説明

車体後部の遮光構造

【課題】 パーセルトリムのシェード用開口部を極力小さく設定すると共に、該シェード用開口部からシェードシートが円滑に出入りすることができる車体後部の遮光構造を提供する。
【解決手段】車両室内の後部に設けたサンシェード装置11を作動させることにより、リアウインドウガラス3からの入射光を遮蔽する車体後部の遮光構造において、サンシェード装置11は、パーセルトリム5の下方に配設されたシェード本体21と、シェード本体21に取り付けられ、折り畳み自在の複数のアーム部材によって伸縮自在に構成されたアーム手段23と、アーム手段23の先端に設けられ、パーセルトリム5のシェード用開口部9に臨んで配設されたシェードレール13とを備え、シェード本体21に、シェードレール13をシェード用開口部9から出し入れする際にアーム部材24を下方から支持する上部側アーム用ガイド41及び下部側アーム用ガイド43を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンシェード装置を用いた車体後部の遮光構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部に設けられたサンシェード装置には、前方斜め上方に向けてシェードシートが引き出されたり、巻き戻されるように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数のアーム部材が設けられ、該アームの回動に伴って、シェードシートがリアウインドウガラスに沿って前方斜め上方に引き出しや巻き戻しが行われるように構成されたものがある。このサンシェード装置においては、パーセルトリムに形成されたシェード用開口部からシェードレールが出入りする際に、シェードレールやリッドが自重によって規定位置よりも下方に配置されるため、シェードレールの下端部やシェードシートがシェード用開口部の端末に引っかかりやすくなる。これに対して、シェード用開口部の開口面積を大きくしたり、シェードレールの断面形状を小さく形成する対策が行われている。
【特許文献1】特開平6−193367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来技術のようにシェード用開口部の開口面積を大きくすると、このシェード用開口部からパーセルトリム内のパネル等が見えてしまい、外観を損ねるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、パーセルトリムのシェード用開口部を極力小さく設定すると共に、該シェード用開口部からシェードシートが円滑に出入りすることができる車体後部の遮光構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る車体後部の遮光構造は、車両室内の後部に設けられたサンシェード装置により、リアウインドウガラスからの入射光を遮蔽する車体後部の遮光構造において、前記サンシェード装置は、パーセルトリムの下方に配設されたシェード本体と、該シェード本体に取り付けられ、折り畳み自在の複数のアーム部材によって前方斜め上方に向けて伸縮自在に構成されたアーム手段と、該アーム手段の先端に設けられ、前記パーセルトリムのシェード用開口部に臨んで配設されたシェードレールと、一端が該シェードレールに取り付けられ、他端がシェード本体内に巻回された状態で収納されたシェードシートとを備え、前記シェード本体に、前記シェードレールをシェード用開口部から出し入れする際に前記アーム部材を下方から支持するガイド手段を設けている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車体後部の遮光構造によれば、前記シェード本体に前記アーム部材を下方から支持するガイド手段を設けているため、シェードレールが自重によって下方に垂れ下がる場合でも、シェードレールがシェード用開口部に引っかかることなく、サンシェード装置をスムーズに作動させることができる。また、シェード用開口部の開口面積を極力小さく設定することができるため、外観品質を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1は本実施形態による遮光構造を適用した車体後部の断面図、図2は本実施形態によるサンシェード装置を示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、車両後部1には、前方斜め上方に向けてリアウインドウガラス3が延設されており、該リアウインドウガラス3の下方には、パーセルトリム5が配設されている。該パーセルトリム5は、リアウインドウガラス3の後端部3aから略水平状に車両前方に延び、途中で下方に屈曲した段差部7が形成されている。また、パーセルトリム5には、車幅方向に延びる細長い矩形状のシェード用開口部9が形成されており、このシェード用開口部9からサンシェード装置11のリッド39、シェードレール13及びシェードシート15が出入りするように構成されている。さらに、パーセルトリム5の前部5aには、カバー17が取り付けられており、該カバー17によってパーセルトリム5の前部5aの上面が覆われて、外観向上が図られている。
【0011】
そして、パーセルトリム5の下方には、パーセルシェルフ19が略水平状に配設されており、これらのパーセルシェルフ19とパーセルトリム5との間にサンシェード装置11が設けられている。
【0012】
図1,2に示すように、サンシェード装置11は、下部側に配置されるシェード本体21と、該シェード本体21に回動自在に軸支された左右一対のアーム手段23,23と、該アーム手段23の先端に取り付けられたシェードレール13及びリッド39と、該シェードレール13及びシェード本体21に取り付けられた、可撓性を有するシェードシート15とを備えている。
【0013】
前記シェード本体21は、図1に示すように、車幅方向に延びるシートフレーム29と、該シートフレーム29の前端部の上面に取り付けられたレールストッパ33と、前記シートフレーム29の内方に回動自在に支持されたスプールシャフト31とを備えている。
【0014】
また、シートフレーム29の後端部には、後述する上部側アーム用ガイド41及び下部側アーム用ガイド43が設けられており、シートフレーム29の前端部の下面には、前方に延びる取付片35が固定されている。一方、パーセルシェルフ19には取付台36が設けられており、該取付台36の上面に、前記取付片35がクリップ37を介して固定されている。
【0015】
前記アーム手段23にはアーム部材24が配設されており、該アーム部材24は、下部側アーム25と上部側アーム27とから構成されている。そして、前記下部側アーム25は、外側端25aがシェード本体21の車幅方向外側の端部に軸支され、内側端25bが上部側アーム27の内側端27aに軸支されている。また、上部側アーム27は、内側端27aが下部側アーム25の内側端25bに軸支され、外側端27bはシェードレール13の側端部に軸支されている。
【0016】
また、シェードシート15は、図1に示すように、一端がシェードレール13の下端部に取り付けられ、他端がシェード本体21のスプールシャフト31に巻回された状態で収納されている。
【0017】
図3は本実施形態によるサンシェード装置の要部を示す斜視図であり、アーム手段を省略した状態を示しており、図4は本実施形態によるアーム手段を格納したときのサンシェード装置の要部を示す斜視図である。また、図5は図4のA−A線による断面図である。
【0018】
サンシェード装置11における車幅方向中央部には、上部側アーム27の底面を支持する上部側アーム用ガイド41がシートフレーム29の後面と上面とに跨って取り付けられ、下部側アーム25の底面を支持する下部側アーム用ガイド43がシートフレーム29の後面に取り付けられている。
【0019】
また、図3,4に示すように、上部側アーム用ガイド41の近傍部に、下部側アーム25の後端を支持するアーム用ストッパ45が配設されており、該アーム用ストッパ45の前壁面47に下部側アーム25の後端が当接して、ストッパとして作用するように構成されている。さらに、図4に示すように、下部側アーム用ガイド43も、下部側アーム25の後端を支持するストッパとして作用する。即ち、下部側アーム用ガイド43の前端43aは、車幅方向に沿って斜めに形成されており、アーム手段23を格納したときに、上部側アーム27の後端27cが下部側アーム用ガイド43の前端43aに当接することにより、上部側アーム27が保持される。
【0020】
そして、図3に示すように、シェードレール13には取付ブラケット53が設けられており、該取付ブラケット53にリッド39が嵌合して取り付けられるように構成されている。
【0021】
また、図5に示すように、上部側アーム用ガイド41及び下部側アーム用ガイド43の前端には、アーム部材24の伸縮方向に対して前方斜め下方に折れ曲がった屈曲部51,49が形成されている。これらの屈曲部51,49の上面、前面及び底面には、柔らかいフェルト55が接着されて取り付けられており、このフェルト55によって、アーム部材24が伸縮する際におけるアーム部材24の底面との摺動抵抗を低減させる。また、下部側アーム用ガイド43の屈曲部51に取り付けられるフェルト55は、上部側アーム27の後端27c(図4参照)が当接する際の緩衝材として作用する。
【0022】
さらに、図5に示すように、下部側アーム用ガイド43の上面43bは、上部側アーム用ガイド41の上面に対して、アーム部材24の伸縮方向と直交する向き(即ち、図5における上方斜め後方の向き)にアーム部材24の厚さ以上の寸法分、オフセットして配置されている。よって、下部側アーム用ガイド43の上面43bは、上部側アーム27の上面27dよりも、アーム部材24の伸縮方向と直交する向きに対して上側に配置されている。
【0023】
次に、本実施形態によるサンシェード装置11を作動させたときの軌跡の変化を、図6及び図7を用いて説明する。
【0024】
まず、図6に示すように、アーム手段23を格納した状態においては、上部側アーム27が上部側アーム用ガイド41の上に載置され、下部側アーム25が下部側アーム用ガイド43の上に載置された状態で保持されている。また、上部側アーム27の後端は、下部側アーム用ガイド43の前端に当接して保持されている。
【0025】
次いで、図示しない駆動手段を作動させると、図7に示すように、下部側アーム25と上部側アーム27とが回動してアーム手段23が開き、シェードレール13及びリッド39が前方斜め上方に向けて延びる。
【0026】
ここで、図1に示すように、シェードレール13及びリッド39がシェード用開口部9から出るときに、シェードレール13の下端部61がレールストッパ33のカバーの角部63に引っかかりやすい。しかし、本実施形態においては、前述したように、上部側アーム27が上部側アーム用ガイド41の上に載置され、下部側アーム25が下部側アーム用ガイド43の上に載置された状態でシェードレール13及びリッド39がシェード用開口部9から出るため、シェードレール13の下端部61がレールストッパ33のカバーの角部63に引っかかることなく、アーム手段23をスムーズに開かせることができる。
【0027】
また、アーム手段23を閉じて、シェードレール13及びリッド39をシェード用開口部9の内部に収納する際にも、シェードレール13の下端部61がレールストッパ33のカバーの角部63に引っかかることがない。
【0028】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0029】
前記シェード本体に、前記アーム部材を下方から支持する上部側アーム用ガイド41と下部側アーム用ガイド43(ガイド手段)を設けているため、シェードレール13がシェード用開口部9に引っかかることがなく、シェードレール13をシェード用開口部9からスムーズに出し入れすることができる。また、シェード用開口部9を極力小さく設定することができるため、シェード用開口部9からパーセルトリム5の内部構造が見えず、外観品質を向上させることができる。
【0030】
なお、図1に示すように、アーム手段23を開成させたときに、シェードシート15は、一点鎖線で示す理想の基準軌跡に沿って移動することが望ましいが、実際はシェードレール13及びリッド39の自重によって、実線で示す軌跡に沿って移動する。よって、シェードレール13及びリッド39がシェード用開口部9から出るときに、シェードレール13の下端部61がレールストッパ33のカバーの角部63に引っかかりやすくなっている。しかし、本実施形態によれば、上部側アーム用ガイド41と下部側アーム用ガイド43(ガイド手段)を設けているため、シェードレール13がシェード用開口部9に引っかかることがなく、シェードレール13をシェード用開口部9からスムーズに出し入れすることができる。なお、下部側アーム25と上部側アーム27との結合部近傍は、特に下方に垂れ下がりやすいため、この結合部近傍を支持する上部側アーム用ガイド41は有効である。
【0031】
また、前記複数のアーム部材24のそれぞれを支持するように、複数のガイド手段である上部側アーム用ガイド41と下部側アーム用ガイド43とを設けているため、シェードレール13やリッド39等の自重による垂れ下がりをさらに好適に抑制することができる。
【0032】
さらに、ガイド手段である上部側アーム用ガイド41と下部側アーム用ガイド43の前端に、前記アーム部材24の伸縮方向に対して斜め下方に延びる屈曲部51,49を設けているため、前記ガイド手段の前端にアーム部材24が引っかかることなく、上部側アーム用ガイド41及び下部側アーム用ガイド43がスムーズに格納される。
【0033】
そして、前記アーム手段23のアーム部材24を上部側アーム27と下部側アーム25とから構成する一方、前記ガイド手段を、上部側アーム27の底面を支持する上部側アーム用ガイド41と、下部側アーム25の底面25dを支持する下部側アーム用ガイド43とから構成したため、上部側アーム27と下部側アーム25のそれぞれについて、確実に支持することができる。
【0034】
また、前記上部側アーム用ガイド41及び下部側アーム用ガイド43のいずれか一方の上面を、アーム部材24の伸縮方向に直交する向きにアーム部材24の厚さ以上オフセットさせているため、上側と下側に配置されたアーム部材24同士が干渉することなく、スムーズに開閉する。
【0035】
そして、前記上部側アーム27及び下部側アーム25を格納した際に、これらの上部側アーム27及び下部側アーム25のうち一方のアームの後端が、他方のアームを支持するガイド手段の前端に当接するように構成しているため、ガイド手段をアーム部材24の格納時のストッパーとして有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態による遮光構造を適用した車体後部の断面図である。
【図2】本実施形態によるサンシェード装置を示す斜視図である。
【図3】本実施形態によるサンシェード装置の要部を示す斜視図であり、アーム手段を省略した状態を示している。
【図4】本実施形態によるアーム手段を格納したときのサンシェード装置の要部を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線による断面図である。
【図6】本実施形態によるサンシェード装置が格納された状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態によるサンシェード装置が作動している途中の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1…車両後部
3…リアウインドウガラス
5…パーセルトリム
9…シェード用開口部
11…サンシェード装置
13…シェードレール
15…シェードシート
21…シェード本体
23…アーム手段
24…アーム部材
25…下部側アーム
27…上部側アーム
41…上部側アーム用ガイド(ガイド手段)
43…下部側アーム用ガイド(ガイド手段)
49,51…屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内の後部に設けたサンシェード装置により、リアウインドウガラスからの入射光を遮蔽する車体後部の遮光構造において、
前記サンシェード装置は、
パーセルトリムの下方に配設されたシェード本体と、該シェード本体に取り付けられ、折り畳み自在の複数のアーム部材によって前方斜め上方に向けて伸縮自在に構成されたアーム手段と、該アーム手段の先端に設けられ、前記パーセルトリムのシェード用開口部に臨んで配設されたシェードレールと、一端が該シェードレールに取り付けられ、他端がシェード本体内に巻回された状態で収納されたシェードシートとを備え、前記シェード本体に、前記シェードレールをシェード用開口部から出し入れする際に前記アーム部材を下方から支持するガイド手段を設けたことを特徴とする車体後部の遮光構造。
【請求項2】
前記複数のアーム部材のそれぞれを支持するように前記ガイド手段を複数設けたことを特徴とする請求項1に記載の車体後部の遮光構造。
【請求項3】
前記ガイド手段の前端に、前記アーム部材の伸縮方向に対して斜め下方に延びる屈曲部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体後部の遮光構造。
【請求項4】
前記アーム手段のアーム部材を上部側アームと下部側アームとから構成する一方、前記ガイド手段を、上部側アームの底面を支持する上部側アーム用ガイドと、下部側アームの底面を支持する下部側アーム用ガイドとから構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載の車体後部の遮光構造。
【請求項5】
前記上部側アーム用ガイド及び下部側アーム用ガイドのいずれか一方の上面を、アーム部材の伸縮方向に直交する向きにアーム部材の厚さ以上オフセットさせたことを特徴とする請求項4に記載の車体後部の遮光構造。
【請求項6】
前記上部側アーム及び下部側アームを格納した際に、これらの上部側アーム及び下部側アームのうち一方のアームの後端が、他方のアームを支持するガイド手段の前端に当接するように構成したことを特徴とする請求項4又は5に記載の車体後部の遮光構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−103598(P2006−103598A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295356(P2004−295356)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)