説明

車両用衝撃吸収具及び車両用バンパ装置

【課題】軸方向に対し斜めから荷重が入力された際のサイドメンバの折れを抑制することができる車両用衝撃吸収具及び車両用バンパ装置を提供する。
【解決手段】軸圧縮荷重を蛇腹変形で吸収して衝撃エネルギーを吸収する車両用衝撃吸収具において、車両前後方向に開口する筒状の本体部21と、本体部21に接続され、本体部21内を区画して車両幅方向内側及び外側にそれぞれ第1中空部C1及び第2中空部C2を形成する第1リブ22と、本体部21及び第1リブ22に接続され、第1中空部C1及び第2中空部C2のうち、少なくとも第2中空部C2を車両上下方向で複数に分割する第2リブ23とを備え、第1中空部C1に区画形成される中空部の数は、第2中空部C2に区画形成される中空部の数よりも少なく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝撃吸収具及び車両用バンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用衝撃吸収具としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図8(a)(b)は、こうした従来の車両用衝撃吸収具80を示す平面図及び正面図である。同図に示すように、この車両用衝撃吸収具80は、車両幅方向に延びるバンパリインホース16の端部において、該バンパリインホース16と車両前後方向に延びるサイドメンバ11との間に介在されている。車両用衝撃吸収具80は、略田の字の一定断面形状を有するアルミニウム合金の押出材からなり、例えば車両衝突に伴いその押出しの軸方向に圧縮の衝撃荷重(軸圧縮荷重)を受けた際に、オイラー座屈を抑えて軸圧縮変形、いわゆる蛇腹変形することで衝撃エネルギーを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3520959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この車両用衝撃吸収具80に対し、図8(a)に示すように、例えば車両が障害物Sに斜突するなど、車両用衝撃吸収具80の軸方向に対し車両幅方向外側寄りの斜めから荷重Fが入力されたとする。すなわち、車両幅方向内側から外側に向かうに従い、車両前後方向に車両用衝撃吸収具80側に近付くように角度θ(例えば10°)で傾斜する障害物Sに衝突したとする。この際、図8(b)に示すように、車両幅方向内側及び車両幅方向中央部の入力荷重が大きくなり、車両幅方向外側の入力荷重が小さくなることが確認されている。この場合、車両用衝撃吸収具80に加わる荷重が車両幅方向で不均等になることで、力のモーメントMが発生し、前記サイドメンバ11が折れる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、軸方向に対し斜めから荷重が入力された際のサイドメンバの折れを抑制することができる車両用衝撃吸収具及び車両用バンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両幅方向に延びるバンパリインホースの端部において、該バンパリインホースと車両前後方向に延びるサイドメンバとの間に介在され、軸圧縮荷重を蛇腹変形で吸収して衝撃エネルギーを吸収する車両用衝撃吸収具において、車両前後方向に開口する筒状の本体部と、前記本体部に接続され、該本体部内を区画して車両幅方向内側及び外側にそれぞれ第1中空部及び第2中空部を形成する第1リブと、前記本体部及び前記第1リブに接続され、前記第1中空部及び前記第2中空部のうち、少なくとも前記第2中空部を車両上下方向で複数に分割する第2リブとを備え、前記第1中空部に区画形成される中空部の数は、前記第2中空部に区画形成される中空部の数よりも少なく設定されていることを要旨とする。
【0007】
同構成によれば、前記第1中空部に区画形成される中空部の数は、前記第2中空部に区画形成される中空部の数よりも少なく設定されていることで、軸圧縮荷重の入力時に、前記第1中空部よりも中空部の数が多い前記第2中空部、即ち前記第2リブにより相対的に増強された前記第2中空部に荷重を集中させることができる。従って、例えば車両が障害物に斜突するなど、前記本体部の軸方向に対し車両幅方向外側寄りの斜めから荷重が入力される際に、前記第2中空部に荷重を集中させることで、入力荷重が大きくなりがちな車両幅方向内側に加わる荷重、即ち前記第1中空部に加わる荷重との間の不均等を緩和することができる。そして、前記第1中空部及び前記第2中空部(車両幅方向内側及び外側)に加わる不均等な荷重で生じる力のモーメントによって前記サイドメンバが折れることを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用衝撃吸収具において、前記本体部の前記第2中空部側の側壁の板厚を前記第1中空部側の側壁の板厚よりも大きく設定したことを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記本体部の前記第2中空部側の側壁の板厚を前記第1中空部側の側壁の板厚よりも大きく設定したことで、相対的に増強された前記第2中空部側に荷重を更に集中させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用衝撃吸収具において、前記本体部の車両幅方向両側の側壁にそれぞれ形成され、蛇腹変形の起点となる応力集中部を備え、前記応力集中部は、蛇腹変形の周期に合わせて前記本体部の前記両側壁に車両前後方向で互い違いに配置されていることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記本体部の前記両側壁には、蛇腹変形の周期に合わせて車両前後方向で互い違いに配置された応力集中部が形成されていることで、蛇腹変形時の荷重をより安定化することができ、ひいてはより効率的に衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用衝撃吸収具において、前記本体部の前記第1中空部側の側壁には前記第2リブが接続されておらず、前記第1中空部に区画形成される中空部の数は1つであって、前記本体部の前記第1中空部側の前記側壁に形成される前記応力集中部は、前記第2リブの高さで車両上下方向に分断されることなく車両上下方向に延在することを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、例えば前記応力集中部を前記第2リブの高さで車両上下方向に分断して複数形成する場合に比べて、構造をより簡易化することができる。
請求項5に記載の発明は、車両の幅方向に延びるバンパリインホースの両端部において、該バンパリインホースと車両の前後方向に延びる一対のサイドメンバとの間にそれぞれ介在される一対のクラッシュボックスを備えた車両用バンパ装置において、前記クラッシュボックスとして、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用衝撃吸収具を備えることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、軸方向に対し斜めから荷重が入力された際のサイドメンバの折れを抑制することができる前記クラッシュボックスを備えた車両用バンパ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、軸方向に対し斜めから荷重が入力された際のサイドメンバの折れを抑制することができる車両用衝撃吸収具及び車両用バンパ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面図。
【図2】同実施形態を示す斜視図。
【図3】(a)(b)は、同実施形態及び従来形態をそれぞれ示す正面図。
【図4】(a)(b)は、同実施形態及び従来形態の各々において、車両の内側及び外側に分けてシミュレーションした変形量と荷重との関係を示すグラフ。
【図5】(a)(b)は、同実施形態及び従来形態の各々において、車両幅方向及び車両上下方向に3つずつに分けてシミュレーションした変形量と荷重との関係を示すグラフ。
【図6】同実施形態を示す側面図。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の変形形態を示す正面図。
【図8】(a)(b)は、従来形態を示す平面図及び正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車などの車両のフロント部分に適用される本実施形態に係る車両用バンパ装置を示す平面図である。同図に示されるように、車両幅方向両側には、例えば金属板からなり、断面略四角形の中空構造を有して車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ11が配設されている。これらサイドメンバ11は、ボデーの一部を構成する。なお、各サイドメンバ11の前端には、該サイドメンバ11の開口部を閉塞する態様で、例えば金属板からなる略四角形のブラケット12が溶接にて固着されている。
【0018】
車両用バンパ装置は、例えばアルミニウム合金の押出材からなり車両前後方向に延びて前記各ブラケット12の前面に取着される車両用衝撃吸収具としてのクラッシュボックス13を備える。一対のクラッシュボックス13は、例えば車両衝突に伴う軸圧縮荷重を蛇腹変形で吸収して衝撃エネルギーを吸収する。そして、各クラッシュボックス13の前端には、車両幅方向に延在する、例えば金属板からなるバンパリインホース16の各端部16aが取着されている。バンパリインホース16の各端部16aは、車両の意匠に合わせて車両幅方向外側に向かうに従い車両後方に向かうように傾斜しており、各クラッシュボックス13は、その前端が前方に突出するように山形に成形されている。詳説すると、クラッシュボックス13の前端は、車両幅方向外側から内側に向けてバンパリインホース16の端部16aの対向面16bに沿って傾斜し該対向面16bに近接又は当接する対向部14と、該対向部14の内側端からバンパリインホース16の端部16aの対向面16bから離間する様に傾斜する傾斜部15を有する。そして、対向部14と傾斜部15との連結部位が頂点となるように山形状を呈している。各クラッシュボックス13は、その前端の山形部分の車両幅方向外側において、バンパリインホース16の傾斜する各端部の対向面に近接又は当接する態様で該バンパリインホース16に締結されている。
【0019】
図2は、クラッシュボックス13を示す斜視図であり、図3(a)は、クラッシュボックス13を示す正面図である。なお、図3(b)には、便宜的に従来形態の車両用衝撃吸収具(クラッシュボックス)80を示している。図2及び図3(a)に示されるように、クラッシュボックス13は、その外形をなす略四角筒状の本体部21を有する。すなわち、この本体部21は、車両幅方向内側及び外側に配設された一対の側壁21a,21b並びにこれら側壁21a,21bの上端縁間及び下端縁間をそれぞれ連絡する蓋壁21c及び底壁21dを有しており、車両前後方向に開口する。
【0020】
また、クラッシュボックス13は、車両幅方向中央で蓋壁21c及び底壁21dの内壁面に接続され、本体部21内を区画して車両幅方向内側及び外側にそれぞれ第1中空部C1及び第2中空部C2を形成する第1リブ22を有する。さらに、クラッシュボックス13は、車両高さ方向中央で側壁21bの内壁面及び第1リブ22の対向面に接続され、第2中空部C2を車両上下方向で複数(2つ)に分割して車両幅方向上側及び下側にそれぞれ中空部C3,C4を形成する第2リブ23を有する。従って、第2中空部C2は、これら両中空部C3,C4で構成されている。そして、第1中空部C1に区画形成される中空部(C1)の数(1つ)は、第2中空部C2に区画形成される中空部(C3,C4)の数(2つ)よりも少なく設定されている。これにより、軸圧縮荷重の入力時に、第1中空部C1よりも中空部の数が多い第2中空部C2、即ち第2リブ23により相対的に増強された第2中空部C2に荷重が集中される。
【0021】
なお、第1中空部C1の開口面積S1と、第2中空部C2の開口面積S2(両中空部C3,C4の開口面積S3,S4を合計した開口面積(=S3+S4))とは、互いに略同等(S1=S2)に設定されている。また、両中空部C3,C4の開口面積S3,S4は、互いに略同等に設定されている(S1=S2)。また、前記本体部21の一方の側壁21a、蓋壁21c及び底壁21dの板厚は互いに同等に設定されており、且つ、他方の側壁21bの板厚よりも小さく設定されており、且つ、第1及び第2リブ22,23の板厚よりも大きく設定されている。さらに、前記第1及び第2リブ22,23が本体部21と接続する部位、前記両リブ22,23が接続する部位、前記本体部21の角部をなす部位はそれぞれ湾曲形状に成形されている。クラッシュボックス13は、これら本体部21、第1リブ22及び第2リブ23を一体的に有して断面略一定に成形されている。
【0022】
次に、車両が障害物S(図8(a)参照)に斜突するなど、クラッシュボックス13(本体部21)の軸方向に対し車両幅方向外側寄りの斜めから荷重が入力された際の、吸収荷重と変形量との関係についてのシミュレーション結果を、図4及び図5に基づき従来形態の車両用衝撃吸収具80と比較して説明する。なお、このシミュレーションは、前述の角度θでクラッシュボックス13(又は車両用衝撃吸収具80)の軸方向に対し車両幅方向外側寄りの斜めから荷重を入力するときの推移をFEM(有限要素法)で解析したもので、比較に係る該当箇所の数値はその範囲全体の平均値として取得したものである。
【0023】
図4は、このような荷重を入力した際の車両幅方向内側の範囲A1及び車両幅方向外側の範囲A2の各々の推移を比較するもので、図4(a)に本実施形態のクラッシュボックス13のシミュレーション結果を、図4(b)に従来形態の車両用衝撃吸収具80のシミュレーション結果をそれぞれ示す。図4(b)に示されるように、従来形態の車両用衝撃吸収具80では、基本的に車両内側の範囲A1の方が車両外側の範囲A2よりも変形時の荷重が大きくなって、特に変形初期におけるそれらの間の荷重差ΔFが甚大となっている。これに対し、本実施形態のクラッシュボックス13では、図4(a)に示されるように、車両内側の範囲A1の方が車両外側の範囲A2よりも変形時の荷重が小さくなるように逆転して、特に変形初期におけるそれらの間の荷重差ΔFが低減されている。つまり、クラッシュボックス13では、第1中空部C1及び第2中空部C2に加わる荷重の間の不均等が緩和されている。従って、第1中空部C1及び第2中空部C2(車両幅方向内側及び外側)に加わる不均等な荷重で生じる力のモーメントによってサイドメンバ11が折れることが抑制される。
【0024】
一方、図5は、クラッシュボックス13及び車両用衝撃吸収具80を車両幅方向及び車両高さ方向にそれぞれ3つずつ、合計9つに分けたとして、前述の荷重を入力した際の中央部(以下、中−中ともいう)の範囲A3及び該中央部の車両幅方向内側の隣接部(以下、内−中ともいう)の範囲A4の各々の推移を比較するもので、図5(a)に本実施形態のクラッシュボックス13のシミュレーション結果を、図5(b)に従来形態の車両用衝撃吸収具80のシミュレーション結果をそれぞれ示す。クラッシュボックス13及び車両用衝撃吸収具80の9分割した範囲A3,A4以外の範囲については、範囲A4に準じて推移するため、その説明を割愛する。図5(b)に示されるように、従来形態の車両用衝撃吸収具80では、基本的に中−中の範囲A3の方が内−中の範囲A4よりも変形時の荷重が大きくなっている。一方、本実施形態のクラッシュボックス13でも、基本的に中−中の範囲A3の方が内−中の範囲A4よりも変形時の荷重が大きくなっているものの、車両用衝撃吸収具80に比べて全体的に低減されて、それらの間の荷重差も自ずと低減されている。つまり、特に中−中の範囲A3に関して、従来形態の車両用衝撃吸収具80に比べてクラッシュボックス13の変形時の荷重及びその集中が抑えられている。
【0025】
ここで、中−中の範囲A3の入力荷重が大きいと、図8(a)に示すように、前記ブラケット12が陥没する可能性があるが、前述のようにこのときの同荷重が抑えられていることで、このような陥没が抑制される。
【0026】
図6に、クラッシュボックス13を車両外側から見た側面図を示す。図2及び図6に示されるように、前記本体部21の側壁21bには、車両高さ方向に延在して第2中空部C2に突出する溝状の複数(6つ)の応力集中部26が形成される。これら応力集中部26は、第2リブ23を避けて上下2列前後3行の6カ所に配置されており、ブラケット12に近づくにつれて、前後の幅、内側への突出長ともに小さくなるように設定されている。
【0027】
一方、本体部21の側壁21aには、車両前後方向で応力集中部26と互い違いになるように配置され、車両高さ方向に延在して第1中空部C1に突出する溝状の複数(2つ)の応力集中部27が形成される。これら応力集中部27は応力集中部26とは異なり第2リブ23による干渉を受けないため、上下1列前後2行の2カ所に配置される。なお、応力集中部27が、ブラケット12に近づくにつれて前後の幅、外側への突出長の双方が小さくなるように設定されるのは応力集中部26と同様である。
【0028】
なお、応力集中部26,27の車両前後方向における互い違いの配置は、クラッシュボックス13の蛇腹変形の周期に合わせて設定されている。
次に、本実施形態の動作について説明する。図8に示すように、車両が障害物Sに斜突するなど、バンパリインホース16を介してクラッシュボックス13の軸方向に対し車両幅方向外側寄りの斜めから荷重Fが入力された際、クラッシュボックス13は軸方向へ圧縮荷重を受ける。このとき、既述のように、クラッシュボックス13の車両内側の範囲A1の方が車両外側の範囲A2よりも変形時の荷重が小さくなって、特に変形初期におけるそれらの間の荷重差ΔFが低減される。そして、第1中空部C1及び第2中空部C2に加わる荷重の間の不均等が緩和され、これに基づく力のモーメントによってサイドメンバ11が折れることが抑制される。加えて、クラッシュボックス13の中−中の範囲A3の変形時の荷重及びその集中が抑えられて、前記ブラケット12の陥没が抑制される。
【0029】
また、軸圧縮荷重を受けたクラッシュボックス13は、応力集中部26,27にその軸圧縮荷重を集中させ蛇腹変形を誘発させる。この際、応力集中部26,27は、前後の幅及び突出長が大きい前側から蛇腹変形を始める。応力集中部26,27は、蛇腹変形の周期に合わせて車両前後方向で互い違いに配置されていることから、クラッシュボックス13の蛇腹変形時の荷重をより安定化することができ、ひいてはより効率的に衝撃エネルギーの吸収を行うことができる。
【0030】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、第1中空部C1に区画形成される中空部(C1)の数は、第2中空部C2に区画形成される中空部(C3,C4)の数よりも少なく設定されていることで、軸圧縮荷重の入力時に、第1中空部C1よりも中空部の数が多い第2中空部C2、即ち第2リブ23により相対的に増強された第2中空部C2に荷重を集中させることができる。従って、例えば車両が障害物に斜突するなど、本体部21の軸方向に対し車両幅方向外側寄りの斜めから荷重が入力される際に、第2中空部C2に荷重を集中させることで、入力荷重が大きくなりがちな車両幅方向内側に加わる荷重、即ち第1中空部C1に加わる荷重との間の不均等を緩和することができる。そして、第1中空部C1及び第2中空部C2(車両幅方向内側及び外側)に加わる不均等な荷重で生じる力のモーメントによってサイドメンバ11が折れることを抑制することができる。
【0031】
(2)本実施形態では、本体部21の第2中空部C2側の側壁21bの板厚を第1中空部C1側の側壁21aの板厚よりも大きく設定したことで、相対的に増強された第2中空部C2側に荷重を更に集中させることができる。
【0032】
(3)本実施形態では、本体部21の両側壁21a,21bには、蛇腹変形の周期に合わせて車両前後方向で互い違いに配置された応力集中部27,26が形成されていることで、蛇腹変形時の荷重をより安定化することができ、ひいてはより効率的に衝撃エネルギーを吸収することができる。第1中空部が第2リブ23によって分断されないことで、車両内側壁から外側にむかって突出する応力集中部27を上下に亘って配設することができる。これによって、応力集中部27を2つに分断する場合に比べ、応力集中部27により荷重を集中させクラッシュボックス13を蛇腹変形に移行させやすくすることができるので、衝撃エネルギーの吸収を促進することができる。
【0033】
(4)本実施形態では、本体部21の第1中空部C1側の側壁21aに形成される応力集中部27は、第2リブ23の高さで車両上下方向に分断されることなく車両上下方向に延在することで、例えば応力集中部27を第2リブ23の高さで車両上下方向に分断して複数形成する場合に比べて、構造をより簡易化することができる。
【0034】
(5)本実施形態では、クラッシュボックス13の中−中の範囲A3(第1及び第2リブ22,23の交差部)の変形時の荷重及びその集中を抑えて、ブラケット12の陥没を抑制することができる。
【0035】
(6)本実施形態では、軸方向に対し斜めから荷重が入力された際のサイドメンバ11の折れを抑制することができるクラッシュボックス13を備えた車両用バンパ装置を提供することができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図7(a)に示すように、本体部21の側壁21aに達しない範囲で第2リブ23の広がる面に連続して、第1中空部C1内に突出するリブ30を備えていてもよい。
【0037】
・図7(b)に示すように、第1リブ22によって区画形成された第1中空部C1を2つの中空部C11,C12に区画形成するリブ31と、第2中空部C2を3つの中空部C13,C14,C15に区画形成するリブ32,33とを備えたクラッシュボックス35であってもよい。要は、第1中空部C1を区画形成する中空部の数よりも第2中空部C2を区画形成する中空部の数が多くなるように設定すればよい。
【0038】
・図7(c)に示すように、第2中空部を形成する中空部C21,C22が5角形になるように車両幅方向外側の上下の角部を面取りした本体部41を有するクラッシュボックス40であってもよい。このように、第2中空部側を多角化することで、軸圧縮荷重を第1中空部よりも第2中空部に大きく負荷させることができる。
【0039】
・図7(d)に示すように、本体部41の側壁21aに達しない範囲で第2リブ23の広がる面に連続して、第1中空部C1内に突出するリブ30を備えていてもよい。
・前記実施形態において、側壁21a,21bの板厚方向に貫通する応力集中部であってもよい。
【0040】
・本発明に係る衝撃吸収具を、例えばサイドメンバ11などその他の衝撃吸収用のフレームに適用してもよい。
・本発明は、車両のリヤ部分に適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
C1…第1中空部、C2…第2中空部、C3,C4,C11,C12,C13,C14,C15,C21,C22…中空部、11…サイドメンバ、13,35,40…クラッシュボックス、16…バンパリインホース、21,41…本体部、21a,21b…側壁、22…第1リブ、23…第2リブ、26,27…応力集中部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延びるバンパリインホースの端部において、該バンパリインホースと車両前後方向に延びるサイドメンバとの間に介在され、軸圧縮荷重を蛇腹変形で吸収して衝撃エネルギーを吸収する車両用衝撃吸収具において、
車両前後方向に開口する筒状の本体部と、
前記本体部に接続され、該本体部内を区画して車両幅方向内側及び外側にそれぞれ第1中空部及び第2中空部を形成する第1リブと、
前記本体部及び前記第1リブに接続され、前記第1中空部及び前記第2中空部のうち、少なくとも前記第2中空部を車両上下方向で複数に分割する第2リブとを備え、
前記第1中空部に区画形成される中空部の数は、前記第2中空部に区画形成される中空部の数よりも少なく設定されていることを特徴とする車両用衝撃吸収具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用衝撃吸収具において、
前記本体部の前記第2中空部側の側壁の板厚を前記第1中空部側の側壁の板厚よりも大きく設定したことを特徴とする車両用衝撃吸収具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用衝撃吸収具において、
前記本体部の車両幅方向両側の側壁にそれぞれ形成され、蛇腹変形の起点となる応力集中部を備え、
前記応力集中部は、蛇腹変形の周期に合わせて前記本体部の前記両側壁に車両前後方向で互い違いに配置されていることを特徴とする車両用衝撃吸収具。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用衝撃吸収具において、
前記本体部の前記第1中空部側の側壁には前記第2リブが接続されておらず、前記第1中空部に区画形成される中空部の数は1つであって、
前記本体部の前記第1中空部側の前記側壁に形成される前記応力集中部は、前記第2リブの高さで車両上下方向に分断されることなく車両上下方向に延在することを特徴とする車両用衝撃吸収具。
【請求項5】
車両の幅方向に延びるバンパリインホースの両端部において、該バンパリインホースと車両の前後方向に延びる一対のサイドメンバとの間にそれぞれ介在される一対のクラッシュボックスを備えた車両用バンパ装置において、
前記クラッシュボックスとして、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用衝撃吸収具を備えることを特徴とする車両用バンパ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−57158(P2011−57158A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211479(P2009−211479)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)