説明

車両用フードロック装置

【課題】 操作レバーのフックに対する保持構造を改良してフックの操作性をより向上させる。
【解決手段】 フック6が、支持軸43と同方向に延在するフランジ部64を有し、操作レバー7が、支持軸43に相対回転自在に嵌合する保持部73及びフランジ部64に嵌合する連結部74を有する、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フードロック装置に関するもので、たとえば、車両のエンジンルームを開閉するエンジンフードを閉鎖状態で車両フレーム部材であるラジエータサポートに対して保持するフードロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフードロック装置は、車両フレーム部材に設けられた取付壁に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに支持軸回りで揺動自在に支持され車両フードに固定されたストライカと係合して車両フードを車両フレーム部材に対して保持するフックと、フックに連結されフックとストライカの係合を解除すべくフックを揺動させる操作レバーとを有して構成されている。
【0003】
そして、操作レバーは、フックに形成されたフランジ部にビスによって取り付けられ、これにより、操作レバーがフックに連結されている。
【特許文献1】実用新案登録第2512099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来装置では、操作レバーは、ビスによるフックへの連結(取り付け)のみでフックに保持されることになるので、操作レバーのフックに対する剛性が低く、又、操作レバーのフックに対するガタもあって、結果、操作レバーによるフックの操作性を著しく阻害している。
【0005】
故に、本発明は、操作レバーのフックに対する保持構造を改良してフックの操作性をより向上させることを、その技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために本発明において講じた技術的手段は、フックは、支持軸と同方向に延在するフランジ部を有し、操作レバーは、前記支持軸に相対回転自在に嵌合する保持部及び前記フランジ部に嵌合する連結部を有する構成とした、ことである。
【0007】
より好ましくは、支持軸は、前記取付壁を貫通して延び、前記操作レバーは、前記取付壁を挟んで前記フックと対向するよう配置すると、良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作レバーは、保持部にてフックの支持軸に嵌合され且つ連結部にてフックのフランジ部に嵌合され、これにより、フックに対して2箇所の保持部位で保持されることになる。この結果、操作レバーのフックに対する剛性を高めることができ、フックの操作性を向上させることができる。
【0009】
又、操作レバーのフックに対する2箇所の保持は、両者間のガタを抑制するので、結果、フックの操作性をより向上させることができる。
【0010】
更に、操作レバーの支持軸を利用して操作レバーのフックに対する保持部位を増やしているので、部品点数の増加もなく、コスト的に有利なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2に示されるように、フードロック装置1は、車両のエンジンルーム(図示せず)を開閉するエンジンフード2を閉鎖状態でラジエータサポート3に対して保持するものであって、ラジエータサポート3に設けられた上壁31及び取付壁32にて形成される収容凹空間A内に配設されている。
【0012】
図1ないし図4に示されるように、フードロック装置1は、取り付け用のベースプレート4、エンジンフード2をラジエータサポート3に閉鎖状態で保持させるための主要構造部品であるラッチ機構5、エンジンフード2の不用意な開動作を防止するフック6、フック6を操作する操作レバー7及びラッチ機構5を被覆するカバー8を有して構成されている。
【0013】
図2ないし図4に示されるように、ベースプレート4は、板状を呈するものであって、その左右縁(図3及び図4左右方向)及び下縁(図3及び図3示下方)には、ラジエータサポート3への取付フランジ部41が形成されている。ベースプレート4の上縁(図3及び図4示上方)には、エンジンフード2に固定されたストライカ21がエンジンフード2の開閉に伴って進入・退出する挿通溝42が形成されている。ベースプレート4は、この取付フランジ部41にてボルト33によりラジエータサポート3の取付壁32に、ベースプレート4の表面側が取付壁32と対面するように、締結固定されおり、これにより、フードロック装置1がラジエータサポート3に取り付けられる。又、ラジエータサポート3の上壁31には、収容凹空間Aと連通する開口31aが形成されており、この開口31aを通ってベースプレート4の挿通溝42が収容凹空間Aより突出している。
【0014】
図3に示されるように、ラッチ機構5は、ベースプレート4にピン51aにより回転自在に支持されたラッチ51と、ベースプレート4にピン52aにより回転自在に支持されたポール52とから構成されている。このラッチ51及びポール52は、ベースプレート4の裏面側に略同一平面内で配置されており、ラッチ51には、挿通溝42に進入したストライカ21が嵌合する嵌合溝51b及びストライカ8が嵌合溝51bに嵌合した状態でポール52と係合する係合腕51cが形成されている。ラッチ51は、スプリング53の付勢力を受けてストライカ21と嵌合溝51bとの嵌合が解除される方向(図3示反時計方向)に常時回転付勢されており、ポール52が係合腕51cと係合することで、スプリング53の付勢力による図3示反時計方向の回転が規制されている。これにより、ラッチ機構5は、エンジンフード2をラジエータサポート3に対して閉鎖状態で保持している。尚、ポール52には、車両室内に配設されたフードオプーナー(図示せず)にケーブル(図示せず)を介して連結されており、このフードオプーナーを操作することで、ポール52が図3示時計方向に回転してラッチ51の係合腕51cとの係合を解除し、これにより、ラッチ51がスプリング53の付勢力を受けて図3示反時計方向に回転し、結果、ラッチ51の嵌合溝51bとストライカ21との嵌合が解除される。これにより、エンジンフード2の閉鎖状態でのラジエータサポート3に対する保持が解除され、エンジンフード2の開動作が可能となる。
【0015】
図1及び図4に示されるように、フック6は、ラッチ機構5とは反対側となるベースプレート4の表面側に配されており、ラジエータサポート3の取付壁32と直交するようにベースプレート4に立設された支持軸43にその軸受ボス部分61にて揺動自在に支持されている。このフック6の軸受ボス部分61とは反対側の先端には、ベースプレート4の挿通溝42を横切る係合爪62が形成されている。この係合爪62は、挿通溝42を横切るよう位置することで、挿通溝42に進入しているストライカ21が挿通溝42から退出するのを規制し、エンジンフード2の開動作を規制している。又、フック6には、支持軸43と同方向に延在するフランジ部64が形成されている。このフランジ部64には、係合孔64aが形成されている。そして、フック6を支持する支持軸43及びフック6のフランジ部64は、ラジエータサポート3の取付壁32を貫通して延在している。
【0016】
フック6の軸受ボス部分61周りには、一端がフック6に係止され且つ他端がベースプレート4に係止されたスプリング63が巻回支持されており、フック6は、スプリング63の付勢力を受けて係合爪62が挿通溝42を横切るよう図4示時計方向に常時付勢されている。
【0017】
操作レバー7は、合成樹脂材料からなる射出成形品であって、基部71及び基部71から突出する操作部72を一体に備えている。基部71には、フック6を支持する支持軸43が挿入嵌合される第1嵌合孔73及びフック6のフランジ部64が挿入嵌合される第2嵌合孔74が形成されている。第2嵌合孔74の内部には、係合突起64aと係合する係合孔74aが形成されている。そして、支持軸43が第1嵌合孔73に嵌合されることで、基部71がフック6に保持され且つフランジ部64が第2嵌合孔74に嵌合されることで基部71がフック6に連結される。これにより、操作レバー7が支持軸43を中心にフック6と一体に揺動するよう、ラジエータサポート3の取付壁31を挟んでフック6に取り付けられる。この際、係合突起64aが係合孔74aに係合することで、基部71とフック6との間の揺動方向のガタが抑制されている。このように、操作レバー7は、フック6に対して支持軸43及びフランジ部64の2箇所で保持しているので、操作レバー7のフック6に対する剛性を高めることができ、フック6の操作性を向上させることができる。
【0018】
このような構成において、人が操作部72をつまんで図1示反時計方向に操作レバー7を揺動させると、その操作力が第2嵌合孔74とフランジ部64との嵌合によりフック6に伝達される。これにより、フック6がスプリング63の付勢力に抗して図1示反時計方向に揺動する。この結果、フック6の係合爪62がベースプレート4の挿通溝42から外れ、これにより、挿通溝42に進入していた
ストライカ21がエンジンフード2の開動作に伴って挿通溝42から退出できるようになり、エンジンフード2の開動作できるようになる。
【0019】
図1ないし図3及び図5ないし図9に示されるように、カバー8は、合成樹脂材料からなる射出成形品であって、アッパカバー部81、ロアカバー部82及びアッパカバー部81とロアカバー部82とを連結するヒンジ部83を一体に備えている。アッパカバー部81は、ベースプレート4の上縁からラッチ機構5が配置される裏面側の上方部位をラッチ機構5と共に収容する箱形状を呈している。このアッパカバー部81には、ベースプレート4の挿通溝42と同形状の切り欠き溝84が形成されている。ロアカバー部82は、ベースプレート4の下縁からラッチ機構5が配置される裏面側の下方部位をラッチ機構5と共に収容する箱形状を呈している。このロアカバー部82の表面には、ベースプレート4の下縁に形成された取付フランジ部41と合致する凹部85が形成されており、この凹部85の底壁85aには、ボルト33が挿通する貫通穴85bが形成されている。ヒンジ部83は、アッパカバー部81とロアカバー部82との間に水平方向(図5示奥行方向)に沿って延在しており、アッパカバー部81のベースプレート4の裏面側を覆う正面壁部分81aとロアカバー部82のベースプレート4の裏面側を覆う正面壁部分82aから一体に突出して両者を連結している。このヒンジ部83は、その中央に薄肉部分83aを水平方向に沿って設けており、これにより、ロアカバー部82がアッパカバー部81に対して図5及び図6に示される開放状態と図7に示される閉鎖状態とを取り得るように略180度反転回動できるようになっている。又、アッパカバー部81の左右の側壁部分81bには、それぞれ、矩形孔86が形成されており、ロアカバー部82の左右の側壁部分82bには、それぞれ、この矩形孔86に合致する挟持爪87及び挟持フランジ88が形成されている。
【0020】
このような構成において、図5及び図6に示されるカバー8の展開状態において、ロアカバー部82は、ヒンジ部83によってアッパカバー部81に連結されており、アッパカバー部81の下縁81cとロアカバー部82の上縁82cとは、互いに突き合わされていない。この状態で、ロアカバー部82をアッパカバー部81に対してヒンジ部83にて回転させ、下縁81cと上縁82cとを突き合わせる。そして、アッパカバー部81の側縁部分82bをロアカバー部81の挟持爪87と挟持フランジ88とで挟み込むと共にアッパカバー部81の矩形孔86に挟持爪87を係止させることで、アッパカバー部81がロアカバー部82に対して保持される。これにより、カバー8が図7に示される閉鎖状態となる。この閉鎖状態では、互いに突き合わされるアッパカバー部81の下縁81cとロアカバー部82の上縁81cとで、側壁部分81b、82bに位置する部位に、ラッチ機構5のポール53に連結されるケーブルが導出される切欠開口89を形成している。
【0021】
次にフードロック装置1をラジエータサポート3に取り付ける際の組み付け方法について説明する。
【0022】
先ず、ベースプレート4にラッチ機構5及びフック6を組み付け、サブアッシー化しておく。そして、このサブアッシー化されたベースプレート4及びラッチ機構5に展開状態にあるカバー8を仮組み付けしておく。この仮組み付けは、図3に示されるように、アッパカバー部81をベースプレート4及びラッチ機構5に対して鉛直方向上方から被せておく。この状態で、フードロック装置1を、カバー8の切り欠き溝84がラジエータサポート3の開口31aから露出すると共に支持軸43及びフランジ部64がラジエータサポート3の取付壁32を貫通するようにラジエータサポート3の収容凹空間Aに収容して、ラジエータサポート3に対して仮組み付けする。この時、図2に示されるように、アッパカバー部81にラジエータサポート3の上壁31aと係合する対の係合片90を形成しておき、この係合片90を上壁31aと係合させるようにすれば、フードロック装置1のラジエータサポート3に対する仮組み付け時の保持が確実且つ容易になる。そして、ポール52にケーブルを連結し、ベースプレート4の取付フランジ部41をボルト33によりラジエータサポート3の取付壁32に締結固定する。この時、ボルト33は、ロアカバー82の貫通穴85bに挿通されるので、カバー8のベースプレート4に対する保持が確実となる。この後、カバー8のロアカバー部82をアッパカバー部81に対してヒンジ部83を中心に180度回転させて、カバー8を閉鎖状態とする。これにより、ロアカバー部8は、ベースプレート4及びラッチ機構5に対して鉛直方向下方から被せられ、結果、カバー8は、ベースプレート4及びラッチ機構5をベースプレート4の裏面側から覆う。この状態では、アッパカバー部81の下縁81cとロアカバー部8の上縁82cとは、ベースプレート4の裏面側に位置して互いに突き合わされている。又、ベースプレート4の表面側は、取付壁32によって覆われる。そして、最後に、操作レバー72をその第1及び第2嵌合孔73、74と支持軸43及びフランジ部64との嵌合によってフック6に取り付ける。結果、フードロック装置1がラジエータサポート3に取り付けられる。このように、ラッチ機構5をベースプレート4によってラジエータサポート3に取り付ける際、つまり、フードロック装置1をラジエータサポート3に取り付ける際、カバー8をベースプレート4に予め保持された状態とすることができるので、これにより、フードロック装置1のラジエータサポート3に対する組付け性を向上させることができる。
【0023】
このように、ラジエータサポート3に取り付けられたフードロック装置1は、カバー8、上壁31及び取付壁32により覆われているので、不当な工具などを用いたラッチ機構5の不当な操作を防止でき、盗難防止性を向上させることができる。又、カバー8のアッパカバー部81とロアカバー部82の見切り部分(下縁81cと上縁82cとの突き合わせ部位)がベースプレート4の水平方向後方に位置するので、この見切り部分からの水滴の浸入を抑制でき、これにより、ラッチ機構5の耐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車両用フードロック装置を車両フレーム部材に搭載した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用フードロック装置の斜視図である。
【図3】本発明に係る車両用フードロック装置の仮組み付け状態での斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用フードロック装置の操作レバーの取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係る車両用フードロック装置のカバーの斜視図である。
【図6】本発明に係る車両用フードロック装置のカバーの展開状態での側面図である。
【図7】本発明に係る車両用フードロック装置のカバーの閉鎖状態での側面図である。
【図8】本発明に係る車両用フードロック装置のロアカバー部の締結部位の斜視図である。
【図9】本発明に係る車両用フードロック装置のロアカバー部の係合部位の斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 フードロック装置(車両用フードロック装置)
2 エンジンフード(車両フード)
3 ラジエータサポート(車両フレーム部材)
4 ベースプレート
6 フック
7 操作レバー
32 取付壁
43 支持軸
64 フランジ部
73 第1嵌合孔(保持部)
74 第2嵌合孔(連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フレーム部材に設けられた取付壁に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに支持軸回りで揺動自在に支持され車両フードに固定されたストライカと係合して前記車両フードを前記車両フレーム部材に対して保持するフックと、該フックに連結され前記フックと前記ストライカの係合を解除すべく前記フックを揺動させる操作レバーとを有する車両用フードロック装置において、前記フックは、前記支持軸と同方向に延在するフランジ部を有し、前記操作レバーは、前記支持軸に相対回転自在に嵌合する保持部及び前記フランジ部に嵌合する連結部を有する、車両用フードロック装置。
【請求項2】
前記支持軸は、前記取付壁を貫通して延び、前記操作レバーは、前記取付壁を挟んで前記フックと対向する、請求項1記載の車両用フードロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−9393(P2006−9393A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187346(P2004−187346)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】