説明

転炉底吹き羽口部用耐火物およびそれを用いた転炉

【課題】耐用性の高い転炉底吹き羽口部用耐火物およびそれを用いた転炉を提供することにある。
【解決手段】転炉の炉底からガスを吹込む羽口部に、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦であって、その主成分中、マグネシアが60〜85重量%、アルミナが5〜20重量%、黒鉛が10〜25重量%である煉瓦を使用したことを特徴とする転炉底吹き羽口部用耐火物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐用性の高い転炉底吹き羽口部用耐火物およびそれを用いた転炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業において銑鉄から様々な鉄鋼製品を製造するための工程の一つに脱炭処理工程があり、この工程における反応容器としては、しばしば転炉が使用される。近年、高い攪拌力による優れた冶金特性のため、炉底に設けた羽口部からのガス吹込みが行われる場合が多い。現在では、羽口部用の耐火物として耐スポーリング性、耐食性の観点から、MgO−C煉瓦が使用されている。
【0003】
しかしながら羽口部は、ガスによる冷却によって発生する熱応力により他の部位に比べて損耗速度が速く、寿命を律速する部位となっていることが多い。このため従来から以下に説明するような様々な試みがなされているが、未だ不十分である。
【0004】
例えば、特許文献1には、熱応力を緩和するためにCとして膨張黒鉛を使用するMgO−C煉瓦が開示されている。しかし、膨張黒鉛の使用量が増加すると所謂締りが悪くなるため、多量に配合すると成形圧を大きくする必要があり、製品形状が制限される場合がある。
【0005】
また、特許文献2には、直径が1mm以上、長さが5〜20mm、長さ/直径比が1.6〜5の外形を有し、かつ平均結晶径が60〜120μmのマグネシア棒状骨材を含有し、さらに96質量%以上のMgOを含有するMgO−C煉瓦が開示されているが、耐スポーリング性が不十分であり、損耗速度低減効果が小さい。
【0006】
さらに、特許文献3には、金属羽口と羽口部用煉瓦との間にZrBを主成分とするセラミック管を挿入する技術が開示されているが、高価である上に、CIP成形により羽口部用煉瓦を作成する場合には使用できず、あるいは成形圧に制限が加えられる。
【0007】
そして、特許文献4には、格子状に織ったカーボンファイバのクロスを配合することにより、耐火物が温度変動で亀裂を生じても破断、脱落するのを防止する技術が開示されているが、高価である上に、成形時に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−209169号公報
【特許文献2】特開2003−171171号公報
【特許文献3】特開平07−224311号公報
【特許文献4】特開昭58−217473号公報
【特許文献5】特開2002−080272号公報
【0009】
【非特許文献1】1999年6月、耐火物技術協会発行の「耐火物手帳」、第144頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の技術による転炉底吹き羽口部用耐火物としての煉瓦では、製造に制限があったり、費用が嵩んだり、損耗速度低減効果が十分でなかったりするという不都合があった。
【0011】
以上の実情に鑑み、本発明は、耐用性の高い転炉底吹き羽口部用耐火物およびそれを用いた転炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の転炉底吹き羽口部用耐火物は、前記課題を解決するために、転炉の炉底からガスを吹込む羽口部に、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦であって、その主成分中、マグネシアが60〜85重量%、アルミナが5〜20重量%、黒鉛が10〜25重量%である煉瓦を使用したことを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、前記マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦におけるアルミナは、アルミナ単体でもよく、スピネル(MgO・Al)中のアルミナでもよい。
【0014】
さらに本発明では、前記マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦は、残余成分として5重量%以下の酸化防止剤を添加しても良い。
【0015】
その添加物としては、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、炭化珪素(SiC)および硼素(B)のうち1種類または2種類以上の元素を含むことが好ましく、例えばAl、Mg、Si等から選ばれた1種または2種以上の金属、またはAl−MgやAl−Siのような合金、もしくはBCなどの炭化物を用いることができる。
【0016】
そして本発明の転炉は、炉底のガスを吹込む羽口部に、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦であって、その主成分中、マグネシアが60〜85重量%、アルミナが5〜20重量%、黒鉛が10〜25重量%である煉瓦を使用したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炉底のガスを吹込む羽口部に、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦を使用しており、本発明者の研究によれば、アルミナ(Al)の割合が、5重量%以上の場合に耐熱衝撃性に優れるとともに繰返し熱負荷に強く、20重量%以下の場合に充分な耐食性が得られた。また、マグネシア(MgO)の割合についても、60重量%以上の場合に耐熱衝撃性に優れるとともに繰返し熱負荷に強く、85重量%以下の場合に充分な耐食性が得られた。そして、黒鉛(C)の割合についても、10重量%以上の場合に耐熱衝撃性に優れるとともに繰返し熱負荷に強く、25重量%以下の場合に充分な耐食性が得られた。従って、本発明によれば、耐用性の高い転炉底吹き羽口部用耐火物およびそれを用いた転炉を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のMgO−C煉瓦の曲げ強度を1とした場合の本発明の転炉底吹き羽口部用耐火物の一実施形態としての煉瓦の曲げ強度比を示すグラフである。
【図2】従来のMgO−C煉瓦の弾性率を1とした場合の本発明の上記実施形態の煉瓦の弾性率比を示すグラフである。
【図3】従来のMgO−C煉瓦と本発明の上記実施形態の煉瓦との繰返し熱負荷をかけた場合の弾性率の低下率を示すグラフである。
【図4】従来のMgO−C煉瓦と本発明の上記実施形態の煉瓦との回転侵食試験による損耗速度の上昇率を示すグラフである。
【図5】従来のMgO−C煉瓦の曲げ強度を1とした場合の本発明の転炉底吹き羽口部用耐火物の他の一実施形態としての煉瓦の曲げ強度比を示すグラフである。
【図6】従来のMgO−C煉瓦の弾性率を1とした場合の本発明の上記実施形態の煉瓦の弾性率比を示すグラフである。
【図7】従来のMgO−C煉瓦と本発明の上記実施形態の煉瓦との繰返し熱負荷をかけた場合の弾性率の低下率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の転炉の一実施形態では、転炉の炉底に設けられてそこからガスを吹込む羽口部に、羽口用の金属管等を挿通される貫通孔を中央部に持つ例えば円柱状または角柱状の耐火物として、本発明の転炉底吹き羽口部用耐火物の一実施形態としての、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦であって、その主成分中、マグネシアが60〜85重量%、アルミナが5〜20重量%、黒鉛が10〜25重量%であり、そのアルミナが、スピネル(MgO・Al)中のアルミナである煉瓦を用いている。
【0020】
すなわち本発明者らは、転炉底吹き羽口部用耐火物の損耗速度の低減のためには、その耐火物内に発生する熱応力を低減させることに加え、繰り返し高温に晒されても組織脆化を起こさず、比較的高い強度を有することで亀裂の発生や伸展を抑止することが有効であると考えた。
【0021】
一般的に使用されているMgO−C煉瓦は、非特許文献1に記述があるように、1700℃以上の高温でマグネシアとCの酸化還元反応が起こり、これに起因して組織の脆化が起こる。そこで、以上のことを考慮した上で鋭意研究を行った結果、本実施形態の、C量が10〜25重量%、Al−MgOスピネルが5〜20重量%であるMgO−スピネル−C系耐火物が、組織脆化の抑制および発生応力低減に優れていることを見出した。
【0022】
なお、特許文献5には、マグネシア−スピネル−C煉瓦が提案されているが、スピネルがMgOの50%とスピネルの配合量が多く、その後のMgO−C煉瓦の改善や操業改善によりこの技術では効果が小さなものとなった。また、高価なスピネルを多量配合するため煉瓦が高価なものとなることに加え、耐食性が大きく劣るという不都合があった。
【0023】
図1に、本実施形態の煉瓦(後述の実施例1,2)を1700℃で3時間不活性ガス中で保持した後の曲げ強度を、従来のMgO−C煉瓦(後述の比較例1)の同様の曲げ強度で規格化した(従来のMgO−C煉瓦を1とした)値を示す。
【0024】
本実施形態の煉瓦は組織の脆化が抑制され、従来品より大きな強度を有する。なお、1000℃で3時間不活性ガス中で保持した後の曲げ強度を図1に併せて示すが、この場合も従来のMgO−C煉瓦と比較して若干大きい。
【0025】
図2に、従来のMgO−C煉瓦(後述の比較例1)の弾性率を1とした場合の、本実施形態の煉瓦(後述の実施例1〜4)の弾性率比を示す。従来のMgO−C煉瓦と比較して本実施形態の煉瓦は弾性率が小さいことがわかる。これにより、発生する熱応力が小さくなるため、耐熱衝撃性に優れている。
【0026】
また、実操業において転炉は、溶銑装入、吹錬、出鋼を繰り返すため、煉瓦表面は、出鋼直前の1650〜1750℃の高温から、溶銑装入直前の600〜1000℃までの間の熱負荷を繰返し受ける。従来のMgO−C煉瓦(後述の比較例1)は、この繰返し熱負荷を受けた場合、図3に示すように弾性率の低下が大きい。一方、この図3に、本実施形態の煉瓦(後述の実施例1〜4)に同じ条件で熱負荷をかけた場合の結果も示す。従来のMgO−C煉瓦と比較して本実施形態の煉瓦は弾性率の低下率が小さく、煉瓦の損傷が軽微であることがわかる。
【0027】
本実施形態において、主成分におけるスピネルの割合が5重量%より少ないと上述の効果が少なく、20重量%よりも多いと耐食性の面で問題があるため、上記の範囲としている。CとMgOとについての割合も、耐食性と耐熱衝撃性との観点から上述のように限定される。
【0028】
なお、本実施形態の煉瓦においては、残余成分として、耐酸化性向上のために5重量%以下の金属AlやSi,B化合物等を添加することもできる。その添加物としては、例えばAl、Mg、Si等から選ばれた1種または2種以上の金属、またはAl−MgやAl−Siのような合金、もしくはBCなどの炭化物を用いることができる。
【0029】
以下の表1に示す主成分(数値は重量%)で、本実施形態の煉瓦(実施例1〜4)および比較用(比較例1〜3)の煉瓦を準備して、その耐熱衝撃性および耐食性を比較した。なお、比較例1が従来のMgO−C煉瓦である。
【0030】
【表1】

【0031】
耐熱衝撃性については、30×30×120mmの試験片を使用し、1550℃の電気炉中に15分保持した後、15℃の水槽に投入して試験片の表面温度が250℃になるまで熱衝撃を与える、という処理を繰返した場合の熱衝撃前後の動弾性率を比較することで評価した。試験煉瓦は何れも、コークスブリーズ中に1000℃で3時間保持して焼成し、供試した。
【0032】
その結果を図3に示す。前述の通り、1回の熱衝撃による弾性率の低下が、本実施形態の方が小さいので、本実施形態の煉瓦は、耐熱衝撃性に優れていることがわかる。また、熱衝撃を3回、5回と繰返した場合の弾性率の低下が、本実施形態の方が小さいので、本実施形態の煉瓦は、繰り返し熱負荷を受けた場合の損傷が小さく、繰り返し熱負荷に強いということがわかる。
【0033】
このように本実施形態の煉瓦は、従来のMgO−C煉瓦と比較して、耐熱衝撃性に優れているのみならず、繰返し熱負荷熱負荷にも強いものである。
【0034】
耐食性は、回転侵食試験によって評価した。回転侵食試験は、40mmφの試料を溶銑+スラグ中で100rpmの回転速度で回転させ、3時間保持後の損耗量で評価した。試験煉瓦は、上述の繰返し熱負荷がかかることを考慮して、1600℃で1時間保持した後に800℃まで降温して1時間保持するというサイクルを2度繰返したものを供試した。
【0035】
その結果を図4に示す。本実施形態の煉瓦の耐食性は、従来のMgO−C煉瓦と同等若しくはそれより若干優れており、耐食性が問題となる懸念はない。また、スピネルの配合量を多くすると、耐食性が著しく低下する。
【0036】
従って、本実施形態のMgO−スピネル−C煉瓦を、羽口用の金属管等を挿通される貫通孔を中央部に持つ例えば円柱状または角柱状の耐火物として、転炉の炉底に設けられてそこからガスを吹込む羽口部に用いれば、高温での組織の脆化を抑止でき、また耐熱衝撃性の改善と、繰返し熱負荷を受けた場合の煉瓦の損傷軽減とができるので、転炉羽口部の損耗を抑止することができる。
【0037】
本発明の転炉の他の一実施形態では、転炉の炉底に設けられてそこからガスを吹込む羽口部に、羽口用の金属管等を挿通される貫通孔を中央部に持つ例えば円柱状または角柱状の耐火物として、本発明の転炉底吹き羽口部用耐火物の他の一実施形態としての、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦であって、その主成分中、マグネシアが60〜85重量%、アルミナが5〜20重量%、黒鉛が10〜25重量%であり、そのアルミナがアルミナ単体である煉瓦を用いている。
【0038】
すなわち本発明者らは、前述のように、転炉底吹き羽口部用耐火物の損耗速度の低減のためには、その耐火物内に発生する熱応力を低減させることが有効であると考え、その方法について鋭意研究を行った。
【0039】
転炉の羽口部は、炉底煉瓦からの入熱と羽口内を流れるガスによる抜熱の影響を受けて温度勾配が大きくなる。羽口部の煉瓦の損耗を抑止するためにはこの温度勾配により発生する熱応力を低減させることが有効である。
【0040】
本発明者の検討の結果、転炉底吹き羽口部用耐火物として、本実施形態の、C量が10〜25重量%、Alが5〜20重量%、MgOが60〜85重量%であるMgO−アルミナ−C系耐火物が、従来のMgO−C煉瓦よりも飛躍的に発生応力低減に優れていることを見出した。
【0041】
図5に、従来のMgO−C煉瓦(後述の比較例4)の弾性率を1とした場合の、本実施形態の煉瓦(後述の実施例5,6)の弾性率比を示す。従来のMgO−C煉瓦と比較して本実施形態の煉瓦は弾性率が小さいことがわかる。これにより、発生する熱応力が小さくなるため、耐熱衝撃性に優れている。
【0042】
また、実操業において転炉は、溶銑装入、吹錬、出鋼を繰り返すため、煉瓦表面は、出鋼直前の1650〜1750℃の高温から、溶銑装入直前の600〜1000℃までの間の熱負荷を繰返し受ける。従来のMgO−C煉瓦(後述の比較例4)は、この繰返し熱負荷を受けた場合、図6に示すように弾性率の低下が大きい。一方、この図6に、本実施形態の煉瓦(後述の実施例5〜8)に同じ条件で熱負荷をかけた場合の結果も示す。従来のMgO−C煉瓦と比較して本実施形態の煉瓦は弾性率の低下率が小さく、煉瓦の損傷が軽微であることがわかる。
【0043】
本実施形態において、主成分におけるAlの割合が5重量%より少ないと上述の効果が少なく、20重量%よりも多いと耐食性の面で問題があるため、上記の範囲としている。CとMgOとについての割合も、耐食性と耐熱衝撃性との観点から上述のように限定される。
【0044】
なお、本実施形態の煉瓦においては、残余成分として、耐酸化性向上のために5重量%以下の金属AlやSi,B化合物等を添加することもできる。その添加物としては、例えばAl、Mg、Si等から選ばれた1種または2種以上の金属、またはAl−MgやAl−Siのような合金、もしくはBCなどの炭化物を用いることができる。
【0045】
以下の表2に示す主成分(数値は重量%)で、本実施形態の煉瓦(実施例5〜8)および比較用の煉瓦(比較例4〜6)を準備して、その耐熱衝撃性および耐食性を比較した。なお、比較例4が従来のMgO−C煉瓦である。
【0046】
【表2】

【0047】
耐熱衝撃性については、30×30×120mmの試験片を使用し、1550℃の電気炉中に15分保持した後、15℃の水槽に投入して試験片の表面温度が250℃になるまで熱衝撃を与える、という処理を繰返した場合の熱衝撃前後の動弾性率を比較することで評価した。試験煉瓦は何れも、コークスブリーズ中に1000℃で3時間保持して焼成し、供試した。
【0048】
その結果を図6に示す。前述の通り、1回の熱衝撃による弾性率の低下が、本実施形態の方が小さいので、本実施形態の煉瓦は、耐熱衝撃性に優れていることがわかる。また、熱衝撃を3回、5回と繰返した場合の弾性率の低下が、本実施形態の方が小さいので、本実施形態の煉瓦は、繰り返し熱負荷を受けた場合の損傷が小さく、繰り返し熱負荷に強いということがわかる。
【0049】
このように本実施形態の煉瓦は、従来のMgO−C煉瓦と比較して、耐熱衝撃性に優れているのみならず、繰返し熱負荷熱負荷にも強いものである。
【0050】
耐食性は、回転侵食試験によって評価した。回転侵食試験は、40mmφの試料を溶銑+スラグ中で100rpmの回転速度で回転させ、3時間保持後の損耗量で評価した。試験煉瓦は、上述の繰返し熱負荷がかかることを考慮して、1600℃で1時間保持した後に800℃まで降温して1時間保持するというサイクルを2度繰返したものを供試した。
【0051】
その結果を図7に示す。本実施形態の煉瓦の耐食性は、従来のMgO−C煉瓦と同等若しくはそれより若干優れており、耐食性が問題となる懸念はない。
【0052】
従って、本実施形態のMgO−Al−C煉瓦を、羽口用の金属管等を挿通される貫通孔を中央部に持つ例えば円柱状または角柱状の耐火物として、転炉の炉底に設けられてそこからガスを吹込む羽口部に用いれば、耐熱衝撃性の改善と、繰返し熱負荷を受けた場合の煉瓦の損傷軽減とができるので、転炉羽口部の損耗を抑止することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができる。すなわち例えば本発明の煉瓦は、円柱状または角柱状でなく転炉の羽口部の構造に応じた他の形状としても良く、また本発明の転炉は、炉底の羽口部だけでなくその周辺部等の他の部位にも本発明の煉瓦を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
かくして本発明の本発明によれば、炉底のガスを吹込む羽口部に、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦を使用しており、本発明者の研究によれば、アルミナ(Al)の割合が、5重量%以上の場合に耐熱衝撃性に優れるとともに繰返し熱負荷に強く、20重量%以下の場合に充分な耐食性が得られた。また、マグネシア(MgO)の割合についても、60重量%以上の場合に耐熱衝撃性に優れるとともに繰返し熱負荷に強く、85重量%以下の場合に充分な耐食性が得られた。そして、黒鉛(C)の割合についても、10重量%以上の場合に耐熱衝撃性に優れるとともに繰返し熱負荷に強く、25重量%以下の場合に充分な耐食性が得られた。従って、本発明によれば、耐用性の高い転炉底吹き羽口部用耐火物およびそれを用いた転炉を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉の炉底からガスを吹込む羽口部に、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦であって、その主成分中、マグネシアが60〜85重量%、アルミナが5〜20重量%、黒鉛が10〜25重量%である煉瓦を使用したことを特徴とする転炉底吹き羽口部用耐火物。
【請求項2】
前記マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦におけるアルミナは、アルミナ単体であることを特徴とする、請求項1記載の転炉底吹き羽口部用耐火物。
【請求項3】
前記マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦におけるアルミナは、スピネル(MgO・Al)中のアルミナであることを特徴とする、請求項1記載の転炉底吹き羽口部用耐火物。
【請求項4】
前記マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦は、残余成分として5重量%以下の酸化防止用添加物を含むことを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項記載の転炉底吹き羽口部用耐火物。
【請求項5】
前記酸化防止用添加物は、アルミニウム、珪素、炭化珪素、Al−MgO合金および硼素系化合物のうち1種類または2種類以上の元素を含むことを特徴とする、請求項4記載の転炉底吹き羽口部用耐火物。
【請求項6】
炉底のガスを吹込む羽口部に、マグネシア(MgO)とアルミナ(Al)と黒鉛(C)とを主成分とする煉瓦であって、その主成分中、マグネシアが60〜85重量%、アルミナが5〜20重量%、黒鉛が10〜25重量%である煉瓦を使用したことを特徴とする転炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100580(P2013−100580A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245057(P2011−245057)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】