説明

車両用灯具

【課題】コスト上昇や消費電力増加の回避しつつ、複数の発光素子の1つに断線等の異常が発生しても灯具に要求される配光規格を満足する。
【解決手段】複数の発光素子群12、13のそれぞれは、直列接続された複数の発光素子15a〜15f、16a〜16fを含む。駆動回路11は、複数の発光素子群12、13のそれぞれに対して電流を供給する。複数の発光素子群12、13の一つに断線が検知された場合に、駆動回路11は断線の検知されていない発光素子群への供給電流の量を増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に発光素子を備える車両灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
テールランプとストップランプの双方の機能を兼ね備えるリアコンビネーションランプとして構成された車両用灯具の光源として、複数個の発光素子(例えば発光ダイオード)を用いたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記複数の発光素子は、それぞれ電源に並列接続されている。よって一部の発光素子が断線等の異常により発光しない場合でも、他の発光素子が発光し続けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−83235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような異常が発生した状況下においても灯具に要求されている配光規格(照明光の明るさを規定する法規)を満足する必要があるため、発光できない発光素子分の光量を補うべく予め必要数以上の発光素子を設けたり、各発光素子の光量を予め高く設定しておく等の方策がとられている。このような方策の必要性は、部品コストの抑制、灯具の小型化、消費電力の抑制に係る要求に対する障害となっている。
【0006】
また特許文献1に記載の構成においては、断線により発光しない発光素子の数が所定値を超えると、配光規格を充足しない事実を運転者に知らしめるために、全ての発光素子への電流供給を遮断する。このような構成においては、運転者に異常事態を報知するためのテルテール機能を車両側に装備することが法規上求められているが、そのような追加装備を行なうにあたっては、部品体積・重量の増加やコスト上昇が避けられない。
【0007】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、コスト上昇や消費電力増加の回避を可能とする一方で、複数の発光素子の1つに断線等の異常が発生しても灯具に要求される配光規格を満足することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明が採りうる態様は、車両用灯具であって、直列接続された複数の発光素子をそれぞれが含む複数の発光素子群と、前記複数の発光素子群のそれぞれに対して電流を供給する駆動回路とを備え、前記複数の発光素子群の少なくとも一つに断線が検知された場合に、前記駆動回路は、前記複数の発光素子群のうち断線の検知されていない発光素子群への供給電流の量を増加する。
【0009】
このような構成によれば、断線が生じていない発光素子群に含まれる発光素子は通常動作時よりも高い光度で発光し、断線が生じて発光できなくなった発光素子群による光量不足を補うことができる。供給電流の量を適宜定めることにより配光規格を満足することができる。
【0010】
前記断線の検知されていない発光素子群への前記供給電流の量Iは、前記断線が検出される前に前記駆動回路が当該発光素子群に供給した電流の量をIo、全ての前記発光素子群の数をm、前記断線が検知された発光素子群の数をnとしたとき、次式(1)を満たす。
【0011】
【数1】

…(1)
【0012】
このような構成によれば、発光素子群を構成する発光素子の総数が車両用灯具の配光規格を満足しうる最低限数である場合でも、断線が生じる前の光量を確保することができる。
【0013】
前記駆動回路は、前記複数の発光素子群を、第1の光度で発光する第1の点灯状態と、前記第1の光度よりも高い第2の光度で発光する第2の点灯状態とをとるように駆動し、かつ前記断線が検知された場合には、前記第1の光度が増加するように前記供給電流の量を増加する。例えば、前記第1の点灯状態はテールランプ機能に対応するとともに、前記第2の点灯状態はストップランプ機能に対応する。
【0014】
このような構成によれば、断線した発光素子群が修理されるまでの間、少なくともテールランプの配光規格を充足した状態での車両の走行が可能となる。また車両側にテルテール機能を装備する必要がない。
【0015】
前記断線が検知された場合、前記駆動回路は前記断線を報知する報知信号を出力してもよい。
【0016】
車両用灯具がテルテール機能を標準装備している車両に搭載される場合、当該報知信号を通じて断線の事実を運転者に報知することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コスト上昇や消費電力増加の回避しつつ、複数の発光素子の1つに断線等の異常が発生しても灯具に要求される配光規格を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用灯具の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す車両用灯具の変形例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る車両用灯具の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る車両用灯具10の全体構成を図1に模式的に示す。車両用灯具10は、駆動回路11、第1の発光素子群12、および第2の発光素子群13を備えている。
【0021】
車両用灯具10は車両の後部に配置され、第1の発光素子群12および第2の発光素子群13は、テールランプとストップランプの双方の機能を兼ね備えるリアコンビネーションランプの光源として機能する。第1の発光素子群12と第2の発光素子群13は、必要に応じて「発光素子群」と総称することにする。
【0022】
駆動回路11は、第1の入力端子11a、第2の入力端子11b、第1の出力端子11c、および第2の出力端子11dを備えている。また駆動回路11は、電圧変換部21、断線検知部22、および電圧調整部23を備えている。
【0023】
第1の入力端子11aは電圧変換部21の入力側に電気的に接続されるとともに、ストップランプスイッチ31を介して車載電源40に電気的に接続されている。第2の入力端子11bは電圧変換部21の入力側に電気的に接続されるとともに、テールランプスイッチ32を介して車載電源40に電気的に接続されている。
【0024】
第1の発光素子群12は、6つの発光素子15a〜15fが直列接続されることにより構成されている。発光素子15a〜15fには、例えば発光ダイオード(LED)のような半導体発光素子が用いられる。発光素子15aのアノード側は駆動回路11の第1の出力端子11cに電気的に接続されている。発光素子15fのカソード側は接地されている。発光素子15a〜15fは、必要に応じて「発光素子15」と総称することにする。
【0025】
第2の発光素子群13は、6つの発光素子16a〜16fが直列接続されることにより構成されている。発光素子16a〜16fには、例えば発光ダイオード(LED)のような半導体発光素子が用いられる。発光素子16aのアノード側は駆動回路11の第2の出力端子11dに電気的に接続されている。発光素子16fのカソード側は接地されている。発光素子16a〜16fは、必要に応じて「発光素子16」と総称することにする。
【0026】
電圧変換部21は、車載電源40の電圧値を所定の電圧値に変換する機能を備えており、DC/DCコンバータ回路として構成される。電圧変換部21の出力側は、駆動回路11の第1の出力端子11cおよび第2の出力端子11dと電気的に接続されている。ここで所定の電圧値とは、発光素子群を所望の光度で発光させるのに必要な電流を第1の出力端子11cおよび第2の出力端子11dから供給可能な電圧値として定義される。
【0027】
本実施形態の発光素子15および発光素子16は、テールランプ用光源とストップランプ用光源の双方に用いられる。テールランプの光度(第1の光度)に対してストップランプの光度(第2の光度)は5倍とすることが法規により定められている。したがって発光素子群がテールランプとして発光する場合(第1の点灯状態)とストップランプとして発光する場合(第2の点灯状態)とで、駆動回路11より発光素子群へ供給される電流(供給電流)の値を変化させる必要が生ずる。
【0028】
そこで本実施形態の電圧変換部21は、DC/DCコンバータの出力電圧(変換後の電圧値)を変更しうる構成とされており、発光素子群を第1の点灯状態とする場合と第2の点灯状態とする場合とで出力電圧の値を切り替える。
【0029】
ストップランプスイッチ31は、運転者によりブレーキペダルが踏み込まれたときにオン状態となるように構成されている。ストップランプスイッチ31がオン状態になると、車載電源40からの電流が第1の入力端子11aを介して電圧変換部21に供給される。電圧変換部21の出力電圧は、発光素子群がストップランプとして発光するのに必要な電流を供給可能な電圧値に設定される。
【0030】
電圧変換部21によって車載電源40の電圧値が所定の電圧値に変換され、これに対応する電流が第1の出力端子11cおよび第2の出力端子11dを通じて、第1の発光素子群12および第2の発光素子群13にそれぞれ供給される。駆動回路11からの電流供給・遮断に応じ、直列接続された発光素子15a〜15fおよび発光素子16a〜16fは、一斉にストップランプとして点灯または消灯される。
【0031】
テールランプスイッチ32は、運転者によりテールランプを点灯する操作が行なわれたときにオン状態となるように構成されている。テールランプスイッチ32がオン状態になると、車載電源40からの電流が第2の入力端子11bを介して電圧変換部21に供給される。電圧変換部21の出力電圧は、発光素子群がテールランプとして発光するのに必要な電流を供給可能な電圧値に設定される。
【0032】
電圧変換部21によって車載電源40の電圧値が所定の電圧値に変換され、これに対応する電流が第1の出力端子11cおよび第2の出力端子11dを通じて、第1の発光素子群12および第2の発光素子群13にそれぞれ供給される。駆動回路11からの電流供給・遮断に応じ、直列接続された発光素子15a〜15fおよび発光素子16a〜16fは、一斉にテールランプとして点灯または消灯される。
【0033】
ストップランプとしての発光はテールランプとしての発光に優先する。すなわちテールランプの点灯時においてブレーキペダルが操作されると、電圧変換部21は発光素子群をストップランプとして点灯するための上述の動作を行なう。
【0034】
断線検知部22は電圧変換部21の出力側と電気的に接続されており、第1の発光素子群12と第2の発光素子群13のいずれかにおいて断線が発生したことを検知するように構成されている。
【0035】
第1の発光素子群12を構成する発光素子15a〜15fは直列接続されているため、これらのうち少なくとも1つに断線等の異常が発生すると、第1の発光素子群12全体に電流が流れなくなる。結果として第1の発光素子群12と接続されている第1の出力端子11cの電位が変化する。同様に、第2の発光素子群13を構成する発光素子16a〜16fの少なくとも1つに断線等の異常が発生した場合には、第2の出力端子11dの電位が変化する。断線検知部22は、上記の電位変化を検知して出力状態を変化させるように構成されている。
【0036】
電圧調整部23は断線検知部22と電気的に接続されており、断線検知部22における出力状態の変化が電圧調整部23において検出されるように構成されている。また電圧調整部23は、電圧変換部21と電気的に接続されており、電圧変換部21の出力電圧を変更可能に構成されている。
【0037】
具体的には、断線検知部22の出力状態の変化を検出したときに電圧変換部21の出力電圧を上昇させるように構成されている。すなわち発光素子群の一方に断線が検知された場合に、断線の検知されていない他方の発光素子群への供給電流の量を増加させる構成とされている。
【0038】
発光素子群の一方に含まれる発光素子の少なくとも1つに断線が生じると、当該発光素子群全体が消灯するため、車両用灯具10が備える光源の半数が消灯することとなり、テールランプの配光規格を満足することができなくなってしまう。しかしながら上記の構成によれば、断線が生じていない発光素子群に供給される電流が増加するので、当該発光素子群を構成する発光素子は通常動作時よりも高い光度で発光し、断線で発光不能となった発光素子群による光量不足を補うことができる。
【0039】
ここで電圧調整部23により変更設定される電圧変換部21の出力電圧値は、テールランプの配光規格を満足しうる発光状態が得られる程度の電流が供給されるように定められる。例えば2つの発光素子群を構成する発光素子の総数がテールランプの配光規格を満足しうる最低限数である場合には、断線していない発光素子群に含まれる発光素子の光度が2倍程度となるように当該発光素子群に供給される電流を増加させる。
【0040】
これにより断線の発生に備えて必要数以上の発光素子を予め設けたり、各発光素子の光量を予め高く設定しておく等の方策は不要となり、部品コストの抑制、灯具の小型化、消費電力の抑制が可能となる。
【0041】
断線検知部22により発光素子群の1つに断線が検知された場合の供給電流の増加は、少なくともテールランプスイッチ32が操作された場合に行なわれるようにすればよい。これにより断線した発光素子群が修理されるまでの間、少なくともテールランプの配光規格を充足した状態での車両の走行が可能となる。また車両側にテルテール機能を装備する必要がないため、追加装備に伴う部品体積・重量の増加やコスト上昇を回避することができる。
【0042】
ストップランプスイッチ31が操作された場合に、テールランプ点灯時と同様の比率で増加された電流を断線していない発光素子群に供給すると、各発光素子の定格電流を上回るおそれがある。そこで単一の発光素子群の定格電流値を予め取得し、当該定格電流値の範囲内で供給電流を増加するように電圧変換部21の出力電圧値が設定される。
【0043】
すなわち電圧調整部23が断線検知部22の出力状態の変化を検出している状態においてストップランプスイッチ31が操作された場合、電圧変換部21の出力電圧は上記定格電流値に対応する値に切り替えられる。これによりストップランプ点灯時においても、断線していない発光素子群を構成する発光素子は通常動作時よりも高い光度で発光する。したがって断線で点灯不能となった発光素子群による光度低下分を最大限補うことができる。
【0044】
なお駆動回路11の動作をより簡易にするという観点からは、ストップランプスイッチ31が操作された場合に発光素子群に供給される電流の量は、断線の有無によらず一定としてもよい。すなわち断線検知部22が発光素子群の一方に断線を検知した場合においても、他方の発光素子群がストップランプとして発光するときの光度は変化しないこととしてもよい。
【0045】
また断線検知部22が発光素子群の一方に断線を検知した場合においてストップランプスイッチ31が操作されたときは、ストップランプ点灯用の電流が他方の発光素子群へ供給されないように構成してもよい。すなわちテールランプ点灯時においてブレーキペダルが操作されてもテールランプの点灯状態が維持され、ストップランプ点灯状態にはならない構成としてもよい。この構成によれば、断線していない発光素子群にかかる負荷を最小限にすることができる。
【0046】
ところで複数の発光素子が電源に並列接続される構成においては、各発光素子に流れる電流量は、一般に電源と各発光素子の間に介挿された駆動回路が備える抵抗素子により調整される。この場合、発光素子の増加に伴って増える抵抗素子により駆動回路基板が大型化しやすく、かつ車種ごとに発光素子(抵抗素子)の数が異なるために駆動回路基板の標準化が難しい。
【0047】
本実施形態においては、直列接続された複数の発光素子が同じ量の電流で駆動されるため、駆動回路11の少なくとも一部をパッケージICとして構成するのに適している。これにより駆動回路基板の小型化および標準化が可能となり、さらなるコスト抑制に寄与しうる。
【0048】
また上述した駆動回路基板の標準化の観点からは、本発明に係る車両用灯具10がテルテール機能を標準装備している車両に搭載される可能性を考慮し、図2の変形例に示すように、駆動回路11に報知信号出力部24および報知信号出力端子11fを設けてもよい。
【0049】
報知信号出力部24は、断線検知部22および報知信号出力端子11fと電気的に接続されている。報知信号出力部24は、断線検知部22が発光素子群のいずれかに断線を検知したときに生ずる出力状態の変化を検出し、報知信号を出力するように構成されている。
【0050】
車両用灯具10がテルテール機能を装備していない車両に搭載される場合、報知信号出力端子11fはオープンとしておけばよい。車両用灯具10がテルテール機能を装備している車両に搭載される場合は、報知信号出力端子11fが当該車両の電子制御ユニット(ECU)と電気的に接続される。発光素子群の断線が検知されるとECUが報知信号出力部24より出力される報知信号を受信し、車両側に設けられたテルテール装備を通じて断線の事実が運転者に報知される。
【0051】
なお駆動回路11が備える電圧変換部21、断線検知部22、電圧調整部23、および報知信号出力部24の各々が有する機能の少なくとも一部は、回路要素により構成されるハードウェアにより実現されるものであってもよいし、プロセッサ等に格納されたソフトウェアにより実現されるものであってもよい。
【0052】
次に図3を参照しつつ、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同一あるいは同様の構成や機能を有する要素については同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる説明は割愛する。
【0053】
本実施形態の車両用灯具10Aは、駆動回路11Aと、直列接続された4つの発光素子をそれぞれが含む3つの発光素子群12A、13A、14Aとを備えている。
【0054】
駆動回路11Aは、第1の出力端子11c、第2の出力端子11d、第3の出力端子11eを備えている。また駆動回路11Aは、電圧変換部21A、断線検知部22A、および電圧調整部23Aを備えている。
【0055】
第1の発光素子群12Aは、4つの発光素子15a〜15dが直列接続されることにより構成されている。第2の発光素子群13Aは、4つの発光素子16a〜16dが直列接続されることにより構成されている。第3の発光素子群14Aは、4つの発光素子17a〜17dが直列接続されることにより構成されている。発光素子15a、16a、17aのアノード側は、それぞれ駆動回路11Aの第1の出力端子11c、第2の出力端子11d、第3の出力端子11eに電気的に接続されている。
【0056】
電圧変換部21Aの出力側は、駆動回路11Aの第1の出力端子11c、第2の出力端子11d、および第3の出力端子11eと電気的に接続されている。電圧変換部21Aによって車載電源40の電圧値が所定の電圧値に変換され、これに対応する電流が第1〜3の出力端子11c〜11eを通じて、それぞれ第1〜3の発光素子群12A〜14Aに供給される。直列接続された各発光素子は、駆動回路11Aからの電流供給・遮断に応じて一斉にストップランプまたはテールランプとして点灯または消灯される。
【0057】
断線検知部22Aは電圧変換部21Aの出力側と電気的に接続されており、第1〜3の発光素子群12A〜14Aの少なくとも1つに断線が発生したことを検知するように構成されている。
【0058】
具体的には、各発光素子群が含む発光素子の少なくとも1つに断線が発生した場合に生ずる第1〜3の出力端子11c〜11eの電位変化を検知し、電位変化が検知された出力端子の数に応じて断線検知部22Aの出力状態が変化するように構成されている。
【0059】
電圧調整部23Aは断線検知部22Aと電気的に接続されており、断線検知部22Aの出力状態の変化が電圧調整部23Aにおいて検出されるように構成されている。また電圧調整部23Aは、電圧変換部21Aと電気的に接続されており、電圧変換部21Aの出力電圧を変更可能に構成されている。
【0060】
具体的には、断線検知部22Aの出力状態の変化に応じて電圧変換部21Aの出力電圧を上昇させるように構成されている。すなわち発光素子群の少なくとも1つに断線が検知された場合に、断線の検知されていない残りの発光素子群への供給電流の量を増加させる構成とされている。これにより、当該残りの発光素子群を構成する発光素子は通常動作時よりも高い光度で発光し、断線で発光不能となった発光素子群による光量不足を補うことができる。
【0061】
ここで電圧調整部23Aにより変更設定される電圧変換部21Aの出力電圧値は、テールランプの配光規格を満足しうる発光状態が得られる程度の電流が供給されるように定められる。
【0062】
例えば3つの発光素子群を構成する発光素子の総数がテールランプの配光規格を満足しうる最低限数であり、断線が検知された発光素子群の数が1個である場合には、断線していない2個の発光素子群に含まれる発光素子の光度が3/2倍程度となるように当該発光素子群に供給される電流を増加させる。断線が検知された発光素子群の数が2個である場合には、断線していない1個の発光素子群に含まれる発光素子の光度が3倍程度となるように当該発光素子群に供給される電流を増加させる。
【0063】
この電圧調整方法は、それぞれが同数の発光素子を含む発光素子群を4つ以上備える車両用灯具にも適用可能である。より一般的に表現すると、断線が検知されていない発光素子群への供給電流の量Iは、次式(1)を満足する。
【0064】
【数2】

…(1)
【0065】
ここでIoは、断線が検出される前に駆動回路11Aが当該発光素子群へ供給した電流の量、mは全ての発光素子群の数、nは断線が検知された発光素子群の数を表す。
【0066】
したがって本実施形態の構成によれば、発光素子群を3つ以上含む場合においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0068】
本発明は、同じ色で発光し、供給される電流量により明るさを変化させることによって異なる機能に兼用される発光素子群を備える車両用灯具に適用可能である。例として、デイタイムランニングランプおよびクリアランスランプに兼用される車両用灯具や、フロントターンランプおよびサイドマーカーランプに兼用される車両用灯具が挙げられる。
【符号の説明】
【0069】
10:車両用灯具、11:駆動回路、12:発光素子群、13:発光素子群、15a〜15f:発光素子、16a〜16f:発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の発光素子をそれぞれが含む複数の発光素子群と、
前記複数の発光素子群のそれぞれに対して電流を供給する駆動回路とを備え、
前記複数の発光素子群の少なくとも一つに断線が検知された場合に、前記駆動回路は、前記複数の発光素子群のうち断線の検知されていない発光素子群への供給電流の量を増加する、車両用灯具。
【請求項2】
前記断線の検知されていない発光素子群への前記供給電流の量Iは、前記断線が検出される前に前記駆動回路が当該発光素子群に供給した電流の量をIo、全ての前記発光素子群の数をm、前記断線が検知された発光素子群の数をnとしたとき、次式(1)を満たす、請求項1に記載の車両用灯具。
【数1】

…(1)
【請求項3】
前記駆動回路は、前記複数の発光素子群を、第1の光度で発光する第1の点灯状態と、前記第1の光度よりも高い第2の光度で発光する第2の点灯状態とをとるように駆動し、かつ前記断線が検知された場合には、前記第1の光度が増加するように前記供給電流の量を増加する、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1の点灯状態はテールランプ機能に対応するとともに、前記第2の点灯状態はストップランプ機能に対応する、請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記断線が検知された場合、前記駆動回路は前記断線を報知する報知信号を出力する、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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