説明

車両用空調装置

【課題】乗員に違和感を与えることなく、省動力で車室内を空調することを目的とする。
【解決手段】補助ヒータが使用されていない場合には、エンジン冷却水の水温が目標吹出し温度に応じて予め定めた水温の閾値以下の場合に、通常エンジン始動要求制御を行って、暖房時の熱源としてのエンジン冷却水の温度低下を防止し(204)、補助ヒータが使用されている場合には、通常エンジン始動要求制御における水温の閾値よりも低い水温の閾値とした省動力なエンジンオン要求制御を行うことによって、エンジン停止時間を長くする(212)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置にかかり、特に、モータで走行する電気自動車や、停車時にエンジン停止するハイブリッド自動車等の車両に搭載された車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点等などで走行停止した際に、アイドリングを停止して燃費向上を図るアイドリングストップ制御を行って、燃費向上を図る車両が従来より提案されている。また、エンジンとモータを動力源として搭載された車両では、走行停止した際にエンジンを停止して燃費向上を図っている。
【0003】
一方、車両用空調装置は、エンジンの冷却水の熱を利用して暖房を行っているので、冷却水の温度が低い場合には、所望の暖房効果を得ることができない。すなわち、上述のようなアイドリングストップ制御を行うような車両や走行中にエンジンを停止してモータで走行するモードを有するハイブリッド自動車等の車両では、冷却水の温度が低下してしまうと、暖房効果が得られなくなってしまう。
【0004】
そこで、ハイブリッド自動車等では、車両用空調装置の目標吹出し温度(TAO)に応じて予め定められたエンジン冷却水の温度の閾値に基づいて、エンジン停止やエンジン始動を行って、冷却水の温度低下を抑制して暖房効果を得るようにしている。
【0005】
また、上述のようなハイブリッド自動車では、寒冷地等において、車室内を暖房するためにエンジンを停止した直後に、エンジンを再始動させてしまうようなことがあるので、特許文献1に記載の技術では、エンジン停止時、かつシートヒータまたはPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ使用時にはブロアレベルを下げることが提案されている。このようにブロアレベルを下げることで、ヒータコアからエンジン冷却水の熱が奪われる量を低減することができ、これによって、エンジン冷却水の温度低下を抑制してエンジン停止時間を長くすることができ、燃費を向上することができる。
【特許文献1】特開2000−142095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、シートヒータやPTCヒータ等の補助ヒータ使用時には、ある程度暖房できるという考えからブロアレベルを下げているが、エンジン停止直後からブロア風量が変化することになるので、送風によって乗員の受ける熱量が変化してしまうため、エンジン停止と同時に乗員が違和感を感じる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、乗員に違和感を与えることなく、省動力で車室内を空調することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、車室内を空調するための空調風の目標吹出し温度を算出して該目標吹出し温度となるように車室内を空調する空調手段と、前記空調手段の暖房時の熱源を加熱する加熱手段によって加熱された前記熱源の温度に対応する状態量を取得する状態量取得手段と、乗員に対して前記空調手段とは別に設けられた車室内を暖房する補助ヒータが使用されているか否かを検出する検出手段と、前記状態量取得手段によって取得した前記状態量が、前記目標吹出し温度に応じて予め定められた前記状態量の閾値以下の場合に、前記加熱手段に熱源を加熱するための要求を行う要求手段と、前記検出手段によって前記補助ヒータが使用されていることが検出された場合に、前記閾値を小さい値に変更する変更手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、空調手段では、車室内を空調するための空調風の目標吹出し温度を算出して、算出した目標吹出し温度となるように車室内が空調される。この時、空調手段の暖房の熱源は加熱手段によって加熱される。
【0010】
状態量取得手段では、加熱手段によって加熱された熱源の温度に対応する状態量が取得される。例えば、加熱手段としてはエンジンやヒートポンプを適用することができる。加熱手段としてエンジンを適用する場合には空調手段の暖房時の熱源としてはエンジン冷却水を適用することができ、状態量としてはエンジン冷却水の水温等を適用することができる。また、加熱手段としてヒートポンプを適用する場合には空調手段の暖房時の熱源としては熱交換器等を適用することができ、状態量としては熱交換器等からの放熱温度等を適用することができる。
【0011】
また、検出手段では、乗員に対して空調手段とは別に設けれた車室内を暖房する補助ヒータが使用されているか否かが検出される。
【0012】
そして、要求手段では、状態量取得手段によって取得した状態量が、目標吹出し温度に応じて予め定められた状態量の閾値以下の場合に、暖房能力を維持するために加熱手段に熱源を加熱するための要求が行われる。なお、加熱手段に熱源を加熱するための要求としては、例えば、加熱手段としてヒートポンプを適用した場合にはヒートポンプの動作要求やヒートポンプの回転数の変更要求等を行うようにしてもよい。また加熱手段としてエンジンを適用した場合にはエンジン始動要求を行うようにしてもよい。
【0013】
また、加熱手段に熱源を加熱する要求を行う際に、検出手段によって補助ヒータが使用されていることが検出された場合には、変更手段によって上記状態量の閾値が小さい値に変更されて、加熱手段に熱源を加熱するための要求が行われる。すなわち、補助ヒータが使用されている場合には、乗員の温感が実際の車室内温度よりも高くなるので、熱源の温度が徐々に低下して空調手段による暖房能力が低下しても分り難くなるため、補助ヒータ使用時には、元の閾値よりも小さい値、すなわち低い温度に対応する状態量の閾値に変更して、加熱手段に熱源を加熱するための要求を行う。これによって乗員に違和感を与えることなく、加熱手段の動作を省動力化して車室内を空調することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、車室内を空調する空調風の目標吹出し温度を算出して該目標吹出し温度となるように車室内を空調する空調手段と、前記空調手段の暖房時の熱源となるエンジン冷却水の水温を取得する取得手段と、乗員に対して前記空調手段とは別に設けられた車室内を暖房する補助ヒータが使用されているか否かを検出する検出手段と、前記取得手段によって取得した前記水温が、前記目標吹出し温度に応じて予め定められた前記水温の閾値以下の場合に、エンジン始動要求を行う要求手段と、前記検出手段によって前記補助ヒータが使用されていることが検出された場合に、前記閾値を小さい値に変更する変更手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、空調手段では、車室内を空調するための空調風の目標吹出し温度を算出して、算出した目標吹出し温度となるように車室内が空調される。
【0016】
取得手段では、空調手段の暖房時の熱源となるエンジン冷却水の水温が取得される。
【0017】
また、検出手段では、乗員に対して空調手段とは別に設けられた車室内を暖房する補助ヒータが使用されているか否かが検出される。
【0018】
そして、要求手段では、取得手段によって取得した水温が、目標吹出し温度に応じて予め定められた水温の閾値以下の場合に、暖房能力を維持するためにエンジン始動要求が行われる。この時、検出手段によって補助ヒータが使用されていることが検出された場合には、変更手段によって上記水温の閾値が小さい値に変更されて、エンジン始動要求が行われる。すなわち、補助ヒータが使用されている場合には、乗員の温感が実際の車室内温度よりも高くなるので、熱源の温度が徐々に低下して空調手段による暖房能力が低下しても分り難くなるため、補助ヒータ使用時には、元の閾値よりも小さい値、すなわち低い水温の閾値に変更して、エンジン始動要求を行う。これによって乗員に違和感を与えることなく、エンジン停止時間を長くすることができるので、省動力化して車室内を空調することができる。
【0019】
また、補助ヒータとしては、例えば、請求項3に記載の発明のように、乗員接触型ヒータ(例えば、シートヒータやステアリングヒータ等)、電気ヒータ(ハロゲンヒータ、輻射ヒータ、PTCヒータ等)、及びヒートポンプの少なくとも1つのヒータを適用することができる。
【0020】
なお、請求項2の発明の補助ヒータとしてヒートポンプ及びPTCヒータ等の電気ヒータを含む場合には、変更手段は、請求項4に記載の発明のように、閾値を小さい値に変更する際に、電気ヒータ使用時よりもヒートポンプ使用時の方が小さい値になるように閾値を変更するようにしてもよい。すなわち、PTCヒータ等の電気ヒータはヒートポンプよりも暖房性能が低いため、ヒートポンプ使用時より大きい値の閾値としてエンジンを始動し易くすることによって暖房性能を維持することが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、車室内を空調する空調風の目標吹出し温度を算出して該目標吹出し温度となるように車室内を空調する空調手段と、前記空調手段の暖房時の熱源となるエンジン冷却水の水温を取得する取得手段と、乗員に対して前記空調手段とは別に設けられた車室内を暖房するためのヒートポンプ及び電気ヒータと、前記取得手段によって取得した前記水温が、前記目標吹出し温度に応じて予め定められた前記水温の閾値以下の場合に、エンジン始動要求を行う要求手段と、外気温が所定温度より低い場合に、前記電気ヒータを作動させて、前記閾値を小さい値に変更すると共に、外気温が所定温度以上の場合に、前記ヒートポンプを作動させて、前記電気ヒータ作動時よりも小さい値に変更する変更手段と、を備えることを特徴としている。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、空調手段では、車室内を空調するための空調風の目標吹出し温度を算出して、算出した目標吹出し温度となるように車室内が空調される。
【0023】
取得手段では、空調手段の暖房時の熱源となるエンジン冷却水の水温が取得される。
【0024】
また、ヒートポンプ及び電気ヒータは、乗員に対して空調手段とは別に設けられて車室内を暖房する。
【0025】
また、要求手段では、取得手段によって取得した水温が、目標吹出し温度に応じて予め定められた水温の閾値以下の場合に、暖房能力を維持するためにエンジン始動要求が行われる。
【0026】
そして、変更手段では、外気温が所定温度より低い場合に、電気ヒータを作動させて閾値を小さい値に変更すると共に、外気温が所定温度以上の場合に、ヒートポンプを作動させて閾値を電気ヒータ作動時よりも小さい値に変更される。すなわち、ヒートポンプや電気ヒータを作動している場合には、乗員の温感が実際の車室内温度よりも高くなるので、熱源の温度が徐々に低下して空調手段による暖房能力が低下しても分り難くなるため、ヒートポンプや電気ヒータ作動時には、元の閾値よりも小さい値、すなわち低い水温の閾値に変更して、エンジン始動要求を行う。これによって乗員に違和感を与えることなく、エンジン停止時間を長くすることができるので、省動力化して車室内を空調することができる。
【0027】
また、PTCヒータ等の電気ヒータはヒートポンプよりも暖房性能が低いため、ヒートポンプ作動時より大きい値の閾値としてエンジンを始動し易くすることによって暖房性能を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、補助ヒータが使用されている場合には、乗員の温感が実際の車室内温度よりも高いことを利用して、補助ヒータを使用しているか否かに応じて暖房の熱源を加熱する要求を行うことにより、乗員に違和感を与えることなく、省動力で車室内を空調することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係わる車両用空調装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態に係わる車両用空調装置10は、ハイブリッド自動車に搭載され、エンジン停止時においても車室内空調可能なものとして説明する。
【0031】
本発明の第1実施形態に係わる車両用空調装置10は、コンプレッサ12、コンデンサ14、エキスパンションバルブ16、及びエバポレータ18を含む冷媒の循環路によって冷凍サイクルが構成されている。
【0032】
エバポレータ18は、圧縮されて液化している冷媒を気化することにより、このエバポレータ18を通過する空気(以下、エバポレータ後の空気という)を冷却する。この時、エバポレータ18では、通過する空気を冷却することにより、空気中の水分を結露させるようになっており、これにより、エバポレータ18後の空気が除湿される。
【0033】
エバポレータ18の上流側に設けられているエキスパンションバルブ16は、液化している冷媒を急激に減圧することにより、霧状にしてエバポレータへ供給するようになっており、これによってエバポレータ18での冷媒の気化効率を向上させている。
【0034】
本実施形態では、車両用空調装置10のコンプレッサ12は、電動式のコンプレッサを適用し、車両の動力(例えば、エンジンやモータ等)を動作しない場合でもモータ20によって冷媒の循環が可能なように構成されている。なお、車両の動力が作動している時には、車両の動力によってコンプレッサ12を駆動するようにしてもよい。
【0035】
車両用空調装置10のエバポレータ18は、空調ダクト22の内部に設けられている。この空調ダクト22は、両端が開口しており、一方の開口端には、空気吸い込み口24、26が形成されている。また他方の開口端には、車室内へ向けて開口された複数の空気吹出口28(本実施の形態では一例として28A、28B、28Cを図示)が形成されている。
【0036】
空気吸い込み口26は、車両外部と連通し、空調ダクト22内に外気を導入可能となっている。また、空気吸い込み口24は、車室内と連通しており車室内下部から空気(内気)を空調ダクト22内に導入可能となっている。なお、空気吹出し口28は、本実施形態では、ウインドシールドガラスへ向けて空気を吹き出すデフロスタ吹出し口28A(DEF)、車室内上部へ向けて空気を吹出し可能なサイド及びセンタレジスタ吹出し口28B(Vent)、車室内下部へ向けて空気を吹き出す足下吹出し口28C(Heat)とされている。
【0037】
空調ダクト22内には、エバポレータ18と空気吸い込み口24、26との間にブロアファン27が設けられている。また、空気吸い込み口24、26の近傍には、吸い込み口切換ダンパ30が設けられている。吸い込み口切換ダンパ30は、吸い込み口切換ダンパ用アクチュエータ32の作動によって、空気吸い込み口24、26の開閉を排他的に行う。
【0038】
ブロアファン27は、ブロアモータ34の駆動によって回転して、空気吸い込み口24乃至空気吸い込み口26から空調ダクト22内に吸引し、さらにこの空気をエバポレータ18へ向けて送出する。この時、吸い込み口切換ダンパ30による空気吸い込み口24、26の開閉状態に応じて、空調ダクト22内に外気又は内気が導入されるようになっている。すなわち、吸い込み口切換ダンパ30によって内気循環モードと外気導入モードが切換えられる。
【0039】
エバポレータ18の下流には、エアミックスダンパ36及びヒータコア38が設けられている。エアミックスダンパ36は、エアミックスダンパ用アクチュエータ40の駆動によって回動してエバポレータ18後の空気の、ヒータコア38を通過する量とヒータコア38をバイパスする量を調整する。ヒータコア38は、エンジン冷却水が循環しており、エンジンによって加熱されたエンジン冷却水の熱を用いてエアミックスダンパ36によって案内された空気を加熱する。
【0040】
エバポレータ18後の空気は、エアミックスダンパ36の開度に応じてヒータコア38へ案内されて加熱され、さらに、ヒータコア38によって加熱されていない空気と混合された後に、空気吹出し口28へ向けて送出される。車両用空調装置10では、エアミックスダンパ36をコントロールして、エバポレータ18後の冷風と、ヒータコア38によって加熱された温風の混合状態を調整することで、空気吹出し口28から車室内へ向けて吹き出す空気の温度調整を行う。
【0041】
空気吹出し口28の近傍には、吹出し口切換ダンパ42が設けられている。車両用空調装置10では、これらの吹出し口切換ダンパ42によって空気吹出し口28A、28B、28Cを開閉することにより、温度調整した空気を所望の位置から車室内へ吹き出すことができる。なお、この吹出し口切換ダンパ42の作動は、車両用空調装置10が設定された運転モードに応じて吹出し口切換ダンパ用アクチュエータ44を駆動することによって行われる。
【0042】
また、車両用空調装置10は、車両用空調装置10の各種制御を行うためのエアコンECU(Electronic Control Unit)46を備えている。エアコンECU46には、ブロアファン27の回転速度を制御するブロアファン速度制御装置48、吸い込み口切換ダンパ用アクチュエータ32、エアミックスダンパ用アクチュエータ40、吹出し口切換ダンパ用アクチュエータ44、コンプレッサ12を回転駆動するモータ20を制御する制御スイッチ50、外気温センサ52、車室内温度センサ54、日射センサ56、及びエバポレータ後温度センサ60が接続されていると共に、車両用空調装置10の温度設定や吹出し口28の選択等を行うための温度設定装置58等が接続されており、外気温センサ52、車室内温度センサ54、日射センサ56、エバポレータ後温度センサ60の検出値がエアコンECU46に入力され、各センサの検出値に基づいて温度設定装置58の設定等に応じた各種制御を行うようになっている。なお、ブロアファン速度制御装置48は、パワートランジスタのようなものを適用することができ、パワートランジスタを適用する場合には、パワートランジスタのベースにかかる電圧のデューティ比を変えることでブロアファン27の回転速度を変えることが可能である。
【0043】
また、本実施形態に係わる車両用空調装置10が搭載された車両には、補助ヒータ64が設けられており、車両用空調装置10による暖房と補助ヒータ64による暖房が可能とされ、車両用空調装置10のエアコンECU46には、補助ヒータ64が接続されて、補助ヒータ64の使用状況がエアコンECU46に入力されるようになっている。
【0044】
なお、補助ヒータ64としては、例えば、乗員接触型ヒータ(車両用シートを加熱するシートヒータやステアリングを加熱するステアリングヒータ等)、電気ヒータ(ハロゲンヒータ、輻射ヒータ、PTCヒータ等)、冷媒サイクルを利用したヒートポンプなどの補助ヒータを適用することができ、補助ヒータを組合わせて適用するようにしてもよい。
【0045】
さらに、エアコンECU46には、エンジンECU62が接続されており、エンジンECU62に入力されるエンジン水温の検出結果が取得可能とされて、本実施形態に係わる車両用空調装置10は、ハイブリッド自動車等の車両に搭載されるので、モータによる走行時や停車時等の際にエンジンがオフされて、エンジン冷却水温度が低下すると、ヒータコア38からの放熱量が低下して暖房効果を得られなくなってしまうため、エンジン水温に基づいて、エンジンECU62に対してエンジンオン要求やエンジンオフ要求を行うようになっている。
【0046】
詳細には、エアコンECU46には、目標吹出し温度(TAO)に応じて予め定められたエンジン水温のエンジンオン要求閾値及びエンジンオフ要求閾値が記憶されており、該エンジンオン要求閾値やエンジンオフ要求閾値に基づいて、エンジンECU62に対してエンジンオンオフ要求を行うようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、補助ヒータ64が使用されている場合には、乗員の温感が実際の室温よりも高いので、異なる閾値を用いて、補助ヒータ64の使用に応じて閾値を変更してエンジンオン要求制御を行うようになっている。本実施形態では、図2に示すように、目標吹出し温度に応じて予め定められたエンジン水温でエンジンオン要求を行うための通常(補助ヒータ64を使用していない場合)エンジンオン要求閾値(図2点線)と、該エンジンオン要求閾値よりも低いエンジン水温でエンジンオン要求を行って省動力化するための省動力エンジンオン要求閾値(図2実線)と、が予めエアコンECU46に記憶されており、エアコンECU46が、補助ヒータ64の使用に応じて、通常エンジンオン要求閾値を用いた通常エンジンオン要求制御と、省動力エンジンオン要求閾値を用いた省動力エンジンオン制御と、を行う。なお、図2の点線の下側が通常エンジンオン要求制御時のエンジンオン要求領域であり、同様に、図2の実線の下側が省動力エンジンオン要求制御時のエンジンオン要求領域である。
【0048】
続いて、上述のように構成された本発明の第1実施形態に係わる車両用空調装置10の動作について説明する。
【0049】
本実施形態に係わる車両用空調装置10は、各センサの検出結果に基づいて、車室内の温度を予め定めた設定値に保つように空調制御(オートエアコン制御)するようになっており、オートエアコン制御について説明する。図3は、エアコンECU46で行われるオートエアコン制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0050】
温度設定装置58等によって空調開始指示がなされると、ステップ100では、外気温センサ52、車室内温度センサ54、日射センサ56、及びエバポレータ後温度センサ60等の各センサ値によって検出される検出値を読み込むと共に、温度設定装置58によって設定されている温度を読み込む。
【0051】
続いて、ステップ102では、目標吹出し温度(TAO)を算出してステップ104へ移行する。TAOは、次式を用いて算出される。
【0052】
TAO=K1×Tset−K2×Tr−K3×To−K4×ST+C
ここで、Tsetは設定温度、Trは車室内温度、Toは外気温、STは日射量を示し、K1、K2、K3、K4、Cは定数である。
【0053】
ステップ104では、エアミックスダンパ(A/M)36の開度を算出する。詳細には、吹出し温度が目標吹出し温度となるように制御するために、ヒータコア38を通過して温風と、ヒータコア38をバイパスした冷風の割合である混合比(温風/冷風)rを次式によって算出する。
【0054】
r=(TAO−Te)/(Th−Te)
【0055】
なお、Teはエバポレータ18後に設けたセンサによって検出したエバポレータ後空気温度を示し、Thはヒータコア38直後の空気温度を示す。また、Thは本実施の形態では、次式を用いて演算する。
【0056】
Th=A×Tw+(1−A)×Te
【0057】
ここで、Twはエンジン冷却水の温度を示し、Aは1以下の定数を示す。
【0058】
次に、演算した混合比rになるエアミックスダンパ36の開度Sを次式で演算する。
【0059】
S=F1(r)
【0060】
なお、F1(x)はエアミックスダンパ36の開度Sの関数を表し、F1(r)は混合比rの場合のエアミックスダンパ36の開度を表す。
【0061】
次にステップ106では、算出されたエアミックスダンパ36の開度となるように、エアミックスダンパ用アクチュエータ40を駆動して、ステップ108へ移行する。
【0062】
ステップ108では、予め定めたマップに応じて、目標吹出し温度からブロアファン27のブロアモータ34へ印加する電圧を演算して、ブロアファン速度制御装置48に信号を出力することで、目標吹出し温度に応じた送風が行われ、ステップ110へ移行する。
【0063】
ステップ110では、エアコンオフか否か判定する。該判定は、温度設定装置58等によって空調の停止が指示されたか否か等を判定し、該判定が否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理を繰り返し、ステップ110の判定が肯定されたところで処理を終了する。
【0064】
ところで、本発明の第1実施形態に係わる車両用空調装置10は、ハイブリッド自動車等に搭載されるため、エンジンを停止してモータ等で走行することがあるが、この場合には、エンジン冷却水の熱を利用して暖房するため、エンジン停止時間が長くなると暖房効果を得られなくなってしまうため、エンジンオンオフ要求をエアコンECU46からエンジンECU62に出力して、エンジン冷却水の温度の低下を防止するエンジンオンオフ要求制御を行う。
【0065】
しかしながら、補助ヒータ64使用時には、乗員の温感が実際の室温よりも高く、エンジンオン要求を行う必要がないのにエンジンオン要求を行って車両用空調装置10による暖房能力を維持しようとするため、エンジンオフ時間が短くなってしまう。そこで、本実施形態では、補助ヒータ64の使用状況に応じてエンジンオン要求の閾値を変更してエンジンオン要求制御を行う。
【0066】
図4は、本発明の第1実施形態に係わる車両用空調装置10のエアコンECU46で行われるエンジンオン要求制御の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4のエンジンオン要求制御は、オートエアコン制御の終了と共に終了するものとして説明する。
【0067】
上述のオートエアコン制御が開始されると、ステップ200では、補助ヒータ64の使用状況が検出されてステップ202へ移行する。
【0068】
ステップ202では、ステップ200で検出した補助ヒータ64の使用状況から、補助ヒータ64がオンされてるか否か判定され、該判定が否定された場合にはステップ204へ移行し、肯定された場合にはステップ206へ移行する。
【0069】
ステップ204では、通常エンジンオン要求制御が行われてステップ100に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、上述のステップ102で算出した目標吹出し温度を取得すると共に、エンジンECU62から水温を取得して、図2の点線で示す補助ヒータ64を使用していない場合の通常エンジンオン要求閾値に基づいてエンジンオン要求が行われる。これによってエンジンECU62はエンジンオン要求を受けてエンジン始動を行うことで冷却水を加熱して暖房を維持することが可能となる。
【0070】
一方、ステップ202の判定が肯定されてステップ206へ移行すると、外気温センサ52及び車室内温度センサ54の検出結果から外気温及び車室内温度が検出されてステップ208へ移行する。
【0071】
ステップ208では、外気温が−6℃以上か否か判定される。該判定が否定された場合には上述したステップ204へ移行し、肯定された場合にはステップ210へ移行する。
【0072】
ステップ210では、車室内温度が20℃以上か否か判定され、該判定が否定された場合には上述したステップ204へ移行し、肯定された場合にはステップ212へ移行する。
【0073】
ステップ212では、省動力制御が行われてステップ200に戻って上述の処理が繰り返される。すなわち、上述のステップ102で算出された目標吹き出し温度を取得すると共に、エンジンECU62から水温を取得して、図2の実線で示す省動力エンジンオン要求閾値に基づいてエンジンオン要求が行われる。これによってエンジンECU62はエンジンオン要求を受けてエンジン始動を行うことで冷却水を加熱して暖房を維持することが可能となる。この時、通常エンジンオン要求閾値よりも省動力エンジンオン要求閾値の方が、目標吹出し温度に応じて定めた水温の閾値が低いので、エンジンが停止している時間を長くすることができ、無駄な燃料消費を抑制することができる。また、通常エンジンオン要求閾値よりも省動力エンジンオン要求閾値の方が、目標吹出し温度に応じて定めた水温の閾値が低いため、水温が徐々に低下して車両用空調装置10の暖房能力が低下してしまうが、補助ヒータ64が使用された状態であるため、乗員の温感は実際の車室内温度よりも高く、暖房能力が徐々に低下するのを認識しずらくなり、結果として暖房能力を維持することができ、乗員に違和感を与えることなく、エンジン停止時間を長くして燃費を向上することができる。
【0074】
なお、上記の第1実施形態では、車室内を空調する際の熱源としてエンジン冷却水を用いると共に熱源を加熱する加熱手段としてエンジンを用いて、熱源を確保するためにエンジンオン要求制御を行うようにしたが、これに限るものではなく、例えば、供給電力に応じて駆動するコンプレッサによって圧縮した冷媒を用いるヒートポンプを加熱手段として用いると共にヒートポンプの熱交換器等を熱源として用い、エンジンオン要求制御の代わりに、ヒートポンプの熱交換器等の温度を検出してコンプレッサの動作要求制御(コンプレッサのオン要求やコンプレッサの回転数変更要求等)を行うようにしてもよい。例えば、通常時(補助ヒータ64を使用していない場合)の目標吹出し温度に応じて予め定めたヒートポンプのコンプレッサ回転数の設定マップと、補助ヒータ64を使用している場合の目標吹出し温度に応じて予め定めたヒートポンプのコンプレッサ回転数(補助ヒータ64を使用していない場合に比べて低い回転数)の設定マップと、を用いて、補助ヒータ64の使用に応じて設定マップを変更してヒートポンプのコンプレッサの動作要求制御を行うようにしてもよい。この場合にはヒートポンプのコンプレッサの動力を電力によって駆動するので、必要以上の回転数でコンプレッサを駆動することを抑制することができ、省電力化を図ることが可能となる。
【0075】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置について説明する。
【0076】
第2実施形態は、第1実施形態の補助ヒータ64としてPTCヒータを備えると共に、ヒートポンプを備えた場合について説明する。また、第1実施形態では、補助ヒータ64の使用を検出するようにしたが、第2実施形態では、エアコン制御ECUが補助ヒータ64としてのPTCヒータやヒートポンプを制御する。
【0077】
本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置の基本的な構成は、第1実施形態に対して冷媒の循環サイクルが異なるのみであるため差異のみを説明する。
【0078】
図5は、本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置の構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同一構成については同一符号を付して説明する。また、図5では第1実施形態で説明した部分について一部省略して示す。
【0079】
本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置70の冷媒の循環サイクルは、コンプレッサ12、室内コンデンサ72、3方弁74、室外熱交換器76、逆止弁78、電磁弁80、82、エバポレータ18、膨張弁84、タンク86、及びコンプレッサ12を含む構成とされており、3方弁74及び2つの電磁弁80、82の切換によって冷凍サイクルとヒートポンプサイクルを切り換えるようになっている。なお、ヒートポンプサイクルの場合には、補助ヒータとして機能する。
【0080】
冷凍サイクルの場合には、3方弁74を室外熱交換器76側に切り換えると共に、電磁弁82をオフして電磁弁80をオンすることによって、第1実施形態の冷凍サイクルと同様に、冷媒が循環する。すなわち、コンプレッサ12によって圧縮された冷媒は、室内コンデンサ72、3方弁74、室外熱交換器(第1実施形態のコンデンサ14に相当)76、電磁弁80、膨張弁84、エバポレータ18の順に通過してタンク86に戻ってくる。
【0081】
冷凍サイクルでは、コンプレッサ12によって圧縮された高温高圧の冷媒が室外熱交換器76で放熱されて高圧低温の冷媒となって膨張弁84で減圧されることによって、液化している冷媒が気化されることにより、エバポレータ18を通過する空気が冷却される。この時、エバポレータ18では、通過する空気を冷却することにより、空気中の水分を結露させるようになっており、これにより、エバポレータ18後の空気が除湿される。
【0082】
また、ヒートポンプサイクルの場合には、3方弁74を逆止弁78側に切り換えると共に、電磁弁82をオンして電磁弁80をオフする。すなわち、コンプレッサ12によって圧縮された冷媒は、室内コンデンサ72、3方弁74、逆止弁78、室外熱交換器76、電磁弁82を通ってタンク86に戻ってくる。
【0083】
ヒートポンプサイクルでは、高温高圧の冷媒が逆止弁78で減圧されて室外熱交換器76で吸熱される。そして、タンク86に戻ってからコンプレッサ12で圧縮され、高温高圧の冷媒とされて室内コンデンサ72で放熱される。
【0084】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、車両用空調装置10のコンプレッサ12は、電動式のコンプレッサを適用し、車両の動力(例えば、エンジンやモータ等)を動作しない場合でもモータ20によって冷媒の循環が可能なように構成されている。なお、車両の動力が作動している時には、車両の動力によってコンプレッサ12を駆動するようにしてもよい。
【0085】
車両用空調装置70の空調ダクト22内には、HVAC(Heating Ventilating Air-Conditioning)が設けられている。HVACは、エバポレータ18、室内コンデンサ72、PTCヒータ88等を含んで構成されている。なお、空調ダクト22は、第1実施形態に対して、室内コンデンサ72及びPTCヒータ88を追加してのみであり、基本構成は同一であるため差異のみ説明し詳細な説明は省略する。
【0086】
空調ダクト22内のエバポレータ18の下流に、エアミックスダンパ36が設けられ、エアミックスダンパ36の下流にヒータコア38、室内コンデンサ72及びPTCヒータ88が順に設けられている。すなわち、エバポレータ18後の空気は、ヒータコア38、室内コンデンサ72、及びPTCヒータ88の少なくとも1つによって温められるようになっている。
【0087】
また、本実施形態に係わる車両用空調装置70は、第1実施形態と同様に、車両用空調装置70の各種制御を行うためのエアコンECU47を備えている。エアコンECU47には、第1実施形態と同様に、ブロアファン速度制御装置48、吸い込み口切換ダンパ用アクチュエータ32、エアミックスダンパ用アクチュエータ40、吹出し口切換ダンパ用アクチュエータ44、コンプレッサ12のモータ20、外気温センサ52、車室内温度センサ54、日射センサ56、及びエバポレータ後温度センサ60が接続されていると共に、車両用空調装置10の温度設定や吹出し口28の選択等を行うための温度設定装置58等が接続されており、外気温センサ52、車室内温度センサ54、日射センサ56、エバポレータ後温度センサ60の検出値がエアコンECU46に入力され、各センサの検出値に基づいて温度設定装置58の設定等に応じた各種制御を行うようになっている。
【0088】
また、本実施形態に係わる車両用空調装置70が搭載された車両には、補助ヒータとしてPTCヒータ88が設けられており、車両用空調装置10による暖房とPTCヒータ88による暖房が可能とされ、車両用空調装置10のエアコンECU46には、PTCヒータ88が接続されている。
【0089】
さらに、エアコンECU46には、エンジンECU62が接続されており、第1実施形態と同様に、エンジンECU62に入力されるエンジン水温の検出結果が取得可能とされている。本実施形態ににおいても、車両用空調装置70はハイブリッド自動車等の車両に搭載されるので、モータによる走行時や停車時等の際にエンジンがオフされて、エンジン冷却水温度が低下すると、ヒータコア38からの放熱量が低下して暖房効果を得られなくなってしまうため、エンジン水温に基づいて、エンジンECU62に対してエンジンオン要求やエンジンオフ要求を行うようになっている。
【0090】
詳細には、エアコンECU46には、目標吹出し温度(TAO)に応じて予め定められたエンジン水温のエンジンオン要求閾値及びエンジンオフ要求閾値が記憶されており、該エンジンオン要求閾値やエンジンオフ要求閾値に基づいて、エンジンECU62に対してエンジンオンオフ要求を行うようになっている。
【0091】
また、本実施形態では、ヒートポンプやPTCヒータ88が使用されている場合には、乗員の温感が実際の室温よりも高いので、異なる閾値を用いて、ヒートポンプやPTCヒータ88の使用に応じて閾値を変更してエンジンオン要求制御を行うようになっている。本実施形態では、図6に示すように、目標吹出し温度に応じて予め定められたエンジン水温でエンジンオン要求を行うための通常のエンジンオン要求閾値(T)と、該エンジンオン要求閾値よりも低いエンジン水温でエンジンオン要求を行って省動力化するためのエンジンオン要求閾値(PTCヒータ88作動時のエンジンオン要求閾値T及びヒートポンプ作動時のエンジンオン要求閾値T(T>T))と、が予めエアコンECU46に記憶されており、エアコンECU46が、ヒートポンプやPTCヒータ88の使用に応じて、通常エンジンオン要求閾値を用いた通常エンジンオン要求制御と、通常エンジンオン要求閾値より小さいエンジンオン要求閾値(T、T)を用いた省動力なエンジンオン制御と、を行う。
【0092】
また、通常エンジンオン要求閾値よりエンジン水温が低い場合には、ヒートポンプを作動するようになっている。そして、目標吹出し温度が所定値(X)より高い場合には、ヒートポンプをフル作動し、所定値(X)より低い場合には、ヒートポンプを制限しながら作動する。
【0093】
さらに、外気温が低い場合には、コンプレッサ12が機能しない場合があるので、この場合には、PTCヒータ88を用いた暖房を行う。
【0094】
続いて、上述のように構成された本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置70の動作について説明する。
【0095】
本実施形態に係わる車両用空調装置70も第1実施形態と同様に、各センサの検出結果に基づいて、車室内の温度を予め定めた設定値に保つように空調制御(オートエアコン制御)する。オートエアコン制御については第1実施形態と同一であるため詳細な説明を省略する。
【0096】
また、第2実施形態に係わる車両用空調装置70もハイブリッド自動車等に搭載されるため、エンジンを停止してモータ等で走行することがあるが、この場合には、エンジン冷却水の熱を利用して暖房するため、エンジン停止時間が長くなると暖房効果を得られなくなってしまうため、エンジンオンオフ要求をエアコンECU47からエンジンECU62に出力して、エンジン冷却水の温度の低下を防止するエンジンオンオフ要求を行う。この時、第2実施形態では、ヒートポンプとPTCヒータ88を備えているため、作動状況に合わせてエンジンオン要求閾値を変更する。
【0097】
ここで、エンジンオン要求閾値の変更処理について説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置70のエアコンECU47で行われるエンジンオン要求閾値の変更処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0098】
まずステップ300では、ブロアがオンされたか否かエアコンECU47によって判定される。該判定は、温度設定装置58等によってブロアの送風指示が行われたか否かを判定し、該判定が否定された場合にはエンジンオン要求閾値の変更処理がリターンされて他の処理が行われ、肯定された場合にはステップ302へ移行する。
【0099】
ステップ302では、外気温度が0℃以上か否かエアコンECU47によって判定される。該判定は、外気温センサ52の検出結果に基づいて判定され、該判定が肯定された場合にはステップ304へ移行し、否定された場合にはステップ314へ移行する。
【0100】
ステップ304では、エンジン冷却水の温度TWが通常のエンジンオン要求閾値(T)以上か否かエアコンECU47によって判定される。すなわち、エンジンECU62から取得したエンジン冷却水の温度がTか否かを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ306へ移行し、否定された場合には一例の処理がリターンされる。
【0101】
ステップ306では、目標吹出し温度(TAO)が所定温度(X)以上か否かエアコンECU47によって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ308へ移行し、否定された場合にはステップ310へ移行する。
【0102】
ステップ308では、ヒートポンプがエアコンECU47によって制限されながら作動されてステップ312へ移行する。すなわち、コンプレッサ12の回転数が制限されながらヒートポンプが駆動される。
【0103】
また、ステップ310では、ヒートポンプがエアコンECU47によってフル作動されてステップ312へ移行する。すなわち、目標吹出し温度TAOが高い場合には暖房性能が優先される。
【0104】
ステップ312では、エンジンオン要求閾値がTに変更された後に一連の処理がリターンされる。すなわち、通常エンジンオン要求閾値Tよりもエンジンオン要求閾値Tの方が、目標吹出し温度に応じて定めた水温の閾値が低いので、エンジンが停止している時間を長くすることができ、無駄な燃料消費を抑制することができる。また、通常エンジンオン要求閾値Tよりもエンジンオン要求閾値Tの方が、目標吹出し温度に応じて定めた水温の閾値が低いため、水温が徐々に低下して車両用空調装置70の暖房能力が低下してしまうが、ヒートポンプが使用された状態であるため、暖房能力を維持したままエンジン停止時間を長くして燃費を向上することができる。
【0105】
一方、ステップ314では、発電量が所定値以上か否かエアコンECU47によって判定される。該判定は、使用電力と発電量の差をエンジンECU62から取得して使用電力と発電量の差が所定値以上か否かを判定することによって行われ、該判定が否定された場合には、PTCヒータ88を使用するとバッテリがあがってしまうため、そのまま処理をリターンし、判定が肯定された場合にはステップ316へ移行する。
【0106】
ステップ316では、エンジン冷却水の温度TWが通常のエンジンオン要求閾値(T)以上か否かエアコンECU47によって判定される。すなわち、エンジンECU62から取得したエンジン冷却水の温度がTか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ318へ移行し、肯定された場合には一連の処理がリターンされる。
【0107】
ステップ318では、エアコンECU47によってPTCヒータ88が作動されてステップ320へ移行する。
【0108】
ステップ320では、エンジンオン要求閾値がTに変更された後に一連の処理がリターンされる。すなわち、通常エンジンオン要求閾値Tよりもエンジンオン要求閾値Tの方が、目標吹出し温度に応じて定めた水温の閾値が低いので、エンジンが停止している時間を長くすることができ、無駄な燃料消費を抑制することができる。また、通常エンジンオン要求閾値Tよりもエンジンオン要求閾値Tの方が、目標吹出し温度に応じて定めた水温の閾値が低いため、水温が徐々に低下して車両用空調装置70の暖房能力が低下してしまうが、PTCヒータ88が作動されるので、暖房能力を維持したままエンジン停止時間を長くして燃費を向上することができる。
【0109】
このように本実施形態に係わる車両用空調装置70では、外気温が高い(0℃以上)の場合にはコンプレッサ12を作動するので、コンプレッサ12を用いてヒートポンプを駆動して暖房を行って、エンジンオン要求閾値を通常エンジン要求閾値Tよりも小さい値に変更するので、これによって暖房を維持したままエンジン停止時間を長くして燃費向上することができる。また、目標吹出し温度が所定値Xより低い場合にはコンプレッサ12の電力制限して作動するので、必要以上の回転数でコンプレッサ12を駆動することを抑制することができ、省電力化を図ることができる。
【0110】
また、外気温が低い(0℃より低い)場合には、コンプレッサ12が機能しない場合があるのでPTCヒータ88を作動して暖房を行って、エンジンオン要求閾値を通常エンジン要求閾値Tよりも小さい値に変更するので、これによって暖房を維持したままエンジン停止時間を長くして燃費向上することができる。また、PTCヒータ88使用時には、ヒートポンプ使用時よりも暖房能力が低いため、エンジンオン要求閾値をTよりも高いTにするので、暖房能力の低下を抑制することができる。さらに、PTCヒータ88使用時には、電力を消費するので、使用電力と発電量の差が所定値以上の場合のみPTCヒータ88を使用することで、バッテリ上がりを抑制することが可能となる。
【0111】
なお、第2実施形態では、エアコンECU47が、外気温に応じてヒートポンプとPTCヒータ88を作動させてエンジンオン要求閾値を変更するようにしたが、これに限るものではなく、例えば、ヒートポンプやPTCヒータ88はスイッチ等によって作動させるようにして、第1実施形態の補助ヒータ64のように、ヒートポンプやPTCヒータ88の作動を検出して、作動が検出された場合にエンジンオン要求閾値を変更するようにしてもよい。この場合のエンジンオン要求閾値は、第2実施形態で説明したように、(通常エンジンオン要求閾値T)>(PTCヒータ88作動時のエンジンオン要求閾値T)>(ヒートポンプ作動時のエンジンオン要求閾値T)である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1実施形態形態に係わる車両用空調装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係わる車両用空調装置における、目標吹出し温度に応じて予め定めたエンジン水温でエンジンオン要求を行うための通常エンジンオン要求閾値と、省動力エンジンオン要求閾値の一例を示す図である。
【図3】エアコンECUで行われるオートエアコン制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係わる車両用空調装置のエアコンECUで行われるエンジンオン要求制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置における、目標吹出し温度に応じて予め定めたエンジン水温でエンジンオン要求を行うための通常エンジンオン要求閾値と、通常エンジンオン要求閾値よりも低い水温でエンジンオン要求を行うためのエンジンオン要求閾値の一例を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係わる車両用空調装置のエアコンECUで行われるエンジンオン要求閾値の変更処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0113】
10、70 車両用空調装置
38 ヒータコア
46、47 エアコンECU
52 外気温センサ
54 車室内温度センサ
56 日射センサ
58 温度設定装置
60 エバポレータ後温度センサ
62 エンジンECU
64 補助ヒータ
72 室内コンデンサ
74 3方弁
76 室外熱交換器
78 逆止弁
80、82 電磁弁
84 膨張弁
86 タンク
88 PTCヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内を空調するための空調風の目標吹出し温度を算出して該目標吹出し温度となるように車室内を空調する空調手段と、
前記空調手段の暖房時の熱源を加熱する加熱手段によって加熱された前記熱源の温度に対応する状態量を取得する状態量取得手段と、
乗員に対して前記空調手段とは別に設けられた車室内を暖房する補助ヒータが使用されているか否かを検出する検出手段と、
前記状態量取得手段によって取得した前記状態量が、前記目標吹出し温度に応じて予め定められた前記状態量の閾値以下の場合に、前記加熱手段に熱源を加熱するための要求を行う要求手段と、
前記検出手段によって前記補助ヒータが使用されていることが検出された場合に、前記閾値を小さい値に変更する変更手段と、
を備えた車両用空調装置。
【請求項2】
車室内を空調する空調風の目標吹出し温度を算出して該目標吹出し温度となるように車室内を空調する空調手段と、
前記空調手段の暖房時の熱源となるエンジン冷却水の水温を取得する取得手段と、
乗員に対して前記空調手段とは別に設けられた車室内を暖房する補助ヒータが使用されているか否かを検出する検出手段と、
前記取得手段によって取得した前記水温が、前記目標吹出し温度に応じて予め定められた前記水温の閾値以下の場合に、エンジン始動要求を行う要求手段と、
前記検出手段によって前記補助ヒータが使用されていることが検出された場合に、前記閾値を小さい値に変更する変更手段と、
を備えた車両用空調装置。
【請求項3】
前記補助ヒータは、乗員接触型ヒータ、電気ヒータ、及びヒートポンプの少なくとも1つのヒータを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記補助ヒータは、ヒートポンプ及び電気ヒータを含み、前記変更手段は、前記閾値を小さい値に変更する際に、電気ヒータ使用時よりもヒートポンプ使用時の方が小さい値になるように前記閾値を変更することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
車室内を空調する空調風の目標吹出し温度を算出して該目標吹出し温度となるように車室内を空調する空調手段と、
前記空調手段の暖房時の熱源となるエンジン冷却水の水温を取得する取得手段と、
乗員に対して前記空調手段とは別に設けられた車室内を暖房するためのヒートポンプ及び電気ヒータと、
前記取得手段によって取得した前記水温が、前記目標吹出し温度に応じて予め定められた前記水温の閾値以下の場合に、エンジン始動要求を行う要求手段と、
外気温が所定温度より低い場合に、前記電気ヒータを作動させて、前記閾値を小さい値に変更すると共に、外気温が所定温度以上の場合に、前記ヒートポンプを作動させて、前記電気ヒータ作動時よりも小さい値に変更する変更手段と、
を備えた車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−308133(P2007−308133A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54306(P2007−54306)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】