説明

車両用前照灯ユニット

【課題】 複数のビームパターンを形成することのできる機能を備えた多機能化にも拘わらず、灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる。
【解決手段】 投影レンズ3は、それぞれレンズ焦点FR1、FR2の位置を異にする、上下方向に2分される上部および下部レンズ11および12を有して構成されており、光学系は、上部および下部レンズ11および12にそれぞれ対応させて灯室20内を上下に2分して形成される第1ビームパターンP1を奏する上部光学系13および第2ビームパターンP2を奏する下部光学系14を有して構成されている。上部および下部光学系13および14の各光源8、9の点灯の切換により、出射光のビームパターンP1、P2を切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプハウジング内に、1個あるいは複数個を組み付けることによりヘッドランプを構成することができる、発光素子光源を用いた車両用前照灯ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図6(a)は、この種の車両用前照灯ユニット100を示す(例えば、特許文献1参照)。この車両用前照灯ユニット100は、素通しの透光カバーとランプボディとで形成される灯室(図示せず)内に複数ユニットが組み込まれて車両用前照灯を構成することのできる単位ユニットである。
【0003】
この前照灯ユニット100は、投影レンズ3、シェード4、およびLED光源2が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されると共に、LED光源2の光を前方へ反射させるリフレクタ5がLED光源2の発光部2aに対向させて配置されて大略構成されている。
【0004】
このときLED光源2は、基板6に支持された状態で光軸Z上において鉛直方向上方に対して光軸Z回りに右方向へ15°回転した方向へ向けて配置されている。
【0005】
また、リフレクタ5は、LED光源2の上方側に設けられた略ドーム状の部材であって、LED光源2からの光を前方へ向けて光軸Z寄りに集光反射させる反射面5aを有して形成されている。そしてLED光源2の発光部2aは、反射面5aの第1焦点F1に配置されているので、LED光源2の光は、前方へ向けて光軸Z寄りに集光反射する際に、反射面5aの第2焦点F2に略集束する。
【0006】
また、投影レンズ3は、平凸レンズで構成されており、その後方側のレンズ焦点F3をリフレクタ5の反射面5aの第2焦点F2に対して僅かに後方に位置させるようにして光軸Z上に配置されている。
【0007】
さらに、シェード4は、リフレクタ5の下方に設けられた板状部材であって、灯具正面視において略ヘの字状に形成されており、その上面には反射処理が施された光制御面4aが形成されている。そして、このシェード4は、その光制御面4aによりリフレクタ5の反射面5aの反射光の一部を上向きに反射させることができるので、LED光源2の光の光束利用率を高めることができるようになっている。
【0008】
このように構成された前照灯ユニット100は、図6(b)に示すように、ホットゾーン形成用パターンPaを奏することができる。
【0009】
そして前照灯は、前照灯ユニット100と、LED光源の配置個数が多い点が相違するだけで他の構成は前照灯ユニット100と同様に構成されている他の前照灯ユニット(図示せず)とを同一のランプボディ内に組み込んで構成される。
【0010】
このように構成された前照灯は、総じて図6(b)の2点鎖線に示すように、水平および斜めカットオフラインCL1およびCL2を有するすれ違いビームとして好適なカットオフライン形成用パターンPbを奏することができる。
【0011】
また、図7(a)は、同一の前照灯に組み込まれるさらに他の前照灯ユニット101を示す(例えば、特許文献1参照)。この前照灯ユニット101は、LED光源2の光を直接投影レンズ3に到達するように構成した直射型である。
【0012】
すなわち前照灯ユニット101は、投影レンズ3、シェード4、およびLED光源2が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されることによって大略構成されている。
【0013】
このときLED光源2は、その発光部2aを光軸Z上において灯具前方へ向けるように配置した状態で、基板6を介して支持部材7に固定されている。シェード4は、LED光源2の前方近傍において光軸Zと直交する鉛直面に沿って延びる板状部材であって、その上端縁4bが光軸Zを水平方向に通るようにして支持部材7に固定されている。
【0014】
また、投影レンズ3は、その後方側のレンズ焦点F3をシェード4の上端縁4bと光軸Zとの交点に位置させるようにして光軸Z上に配置されている。
【0015】
このように構成された前照灯ユニット101は、スポット状の配光パターンを奏することができる。
【0016】
そして前照灯ユニット101と、LED光源の配置個数が多い点が相違するだけで他の構成は前照灯ユニット101と同様に構成されている他の前照灯ユニット(図示せず)とを同一のランプボディ内に組み込んで構成される前照灯は、総じて図7(b)に示すように、中心部から周縁部へ向けて光度が減少する光度分布を有する、走行ビームとして好適なハイビーム用配光パターンPHを奏することができる。
【特許文献1】特開2004−95479公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように従来の車両用前照灯ユニットは、前照灯ユニット100で代表される、すれ違いビームとして好適なカットオフライン形成用パターンPbを奏することができるものか、あるいは前照灯ユニット101で代表される、走行ビームとして好適なハイビーム用配光パターンPHを奏することができるものとして構成されている。
【0018】
このため、従来の車両用前照灯ユニットを用いて、すれ違いビームおよび走行ビームの両機能を備えた多機能型前照灯を開発しようとすると、前照灯ユニット100で代表される前照灯ユニットと、前照灯ユニット101で代表される前照灯ユニットとの両方のユニットを同一のランプボディに組み込む必要があるので、灯具全体の大型化を招くばかりでなく、取付も煩雑になってひいてはコスト高をも招く、という課題を有している。
【0019】
そこで、本発明は、例えばすれ違いビームおよび走行ビームのように複数のビームパターンをそれぞれ形成することのできる機能を備えた多機能化にも拘わらず、灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる車両用前照灯ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記した目的を達成するため、請求項1記載の発明は、投影レンズ、シェード、および発光素子光源が前方からこの順に光軸に沿って配置されると共に、前記光源の光を前方へ反射させるリフレクタが前記光源の発光部に対向させて配置されることによって構成される光学系を備えている車両用前照灯ユニットにおいて、
前記投影レンズは、それぞれレンズ焦点位置を異にする、上下方向に2分される上部および下部レンズを有して構成されており、
前記光学系は、前記上部および下部レンズにそれぞれ対応させて灯室内を上下に2分して形成される第1ビームパターンを奏する上部光学系および第2ビームパターンを奏する下部光学系を有して構成されていることを特徴とする。
【0021】
このため、請求項1記載の発明では、上部光学系の発光素子光源の点灯により、上部レンズを介して前方へ第1ビームパターンの出射光を出射させることができると共に、下部光学系の発光素子光源の点灯により、下部レンズを介して前方へ第2ビームパターンの出射光を出射させることができる。
【0022】
このように上部光学系および下部光学系の各発光素子光源の点灯の切換により、出射光のビームパターンを切り替えることができる。
【0023】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記リフレクタは、回転楕円面あるいは回転楕円面を基本とする自由曲面の一部分からなる上部および下部反射面をそれぞれ有する、前記上部光学系を構成する上部リフレクタと、前記下部光学系を構成する下部リフレクタとを有して構成されており、
前記発光素子光源は、前記上部反射面の第1焦点位置付近に設置される上部光源と、前記下部反射面の第1焦点位置付近に設置される下部光源とを有して構成されており、
前記上部および下部レンズは、その各レンズ焦点がそれぞれ前記上部および下部反射面の各第2焦点位置付近になるように設置されており、
前記シェードは、前記上部および下部反射面の各第2焦点位置付近にそれぞれ形成される上部および下部シェードを有して構成されていることを特徴とする。
【0024】
このため、請求項2記載の発明では、一方の上部光学系は、上部光源の光が上部反射面で反射されて上部反射面の第2焦点位置に集束し、該位置に設置されている上部シェードを経由して上部レンズに達し、上部レンズを介して前方へ下向きの第1ビームパターンの出射光(ロービーム)を出射させることができる。
【0025】
他方、下部光学系は、下部光源の光が下部反射面で反射されて下部反射面の第2焦点位置に集束し、該位置に設置されている下部シェードを経由して下部レンズに達し、下部レンズを介して前方へ上向きの第2ビームパターンの出射光(ハイビーム)を出射させることができる。
【0026】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記上部および下部シェードは、前記灯室内の中央部に配設される板状部材の上端および下端にそれぞれ反射機能を有して形成されていることを特徴とする。
【0027】
このため、請求項3記載の発明では、上部光学系の上部反射面の第2焦点位置に集束した光は、上部シェードで遮られる光も上部シェードの反射機能により反射されて上部レンズに到達することができると共に、下部光学系の下部反射面の第2焦点位置に集束した光は、下部シェードで遮られる光も下部シェードの反射機能により反射されて下部レンズに到達することができ、それぞれ灯具前方へ配光される。
【0028】
また、上部および下部シェードを備えた板状部材は、灯室内の中央部に位置して灯室奥部への視認を遮ることができる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の発明によれば、上部および下部光学系の各発光素子光源の点灯を切替えることにより、一つのユニットで二つの配光機能を奏することができるので、機能毎にユニットを組み込む必要が無くなり、これにより灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる車両用前照灯ユニットを提供することができる。
【0030】
また、請求項2記載の発明によれば、上部レンズを介して前方へ下向きの第1ビームパターンの出射光(ロービーム)を出射させることができると共に、下部レンズを介して前方へ上向きの第2ビームパターンの出射光(ハイビーム)を出射させることができ、これにより請求項1記載の発明の効果に加えて、一つのユニットでロービームとハイビームの二つの配光機能を奏することができる。
【0031】
また、請求項3記載の発明によれば、上部または下部シェードで遮られる光は、各シェードの反射機能によりそれぞれ反射されて、上部または下部レンズに到達して灯具前方に有効に配光することができるので、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、各光学系の光の利用効率を向上させることができる。
【0032】
その上、上部および下部シェードを備えた板状部材は、灯室内の中央部に位置して灯室奥部への視認を遮ることができるので、見栄えを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図6および図7に開示したものと同一機能を奏する構成要素は、同一符号を付して説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態としての車両用前照灯ユニット1を示す。この前照灯ユニット1は、投影レンズ3、シェード4、およびLED光源2が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されると共に、LED光源2の光を前方へ反射させるリフレクタ5が発光素子光源2の発光部に対向させて配置されることによって構成される光学系7を備えて大略構成されている。発光素子光源2は、本実施形態では、LED光源が用いられている。
【0035】
このとき投影レンズ3は、それぞれレンズ焦点位置を異にする、上下方向に2分される上部および下部レンズ11および12を有して構成されている。
【0036】
また、光学系7は、上部および下部レンズ11および12にそれぞれ対応させて灯室20内を上下に2分して形成される第1ビームパターンを奏する上部光学系13および第2ビームパターンを奏する下部光学系14を有して構成されている。
【0037】
上部および下部レンズ11および12は、それぞれ円形外周の平凸レンズをレンズ中心部を残して一部切り欠いた形状を呈しており、例えば透明なアクリル樹脂材を用いて、それぞれ別部品として別体に形成されるか、あるいは単一部品として一体に形成される。別体に形成する場合は、それぞれ接合面を有して形成され、形成後上部レンズ11と下部レンズ12とを接合面同士を突き合わせることによって投影レンズ3を構成することができる。
【0038】
また、シェード4は、上部シェード15と下部シェード16とで構成されており、LED光源2は、上部光源8と下部光源9とで構成されており、かつリフレクタ5は、上部光源8の発光部8aに対向する上部反射面17aを有する上部リフレクタ17と、下部光源9の発光部9aに対向する下部反射面18aを有する下部リフレクタ18とで構成されている。
【0039】
そして、上部光学系13は、上部レンズ11、上部シェード15、および上部光源8が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されると共に、上部光源8の光を前方へ反射させる上部リフレクタ17が下部反射面17aを上部光源8の発光部8aに対向させて配置されることによって構成されている。
【0040】
また、下部光学系14は、下部レンズ12、下部シェード16、および下部光源9が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されると共に、下部光源9の光を前方へ反射させる下部リフレクタ18が上部反射面18aを下部光源9の発光部9aに対向させて配置されることによって構成されている。
【0041】
このように構成された前照灯ユニット1は、上部光学系13の上部光源8の点灯により、上部レンズ11を介して前方へ第1ビームパターンの出射光L1を出射させることができると共に、下部光学系14の下部光源9の点灯により、下部レンズ12を介して前方へ第2ビームパターンの出射光L2を出射させることができる。
【0042】
このように前照灯ユニット1は、上部光学系13および下部光学系14の上部光源8および下部光源9の点灯の切換により、出射光のビームパターンを切り替えることができ、一つのユニットで二つの配光機能を奏することができるので、機能毎にユニットを組み込む必要が無くなり、これにより灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる。
【0043】
すなわち、図2に示すように、前照灯ユニット1は、ランプハウジング30内に1個または複数個配設することにより、二つの配光機能を奏する前照灯Aを提供することができる。前照灯Aは、前照灯ユニット1を5個組み込むことにより構成されている。この場合、前照灯Aは、機能毎に異なるユニットを組み込む必要が無いので、一機能に必要なユニット個数で構成することができ、ひいては灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる。図2中、符号31は、ランプハウジング30の前部開口を覆う表ガラスである。
【0044】
また好ましくは、前照灯ユニット1は、本実施形態のように、リフレクタ5は、回転楕円面あるいは回転楕円面を基本とする自由曲面の一部分からなる上部および下部反射面17aおよび18aをそれぞれ有する上部および下部リフレクタ17および18を有して構成されている。また、LED光源2は、上部反射面17aの第1焦点F1a位置付近に設置される上部光源8と、下部反射面18aの第1焦点F1b位置付近に設置される下部光源9とを有して構成されている。また、上部および下部レンズ11および12は、その各レンズ焦点FR1およびFR2がそれぞれ上部および下部反射面17aおよび18aの各第2焦点F2aおよびF2b位置付近になるように設置されている。さらに、シェード4は、上部および下部反射面17aおよび18aの各第2焦点F2aおよびF2b位置付近にそれぞれ形成される上部および下部シェード15および16を有して構成されている。
【0045】
具体的には、上部および下部リフレクタ17および18は、それぞれドーム形状に形成されると共に、その各前端にそれぞれ延設される上部および下部ホルダ21および22と、上部リフレクタ17と上部ホルダ21との境界部位および下部リフレクタ18と下部ホルダ22との境界部位の各内部にそれぞれ下方向および上方向に垂設される上部および下部遮蔽板23および24とを備えて、それぞれ樹脂材で一体形成されると共に、内面に反射機能を有する塗装あるいは蒸着を施して全体構成されている。
【0046】
上部および下部ホルダ21および22は、光軸Zに直交する断面が半円形断面のアーチ状に形成されており、その各前端縁にはその内側に沿って溝部21aおよび22aが形成されている。また、上部および下部遮蔽板23および24には、その各中央部に貫通孔23aおよび24aが穿設されており、この貫通孔23aの下端縁および貫通孔24aの上端縁がそれぞれ上部シェード15および下部シェード16を構成している。このとき上部シェード15は、貫通孔23aの下端縁を、例えばすれ違いビーム配光のカットライン(図3のカットラインCL参照)に相似した端面形状に形成することによって構成されるものであり、下部シェード16は、貫通孔24aの上端縁を、例えば平坦面の端面形状に形成することによって構成されるものである。
【0047】
そして、上部および下部リフレクタ17および18は、その上部反射面17aと下部反射面18aを上下方向で相互に対向させると共に、上部遮蔽板23と下部遮蔽板24、上部ホルダ21と下部ホルダ22を上下方向で相互に突き合わせるようにして結合することによりユニットケーシングを構成している。このときのユニットケーシングの突き合わせ部位Bは、図1(a)に示すように、光軸Zを含む水平面に相当している。
【0048】
この結合により、投影レンズ3は、上部および下部レンズ11および12の薄肉の各フランジ部11aおよび12aを溝部21aおよび22aに嵌入させて支持されている。
【0049】
このため前照灯ユニット1は、部品点数の増加を抑制することができるばかりでなく、投影レンズ3、シェード4、およびリフレクタ5の相互の光学的位置関係を精度良く設定することができる。
【0050】
また、上部および下部光源8および9は、図1(b)に示すように、上部反射面17aと下部反射面18aの対向間に配置される放熱部材25の水平板25aの上面および下面にそれぞれ固着されることによって取り付けられている。
【0051】
放熱部材25は、例えばヒートシンクや、ヒートパイプ等で構成されるものであって、上部および下部光源8および9で発生した熱を冷却する機能を有している。本実施形態では、放熱部材25は、T字状の断面形状を呈する水平板25aと垂直板25bからなる放熱基板と、垂直板25bに設けられた放熱フィン25cとを有して構成されており、上部および下部光源8および9は、それぞれ配線基板6に支持された状態で、水平板25aの上面および下面にそれぞれ固着されている。そして、放熱部材25は、水平板25aを、その厚みの中心部位を光軸Zに沿わせて上部反射面17aと下部反射面18aの対向間に水平に配置すると共に、垂直板25bをユニットケーシングの後部側の外部に垂直に配置することによって取り付けられている。
【0052】
この構成では、一方の上部光学系13は、上部光源8の光が上部反射面17aで反射されて上部反射面17aの第2焦点F2a位置に集束し、該位置に設置されている上部シェード15を経由して上部レンズ11に達し、上部レンズ11を介して前方へ下向きの第1ビームパターンの出射光(ロービーム)L1を出射させることができる。
【0053】
他方、下部光学系14は、下部光源9の光が下部反射面18aで反射されて下部反射面18aの第2焦点F2b位置に集束し、該位置に設置されている下部シェード16を経由して下部レンズ12に達し、下部レンズ12を介して前方へ上向きの第2ビームパターンの出射光(ハイビーム)L2を出射させることができる。
【0054】
図3は、出射光(ロービーム)L1の第1ビームパターンP1を示しており、該第1ビームパターンP1は、上部シェード15の端面形状に起因するカットラインCLを有するすれ違いビーム配光を奏することができる。
【0055】
図4は、出射光(ハイビーム)L2の第2ビームパターンP2を示しており、該第2ビームパターンP2は、スポット状の走行ビーム配光を奏することができる。
【0056】
このように前照灯ユニット1は、一つのユニットでロービームとハイビームの二つの配光機能を奏することができる。しかも、前照灯ユニット1は、投影レンズ3、シェード4、LED光源2、およびリフレクタ5の相互の光学的位置関係を精度良く設定することができるので、バラツキの少ない高品質のロービームとハイビームを形成することができる。
【0057】
また、前照灯ユニット1では、上部光源8および下部光源9が放熱部材25を共有することになるので、各光源8,9毎に放熱部材25を設けるのに比べて、放熱部材25の取付スペースを節約でき、これによりユニット自体の大きさを抑制することができ、ひいては灯具A(図2参照)の全体の大型化をも抑制することができる。
【0058】
さらに好ましくは、前照灯ユニット1は、本実施形態のように、上部および下部シェード15および16は、灯室20内の中央部に配設される板状部材26の上端および下端にそれぞれ反射機能を有して形成される。
【0059】
本実施形態では、灯室20内の中央部に配設される板状部材26は、上部および下部遮蔽板23および24の各貫通孔23aおよび24aの部分を除いた突き合わせの中央部分23b、24bで構成されており、上部および下部シェード15および16は、この板状部材26の上端および下端にそれぞれ反射機能を有して形成されている。
【0060】
この構成では、上部光学系13の上部反射面17aの第2焦点F2a位置に集束した光は、上部シェード15で遮られる光も上部シェード15の反射機能により反射されて上部レンズ11に到達することができると共に、下部光学系14の下部反射面18aの第2焦点F2b位置に集束した光は、下部シェード16で遮られる光も下部シェード16の反射機能により反射されて下部レンズ12に到達することができ、それぞれ灯具前方へ配光される。このため前照灯ユニット1は、各光学系13、14の光の利用効率を向上させることができる。
【0061】
また、板状部材26は、灯室20内の中央部に位置して灯室20の奥部への視認を遮ることができる。このため前照灯ユニット1は、見栄えを向上させることができる。
【0062】
図5は、本発明の第2実施形態としての車両用前照灯ユニット10を示す。この前照灯ユニット10は、灯室20内の中央部に配設される板状部材26の構成が異なるだけで、他の構成は前述した前照灯ユニット1と同様に構成されている。
【0063】
すなわち、本実施形態では、板状部材26は、放熱部材25の水平板25aの先端に延設される断面T字形状部材の先端部分として、上端および下端にそれぞれ反射機能を有する上部および下部シェード15および16を備えて構成されている。
【0064】
この前照灯ユニット10は、前述した前照灯ユニット1と同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0065】
また、発光素子光源は、前述した実施形態では、LED光源2を採用しているが、面発光素子光源をも採用可能であることは言うまでもない。ここで面発光素子光源とは、有機EL素子、有機エレクトロルミネセンス素子、有機電界発光素子、有機LED素子等と称される有機材料のエレクトロルミネセンス現象を利用した有機エレクトロルミネセンス素子を用いた光源で、少なくとも面状の有機材料からなる発光層を形成した自発光素子を有するものをいう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態としての車両用前照灯ユニットで、(a)はその正面図、(b)はそのIb−Ib線に沿う概略断面図である。
【図2】図1の車両用前照灯ユニットを組み込んで構成される前照灯の正面図である。
【図3】図1の車両用前照灯ユニットが形成する第1ビームパターンを示すグラフである。
【図4】図1の車両用前照灯ユニットが形成する第2ビームパターンを示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態としての車両用前照灯ユニットで、(a)はその正面図、(b)はそのVb−Vb線に沿う概略断面図である。
【図6】従来の車両用前照灯ユニットで、(a)はその概略縦断面図、(b)は得られるビームパターンを示すグラフである。
【図7】従来の他の車両用前照灯ユニットで、(a)はその概略縦断面図、(b)は得られるビームパターンを示すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1、10 前照灯ユニット(車両用前照灯ユニット)
2 LED光源(発光素子光源)
3 投影レンズ
4 シェード
5 リフレクタ
8 上部光源
8a 発光部(上部光源の)
9 下部光源
9a 発光部(下部光源の)
11 上部レンズ
12 下部レンズ
13 上部光学系
14 下部光学系
15 上部シェード
16 下部シェード
17 上部リフレクタ
17a 上部反射面
18 下部リフレクタ
18a 下部反射面
20 灯室
26 板状部材
F1a 第1焦点(上部反射面の)
F1b 第1焦点(下部反射面の)
F2a 第2焦点(上部反射面の)
F2b 第2焦点(下部反射面の)
FR1 レンズ焦点(上部レンズの)
FR2 レンズ焦点(下部レンズの)
P1 第1ビームパターン
P2 第2ビームパターン
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズ、シェード、および発光素子光源が前方からこの順に光軸に沿って配置されると共に、前記光源の光を前方へ反射させるリフレクタが前記光源の発光部に対向させて配置されることによって構成される光学系を備えている車両用前照灯ユニットにおいて、
前記投影レンズは、それぞれレンズ焦点位置を異にする、上下方向に2分される上部および下部レンズを有して構成されており、
前記光学系は、前記上部および下部レンズにそれぞれ対応させて灯室内を上下に2分して形成される第1ビームパターンを奏する上部光学系および第2ビームパターンを奏する下部光学系を有して構成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記リフレクタは、回転楕円面あるいは回転楕円面を基本とする自由曲面の一部分からなる上部および下部反射面をそれぞれ有する、前記上部光学系を構成する上部リフレクタと、前記下部光学系を構成する下部リフレクタとを有して構成されており、
前記発光素子光源は、前記上部反射面の第1焦点位置付近に設置される上部光源と、前記下部反射面の第1焦点位置付近に設置される下部光源とを有して構成されており、
前記上部および下部レンズは、その各レンズ焦点がそれぞれ前記上部および下部反射面の各第2焦点位置付近になるように設置されており、
前記シェードは、前記上部および下部反射面の各第2焦点位置付近にそれぞれ形成される上部および下部シェードを有して構成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記上部および下部シェードは、前記灯室内の中央部に配設される板状部材の上端および下端にそれぞれ反射機能を有して形成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−156301(P2006−156301A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348826(P2004−348826)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】