説明

車両空調用HVACユニット

【課題】組立性を向上し、部品点数を削減することで生産性を大幅に高めた車両空調用HVACユニットを提供する。
【解決手段】外気導入口(10)、内気混入口(12)、フィルタ脱着口(14)を有するケーシング(2)と、内気混入口を覆うようにケーシングに取り付けられ、ケーシングの内圧と内気との気圧差により内気混入口を開閉する内気混入用ドア(20)と、フィルタ脱着口を覆うフィルタ脱着口閉塞部(24)、内気混入口を覆う内気混入口閉塞部(26)を有する内気混入無し仕様カバー(36)と、フィルタ脱着口閉塞部、内気混入口閉塞部を開口した内気混入開口部(28)を有する内気混入有り仕様カバー(30)とを備え、内気混入無し仕様の場合には内気混入無し仕様カバーをケーシングの外側に取り付け、内気混入有り仕様のときには内気混入有り仕様カバーをケーシングの外側に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調用HVAC(Heating Ventilation & Air Conditioning)ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両空調用HVACユニットには、車室外空気を導入するための外気導入口、外気及び内気を濾過清浄するフィルタを出し入れするためのフィルタ脱着口を有するケーシングと、フィルタ脱着口を覆うフィルタカバーと、フィルタカバーに開口され、導入された外気に車室内空気を混入するための内気混入口とを備えた車両用空調装置の空調ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記従来技術では、内気混入口を開閉する内気混入用ドアとドア固定カバーとをフィルタカバーと一体化してサブアッセンブリ化し、HVACユニットを内気混入無し仕様から内気混入有り仕様に変更する場合には、内気混入無し仕様のフィルタカバーを取り外し、内気混入有り仕様のフィルタカバーと内気混入用ドアとドア固定カバーとをフィルタ脱着口に取り付ける構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−189059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、HVACユニットを内気混入無し仕様から内気混入有り仕様に変更する場合には、内気混入無し仕様カバーを取り外したうえで、内気混入有り仕様カバーのみならず、内気混入用ドア及びドア固定カバーをフィルタ脱着口に取り付ける必要があるため、HVACユニットの組立性向上及び部品点数削減には依然として課題が残されている。
【0006】
本発明は上述の事情に基づいてなされ、その目的とするところは、組立性を向上し、部品点数を削減することで生産性を大幅に高めた車両空調用HVACユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の車両空調用HVACユニットは、車室外空気を導入するための外気導入口、導入された外気に車室内空気を混入するための内気混入口、外気及び内気を濾過清浄するフィルタを出し入れするためのフィルタ脱着口を有するケーシングと、内気混入口を覆うようにケーシングに取り付けられ、ケーシングの内圧と内気との気圧差により内気混入口を開閉する内気混入用ドアと、フィルタ脱着口を覆うフィルタ脱着口閉塞部、内気混入口を覆う内気混入口閉塞部を有する内気混入無し仕様カバーと、フィルタ脱着口閉塞部、内気混入口閉塞部を開口した内気混入開口部を有する内気混入有り仕様カバーとを備え、内気混入無し仕様の場合には内気混入無し仕様カバーをケーシングの外側に取り付け、内気混入有り仕様のときには内気混入有り仕様カバーをケーシングの外側に取り付ける(請求項1)。
【0008】
好ましくは、内気混入無し仕様カバーは、内気混入口閉塞部の周縁部に環状の薄肉部を有する(請求項2)。
好ましくは、ケーシングの内側の内気混入口の上縁部に突設した係合爪を有し、内気混入用ドアは、その上端部を係合爪に係合することでケーシングに取り付けられる(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両空調用HVACユニットの組立時に、ケーシングのフィルタ脱着口を覆うフィルタカバーである内気混入無し仕様カバーと内気混入有り仕様カバーとを選択するだけで、車両空調用HVACユニットの内気混入無し仕様と内気混入有り仕様とを選択することができるため、車両空調用HVACユニットの組立性を向上することができる。
【0010】
しかも、フィルタカバーではなくケーシングに内気混入口を設け、内気混入用ドアをケーシングの内気混入口を覆う位置に取り付け、フィルタカバーと別体化することで、内気混入有り仕様カバーと内気混入有り仕様カバーとを内気混入口を覆うか否かのみの違いの簡単な構成とすることができるため、車両空調用HVACユニットの部品点数を大幅に削減することができる。従って、車両空調用HVACユニットの製造コストを低減し、生産性を大幅に高めることができる(請求項1)。
【0011】
また、本発明によれば、内気混入無し仕様カバーを使用していても、ケーシングの外側から薄肉部に切り込みを入れて内気混入無し仕様カバーから切り取ることで内気混入開口部を形成することができるため、車両空調用HVACユニットの組立後に内気混入無し仕様カバーを外して内気混入有り仕様カバーに付け替えなくても、車両空調用HVACユニットを内気混入無し仕様から内気混入有り仕様に容易に変更することができる。従って、車両空調用HVACユニットの組立性を更に向上することができ、その生産性を更に高めることができる(請求項2)。
【0012】
また、本発明によれば、内気混入用ドアは、その上端部を係合爪に係合することでケーシングに取り付けられることにより、内気混入用ドアを別部材を要することなくケーシングに容易に取り付けることができるため、車両空調用HVACユニットの組立性を更に向上することができ、その生産性を更に高めることができる(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両空調用HVACユニットの部分断面図である。
【図2】図1のケーシングから内気混入用ドアとフィルタカバーとを分解して示したケーシング2の斜視図である。
【図3】図1のフィルタカバーの一形態である内気混入無し仕様カバーの正面図である。
【図4】図1のフィルタカバーの別の形態である内気混入有り仕様カバーの正面図である。
【図5】図1において内気混入無し仕様カバーを使用した場合の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る車両空調用HVACユニット1の部分断面図である。HVACユニット1は、車両の車室内前方側に搭載され、車両のエンジンルームと車室内とを区画するファイヤーウォールの車室内側面に固定されている。
HVACユニット1は、内部に空気流を形成するケーシング2を備え、ケーシング2にはケーシング2内に車室外空気(外気)及び車室内空気(内気)を導入するための送風ファン4と、ケーシング2内に導入した空気(内気、外気)を濾過清浄するためのフィルタ6とが内設されている。
【0015】
ケーシング2には、ケーシング2内に外気を導入するための外気導入口10と、ケーシング2内に内気を導入するための内気導入口8と、ケーシング2内に導入された外気に内気を混入するための内気混入口12と、フィルタ6をケーシング2内に出し入れするためのフィルタ脱着口14とが開口されている。
また、ケーシング2には、外気導入口10と内気導入口8とを選択的に切り換えて開閉する内外気切替ドア16が支軸18を中心にしてケーシング2内で回動可能に設けられている。内外気切替ドア16は車室内の空調操作パネルに設けられたスイッチ等を乗員が操作することで回転駆動され、車室内空調が制御される。
【0016】
フィルタ6は、ケーシング2内の内外気切替ドア16と送風ファン4との間に固定され、送風ファン4を駆動することによりケーシング2内に導入された空気を濾過清浄して車室内に送風する。
内気混入口12は外気導入口10とフィルタ脱着口14との間においてフィルタ脱着口14に隣接する位置に形成されている。そして、ケーシング2には、内気混入口12を覆う内気混入用ドア20と、フィルタ脱着口14を覆うフィルタカバー22とが取り付けられている。
【0017】
図2は、ケーシング2から内気混入用ドア20とフィルタカバー22とを分解して示したケーシング2の斜視図である。フィルタカバー22は、ケーシング2への取り付け状態において、フィルタ脱着口14を覆うフィルタ脱着口閉塞部24と、内気混入口12を覆う内気混入口閉塞部26とを有して形成されている。図2のフィルタカバー22は、内気混入口閉塞部26を開口した内気混入開口部28を有して形成され、換言すると、HVACユニット1が内気混入有り仕様であるときの内気混入有り仕様カバー30である。
【0018】
フィルタカバー22は、その両側部にスプリングフック部32を有し、スプリングフック部32をケーシング2の外側壁2aに突設されたケース側フック部34に係止することでフィルタ脱着口14及び内気混入口12を覆う位置に合致して固定される。
内気混入用ドア20は、矩形状のゴム又はプラスチック等の可撓性部材を加工した薄厚軽量に形成され、ケーシング2の内圧と内気との圧力差により内気混入口12を自動で開閉する。
【0019】
詳しくは、図1の2点鎖線で示すように、内気導入口8を閉塞し、外気導入口10を開放した外気導入モードのとき、送風ファン4の駆動に伴い、外気が外気導入口10からケーシング2内に取り入れられ、フィルタ6を通過して車室内に向かって流動する。この際にケーシング2内を流れる外気により、ケーシング2内に負圧が発生し、ケーシング2内と車室内との間に気圧差が生じる。この気圧差によって内気混入用ドア20の上端部が図1に2点鎖線で示すようにケーシング2の内方に引き込まれる方向に湾曲変形し、内気混入用ドア20が上方回動することで内気混入口12が開放される。
【0020】
内気混入口12を介してケーシング内に取り入れられた内気は、外気に混入してフィルタを通過し車室内に向けて吹き出される。こうして、特に暖房時は外気に比して内気の方が温かいため、外気に内気を混入することで車室内の暖房効率を高めることができる。
図3はフィルタカバー22の別の形態である内気混入無し仕様カバー36の正面図を示し、図4は内気混入有り仕様カバー30の正面図を示している。内気混入無し仕様カバー36は、HVACユニット1が内気混入無し仕様であるときに使用され、内気混入有り仕様カバー30の説明で述べたフィルタ脱着口閉塞部24及び内気混入口閉塞部26を有して形成され、内気混入開口部28は形成されておらず、内気混入無し仕様カバー36をフィルタ脱着口14を覆うようにして装着することで内気導入口8が閉塞される。
【0021】
このように、フィルタカバー22は内気混入有り仕様カバー30と内気混入無し仕様カバー36との2つが予め用意され、HVACユニット1の組立時には、HVACユニット1が内気混入無し仕様の場合には内気混入無し仕様カバーがケーシングの外側に取り付けられ、内気混入有り仕様のときには内気混入有り仕様カバーがケーシングの外側に取り付けられる。
【0022】
図5は図1において内気混入無し仕様カバー36を使用した場合の要部拡大図である。内気混入無し仕様カバー36には、内気混入口閉塞部26の周縁部に環状の薄肉部38が形成され、ケーシング2の外側から薄肉部38にカッター等で切り込みを入れて内気混入無し仕様カバー36から矩形状片を切り取ることで内気混入開口部28を形成することができるようになっている。即ち、HVACユニット1の組立後にフィルタカバー22の取り外し等の構成部品の分解をしなくても、HVACユニット1を内気混入無し仕様から内気混入有り仕様に変更することができる。
【0023】
また、ケーシング2の内側の内気混入口12の上縁部には3つの係合爪40が予め突設されている。各係合爪40には、内気混入用ドア20の上端部に形成された3つの係合孔20aにそれぞれ係合され、これにより内気混入用ドア20がケーシング2の内側において上方回動自在に取り付けられる。尚、上述した図1及び図5は、図2に示す3つの各係合孔20aのうちの中央に位置する係合孔20aの中央垂線を通過する断面を示している。
【0024】
以上のように本実施形態の車両空調用HVACユニット1は、HVACユニット1の組立時に、ケーシング2のフィルタ着脱口14を覆うフィルタカバー22である内気混入無し仕様カバー36と内気混入有り仕様カバー30とを選択するだけで、HVACユニット1の内気混入無し仕様と内気混入有り仕様とを選択することができるため、HVACユニット1の組立性を向上することができる。
【0025】
しかも、フィルタカバー22ではなくケーシング2に内気混入口12を設け、内気混入用ドア20をケーシング2の内気混入口12を覆う位置に取り付け、フィルタカバー22と別体化することで、内気混入無し仕様カバー36と内気混入有り仕様カバー30とを内気混入口12を覆うか否かのみの違いの簡単な構成とすることができるため、HVACユニット1の部品点数を大幅に削減することができる。従って、HVACユニット1の製造コストを低減し、生産性を大幅に高めることができる。
【0026】
また、内気混入無し仕様カバー36を使用していても、ケーシング2の外側から薄肉部38に切り込みを入れて内気混入無し仕様カバー36から矩形状片を切り取ることで内気混入開口部28を形成することができるため、HVACユニット1の組立後に内気混入無し仕様カバー36を外して内気混入有り仕様カバー30に付け替えなくても、HVACユニット1を内気混入無し仕様から内気混入有り仕様に容易に変更することができる。従って、HVACユニット1の組立性を更に向上することができ、その生産性を更に高めることができる。
【0027】
また、係合孔20aをケーシング2内側に形成した係合爪40に係合することで、別部材を要することなく内気混入用ドア20をケーシング2に容易に取り付けることができるため、HVACユニット1の組立性を更に向上することができ、その生産性を更に高めることができる。
本発明は、上述の実施形態に制約されるものではなく種々の変形が可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態におけるHVACユニット1の構成はこれに限定されず、ケーシング2に形成される各開口部、ドア、カバーの形状や大きさは種々のものが考えられる。
【符号の説明】
【0029】
1 車両空調用HVACユニット
2 ケーシング
6 フィルタ
10 外気導入口
12 内気混入口
14 フィルタ脱着口
20 内気混入用ドア
24 フィルタ脱着口閉塞部
26 内気混入口閉塞部
28 内気混入開口部
30 内気混入有り仕様カバー
36 内気混入無し仕様カバー
38 薄肉部
40 係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外空気を導入するための外気導入口、導入された外気に車室内空気を混入するための内気混入口、外気及び内気を濾過清浄するフィルタを出し入れするためのフィルタ脱着口を有するケーシングと、
前記内気混入口を覆うように前記ケーシングに取り付けられ、前記ケーシングの内圧と内気との気圧差により前記内気混入口を開閉する内気混入用ドアと、
前記フィルタ脱着口を覆うフィルタ脱着口閉塞部、前記内気混入口を覆う内気混入口閉塞部を有する内気混入無し仕様カバーと、
前記フィルタ脱着口閉塞部、前記内気混入口閉塞部を開口した内気混入開口部を有する内気混入有り仕様カバーと
を備え、
内気混入無し仕様の場合には前記内気混入無し仕様カバーを前記ケーシングの外側に取り付け、内気混入有り仕様のときには前記内気混入有り仕様カバーを前記ケーシングの外側に取り付けることを特徴とする車両空調用HVACユニット。
【請求項2】
前記内気混入無し仕様カバーは、前記内気混入口閉塞部の周縁部に環状の薄肉部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両空調用HVACユニット。
【請求項3】
前記ケーシングの内側の前記内気混入口の上縁部に突設した係合爪を有し、
前記内気混入用ドアは、その上端部を前記係合爪に係合することで前記ケーシングに取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両空調用HVACユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−47044(P2013−47044A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185891(P2011−185891)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】