説明

車両用冷凍サイクル装置

【課題】センサを増やしてコストアップすることなく放熱器3での圧力損失ΔPを推定し、圧縮機1の吐出圧力Pdを推定することのできる車両用冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】空調制御装置20は、容量制御弁2へ出力している制御電流値Icを容量制御弁2の制御電流対冷媒流量特性に当て嵌めて冷媒流量を算出する冷媒流量算出手段S22〜S26と、算出した冷媒流量を冷媒流量対圧力損失特性に当て嵌めて圧縮機1から放熱器3の出口側までの圧力損失ΔPを算出する圧力損失算出手段S27とを備えている。
これによれば、センサを増やしてコストアップすることなく、圧縮機1から放熱器3の出口側までの圧力損失ΔPを推定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行用エンジンなどによって駆動される冷媒流量制御式の可変容量型圧縮機を用いた車両用冷凍サイクル装置に関するものであり、空調用の冷凍サイクル装置などに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気圧縮式冷凍サイクルにおける放熱器の出口側で検出する圧力値を用いて、圧縮機の吐出圧力制御を安定的に行おうとするものがある。例えば、下記の特許文献1では、圧縮機に吸入される冷媒の吸入密度と圧縮機の回転数とから高圧側の冷媒流量を算出し、その冷媒流量から放熱器での圧力損失を算出し、放熱器の出口側に設けた圧力センサで検出される圧力値に算出された圧力損失を加えた圧力値を圧縮機の吐出圧力として制御するものである。
【特許文献1】特開2006−71177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の従来技術において、吸入側の冷媒密度を求めるには、吸入圧力と吸入温度とが必要となり、精度良く算出するには吸入側に圧力センサと温度センサとが必要となり、冷凍サイクル装置がコストアップするという問題点がある。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、センサを増やしてコストアップすることなく放熱器での圧力損失を推定し、圧縮機の吐出圧力を推定することのできる車両用冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、冷媒を圧縮する冷媒流量制御式可変容量型の圧縮機(1)と、圧縮機(1)の吐出冷媒を冷却する放熱器(3)と、放熱器(3)から流出する冷媒を減圧する減圧手段(5)と、減圧手段(5)によって減圧された低圧冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒が圧縮機(1)に吸入される蒸発器(9)と、圧縮機(1)に設けられ、外部からの制御信号によって圧縮機(1)の吐出容量を可変制御する容量制御機構(2)と、放熱器(3)出口側の放熱器後冷媒圧力(PRE)を検出する圧力検出手段(14)と、少なくとも圧力検出手段(14)が検出した放熱器後冷媒圧力(PRE)が入力されて容量制御機構(2)を制御する制御手段(20)とを備えた車両用冷凍サイクル装置において、
制御手段(20)は、容量制御機構(2)へ出力している制御電流値(Ic)を容量制御機構(2)の制御電流対冷媒流量特性に当て嵌めて冷媒流量(Gr、Gmax)を算出する冷媒流量算出手段(S22〜S26)と、算出した冷媒流量(Gr、Gmax)を冷媒流量対圧力損失特性に当て嵌めて圧縮機(1)から放熱器(3)の出口側までの圧力損失(ΔP)を算出する圧力損失算出手段(S27)とを備えることを特徴としている。
【0006】
この請求項1に記載の発明によれば、センサを増やしてコストアップすることなく、圧縮機(1)から放熱器(3)の出口側までの圧力損失(ΔP)を推定することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(20)は、圧力検出手段(14)が検出した放熱器後冷媒圧力(PRE)に、圧力損失算出手段(S27)が算出した圧力損失(ΔP)を加えて、圧縮機(1)が吐出する吐出圧力(Pd)を算出する吐出圧力算出手段(S28)を備えることを特徴としている。
【0008】
この請求項2に記載の発明によれば、センサを増やしてコストアップすることなく、圧縮機(1)から放熱器(3)の出口側までの圧力損失(ΔP)を推定したうえ、その推定した圧力損失(ΔP)を用いて圧縮機(1)の吐出圧力(Pd)を推定することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(20)は、圧縮機(1)の最大容量状態と可変容量状態とが切り替わる変曲点の可変開始電流値(Imax)を算出する可変開始電流算出手段(S23)と、制御電流値(Ic)が可変開始電流値(Imax)以上である場合、その時の最大冷媒流量(Gmax)を算出して圧力損失算出手段(S27)に与える最大冷媒流量算出手段(S25)を備えることを特徴としている。
【0010】
この請求項3に記載の発明によれば、最大容量(100%容量)状態での圧力損失(ΔP)もしくは吐出圧力(Pd)を正確に推定することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル中に、蒸発器(9)の温度(Te)を検出する蒸発器温度検出手段(13)を備えるとともに、制御手段(20)は、制御電流対冷媒流量特性の選定に用いる圧力条件(PRE/Ps)を求めるため、蒸発器温度検出手段(13)が検出した蒸発器温度(Te)を温度対吸入圧力特性に当て嵌めて圧縮機(1)の吸入圧力(Ps)を算出する吸入圧力算出手段(S21)を備えることを特徴としている。
【0012】
車両用空調装置などの冷凍サイクルにおいては、冷却能力を制御するために蒸発器(9)の温度(Te)を検出する蒸発器温度検出手段(13)を備えている。そのため、この請求項4に記載の発明によれば、新たに圧力センサを設けることなく、圧縮機(1)の吸入圧力(Ps)を推定することができる。なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図1〜9を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態における車両用冷凍サイクル装置の概略構成を示す模式図である。なお、本実施形態では、本発明の車両用冷凍サイクル装置を、車両用空調装置に適用したものとして説明する。
【0014】
車両用空調装置は、大別して、空調ユニット6と、冷凍サイクル装置Rと、空調制御装置(本発明で言う制御手段)20などから構成されている。空調ユニット6は、空調ケース6a内に後述する空調機能品を内蔵したものである。なお、本実施形態の空調ユニット6は、車室内前方のインストルメントパネル内に設けられ、車室内前席側の領域を空調する前席用空調ユニットである。
【0015】
空調ケース6aは、空調風を車室内に導く空気通路を形成しており、この空気通路の最上流部には内気導入口および外気導入口を有する図示しない内外気切替箱を備えている。この内外気切替箱内には、図示しない内外気切替ドアが回転自在に配置されている。この内外気切替ドアは、図示しないサーボモータなどによって駆動されるものであり、内気導入口より内気(車室内空気)を導入する内気モードと、外気導入口より外気(車室外空気)を導入する外気モードとを切り替えることができる。
【0016】
この内外気切替箱の下流側には、車室内へ向かう空気流れを発生させる送風機7が配置されている。送風機7は、遠心多翼式などの送風ファン8aを、モータ8bによって駆動するように構成されている。なお、本実施形態では、モータ8bとして電流制御可能な3相のブラシレスモータを使用しており、空調制御装置20からのデューティ信号に応じて、モータ8bに与えるパルス幅を可変制御する図示しないモータ駆動回路を有している。
【0017】
そして、モータ8bは、このモータ駆動回路を介して供給される制御電流に基づいて制御され、送風ファン8aの回転速度、つまりは送風量が制御される。なお、ブラシレスモータに代えて、通常の制御回路付きの直流モータでも使用可能である。送風機7の下流側には、空気通路内を流れる空気を冷却する蒸発器9が配置されている。この蒸発器9は、送風機7による送風空気を冷却する冷房用熱交換器である。
【0018】
なお、蒸発器9から流出する空気温度は、蒸発器後温度センサ(本発明で言う蒸発器温度検出手段)13によって検出され、空調制御装置20へ入力されるようになっている。なお、蒸発器温度センサ13の代わりに、例えば図示しないフィンサーミスタなどで、蒸発器9の温度を直接検知するものであっても良い。
【0019】
蒸発器9の下流側には、蒸発器9によって冷却された空気を加熱するヒータコア11が配置されている。このヒータコア11は、車両に搭載された走行用のエンジン15の冷却水を熱源として、蒸発器9を通過した後の空気を加熱する暖房用熱交換器である。なお、エンジン15の冷却水の温度は、水温センサ16によって検出され、空調制御装置20へ入力されるようになっている。
【0020】
ヒータコア11の側方(本実施形態では上方)には、ヒータコア11を迂回した冷風が流れるバイパス通路が形成されている。そして、蒸発器9とヒータコア11との間には、エアミックスドア10が回転自在に配置されている。このエアミックスドア10は、図示しないサーボモータなどによって駆動され、その回転位置による開度が連続的に調節可能に構成されている。
【0021】
このエアミックスドア10の開度を調整することにより、ヒータコア11を通って加熱される空気量(温風量)と、バイパス通路を通過してヒータコア11を迂回する空気量(冷風量)とを調節することができる。このようにして車室内に吹き出す空気の吹出温度を調整する。
【0022】
また、空調ケース6a内の空気通路の最下流部には、図示しないが、車両の前面ガラスの内面側に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口、前席乗員の頭胸部に向けて空調風吹き出すフェイス吹出口、および前席乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口などが設けられている。
【0023】
次に、冷凍サイクル装置Rは、空調ケース6a内に収納された蒸発器9内を流れて、送風空気から吸熱して冷却する冷媒が流動するものである。なお、本冷凍サイクルでは、冷媒として高圧圧力が臨界圧力以上(超臨界状態)となる二酸化炭素(CO)冷媒を用いている。従って、本冷凍サイクルは超臨界冷凍サイクルを構成している。空調制御装置20は、蒸発器9へ冷媒を循環させる圧縮機1の駆動出力を制御するものであり、その制御値を可変することにより能力制御するものである。なお、これについては後で詳述する。
【0024】
冷凍サイクル装置Rは、圧縮機1の吐出側から、放熱器3、内部熱交換器21、および減圧手段である膨張弁5を介して蒸発器9に冷媒が供給され、蒸発器9を流出した冷媒は、アキュムレータ4、および内部熱交換器21を介して圧縮機1に戻って循環するよう構成されて冷凍サイクルが形成されている。
【0025】
本実施形態の圧縮機1は、車両に搭載された走行用のエンジン15から駆動力を得て冷媒を吸入圧縮するものであり、駆動力を断続するクラッチ手段を成す電磁クラッチ1aを介して駆動力を得ている。この圧縮機1は、空調制御装置20からの制御信号によってその吐出容量が可変制御される冷媒流量制御式の可変容量型圧縮機となっており、電磁式の容量制御弁(本発明で言う容量制御機構)2を備えている。
【0026】
圧縮機1の吐出側には、放熱器3が設けられている。この放熱器3は、圧縮機1から吐出されて高温高圧の超臨界状態にあるガス冷媒と、外気(車室外空気)との間で熱交換して冷媒を冷却する。放熱器3には、図示しない電動式の冷却ファンによって外気が送風される。また、放熱器3の出口側には、放熱器後の冷媒圧力PREを検出する圧力センサ(本発明で言う圧力検知手段)14が設けられており、空調制御装置20へ入力されるようになっている。
【0027】
放熱器3を通過した冷媒は、次に内部熱交換器21を通過する。この内部熱交換器21は、放熱器3の出口側に設けられた高圧側流路21aと、アキュムレータ4の出口側に設けられた低圧側流路21bとを有している。そして、内部熱交換器21は、放熱器3出口側の高温冷媒とアキュムレータ4から流出する低温冷媒(圧縮機吸入冷媒)とを熱交換し、蒸発器9に流入する冷媒のエンタルピを減少させる。
【0028】
そして、蒸発器9の冷媒入口、出口間における冷媒のエンタルピ差(冷凍能力)を増大させるとともに、圧縮機1に液冷媒が吸入されることを防止する。このように内部熱交換器21を設置すると、蒸発器9の冷媒入口、出口間の冷媒のエンタルピ差(冷凍能力)を増大でき、冷凍サイクルのCOP(成績係数)を向上させることができる。なお、内部熱交換器21を構成していない冷凍サイクルであっても良い。
【0029】
内部熱交換器21の高圧側流路21aから流出した高圧冷媒は、次に電気式の膨張弁5にて低圧に減圧され、低温低圧の気液二相状態となる。膨張弁5は、高圧の冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、冷凍サイクル中の高圧圧力が目標高圧となるように、電気的に開度が制御される圧力制御弁としての役割を果たす。
【0030】
膨張弁5で減圧された低圧冷媒は、蒸発器9において送風空気から吸熱して蒸発させられる。蒸発器9において蒸発した後のガス冷媒は、アキュムレータ4と内部熱交換器21の低圧側流路21bとを通過する。アキュムレータ4は、蒸発器9の出口冷媒の液冷媒とガス冷媒とを分離して、サイクル内の余剰冷媒を液冷媒で蓄える気液分離手段であり、分離したガス冷媒を圧縮機1の吸入側に向けて導出する。また、内部熱交換器21については上記したとおりである。
【0031】
そして、内部熱交換器21の低圧側流路21bを流出した冷媒は、再度圧縮機1に吸入されて上記した循環を繰り返す。次に、車両用空調装置の制御手段である空調制御装置20について説明する。空調制御装置20は、CPU、ROMおよびRAMなどを含むマイクロコンピュータと、その周辺回路とから構成され、ROM内に書き込まれている空調制御のための制御プログラムに基づいて各種演算や処理を行う電気制御部である。
【0032】
空調制御装置20には、前述した蒸発器温度センサ13、圧力センサ14、および水温センサ16の他に、車室外の外気温度を検出する外気温センサ17、車室内温度を検出する内気温センサ18、および車室内に射し込む日射量を検出する日射センサ19などからの各種センサ検出信号が入力される。また、図示しない空調コントロールパネルからの操作信号も入力される。空調コントロールパネルは、車室内前方のインストルメントパネルに配置され、乗員によって操作される複数のスイッチを有している。
【0033】
この複数のスイッチは、車室内の所望温度を設定する温度設定スイッチ、内気モードと外気モードとをマニュアル設定する吸込モードスイッチ、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードをマニュアル設定する吹出モードスイッチ、送風機7の風量切り替えをマニュアル設定する風量設定スイッチ、空調自動制御の指令を出すオートスイッチ、および圧縮機1の作動状態と停止状態とを切り替えるエアコンスイッチなどである。
【0034】
空調制御装置20には、圧縮機1の電磁クラッチ1a、容量制御弁2、放熱器3の冷却ファン、膨張弁5、送風機7のモータ8b、および各機器の電気駆動手段を成すサーボモータなどが接続され、これらの機器の作動が空調制御装置20からの出力信号によって制御される。
【0035】
次に、圧縮機1と容量制御弁2について具体的に述べる。本実施形態の圧縮機1は、斜板式の可変容量型圧縮機として公知のものであり、電磁式の容量制御弁2に加える制御電流値を変化させることにより、斜板室の制御圧力Pcを変化させる。これにより、斜板の傾斜角度の変化→ピストンストロークの変化→容量の変化を行うようになっている。ここで容量は、冷媒の吸入圧縮を行う作動空間の幾何学的な容積である。
【0036】
また、斜板式可変容量型の圧縮機1においては、制御圧力Pcの調整により吐出容量を最小状態(略0%)から最大状態(100%)の範囲で連続的に変化させることができるように構成されている。そして、容量制御弁2の制御電流値により、目標吐出冷媒流量を設定し、実際の吐出冷媒流量がこの目標吐出冷媒流量となるように斜板室の制御圧力Pcを変化させ、これにより吐出容量を変化させる、いわゆる冷媒流量制御式の可変容量型圧縮機となっている。
【0037】
このような冷媒流量制御式の可変容量型圧縮機は、特開2001−107854号公報や特開2001−173556号公報などにより公知である。そこで、この冷媒流量制御式の可変容量型圧縮機の概要を図2により説明する。図2は、斜板式可変容量型の圧縮機1の吐出側流路部分と、斜板室103の制御圧力Pcを制御する容量制御弁2の部分を示す概略図である。圧縮機1の吐出室100は、図示しない複数のピストン作動室(シリンダ)から吐出される冷媒を集合する部分である。
【0038】
この吐出室100の出口側流路101に絞り部102を設けて、圧縮機1の吐出冷媒がこの絞り部102を通過することにより、この絞り部102の前後間に所定の差圧ΔPrが発生するようにしてある。ここで、差圧ΔPr=PdH−PdLである。PdHは絞り部102の上流部の冷媒圧力であり、PdLは絞り部102の下流部の冷媒圧力である。差圧ΔPrは、圧縮機1の吐出冷媒流量と比例関係にあるから、差圧ΔPrを制御することにより圧縮機1の吐出冷媒流量を制御できることになる。
【0039】
一方、容量制御弁2は、差圧ΔPrに応じた力F1を発生する差圧連動機構111と、この差圧連動機構111の力F1に対抗する電磁力F2を発生する電磁機構112とを備えている。基本的には、この差圧ΔPrに応じた力F1と電磁力F2との釣り合いにより、弁体113の位置(図2の左右方向位置)を変化させるようになっている。但し、図2の図示例では、後述の構成により、絞り部102の上流部の冷媒圧力PdH(圧縮機吐出圧)にも依存して、弁体113の位置を変化させるようになっている。
【0040】
差圧連動機構111は、ケース111a内に弁体113の移動方向(図2の左右方向)に弾性的に伸縮可能なベローズ111bを収容し、ベローズ111bの内部に絞り部102の上流部の冷媒圧力PdHを導入する。一方、ケース111a内には絞り部102の下流部の冷媒圧力PdLを導入する。
【0041】
図2におけるベローズ111bの右端部には、ケース111aに固定される固定端を構成し、ベローズ111bの左端部が弾性的な伸縮作用により、図2の左右方向に変位する可動端111cを構成する。また、ベローズ111bの内部には、ベローズ111bを伸長方向(図2の左側方向)に押圧するばね111dが設けられている。
【0042】
ベローズ111bの可動端111cには、プッシュロッド111eが一体に連結されている。このプッシュロッド111eは、ケース111aの嵌合穴111fに対して摺り動き可能で、かつ、図示しないシール機構により気密に嵌合されてケース111aの外部へ突出している。
【0043】
一方、電磁機構112は、電磁コイル112aを有し、この電磁コイル112aの内周部にプランジャ112bが、その軸方向(図2の左右方向)に変位可能に配置されている。プランジャ112bの端部には、可動鉄心112cが一体に構成され、この可動鉄心112cに固定鉄心112dが対向配置されている。そして、この可動鉄心112cと固定鉄心112dとの間に、電磁コイル112aに供給される制御電流値Icに応じた電磁力(吸引力)F2を発生するようになっている。
【0044】
また、可動鉄心112cと固定鉄心112dとの間には、電磁力F2と逆方向のばね力を発生するばね112eが配置されている。プランジャ112bのうち、可動鉄心112cと反対側の端部(図2の右端部)に上記した弁体113が一体に形成されている。さらに弁体113は、弁体113よりも充分に小径の連結軸部113aを介して、プッシュロッド111eに一体に連結されている。従って、プランジャ112bと弁体113とプッシュロッド111eとは一体物を構成し、プランジャ112bの軸方向(図2の左右方向)で一体に変位する。
【0045】
弁体113は制御圧通路114に配置され、制御圧通路114の通路面積を増減する。この制御圧通路114の一端部は、連通路115を介して圧縮機1の吐出室100に連通しているので、制御圧通路114の一端部には絞り部102の上流部の冷媒圧力PdHが導入される。一方、制御圧通路114の他端部は、連通路116を介して圧縮機1の斜板室103に連通している。
【0046】
そして、斜板室103は、絞り104を有する連通路105を介して、圧縮機1の吸入室106に連通する。弁体113は、図2の右方向に変位すると制御圧通路114の通路面積を減少し、図2の左方向に変位すると制御圧通路114の通路面積を増加させる。従って電磁力F2は、弁体113を図2の右方向に変位させる閉弁方向の力となる。逆に、差圧ΔPrに応じた力F1は、弁体113を図2の左方向に変位させる開弁方向の力となる。
【0047】
制御圧通路114の通路面積が減少すると、圧縮機1の吐出室100から連通路115→制御圧通路114→連通路116を経て斜板室103に流入する吐出冷媒量が減少して、斜板室103の圧力、すなわち、制御圧力Pcが低下する。逆に制御圧通路114の通路面積が増加すると、斜板室103に流入する吐出冷媒量が増加して、斜板室103の制御圧力Pcが上昇する。
【0048】
なお、斜板式可変容量型圧縮機においては周知のように、制御圧力Pcの低下→斜板の傾斜角度の増加→ピストンストロークの増加→吐出容量の増加となる。逆に、制御圧力Pcの上昇→斜板の傾斜角度の減少→ピストンストロークの減少→吐出容量の減少となるよう、吐出容量の容量制御機構が構成されている。
【0049】
ところで、電磁力F2は、差圧ΔPrに応じた力F1に対抗する力であるから、電磁力F2を増減することにより目標差圧を決定することとなる。このため、現実の差圧ΔPrが、この電磁力F2により決定される目標差圧となるように、斜板室103の制御圧力Pcが制御され、吐出容量が変化することとなる。
【0050】
さらに、差圧ΔPrと吐出冷媒流量とは前述のように比例関係にあるから、目標差圧を決定することは目標吐出冷媒流量を決定することとなる。そして、電磁力F2は、電磁コイル112aに供給される制御電流値Icに応じて決定されるから、制御電流値Icの増加に応じて目標差圧および目標吐出冷媒流量が増加する関係となる。
【0051】
図3は、このような流量制御特性を持つ斜板式可変容量型圧縮機を用いた場合の制御電流値Icと、サイクル内を循環する冷媒流量Grとの関係を示す特性(本発明で言う制御電流対冷媒流量特性)の図である。図中、圧縮機吐出圧力PdH1〜PdH4は、PdH1<PdH2<PdH3<PdH4の関係になっており、冷媒流量Grが制御電流値Icの他に圧縮機吐出圧力PdHにも依存して変化する。
【0052】
これは、具体的には、制御圧通路114に連通路115により圧縮機吐出圧力PdHが導入されるとともに、制御圧通路114における弁体113の受圧面積A1を、差圧連動機構111のプッシュロッド111eの受圧面積A2よりも大きくして、弁体113の位置制御に圧縮機吐出圧力PdHが影響するようになっているためである。
【0053】
容量制御弁2の制御電流値Icは、蒸発器9の実際の吹出空気温度(蒸発器温度センサ13の検出温度)Teが空調制御のための目標蒸発器後温度TEOとなるように空調制御装置20によって算出される。この目標蒸発器後温度TEOは、周知の如く、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOや外気温などに基づいて算出される。なお、制御電流値Icは、具体的には電流制御回路の構成上、デューティ制御によって変化させる方式とするのが通常であるが、制御電流値Icの値をデューティ制御によらず、直接、連続的(アナログ的)に変化させる方法であっても良い。
【0054】
次に、空調制御装置20による制御方法を、図4に基づいて説明する。ここで図4は、空調制御装置20の制御プログラムの一例を示したフローチャートである。まず、車両のイグニッションスイッチがONされて空調制御装置20に直流電源が供給されると、予めメモリに記憶されている制御プログラム(図4のルーチン)の実行が開始される。まず、空調制御装置20内部のマイクロコンピュータに内蔵されたデータ処理用メモリの記憶内容などの初期化を行う(ステップS1)。
【0055】
次に、各種信号の入力処理として、各種データをデータ処理用メモリに読み込む。すなわち、空調コントロールパネル上の各種操作スイッチからのスイッチ信号、各種センサからのセンサ信号などを入力する(ステップS2)。次に、上記の入力データを、記憶している演算式に代入して、空調装置からの目標吹出温度TAOを演算し、その目標吹出温度TAOと外気温とから、目標蒸発器後温度TEOを演算する(ステップS3)。
【0056】
次に、ステップS3で求めた目標吹出温度TAOに基づいて送風機(ブロワ)7の制御量、すなわちモータ8bのモータ駆動回路に与えるデューティ比を演算する(ステップS4)。次に、ステップS3で求めた目標吹出温度TAOと上記の入力データとを、メモリに記憶されている演算式に代入して、エアミックスドア10の開度SW(%)を演算する(ステップS5)。
【0057】
次に、ステップS3で求めた目標吹出温度TAOに基づき、車室内へ取り込む空気流の吸込モードと、車室内へ吹き出す空気流の吹出モードとを決定する(ステップS6)。次に、ステップS3で求めた目標蒸発器後温度TEOと、蒸発器温度センサ13が検知する実際の蒸発器温度Teとが一致するように、フィードバック制御(PID制御)にて圧縮機1を目標吐出量とするための制御量(電流値)を決定する(ステップS7)。
【0058】
具体的には、圧縮機1に付設された容量制御弁2の電磁コイル112aに供給する制御電流の目標値となる電流値を、メモリに記憶されている演算式に基づいて演算する。次に、ステップS4で決定された送風機7の制御量を、モータ駆動回路に出力する(ステップS8)。次に、ステップS5で決定されたエアミックス開度SWとなるように、サーボモータに制御信号を出力する(ステップS9)。
【0059】
次に、ステップS6で決定された吸込モードと吹出モードとなるように、サーボモータに制御信号を出力する(ステップS10)。次に、ステップS7で決定された制御電流値Icを、圧縮機1に付設された容量制御弁2に出力する(ステップS11)。その後にステップS2の制御処理に戻る。なお、マニュアル設定時には、その設定値に従って図4の制御プログラムが実行される。
【0060】
次に、本実施形態の特徴部である圧縮機1の吐出圧力Pdの算出処理について、図5を用いて詳細に説明する。図5は、本実施形態における吐出圧力Pd算出までの手順を示すフローチャートである。なお、この圧縮機1の吐出圧力Pdは、例えば、図示しないエンジン制御装置と空調制御装置20との協調制御であるトルク推定に必要となる値である。
【0061】
つまり、圧縮機1の吐出圧力Pdから圧縮機1の駆動トルクを推定し、必要とするエンジン出力トルクに応じてエンジン負荷である圧縮機1の駆動トルクを制御するのに用いている。よって、上述した空調制御装置20における基本の制御ステップの中で、ステップS7で圧縮機1の制御量が演算された後、その制御量を用いて演算され、ステップS11で圧縮機1へ制御量を出力した後、エンジン制御装置へ圧縮機1の駆動トルクを出力している。
【0062】
まず、ステップS21(本発明で言う吸入圧力算出手段)では、図6に示すマップ(本発明で言う温度対吸入圧力特性)を用いて、蒸発器温度センサ13が検出した蒸発器温度Teから圧縮機1の吸入圧力Psを求める。これにより、新たに圧力センサを設けることなく、圧縮機1の吸入圧力Psを推定することができる。次のステップS22(本発明で言う冷媒流量算出手段の一部)では、上記した全体フローチャートのステップS7で演算された圧縮機1の制御電流値Icを取り込む。
【0063】
なお、この制御電流値Icは、空調制御装置20からの指示値であっても良いし、実際に空調制御装置20から出力されたときに、空調制御装置20内の検出回路で検出された検出値であっても良い。次のステップS23(本発明で言う可変開始電流算出手段、冷媒流量算出手段の一部)では、図7に示すマップ(本発明で言う制御電流対冷媒流量特性)を用いて、可変開始電流値Imaxを求める。
【0064】
なお、このときに用いる特性線は、図3でも示したように、圧力条件で変わるため、本実施形態では放熱器3の出口側に設けた圧力センサ14が検出する放熱器後冷媒圧力PREと、ステップS21で求めた圧縮機1の吸入圧力Psとの関係から、使う特性線を選定している。
【0065】
そして、制御電流対冷媒流量特性は、図7に示すように、その時の圧縮機回転数Ncにより、制御電流値Icを増減させて冷媒流量Grを可変できる容量可変域と、制御電流値Icを増加させても最大冷媒流量Gmax以上には上がらない最大容量域(不感帯)とが発生する。このため、この容量可変域と最大容量域との変曲点を、可変開始電流値Imaxとして求めるものである。
【0066】
次のステップS24(本発明で言う冷媒流量算出手段の一部)では、ステップS22で取り込んだ制御電流値IcがステップS23で求めた可変開始電流値Imax以上であるか否か、つまりは圧縮機1の状態が容量可変域にあるのか最大容量域にあるのかを判定する。
【0067】
この判定結果がYESであり、制御電流値Icが可変開始電流値Imax以上であって圧縮機1が最大容量域にある場合にはステップS25へ進む。ステップS25(本発明で言う最大冷媒流量算出手段、冷媒流量算出手段の一部)では、図7に示すマップを用いて、その時の圧縮機回転数Ncで最大容量とした場合の最大冷媒流量Gmaxを求める。
【0068】
また、ステップS24での判定結果がNOであり、制御電流値Icが可変開始電流値Imax未満であって圧縮機1が容量可変域にある場合にはステップS26へ進む。ステップS26(本発明で言う冷媒流量算出手段の一部)では、図7に示すマップを用いて、その時の制御電流値Icから冷媒流量Grを求める。
【0069】
次のステップS27(本発明で言う圧力損失算出手段)では、図8に示すマップ(本発明で言う冷媒流量対圧力損失特性)を用いて、ステップS25で求めた最大冷媒流量Gmax、もしくはステップS26で求めた冷媒流量Grより、圧縮機1から放熱器3の出口側までの圧力損失ΔPを求める。
【0070】
そして、次のステップS28(本発明で言う吐出圧力算出手段)では、放熱器3の出口側に設けた圧力センサ14で検出した放熱器後冷媒圧力PREに、ステップS27で求めた圧力損失ΔPを加えることにより、圧縮機1が吐出する吐出圧力Pdを求めて出力するものである。
【0071】
このように、センサを増やしてコストアップすることなく、圧縮機1から放熱器3の出口側までの圧力損失ΔPを推定することができ、その推定した圧力損失ΔPを用いて圧縮機1の吐出圧力Pdを推定することができる。また、容量可変状態、もしくは最大容量(100%容量)状態での圧力損失ΔPもしくは吐出圧力Pdを正確に推定することができる。なお、図9は、圧力損失ΔPの実測値と推定値との差を示すグラフである。実測値、推定値のいずれも誤差を含むが、この実験結果が示すように、実測値=推定値となる理想線(太実線)に対して±0.2[MPa]以内の精度を得ることができた。
【0072】
次に、本実施形態の特徴と、その効果について述べる。まず、空調制御装置20は、容量制御弁2へ出力している制御電流値Icを容量制御弁2の制御電流対冷媒流量特性に当て嵌めて冷媒流量を算出する冷媒流量算出手段S22〜S26と、算出した冷媒流量を冷媒流量対圧力損失特性に当て嵌めて圧縮機1から放熱器3の出口側までの圧力損失ΔPを算出する圧力損失算出手段S27とを備えている。これによれば、センサを増やしてコストアップすることなく、圧縮機1から放熱器3の出口側までの圧力損失ΔPを推定することができる。
【0073】
また、空調制御装置20は、圧力センサ14が検出した放熱器後冷媒圧力PREに、圧力損失算出手段S27が算出した圧力損失ΔPを加えて、圧縮機1が吐出する吐出圧力Pdを算出する吐出圧力算出手段S28を備えている。これによれば、センサを増やしてコストアップすることなく、圧縮機1から放熱器3の出口側までの圧力損失ΔPを推定したうえ、その推定した圧力損失Δを用いて圧縮機1の吐出圧力Pdを推定することができる。
【0074】
また、空調制御装置20は、圧縮機1の最大容量状態と可変容量状態とが切り替わる変曲点の可変開始電流値Imaxを算出する可変開始電流算出手段S23と、制御電流値Icが可変開始電流値Imax以上である場合、その時の最大冷媒流量Gmaxを算出して圧力損失算出手段S27に与える最大冷媒流量算出手段S25を備えている。これによれば、最大容量(100%容量)状態での圧力損失ΔPもしくは吐出圧力Pdを正確に推定することができる。
【0075】
また、冷凍サイクル中に、蒸発器9の温度Teを検出する蒸発器温度センサ13を備えるとともに、空調制御装置20は、制御電流対冷媒流量特性の選定に用いる圧力条件PRE/Psを求めるため、蒸発器温度センサ13が検出した蒸発器温度Teを温度対吸入圧力特性に当て嵌めて圧縮機1の吸入圧力Psを算出する吸入圧力算出手段S21を備えている。これによれば、新たに圧力センサを設けることなく、圧縮機1の吸入圧力Psを推定することができる。
【0076】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の実施形態では、二酸化炭素(CO)冷媒を用いた超臨界冷凍サイクルとしているが、他の冷媒を用いても良いし、亜臨界の冷凍サイクルであっても良い。また、上述の実施形態では、圧縮機1の吸入圧力Psを蒸発器温度Teから求めているが、もちろん、圧縮機の吸入側に圧力センサを設けて、その検出値を用いるものであっても良い。
【0077】
また、上述の実施形態では、前席用空調ユニットの冷凍サイクルに適用しているが、トランクルーム内やサイドトリム内などに設けて、車室内後席側の領域を空調する後席用空調ユニットの冷凍サイクルに適用しても良いし、空調に限らず、冷凍や冷蔵に用いる冷凍サイクルに適用しても良い。また、上述の実施形態で圧縮機1は、車両走行用のエンジン15によって駆動されるものであるが、電動モータで駆動される電動圧縮機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態における車両用冷凍サイクル装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1中に示す可変容量型圧縮機1の容量制御弁2の具体例を示す模式的断面図である。
【図3】図2の容量制御弁2における制御電流Icと冷媒流量Grとの特性を示すグラフである。
【図4】図1中の空調制御装置20における基本の制御ステップを示すフローチャートである。
【図5】本発明における吐出圧力Pd算出までの手順を示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートのステップS21で用いるマップを示すグラフである。
【図7】図5のフローチャートのステップS23〜S26での作動を説明するグラフである。
【図8】図5のフローチャートのステップS27で用いるマップを示すグラフである。
【図9】圧力損失ΔPの実測値と推定値との差を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1…圧縮機
2…容量制御弁(容量制御機構)
3…放熱器
5…膨張弁(減圧手段)
9…蒸発器
13…蒸発器温度センサ(蒸発器温度検出手段)
14…圧力センサ(圧力検出手段)
15…車両走行用エンジン
20…空調制御装置(制御手段)
Gmax…最大冷媒流量
Gr…冷媒流量
Ic…制御電流値
Imax…可変開始電流値
Pd…吐出圧力
PRE…放熱器後冷媒圧力
PRE/Ps…圧力条件
Ps…吸入圧力
S21…吸入圧力算出手段
S22…冷媒流量算出手段
S23…冷媒流量算出手段、可変開始電流算出手段
S24…冷媒流量算出手段
S25…冷媒流量算出手段、最大冷媒流量算出手段
S26…冷媒流量算出手段
S27…圧力損失算出手段
S28…吐出圧力算出手段
Te…蒸発器温度
ΔP…圧力損失

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する冷媒流量制御式可変容量型の圧縮機(1)と、
前記圧縮機(1)の吐出冷媒を冷却する放熱器(3)と、
前記放熱器(3)から流出する冷媒を減圧する減圧手段(5)と、
前記減圧手段(5)によって減圧された低圧冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒が前記圧縮機(1)に吸入される蒸発器(9)と、
前記圧縮機(1)に設けられ、外部からの制御信号によって前記圧縮機(1)の吐出容量を可変制御する容量制御機構(2)と、
前記放熱器(3)出口側の放熱器後冷媒圧力(PRE)を検出する圧力検出手段(14)と、
少なくとも前記圧力検出手段(14)が検出した前記放熱器後冷媒圧力(PRE)が入力されて前記容量制御機構(2)を制御する制御手段(20)とを備えた車両用冷凍サイクル装置において、
前記制御手段(20)は、前記容量制御機構(2)へ出力している制御電流値(Ic)を前記容量制御機構(2)の制御電流対冷媒流量特性に当て嵌めて冷媒流量(Gr、Gmax)を算出する冷媒流量算出手段(S22〜S26)と、
算出した前記冷媒流量(Gr、Gmax)を冷媒流量対圧力損失特性に当て嵌めて前記圧縮機(1)から前記放熱器(3)の出口側までの圧力損失(ΔP)を算出する圧力損失算出手段(S27)とを備えることを特徴とする車両用冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御手段(20)は、前記圧力検出手段(14)が検出した前記放熱器後冷媒圧力(PRE)に、前記圧力損失算出手段(S27)が算出した前記圧力損失(ΔP)を加えて、前記圧縮機(1)が吐出する吐出圧力(Pd)を算出する吐出圧力算出手段(S28)を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)の最大容量状態と可変容量状態とが切り替わる変曲点の可変開始電流値(Imax)を算出する可変開始電流算出手段(S23)と、
前記制御電流値(Ic)が前記可変開始電流値(Imax)以上である場合、その時の最大冷媒流量(Gmax)を算出して前記圧力損失算出手段(S27)に与える最大冷媒流量算出手段(S25)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項4】
冷凍サイクル中に、前記蒸発器(9)の温度(Te)を検出する蒸発器温度検出手段(13)を備えるとともに、
前記制御手段(20)は、前記制御電流対冷媒流量特性の選定に用いる圧力条件(PRE/Ps)を求めるため、前記蒸発器温度検出手段(13)が検出した前記蒸発器温度(Te)を温度対吸入圧力特性に当て嵌めて前記圧縮機(1)の吸入圧力(Ps)を算出する吸入圧力算出手段(S21)を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−126138(P2010−126138A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306698(P2008−306698)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】