力が大きい場合、表面部2は裏面側に撓み変形するものの、凹溝部4aの底部分4aaが、裏面部3の凹溝部4bの底部分4baに当接し、裏面部3において表面部3からの力を受け止めることができる。
従って、両底部分4aa,4baが当接するまでの外力作用の当初においては、表面部2の撓み変形によって衝撃吸収を図りながら、両底部分4aa,4baが当接した後は、裏面部3においても外力を受け止めて、より強力に外力支持を叶えることができる。
また、バンパー本体1の断面形状としては、表面部2の凹溝部4a及び裏面部3の凹溝部4bどうしは当接しない状態に形成してあるから、全体として一つの環状の断面を構成することができる。従って、例えば、強化方法として高周波焼入れを採用しても、断面全体を容易に加熱して強化を図ることができる。勿論、他の焼入れ法にも対応することができ、強化方法を選択する上での自由性が高い。
【0016】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0017】
〈1〉 バンパー本体1は、先の実施形態で説明した断面形状に限るものではなく、例えば、凹溝部4の数に関しては、一条に限らず、図2、図3に示すように、二条、三条、又は、四条以上の複数条であってもよい。
また、表面部2の凹溝部4aと、裏面部3の凹溝部4bとの対向方向視における双方の配置は、先の実施形態で説明したように、総てが重なる状態に配置してあるものに限らず、例えば、図4に示すように、同じ巾寸法の凹溝部4が、上下に位置ズレして、一部が重なる状態であってもよい。
また、図5に示すように、表裏の凹溝部4a,4bの巾寸法を異ならせて、それら凹溝部4の一部が重なる状態に配置してあってもよい。
また、図6に示すように、表裏の凹溝部4a,4bの深さ寸法を異ならせて形成してあってもよい。
また、バンパー本体1の基本断面形状は、先の実施形態で説明したように、縦長の矩形形状に限るものではなく、例えば、図7に示すように、円形形状部を備えた形状であってもよい。
【0018】
〈2〉 前記バンパー本体1は、全長にわたって同一の断面形状であることに限らず、部分的に異なる断面形状となるように形成してあってもよい。
【0019】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】バンパー本体を示す模式断面図
【図2】別実施形態のバンパー本体を示す模式断面図
【図3】別実施形態のバンパー本体を示す模式断面図
【図4】別実施形態のバンパー本体を示す模式断面図
【図5】別実施形態のバンパー本体を示す模式断面図
【図6】別実施形態のバンパー本体を示す模式断面図
【図7】別実施形態のバンパー本体を示す模式断面図
【図8】従来例のバンパー本体を示す模式断面図
【図9】従来例のバンパー本体を示す模式断面図
【符号の説明】
【0021】
1 バンパー本体
2 表面部
3 裏面部
4 凹溝部
4a 表面部の凹溝部
4b 後面部の凹溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を筒状に成形したバンパー本体を設け、
前記バンパー本体における車体側に面する裏面部と、前記裏面部とは反対側に位置する表面部とに、凹溝部がそれぞれ形成してあり、
前記表面部の凹溝部及び前記裏面部の凹溝部どうしは、当接しない状態に、且つ、前記表面部と前記裏面部との対向方向に少なくともその一部が重なる状態に配置してある車両用バンパー装置。
【請求項2】
前記表面部と前記裏面部との対向方向に位置する前記凹溝部どうしは、その対向方向にすべてが重なる状態に配置してある請求項1に記載の車両用バンパー装置。
【請求項3】
前記バンパー本体の前記凹溝部が形成してある部分の断面形状は、前記表面部と前記裏面部とが、表裏対象形状である請求項1又は2に記載の車両用バンパー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−100190(P2010−100190A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274244(P2008−274244)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)