説明

車載受信システム

【課題】製造コストを削減した車載受信システムを提供する。
【解決手段】車両に設けられるホルダ装置1と、ホルダ装置1に脱着自在な携帯型電子機器50とを備え、ホルダ装置1には、アンテナ103と、ホルダ装置1の複数の仕向地の周波数帯の各々を受信可能に構成したチューナ部120とを設け、携帯型電子機器50には、ホルダ装置1のチューナ部120が受信すべき仕向地の情報を保持させ、ホルダ装置1のチューナ部120は、ホルダ装置1に装着された携帯型電子機器50が保持する仕向地の情報に基づいて、受信すべき仕向地の周波数帯の受信動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるホルダ装置と、このホルダ装置に脱着自在な携帯型電子機器とを備える車載受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された車載電子装置と、この車載電子装置に対して着脱自在に装着される携帯電子装置とを有する車載用電子システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の車載用電子システムは、周波数帯や周波数ステップが異なる仕向地に輸出されることがある。この場合、仕向地ごとに、当該仕向地の周波数帯や周波数ステップに対応した車載電子装置、及び、携帯電子装置を製造し、輸出している。
なお、以下の説明において、最終的に装置が輸出される地域のことを「仕向地」と言うものとする。
【特許文献1】特開2008−139223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述した車載電子システムの製造に際し、異なる仕向地に輸出される車載用電子システムの部品の共通化をできるだけ促進し、製造にかかるコストを削減したい、とするニーズがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、製造コストを削減した車載受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、車両に設けられるホルダ装置と、このホルダ装置に脱着自在な携帯型電子機器とを備え、前記ホルダ装置には、アンテナと、このアンテナに接続されて、前記ホルダ装置の複数の仕向地の周波数帯の各々を受信可能に構成したチューナ部とを設け、前記携帯型電子機器には、前記ホルダ装置のチューナ部が受信すべき仕向地の情報を保持させ、前記ホルダ装置のチューナ部は、前記ホルダ装置に装着された前記携帯型電子機器が保持する仕向地の情報に基づいて、受信すべき仕向地の周波数帯の受信動作を行うことを特徴とする。
この構成によれば、ホルダ装置のチューナ部を、複数の仕向地の周波数帯の各々を受信可能に構成したため、同じホルダ装置を用いて各仕向地に対応した受信動作を行わせることができる。これにより、仕向地ごとにホルダ装置を個別に製造する必要がなく部品の共通化が図られるから、製造コストを削減することができる。
これに加えて、ホルダ装置のチューナ部は、当該ホルダ装置に装着された携帯型電子機器が保持する仕向地の情報に基づいて、受信すべき仕向地の受信動作を行うから、ホルダ装置に対して仕向地の設定を何ら行う必要がなく、携帯型電子機器装置をホルダ装置に装着するだけで自動的に適切な仕向地の受信動作を行わせることができる。
【0005】
ここで、上記発明の車載受信装置において、前記ホルダ装置のチューナ部が受信すべき仕向地の情報は、少なくとも、当該仕向地の周波数帯、及び、周波数ステップを示す情報を含むようにしてもよい。
この構成によれば、ホルダ装置のチューナ部は、仕向地に対応した周波数帯、及び、周波数ステップに基づいて、確実に、受信動作を行うことができる。
【0006】
また、上記発明の車載受信装置において、前記ホルダ装置の後壁に後方へ突出した突出部を設けるとともに、前記ホルダ装置の内部において前記突出部に沿った状態で前記アンテナを設けるようにしてもよい。
この構成によれば、車両のダッシュボードに、ホルダ装置を取り付けた場合、突出部に対応する位置にあるアンテナは、車両のフロントウィンドウに向かって突出した状態となる。アンテナは、主に車両のフロントウィンドウを介して電波を受信するため、上記構成によれば、アンテナの受信感度の向上を図ることができる。
さらに、アンテナは、後壁に沿って設けられているため、ホルダ本体の内部に存在する機器や、部品との距離が離れた状態となる。特に、後方へ向かって突出した突出部に対応する場所に位置するアンテナは、よりホルダ本体の内部に存在する機器や、部品との距離が離れた状態となる。ここで、ホルダ本体の内部には、チューナ回路など金属を含む導電部材が存在しており、この導電部材とアンテナとが接触した場合や、これらが近接した場合、アンテナが形成する磁束に導電部材が悪影響を与え、アンテナの受信感度が劣化するが、上記構成のため、アンテナの受信感度の劣化を防止することができる。
【0007】
また、上記発明の車載受信装置において、前記携帯型電子機器を、前記ホルダ装置の上方に装着される構成とし、前記突出部を前記ホルダ装置の前記後壁の下部に設けるようにしてもよい。
この構成によれば、アンテナは、ホルダ装置の内部において下部に位置することとなる。従って、ホルダ装置に、携帯型電子機器を装着した場合、この携帯型電子機器とアンテナとの距離が離れた状態になる。ここで、携帯型電子機器は、制御回路や、液晶駆動回路など金属を含む導電部材が多数存在しており、この導電部材とアンテナとが近接した場合、アンテナが形成する磁束に導電部材が悪影響を与え、アンテナの受信感度が劣化するが、上記構成のため、アンテナの受信感度の劣化を防止することができる。
【0008】
また、上記発明の車載受信装置において、前記アンテナは、前記ホルダ装置の幅方向の長さと略同一の長さを有し、前記ホルダ装置の内部において水平に設けられているようにしてもよい。
この構成によれば、アンテナをホルダ装置の外部に設けたり、ホルダ装置の左右方向における長さを拡張したりすることなく、ホルダ装置の内部において、各仕向地の受信周波数帯をカバーするために必要なアンテナ長を確保することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周波数帯や周波数ステップが異なる仕向地に輸出される車載受信装置のホルダ装置を共通化することができるため、製造コストの削減を図ることができる。
また、本発明によれば、ホルダ装置のチューナ部は、仕向地に対応した周波数帯、及び、周波数ステップに基づいて、確実に、受信動作を行うことができる。
また、本発明によれば、アンテナは、ホルダ装置の内部において下部に位置することとなる。従って、ホルダ装置に、携帯型電子機器を装着した場合、この携帯型電子機器とアンテナとの距離が離れた状態になる。ここで、携帯型電子機器は、制御回路や、液晶駆動回路など金属を含む導電部材が多数存在しており、この導電部材とアンテナとが近接した場合、アンテナが形成する磁束に導電部材が悪影響を与え、アンテナの受信感度が劣化するが、上記構成のため、アンテナの受信感度の劣化を防止することができる。
また、本発明によれば、アンテナをホルダ装置の外部に設けたり、ホルダ装置の左右方向における長さを拡張したりすることなく、ホルダ装置の内部において、各仕向地の受信周波数帯をカバーするために必要なアンテナ長を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態に係る車載受信システム100が備えるホルダ装置1の5面図である。図1(a)〜図1(e)はそれぞれ、ホルダ装置1の平面図、正面図、底面図、右側面図、及び、背面を示す図である。図2は、車載受信システム100が備えるホルダ装置1と携帯型電子機器50とを共に示した図である。図3は、車載受信システム100が備えるホルダ装置1に携帯型電子機器50を装着した状態を示す斜視図である。図4は、ホルダ装置1を後ろから見た斜視図である。
車載受信システム100は、車両に搭載され、AM放送やFM放送などのラジオ放送を受信する装置であり、ホルダ装置1と、携帯型電子機器50とを備えている。
本実施形態に係る車載受信システム100は、製造後、ラジオ放送に係る電波の周波数帯や周波数ステップが異なる仕向地に輸出される。
【0011】
ホルダ装置1は、携帯型電子機器50を車両等に取り付けるために用いられるホルダである。携帯型電子機器50としては、パーソナルナビゲーション装置(PND:Personal Navigation Device)や、PDA、カメラ、携帯電話機等の携帯型電子機器が挙げられる。本実施の形態では、ホルダ装置1を用いて自動車に携帯型電子機器50としてパーソナルナビゲーション装置を取り付ける場合を例に挙げて説明する。また、ホルダ装置1は、携帯型電子機器50を装着した場合に、携帯型電子機器50の充電器としても機能する。
【0012】
図2に示すように、携帯型電子機器50は、平板状の筐体51を有し薄型に形成されている。携帯型電子機器50の正面には、種々の情報を表示する表示パネル52が設けられている。表示パネル52は、タッチパネル式であり、ユーザにより操作されるパネルスイッチとしての機能を有している。また、携帯型電子機器50の幅方向の一側面には、USB(Universal Serial Bus)端子やイヤホン端子等の接続端子53が設けられている。さらに、携帯型電子機器50はバッテリを内蔵し、ユーザが携帯して使用できる。
また、携帯型電子機器50の幅方向の両側面には、携帯型電子機器50を保持するために用いられる凹部54、55がそれぞれ形成されている。凹部54は、携帯型電子機器50の高さ方向において、凹部55よりも低い位置に形成されている。
【0013】
ホルダ装置1は、携帯型電子機器50を差し込み自在なホルダ本体2と、ホルダ本体2を支持する支持部3とを備えて大略構成されている。
ホルダ本体2は、かご形状の差込溝部4を有し、図2に示すように、携帯型電子機器50は、差込溝部4に差し込まれるようにしてホルダ本体2に装着される。すなわち、差込溝部4は、携帯型電子機器50の下縁を支持する溝底5、携帯型電子機器50の左右の側面をそれぞれ囲む右壁6、左壁7、及び、携帯型電子機器50の正面及び背面をそれぞれ支持する前壁8、後壁9を有し、携帯型電子機器50を支持するかご形状を形成している。そして、差込溝部4の高さは、一例として、携帯型電子機器50の高さの1/3程度の高さに形成され、携帯型電子機器50は、その下縁が差込溝部4に差し込まれて装着されている。
【0014】
ホルダ本体2の下面は開口しており、ホルダ本体2の下面には、この開口を塞ぐ下蓋10が取り付けられている。差込溝部4の溝底5と下蓋10との間には、後述するアンテナ103や、プリント基板101を収容する空間が形成されている。
また、支持部3は、ホルダ本体2の下部に連結され、ホルダ本体2を下側から支持している。支持部3の端には、車両のダッシュボードに取り付けられる取付板11が設けられている。ホルダ装置1が車両のダッシュボードに取り付けられる際は、背面に形成された後壁9が車両のフロントウィンドウと対向するとともに、正面に形成された前壁8が車両内へ向かった状態、すなわち、車両の乗員に対向した状態で取り付けられる。従って、車両に取り付けたホルダ装置1に携帯型電子機器50を装着した場合、携帯型電子機器50の表示パネル52が乗員に向かうこととなる。
【0015】
前壁8は、携帯型電子機器50を装着した状態において、前壁8が表示パネル52に重ならないように、その両端を除く部分が低く形成されている。また、前壁8の中央には、ホルダ本体2の幅方向に延びる長孔8aが形成されており、長孔8aには、長孔8aに係合し、長孔8aに沿ってスライド自在な解除操作子17が設けられている。本実施形態に係る車載受信システム100では、詳細は省略するが、ホルダ装置1に携帯型電子機器50を装着した状態において、ホルダ装置1から携帯型電子機器50を取り外す際は、この解除操作子17を長孔8aに沿ってスライドさせることにより、ホルダ装置1と携帯型電子機器50との係合を解除した後、携帯型電子機器50を取り外す。
【0016】
また、ホルダ本体2の側面を構成する右壁6及び左壁7には、携帯型電子機器50を固定する一対の第1の爪12(爪部材)及び第2の爪13(爪部材)がそれぞれ設けられている。第1の爪12及び第2の爪13は、右壁6及び左壁7にそれぞれ形成されたスリット14を介して差込溝部4の内側及び外側に突出可能に設けられている。図3に示すように、携帯型電子機器50が差込溝部4に差し込まれると、携帯型電子機器50の左右側面に設けられた凹部54、55に対し、第1の爪12及び第2の爪13がそれぞれ係合し、携帯型電子機器50が把持される。これにより、携帯型電子機器50はホルダ装置1に固定される。
さらに、差込溝部4の溝底5には、ホルダ装置1と携帯型電子機器50とを電気的に接続するホルダ側端子20及び、携帯型電子機器50を位置決めする2個の突起22が設けられている。
【0017】
また、差込溝部4において後壁9には、携帯型電子機器50を支持する支持ラバー15が設けられている。支持ラバー15は、差込溝部4の幅方向の中心を中心として対称に配置され、前壁8及び後壁9においてそれぞれ2箇所に設けられている。差込溝部4に携帯型電子機器50が装着されると、支持ラバー15は、筐体51に押圧され、筐体51に密着して支持する。
さらに、後壁9において右壁6の近傍には、他の機器等からの信号や電源を供給するケーブル(図示略)が接続される端子16が設けられている。端子16は、ホルダ装置1の内部に収容されたチューナ部120(図9)が実装されたプリント基板101(図8)に接続されている。
【0018】
図5は、ホルダ装置1に携帯型電子機器50を装着した状態の正面断面図である。
携帯型電子機器50をホルダ装置1に装着した状態において携帯型電子機器50が溝底5に接する面、すなわち、携帯型電子機器50の底部56には、携帯型電子機器50とホルダ装置1のホルダ側端子20とを接続する機器側端子57、及び、位置決め用の係合穴58が設けられている。機器側端子57は、底部56において、携帯型電子機器50の幅方向の中央に設けられ、係合穴58は、機器側端子57の両端近傍の2箇所にそれぞれ設けられている。
上述したホルダ装置1のホルダ側端子20は、機器側端子57に対応して溝底5の幅方向の中央に設けられている。また、溝底5に設けられた突起22は、携帯型電子機器50の係合穴58の各々と係合し、携帯型電子機器50を位置決めしている。
【0019】
図6は、ホルダ本体2の正面断面図である。図7は、下蓋10を外した状態で、ホルダ本体2を下から見た図である。図8は、ホルダ本体2の主要な構成部品の分解斜視図である。
図8に示すように、ホルダ側端子20は、機器側端子57と接続されるホルダ側端子本体21、突起22が立設されたプレート23、ホルダ側端子本体21とプレート23とを挟み込むラバープレート24、25、及び、ホルダ側端子本体21をホルダ本体2に固定する固定プレート26を備えて構成される。
ホルダ側端子本体21はプレート23と一体に組付けられて、端子小組体21aを形成している。端子小組体21aにおいてプレート23の両面には、ホルダ側端子本体21や突起22等が突出しており、ラバープレート24、25及び固定プレート26には、ホルダ側端子本体21や突起22等が貫通する開口がそれぞれ形成されている。また、ラバープレート24、25は、弾性が比較的大きなゴムにより構成されている。このホルダ側端子20は、ホルダ本体2の内部で、プリント基板101に接続されている。
【0020】
ホルダ本体2において溝底5の中央には、開口が形成されている。ホルダ側端子本体21及び突起22は、この開口を貫通して差込溝部4内に突出する。開口の周囲にはラバープレート24が取り付けられる取付面が形成されている。
そして、ホルダ側端子本体21は、端子小組体21aをラバープレート24、25により挟み込んだものを取付面に配置し、ホルダ本体2の下側から固定プレート26によりビス止めすることで取り付けられる。
【0021】
すなわち、ホルダ側端子本体21は、弾性を有するラバープレート24、25により挟まれて、フローティング構造によってホルダ本体2に固定されている。このため、ホルダ側端子20は、ホルダ本体2に対して浮動状態にあるため、僅かに移動することができ、携帯型電子機器50が位置ズレを伴って差し込まれたとしても、ホルダ側端子20が携帯型電子機器50に対応して移動するため、容易に携帯型電子機器50を装着できる。また、ホルダ本体2及び携帯型電子機器50に対し、車両の振動等により外力が加わったとしても、フローティング構造により外力を吸収できるため、ホルダ側端子20や機器側端子57にかかる外力を低減できる。
また、図1(a)及び図7に示すように、ホルダ本体2の左右方向における略中央であって、前後方向におけるやや後方には、上下に貫通したボルト孔9aが形成されている。このボルト孔9aには、ホルダ本体2に支持部3を取り付けるためのボルト92が貫通する。
【0022】
図7に示すように、ホルダ本体2の後壁9の左右方向における中央であって、上下方向における下部には、後方に向かって突出した突出部102が形成されている(図1も併せて参照)。突出部102における左部には、右方へ向うに従って後方へ傾斜する左部傾斜壁102aが形成され、右部には、左方へ向うに従って後方へ傾斜する右部傾斜壁102bが形成され、左部傾斜壁102aの右端と、右部傾斜壁102bの左端とが左右方向に延在する中央水平壁102cによって連結されている。ホルダ本体2の内部には、突出部102に対応して空間が形成されており、アンテナ103が、突出部102を含む後壁9の形状に沿った状態で、水平にホルダ本体2の内部に設けられている。
このアンテナ103は、樹脂製で筒状のアンテナ本体にヘリカルコイルが螺旋状に巻き回されて形成されたヘリカルアンテナであり、各仕向地のラジオ放送の電波を受信可能に構成されている。
【0023】
図7に示すように、アンテナ103は、左右方向に延びるアンテナ左部水平部103aと、このアンテナ左部水平部103aの右端に連結し、この右端から後方へ向かって傾斜したアンテナ左部傾斜部103bと、このアンテナ左部傾斜部103bの右端に連結し、左右方向に延びるアンテナ中央水平部103cと、このアンテナ中央水平部103cの右端に連結し、この右端から前方へ向かって傾斜したアンテナ右部傾斜部103dと、このアンテナ右部傾斜部103dの右端に連結し、左右方向に延びるアンテナ右部水平部103eと、を備えている。そして、アンテナ103がホルダ本体2の内部に設けられた状態において、アンテナ103のアンテナ左部水平部103aが、左部傾斜壁102aより左方の後壁9に沿って延在すると共に、アンテナ左部傾斜部103bが後壁9の左部傾斜壁102aに沿って延在し、アンテナ中央水平部103cが後壁9の中央水平壁102cに沿って延在し、アンテナ右部傾斜部103dが後壁9の右部傾斜壁102bに沿って延在し、アンテナ右部水平部103eが右部傾斜壁102bより右方の後壁9に沿って延在する。
【0024】
このように、本実施形態では、後壁9の左右方向における中央であって、上下方向における下部に突出部102が形成されると共に、後壁9においてこの突出部102に沿った状態でアンテナ103が設けられていため、以下の効果を奏する。
すなわち、アンテナ103をホルダ本体2の外部に設けることなく、図7に示すように、上述したボルト孔9aを避けた状態で、ホルダ本体2の内部に設けることができるため、デザイン性の向上を図ることができるとともに、外力が加わることによってアンテナが破損することを防止することができる。
【0025】
さらに、図7に示すように、ボルト孔9aを避けた状態で、アンテナ103の左右方向における長さT1を、ホルダ本体2の左右方向における長さT2に近い長さとすることができ、例えば、アンテナ103をホルダ本体2の外部に設けたり、ホルダ本体2の左右方向における長さを拡張したりすることなく、ホルダ本体2の内部において、所望のアンテナ長を確保することができる。ここで、アンテナ103の共振周波数は、ヘリカルコイルの全長及びピッチによって定められるが、本実施形態では、アンテナ長を十分確保できるため、アンテナ103において、各仕向地のラジオ放送の電波を受信可能な所望の全長及びピッチのヘリカルコイルを形成することができる。
さらに、車両のダッシュボードに、ホルダ装置1を取り付けた場合、突出部102に対応する位置にあるアンテナ103は、車両のフロントウィンドウに向かって突出した状態となる。アンテナ103は、主に車両のフロントウィンドウを介して電波を受信するため、上記構成によれば、アンテナ103をフロントウィンドウに近い位置に設けることで、アンテナ103の受信感度の向上を図ることができる。
【0026】
さらに、アンテナ103は、後壁9に沿って設けられているため、ホルダ本体2の内部に存在する機器や、部品との距離が離れた状態となっている。特に、後方へ向かって突出した突出部102に対応する場所に位置するアンテナ103は、よりホルダ本体2の内部に存在する機器や、部品との距離が離れた状態となる。ここで、ホルダ本体2の内部には、チューナ回路など金属を含む導電部材が存在しており、この導電部材とアンテナ103とが接触した場合や、これらが近接した場合、アンテナ103が形成する磁束に導電部材が悪影響を与え、アンテナの受信感度が劣化するが、上記構成のため、アンテナ103の受信感度の劣化を防止することができる。
【0027】
さらに、突出部102は、ホルダ本体2の上下方向における下部に形成されている。このため、アンテナ103は、ホルダ本体2における下部に位置することとなる。従って、ホルダ本体2に、携帯型電子機器50を装着した場合、この携帯型電子機器50とアンテナ103との距離が離れた状態になる。ここで、携帯型電子機器50は、制御回路や、液晶駆動回路など金属を含む導電部材が多数存在しており、この導電部材とアンテナ103とが近接した場合、アンテナ103が形成する磁束に導電部材が悪影響を与え、アンテナ103の受信感度が劣化するが、上記構成のため、アンテナ103の受信感度の劣化を防止することができる。
【0028】
また、図8に示すように、アンテナ103は、プリント基板101の左端に固定される左アンテナブラケット106にアンテナ左部水平部103aに設けられた左アンテナ取付部107がねじ止めによって固定されるとともに、プリント基板101の右端に固定される右アンテナブラケット108にアンテナ右部水平部103eに設けられた右アンテナ取付部109がねじ止めによって固定されることにより、ホルダ本体2に固定される。すなわち、アンテナ103は、両端が支持された状態で、ホルダ本体2の内部に浮いた状態となる。この構成のため、プリント基板101などのホルダ本体2の内部に存在する金属製の部品からアンテナ103をより離した状態とすることができ、上述したように、アンテナ103の受信感度の劣化を防止することができる。
【0029】
また、図7及び図8に示すように、アンテナ中央水平部103cの右部には、前方に突出した固定部110が設けられている。この固定部110は、アンテナ103をホルダ本体2により強固に固定するための部材であり、アンテナ103がホルダ本体2に取り付けられた場合において、ホルダ本体2に設けられた固定部支持部材111にねじ止めされる。ここで、ホルダ装置1は、車両に設けられるものであり、車両の走行に伴う振動の影響を受けるが、この固定部110が固定部支持部材111に支持されることにより、アンテナ103に対する振動の悪影響が緩和される。
【0030】
図9は、車載受信システム100の機能的構成を示すブロック図である。
この図に示すように、ホルダ装置1は、チューナ部120と、アンテナ103を備えており、携帯型電子機器50は、制御部121と、記憶部122と、表示パネル52と、音声処理部123と、アンプ部124と、を備えている。
制御部121は、車載受信システム100の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行手段としてのCPU(Central Processing Unit)や、このCPUに実行される制御プログラムや、この制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROM(Read Only Memory)、CPUに実行されるプログラムやこのプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)などを備えている。制御部121は、図9に示すように、接続検出部121a、及び、チューナ制御部121bを備えているが、これらについては後述する。
【0031】
記憶部122は、EEPROMやフラッシュメモリにより構成され、制御部121の制御の下、書き換え可能に各種データを記憶するものである。記憶部122には、仕向地データ122aが記憶されている。仕向地データ122aとは、少なくとも、当該車載受信システム100が輸出される仕向地の周波数帯及び周波数ステップを示すデータを含んでいる。従って、車載受信システム100の記憶部122には、仕向地毎に、当該仕向地に対応する仕向地データ122aが記憶されることとなる。なお、仕向地データ122aに含まれるデータは、周波数帯及び周波数ステップを示すデータに限らず、例えば、仕向地のチャンネルに関するデータや、仕向地のオーディオレベルに関するデータなどを含んでいてもよい。
【0032】
表示パネル52は、液晶表示ディスプレイからなる表示部52aと、この表示部52aに重ねて配置され、タッチ操作によって車載受信システム100に対し各種指示を行うタッチ操作部52bと、を備えている。制御部121は、液晶駆動回路を含んで構成され、表示部52aに各種情報を表示する。また、制御部121は、タッチ操作部52bに対するタッチ操作を検出すると、操作位置を示す操作信号を制御部121に出力する。ユーザは、表示部52aに表示された情報を参照しつつ、タッチ操作部52bをタッチ操作することにより、ラジオ放送のチャンネルを選択したり、また、受信する電波の周波数を直接指示したりする。
【0033】
チューナ部120は、タッチ操作部52bが操作されてラジオ放送の受信チャンネルが選択された場合に、選択された受信チャンネルに対応する周波数にアンテナ103が受信している電波を同調させる同調回路と、同調した電波を音声信号に復調する復調回路とを有するチューナ回路を備えており、復調した音声信号を音声処理部123に出力する。本実施形態に係るチューナ部120は、車載受信システム100が輸出される可能性のある仕向地の周波数帯の各々を受信可能な構成となっている。
音声処理部123は、制御部121の制御の下、チューナ部120から入力された音声信号の出力レベルを調整するとともに、音声信号の周波数特性を調整し、調整した音声信号をアンプ部124に出力する。
アンプ部124は、音声処理部123から入力された音声信号を増幅する。アンプ部124で増幅された音声信号は、スピーカ126で音声に変換され出力される。
【0034】
次いで、制御部121が備える接続検出部121a、及び、チューナ制御部121bについて説明する。
接続検出部121aは、携帯型電子機器50がホルダ装置1に装着されたことを検出するものであり、例えば、ホルダ装置1に携帯型電子機器50が装着された場合にオンとなるスイッチの出力値に基づいて携帯型電子機器50が装着されたことを検出する。
また、チューナ制御部121bは、記憶部122に記憶された仕向地データ122aに基づいて、チューナ部120を制御するものである。具体的には、制御部121は、接続検出部121aによって携帯型電子機器50がホルダ装置1に装着されたことが検出された場合、記憶部122の仕向地データ122aを参照する。そして、仕向地データ122aから、当該車載受信システム100の仕向地における受信周波数帯、及び、周波数ステップを示すデータを取得し、このデータに基づいてチューナ部120を制御する。このとき、チューナ部120は、ホルダ装置1に装着された携帯型電子機器50が記憶(保持)する仕向地データ122a(仕向地の情報)に基づいて、受信すべき仕向地の周波数帯の受信動作を行うこととなる。
【0035】
このように、本実施形態では、チューナ部120は、車載受信システム100が輸出される可能性のある仕向地の周波数帯の各々を受信可能な構成となっている。これにより、同一種類のホルダ装置1を用いて、異なる仕向地に対応した受信動作を行わせることができる。これにより、仕向地ごとにホルダ装置1を個別に製造する必要がなく、部品の共通化が図れるから、製造コストを削減することができる。
さらに、本実施形態では、仕向地データ122aに基づいて、制御部121がチューナ部120を制御する。つまり、チューナ部120は、携帯型電子機器50が記憶する仕向地データ122aに基づいて、受信すべき仕向地の受信動作を行う。従って、ホルダ装置1に対して仕向地に対応した設定を何ら行う必要がなく、携帯型電子機器50をホルダ装置1に装着するだけで自動的に適切な仕向地の受信動作を行わせることができる。
【0036】
また、本実施形態では、制御部121に、仕向地に対応したチューナ部120の制御をさせるためには、当該仕向地に係る仕向地データ122aを記憶部122に記憶させればよい。よって、仕向地の周波数帯、及び、周波数ステップに対応したホルダ装置1を仕向地ごとに製造する場合と比較して、製造にかかる作業が簡易化される。
なお、上述した例では、仕向地データ122aを記憶部122に記憶する場合を例にして説明したが、制御部121が備えるROMに、当該車載受信システム100が輸出される仕向地の周波数帯、及び、周波数ステップに基づいてチューナ部120を制御するためのプログラムを予め記憶しておくようにし、ホルダ装置1に携帯型電子機器50が装着された際に、制御部121がプログラムに従って、チューナ部120を制御する構成としてもよい。この場合であっても、仕向地データ122aを記憶部122に記憶する場合と同様の効果を得ることができる。
【0037】
次いで、車載受信システム100の動作について、図10のフローチャートを用いて説明する。
まず、車載受信システム100の携帯型電子機器50の制御部121の接続検出部121aは、携帯型電子機器50がホルダ装置1に装着されたか否かを監視する(ステップSA1)。携帯型電子機器50がホルダ装置1に装着された場合(ステップSA1:YES)、制御部121は、記憶部122に記憶されている仕向地データ122aを参照し、この仕向地データ122aからこの車載受信システム100が輸出される仕向地の周波数帯を示すデータ、及び、周波数ステップを示すデータを取得する(ステップSA2)。
周波数帯を示すデータ、及び、周波数ステップを示すデータの取得後、制御部121は、取得したデータに基づいて、チューナ部120を制御する(ステップSA3)。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、チューナ部120は、車載受信システム100が輸出される可能性のある仕向地の周波数帯の各々を受信可能な構成となっている。これにより、同一種類のホルダ装置1を用いて、異なる仕向地に対応した受信動作を行わせることができる。これにより、仕向地ごとにホルダ装置1を個別に製造する必要がなく、部品の共通化が図れるから、製造コストを削減することができる。
さらに、本実施形態では、仕向地データ122aに基づいて、制御部121がチューナ部120を制御する。つまり、チューナ部120は、携帯型電子機器50が記憶する仕向地データ122aに基づいて、受信すべき仕向地の受信動作を行う。従って、ホルダ装置1に対して仕向地に対応した設定を何ら行う必要がなく、携帯型電子機器50をホルダ装置1に装着するだけで自動的に適切な仕向地の受信動作を行わせることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、仕向地データ122aは、仕向地の周波数帯、及び、周波数ステップを示すデータを含んでおり、制御部121は、仕向地データ122aが含む仕向地の周波数帯、及び、周波数ステップに基づいて、チューナ部120を制御する。
チューナ部120は、仕向地に対応した周波数帯、及び、周波数ステップに基づいて、確実に、受信動作を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、車両のダッシュボードに、ホルダ装置1を取り付けた場合、突出部102に対応する位置にあるアンテナ103は、車両のフロントウィンドウに向かって突出した状態となる。アンテナ103は、主に車両のフロントウィンドウを介して電波を受信するため、上記構成によれば、アンテナ103の受信感度の向上を図ることができる。
さらに、アンテナ103は、後壁9に沿って設けられているため、ホルダ本体2の内部に存在する機器や、部品との距離が離れた状態となっている。特に、後方へ向かって突出した突出部102に対応する場所に位置するアンテナ103は、よりホルダ本体2の内部に存在する機器や、部品との距離が離れた状態となる。ここで、ホルダ本体2の内部には、チューナ回路など金属を含む導電部材が存在しており、この導電部材とアンテナ103とが接触した場合や、これらが近接した場合、アンテナ103が形成する磁束に導電部材が悪影響を与え、アンテナの受信感度が劣化するが、上記構成のため、アンテナ103の受信感度の劣化を防止することができる。
【0041】
また、本実施形態では、突出部102は、ホルダ本体2の上下方向における下部に形成されている。このため、アンテナ103は、ホルダ本体2における下部に位置することとなる。従って、ホルダ本体2に、携帯型電子機器50を装着した場合、この携帯型電子機器50とアンテナ103との距離が離れた状態になる。ここで、携帯型電子機器50は、制御回路や、液晶駆動回路など金属を含む導電部材が多数存在しており、この導電部材とアンテナ103とが近接した場合、アンテナ103が形成する磁束に導電部材が悪影響を与え、アンテナ103の受信感度が劣化するが、上記構成のため、アンテナ103の受信感度の劣化を防止することができる。
【0042】
また、本実施形態では、アンテナ103の左右方向における長さT1は、ホルダ本体2の幅方向の長さT2と近い長さに形成され、ホルダ本体2の内部において水平に設けられている。特に、本実施形態では、ボルト孔9aを避けた状態で、アンテナ103の左右方向における長さT1を、ホルダ本体2の左右方向における長さT2に近い長さとすることができ、例えば、アンテナ103をホルダ本体2の外部に設けたり、ホルダ本体2の左右方向における長さを拡張したりすることなく、ホルダ本体2の内部において、アンテナ長を確保することができる。ここで、アンテナ103の共振周波数は、ヘリカルコイルの全長及びピッチによって定められるが、本実施形態では、アンテナ長を十分確保できるため、アンテナ103において、各仕向地のラジオ放送の電波を受信可能な所望の全長及びピッチのヘリカルコイルを形成することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば本実施形態では、ラジオ放送を受信する車載受信システム100を例に説明したが、受信する放送はラジオ放送に限らず、デジタルラジオ放送や、サテライトラジオ放送、デジタルテレビ放送などの放送を受信する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係る車載受信装置が備えるホルダ装置の平面、正面、底面、右側面、及び、背面をそれぞれ示す5面図である。
【図2】ホルダ装置と携帯型電子機器とを共に示した図である。
【図3】ホルダ装置に携帯型電子機器を装着した状態を示す斜視図である。
【図4】ホルダ装置を後方から見た斜視図である。
【図5】ホルダ装置に携帯型電子機器を装着した状態の正面断面図である。
【図6】ホルダ本体の正面断面図である。
【図7】下蓋を取り外したホルダ本体を下から見た図である。
【図8】ホルダ本体の分解斜視図である。
【図9】車載受信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図10】車載受信装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 ホルダ装置
50 携帯型電子機器
100 車載受信システム
102 突出部
103 アンテナ
120 チューナ部
121 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるホルダ装置と、このホルダ装置に脱着自在な携帯型電子機器とを備え、
前記ホルダ装置には、アンテナと、このアンテナに接続されて、前記ホルダ装置の複数の仕向地の周波数帯の各々を受信可能に構成したチューナ部とを設け、
前記携帯型電子機器には、前記ホルダ装置のチューナ部が受信すべき仕向地の情報を保持させ、
前記ホルダ装置のチューナ部は、前記ホルダ装置に装着された前記携帯型電子機器が保持する仕向地の情報に基づいて、受信すべき仕向地の周波数帯の受信動作を行うことを特徴とする車載受信システム。
【請求項2】
前記ホルダ装置のチューナ部が受信すべき仕向地の情報は、少なくとも、当該仕向地の周波数帯、及び、周波数ステップを示す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の車載受信システム。
【請求項3】
前記ホルダ装置の後壁に後方へ突出した突出部を設けるとともに、前記ホルダ装置の内部において前記突出部に沿った状態で前記アンテナを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載受信システム。
【請求項4】
前記携帯型電子機器を、前記ホルダ装置の上方に装着される構成とし、
前記突出部を前記ホルダ装置の前記後壁の下部に設けたことを特徴とする請求項3に記載の車載受信システム。
【請求項5】
前記アンテナは、前記ホルダ装置の幅方向の長さと略同一の長さを有し、前記ホルダ装置の内部において水平に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車載受信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−103793(P2010−103793A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273876(P2008−273876)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】