説明

車両用警告灯装置

【課題】車両の急制動時における警告灯の点滅動作(警報点滅動作)の視認性を向上できる車両用警告灯装置を提供すること。
【解決手段】この車両用警告灯装置は、車両の急制動を警告灯の作動により後続車に対して報知する。この車両用警告灯装置は、警告灯と、車両の走行速度を検出する車速度検出手段と、検出された車両の走行速度に基づき車両の急制動を検知すると共に前記警告灯の点灯状態を通常の点灯状態(以下、通常点灯という。)から点滅状態(以下、警報点滅という。)に切り替える制御ユニットとを含み構成される。そして、車両用警告灯装置は、警報点滅にかかる点滅パターンが消灯から開始されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用警告灯装置に関し、さらに詳しくは、車両の急制動時における警告灯の点滅動作(警報点滅動作)の視認性を向上できる車両用警告灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用警告灯装置には、特許文献1に記載される技術が知られている。従来の車両用警告灯装置は、車速を検出する車速センサと、車速センサからの出力信号により車速の減速率を演算すると共にその演算結果が設定値を越えた場合に一定速度でブレーキランプ(警告灯)を点滅させるためのランプ点滅信号を出力する演算制御回路と、この演算制御回路からの出力信号に応じてブレーキランプを点灯させるブレーキランプ点灯回路とを具備することを特徴とする。
【0003】
ここで、従来の車両警告灯装置では、ブレーキペダルが踏み込まれた後に車両が急制動状態にあるか否かが判断され、その後に、ブレーキランプの点滅動作が行われる。かかる構成では、ブレーキランプが点滅に先立って所定時間(ほぼ減速率の演算時間)の点灯を行うので、ブレーキランプの最初の点灯(点滅開始前の点灯)が間延びする。このため、警告灯の点滅が認識し難いという課題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−30826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてされたものであって、車両の急制動時における警告灯の点滅動作(警報点滅動作)の視認性を向上できる車両用警告灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる車両用警告灯装置は、車両の急制動を警告灯の作動により後続車に対して報知する車両用警告灯装置において、警告灯と、車両の走行速度を検出する車速度検出手段と、検出された車両の走行速度に基づき車両の急制動を検知すると共に前記警告灯の点灯状態を通常の点灯状態(以下、通常点灯という。)から点滅状態(以下、警報点滅という。)に切り替える制御ユニットとを含み、且つ、警報点滅にかかる点滅パターンが消灯から開始されることを特徴とする。
【0007】
この車両用警告灯装置では、警報点滅にかかる点滅パターンが消灯から開始されるので、警告灯の点滅遅れが防止される。これにより、最初の点灯時の間延びが防止されるので警報点滅動作の視認性が向上する利点がある。
【0008】
また、この発明にかかる車両用警告灯装置は、通常点灯の開始時から警報点滅による最初の消灯までの時間が、警報点滅時の点滅周期Tblinkにおける点灯時間に等しくなるように、通常点灯から警報点灯への切り替え時期が選択される。
【0009】
この車両用警告灯装置では、通常点灯の開始時から警報点滅による最初の消灯までの時間が、警報点滅時の点滅周期Tblinkにおける点灯時間に等しくなるよう構成される。かかる構成では、ブレーキペダルが踏み込まれた後の最初の点灯から、あたかも警報点滅動作が開始されているように見えるので、他の車両に対して自車の急制動状態が急ブレーキ直後から迅速に報知される利点がある。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる車両用警告灯装置によれば、警報点滅にかかる点滅パターンが消灯から開始されるので、警告灯の点滅遅れが防止される。これにより、最初の点灯時の間延びが防止されるので警報点滅動作の視認性が向上する利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施例の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0012】
図1は、この発明の実施例1にかかる車両用警告灯装置を示す構成図である。図2〜図4は、図1に記載した車両用警告灯装置の作用を示すフローチャート(図2)およびタイムチャート(図3および図4)である。図5は、図1に記載した車両用警告灯装置の変形例を示すタイムチャートである。
【0013】
[構成]
この車両用警告灯装置1は、車両が急減速や急停止など(以下、車両の急制動という。)を行うときに、警告灯5の点灯を通常時の点灯動作(以下、通常点灯動作という。)から点滅動作(以下、警報点滅動作という。)に切り替えて、車両の急制動を後続車に対して報知する機能を有する。車両用警告灯装置1は、ブレーキ信号検出部2と、車両速度検出部3と、制御ユニット4と、警告灯5とを含み構成される。
【0014】
ブレーキ信号検出部2は、車両のブレーキペダルが踏み込まれたことを検出して、その検出結果(以下、ブレーキ信号という。)を制御ユニット4に送る。このブレーキ信号検出部2は、例えば、圧力センサや接点式センサにより構成される。
【0015】
車両速度検出部3は、車両の走行速度を検出して、その検出結果(以下、速度信号という。)を制御ユニット4に送る。この車両速度検出部3は、例えば、パルスセンサやエンコーダにより構成される。なお、この実施例1では、(1)車両の走行時にて、車両速度検出部3が車両の走行速度を常時検出すると共に速度信号を制御ユニット4に常時送信する構成としても良いし、(2)制御ユニット4がブレーキ信号に基づいて車両の急制動状態を検知した場合にのみ、車両速度検出部3が車両の走行速度を検出して速度信号を制御ユニット4に送信する構成としても良い。
【0016】
制御ユニット4は、検出されたブレーキ信号および速度信号に基づいて、所定の演算処理を行うと共に警告灯5の点灯を駆動制御する機能を有する。この制御ユニット4は、例えば、CPU(central processing unit:中央演算処理装置)やECU(electrical central unit:電子制御ユニット)から成り、減速率演算部41と、駆動信号発生部42と、警告灯駆動部43とを含み構成される。なお、制御ユニット4の各部41〜43は、その作用を実現させるプログラムや電子回路などにより構成される。
【0017】
減速率演算部41は、車両速度検出部3からの速度信号に基づいて走行速度の減速率を算出すると共に、この減速率に基づいて車両の走行状態を判断する。具体的には、減速率演算部41は、所定のサンプリング時間における車両の減速率(減速量)を算出し、減速率が所定の閾値以上である場合に車両が急制動状態にあると判断する。なお、減速率の算出には、所定の演算時間Tcalcが必要となる。また、演算時間Tcalcは、警告灯5の点滅周期Tblinkに対して十分に短い(0<Tcalc≪Tblink)。
【0018】
駆動信号発生部42は、警告灯5を駆動するための所定の駆動信号を発生する。具体的には、駆動信号発生部42は、車両が通常の減速状態にある場合には通常点灯動作用の駆動信号を発生し、車両が急制動状態にある場合には警報点滅動作用の駆動信号を発生する。ここで、通常点灯動作用の駆動信号は、ステップ波状の信号であり、ブレーキペダルが踏み込まれている間、警告灯5を一定の点灯状態にて継続的に点灯させる(図3参照)。
【0019】
一方、警報点滅動作用の駆動信号は、所定の点滅周期Tblinkを有する矩形波状の信号であり、警告灯5を点滅周期Tblinkにて所定の回数(例えば、10[Hz]にて5回)だけ点滅させる(図4参照)。また、警報点滅動作用の駆動信号は、点滅周期Tblinkにおける警告灯5の消灯時間と点灯時間との比(矩形波のデューティー比)が等しい。また、この警報点滅動作用の駆動信号は、消灯から開始される点に特徴を有する。
【0020】
警告灯駆動部43は、駆動信号発生部42からの駆動信号に基づき警告灯5を駆動して、警告灯5を通常点灯動作もしくは警報点滅動作させる。なお、警告灯5の点灯動作(通常点灯および警報点滅)の切り替えは、(1)通常点灯動作用の駆動信号と警報点滅動作用の駆動信号との切り替えにより行われても良いし(図4参照)、(2)警報点滅動作用の駆動信号が通常点灯動作用の駆動信号に重ね合わされることにより行われても良い(図示省略)。かかる点灯動作の切り替えは、当業者自明の範囲内にて任意に選択可能である。
【0021】
警告灯5は、例えば、車両の後部左右に装備されるリアコンビネーションランプである。かかるリアコンビネーションランプは、ストップランプ、テールランプ、ターンシグナルランプ、バックランプ、その他のランプにより構成される。また、警告灯5の光源は、例えば、LED(light-emitting diode)により構成される。
【0022】
[作用]
この車両用警告灯装置1では、車両のブレーキペダルが踏まれると、警告灯5の点灯が以下のように駆動制御される(図2〜図4参照)。まず、ブレーキ信号検出部2がブレーキペダルの踏み込みの有無を検出してブレーキ信号を制御ユニット4に送る(ST1)。すると、このブレーキ信号を取得した制御ユニット4が、駆動信号を発生して警告灯5を通常点灯させる(ST2)(図3参照)。このとき、警告灯5の点滅数(消灯数)をカウントする内部カウンター(図示省略)がリセットされる(点滅数i=0となる)。
【0023】
次に、制御ユニット4が、車両速度検出部3からの速度信号を取得して(ST3)、車両の減速率を算出する(ST4)。そして、この減速率に基づいて、制御ユニット4が車両の走行状態(急制動状態にあるか否か)を判断する(ST5)。具体的には、減速率が所定の閾値よりも小さい場合には、車両が通常の減速状態にあると判断される。かかる場合には、警告灯5の通常点灯がそのまま維持され(ST6)、ブレーキペダルが踏まれている間、警告灯5が点滅することなく点灯し続ける(図3参照)。
【0024】
一方、減速率が所定の閾値以上である場合には、車両が急制動状態にあると判断される。かかる場合には、制御ユニット4が警報点滅動作用の駆動信号を発生して警告灯5を警報点滅させる(ST7)(図4参照)。具体的には、まず、ブレーキペダルが踏み込まれた直後には、警告灯5が通常点灯状態にある。そして、所定の演算時間Tcalc(および車両の走行状態の判断時間≒0)の経過後に、警告灯5の駆動信号が通常点灯用の駆動信号から警報点滅用の駆動信号に切り替えられる。これにより、警告灯5の点灯が通常点灯(非点滅状態)から警報点滅に切り替えられて、警告灯5が警報点滅動作を開始する。
【0025】
このとき、警告灯5は、消灯(OFF)から開始される点滅パターンにより点滅する。すなわち、警告灯5は、通常点灯にかかる点灯状態から演算時間Tcalcの経過後に一旦消灯され、その後に所定の点滅周期Tblinkにて消灯と点灯とを繰り返す。これにより、他の車両(ドライバー)に対して自車の急制動状態が報知される。
【0026】
そして、警報点滅では、警告灯5が所定回数(例えば、5回)点滅した後に点灯したままの状態(通常点灯時の駆動信号と同様の点灯状態)になる(図示省略)。なお、警告灯5の点滅数は、警報点滅動作時にて、制御ユニット4の内部カウンターによりカウントされている。その後、ブレーキペダルの踏み込みが解除されると、警告灯5が消灯する(図示省略)。
【0027】
[効果]
この車両用警告灯装置1では、警告灯5の警報点滅にかかる点滅パターンが消灯から開始されるので、警告灯5の点滅遅れが防止される。すなわち、車両の急制動時には、警告灯5が通常点灯状態から一旦消灯される(点灯状態が反転される)。このため、通常点灯時の点灯(減速率演算時間Tcalcにおける点灯)と、警報点滅時の点灯とが連続しない。したがって、従来の車両用警告灯装置のように警告灯5の点滅動作が点灯から開始される構成と比較して、最初の点灯時の間延びが防止されるので警報点滅動作の視認性が向上する。これにより、他の車両に対して自車の急制動状態が明確に報知されるので、後続車による追突事故等が未然に防止される利点がある。また、対向車や側方からの車両に対しても、同様に有益である。
【0028】
[変形例1]
なお、この車両用警告灯装置1では、警告灯5の光源がLEDにより構成されることが好ましい。かかる構成では、例えば、警告灯5の光源がハロゲンランプにより構成される場合と比較して、警告灯5の点灯速度(点滅にかかる応答速度)が迅速である。これにより、警告灯5の点滅遅れがより効果的に低減される利点がある。しかし、これに限らず、警告灯5の光源は、ハロゲンランプ、白熱灯により構成されても良い。
【0029】
[変形例2]
また、この車両用警告灯装置1では、警告灯5の警報点滅動作において、点滅周期Tblinkあたりの警告灯5の消灯時間と点灯時間との比(矩形波のデューティー比)が等しくなるように構成されている。かかる構成では、点滅時における警告灯5の視認性が向上するので、後続車による追突事故がより効果的に防止される点で好ましい。しかし、これに限らず、消灯時間と点灯時間との比は、任意に選択可能である。
【0030】
[変形例3]
また、この車両用警告灯装置1では、減速率の演算時間Tcalcの経過後に、直ちに警告灯5の点灯状態が通常点灯から警報点灯に切り替えられ、警告灯5が消灯される(図3参照)。しかし、これに限らず、ブレーキペダルが踏み込まれた後の最初の点灯(通常点灯時の点灯)が、警報点滅時での点灯時間と同一の点灯時間を有するように、通常点灯から警報点灯への切り替え時期が選択される構成が好ましい(図5参照)。具体的には、演算時間Tcalcの経過後に直ちに点灯状態が切り替えられて警告灯5が消灯されるのではなく、通常点灯の開始時から警報点滅による最初の消灯までの時間(演算時間Tcalc+α)が、警報点滅時の点滅周期Tblinkにおける点灯時間(ここでは、Tblink/2)に等しくなるように構成されることが好ましい。
【0031】
かかる構成では、ブレーキペダルが踏み込まれた後の最初の点灯から、あたかも警報点滅動作が開始されているように見えるので、他の車両に対して自車の急制動状態が急ブレーキ直後から迅速に報知される利点がある。また、警告灯5がブレーキ直後から等間隔の点灯時間にて点滅するため、見た目が良い。
【0032】
また、かかる構成では、警報点滅動作の開始前の時間(演算時間Tcalc+α)に余裕があるので、減速率の演算にかかる制御ユニット4(減速率演算部41)の負荷が軽減される。これにより、より安価な(演算速度が遅い)制御ユニット4を使用できる利点がある。
【0033】
また、かかる構成では、減速率の演算にかかるサンプリング時間を十分に確保できるので、減速率の演算精度がより高まる。これにより、車両が急制動状態にあるか否かを正確に判断できるので、警報点滅にかかる製品の信頼性が向上する利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる車両用警告灯装置は、車両の急制動時における警告灯の点滅動作(警報点滅動作)の視認性を向上できる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施例1にかかる車両用警告灯装置を示す構成図である。
【図2】図1に記載した車両用警告灯装置の作用を示すフローチャートである。
【図3】図1に記載した車両用警告灯装置の作用を示すタイムチャートである。
【図4】図1に記載した車両用警告灯装置の作用を示すタイムチャートである。
【図5】図1に記載した車両用警告灯装置の変形例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用警告灯装置
2 ブレーキ信号検出部
3 車両速度検出部
4 制御ユニット
41 減速率演算部
42 駆動信号発生部
43 警告灯駆動部
5 警告灯
blink 点滅周期
calc 演算時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の急制動を警告灯の作動により後続車に対して報知する車両用警告灯装置において、
警告灯と、車両の走行速度を検出する車速度検出手段と、検出された車両の走行速度に基づき車両の急制動を検知すると共に前記警告灯の点灯状態を通常の点灯状態(以下、通常点灯という。)から点滅状態(以下、警報点滅という。)に切り替える制御ユニットとを含み、且つ、警報点滅にかかる点滅パターンが消灯から開始されることを特徴とする車両用警告灯装置。
【請求項2】
通常点灯の開始時から警報点滅による最初の消灯までの時間が、警報点滅時の点滅周期Tblinkにおける点灯時間に等しくなるように、通常点灯から警報点灯への切り替え時期が選択される請求項1に記載の車両用警告灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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