説明

車両用空調装置

【課題】DEF吹出口より出る暖かい空調風が乗員の頭部付近温度を上昇させることを緩和し快適な空間を維持しながら、窓ガラスの曇りを防止することを可能とする車両用空調装置を提供する。
【解決手段】圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、蒸発器と、該蒸発器から通風ダクト内の下流側に向けて送風する送風機とを備え、通風ダクトには、蒸発器を通過した空調風の一部をフロントガラス内面に向けて吹き出し可能なDEF吹出口と、空調風の一部を通風ダクトからDEF吹出口からの空調風よりも乗員側に向けて吹き出し可能なDEF手前吹出口と、空調風の一部を通風ダクトから乗員の上半身に向けて吹き出し可能なVENT吹出口と、空調風の一部を通風ダクトから乗員の足元に向けて吹き出し可能なFOOT吹出口とが配設され、DEF吹出口から空調風の一部が吹き出されるときにDEF手前吹出口から空調風の一部が吹き出されることを特徴とする車両用空調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調風によって乗員が感じる不快感を取り除くことが可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載される車両用空調装置では、雨季や夏季の雨や集中豪雨、冬季の降雪時などでも露点温度の条件により全吹出口またはDEF、VENT吹出口またはDEF、FOOT吹出口または、DEF吹出口より吹出される空調風によってフロントガラスの曇りを防ぐために空調制御を行い、乗員の安全性向上と快適性維持を両立しようとしている。しかし、DEF吹出口から暖かい風が出るために、乗員の頭部付近温度が上昇し、乗員によっては不快感や眠気が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−002267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、上記のような従来の車両用空調装置の問題点に鑑み、DEF吹出口より出る暖かい空調風が乗員の頭部付近温度を上昇させることを緩和し快適な空間を維持しながら、窓ガラスの曇りを防止することを可能とする車両用空調装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させる膨張機構と、膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器から通風ダクト内の下流側に向けて送風する送風機とを備え、前記通風ダクトには、前記蒸発器を通過した空調風の少なくとも一部をフロントガラス内面に向けて吹き出し可能なDEF吹出口と、前記空調風の少なくとも一部を前記通風ダクトからDEF吹出口からの空調風よりも乗員側に向けて吹き出し可能なDEF手前吹出口と、前記空調風の少なくとも一部を前記通風ダクトから乗員の上半身に向けて吹き出し可能なVENT吹出口と、前記空調風の少なくとも一部を前記通風ダクトから乗員の足元に向けて吹き出し可能なFOOT吹出口とが配設され、DEF吹出口から前記空調風の少なくとも一部が吹き出されるときにDEF手前吹出口から前記空調風の少なくとも一部が吹き出されることを特徴とするものからなる。
【0006】
このような本発明の車両用空調装置によれば、DEF吹出口から空調風の一部が吹き出されるときにDEF手前吹出口からも空調風が吹き出されることにより、乗員の頭部付近の空気温度上昇を抑制しつつ、水滴付着により窓ガラスが曇ることが防止可能となる。
【0007】
本発明の車両用空調装置において、DEF手前吹出口が、DEF吹出口よりも前記通風ダクトの下流側に配置されていることが好ましい。DEF手前吹出口がDEF吹出口よりも下流側に配置されることにより、通風ダクトの構成を簡素化することができ、ひいては加工の容易化も図られる。
【0008】
また、前記通風ダクト内には、DEF吹出口を閉止可能なDEF吹出口モードダンパと、DEF手前吹出口を閉止可能なDEF手前吹出口モードダンパと、DEF手前吹出口モードダンパと協働して前記加熱器を通過した温風をDEF手前吹出口に案内可能な温風バイパスドアとが配設されていることが好ましい。このようなDEF吹出口モードダンパ、DEF手前吹出口モードダンパおよび温風バイパスドアが通風ダクト内に配設されることにより、通風ダクト内の通風経路を状況に応じて適切に形成することが可能となる。また、このようなダンパおよびドアが配設されることにより、DEF吹出口モードダンパとDEF手前吹出口モードダンパがともに吹出口を閉止している状態から、DEF吹出口モードダンパとDEF手前吹出口モードダンパをともに開放状態として、DEF吹出口およびDEF手前吹出口から空調風を吹き出すように通風経路を迅速に形成することが容易となり、空調制御の追従性を向上させることが可能となる。
【0009】
さらに、前記温風バイパスドアの開度は、DEF吹出口における吹出目標温度、室内温度、室内湿度、前記蒸発器の出口における前記空調風の温度、および前記エアミックスダンパの開度から決定されることが好ましい。このように温風バイパスドアの開度が決定されることにより、DEF手前吹出口モードダンパと温風バイパスドアを適切に協働させることが可能となる。
【0010】
このような本発明の車両用空調装置において、DEF手前吹出口モードダンパの開度は、前記送風機の送風量、前記フロントガラスの温度と室内露点温度の差分、DEF吹出口における吹出目標温度、室内温度、室内湿度、前記蒸発器の出口における前記空調風の温度、および前記エアミックスダンパの開度から決定されることが好ましい。とくにフロントガラスの温度と室内露点温度の差分からDEF手前吹出口モードダンパの開度を決定することにより、上記差分の大きさに応じてDEF手前吹出口モードダンパのダンパ開度を調整することが可能となり、フロントガラス近傍の温度状況に応じた適切な空調制御が実現される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両用空調装置によれば、車両用空調装置にDEF手前吹出口を追設したことで、防曇制御を行いながらDEF吹出口より空調風を吹き出すモードを選択しているときに、DEF手前吹出口からも空調風を吹き出させることで、乗員頭部付近温度の上昇を抑えることができる。このように、本発明の車両用空調装置を採用することによって、乗員の安全性と快適性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施態様に係る車両用空調装置の概略フロー図であり、(A)はVENTモードの通風経路、(B)はDEF/FOOTモードの通風経路を示す。
【図2】本発明の他の実施態様に係る車両用空調装置の概略フロー図であり、(A)はVENTモードの通風経路、(B)はDEF/FOOTモードの通風経路を示す。
【図3】図1または図2の車両用空調装置の各吹出口の位置関係を示す斜視図である。
【図4】図1または図2の車両用空調装置を用いた車両の車室内空気の流れを示し、(A)は車室内の概略縦断面図、(B)は車室内空気の流れを図式的に示した概念図である。
【図5】本発明に係る車両用空調装置における制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る車両用空調装置の概略フローを示している。図1(A)に通風経路が示されるVENTモードにおいて、DEF手前吹出口モードダンパ10、DEF吹出口モードダンパ11およびFOOT吹出口モードダンパ13は閉止状態にあり、それぞれ、DEF吹出口の吹出方向よりも乗員側に向けて開口するDEF手前吹出口20、フロントガラス内面に向けて開口するDEF吹出口21および乗員の足元に向けて開口するFOOT吹出口23を閉止している。この状態においてVENT吹出口モードダンパ12は、乗員の上半身に向けて開口するVENT吹出口22を開放している。また、DEF手前用温風バイパスドア14は閉止状態にあり、加熱器8を通過した空調風としての温風をバイパスしないようになっている。
【0014】
図1(A)において、車両用空調装置は、空調ユニット1と、蒸発器7、凝縮器16、圧縮機17および膨張弁18からなる冷凍サイクルとから構成されている。空調ユニット1は、さらに以下のように構成されている。すなわち、内外気切替ダンパ5の状態に応じ内気導入口3または外気導入口4から通風ダクト2内に取り込まれる空気は、送風機6によって蒸発器7に向けて送風され、蒸発器7において冷凍サイクルの冷媒と熱交換することにより温度および湿度が調整された空調風となる。空調風の湿度は、蒸発器7のすぐ下流に設置される蒸発器出口空気湿度センサ15で検知され、A/Cコントローラ19に送信される。
【0015】
蒸発器7を通過した空調風は、エアミックスダンパ9の開度に応じた割合で、一部が加熱器8を通過し他の一部が加熱器8をバイパスして通風ダクト2内を流通し、下流において合流し、VENT吹出口22から吹き出される。なお、通風ダクト内に記した波線および矢印は、空調風の流れ方向を示している。
【0016】
図1(B)に通風経路が示されるDEF/FOOTモードにおいて、空調ユニット1の通風経路は、上述のVENTモードにおける通風経路から以下のように変更される。すなわち、VENTモードの場合とは逆に、DEF手前吹出口モードダンパ10、DEF吹出口モードダンパ11およびFOOT吹出口モードダンパ13は開放状態にあり、それぞれ、DEF吹出口の吹出方向よりも乗員側に向けて開口するDEF手前吹出口20、フロントガラス内面に向けて開口するDEF吹出口21および乗員の足元に向けて開口するFOOT吹出口23を開放する。また、VENT吹出口モードダンパ12は、乗員の上半身に向けて開口するVENT吹出口22を閉止する。さらに、DEF手前用温風バイパスドア14は開放される。
【0017】
蒸発器7を通過した空調風は、エアミックスダンパ9の開度に応じた割合で、一部が加熱器8を通過し他の一部が加熱器8をバイパスして通風ダクト2内を流通する。ここで、加熱器8をバイパスする通風経路側に設けられたDEF手前吹出口モードダンパ10がDEF手前吹出口20を開放しているので、加熱器8をバイパスした空調風の多くはDEF手前吹出口20から吹き出される。一方、加熱器8を通過した空調風としての温風も、DEF手前用温風バイパスドア14の開度に応じた割合で、一部がDEF手前吹出口モードダンパ10を経てDEF手前吹出口20から吹き出される。DEF手前吹出口20から吹き出されなかった残りの空調風は、DEF吹出口モードダンパ11またはFOOT吹出口モードダンパ13を経て、それぞれDEF吹出口21またはFOOT吹出口23から吹き出される。
【0018】
上記説明においては、DEF/FOOTモードにおいてDEF手前吹出口20から空調風が吹き出されることのみを示したが、DEF/FOOTモード以外のモードにおいても、DEF吹出口21から空調風が吹き出すときには、DEF手前吹出口20からも空調風を吹き出すようにする。ゆえに、本発明においては、DEF吹出口21のみから空調風を吹き出すDEFモード、DEF吹出口21とVENT吹出口22から空調風を吹き出すDEF/VENTモード、DEF吹出口21とFOOT吹出口23から空調風を吹き出すDEF/FOOTモードおよび、これら3つの吹出口21〜23から空調風を吹き出すDEF−B/L(DEF−バイレベル)モードにおいて、DEF手前吹出口20から空調風を吹き出すようにする。
【0019】
図2は、本発明の他の実施態様に係る車両用空調装置の概略フローを示している。上述の図1との装置構成上の相違点は、図2において、図1におけるDEF手前吹出口モードダンパ10とDEF吹出口モードダンパ11の配置、およびDEF手前吹出口20とDEF吹出口21の配置がそれぞれ入れ替わっている点のみである。すなわち、図2においては、DEF手前吹出口20がDEF吹出口21よりも通風ダクト2内の下流に設けられているので、通風ダクト2がねじれるなどして構造が複雑化することなく、比較的短い長さで簡素なダクトを構成することが可能となり、ひいては加工の容易化も図られる。また、このような配置の相違により、図2における空調風の流れは図1の場合と異なってくるので、空調風の流れについて以下に詳しく説明する。
【0020】
図2(A)に通風経路が示されるVENTモードにおいて、DEF手前吹出口モードダンパ10、DEF吹出口モードダンパ11およびFOOT吹出口モードダンパ13は閉止状態にあり、それぞれ、DEF吹出口の吹出方向よりも乗員側に向けて開口するDEF手前吹出口20、フロントガラス内面に向けて開口するDEF吹出口21および乗員の足元に向けて開口するFOOT吹出口23を閉止している。この状態においてVENT吹出口モードダンパ12は、乗員の上半身に向けて開口するVENT吹出口22を開放している。また、DEF手前用温風バイパスドア14は閉止状態にあり、加熱器8を通過した空調風としての温風をバイパスしないようになっている。蒸発器7を通過した空調風は、エアミックスダンパ9の開度に応じた割合で、一部が加熱器8を通過し他の一部が加熱器8をバイパスして通風ダクト2内を流通し、下流において合流し、VENT吹出口22から吹き出される。
【0021】
図2(B)に通風経路が示されるDEF/FOOTモードにおいて、空調ユニット1の通風経路は、上述のVENTモードにおける通風経路から以下のように変更される。すなわち、VENTモードの場合とは逆に、DEF手前吹出口モードダンパ10、DEF吹出口モードダンパ11およびFOOT吹出口モードダンパ13は開放状態にあり、それぞれ、DEF吹出口の吹出方向よりも乗員側に向けて開口するDEF手前吹出口20、フロントガラス内面に向けて開口するDEF吹出口21および乗員の足元に向けて開口するFOOT吹出口23を開放する。また、VENT吹出口モードダンパ12は、乗員の上半身に向けて開口するVENT吹出口22を閉止する。さらに、DEF手前用温風バイパスドア14は開放される。
【0022】
蒸発器7を通過した空調風は、エアミックスダンパ9の開度に応じた割合で、一部が加熱器8を通過し他の一部が加熱器8をバイパスして通風ダクト2内を流通する。そして、加熱器8を通過した空調風としての温風は、DEF手前用温風バイパスドア14の開度に応じた割合で、一部がDEF手前吹出口モードダンパ10を経てDEF手前吹出口20から吹き出され、他の一部は、DEF吹出口モードダンパ11またはFOOT吹出口モードダンパ13を経て、それぞれDEF吹出口21またはFOOT吹出口23から吹き出される。一方、加熱器8をバイパスした空調風は、DEF吹出口21またはDEF手前吹出口20から吹き出される。
【0023】
図3は、図1または図2の車両用空調装置における、DEF手前吹出口20、DEF吹出口21およびVENT吹出口22の位置関係を示す斜視図である。このように、DEF手前吹出口20は、車両のダッシュボード26上でDEF吹出口21よりも乗員からみて手前側に配設される。
【0024】
図4は、図1または図2の車両用空調装置を用いた車両の車室内空気の流れを示しており、(A)は車室内の概略縦断面図、(B)は車室内空気の流れを図式的に示した概念図である。以下、とくに冬場において、DEF吹出口21から温風が吹き出される場合を想定して車室内空気の流れを説明する。図4(A)に示すように、DEF手前吹出口20から吹き出された冷風(空調風)は、DEF吹出口21から吹き出された温風が直接に、座席25に座る乗員の頭部に当たらないように、フロントガラス24に沿ってエアカーテンを形成する。このエアカーテン効果により、乗員に不快感や眠気を発生させることが防止される。とくに、吹出風量比(DEF吹出口21からの吹出風量/DEF手前吹出口20からの吹出風量)を4/3前後となるように、図1または図2の送風機6の送風量、DEF吹出口モードダンパ11の開度、またはDEF手前吹出口モードダンパ10の開度を調節することが望ましい。
【0025】
上記吹出風量比を調節するにあたって、DEFモードを選択した場合には、基本的には、DEF吹出口21の風量は最大となり、DEF手前吹出口20の吹出風量はDEF手前吹出口モードダンパ10動作手段(風量算出手段)により決定される。一方、FOOT/DEFモードを選択した場合には、DEF吹出口21の吹出風量は後述の目標吹出温度Tocにより決定され、DEF手前吹出口20の吹出風量はDEFモード選択時と同様に、DEF手前吹出口モードダンパ10動作手段により決定される。さらに、送風機6の送風量により吹出風量比を設定する場合には、各風量段階において、DEF吹出口21およびDEF手前吹出口20からの吹出風量が一定となるように調節する。
【0026】
図4(B)には、図4(A)の車室内の空気の流れが図式的に示されている。図中の角度α、β、γはそれぞれ、フロントガラス24の傾斜面、DEF吹出口21からの吹出方向、DEF手前吹出口20からの吹出方向が、ダッシュボード26の上面となす角度を示している。ここで、DEF手前吹出口20やDEF吹出口21からの吹出方向は、各吹出口に配設されたルーバーの設置角度により設定することができ、角度γは、αよりも大きく、β(図では約90°)よりも小さく設定されることが好ましい。α<γ<βの大小関係が成立することにより、前述のエアカーテンが適切に形成可能となる。
【0027】
以上の説明は、冬場を想定したものであるが、夏場において、DEF吹出口21から冷風が出る場合においても、上記吹出風量比を調節することによって、冷え過ぎた空気が乗員の頭部に当たり乗員に不快感を与えることが防止可能である。この場合には、上記吹出風量比は2/1程度に調節することが望ましい。
【0028】
本発明においては、適宜、以下のような各種の装置構成を採用することができる。すなわち、本発明の車両用空調装置において、ガラス温度を検知できるセンサをフロントガラス24に設けてもよい。また、当該センサはサイドガラス、リアガラスにも設けてよい。さらに、当該センサを搭載できないときは、外気温度及び日射量及び車室内温度等の情報からガラス温度を推定するようにしてもよい。
【0029】
また、車室内の湿度を検知するための車室内湿度センサを設け、車室内温度と車室内湿度を元に露点温度を推定してもよい。または、車室内露点温度を検知するセンサを設けてもよい。さらに、外気の湿度を検知するための外気湿度センサを設けてもよい。車両に搭載された受信装置を介して気象衛星、気象庁、電力会社から外気湿度、あるいは、降水量などの情報を参照するようにしてもよい。
【0030】
本発明の車両用空調装置における圧縮機は、クラッチで車両のエンジンと接続され駆動するもののほか、クラッチレスタイプのものや電動モータにより駆動するものでもよい。また、圧縮機の容量を変化させることのできる外部可変容量圧縮機であっても、固定容量圧縮機であってもよい。
【0031】
蒸気圧縮式冷凍サイクルに用いられる冷媒としては、フロン系冷媒や二酸化炭素を用いることができる。また、蒸気圧縮式冷凍サイクルの膨張機構として、電子膨張弁、あるいは、温度式膨張弁、あるいは、差圧式膨張弁などを用いることができる。
【0032】
図5は、本発明に係る車両用空調装置における制御方法の一例を示すフローチャートである。この制御方法においては、吹出口モードが、DEF吹出口から空調風が吹き出されるモードである場合には、DEF手前吹出口から空調風を吹き出すモード(DEF手前吹出口制御モード)に移行する。一方、吹出口モードが、DEF吹出口から空調風が吹き出されないモードである場合には、DEF手前吹出口制御モードに移行せずに、吹出口モードの判定を繰り返す。DEF手前吹出口制御モードへの移行後は、DEF手前吹出口目標吹出口温度、DEF手前吹出口風量、DEF手前吹出口モードダンパ制御変数の各パラメータを算出し、DEF手前吹出口モードダンパを動作させて空調風の吹き出し状態を制御する。その後、STARTに戻り、パラメータを取得し、再度制御フローを繰り返す。以下、図5に即して当該制御方法を説明する。
【0033】
(1)STEP1
各制御手段に必要なパラメータ(ガラス温度Tg、日射量Rsun、車室内温度Tin、車室内湿度Hin、外気温度Tamb、等)のデータを読み込む。
(2)STEP2
車室内露点温度算出手段により車室内露点温度Tindewを検知もしくは算出する。外気露点温度算出手段により外気露点温度Tambdewを算出する。
(3)STEP3
DEF吹出口目標吹出温度算出手段により、DEF吹出口より吹き出される空調風のDEF吹出口における目標温度(目標吹出温度Toc)を算出する。
(4)STEP4
吹出口モード選択手段により吹出口モードを選択する。吹出口モードModeがB/Lモードの時にTindew>Tgまたは、Tambdew>Tgになった場合に、吹出口モードModeがDEF−B/Lモードに切り替わるものとする。また、吹出口モードModeがVENTモードの時にTindew>Tgまたは、Tambdew>Tgになった場合に、吹出口モードModeがDEF/VENTモードに切り替わるものとする。
(5)STEP5
DEF吹出口モード判定手段により、吹出口モードModeが、DEF吹出口から空調風が吹き出すモードかどうかを判断する。
(6)STEP6
STEP5で、吹出口モードModeが、DEF吹出口より空調風を吹き出すモードであると判断された場合、DEF手前吹出口より吹き出される空調風のDEF手前吹出口における目標温度TocfをDEF手前吹出口目標温度算出手段によって算出する。
(7)STEP7
STEP5で、吹出口モードModeが、DEF吹出口より空調風を吹き出すモードであると判断された場合、DEF手前吹出口より吹き出される空調風のDEF手前吹出口における風量MAwdoorをDEF手前吹出口風量算出手段によって算出する。
(8)STEP8
STEP6で算出された値になるように、冷凍サイクル、空調ユニットを、DEF手前吹出口モードダンパ制御手段によって制御し、DEF手前吹出口より空調風を吹き出すモード(DEF手前吹出口制御モードModef)を実行する。
(9)STEP1に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る車両用空調装置は、各種車両における車室内の空気温度および空気湿度を調節するために広く利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 空調ユニット
2 通風ダクト
3 内気導入口
4 外気導入口
5 内外気切替ダンパ
6 送風機
7 蒸発器
8 加熱器
9 エアミックスダンパ
10 DEF手前吹出口モードダンパ
11 DEF吹出口モードダンパ
12 VENT吹出口モードダンパ
13 FOOT吹出口モードダンパ
14 DEF手前用温風バイパスドア
15 蒸発器出口空気温度センサ
16 凝縮器
17 圧縮機
18 膨張弁
19 A/Cコントローラ
20 DEF手前吹出口
21 DEF吹出口
22 VENT吹出口
23 FOOT吹出口
24 フロントガラス
25 座席
26 ダッシュボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させる膨張機構と、膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器から通風ダクト内の下流側に向けて送風する送風機とを備え、前記通風ダクトには、前記蒸発器を通過した空調風の少なくとも一部をフロントガラス内面に向けて吹き出し可能なDEF吹出口と、前記空調風の少なくとも一部を前記通風ダクトからDEF吹出口からの空調風よりも乗員側に向けて吹き出し可能なDEF手前吹出口と、前記空調風の少なくとも一部を前記通風ダクトから乗員の上半身に向けて吹き出し可能なVENT吹出口と、前記空調風の少なくとも一部を前記通風ダクトから乗員の足元に向けて吹き出し可能なFOOT吹出口とが配設され、DEF吹出口から前記空調風の少なくとも一部が吹き出されるときにDEF手前吹出口から前記空調風の少なくとも一部が吹き出されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
DEF手前吹出口が、DEF吹出口よりも前記通風ダクトの下流側に配置されている、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記通風ダクト内には、DEF吹出口を閉止可能なDEF吹出口モードダンパと、DEF手前吹出口を閉止可能なDEF手前吹出口モードダンパと、DEF手前吹出口モードダンパと協働して前記加熱器を通過した温風をDEF手前吹出口に案内可能な温風バイパスドアとが配設されている、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記温風バイパスドアの開度は、DEF吹出口における目標吹出温度、室内温度、室内湿度、前記蒸発器の出口における前記空調風の温度、および前記エアミックスダンパの開度から決定される、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
DEF手前吹出口モードダンパの開度は、前記送風機の送風量、前記フロントガラスの温度と室内露点温度の差分、DEF吹出口における目標吹出温度、室内温度、室内湿度、前記蒸発器の出口における前記空調風の温度、および前記エアミックスダンパの開度から決定される、請求項3または4に記載の車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218961(P2011−218961A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90237(P2010−90237)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】