説明

車載用灰皿

【課題】開蓋方式がプッシュ方式であるにも拘わらず、開蓋用ばねを過剰に強くする必要がなく、蓋体の開き具合をゆっくり且つ滑らかにすることができる車載用灰皿を提供すること。
【解決手段】本体部11と、蓋体13と、開蓋用ばね14と、ロック装置20を備えた車載用灰皿10であって、ロック装置20は被係止部21と、ロック部22及びロック部22と蓋体13との間に設けられ、開蓋用ばね14より弱弾発力でロック部22を係止方向に復帰させる復帰ばね29とで構成され、ロック部22は、懸架軸23を中心に揺動可能に設けられ、本体部11内に突出し、被係止部21に係止する係止部26が被係止部21に対面する対向面25に突設されているロック本体24、蓋体13に設けられ外部に露出するように配置され、押圧位置Pの中心が懸架軸23の中心より被係止部21に設けられている、ロック部22の頭部に設けられた押し釦部28とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓋体に設けられたプッシュボタンに軽く触れて押すだけで蓋体を確実且つゆっくりと開くことができる車載用灰皿に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用灰皿は、運転席のそばに設けられたドリンクボトル収納部に収納され、自動車の運転状態にある運転者が喫煙中のたばこの灰を落したり、火の点いているたばこを消火してから投入廃棄するために使用されるものである。従来の車載用灰皿は蓋体の先端に突出するように設けられた指掛けに左手又は右手の指を掛け、これを上に引き上げて蓋体を開くようにしているが、蓋体に設けられた閉蓋用のバネの弾発力が強いと開蓋時に灰皿自体が持ち上がることがあり、蓋体を開けにくいという問題があった。
【0003】
そこで、蓋体を上から押すだけで開蓋ができるような、例えば先行技術文献1に示すような車載用灰皿が提供された。この灰皿を簡単に説明すると、上面が開口した有底筒状の本体部の開口一側部にヒンジ部にて蓋体が開閉可能に設けられており、該ヒンジ部に常時開蓋方向に付勢する巻きばねが設けられており、この開方向の付勢力に抗して蓋体を閉じた時に閉蓋状態にロックするロック装置が設けられている。
【0004】
このロック装置の構造は、蓋体下部の上下を貫通して固定されたケースの両側面から下方に向けて先端に内向きのフックが設けられた1対の係止爪が突設されており、この係止爪の間に昇降するロックボタンが設けられている。開蓋状態ではロックボタンが突出状態で、係止爪はロックボタンとともに突出して左右に開いた状態となっている。ロックボタンはケース内に設けたばねにより下面突出方向に付勢されているとともに、ケース内において、ハート状のリード溝が刻設されたハートカムにピンを介して結合している。
【0005】
そして、開蓋状態では、ピンは、ハートカムのリード溝の最低位置に位置しており、この状態から蓋体を押圧して閉じると、ロックボタンが本体部側に設けられたT字形のストライカの頂部に当接して閉蓋の進行と共に相対的に蓋体内に押し込まれ、これと同時に両係止爪も押し込まれつつその間隔を狭めてストライカの係合段部に左右から挟むようにして係合する。係合時点でピンはハートカムのカムリード溝の上部側位置まで移動し、ハート形の第1のオーバトラベル位置を乗越えた中央位置を安定点として係止爪によりストライカの頂部両側に形成された係合段部に係合し、クリック音を発しつつ、閉蓋体状態にロックする。ロックボタン用のばねは、前記安定状態を維持する。
【0006】
そして、この閉蓋状態で、煙草の灰落としや消火廃棄のために蓋体を開こうとすると、蓋体の開閉端を強く押し下げてピンをハートカムの第2のオーバトラベル位置を乗越えさせ、この状態で蓋体から手を離すと巻きばねの弾発力で蓋体が開く。前記ロックボタン用のばねはハートカムを移動するピンのガイドにのみ働くため、開蓋は巻きばねの弾発力だけとなるので、ある程度強いばねが必要となる。それ故、開蓋時には巻きばねの弾発力で勢い良く開くことになり、運転中のドライバーをびっくりさせることになって好ましくない。
【0007】
また、吸殻を本体部に投入して蓋をすると、燃え残り部分からヤニを含んだ煙が出て内部に充満する。この煙はロックボタンや係止爪に付着してその動きを阻害する他、ロックボタンが挿通配置されたケースを通って蓋体内部に侵入し、内部に収納されたソーラパネルや制御基板に付着してその性能を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3141193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる従来例に鑑みてなされたもので、本発明の第1の目的とする処は、開蓋方式がプッシュ方式であるにも拘わらず、閉蓋時に開蓋用ばねと蓋体を閉蓋状態に維持するロックばねが共同して閉蓋状態を維持し、従って開蓋用ばねを過剰に強くする必要がなく、第2にはプッシュボタンの操作が確実で且つ蓋体内部に煙が侵入せず、第3には開蓋時、開蓋用ばねの弾発力を殺して蓋体の開き具合をゆっくり且つ滑らかにした車載用灰皿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明の車載用灰皿(10)は、
上面が開口した有底筒状の本体部(11)と、
本体部(11)の開口一側部にヒンジ部(12)で開閉可能に設けられた蓋体(13)と、
ヒンジ部(12)に設けられ、常時、開蓋方向に蓋体(13)を付勢する開蓋用ばね(14)と、
ヒンジ部(12)の反対位置に設けられ、蓋体(13)を閉じた時に開蓋用ばね(14)の付勢力に抗して蓋体(13)を閉蓋体状態にロックするロック装置(20)を備えた車載用灰皿(10)であって、
ロック装置(20)は、
本体部(11)の開口内部に設けられた被係止部(21)と、該被係止部(21)に係脱するロック部(22)及びロック部(22)と蓋体(13)との間に設けられ、前記開蓋体用ばね(14)より弱弾発力で、ロック部(22)を係止方向に復帰させる復帰ばね(29)とで構成され、
前記ロック部(22)は、
蓋体(13)内にて水平方向に懸架された該懸架軸(23)を中心に揺動可能に設けられ、該懸架軸(23)より下側の脚部(30)が蓋体(13)の下面に形成された挿通孔(31)から本体部(11)内に突出し、閉蓋時に前記被係止部(21)に係止してロック状態を保つ係止部(26)が被係止部(21)に対面する対向面(25)に突設されているロック本体(24)、
蓋体(13)に設けられた釦用通孔(27)内にて外部に露出するように配置され、押圧位置(P) の中心が懸架軸(23)の中心より被係止部(21)側に設けられている、ロック部(22)の頭部に設けられた押し釦部(28)とで構成されていること特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の車載用灰皿(10)は第2の目的を達成するもので、蓋体(13)の挿通孔(31)の孔周縁面(32)が、懸架軸(23)を中心とする揺動方向の円弧面状に形成され、
ロック本体(24)に設けられた挿通孔閉塞鍔(34)の前記孔周縁面(32)に近接又は摺接する対向面(35)が前記孔周縁面(32)に合わせて円弧面状に形成され、且つ、ロック本体(24)の揺動前後で前記孔周縁面(32)を閉塞可能な大きさとしたこと特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の車載用灰皿(10)は第3の目的を達成するもので、
本体部(11)と蓋体(13)を繋ぐヒンジ部(12)の固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)との間或いは少なくともそのいずれか一方に回転側ヒンジ半部(12b)の回転を抑制する摩擦部材(33)を配設したことを特徴とする。
【0013】
請求項4は前記摩擦部材(33)に関し、摩擦部材(33)が固定側ヒンジ半部(12a)に設けられた固定歯車(36)と、回転側ヒンジ半部(12b)に設けられ、該固定歯車(36)に噛合しつつ回転する回転歯車(37)及び該回転歯車(37)と回転側ヒンジ半部(12b)との間に設けられた摩擦体(33a)或いは両歯車(36)(37)及び回転歯車(36)内に設けられた摩擦体(33a)とで構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項5は前記摩擦部材(33)の他の実施例に関し、固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)とを回転可能に連結するヒンジ軸(12c)を摩擦部材(33)としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本第1発明によれば、復帰ばね(29)の弾発方向がロック部(22)を係止方向に復帰揺動させる方向となっているので、閉蓋時には開蓋用ばね(14)と復帰ばね(29)とが同じ方向で係止力を強化させる方向に働くため、閉蓋状態維持のための開蓋用ばね(14)の力を過度に強くする必要がなく、開蓋時の蓋体(13)の動きを遅くでき、運転中に音を立てて開蓋するような事態を回避できる。
【0016】
この点、請求項3のように、固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)との間或いは少なくともそのいずれか一方に回転側ヒンジ半部(12b)の回転を抑制する摩擦部材(33)を配設することで、よりスローで円滑な開蓋状態を実現する。該摩擦部材(33)の例としては請求項4、5のように、固定歯車(36)、これに噛合しつつ回転する回転歯車(37)及び該回転歯車(37)と回転側ヒンジ半部(12b)との間或いは少なくともいずれか一方の歯車(36)(37)内に設けられた摩擦体(33a)や、更には固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)とを回転可能に連結するヒンジ軸(12c)を摩擦部材(33)とすることで、回転歯車(37)と摩擦体(33a)との摩擦力を事前に調整してから組み立てることになり、或いは組み立て時においてその摩擦力を調整し、その結果、本発明の目的とするスローで円滑な開蓋状態の実現をより確実にする。
【0017】
そして、請求項2のように、蓋体(13)の挿通孔(31)の円弧面状孔周縁面(32)をロック本体(24)に設けられた円弧面状挿通孔閉塞鍔(34)の対向面(35)にてロック本体(24)の揺動前後で閉塞するので、閉蓋時の燃え残りからの紫煙が蓋体(13)内に入り込まず、内部に収納した電子部品の保護を図れる。なお、蓋体(13)の挿通孔(31)の孔周縁面(32)とロック本体(24)の挿通孔閉塞鍔(34)の対向面(35)が適合状態の円弧面状に形成されているので、押し釦部(28)を指で押した時、挿通孔閉塞鍔(34)の対向面(35)が挿通孔(31)の孔周縁面(32)を滑ってロック部(22)がスムーズに倒れ込み、運転中という特殊環境での開蓋操作を円滑に行うことができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる車載用灰皿の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】図1の側面図である。
【図5】図1の背面図である。
【図6】図11の側面側から見たX−X断面図である。
【図7】図6の押し釦を押した状態の要部断面図である。
【図8】図6の開蓋状態の要部断面図である。
【図9】図11の正面側から見たY−Y断面図である。
【図10】図2おける蓋体を取り外した時の平面図である。
【図11】図2おける蓋体内部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施態様を図面に従って説明する。車載用灰皿(10)は前述のように運転席のそばに設けられたドリンクホルダやドリンクボトル収納部に収納され、自動車の運転状態にある運転者が喫煙中のたばこの灰を落したり、火の点いている煙草を消火してから投入廃棄するために使用されるもので、本体部(11)、蓋体(13)、本体部(11)の開口一側部において蓋体(13)を開閉可能にするヒンジ部(12)、開蓋用ばね(14)及び蓋体(13)を本体部(11)に係脱するロック装置(20)とで構成されている。本体部(11)は金属製あるいは耐火性に富む樹脂製で上面が開口した有底筒状体(40)と、その下半分の外面を覆う筒状ゴム材(41)とで構成され、脱離しないように接着されている。
【0020】
有底筒状体(40)は筒状ゴム材(41)が装着された本体下部(40a)と、蓋体(13)が蝶着される本体上部(40b)とで構成されており、本体上部(40b)の下部外周面の対称位置には係止突起(42)が凸設されており、本体下部(40a)の開口上端部分の内周面には前記係止突起(42)が嵌り込むL形溝(43)が凹設されている。このL形溝(43)は本体下部(40a)の開口に繋がる縦溝部(43b)と、その最下部から水平に形成された水平溝部(43a)及び水平溝部(43a)内に設けられ、本体下部(40a)に本体上部(40b)を装着した時に水平溝部(43a)に回り込んで嵌め込まれた係止突起(42)が乗り越えて係止されるストッパー用突条(43c)で構成されている。
【0021】
本体上部(40b)は略リング状のもので、その開口一側部内周に半月状のヒンジ保持部(40c)が設けられており、このヒンジ保持部(40c)の上面にヒンジ部(12)の固定側となる左右一対の固定側ヒンジ半部(12a)が凸設され、この両固定側ヒンジ半部(12a)の外側が固定歯車(36)となっている。
【0022】
図10に示すようにヒンジ保持部(40c)の反対側で平面視左側半分には、本体上部(40b)の開口(40d)の内周側に突出するように平面視略三角形の板状の消火プレート部(50)が設けられており、その中央に内径が次第に小さくなる火消し通孔(51a)が設けられた逆円錐台筒状の火消し筒部(51)と、その横の上面に数条の火消し溝(52)が形成されている。
【0023】
その右側半分には煙草挟み用切欠(53a)が切り欠かれた板状の煙草ホールド用プレート部(53)が凸設されており、前記消火プレート部(50)との隣接辺間に両者を連結する門型に形成された連結部(54)が設けられており、この連結部(54)の水平部分がロック装置(20)の被係止部(21)となる。
【0024】
蓋体(13)は外装プレート部(60)とこれに内側から嵌り込んで固定される内装プレート部(62)及びその内装部材とで構成されており、ロック装置(20)のロック部(22)が装着されている。後述するヒンジ部(12)の反対側となる外装プレート部(60)の前端部分には釦用通孔(27)が穿設されており、外装プレート部(60)の下面にてその両側に後述するロック部(22)の懸架軸(23)を上から支持する上部軸受部(61)が凸設されている。
【0025】
内装プレート部(62)の前端部分上面には該上部軸受部(61)に対応する位置に下部軸受部(63)が凸設されており、懸架軸(23)を下から支持するようになっている。そしてその下部軸受部(63)の間にはロック本体(24)の脚部(30)が挿通される挿通孔(31)が穿設されており、その挿通孔(31)の周囲の孔周縁面(32)は上・下部軸受部(61)(63)間に支持される懸架軸(23)を中心とし、該懸架軸(23)の揺動方向の円弧面状に形成されている。そして、挿通孔(31)に隣接してLED収納窓部(64)が設けられ、その開口窓(64a)は開蓋時内部に収納されたLED(64b)が本体部(11)の内部を照明することができるように閉蓋状態において内装プレート部(62)に斜め背方下向きに開設されている。
【0026】
蓋体(13)の内装部材には、前記LED(65)、太陽電池(66)、制御基板(67)が含まれ、歯車(36)(37)及び摩擦部材(33)が使用される場合には、固定歯車(36)に噛合する回転歯車(37)が装着され、内装プレート部(62)に装着されブロック体(68)が含まれる。そして蓋体(13)と本体部(11)とは本体部(11)の開口一側部においてヒンジ部(12)にて開閉可能に蝶着されている。
【0027】
該ヒンジ部(12)は既に述べたように本体上部(40b)の開口一側部内周の半月状ヒンジ保持部(40c)に突設され、ヒンジ部(12)の固定側となる左右一対の固定側ヒンジ半部(12a)と、蓋体(13)の内装部材側で半月状ヒンジ保持部(40c)に対応する位置(これに限定されるものではないが、本発明では内装プレート部(62)の該対応位置)に設けられた回転側ヒンジ半部(12b)及び両者を連結するヒンジ軸(12c)とで構成される。
【0028】
蓋体(13)のスロー開蓋の第1実施例は、後述する摩擦部材(33)を使用せず、蓋体(13)がバタンと開かない程度の単に弱い開蓋用ばね(14)だけで実行する場合である。
【0029】
スロー開蓋の第2実施例はヒンジ部(12)の固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)との間に摩擦部材(33)が設けられた場合で、その1の具体例は図8(b)及び図11(c)に示すように固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)とを連結するヒンジ軸(12c)を断面c字状のスプリングピンとし、スプリングピン製のヒンジ軸(12c)を固定側ヒンジ半部(12a)及び回転側ヒンジ半部(12b)の軸孔に圧入し、ヒンジ軸(12c)と軸孔との摩擦によるスロー開蓋を実現する場合である。図示していないが、固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)との間に開蓋用ばね(14)を避けて摩擦部材を配置する場合も含まれる。
【0030】
第2実施例のその2は、少なくともそのヒンジ半部(12a)(12b)のいずれか一方に回転側ヒンジ半部(12b)の回転を抑制する摩擦部材(33)が配設されている場合で、これも図示していないがヒンジ軸(12c)の一端をヒンジ半部(12a)(12b)のいずれか一方固定し、他端が摩擦を持って回転するようになっている。
【0031】
第3実施例としては摩擦部材(33)として歯車(36)(37)を使用する方法で、この場合は上記と異なり、間接的に固定側ヒンジ半部(12a)と回転側ヒンジ半部(12b)との間に摩擦部材(33)が設けられた例となる。従って、この場合、回転歯車(37)は内装プレート部(62)に固定されたブロック体(68)の両サイドに伸びたアーム部(68a)の内面側に軸支されているので、第1実施例の回転側ヒンジ半部(12b)はブロック体(68)の両サイドに伸びたアーム部(68a)を含む概念ということになる(図11(a))。
【0032】
ここで、歯車(36)(37)と摩擦体(33a)の関係を見ると、図11(a)に示すように回転歯車(37)と回転側ヒンジ半部(12b)との間に設けられる場合、或いはその変形例として、図示しないが回転歯車(36)内に摩擦体(33a)が設けられる場合である。
【0033】
前者の場合、摩擦体(33a)は例えばゴム製や弾力性を有するエラストマ製のリング部材を指す。このようなリング部材の場合、単に回転歯車(37)とアーム部(68a)の間に適度の圧縮力を持って挟持されるだけでもよいが、回転歯車(37)又はアーム部(68a)の一方に接着し、適度の圧縮力を持って他方に圧接するようにしてもよく、いずれにしても回転歯車(37)とアーム部(68a)の内面に摩擦抵抗を持って接しており、回転歯車(37)の回転を抑制している。
【0034】
後者の場合、回転歯車(37)が内部に非常に粘度の高いグリスが充填されている本体部分と、本体部分に隣接して配置された歯車部及び歯車部と共に回転し、本体部分内のグリスによって回転が抑制されている歯車軸とで構成されている。
【0035】
ロック部(22)は、ロック本体(24)と、ロック本体(24)の頭部に設けられた押し釦部(28)とで構成されている。ロック本体(24)は両サイドに縦リブ(24a)が設けられたプレート部(24b)と、縦リブ(24a)の外側面から外方に向けて水平に突設された懸架軸(23)及びプレート部(24b)の下縁から垂下された脚部(30)とで構成され、脚部(30)の前面(即ち、蓋体(13)内にてロック本体(24)が水平方向に懸架された時、被係止部(21)に対面する対向面(25))に係止部(26)が突設されている。係止部(26)の脚部(30)となす角度(α)は90°〜90°に近い鋭角に形成され、係止部(26)の前面(26a)は脚部(30)の先端に向けて傾斜するように形成されている。これにより正面視で係止部(26)は片鏃状に形成されている(図6)。そして脚部(30)の前面(即ち、対向面(25))は懸架軸(23)の中心に略一致する。
【0036】
プレート部(24b)と脚部(30)の境界部分にはロック本体(24)が懸架軸(23)を中心として揺動方向に揺動した時にその前後において蓋体(13)の挿通孔(31)を閉塞できる大きさの挿通孔閉塞鍔(34)が突設されており、孔周縁面(32)に対面するその対向面(35)が円弧面状に形成され、その全面において両者が近接又は摺接状態となるように設けられている。
【0037】
押し釦部(28)は蓋体(13)に設けられた釦用通孔(27)より一回り小さい楕円形に近い円形板部(28a)と、円形板部(28a)より一回り大きく釦用通孔(27)の下側に配置されてロック本体(24)の揺動時に釦用通孔(27)と円形板部(28a)との間から内部が見えないように両者の隙間を埋める矩形板部(28b)とで構成され、ロック本体(24)の頭部に一体的に設けられている。そしてこの押し釦部(28)は図7からわかるように懸架軸(23)の中心に対して若干前方側に移動した状態に設けられている。そしてこの懸架軸(23)より前方側の部分(P)が指で押圧する部分である。そしてこの押圧部分(P)の下面側にばね保持突起(28c)が突設されている。
【0038】
復帰ばね(29)は、本実施例の場合、圧縮コイルばねで、前記にばね保持突起(28c)と内装プレート部(62)の前端部分との間に配置されており、その弾発力にてロック部(22)を係止方向に復帰させるようになっている。復帰ばね(29)は、ロック部(22)を係止方向に復帰させるものであれば、圧縮コイルばねに限られず板ばね或いはゴムのような弾性体でもよい。
【0039】
しかして、喫煙しながら運転をしている運転者が、煙草の灰を落したり、或いは消火した後、これを捨てようとする場合、または一時的に煙草を仮置きしたりする場合、指で押し釦部(28)の押圧部分(P)を押すと、押圧位置(P) の中心が懸架軸(23)の中心より被係止部(21)側に設けられているため、懸架軸(23)を中心にロック部(22)が復帰ばね(29)を押し縮めながら手前側にわずかに倒れ込む。この時、孔周縁面(32)にロック本体(24)の円弧面状の挿通孔閉塞鍔(34)の対向面(35)が摺接している場合、摺動しつつ円弧運動を呈してロック本体(24)の傾動をスムーズに実現する。そして前記倒れ込みの反作用として係止部(26)が被係止部(21)から離れ、係合状態が解除される。復帰ばね(29)は開蓋用ばね(14)より弱弾発力であるから指で押圧しているにも拘わらず蓋体用ばね(14)の強い弾発力により復帰ばね(29)が更に僅かに押し縮められて蓋体(13)が僅かに持ち上げられ、係止部(26)の係合面(26b)が被係止部(21)より上にあがり、被係止部(21)への再係合を確実に阻止する。また、ロック部(22)は係止部(26)まで全体が一体物であるので、指による押圧力はロック部(22)全体を倒れ込み方向に揺動させ、確実に前記係合を解除する。
【0040】
蓋体(13)の解除が行われ、指を離すと蓋体(13)は開蓋用ばね(14)より開蓋されるが、この時、本体部(11)の(40b)と蓋体(13)を繋ぐヒンジ部(12)の一方の固定側ヒンジ半部(12a)の固定歯車(36)と他方の回転側ヒンジ半部(12b)の回転歯車(37)とが噛合しつつ回転し、かつ摩擦体(33a)が回転歯車(37)の回転を抑制しているので、(或いは、摩擦部材(33)により開蓋の開き速度を抑制しているので、)蓋体(13)は勢いよく開かず、静かにかつスムーズに開蓋する。(勿論、前述のように前記摩擦体(33a)等やこれらを含む摩擦部材(33)を設けなくとも開蓋用ばね(14)の弾発力を弱くすることができるので、蓋体(13)の静粛且つスムーズ開蓋をある程度実現する。)
【0041】
煙草を一時的にホールドさせておく場合には、開蓋状態において、煙草挟み用切欠(53a)に挟み込めばよいし、灰を落す場合には、煙草を本体部(11)の開口(40d)のいずれかの部分に軽くタップさせることになるし、捨てる場合は火消し通孔(51a)に差し込んだり、火消し溝(52)に擦りつけて消火し、本体部(11)内に投棄することになる。灰落としや投棄が終わると開蓋状態の蓋体(13)に手をかけ、閉蓋方向に押し下げる。閉蓋直前の状態において、係止部(26)の傾斜前面(26a)が被係止部(21)に接触しつつ下方に移動し、係止面(26b)が被係止部(21)の下面を超えた瞬間に復帰ばね(29)の弾発力により係合して閉蓋する。この時、蓋体(13)の下面が本体部(11)の上面に殆ど接触する状態に設定しておけば、閉蓋時における内部の密閉性は達成でき、内部に充満している紫煙の漏れは抑制できる。
【0042】
また、前記閉蓋時に十分に消火されず吸い殻に残り火があった場合、車載用灰皿(10)内に紫煙が充満するが、蓋体(13)の挿通孔(31)がロック本体(24)の挿通孔閉塞鍔(34)にて閉塞されているので、蓋体(13)内の電子部品などにヤニが付着してこれらを棄損させるようなことや歯車(36)(37)(或いは摩擦部材(33))や復帰ばね(29)に付着してこれらの動きを低下させるようなことがない。これにより運転中でも灰皿(10)の開蓋を安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
(10) 車載用灰皿
(11) 本体部
(12) ヒンジ部
(12a) 固定側ヒンジ半部
(12b) 回転側ヒンジ半部
(13) 蓋体
(14) 開蓋用ばね
(20) ロック装置
(21) 被係止部
(22) ロック部
(23) 懸架軸係止部
(24) ロック本体
(25) 対向面
(26) 係止部
(27) 釦用通孔
(28) 押し釦部
(29) 復帰ばね
(30) 脚部
(31) 挿通孔
(32) 孔周縁面
(33) 摩擦部材
(33a) 摩擦体
(34) 挿通孔閉塞鍔
(35) 対向面
(36) 固定歯車
(37) 回転歯車
(P) 押圧位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した有底筒状の本体部と、
本体部の開口一側部にヒンジ部で開閉可能に設けられた蓋体と、
ヒンジ部に設けられ、常時、開蓋方向に蓋体を付勢する開蓋用ばねと、
ヒンジ部の反対位置に設けられ、蓋体を閉じた時に開蓋用ばねの付勢力に抗して蓋体を閉蓋体状態にロックするロック装置を備えた車載用灰皿であって、
ロック装置は、
本体部の開口内部に設けられた被係止部と、該被係止部に係脱するロック部及びロック部と蓋体との間に設けられ、前記開蓋体用ばねより弱弾発力で、ロック部を係止方向に復帰させる復帰ばねとで構成され、
前記ロック部は、
蓋体内にて水平方向に懸架された該懸架軸を中心に揺動可能に設けられ、該懸架軸より下側の脚部が蓋体の下面に形成された挿通孔から本体部内に突出し、閉蓋時に前記被係止部に係止してロック状態を保つ係止部が被係止部に対面する対向面に突設されているロック本体、
蓋体に設けられた釦用通孔内にて外部に露出するように配置され、押圧位置の中心が懸架軸の中心より被係止部側に設けられている、ロック部の頭部に設けられた押し釦部とで構成されていること特徴とする車載用灰皿。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用灰皿において、
蓋体の挿通孔の孔周縁面が、懸架軸を中心とする揺動方向の円弧面状に形成され、
ロック本体に設けられた挿通孔閉塞鍔の前記孔周縁面に近接又は摺接する対向面が前記孔周縁面に合わせて円弧面状に形成され、且つ、ロック本体の揺動前後で前記孔周縁面を閉塞可能な大きさとしたこと特徴とする車載用灰皿。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載用灰皿において、
本体部と蓋体を繋ぐヒンジ部の固定側ヒンジ半部と回転側ヒンジ半部との間或いは少なくともそのいずれか一方に回転側ヒンジ半部の回転を抑制する摩擦部材を配設したことを特徴とする車載用灰皿。
【請求項4】
請求項3に記載の車載用灰皿において、
摩擦部材が固定側ヒンジ半部に設けられた固定歯車と、回転側ヒンジ半部に設けられ、該固定歯車に噛合しつつ回転する回転歯車及び該回転歯車と回転側ヒンジ半部との間に設けられた摩擦体或いは両歯車及び回転歯車内に設けられた摩擦体とで構成されたことを特徴とする車載用灰皿。
【請求項5】
請求項3に記載の車載用灰皿において、
固定側ヒンジ半部と回転側ヒンジ半部とを回転可能に連結するヒンジ軸を摩擦部材としたことを特徴とする車載用灰皿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−111287(P2012−111287A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260239(P2010−260239)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000114709)ヤック株式会社 (22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】