農作業機
【課題】軽量且つ小型の走行機体に農作業機を装着した場合に、これらの重量バランスが崩れ難い農作業機を構成する。
【解決手段】走行機体100に装着される装着部10を有する前フレーム13と、前フレーム13に揺動自在に連結される複数本のリンク部材41、42と、各リンク部材41、42の移動端側に連結される後フレーム45と、後フレーム45に突設された回動軸53に回動自在に連結され、作業部50を支持した伝動フレーム51を有し、伝動フレーム51が前進作業位置と後進作業位置との間を回動自在な農作業機1において、装着部10に前進用駆動軸22と後進用駆動軸23を後フレーム45側へ突出した状態で走行機体100幅方向に並設し、リンク部材41、42が最も折り畳まれた状態で、伝動フレーム51の前フレーム13側の側面から前進用駆動軸22に接続可能な前進用従動軸30を、その反対側の側面から後進用駆動軸23に接続可能な後進用従動軸30を突出させる。
【解決手段】走行機体100に装着される装着部10を有する前フレーム13と、前フレーム13に揺動自在に連結される複数本のリンク部材41、42と、各リンク部材41、42の移動端側に連結される後フレーム45と、後フレーム45に突設された回動軸53に回動自在に連結され、作業部50を支持した伝動フレーム51を有し、伝動フレーム51が前進作業位置と後進作業位置との間を回動自在な農作業機1において、装着部10に前進用駆動軸22と後進用駆動軸23を後フレーム45側へ突出した状態で走行機体100幅方向に並設し、リンク部材41、42が最も折り畳まれた状態で、伝動フレーム51の前フレーム13側の側面から前進用駆動軸22に接続可能な前進用従動軸30を、その反対側の側面から後進用駆動軸23に接続可能な後進用従動軸30を突出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業部を通常作業時とは反対側のオフセット位置に移動させると共に、その前後関係を反転(反転リバース)させて走行機体を後進させながらオフセット作業が可能な農作業機に関するものであり、特に小型の走行機体に装着される農作業機に適する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後部に装着され、作業部を走行機体の側方に移動させた状態で走行機体の走行と共に進行してオフセット作業を行う農作業機、例えば畦塗り機では、作業部のオフセット作業に伴って作業部から圃場に作用する力の反力が走行機体を揺動させるモーメントとして作用する。質量の大きい比較的大型の走行機体に作用する場合では、このモーメントが問題になることはないが、軽量な小型の走行機体に作用する場合では、走行機体と畦塗り機との重量バランスが崩れ易くなり、走行機体の走行が不安定になり、安定した作業ができなくなる問題を招く。
【0003】
そこで、畦塗り機の本体側フレームにリンクを接続し、リンクの移動端側に一端部を回動自在に取り付けた伝動フレームを設け、伝動フレームの他端部に作業部を取り付けて、作業部を水平方向にオフセット移動可能にすると共に、リンクの揺動によって作業部を前側に移動させて、作業部を一方側の前進作業位置と他方側の後進作業位置に移動可能な畦塗り機が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−199405号公報(段落0009〜0012、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の畦塗り機は、走行機体から伝達された動力をユニバーサルジョイントと伝動軸からなる伝動機構を介して作業部に伝達するように構成されているが、ユニバーサルジョイントは動力の伝達方向が制限されるため、リンクの許容揺動角度が小さい。また伝動フレームをリンクの移動端側に配設された後フレームに沿った方向に延長させると、後フレームから作業部までの距離が大きくなるため、畦塗り機の前後方向長さが大きくなり、走行機体と畦塗り機との重量バランスが崩れ易くなる。
【0006】
そこで、従来の畦塗り機では、作業部が前進作業位置にあるとき、伝動フレームを後フレームに対して伝動フレームの回動中心から前方側に傾けた姿勢にすることにより、作業部を回動中心より前側の前進作業位置に移動させているが、それには伝動フレームの長さを大きくする必要がある。このため、畦塗り機自体が大型化するため、小型の走行機体への装着には適さない。
【0007】
一方、作業部を後進作業位置に移動させる場合、リンクの他方側への許容揺動角度は小さく、また伝動フレームは後フレームに対して回動中心から後側へ傾いた姿勢にあるため、作業部をより前方側に位置させることには限界がある。更に、伝動フレームの長さが大きいことで、装着部から作業部までの距離も大きくなり、作業部から圃場に作用する力の反力が走行機体を揺動させるモーメントが大きくなる。結局、走行機体が軽量な小型の場合では、走行機体と畦塗り機との重量バランスが崩れ易くなって、走行機体の走行が不安定となって安定した作業ができなくなる。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、軽量且つ小型の走行機体に装着して作業を行う場合に、走行機体との重量バランスが崩れ難く、安定した作業が可能な農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の農作業機は、走行機体の後部に装着される装着部を有する前フレームと、この前フレームに揺動自在に連結される複数本のリンク部材と、この各リンク部材の移動端側に連結される後フレームと、この後フレームに突設された回動軸に回動自在に連結され、先端位置に作業部を支持した伝動フレームを有し、
前記伝動フレームが前記後フレームの回動軸の回りに、前記作業部が前進作業姿勢になる前進作業位置と、後進作業姿勢になる後進作業位置との間を回動自在な農作業機において、
前記装着部に前記走行機体からの動力を受ける前進用駆動軸と後進用駆動軸が前記後フレーム側へ突出した状態で前記走行機体幅方向に並設され、
前記リンク部材が最も折り畳まれた状態のとき、前記伝動フレームの前記前フレーム側の側面から、前記前進用駆動軸に接続可能な前進用従動軸が突出し、その反対側の側面から、前記後進用駆動軸に接続可能な後進用従動軸が突出し、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記前進作業位置まで移動したときに、前記前進用従動軸が前記前進用駆動軸に接続され、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記後進作業位置まで移動したときに、前記後進用従動軸が前記後進用駆動軸に接続されることを構成要件とする。
【0010】
リンク部材は平面上、2本で対になるが、伝動フレームを前フレームに支持させる関係で、2本のリンク部材、もしくはいずれか一方のリンク部材が上下に並列することもあり、合わせて4本、もしくは3本のリンク部材が前フレームに連結されることもある。
【0011】
前進作業姿勢のときと後進作業姿勢のときに後フレームは前フレームと平行に配置され、複数本のリンク部材と共にリンクを構成する。リンク部材は作業部が前進作業姿勢のときと後進作業姿勢のときに折り畳まれた状態にあり、後フレームは前フレームに最も接近し、前進用駆動軸及び後進用駆動軸と、前進用従動軸及び後進用従動軸との接続が可能であるよう、前フレームとの間の距離が調整された状態にある。
【0012】
リンク部材の折り畳みの向きは作業部が前進作業姿勢となる側であり、走行機体の走行方向前方側(前進の向き)に対して右側となる。作業部が伝動フレームの回動により走行機体の前進の向きに対して左側へ移動したときに後進作業姿勢となる。
【0013】
前フレームからは後フレーム側へリンク部材を回動自在に支持するブラケットが走行機体の幅方向に並列して張り出す。この2本のブラケットの内、リンク部材の折り畳み側(前進作業位置側)に位置するブラケットの前フレームからの張り出し長さはリンク部材が折り畳まれた状態にあるときに後フレームが前フレームに最も接近するよう、反対側(後進作業位置側)に位置するブラケットの前フレームからの張り出し長さより小さい。
【0014】
並列するブラケットの張り出し長さが等しい場合には、リンク部材の折り畳み状態で両リンク部材間の距離が小さくなり、伝動フレームを支持する後フレームの回動軸の周辺部分が納まりにくい。これに対し、リンク部材の折り畳み側に位置するブラケットの張り出し長さが反対側に位置するブラケットの張り出し長さより小さいことで、リンク部材の折り畳み状態で両リンク部材間の距離を張り出し長さが等しい場合より大きく確保することができる。この結果、前フレームと両リンク部材とで囲まれた領域の空間が広くなり、リンク部材の折り畳み状態で、後フレームの回動軸の周辺に位置する前進用従動軸及び後進用従動軸等を両リンク部材間に納めながら、後フレームを前フレームに接近させることが可能になる。
【0015】
伝動フレームはリンク部材の折り畳み状態のときに後フレームの回動軸の回りに回動し、作業部が前進作業姿勢になる前進作業位置から、後進作業姿勢になる後進作業位置まで移動させ、逆に後進作業位置から前進作業位置まで移動させる。伝動フレームの回動は後述のようにシリンダによって行われる。
【0016】
作業部が前進作業位置にあるときには、前進用従動軸は伝動フレームの前フレーム側の側面から突出し、後進用従動軸はその反対側の側面、すなわち農作業機の進行方向後方側の側面から突出する。作業部が後進作業位置に移行したときには、後進用従動軸は伝動フレームの前フレーム側の側面から突出し、前進用従動軸はその反対側である農作業機の進行方向後方側の側面から突出する。
【0017】
リンク部材が折り畳まれた状態では、後フレームが前フレームに最も接近した状態にあり、作業部が前進作業位置にあるときには、前フレームの装着部の後方から前進用駆動軸が後フレーム側へ突出していることと、伝動フレームの前フレーム側の側面から、前進用従動軸が突出していることで、伝動フレームの前進用従動軸が前進用駆動軸に接続された状態にある。
【0018】
またリンク部材が折り畳まれた状態で、作業部が後進作業位置にあるときには、前フレームの装着部の後方から後進用駆動軸が前記後フレーム側へ突出していることと、伝動フレームの前フレーム側の側面から後進用従動軸が突出していることで、伝動フレームの後進用従動軸が後進用駆動軸に接続された状態になる。駆動軸と従動軸の接続は直接的にはクラッチを介して行われるため、前進用駆動軸と後進用駆動軸、及び前進用従動軸と後進用従動軸はクラッチを含む。前進用従動軸と後進用従動軸は独立した別個の従動軸である場合と、連続した単一の従動軸の場合がある。後者の場合、従動軸は伝動フレームを幅方向に貫通する。
【0019】
このように伝動フレームの回動のみによって前進用従動軸が前進用駆動軸に接続され、後進用従動軸が後進用駆動軸に接続されることで、従動軸と駆動軸の接続のために、農作業機の進行方向には伝動フレームを前フレーム側へ移動させる必要がなく、その動作を行うための駆動装置が不要になる。
【0020】
伝動フレームを前フレーム側へ移動させる必要がないことで、伝動フレーム、すなわち作業部を走行機体側に最も接近させた位置に配置することができ、農作業機の作業時において農作業機自体の進行方向の長さ(前後方向長さ)を最短にすることができる。従って作業部から圃場に作用する力の反力がモーメントとなって走行機体に作用しても、モーメントの大きさを最小に留めることが可能である。この結果、走行機体が軽量な小型の場合でも、走行機体と農作業機との重量バランスが崩れる事態を回避、あるいは軽減することができ、走行機体の走行を安定させ、農作業機による作業を安定して行うことが可能になる。
【0021】
伝動フレームの回動のみによって前進用従動軸が前進用駆動軸に接続され、後進用従動軸が後進用駆動軸に接続されることは、具体的には伝動フレームの回動中心となる回動軸が前進用駆動軸を通る直線と後進用駆動軸を通る直線の中点を通る直線上に位置し、前進用従動軸と後進用従動軸が回動軸から、前進用駆動軸と後進用駆動軸との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置していることで、可能になる(請求項2)。
【0022】
回動軸が前進用駆動軸を通る直線と後進用駆動軸を通る直線の中点を通る直線上に位置することで、回動軸から一定の距離を置いた直線上に従動軸が位置していれば、リンク部材が折り畳まれた状態にある限り、伝動フレームの回動に関係なく、従動軸の軸線を駆動軸の軸線上に位置させることが可能である。
【0023】
従って前進用従動軸と後進用従動軸が回動軸から、前進用駆動軸と後進用駆動軸との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置していることで、リンク部材の折り畳み状態では前進用従動軸と後進用従動軸のいずれか一方が前進用駆動軸と後進用駆動軸のいずれか一方に接続されることになる。前記のように作業部が前進作業位置にあるときには、前進用従動軸が前進用駆動軸に接続され、作業部が後進作業位置にあるときには、後進用従動軸が後進用駆動軸に接続される。
【0024】
伝動フレームの回動は、リンク部材の移動端側と伝動フレームの回動軸付近との間に架設されて双方に連結されるシリンダによって行われ、伝動フレームはシリンダの伸縮に伴って回動軸の回りに回動し、作業部を前進作業位置と前記後進作業位置との間を移動させる(請求項3)。シリンダは油圧シリンダと電動シリンダ、及び電動油圧シリンダを含む。
【0025】
シリンダは作業部が前進作業位置にあるときに伸長状態にあり、伸長状態から収縮することで、作業部が後進作業位置に移行するまで伝動フレームを回動軸の回りに回転させる。収縮状態からはシリンダが伸長することで、作業部が前進作業位置に移行するまで伝動フレームを回動軸の回りに回転させる。
【0026】
シリンダは直接的には、伝動フレームとシリンダとの間に介在する回動部材に接続され、回動部材を回動させることで、伝動フレームを回動させる(請求項4)。回動部材は伝動フレームに突設された操作部が相対移動可能な開口を有し、操作部が開口を挿通した状態で、後フレームに突設された支持軸に回動自在に連結される。シリンダは一端において回動部材に連結され、伸縮に伴って回動部材を回動させ、伝動フレームを回動させる。
【0027】
回動部材は伝動フレームに突設された操作部を伝動フレームの回動中心(回動軸)に関して点対称位置まで回転させれば、伝動フレームを回動軸の回りに180度回転させることになる。また回動部材の支持軸を伝動フレームの回動軸より前フレーム側に位置させ、操作部を回動部材の支持軸の回りに回転させれば、操作部の回転角度を180度より小さい角度にしながらも、操作部を伝動フレームの回動軸に関して点対称位置まで回転させることができる。
【0028】
例えば回動部材のシリンダとの連結部と回動部材の支持軸との間の距離と、回動部材の支持軸と操作部までの距離を等しくしたとき、回動部材を支持軸の回りに90度回転させれば、操作部も支持軸の回りに90度回転するが、その回転前後の操作部の位置を結ぶ直線上に伝動フレームの回動軸が位置していれば、伝動フレームは回動軸の回りに180度回転したことになる。
【0029】
すなわち回動部材を例えば90度程度、回転させれば、伝動フレームを180度回転させ、前進作業位置と後進作業位置との間を移行させることが可能である。伝動フレームを180度回転させるのに要する回動部材の回転角度は上記した回動部材のシリンダとの連結部と回動部材の支持軸との間の距離と、回動部材の支持軸と操作部までの距離の比率によって決まり、相対的に回動部材の支持軸と操作部までの距離を大きくすれば、より小さい回動部材の回転角度で伝動フレームを180度回転させることができる。
【0030】
そこで、リンク部材の折り畳み状態で、伝動フレームの回動中心(回動軸)に対してリンク部材の折り畳み側に操作部を配置すると共に、回動部材の支持軸を伝動フレームの回動軸に対して前フレーム側に配置することで、回動部材の回転角度を90度程度、あるいはそれより小さくしながらも、伝動フレームを前進作業位置と後進作業位置との間を移行させることが可能である。
【0031】
作業部が前進作業位置にあるときの伝動フレームの状態と、作業部が後進作業位置にあるときの伝動フレームの状態はリンク部材が折り畳み状態にあるときにシリンダの伸縮によって切り替えられるが、それぞれの状態で伝動フレームは回動軸回りに回動しないよう、後フレームに拘束される必要がある。
【0032】
伝動フレームの後フレームに対する拘束と解除は、例えば伝動フレームに突設される被係合部と、後フレームの、作業部が前進作業位置にあるときの被係合部に対応した位置と、後進作業位置にあるときの被係合部に対応した位置にそれぞれ回動自在に設置される前進側係合部材と後進側係合部材とによって行われる(請求項5)。
【0033】
前進側係合部材は作業部が前進作業位置にあるときに一端部において被係合部に係合可能で、被係合部に係合することにより前進作業位置にある伝動フレームを後フレームに拘束する。後進側係合部材は作業部が後進作業位置にあるときに一端部において被係合部に係合可能で、被係合部に係合することにより後進作業位置にある伝動フレームを後フレームに拘束する。
【0034】
前進側係合部材と後進側係合部材の被係合部への係合状態は、コイルスプリング等の付勢部材の復元力によって被係合部に係合する向きに付勢されることにより維持される。この係合状態は前進側係合部材と後進側係合部材の各他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動により前進側係合部材と後進側係合部材を回動させ、前進側係合部材と後進側係合部材のいずれか一方が被係合部に係合した状態を解除する解除部材によって解除される。前進側係合部材と後進側係合部材が独立している場合には、それぞれに解除部材が組み合わせられるが、前進側係合部材と後進側係合部材を連結部材によって連結すれば、解除部材は一つで済むことになる。
【0035】
解除部材は前進側係合部材や後進側係合部材、または連結部材を被係合部への係合を解除できるだけのストローク分、直線運動させればよいため、解除部材には回転運動を直線運動に変換して力を伝達する電動モータの他、直接直線運動を伝達するソレノイドが主に使用されるが、シリンダ等のアクチュエータの使用も可能である。
【0036】
前進側係合部材と後進側係合部材は共に、付勢部材の復元力によって被係合部に係合する向きに付勢された状態にあり、解除部材はこの復元力に抗する力を付勢部材に与えることで係合を解除する。前進側係合部材と後進側係合部材が連結部材で連結されている場合には、付勢部材は連結部材を付勢すればよい。
【0037】
前進側係合部材と後進側係合部材の、被係合部への係合の向きは問われず、被係合部に対する相対的な位置によって決まる。前進側係合部材と後進側係合部材が被係合部に対して前フレーム側に位置する場合には、前フレーム側から被係合部に係合し、後方側に位置する場合には、後方側から被係合部に係合する。
【0038】
伝動フレームが前進作業位置から後進作業位置に移行するときには、前進側係合部材の被係合部への係合が解除された後、伝動フレームがシリンダによって回動させられ、その被係合部が後進側係合部材の一端部まで移動したときに被係合部が付勢部材に抗して後進側係合部材を一旦、回転させる。同時に付勢部材によって後進側係合部材が復帰して一端部が被係合部に係合する。伝動フレームが後進作業位置から前進作業位置に移行するときには、後進側係合部材の被係合部への係合が解除され、伝動フレームが回動させられた後、被係合部が前進側係合部材の一端部まで移動したときに被係合部が付勢部材に抗して前進側係合部材を一旦、回転させ、同時に付勢部材によって前進側係合部材が復帰して一端部が被係合部に係合する。
【0039】
前記の通り、リンク部材は作業部が前進作業姿勢のとき(伝動フレームが前進作業位置にあるとき)と後進作業姿勢のとき(伝動フレームが後進作業位置にあるとき)に折り畳まれた状態にあることから、リンク部材が折り畳み状態を維持するよう、後フレームが前フレームに拘束される必要がある。リンク部材が折り畳み状態のときには、後フレームが前フレームに接近していることから、後フレームと前フレームのいずれか一方が他方に拘束されることが合理的である。
【0040】
リンク部材の後フレームに対する拘束と解除は、例えば前フレームと後フレームの内のいずれか一方に突設される被係合部と、他方に突設された支持軸の回りに回動可能で、リンク部材が折り畳み状態のときに被係合部に一端部において係合可能な係合部材とによって行われる(請求項6)。係合部材の他端部には直線運動により係合部材を支持軸の回りに回動させ、係合部材が被係合部に係合した状態を解除する解除部材が接続される。
【0041】
係合部材の被係合部への係合状態は、コイルスプリング等の付勢部材の復元力によって被係合部に係合する向きに付勢されることにより維持される。この係合状態は係合部材の他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動により係合部材を回動させ、被係合部に係合した状態を解除する解除部材によって解除される。
【0042】
この場合の解除部材も係合部材を被係合部への係合を解除できるだけのストローク分、直線運動させればよいため、解除部材には回転運動を直線運動に変換して力を伝達する電動モータ、直接直線運動を伝達するソレノイドの他、シリンダ等のアクチュエータが使用される。
【0043】
係合部材の被係合部への係合が解除されることで、リンク部材が前フレームに対して揺動自在になり、後フレームは前フレームに対して平行移動自在になる。この状態で、シリンダを収縮させることで、リンク部材が前フレームに対して折り畳み状態、すなわち作業部側へ傾斜している状態から逆向きに傾斜するまで揺動し、後フレームが前フレームから距離を置いた位置まで平行移動する。
【0044】
作業部の作業状態では作業部が走行機体の幅方向の中心から最も距離を置いた位置にオフセットされているが、後フレームが前フレームから距離を置いた位置まで平行移動することで、作業部のオフセット量が最も小さい位置になり、その状態が農作業機の格納状態になる。
【0045】
後フレームが格納位置に移行するときには、係合部材の被係合部への係合が解除された後、シリンダの収縮によって後フレームが平行移動して格納状態になる。後フレームが格納位置から作業位置に移行するときには、シリンダの伸長によって係合部材が被係合部に接近した後、付勢部材に抗して被係合部を乗り越え、付勢部材によって係合部材復帰して一端部が被係合部に係合する。
【0046】
農作業機の格納状態では係合部材と被係合部の係合が解除されているため、格納状態を保持するにはそのための保持手段を必要とする。具体的にはリンクを構成する複数本のリンク部材の内、作業部側に位置するリンク部材の側面に突設される嵌合部材と、作業部の前記リンク部材側に固定され、嵌合部材が挿通し得る開口を有する被嵌合部材とを備えることで、格納状態にある農作業機を拘束することが可能になる(請求項7)。
【0047】
嵌合部材と被嵌合部材は伝動フレームの格納位置にリンク部材が回動したときに互いに嵌合する位置に配置される。リンク部材が折り畳み状態のときから格納位置に移行するときには、リンク部材は前フレーム(ブラケット)との連結部分の回りに回転し、リンク部材の作業部側の側面は走行機体の前方を向いた状態から後方を向いた状態になる。一方、リンク部材は後フレームと共に、リンクを構成することで、リンク部材の回転に関係なく、伝動フレームはリンク部材の折り畳み状態のときと平行なまま移動するから、伝動フレームに支持されている作業部がリンク部材に接近し、対向しようとする。
【0048】
この互いに対向するリンク部材と作業部のそれぞれに嵌合部材と被嵌合部材を配置することで、伝動フレームの格納状態で、作業部をリンク部材に拘束することが可能になる。嵌合部材が被嵌合部材に嵌合した状態は嵌合部材に対し、被嵌合部材からの抜け止めを施すことで、維持され、作業部の拘束状態になる。
【0049】
伝動フレームの回動操作がシリンダではなく、手動で行われる場合には、伝動フレームの回動支点の付近に回動ロック機構部が備えられる(請求項8)。回動ロック機構部は伝動フレームの回動支点側に一端が回動自在に設けられ、伝動フレームの回動に連動して伝動フレームの回動方向と同一方向に回動する回動プレートと、作業部に設けられ、作業部の回動と共に移動するピン部材と、回動プレートの他端側に一端が回動自在に取り付けられ、他端側にピン部材が挿通する長孔部を有し、作業部の回動に伴ってピン部材が長孔部に沿って移動可能なロック操作部材とを有する。長孔部の両端部には、長孔部に連通してロック操作部材の回動方向と同一方向に延び、ピン部材の長孔部に沿った移動を規制する移動規制孔が形成される。
【0050】
回動プレートはロック操作部材の長孔部に対し、作業部に設けられたピン部材を作業部の回動に伴って長孔部に沿って移動させるものであればよく、回動プレートの回動支点を作業部の可動支点と異なる位置に設け、作業部の回動に伴って回動プレートの回動支点とピン部材との距離が漸次大きくなるように回動プレートを構成することができる。
【0051】
伝動フレームの回動操作が手動で行われる場合には、前記前フレームに連結された一対のリンク部材の一方に形成された連通孔部と、前記後フレームから張り出した張出部に設けられた孔部と、前記リンク部材が前記前フレームに接近した折り畳み状態にあるとき、あるいは前記後フレームが前記前フレームから距離を置いた格納状態のときに、連通状態にある前記孔部及び前記連通孔部に挿通されるロックピンを有する揺動ロック機構部が備えられる(請求項9)。
【0052】
この揺動ロック機構部装置は手動でロックピンを連通状態にある孔部及び連通孔部に挿通することで、リンクの揺動をロックするものであり、モータやリンク機構等の部品を省略でき、農作業機のコストをより安価にすることができる。
【0053】
また、リンク部材の揺動規制を解除する他の方法として、前記後フレームに回動可能に設けられ前側に形成されたフック部が前記一対のリンク部材のいずれかに設けられた係止ピンに係止して前記リンク部材の揺動を規制する係合部材と、前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられた回動部材と、該回動部材に突設されて前記回動部材の回動によって前記係合部材に当接して該係合部材を回動させる押圧ピンと、基端側が前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられ先端側に操作部を有し前記回動部材と一体となって該回動部材を回動させる操作ハンドルとを有する揺動ロック機構部が備えられる(請求項10)。
【0054】
係止ピンは、リンク部材に突設されたものやリンク部材を軸支する回動軸から延出した軸部でもよい。操作ハンドルはこれを回動操作すると、回動部材も連動して回動させることができればよく、操作ハンドルと回動部材が直接的に結合されたり、間接的に結合されてもよい。また誤操作や振動等によってリンク部材の揺動規制を解除する方向に回動部材が容易に回動しないようにするために、押圧ピンが係合部材から離反する側に回動部材を常に付勢するばねを設けてもよい。
【発明の効果】
【0055】
伝動フレームの回動のみによって前進用従動軸を前進用駆動軸に接続可能にし、後進用従動軸を後進用駆動軸に接続可能にするため、伝動フレーム、すなわち作業部を走行機体側に最も接近させた位置に配置することができ、農作業機の作業時において農作業機自体の進行方向の長さを最短にすることができる。従って走行機体が軽量な小型の場合でも、走行機体と農作業機との重量バランスが崩れる事態を回避、あるいは軽減することができ、走行機体の走行を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。図面では伝動フレームに支持された作業部50が畦塗り作業部であり、農作業機1が畦塗り機である場合を示しているが、農作業機1(作業部50)の形態は一切問われず、オフセット作業が可能な農作業機1全般を含む。
【0057】
図1は走行機体100の後部に装着される装着部10を有する前フレーム13と、前フレーム13に揺動自在に連結され、リンク40を構成する複数本のリンク部材41、42と、各リンク部材41、42の移動端側に連結される後フレーム45と、後フレーム45に突設された回動軸53(回動中心)に回動自在に連結される伝動フレーム51を有する農作業機1を示す。伝動フレーム51の先端位置には作業部50が支持され、伝動フレーム51は後フレーム45の回動軸53の回りに、作業部50が前進作業姿勢になる前進作業位置と、後進作業姿勢になる後進作業位置との間を回動自在となっている。以下では農作業機1として畦塗り機の例を説明する。
【0058】
農作業機(畦塗り機)1は図1及び図2に示すように走行機体100からの動力が入力される入力軸4を有する前フレーム13の装着部10において走行機体100に接続されると共に、走行機体100の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されることにより走行機体100に装着され、走行機体100の前進動及び後進動に応じて畦塗り作業を行う。
【0059】
装着部10は走行機体100の三点リンク連結機構に連結可能な連結フレーム11と連結フレーム11の後方側に、走行機体100の幅方向に並列する一対の支持アーム12、12'を介して接合された前フレーム13からなり、連結フレーム11の長さ方向(走行機体100の幅方向)の中央下部に入力軸4が配置される。入力軸4には走行機体100のPTO軸(図示せず)からの動力を図示しない伝動軸を介して伝達される。
【0060】
連結フレーム11の後端側には連結フレーム11の長さ方向に所定間隔を有して後方側へ突出する一対の支持アーム12、12'が上下方向に回動可能に連結され、一対の支持アーム12、12'の後端部に前フレーム13が接合されている。前フレーム13はリンク部材41、42を間隔を置いて支持するのに十分な長さを有する。前フレーム13にはこれを補強すると共に、走行機体100からの動力を受ける前進用駆動軸22と後進用駆動軸23を装着し、リンク部材41、42を連結するための取付フレーム15が前フレーム13を包囲する形で固定されている。
【0061】
取付フレーム15は並列するリンク部材41、42間に、特に入力軸4の背面(後方)側に位置する出力軸である前進用駆動軸22と後進用駆動軸23の背面(後方)側に、伝動フレーム51の回動中心部分を格納するための空間を確保するために、入力軸4に対して走行機体100の幅方向にずれている。詳しくは入力軸4の同一線上に前進用駆動軸22を配置する関係で、前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離の半分だけ、回動軸53(回動中心)が入力軸4の同一線上より、走行機体100の前進の向きに対して左側へシフトしている。
【0062】
取付フレーム15の長さ方向の両側位置からはそれぞれ後方(伝動フレーム51)側へ向かってリンク部材41、42を支持するための箱形のブラケット16、17が張り出し、それぞれの後方側の端部位置にリンク部材41、42を軸支する支持軸18、20が突設される。ブラケット16、17の内、リンク部材41、42の折り畳み側(前進作業位置側)、すなわち走行機体100の前進の向きに対して右側に位置するブラケット17の取付フレーム15からの張り出し長さは反対側(後進作業位置側)の左側に位置するブラケット16の取付フレーム15からの張り出し長さより小さい。リンク部材41、42の折り畳み状態で両リンク部材41、42間の距離を大きく確保し、後フレーム45の回動軸52、53の周辺に位置する前進用従動軸30及び後進用従動軸32等を両リンク部材41、42間に納めながら、後フレーム45を取付フレーム15(前フレーム13)に接近させるためである。
【0063】
走行機体100の前進の向きに対して右側に位置するブラケット17の支持軸18に、前進作業位置にあるときの作業部50側に位置する第1リンク部材41の前端部が連結され、左側に位置するブラケット16の支持軸20に後進作業位置にあるときの作業部50側に位置する第2リンク部材42が連結される。両リンク部材41、42の後端部(移動側端部)に後フレーム45の両端部が連結される。第1リンク部材41の後端部には、後フレーム45との連結位置より、第1リンク部材41の軸線に対して後方側へ屈曲(傾斜)して張り出す延長部41aが形成され、この延長部41aに後述する(電動式)シリンダ61が接続される。延長部41aが屈曲して第1リンク部材41から後方側へ張り出すことで、シリンダ61と第1リンク部材41との干渉を回避しながら、リンク40と伝動フレーム51との間にシリンダ61を架設することができている。
【0064】
左側のブラケット16からはこれを貫通する支持軸20が上下方向に突出し、その上端部に上記の第2リンク部材42が連結され、下端部に第2リンク部材42と平行に配置され、第2リンク部材42と共に伝動フレーム51を支持する第3リンク部材43が連結される。リンク40は互いに平行な取付フレーム15(前フレーム13)と後フレーム45、及び互いに平行な第1リンク部材41と第2リンク部材42及び第3リンク部材43から構成されている。取付フレーム15(前フレーム13)と後フレーム45は少なくともリンク部材41、42の折り畳み状態(前進作業位置と後進作業位置)で平行な状態を維持すればよい。
【0065】
第2リンク部材42と第3リンク部材43の後端部間に同軸の回動軸52、53が配置され、上側の回動軸52に第2リンク部材42と後フレーム45が回動自在に連結され、下側の回動軸53に第3リンク部材43と伝動フレーム51が回動自在に連結される。シリンダ61の伸縮によって全リンク部材41〜43が回転したときには、後フレーム45が回動軸52の回りに回転して取付フレーム15(前フレーム13)から遠ざかる。全リンク部材41〜43が折り畳み状態のまま、シリンダ61が伸縮するときには、伝動フレーム51が回動軸53の回りに回転する。作業部50が前進作業位置Pfにある図1の状態からシリンダ61が収縮すれば伝動フレーム51は回動軸53を回動中心Oとして回転し、図4に示す後進作業位置Pbまで180°回転する。伝動フレーム51はこれらの中間の格納位置Phにも移動可能である。
【0066】
伝動フレーム51は内部に、作業部50まで動力を伝達する動力伝達機構を格納するために箱形の形状をし、回動軸53から作業部(畦塗り作業部)50側へ張り出すように架設され、先端部分に作業部(畦塗り作業部)50が接続される。なお、作業部50は連結フレーム11と前フレーム13との間に架設された作業姿勢調整ネジ47によって上下方向に回動し、作業姿勢の調整が可能になっている。動力伝達機構は後述の前進用受動クラッチ31、または後進用受動クラッチ32からの動力を作業部50に伝達する。
【0067】
作業部(畦塗り作業部)50は図1に示すように圃場の周辺に沿って形成された旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部55と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部57とを備えている。前処理部55は回転可能に支持された耕耘ロータを備え、耕耘ロータは伝動フレーム51に連結されて支持される。整畦部57は回転可能に支持された多面体ドラム58を備え、多面体ドラム58は伝動フレーム51に連結されて支持される。耕耘ロータと多面体ドラム58には伝動フレーム51内の動力伝達機構を介して従動軸30(図13参照)からの動力が伝達される。
【0068】
前フレーム13(取付フレーム15)の長さ方向中間部には、長さ方向に所定距離を置いて配列する前進用駆動軸22と後進用駆動軸23が装着され、前フレーム13(取付フレーム15)から後フレーム45側へ突出している。前進用駆動軸22は入力軸4と同一軸線上に位置し、入力軸4からの動力がユニバーサルジョイント24等を介して前進用駆動軸22に伝達される。
【0069】
後進用駆動軸23には前進用駆動軸22に伝達された動力が前進用駆動軸22及び後進用駆動軸23に装着されたギア25、26(図13参照)を介して伝達される。前進用駆動軸22に動力が伝達されれば、後進用駆動軸23にも動力が伝達され、両駆動軸22、23が回転する。前進用駆動軸22の先端部には前進用駆動クラッチ27(図8参照)が接続され、後進用駆動軸23の先端部には後進用駆動クラッチ28(図8参照)が接続される。前進用駆動軸22と後進用駆動軸23の前フレーム13からの突出長さは等しく、前フレーム13からの、前進用駆動クラッチ27及び後進用駆動クラッチ28先端までの距離も等しい。請求項1における前進用駆動軸と後進用駆動軸はそれぞれ前進用駆動クラッチ27と後進用駆動クラッチ28を含む。
【0070】
伝動フレーム51の回動中心O付近の、回動軸53よりも作業部50側に寄った位置には図13、図14に示すように前進用駆動軸22及び後進用駆動軸23の軸線と平行な軸を有する従動軸30が支持されている。従動軸30は伝動フレーム51を貫通して装着され、軸方向の両端部は伝動フレーム51の側面から突出している。伝動フレーム51の各側面から従動軸30の各先端までの距離は等しい。本実施形態では従動軸30が請求項1における前進用従動軸と後進用従動軸を兼ねているが、従動軸30は前進用と後進用に分離し、それぞれが前進用駆動軸22と後進用駆動軸23に接続されることもある。従動軸30が前進用と後進用に分離している場合も、それぞれの軸は同一線上に配列する。
【0071】
作業部50が図1に示す前進作業位置にあるときに、図14に示すように伝動フレーム51の前フレーム13側の側面から突出する側の従動軸30の先端部分には前進用受動クラッチ31が接続され、後方側の側面から突出する側の従動軸30の先端部分には後進用受動クラッチ32が接続される。伝動フレーム51の各側面からの、前進用受動クラッチ31及び後進用受動クラッチ32先端までの距離も等しい。前進用受動クラッチ31と後進用受動クラッチ32はそれぞれ請求項1における前進用従動軸と後進用従動軸に相当する。
【0072】
伝動フレーム51の回動中心Oとなる回動軸53は前進用駆動軸22を通る直線と後進用駆動軸23を通る直線の中点を通る直線上に位置し、前進用受動クラッチ31と後進用受動クラッチ32は回動軸53から、前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置している。この結果、リンク部材41〜43が折り畳まれた状態にある限り、伝動フレーム51の回動に関係なく、従動軸30(前進用受動クラッチ31と後進用受動クラッチ32)の軸線を前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)、または後進用駆動軸23(後進用駆動クラッチ28)の軸線上に位置させることが可能になっている。
【0073】
従ってリンク部材41〜43が折り畳み状態にあり、図1に示す作業部50が前進作業位置にあるときには、前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)の軸線に従動軸30の前進用受動クラッチ31の軸線が合致し、互いに接続可能な状態にあり、図4に示す作業部50が後進作業位置にあるときには、後進用駆動軸23(後進用駆動クラッチ28)の軸線に従動軸30の後進用受動クラッチ32の軸線が合致し、互いに接続可能な状態にある。
【0074】
以上の駆動軸22、23と従動軸30の、前フレーム13の長さ方向の位置関係に加え、リンク部材41〜43が折り畳み状態にあるときの前フレーム13と伝動フレーム51との間の距離が調整されることで、図1のときには前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)に従動軸30の前進用受動クラッチ31が接続されており、図4のときには後進用駆動軸23(後進用駆動クラッチ28)に従動軸30の後進用受動クラッチ32が接続されている。
【0075】
前フレーム13と伝動フレーム51との間の距離は、伝動フレーム51が回動軸53の回りを回転し終え、前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)に従動軸30の前進用受動クラッチ31が対向しようとするときに、前進用受動クラッチ31と前進用駆動クラッチ27が相対的に回転しながら対向した時点で接続できる距離となるように設定される。この両クラッチ31、27が相対的に回転しながら接続される距離となるよう、リンク部材41〜43が折り畳み状態にあるときの、走行機体100の走行方向とのなす角度θが設定されている。
【0076】
なお、前進用受動クラッチ31と前進用駆動クラッチ27が互いに角度を持った状態から対向した(角度がない)状態に移行するときには、少なくともいずれか一方の軸に接続されているコイルスプリング等の付勢部材が互いの相対変位と相対回転変位を吸収するため、角度を持った状態で互いに接触を開始しても接続は円滑に行われる。
【0077】
伝動フレーム51は前記の、第1リンク部材41の後端部から後方側へ張り出す延長部41aと伝動フレーム51との間に架設される(電動式)シリンダ61の伸縮によって回動中心O(回動軸53)の回りに回転し、図1に示す前進作業位置の状態と図4に示す後進作業位置の状態とが切り替えられる。シリンダ61の一端は延長部41aに連結され、他端は伝動フレーム51と後フレーム45の間に配置される回動部材62に連結される。
【0078】
回動部材62は伝動フレーム51に突設された操作部64が相対移動可能な長孔状の開口62aを有し、操作部64が開口62aを挿通した状態で、後フレーム45に突設された支持軸63に回動自在に連結される。図面ではシリンダ61による回動部材62の回転角度を90度程度以下にしながら、伝動フレーム51を回動軸53の回りに180度回転させることができるよう、操作部64を回動軸53に関してリンク部材41の折り畳み側、すなわちシリンダ61の一端が連結される延長部41a側に突設し、支持軸63を回動軸53に関して前フレーム13側に配置している。支持軸63は後フレーム45の底面に突設される。
【0079】
具体的には平面上、回動軸53を通り、伝動フレーム51の軸方向(走行機体100の走行方向に直交する方向)の線上に操作部64を配置し、回動軸53を通り、走行機体100の走行方向の直線上に支持軸63を配置することにより、回動部材62の回転角度を90度程度にしながら、伝動フレーム51を180度回転させることを可能にしている。
【0080】
操作部64を伝動フレーム51の延長部41a側に突設し、支持軸63を後フレーム45の前フレーム13側に突設していることに対応し、回動部材62は回動軸53を回り込むC字形の形状に形成される。またシリンダ61との連結部に受けるシリンダ61からの軸力によって操作部64を支持軸63(回動中心O’)の回りに回転させることから、連結部は支持軸63に関して操作部64の反対側に形成される。
【0081】
図1に示す作業部50の前進作業位置ではリンク部材41、42が折り畳み状態で、シリンダ61は伸長状態にある。この図1に示す状態からはシリンダ61を収縮させることで、回動部材62のシリンダ61との連結部がシリンダ61側へ引き寄せられるに従い、回動部材62が支持軸63の回りを図1上、時計回りに回転し、開口62aに係止している操作部64(伝動フレーム51)が回動部材62に引きずられて回転しようとする。
【0082】
回動部材62は支持軸63の回りを回転するのに対し、伝動フレーム51は回動軸53の回りを回転することから、操作部64が図1、図4の状態のときに支持軸63から操作部64までの距離が最小で、操作部64が支持軸63と回動軸53を結ぶ直線上に位置したときに、支持軸63から操作部64までの距離が最大になる。このように伝動フレーム51が前進作業位置から後進作業位置に移行するまでの間で、支持軸63から操作部64までの距離が変化するため、この距離の変化に追従させるために、開口62aが長孔状に形成されている。
【0083】
シリンダ61が収縮し、回動部材62が操作部64を支持軸63と回動軸53を結ぶ直線上に位置するまで回転させた状態が図3に示す中間位置であり、この状態では操作部64は開口62aの、支持軸63から最も遠い側に位置している。更にシリンダ61が収縮しきり、操作部64が前進作業位置から回動軸53に関して対称位置にまで移動した状況が図4に示す後進作業位置になる。図4に示す状態では操作部64は開口62aの最も支持軸63寄りに位置している。図4に示す状態からはシリンダ61を伸長させ、回動部材62を逆回り(反時計回り)に回転させることで、逆に図3の状態を経て図1の前進作業位置に復帰する。
【0084】
ここで、図4に示す後進作業位置Pbに移動した作業部(畦塗り作業部)50のオフセット量Xrは、図1に示す前進作業位置Pfに移動した作業部(畦塗り作業部)50のオフセット量Xfよりも大きくなっている。このオフセット量の差ΔX=(Xr−Xf)は、平面視における前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離Dに対応しており、前記の通り、前進作業位置において従動軸30を前進用駆動軸22と同一軸線上に位置させ、従動軸30を回動軸53から前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置させたことに関係している。
【0085】
この関係で、後進作業位置Pbにおける作業部50のオフセット量Xrを前進作業位置Pfに移動した作業部50のオフセット量Xfよりも例えば、Yだけ大きくしたい場合には、2つの駆動軸22、23間の距離をYに設定すればよいことになる。つまり、2つの駆動軸22、23の配置が可能な範囲内で、後進作業時における作業部50のオフセット量Xrを任意に設定することができる。
【0086】
後フレーム45上には作業部50が前進作業位置にあるときと後進作業位置にあるときの伝動フレーム51の回動を拘束し、それぞれの状態を切り替えるときに拘束を解除する拘束・解除装置80が配置される。図1には後フレーム45上の拘束・解除装置80が配置される領域を拘束・解除機構部84として示している。
【0087】
拘束・解除装置80は伝動フレーム51に突設される被係合部81と、作業部50が前進作業位置にあるときの被係合部81に係合可能な前進側係合部材82と、作業部50が後進作業位置にあるときの被係合部81に係合可能な後進側係合部材83と、前進側係合部材82と後進側係合部材83のいずれか一方が被係合部81に係合した状態を解除する解除部材85を備える。
【0088】
前進側係合部材82は後フレーム45の、作業部50が前進作業位置にあるときの被係合部81に対応した位置に回動自在に設置され、作業部50が前進作業位置にあるときに一端部において被係合部81に係合可能な状態にある。後進側係合部材83は後フレーム45の、作業部50が後進作業位置にあるときの被係合部81に対応した位置に回動自在に設置され、作業部50が後進作業位置にあるときに一端部において被係合部81に係合可能な状態にある。
【0089】
解除部材85は前進側係合部材82と後進側係合部材83の各他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動(伸縮を含む)により前進側係合部材82と後進側係合部材83を回動させ、前進側係合部材82と後進側係合部材83のいずれか一方が被係合部81に係合した状態を解除する。
【0090】
被係合部81は伝動フレーム51に突設されることで、伝動フレーム51の回転と共に回動軸53の回りを回転する。また伝動フレーム51の回転の前後に拘らず(前進作業位置であるか後進作業位置であるかに関係なく)伝動フレーム51の軸方向は常に走行方向に直交する方向を向く。このことから、前進側係合部材82と後進側係合部材83の一端部に形成され、被係合部81に係合する係合部82a、83aは回動軸53を通り、走行機体100の走行方向に関して対称な位置に配置される。
【0091】
係合部82a、83aが回動軸53に関して対称な位置に配置されることから、前進側係合部材82の本体部87と後進側係合部材83の本体部88は回動軸53を通り、走行機体100の走行方向に関して対称に配置され、それぞれは回転によって係合部82a、83aが被係合部81に係合する位置において回動自在に後フレーム45に支持される。図面では係合部82aと係合部83aがそれぞれ被係合部81に係合しているときの、被係合部81の前フレーム13寄りの位置に前進側係合部材82と後進側係合部材83の回動軸を配置している。
【0092】
前進側係合部材82と後進側係合部材83を走行機体100の走行方向に関して対称に配置していることから、図面では前進側係合部材82と後進側係合部材83を同時に回動操作できるよう、前進側係合部材82と後進側係合部材83の各本体部87、88間に連結部材89を架設し、連結部材89の両側の端部89aをそれぞれに連結している。上記解除部材85はこの連結部材89を走行機体100の走行方向に引き寄せることにより被係合部81に係合している係合部材82と係合部材83のいずれか一方を被係合部81から解除する。
【0093】
図面では前進側係合部材82と後進側係合部材83の全長の内、一端部の係合部82a、83a寄りの部分に回転中心を置くことで、回転中心から係合部82a、83aまでの距離より、回転中心から連結部材89が連結される他端部までの距離を大きく取っている。この結果、連結部材89が後述の接続部材89bから受ける直線方向の力を拡大して係合部82a、83aにモーメントとして伝達している。
【0094】
解除部材85と連結部材89との間には連結部材89を走行機体100の走行方向に直線運動させるための接続部材89bが架設され、接続部材89bの一端は連結部材89に連結され、他端は解除部材85に連結される。接続部材89bと解除部材85との間には、平常時に連結部材89を前フレーム13側へ付勢することにより係合部82a、83aが被係合部81に係合する向きに付勢し、係合部82a、83aのいずれかが被係合部81に係合したときに係合状態を維持する付勢部材(圧縮ばね)89cが介在する。
【0095】
作業部50が前進作業位置にある図1のときには、前進側係合部材82の係合部82aが被係合部81に係合した状態にある。この状態から伝動フレーム51を回動軸53の回りに回転させ、後進作業位置に移行させるとき、または格納状態に移行させるときに、解除部材85が付勢部材89cに抗して連結部材89を解除部材85側へ引き寄せることにより係合部82aの被係合部81への係合状態を解除する。
【0096】
作業部50が後進作業位置にある図4のときには、後進側係合部材83の係合部83aが被係合部81に係合した状態にあり、このときにも伝動フレーム51を回転させるときに、解除部材85が付勢部材89cに抗して連結部材89を引き寄せることにより係合部83aの被係合部81への係合状態を解除する。
【0097】
解除部材85は少なくとも連結部材89を解除部材85側へ引き寄せる働きをすれば、係合部82a、83aの被係合部81への係合を解除することができるため、解除装置84には直線運動を連結部材89に伝達する機能を有する各種の駆動装置が使用可能である。但し、図示する例では解除部材85が連結部材89を引き寄せ、係合部82a、83aの係合を解除したときに、解除部材85自身が平常時の状態に復帰する能力を持たない場合にも対応するために、解除部材85に正回転と逆回転の切替操作が可能なモータ、特にワイパモータ、あるいはステッピングモータを使用している。この場合、解除部材85(モータ)が正回転することにより連結部材89を引き寄せ、逆回転することにより接続部材89bを平常時の状態に復帰させ、付勢部材89cが復元力を発揮する状態に復帰させる。
【0098】
なお、解除部材85に電動モータを使用する場合、電動モータ自身が発生する振動の伝播を抑制するために、後フレーム45上の電動モータとの間には防振ゴム等の振動抑制部材が介在させられる。電動モータの作動制御は図示しない操作スイッチからの操作内容に応じてコントローラが制御する。
【0099】
前フレーム13(取付フレーム15)と後フレーム45の内のいずれか一方には、リンク部材41〜43が折り畳み状態を維持するための拘束・解除装置70が設置される。
【0100】
拘束・解除装置70は前フレーム13(取付フレーム15)と後フレーム45の内のいずれか一方に突設される被係合部72と、他方に突設された支持軸Qの回りに回動可能で、リンク部材41〜43が折り畳み状態のときに被係合部72に一端部において係合可能な係合部材71と、係合部材71の他端部に接続され、直線運動(伸縮を含む)により係合部材71を支持軸Qの回りに回動させ、係合部材71が被係合部72に係合した状態を解除する解除部材73を備える。
【0101】
図面では走行機体100の前進方向右側のブラケット17に突設され、リンク部材41が連結された支持軸18に、係合部材71の先端部分に形成されたフック部71aを係合させ、支持軸18を被係合部72として利用している。この関係で、後フレーム45に係合部材71を軸支する支持軸Qを突設しているが、前フレーム13(取付フレーム15)、またはブラケット17に係合部材71を軸支させ、支持軸Qを被係合部72として利用することもある。
【0102】
また図面では支持軸18(の中心)を通り、走行機体100の走行方向の直線上に位置する部分に支持軸Qを突設することで、支持軸18と支持軸Qとの間の距離を最短にし、係合部材71の、支持軸Qから被係合部72(支持軸18)までの区間の長さが最小になるようにしている。図面ではまた、係合部材71に直線運動による力を与える部分(係合部材71の他端部)、すなわち解除部材73の一端を後フレーム45上の、回動軸53回りの部分に配置していることから、係合部材71をL形の形状に形成しているが、係合部材71の形状は被係合部72と支持軸Q、及び解除部材73の配置によって決まり、任意である。
【0103】
係合部材71のいずれかの部分には、係合部材71のフック部71aが被係合部72(支持軸18)に係合した状態を維持する向きに復元力を発揮する付勢部材75が配置される。図面では係合部材71の解除部材73側の端部71bに付勢部材75の一端を接続し、付勢部材75の他端を後フレーム45のいずれかの部分に接続している。この場合、付勢部材75は引張ばねとして軸方向に操作部材74から引張力を受けたときに復元力を発揮する。
【0104】
係合部材71の支持軸Qに関してフック部71aの反対側の端部には解除部材73が直接、もしくは間接的に接続される。上記のように付勢部材75がフック部71aの係合状態を維持しようとすることで、解除部材73は付勢部材75に抗して係合部材71を係合の解除の向きに力を与えればよい。そこで、図面では解除部材73に操作部材74を接続し、操作部材74を通じて係合部材71にその係合を解除する向きに力を与えている。
【0105】
図示する場合、解除部材73が操作部材74を前フレーム13側へ押し出すことにより係合部材71を、支持軸Qを中心として時計回りに回転させ、フック部71aを被係合部72(支持軸18)から離脱させる。フック部71aが被係合部72から離脱した状態では、付勢部材75が復元力を発揮することにより係合部材71を反時計回りに回転させ、フック部71aを被係合部72に係合可能な状態に復帰させる。
【0106】
解除部材73にも直線運動を操作部材74、または係合部材71に伝達する機能を有すれば、各種の駆動装置が使用可能であるが、図面では拘束・解除装置80で使用している解除部材85と同じくワイパモータを使用している。この場合、ワイパモータの出力軸の回転により操作部材74が前フレーム13側へ移動することにより係合部材71が支持軸Q回りに回転し、フック部71aが被係合部72から離脱する。ワイパモータの電源がOFFになったときに、付勢部材75が操作部材74を元の位置に復帰させ、係合部材71を係合の向きに回転させる。
【0107】
図8は農作業機1の格納状態を、図7は図8から伝動フレーム51と作業部50を省略した様子を示す。この状態は図1における上記係合部材71の被係合部72(支持軸18)への係合が解除され、リンク部材41〜43が折り畳み状態から走行機体100の走行方向に対して左側へ傾斜した状態にあり、リンク部材41〜43が振動によって自由に揺動し得る状態にある。そこで、図面では格納状態にあるリンク部材41を作業部50に拘束する保持装置41Aをリンク部材41と作業部50に配置することによりリンク部材41〜43の自由な揺動を防止している。
【0108】
保持装置41Aは複数本のリンク部材41〜43の内、作業部50側に位置するリンク部材41の側面に突設されるピン状(突起状)の嵌合部材41bと、作業部50のリンク部材41側に固定され、嵌合部材41bが挿通し得る開口を有する板状、もしくは箱状の被嵌合部材54からなり、図1、図4に示すように嵌合部材41bと被嵌合部材54は伝動フレーム51の格納位置にリンク部材41が回動したときに互いに嵌合する位置に配置される。
【0109】
嵌合部材41bは係合部材71が被係合部72から離脱したときに、リンク部材41の一端が軸支された支持軸18を中心として回転し、被嵌合部材54はシリンダ61の伸長に伴って伝動フレーム51が後フレーム45と平行な状態を維持したまま、平行移動する。具体的には図1において右側に位置するリンク部材41上の点は支持軸18を中心とする円弧を描き、作業部50は走行機体100の中心線に近付きながら、前フレーム13から遠ざかるように平行移動して直線状の軌跡を描く。そこで、支持軸18を中心とする円弧の軌跡と作業部50が描く直線の軌跡が交わる位置に、嵌合部材41bと被嵌合部材54がそれぞれ配置される。
【0110】
嵌合部材41bは支持軸18の回りに回転して平行移動する被嵌合部材54に嵌合するため、被嵌合部材54の開口は回転しながら接近し、接触時に嵌合部材41bが開口内に入り込むよう、嵌合部材41bの回転面の方向には嵌合部材41bの幅より大きめの幅が与えられる。嵌合部材41bが被嵌合部材54に嵌合した状態では、図8に示すように嵌合部材41bが被嵌合部材54の開口を貫通し、嵌合部材41bの周囲に形成されているフランジ41cが被嵌合部材54にリンク部材41側から係止した状態になる。
【0111】
被嵌合部材54の開口を貫通した嵌合部材41bの先端部分には例えば孔41b’が穿設されており、図8に示すように孔41b’には開口からの抜け出しを防止するためのピン41dが差し込まれる。ピン41dは被嵌合部材54に抜け出しの向きに係止し、嵌合部材41bを被嵌合部材54に拘束する。嵌合部材41bの孔41b’へのピン41dの差し込みによって嵌合部材41bが被嵌合部材54に拘束され、格納状態にあるリンク部材41の回動が拘束された状態になる。ピン41dは不使用時には図1に示すように被嵌合部材54のいずれかに仮止めされている。
【0112】
ここで、作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合の農作業機1の動作について説明する。なお、作業部50が前進作業位置Pfにある状態では、リンク40は一方側に所定角度θを有して揺動した状態にあり、拘束・解除装置70によってリンク40の揺動がロックされた状態にある。
【0113】
先ず、操作スイッチを操作して作業部50が前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動するように操作する。操作スイッチが操作されると、拘束・解除装置80の解除部材(電動モータ)85が前進側係合部材82を反時計回りに回転させて係合部82aの被係合部81に対する係合状態を解除し、伝動フレーム45の回動ロック状態を解除する。
【0114】
伝動フレーム45の回動が非ロック状態になったときに、シリンダ61が収縮して回動部材62が時計回りに回転し、それに伴い、回動部材62に形成された開口62aが操作部64(図9参照)を押圧して伝動フレーム45がその回動支点Oを中心として時計回りに回転する。同時に、前側受動クラッチ31(図13参照)が伝動フレーム45の回動支点Oを中心として時計回りに回転して前側駆動クラッチ27(図13参照)から離脱する。
【0115】
シリンダ61が更に収縮すると、図3に示すように作業部50は前進作業位置Pfから時計回りに回転し、走行機体100の後方を通って走行機体100の他方側の側方に移動する。作業部50が後進作業位置Pbに移動するに伴い、被係合部81が後進側係合部材83の係合部83a内に入り込んで後進側係合部材83が被係合部81に係合し、伝動フレーム51の回動が拘束されると共に、後側受動クラッチ32が後側駆動クラッチ28に接続され、作業部50の後進作業位置Pbへの移動が完了する。
【0116】
このように1本のシリンダ61の伸縮によって作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させることができる。このため、走行機体100の先端部が圃場の端に到達したときから作業部50を後進位置に移動させて走行機体100を後進させながら圃場の隅部に残された未作業部分の畦塗り作業を行うまでの時間を短縮することができ、畦塗り作業全体の作業性を向上させることができる。
【0117】
次に作業部50を後進作業位置Pbから格納位置Phに移動させる要領を説明する。先ず操作スイッチが操作されると、拘束・解除装置80が作動して伝動フレーム51の回動ロック状態を解除し、その後、図5に示すようにシリンダ61が伸長して作業部50が後進作業位置Pbから前進作業位置Pfに移動する。
【0118】
作業部50が前進作業位置Pfに移動すると、図6に示すように拘束・解除装置80の前進側係合部材82の係合部82a内に被係合部81が入って伝動フレーム51の回動が拘束されると共に、前側受動クラッチ31が前側駆動クラッチ27に接続される。続いて拘束・解除装置70が作動して係合部材71が時計回りに回転してリンク40の揺動ロック状態が解除される。
【0119】
リンク40の揺動ロック状態が解除されると、シリンダ61が伸長する。ここで、作業部50の回動が拘束・解除装置80によって拘束されていることで、伝動フレーム51、後フレーム45及び回動部材62は一体的に挙動する。このため、シリンダ61が伸長しても、回動部材62は回動しない。一方、シリンダ61が伸長するに伴い、シリンダ61が伸長する力、つまり他方側に向く力は、回動部材62を介して後フレーム45に伝達されるため、第1リンク部材41、第2リンク部材42及び第3リンク部材43を他方側に回動させる。
【0120】
以上のようにシリンダ61の伸長によってリンク40が格納側へ回転し、後フレーム45が格納側へ移動する。リンク40の格納側への揺動に伴い、図7及び図8に示すように第1リンク部材41の一方側の側面に設けられた嵌合部材41bが作業部50に突設された被嵌合部材54の開口を挿通する。リンク40の他方側への揺動に伴い、前側受動クラッチ31が斜め後方に移動して前側駆動クラッチ27から離脱する。その後、嵌合部材41bのフランジ41cが被嵌合部材54に突き当たった時点で、シリンダ61の伸長が停止してリンク40の他方側への揺動が完了する。ここで、被嵌合部材54の開口を挿通した嵌合部材41bに係止ピンを貫通させてリンク40の揺動がロック状態になる。
【0121】
このように作業部50が前進作業位置Pf及び後進作業位置Pbのいずれの作業位置に移動してもリンク40の移動端側は前フレーム13側に近接した位置にあり、リンク40の移動端側は走行機体100側に接近した位置に配置されるため、リンク40の移動端側に取り付けられた作業部50を走行機体100側に接近させて配置することができる。
【0122】
このため、農作業機の作業時において農作業機自体の前後方向長さを短くすることができ、作業部50から圃場に作用する力の反力がモーメントとなって走行機体100に作用しても、このモーメントの大きさを比較的に小さくすることができる。その結果、走行機体100が軽量な小型の場合でも、走行機体100と農作業機との重量バランスが崩れる虞を防止することができ、走行機体100の走行が安定して、農作業機1による作業を安定して行うことができる。
【0123】
[第2実施形態]
次に本発明に係る農作業機1の第2実施形態を説明する。ここでは第1実施形態との相違点のみを説明し、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。本実施形態においては、装着部10と作業部50との間に、前フレーム13に対するリンク40の揺動を手動でロックし、且つ後フレーム45に対する作業部50の回動を手動でロック可能なロック装置110が設けられている。
【0124】
図10〜図12はロック装置110の構成例を示す。図10は作業部50が前進作業位置Pfにあり、作業部50の回動がロックされると共に、リンク40の揺動がロックされている状態を示す。図11は前進作業位置Pfにおいてリンク40の揺動がロックされた状態を維持したまま、作業部50の回動のロックを解除し、後進作業位置Pbに移動する途中におけるロック装置110の状態を示す。図12は作業部50が後進作業位置Pbまで回転し、作業部50の回動がロックされると共に、リンク40の揺動がロックされている状態を示した説明図である。なお、説明の便宜上、図10〜図12中、ロック装置以外の機構等については、構成を一部省略して示してある。
【0125】
このロック装置110はリンク40の揺動をロックするための揺動ロック機構部111と、作業部50の回動をロックするための回動ロック機構部120とを有している。
【0126】
本発明の農作業機(畦塗り機)1は第一実施形態で説明したように後フレーム45が前フレーム13と平行なまま、右側前方に移動すると共に、前側受動クラッチ31が前側駆動クラッチ27に接近移動して前側駆動クラッチ27に接続されたときに、作業部50が前進作業位置Pfに移動する。作業部50が前進作業位置Pfに移動すると、図10(平面図)に示すように揺動ロック機構部111によりリンク40の揺動がロックされる。
【0127】
具体的には揺動ロック機構部111は後フレーム45に前方に張り出して固設された張出部112の前方側に形成された孔112aと、第1リンク部材41の略中間位置から先端側に張り出して設けられた円弧状部113の一端側に形成された孔113aと、L字型ロックピン114とを有し、連通状態にしたこれらの孔112a、113aにL字型ロックピン114を挿入することにより第1リンク部材41と後フレーム45とを固定し、リンク40の揺動をロックする。
【0128】
なお、図13に示すように作業部50が格納状態にあるときには、揺動ロック機構部111のL字型ロックピン114が、第1リンク部材41に形成された略円弧状部の他端側に設けられた孔113b側に挿入することによりリンク40の揺動をロックしている。
【0129】
回動ロック機構120は図10に示すように一端が伝動フレーム51の基端側に回動自在に軸支された平面視略C形状の回動プレート121と、回動プレート121の拡幅した他端側の先端部に回動自在に軸支された棒状のロック操作部材122と、畦塗り作業部50に固設されたピン部材123とを有する。ピン部材123はロック操作部材122の先端側に形成された長孔部122aに沿って移動可能に嵌め込まれている。長孔部122aの両端部には長孔部122aに連通してロック操作部材122の回動方向と同一方向に連続し、ピン部材123の長孔部122aに沿う方向の移動を規制する移動規制孔122bが形成されている。ロック操作部材122は例えばスプリングなどの付勢手段(図示せず)により作業機の前方に付勢されることによりピン部材123が移動規制孔122bから長孔部122aに移動して畦塗り作業部50の回動ロック状態の解除をし難くしている。
【0130】
また回動プレート121の拡幅部分には長孔121aが設けられており、長孔121aには後フレーム45の下面から突設けされたガイドピン124が挿入されている。
【0131】
作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合には、先ず、図10に示す回動ロック機構120を操作して後フレーム45に対する作業部50の回動ロック状態を解除する。すなわち、作業者は図10(平面図)に示すようにロック操作部材122に形成された長孔部122aの一端側に設けられた移動規制孔122bに係止しているピン部材123を、ロック操作部材122を回動操作することにより長孔部122a側に移動させて、畦塗り作業部50の回動ロック状態を解除する。
【0132】
次いで、回動支点Oを中心として作業部50を前進作業位置Pfと反対側に回動させると、前側受動クラッチ31は回動支点Oを中心とし畦塗り作業部50の回動方向と同一方向に回動して前側駆動クラッチ27から脱着され、図11(平面図)に示すようにピン部材123が長孔部122aの長手方向に移動すると共に、ガイドピン124も長孔121aの他端側に向かって移動する。作業部50を反対側に更に回動させ、後進作業位置Pb側に移動すると、図12(平面図)に示すように作業部50はその前後関係が反転された状態となり、後側受動クラッチ32は前方側に向いた状態となって後側駆動クラッチ28に接続される。
【0133】
これと同時に、ピン部材123は長孔部122aの長手方向の他端側まで移動し、ピン部材123が移動規制孔122bまで移動して係止し、作業部50の回動がロックされる。なお、ガイドピン124は長孔部122a内を移動して前進作業位置Pfと同じ位置に復帰する。
【0134】
作業部50を後進作業位置Pbから前進作業位置Pfに移動させる場合も、作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合と同様に、回動ロック機構120によるロック状態を解除して、後フレーム45に対して作業部50を回動させるだけでよく、この作業は前述した前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる作業に準じるので、その説明は省略する。
【0135】
このように畦塗り作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに、逆に後進作業位置Pbから前進作業位置Pfに移動させるときには、作業部50の後フレーム45に対する回動操作のみで、前側受動クラッチ31を前側駆動クラッチ27に又は後側受動クラッチ32を後側駆動クラッチ28に接続することができる。併せて作業部50を容易に反転させることができるため、作業部50の反転作業の習熟を不要にすることができる。
【0136】
図14には、平行リンク40の揺動ロックを解除可能な揺動ロック解除機構部を備えた農作業機1が記載されている。この揺動ロック解除機構部70は、後フレーム45に回動可能に設けられ前側に形成されたフック部71aが第1リンク部材41の前側を軸支する支持軸18から上方へ延びる係止ピン19に係止して第1リンク部材41の揺動を規制して平行リンク40の揺動をロックする係合部材71と、係止ピン19の中心軸線と同軸上に回動自在に設けられた回動部材72と、回動部材72の上面に突設されて回動部材72の回動によって係合部材71の先端部に当接して係合部材71をロック解除方向に回動させる押圧ピン73と、基端側が係止ピン19の中心軸線と同軸上に回動自在に設けられ先端側に操作部74aを有し回動部材72と一体となって回動部材72を回動させる操作レバー74とを有してなる。
【0137】
回動部材72の回動中心と反対側の回動部材72の端部には、第1リンク部材41に突設されたピン部材41bを挿通する長孔部72aが前後方向に延びて設けられて、回動部材72の回動範囲を規制している。長孔部72aは、係止ピン19に係止された係合部材71に押圧ピン73が接触した状態になると、長孔部72aの後端部にピン部材41bが当接した状態になるように形成されており、この状態で操作レバー74を後方側へ回動すると、押圧ピン73によって回動部材72を時計方向に回動させて回動部材72の係止状態を解除するとともに長孔部72aが後方側に移動してピン部材41bが長孔部72aの前端部に当接して操作レバー74のロック解除方向の回動操作を規制する。
【0138】
また回動部材72の回動中心側端部と第1リンク部材41との間には引っ張りばね75が設けられている。この引っ張りばね75によって回動部材72を介して押圧ピン73を係合部材71から離反する方向に移動させるようにしている。このため、振動等によって平行リンク40の揺動規制が解除される虞を防止している。
【0139】
また操作レバー74は、これを時計方向に回動して平行リンク40の揺動ロックを解除した状態でさらに時計方向に回動すると、平行リンク40を揺動させることができ、平行リンク40を揺動させる操作部材としての機能も有している。
【0140】
なお、前述した実施の形態では農作業機の一例として畦塗り機を対象とした場合を示したが、溝掘機を対象としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】作業部が前進作業位置に移動した状態の農作業機を示した平面図である。
【図2】作業部が前進作業位置に移動した状態の農作業機を示した左側面図である。
【図3】作業部を反転させる移動途中の農作業機を示した平面図である。
【図4】作業部が後進作業位置に移動した状態の農作業機を示した平面図である。
【図5】回動部材と、リンク部材用の拘束・解除装置の関係を示した平面図である。
【図6】図5の状態からシリンダが収縮した様子を示した平面図である。
【図7】図5に示す拘束・解除装置を構成する係合部材の係合が解除された様子を示した平面図である。
【図8】作業部が格納位置に移動した状態の農作業機を示した平面図である。
【図9】図8の後方側の立面図である。
【図10】手動式のロック装置によって作業部が前進作業位置でロックされた状態の農作業機を示した平面図である。
【図11】手動式のロック装置によって作業部の回動がロック解除された状態で、作業部を反転させる移動途中の状態にある農作業機を示した平面図である。
【図12】手動式のロック装置によって作業部が後進作業位置でロックされた状態の農作業機を示した平面図である。
【図13】手動式のロック装置によって作業部が格納位置でロックされた状態の農作業機を示した平面図である。
【図14】他の手動式のロック装置を備えた作業部を有する農作業機を示した平面図である。
【符号の説明】
【0142】
1……農作業機(畦塗り機)、10……装着部、13……前フレーム、
22……前進用駆動軸、23……後進用駆動軸、30……従動軸、
40……リンク、41……第1リンク部材(リンク部材)、42……第2リンク部材(リンク部材)、
45……後フレーム、50……作業部(畦塗り作業部)、51……伝動フレーム、53……回動軸、
70……拘束・解除装置、71……係合部材、72……被係合部、73……解除部材、74……操作部材、
80……拘束・解除装置、81……被係合部、82……前進側係合部材、83……後進側係合部材、85……解除部材、
100……走行機体、
110……ロック装置、111……揺動ロック機構部、112……張出部、
112a……孔(孔部)、113a……孔(連通孔部)、114……L字型ロックピン、
120……回動ロック装置、121……回動プレート、122……ロック操作部材、
122b……移動規制孔、123……ピン部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は作業部を通常作業時とは反対側のオフセット位置に移動させると共に、その前後関係を反転(反転リバース)させて走行機体を後進させながらオフセット作業が可能な農作業機に関するものであり、特に小型の走行機体に装着される農作業機に適する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後部に装着され、作業部を走行機体の側方に移動させた状態で走行機体の走行と共に進行してオフセット作業を行う農作業機、例えば畦塗り機では、作業部のオフセット作業に伴って作業部から圃場に作用する力の反力が走行機体を揺動させるモーメントとして作用する。質量の大きい比較的大型の走行機体に作用する場合では、このモーメントが問題になることはないが、軽量な小型の走行機体に作用する場合では、走行機体と畦塗り機との重量バランスが崩れ易くなり、走行機体の走行が不安定になり、安定した作業ができなくなる問題を招く。
【0003】
そこで、畦塗り機の本体側フレームにリンクを接続し、リンクの移動端側に一端部を回動自在に取り付けた伝動フレームを設け、伝動フレームの他端部に作業部を取り付けて、作業部を水平方向にオフセット移動可能にすると共に、リンクの揺動によって作業部を前側に移動させて、作業部を一方側の前進作業位置と他方側の後進作業位置に移動可能な畦塗り機が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−199405号公報(段落0009〜0012、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の畦塗り機は、走行機体から伝達された動力をユニバーサルジョイントと伝動軸からなる伝動機構を介して作業部に伝達するように構成されているが、ユニバーサルジョイントは動力の伝達方向が制限されるため、リンクの許容揺動角度が小さい。また伝動フレームをリンクの移動端側に配設された後フレームに沿った方向に延長させると、後フレームから作業部までの距離が大きくなるため、畦塗り機の前後方向長さが大きくなり、走行機体と畦塗り機との重量バランスが崩れ易くなる。
【0006】
そこで、従来の畦塗り機では、作業部が前進作業位置にあるとき、伝動フレームを後フレームに対して伝動フレームの回動中心から前方側に傾けた姿勢にすることにより、作業部を回動中心より前側の前進作業位置に移動させているが、それには伝動フレームの長さを大きくする必要がある。このため、畦塗り機自体が大型化するため、小型の走行機体への装着には適さない。
【0007】
一方、作業部を後進作業位置に移動させる場合、リンクの他方側への許容揺動角度は小さく、また伝動フレームは後フレームに対して回動中心から後側へ傾いた姿勢にあるため、作業部をより前方側に位置させることには限界がある。更に、伝動フレームの長さが大きいことで、装着部から作業部までの距離も大きくなり、作業部から圃場に作用する力の反力が走行機体を揺動させるモーメントが大きくなる。結局、走行機体が軽量な小型の場合では、走行機体と畦塗り機との重量バランスが崩れ易くなって、走行機体の走行が不安定となって安定した作業ができなくなる。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、軽量且つ小型の走行機体に装着して作業を行う場合に、走行機体との重量バランスが崩れ難く、安定した作業が可能な農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の農作業機は、走行機体の後部に装着される装着部を有する前フレームと、この前フレームに揺動自在に連結される複数本のリンク部材と、この各リンク部材の移動端側に連結される後フレームと、この後フレームに突設された回動軸に回動自在に連結され、先端位置に作業部を支持した伝動フレームを有し、
前記伝動フレームが前記後フレームの回動軸の回りに、前記作業部が前進作業姿勢になる前進作業位置と、後進作業姿勢になる後進作業位置との間を回動自在な農作業機において、
前記装着部に前記走行機体からの動力を受ける前進用駆動軸と後進用駆動軸が前記後フレーム側へ突出した状態で前記走行機体幅方向に並設され、
前記リンク部材が最も折り畳まれた状態のとき、前記伝動フレームの前記前フレーム側の側面から、前記前進用駆動軸に接続可能な前進用従動軸が突出し、その反対側の側面から、前記後進用駆動軸に接続可能な後進用従動軸が突出し、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記前進作業位置まで移動したときに、前記前進用従動軸が前記前進用駆動軸に接続され、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記後進作業位置まで移動したときに、前記後進用従動軸が前記後進用駆動軸に接続されることを構成要件とする。
【0010】
リンク部材は平面上、2本で対になるが、伝動フレームを前フレームに支持させる関係で、2本のリンク部材、もしくはいずれか一方のリンク部材が上下に並列することもあり、合わせて4本、もしくは3本のリンク部材が前フレームに連結されることもある。
【0011】
前進作業姿勢のときと後進作業姿勢のときに後フレームは前フレームと平行に配置され、複数本のリンク部材と共にリンクを構成する。リンク部材は作業部が前進作業姿勢のときと後進作業姿勢のときに折り畳まれた状態にあり、後フレームは前フレームに最も接近し、前進用駆動軸及び後進用駆動軸と、前進用従動軸及び後進用従動軸との接続が可能であるよう、前フレームとの間の距離が調整された状態にある。
【0012】
リンク部材の折り畳みの向きは作業部が前進作業姿勢となる側であり、走行機体の走行方向前方側(前進の向き)に対して右側となる。作業部が伝動フレームの回動により走行機体の前進の向きに対して左側へ移動したときに後進作業姿勢となる。
【0013】
前フレームからは後フレーム側へリンク部材を回動自在に支持するブラケットが走行機体の幅方向に並列して張り出す。この2本のブラケットの内、リンク部材の折り畳み側(前進作業位置側)に位置するブラケットの前フレームからの張り出し長さはリンク部材が折り畳まれた状態にあるときに後フレームが前フレームに最も接近するよう、反対側(後進作業位置側)に位置するブラケットの前フレームからの張り出し長さより小さい。
【0014】
並列するブラケットの張り出し長さが等しい場合には、リンク部材の折り畳み状態で両リンク部材間の距離が小さくなり、伝動フレームを支持する後フレームの回動軸の周辺部分が納まりにくい。これに対し、リンク部材の折り畳み側に位置するブラケットの張り出し長さが反対側に位置するブラケットの張り出し長さより小さいことで、リンク部材の折り畳み状態で両リンク部材間の距離を張り出し長さが等しい場合より大きく確保することができる。この結果、前フレームと両リンク部材とで囲まれた領域の空間が広くなり、リンク部材の折り畳み状態で、後フレームの回動軸の周辺に位置する前進用従動軸及び後進用従動軸等を両リンク部材間に納めながら、後フレームを前フレームに接近させることが可能になる。
【0015】
伝動フレームはリンク部材の折り畳み状態のときに後フレームの回動軸の回りに回動し、作業部が前進作業姿勢になる前進作業位置から、後進作業姿勢になる後進作業位置まで移動させ、逆に後進作業位置から前進作業位置まで移動させる。伝動フレームの回動は後述のようにシリンダによって行われる。
【0016】
作業部が前進作業位置にあるときには、前進用従動軸は伝動フレームの前フレーム側の側面から突出し、後進用従動軸はその反対側の側面、すなわち農作業機の進行方向後方側の側面から突出する。作業部が後進作業位置に移行したときには、後進用従動軸は伝動フレームの前フレーム側の側面から突出し、前進用従動軸はその反対側である農作業機の進行方向後方側の側面から突出する。
【0017】
リンク部材が折り畳まれた状態では、後フレームが前フレームに最も接近した状態にあり、作業部が前進作業位置にあるときには、前フレームの装着部の後方から前進用駆動軸が後フレーム側へ突出していることと、伝動フレームの前フレーム側の側面から、前進用従動軸が突出していることで、伝動フレームの前進用従動軸が前進用駆動軸に接続された状態にある。
【0018】
またリンク部材が折り畳まれた状態で、作業部が後進作業位置にあるときには、前フレームの装着部の後方から後進用駆動軸が前記後フレーム側へ突出していることと、伝動フレームの前フレーム側の側面から後進用従動軸が突出していることで、伝動フレームの後進用従動軸が後進用駆動軸に接続された状態になる。駆動軸と従動軸の接続は直接的にはクラッチを介して行われるため、前進用駆動軸と後進用駆動軸、及び前進用従動軸と後進用従動軸はクラッチを含む。前進用従動軸と後進用従動軸は独立した別個の従動軸である場合と、連続した単一の従動軸の場合がある。後者の場合、従動軸は伝動フレームを幅方向に貫通する。
【0019】
このように伝動フレームの回動のみによって前進用従動軸が前進用駆動軸に接続され、後進用従動軸が後進用駆動軸に接続されることで、従動軸と駆動軸の接続のために、農作業機の進行方向には伝動フレームを前フレーム側へ移動させる必要がなく、その動作を行うための駆動装置が不要になる。
【0020】
伝動フレームを前フレーム側へ移動させる必要がないことで、伝動フレーム、すなわち作業部を走行機体側に最も接近させた位置に配置することができ、農作業機の作業時において農作業機自体の進行方向の長さ(前後方向長さ)を最短にすることができる。従って作業部から圃場に作用する力の反力がモーメントとなって走行機体に作用しても、モーメントの大きさを最小に留めることが可能である。この結果、走行機体が軽量な小型の場合でも、走行機体と農作業機との重量バランスが崩れる事態を回避、あるいは軽減することができ、走行機体の走行を安定させ、農作業機による作業を安定して行うことが可能になる。
【0021】
伝動フレームの回動のみによって前進用従動軸が前進用駆動軸に接続され、後進用従動軸が後進用駆動軸に接続されることは、具体的には伝動フレームの回動中心となる回動軸が前進用駆動軸を通る直線と後進用駆動軸を通る直線の中点を通る直線上に位置し、前進用従動軸と後進用従動軸が回動軸から、前進用駆動軸と後進用駆動軸との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置していることで、可能になる(請求項2)。
【0022】
回動軸が前進用駆動軸を通る直線と後進用駆動軸を通る直線の中点を通る直線上に位置することで、回動軸から一定の距離を置いた直線上に従動軸が位置していれば、リンク部材が折り畳まれた状態にある限り、伝動フレームの回動に関係なく、従動軸の軸線を駆動軸の軸線上に位置させることが可能である。
【0023】
従って前進用従動軸と後進用従動軸が回動軸から、前進用駆動軸と後進用駆動軸との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置していることで、リンク部材の折り畳み状態では前進用従動軸と後進用従動軸のいずれか一方が前進用駆動軸と後進用駆動軸のいずれか一方に接続されることになる。前記のように作業部が前進作業位置にあるときには、前進用従動軸が前進用駆動軸に接続され、作業部が後進作業位置にあるときには、後進用従動軸が後進用駆動軸に接続される。
【0024】
伝動フレームの回動は、リンク部材の移動端側と伝動フレームの回動軸付近との間に架設されて双方に連結されるシリンダによって行われ、伝動フレームはシリンダの伸縮に伴って回動軸の回りに回動し、作業部を前進作業位置と前記後進作業位置との間を移動させる(請求項3)。シリンダは油圧シリンダと電動シリンダ、及び電動油圧シリンダを含む。
【0025】
シリンダは作業部が前進作業位置にあるときに伸長状態にあり、伸長状態から収縮することで、作業部が後進作業位置に移行するまで伝動フレームを回動軸の回りに回転させる。収縮状態からはシリンダが伸長することで、作業部が前進作業位置に移行するまで伝動フレームを回動軸の回りに回転させる。
【0026】
シリンダは直接的には、伝動フレームとシリンダとの間に介在する回動部材に接続され、回動部材を回動させることで、伝動フレームを回動させる(請求項4)。回動部材は伝動フレームに突設された操作部が相対移動可能な開口を有し、操作部が開口を挿通した状態で、後フレームに突設された支持軸に回動自在に連結される。シリンダは一端において回動部材に連結され、伸縮に伴って回動部材を回動させ、伝動フレームを回動させる。
【0027】
回動部材は伝動フレームに突設された操作部を伝動フレームの回動中心(回動軸)に関して点対称位置まで回転させれば、伝動フレームを回動軸の回りに180度回転させることになる。また回動部材の支持軸を伝動フレームの回動軸より前フレーム側に位置させ、操作部を回動部材の支持軸の回りに回転させれば、操作部の回転角度を180度より小さい角度にしながらも、操作部を伝動フレームの回動軸に関して点対称位置まで回転させることができる。
【0028】
例えば回動部材のシリンダとの連結部と回動部材の支持軸との間の距離と、回動部材の支持軸と操作部までの距離を等しくしたとき、回動部材を支持軸の回りに90度回転させれば、操作部も支持軸の回りに90度回転するが、その回転前後の操作部の位置を結ぶ直線上に伝動フレームの回動軸が位置していれば、伝動フレームは回動軸の回りに180度回転したことになる。
【0029】
すなわち回動部材を例えば90度程度、回転させれば、伝動フレームを180度回転させ、前進作業位置と後進作業位置との間を移行させることが可能である。伝動フレームを180度回転させるのに要する回動部材の回転角度は上記した回動部材のシリンダとの連結部と回動部材の支持軸との間の距離と、回動部材の支持軸と操作部までの距離の比率によって決まり、相対的に回動部材の支持軸と操作部までの距離を大きくすれば、より小さい回動部材の回転角度で伝動フレームを180度回転させることができる。
【0030】
そこで、リンク部材の折り畳み状態で、伝動フレームの回動中心(回動軸)に対してリンク部材の折り畳み側に操作部を配置すると共に、回動部材の支持軸を伝動フレームの回動軸に対して前フレーム側に配置することで、回動部材の回転角度を90度程度、あるいはそれより小さくしながらも、伝動フレームを前進作業位置と後進作業位置との間を移行させることが可能である。
【0031】
作業部が前進作業位置にあるときの伝動フレームの状態と、作業部が後進作業位置にあるときの伝動フレームの状態はリンク部材が折り畳み状態にあるときにシリンダの伸縮によって切り替えられるが、それぞれの状態で伝動フレームは回動軸回りに回動しないよう、後フレームに拘束される必要がある。
【0032】
伝動フレームの後フレームに対する拘束と解除は、例えば伝動フレームに突設される被係合部と、後フレームの、作業部が前進作業位置にあるときの被係合部に対応した位置と、後進作業位置にあるときの被係合部に対応した位置にそれぞれ回動自在に設置される前進側係合部材と後進側係合部材とによって行われる(請求項5)。
【0033】
前進側係合部材は作業部が前進作業位置にあるときに一端部において被係合部に係合可能で、被係合部に係合することにより前進作業位置にある伝動フレームを後フレームに拘束する。後進側係合部材は作業部が後進作業位置にあるときに一端部において被係合部に係合可能で、被係合部に係合することにより後進作業位置にある伝動フレームを後フレームに拘束する。
【0034】
前進側係合部材と後進側係合部材の被係合部への係合状態は、コイルスプリング等の付勢部材の復元力によって被係合部に係合する向きに付勢されることにより維持される。この係合状態は前進側係合部材と後進側係合部材の各他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動により前進側係合部材と後進側係合部材を回動させ、前進側係合部材と後進側係合部材のいずれか一方が被係合部に係合した状態を解除する解除部材によって解除される。前進側係合部材と後進側係合部材が独立している場合には、それぞれに解除部材が組み合わせられるが、前進側係合部材と後進側係合部材を連結部材によって連結すれば、解除部材は一つで済むことになる。
【0035】
解除部材は前進側係合部材や後進側係合部材、または連結部材を被係合部への係合を解除できるだけのストローク分、直線運動させればよいため、解除部材には回転運動を直線運動に変換して力を伝達する電動モータの他、直接直線運動を伝達するソレノイドが主に使用されるが、シリンダ等のアクチュエータの使用も可能である。
【0036】
前進側係合部材と後進側係合部材は共に、付勢部材の復元力によって被係合部に係合する向きに付勢された状態にあり、解除部材はこの復元力に抗する力を付勢部材に与えることで係合を解除する。前進側係合部材と後進側係合部材が連結部材で連結されている場合には、付勢部材は連結部材を付勢すればよい。
【0037】
前進側係合部材と後進側係合部材の、被係合部への係合の向きは問われず、被係合部に対する相対的な位置によって決まる。前進側係合部材と後進側係合部材が被係合部に対して前フレーム側に位置する場合には、前フレーム側から被係合部に係合し、後方側に位置する場合には、後方側から被係合部に係合する。
【0038】
伝動フレームが前進作業位置から後進作業位置に移行するときには、前進側係合部材の被係合部への係合が解除された後、伝動フレームがシリンダによって回動させられ、その被係合部が後進側係合部材の一端部まで移動したときに被係合部が付勢部材に抗して後進側係合部材を一旦、回転させる。同時に付勢部材によって後進側係合部材が復帰して一端部が被係合部に係合する。伝動フレームが後進作業位置から前進作業位置に移行するときには、後進側係合部材の被係合部への係合が解除され、伝動フレームが回動させられた後、被係合部が前進側係合部材の一端部まで移動したときに被係合部が付勢部材に抗して前進側係合部材を一旦、回転させ、同時に付勢部材によって前進側係合部材が復帰して一端部が被係合部に係合する。
【0039】
前記の通り、リンク部材は作業部が前進作業姿勢のとき(伝動フレームが前進作業位置にあるとき)と後進作業姿勢のとき(伝動フレームが後進作業位置にあるとき)に折り畳まれた状態にあることから、リンク部材が折り畳み状態を維持するよう、後フレームが前フレームに拘束される必要がある。リンク部材が折り畳み状態のときには、後フレームが前フレームに接近していることから、後フレームと前フレームのいずれか一方が他方に拘束されることが合理的である。
【0040】
リンク部材の後フレームに対する拘束と解除は、例えば前フレームと後フレームの内のいずれか一方に突設される被係合部と、他方に突設された支持軸の回りに回動可能で、リンク部材が折り畳み状態のときに被係合部に一端部において係合可能な係合部材とによって行われる(請求項6)。係合部材の他端部には直線運動により係合部材を支持軸の回りに回動させ、係合部材が被係合部に係合した状態を解除する解除部材が接続される。
【0041】
係合部材の被係合部への係合状態は、コイルスプリング等の付勢部材の復元力によって被係合部に係合する向きに付勢されることにより維持される。この係合状態は係合部材の他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動により係合部材を回動させ、被係合部に係合した状態を解除する解除部材によって解除される。
【0042】
この場合の解除部材も係合部材を被係合部への係合を解除できるだけのストローク分、直線運動させればよいため、解除部材には回転運動を直線運動に変換して力を伝達する電動モータ、直接直線運動を伝達するソレノイドの他、シリンダ等のアクチュエータが使用される。
【0043】
係合部材の被係合部への係合が解除されることで、リンク部材が前フレームに対して揺動自在になり、後フレームは前フレームに対して平行移動自在になる。この状態で、シリンダを収縮させることで、リンク部材が前フレームに対して折り畳み状態、すなわち作業部側へ傾斜している状態から逆向きに傾斜するまで揺動し、後フレームが前フレームから距離を置いた位置まで平行移動する。
【0044】
作業部の作業状態では作業部が走行機体の幅方向の中心から最も距離を置いた位置にオフセットされているが、後フレームが前フレームから距離を置いた位置まで平行移動することで、作業部のオフセット量が最も小さい位置になり、その状態が農作業機の格納状態になる。
【0045】
後フレームが格納位置に移行するときには、係合部材の被係合部への係合が解除された後、シリンダの収縮によって後フレームが平行移動して格納状態になる。後フレームが格納位置から作業位置に移行するときには、シリンダの伸長によって係合部材が被係合部に接近した後、付勢部材に抗して被係合部を乗り越え、付勢部材によって係合部材復帰して一端部が被係合部に係合する。
【0046】
農作業機の格納状態では係合部材と被係合部の係合が解除されているため、格納状態を保持するにはそのための保持手段を必要とする。具体的にはリンクを構成する複数本のリンク部材の内、作業部側に位置するリンク部材の側面に突設される嵌合部材と、作業部の前記リンク部材側に固定され、嵌合部材が挿通し得る開口を有する被嵌合部材とを備えることで、格納状態にある農作業機を拘束することが可能になる(請求項7)。
【0047】
嵌合部材と被嵌合部材は伝動フレームの格納位置にリンク部材が回動したときに互いに嵌合する位置に配置される。リンク部材が折り畳み状態のときから格納位置に移行するときには、リンク部材は前フレーム(ブラケット)との連結部分の回りに回転し、リンク部材の作業部側の側面は走行機体の前方を向いた状態から後方を向いた状態になる。一方、リンク部材は後フレームと共に、リンクを構成することで、リンク部材の回転に関係なく、伝動フレームはリンク部材の折り畳み状態のときと平行なまま移動するから、伝動フレームに支持されている作業部がリンク部材に接近し、対向しようとする。
【0048】
この互いに対向するリンク部材と作業部のそれぞれに嵌合部材と被嵌合部材を配置することで、伝動フレームの格納状態で、作業部をリンク部材に拘束することが可能になる。嵌合部材が被嵌合部材に嵌合した状態は嵌合部材に対し、被嵌合部材からの抜け止めを施すことで、維持され、作業部の拘束状態になる。
【0049】
伝動フレームの回動操作がシリンダではなく、手動で行われる場合には、伝動フレームの回動支点の付近に回動ロック機構部が備えられる(請求項8)。回動ロック機構部は伝動フレームの回動支点側に一端が回動自在に設けられ、伝動フレームの回動に連動して伝動フレームの回動方向と同一方向に回動する回動プレートと、作業部に設けられ、作業部の回動と共に移動するピン部材と、回動プレートの他端側に一端が回動自在に取り付けられ、他端側にピン部材が挿通する長孔部を有し、作業部の回動に伴ってピン部材が長孔部に沿って移動可能なロック操作部材とを有する。長孔部の両端部には、長孔部に連通してロック操作部材の回動方向と同一方向に延び、ピン部材の長孔部に沿った移動を規制する移動規制孔が形成される。
【0050】
回動プレートはロック操作部材の長孔部に対し、作業部に設けられたピン部材を作業部の回動に伴って長孔部に沿って移動させるものであればよく、回動プレートの回動支点を作業部の可動支点と異なる位置に設け、作業部の回動に伴って回動プレートの回動支点とピン部材との距離が漸次大きくなるように回動プレートを構成することができる。
【0051】
伝動フレームの回動操作が手動で行われる場合には、前記前フレームに連結された一対のリンク部材の一方に形成された連通孔部と、前記後フレームから張り出した張出部に設けられた孔部と、前記リンク部材が前記前フレームに接近した折り畳み状態にあるとき、あるいは前記後フレームが前記前フレームから距離を置いた格納状態のときに、連通状態にある前記孔部及び前記連通孔部に挿通されるロックピンを有する揺動ロック機構部が備えられる(請求項9)。
【0052】
この揺動ロック機構部装置は手動でロックピンを連通状態にある孔部及び連通孔部に挿通することで、リンクの揺動をロックするものであり、モータやリンク機構等の部品を省略でき、農作業機のコストをより安価にすることができる。
【0053】
また、リンク部材の揺動規制を解除する他の方法として、前記後フレームに回動可能に設けられ前側に形成されたフック部が前記一対のリンク部材のいずれかに設けられた係止ピンに係止して前記リンク部材の揺動を規制する係合部材と、前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられた回動部材と、該回動部材に突設されて前記回動部材の回動によって前記係合部材に当接して該係合部材を回動させる押圧ピンと、基端側が前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられ先端側に操作部を有し前記回動部材と一体となって該回動部材を回動させる操作ハンドルとを有する揺動ロック機構部が備えられる(請求項10)。
【0054】
係止ピンは、リンク部材に突設されたものやリンク部材を軸支する回動軸から延出した軸部でもよい。操作ハンドルはこれを回動操作すると、回動部材も連動して回動させることができればよく、操作ハンドルと回動部材が直接的に結合されたり、間接的に結合されてもよい。また誤操作や振動等によってリンク部材の揺動規制を解除する方向に回動部材が容易に回動しないようにするために、押圧ピンが係合部材から離反する側に回動部材を常に付勢するばねを設けてもよい。
【発明の効果】
【0055】
伝動フレームの回動のみによって前進用従動軸を前進用駆動軸に接続可能にし、後進用従動軸を後進用駆動軸に接続可能にするため、伝動フレーム、すなわち作業部を走行機体側に最も接近させた位置に配置することができ、農作業機の作業時において農作業機自体の進行方向の長さを最短にすることができる。従って走行機体が軽量な小型の場合でも、走行機体と農作業機との重量バランスが崩れる事態を回避、あるいは軽減することができ、走行機体の走行を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。図面では伝動フレームに支持された作業部50が畦塗り作業部であり、農作業機1が畦塗り機である場合を示しているが、農作業機1(作業部50)の形態は一切問われず、オフセット作業が可能な農作業機1全般を含む。
【0057】
図1は走行機体100の後部に装着される装着部10を有する前フレーム13と、前フレーム13に揺動自在に連結され、リンク40を構成する複数本のリンク部材41、42と、各リンク部材41、42の移動端側に連結される後フレーム45と、後フレーム45に突設された回動軸53(回動中心)に回動自在に連結される伝動フレーム51を有する農作業機1を示す。伝動フレーム51の先端位置には作業部50が支持され、伝動フレーム51は後フレーム45の回動軸53の回りに、作業部50が前進作業姿勢になる前進作業位置と、後進作業姿勢になる後進作業位置との間を回動自在となっている。以下では農作業機1として畦塗り機の例を説明する。
【0058】
農作業機(畦塗り機)1は図1及び図2に示すように走行機体100からの動力が入力される入力軸4を有する前フレーム13の装着部10において走行機体100に接続されると共に、走行機体100の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されることにより走行機体100に装着され、走行機体100の前進動及び後進動に応じて畦塗り作業を行う。
【0059】
装着部10は走行機体100の三点リンク連結機構に連結可能な連結フレーム11と連結フレーム11の後方側に、走行機体100の幅方向に並列する一対の支持アーム12、12'を介して接合された前フレーム13からなり、連結フレーム11の長さ方向(走行機体100の幅方向)の中央下部に入力軸4が配置される。入力軸4には走行機体100のPTO軸(図示せず)からの動力を図示しない伝動軸を介して伝達される。
【0060】
連結フレーム11の後端側には連結フレーム11の長さ方向に所定間隔を有して後方側へ突出する一対の支持アーム12、12'が上下方向に回動可能に連結され、一対の支持アーム12、12'の後端部に前フレーム13が接合されている。前フレーム13はリンク部材41、42を間隔を置いて支持するのに十分な長さを有する。前フレーム13にはこれを補強すると共に、走行機体100からの動力を受ける前進用駆動軸22と後進用駆動軸23を装着し、リンク部材41、42を連結するための取付フレーム15が前フレーム13を包囲する形で固定されている。
【0061】
取付フレーム15は並列するリンク部材41、42間に、特に入力軸4の背面(後方)側に位置する出力軸である前進用駆動軸22と後進用駆動軸23の背面(後方)側に、伝動フレーム51の回動中心部分を格納するための空間を確保するために、入力軸4に対して走行機体100の幅方向にずれている。詳しくは入力軸4の同一線上に前進用駆動軸22を配置する関係で、前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離の半分だけ、回動軸53(回動中心)が入力軸4の同一線上より、走行機体100の前進の向きに対して左側へシフトしている。
【0062】
取付フレーム15の長さ方向の両側位置からはそれぞれ後方(伝動フレーム51)側へ向かってリンク部材41、42を支持するための箱形のブラケット16、17が張り出し、それぞれの後方側の端部位置にリンク部材41、42を軸支する支持軸18、20が突設される。ブラケット16、17の内、リンク部材41、42の折り畳み側(前進作業位置側)、すなわち走行機体100の前進の向きに対して右側に位置するブラケット17の取付フレーム15からの張り出し長さは反対側(後進作業位置側)の左側に位置するブラケット16の取付フレーム15からの張り出し長さより小さい。リンク部材41、42の折り畳み状態で両リンク部材41、42間の距離を大きく確保し、後フレーム45の回動軸52、53の周辺に位置する前進用従動軸30及び後進用従動軸32等を両リンク部材41、42間に納めながら、後フレーム45を取付フレーム15(前フレーム13)に接近させるためである。
【0063】
走行機体100の前進の向きに対して右側に位置するブラケット17の支持軸18に、前進作業位置にあるときの作業部50側に位置する第1リンク部材41の前端部が連結され、左側に位置するブラケット16の支持軸20に後進作業位置にあるときの作業部50側に位置する第2リンク部材42が連結される。両リンク部材41、42の後端部(移動側端部)に後フレーム45の両端部が連結される。第1リンク部材41の後端部には、後フレーム45との連結位置より、第1リンク部材41の軸線に対して後方側へ屈曲(傾斜)して張り出す延長部41aが形成され、この延長部41aに後述する(電動式)シリンダ61が接続される。延長部41aが屈曲して第1リンク部材41から後方側へ張り出すことで、シリンダ61と第1リンク部材41との干渉を回避しながら、リンク40と伝動フレーム51との間にシリンダ61を架設することができている。
【0064】
左側のブラケット16からはこれを貫通する支持軸20が上下方向に突出し、その上端部に上記の第2リンク部材42が連結され、下端部に第2リンク部材42と平行に配置され、第2リンク部材42と共に伝動フレーム51を支持する第3リンク部材43が連結される。リンク40は互いに平行な取付フレーム15(前フレーム13)と後フレーム45、及び互いに平行な第1リンク部材41と第2リンク部材42及び第3リンク部材43から構成されている。取付フレーム15(前フレーム13)と後フレーム45は少なくともリンク部材41、42の折り畳み状態(前進作業位置と後進作業位置)で平行な状態を維持すればよい。
【0065】
第2リンク部材42と第3リンク部材43の後端部間に同軸の回動軸52、53が配置され、上側の回動軸52に第2リンク部材42と後フレーム45が回動自在に連結され、下側の回動軸53に第3リンク部材43と伝動フレーム51が回動自在に連結される。シリンダ61の伸縮によって全リンク部材41〜43が回転したときには、後フレーム45が回動軸52の回りに回転して取付フレーム15(前フレーム13)から遠ざかる。全リンク部材41〜43が折り畳み状態のまま、シリンダ61が伸縮するときには、伝動フレーム51が回動軸53の回りに回転する。作業部50が前進作業位置Pfにある図1の状態からシリンダ61が収縮すれば伝動フレーム51は回動軸53を回動中心Oとして回転し、図4に示す後進作業位置Pbまで180°回転する。伝動フレーム51はこれらの中間の格納位置Phにも移動可能である。
【0066】
伝動フレーム51は内部に、作業部50まで動力を伝達する動力伝達機構を格納するために箱形の形状をし、回動軸53から作業部(畦塗り作業部)50側へ張り出すように架設され、先端部分に作業部(畦塗り作業部)50が接続される。なお、作業部50は連結フレーム11と前フレーム13との間に架設された作業姿勢調整ネジ47によって上下方向に回動し、作業姿勢の調整が可能になっている。動力伝達機構は後述の前進用受動クラッチ31、または後進用受動クラッチ32からの動力を作業部50に伝達する。
【0067】
作業部(畦塗り作業部)50は図1に示すように圃場の周辺に沿って形成された旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部55と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部57とを備えている。前処理部55は回転可能に支持された耕耘ロータを備え、耕耘ロータは伝動フレーム51に連結されて支持される。整畦部57は回転可能に支持された多面体ドラム58を備え、多面体ドラム58は伝動フレーム51に連結されて支持される。耕耘ロータと多面体ドラム58には伝動フレーム51内の動力伝達機構を介して従動軸30(図13参照)からの動力が伝達される。
【0068】
前フレーム13(取付フレーム15)の長さ方向中間部には、長さ方向に所定距離を置いて配列する前進用駆動軸22と後進用駆動軸23が装着され、前フレーム13(取付フレーム15)から後フレーム45側へ突出している。前進用駆動軸22は入力軸4と同一軸線上に位置し、入力軸4からの動力がユニバーサルジョイント24等を介して前進用駆動軸22に伝達される。
【0069】
後進用駆動軸23には前進用駆動軸22に伝達された動力が前進用駆動軸22及び後進用駆動軸23に装着されたギア25、26(図13参照)を介して伝達される。前進用駆動軸22に動力が伝達されれば、後進用駆動軸23にも動力が伝達され、両駆動軸22、23が回転する。前進用駆動軸22の先端部には前進用駆動クラッチ27(図8参照)が接続され、後進用駆動軸23の先端部には後進用駆動クラッチ28(図8参照)が接続される。前進用駆動軸22と後進用駆動軸23の前フレーム13からの突出長さは等しく、前フレーム13からの、前進用駆動クラッチ27及び後進用駆動クラッチ28先端までの距離も等しい。請求項1における前進用駆動軸と後進用駆動軸はそれぞれ前進用駆動クラッチ27と後進用駆動クラッチ28を含む。
【0070】
伝動フレーム51の回動中心O付近の、回動軸53よりも作業部50側に寄った位置には図13、図14に示すように前進用駆動軸22及び後進用駆動軸23の軸線と平行な軸を有する従動軸30が支持されている。従動軸30は伝動フレーム51を貫通して装着され、軸方向の両端部は伝動フレーム51の側面から突出している。伝動フレーム51の各側面から従動軸30の各先端までの距離は等しい。本実施形態では従動軸30が請求項1における前進用従動軸と後進用従動軸を兼ねているが、従動軸30は前進用と後進用に分離し、それぞれが前進用駆動軸22と後進用駆動軸23に接続されることもある。従動軸30が前進用と後進用に分離している場合も、それぞれの軸は同一線上に配列する。
【0071】
作業部50が図1に示す前進作業位置にあるときに、図14に示すように伝動フレーム51の前フレーム13側の側面から突出する側の従動軸30の先端部分には前進用受動クラッチ31が接続され、後方側の側面から突出する側の従動軸30の先端部分には後進用受動クラッチ32が接続される。伝動フレーム51の各側面からの、前進用受動クラッチ31及び後進用受動クラッチ32先端までの距離も等しい。前進用受動クラッチ31と後進用受動クラッチ32はそれぞれ請求項1における前進用従動軸と後進用従動軸に相当する。
【0072】
伝動フレーム51の回動中心Oとなる回動軸53は前進用駆動軸22を通る直線と後進用駆動軸23を通る直線の中点を通る直線上に位置し、前進用受動クラッチ31と後進用受動クラッチ32は回動軸53から、前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置している。この結果、リンク部材41〜43が折り畳まれた状態にある限り、伝動フレーム51の回動に関係なく、従動軸30(前進用受動クラッチ31と後進用受動クラッチ32)の軸線を前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)、または後進用駆動軸23(後進用駆動クラッチ28)の軸線上に位置させることが可能になっている。
【0073】
従ってリンク部材41〜43が折り畳み状態にあり、図1に示す作業部50が前進作業位置にあるときには、前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)の軸線に従動軸30の前進用受動クラッチ31の軸線が合致し、互いに接続可能な状態にあり、図4に示す作業部50が後進作業位置にあるときには、後進用駆動軸23(後進用駆動クラッチ28)の軸線に従動軸30の後進用受動クラッチ32の軸線が合致し、互いに接続可能な状態にある。
【0074】
以上の駆動軸22、23と従動軸30の、前フレーム13の長さ方向の位置関係に加え、リンク部材41〜43が折り畳み状態にあるときの前フレーム13と伝動フレーム51との間の距離が調整されることで、図1のときには前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)に従動軸30の前進用受動クラッチ31が接続されており、図4のときには後進用駆動軸23(後進用駆動クラッチ28)に従動軸30の後進用受動クラッチ32が接続されている。
【0075】
前フレーム13と伝動フレーム51との間の距離は、伝動フレーム51が回動軸53の回りを回転し終え、前進用駆動軸22(前進用駆動クラッチ27)に従動軸30の前進用受動クラッチ31が対向しようとするときに、前進用受動クラッチ31と前進用駆動クラッチ27が相対的に回転しながら対向した時点で接続できる距離となるように設定される。この両クラッチ31、27が相対的に回転しながら接続される距離となるよう、リンク部材41〜43が折り畳み状態にあるときの、走行機体100の走行方向とのなす角度θが設定されている。
【0076】
なお、前進用受動クラッチ31と前進用駆動クラッチ27が互いに角度を持った状態から対向した(角度がない)状態に移行するときには、少なくともいずれか一方の軸に接続されているコイルスプリング等の付勢部材が互いの相対変位と相対回転変位を吸収するため、角度を持った状態で互いに接触を開始しても接続は円滑に行われる。
【0077】
伝動フレーム51は前記の、第1リンク部材41の後端部から後方側へ張り出す延長部41aと伝動フレーム51との間に架設される(電動式)シリンダ61の伸縮によって回動中心O(回動軸53)の回りに回転し、図1に示す前進作業位置の状態と図4に示す後進作業位置の状態とが切り替えられる。シリンダ61の一端は延長部41aに連結され、他端は伝動フレーム51と後フレーム45の間に配置される回動部材62に連結される。
【0078】
回動部材62は伝動フレーム51に突設された操作部64が相対移動可能な長孔状の開口62aを有し、操作部64が開口62aを挿通した状態で、後フレーム45に突設された支持軸63に回動自在に連結される。図面ではシリンダ61による回動部材62の回転角度を90度程度以下にしながら、伝動フレーム51を回動軸53の回りに180度回転させることができるよう、操作部64を回動軸53に関してリンク部材41の折り畳み側、すなわちシリンダ61の一端が連結される延長部41a側に突設し、支持軸63を回動軸53に関して前フレーム13側に配置している。支持軸63は後フレーム45の底面に突設される。
【0079】
具体的には平面上、回動軸53を通り、伝動フレーム51の軸方向(走行機体100の走行方向に直交する方向)の線上に操作部64を配置し、回動軸53を通り、走行機体100の走行方向の直線上に支持軸63を配置することにより、回動部材62の回転角度を90度程度にしながら、伝動フレーム51を180度回転させることを可能にしている。
【0080】
操作部64を伝動フレーム51の延長部41a側に突設し、支持軸63を後フレーム45の前フレーム13側に突設していることに対応し、回動部材62は回動軸53を回り込むC字形の形状に形成される。またシリンダ61との連結部に受けるシリンダ61からの軸力によって操作部64を支持軸63(回動中心O’)の回りに回転させることから、連結部は支持軸63に関して操作部64の反対側に形成される。
【0081】
図1に示す作業部50の前進作業位置ではリンク部材41、42が折り畳み状態で、シリンダ61は伸長状態にある。この図1に示す状態からはシリンダ61を収縮させることで、回動部材62のシリンダ61との連結部がシリンダ61側へ引き寄せられるに従い、回動部材62が支持軸63の回りを図1上、時計回りに回転し、開口62aに係止している操作部64(伝動フレーム51)が回動部材62に引きずられて回転しようとする。
【0082】
回動部材62は支持軸63の回りを回転するのに対し、伝動フレーム51は回動軸53の回りを回転することから、操作部64が図1、図4の状態のときに支持軸63から操作部64までの距離が最小で、操作部64が支持軸63と回動軸53を結ぶ直線上に位置したときに、支持軸63から操作部64までの距離が最大になる。このように伝動フレーム51が前進作業位置から後進作業位置に移行するまでの間で、支持軸63から操作部64までの距離が変化するため、この距離の変化に追従させるために、開口62aが長孔状に形成されている。
【0083】
シリンダ61が収縮し、回動部材62が操作部64を支持軸63と回動軸53を結ぶ直線上に位置するまで回転させた状態が図3に示す中間位置であり、この状態では操作部64は開口62aの、支持軸63から最も遠い側に位置している。更にシリンダ61が収縮しきり、操作部64が前進作業位置から回動軸53に関して対称位置にまで移動した状況が図4に示す後進作業位置になる。図4に示す状態では操作部64は開口62aの最も支持軸63寄りに位置している。図4に示す状態からはシリンダ61を伸長させ、回動部材62を逆回り(反時計回り)に回転させることで、逆に図3の状態を経て図1の前進作業位置に復帰する。
【0084】
ここで、図4に示す後進作業位置Pbに移動した作業部(畦塗り作業部)50のオフセット量Xrは、図1に示す前進作業位置Pfに移動した作業部(畦塗り作業部)50のオフセット量Xfよりも大きくなっている。このオフセット量の差ΔX=(Xr−Xf)は、平面視における前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離Dに対応しており、前記の通り、前進作業位置において従動軸30を前進用駆動軸22と同一軸線上に位置させ、従動軸30を回動軸53から前進用駆動軸22と後進用駆動軸23との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置させたことに関係している。
【0085】
この関係で、後進作業位置Pbにおける作業部50のオフセット量Xrを前進作業位置Pfに移動した作業部50のオフセット量Xfよりも例えば、Yだけ大きくしたい場合には、2つの駆動軸22、23間の距離をYに設定すればよいことになる。つまり、2つの駆動軸22、23の配置が可能な範囲内で、後進作業時における作業部50のオフセット量Xrを任意に設定することができる。
【0086】
後フレーム45上には作業部50が前進作業位置にあるときと後進作業位置にあるときの伝動フレーム51の回動を拘束し、それぞれの状態を切り替えるときに拘束を解除する拘束・解除装置80が配置される。図1には後フレーム45上の拘束・解除装置80が配置される領域を拘束・解除機構部84として示している。
【0087】
拘束・解除装置80は伝動フレーム51に突設される被係合部81と、作業部50が前進作業位置にあるときの被係合部81に係合可能な前進側係合部材82と、作業部50が後進作業位置にあるときの被係合部81に係合可能な後進側係合部材83と、前進側係合部材82と後進側係合部材83のいずれか一方が被係合部81に係合した状態を解除する解除部材85を備える。
【0088】
前進側係合部材82は後フレーム45の、作業部50が前進作業位置にあるときの被係合部81に対応した位置に回動自在に設置され、作業部50が前進作業位置にあるときに一端部において被係合部81に係合可能な状態にある。後進側係合部材83は後フレーム45の、作業部50が後進作業位置にあるときの被係合部81に対応した位置に回動自在に設置され、作業部50が後進作業位置にあるときに一端部において被係合部81に係合可能な状態にある。
【0089】
解除部材85は前進側係合部材82と後進側係合部材83の各他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動(伸縮を含む)により前進側係合部材82と後進側係合部材83を回動させ、前進側係合部材82と後進側係合部材83のいずれか一方が被係合部81に係合した状態を解除する。
【0090】
被係合部81は伝動フレーム51に突設されることで、伝動フレーム51の回転と共に回動軸53の回りを回転する。また伝動フレーム51の回転の前後に拘らず(前進作業位置であるか後進作業位置であるかに関係なく)伝動フレーム51の軸方向は常に走行方向に直交する方向を向く。このことから、前進側係合部材82と後進側係合部材83の一端部に形成され、被係合部81に係合する係合部82a、83aは回動軸53を通り、走行機体100の走行方向に関して対称な位置に配置される。
【0091】
係合部82a、83aが回動軸53に関して対称な位置に配置されることから、前進側係合部材82の本体部87と後進側係合部材83の本体部88は回動軸53を通り、走行機体100の走行方向に関して対称に配置され、それぞれは回転によって係合部82a、83aが被係合部81に係合する位置において回動自在に後フレーム45に支持される。図面では係合部82aと係合部83aがそれぞれ被係合部81に係合しているときの、被係合部81の前フレーム13寄りの位置に前進側係合部材82と後進側係合部材83の回動軸を配置している。
【0092】
前進側係合部材82と後進側係合部材83を走行機体100の走行方向に関して対称に配置していることから、図面では前進側係合部材82と後進側係合部材83を同時に回動操作できるよう、前進側係合部材82と後進側係合部材83の各本体部87、88間に連結部材89を架設し、連結部材89の両側の端部89aをそれぞれに連結している。上記解除部材85はこの連結部材89を走行機体100の走行方向に引き寄せることにより被係合部81に係合している係合部材82と係合部材83のいずれか一方を被係合部81から解除する。
【0093】
図面では前進側係合部材82と後進側係合部材83の全長の内、一端部の係合部82a、83a寄りの部分に回転中心を置くことで、回転中心から係合部82a、83aまでの距離より、回転中心から連結部材89が連結される他端部までの距離を大きく取っている。この結果、連結部材89が後述の接続部材89bから受ける直線方向の力を拡大して係合部82a、83aにモーメントとして伝達している。
【0094】
解除部材85と連結部材89との間には連結部材89を走行機体100の走行方向に直線運動させるための接続部材89bが架設され、接続部材89bの一端は連結部材89に連結され、他端は解除部材85に連結される。接続部材89bと解除部材85との間には、平常時に連結部材89を前フレーム13側へ付勢することにより係合部82a、83aが被係合部81に係合する向きに付勢し、係合部82a、83aのいずれかが被係合部81に係合したときに係合状態を維持する付勢部材(圧縮ばね)89cが介在する。
【0095】
作業部50が前進作業位置にある図1のときには、前進側係合部材82の係合部82aが被係合部81に係合した状態にある。この状態から伝動フレーム51を回動軸53の回りに回転させ、後進作業位置に移行させるとき、または格納状態に移行させるときに、解除部材85が付勢部材89cに抗して連結部材89を解除部材85側へ引き寄せることにより係合部82aの被係合部81への係合状態を解除する。
【0096】
作業部50が後進作業位置にある図4のときには、後進側係合部材83の係合部83aが被係合部81に係合した状態にあり、このときにも伝動フレーム51を回転させるときに、解除部材85が付勢部材89cに抗して連結部材89を引き寄せることにより係合部83aの被係合部81への係合状態を解除する。
【0097】
解除部材85は少なくとも連結部材89を解除部材85側へ引き寄せる働きをすれば、係合部82a、83aの被係合部81への係合を解除することができるため、解除装置84には直線運動を連結部材89に伝達する機能を有する各種の駆動装置が使用可能である。但し、図示する例では解除部材85が連結部材89を引き寄せ、係合部82a、83aの係合を解除したときに、解除部材85自身が平常時の状態に復帰する能力を持たない場合にも対応するために、解除部材85に正回転と逆回転の切替操作が可能なモータ、特にワイパモータ、あるいはステッピングモータを使用している。この場合、解除部材85(モータ)が正回転することにより連結部材89を引き寄せ、逆回転することにより接続部材89bを平常時の状態に復帰させ、付勢部材89cが復元力を発揮する状態に復帰させる。
【0098】
なお、解除部材85に電動モータを使用する場合、電動モータ自身が発生する振動の伝播を抑制するために、後フレーム45上の電動モータとの間には防振ゴム等の振動抑制部材が介在させられる。電動モータの作動制御は図示しない操作スイッチからの操作内容に応じてコントローラが制御する。
【0099】
前フレーム13(取付フレーム15)と後フレーム45の内のいずれか一方には、リンク部材41〜43が折り畳み状態を維持するための拘束・解除装置70が設置される。
【0100】
拘束・解除装置70は前フレーム13(取付フレーム15)と後フレーム45の内のいずれか一方に突設される被係合部72と、他方に突設された支持軸Qの回りに回動可能で、リンク部材41〜43が折り畳み状態のときに被係合部72に一端部において係合可能な係合部材71と、係合部材71の他端部に接続され、直線運動(伸縮を含む)により係合部材71を支持軸Qの回りに回動させ、係合部材71が被係合部72に係合した状態を解除する解除部材73を備える。
【0101】
図面では走行機体100の前進方向右側のブラケット17に突設され、リンク部材41が連結された支持軸18に、係合部材71の先端部分に形成されたフック部71aを係合させ、支持軸18を被係合部72として利用している。この関係で、後フレーム45に係合部材71を軸支する支持軸Qを突設しているが、前フレーム13(取付フレーム15)、またはブラケット17に係合部材71を軸支させ、支持軸Qを被係合部72として利用することもある。
【0102】
また図面では支持軸18(の中心)を通り、走行機体100の走行方向の直線上に位置する部分に支持軸Qを突設することで、支持軸18と支持軸Qとの間の距離を最短にし、係合部材71の、支持軸Qから被係合部72(支持軸18)までの区間の長さが最小になるようにしている。図面ではまた、係合部材71に直線運動による力を与える部分(係合部材71の他端部)、すなわち解除部材73の一端を後フレーム45上の、回動軸53回りの部分に配置していることから、係合部材71をL形の形状に形成しているが、係合部材71の形状は被係合部72と支持軸Q、及び解除部材73の配置によって決まり、任意である。
【0103】
係合部材71のいずれかの部分には、係合部材71のフック部71aが被係合部72(支持軸18)に係合した状態を維持する向きに復元力を発揮する付勢部材75が配置される。図面では係合部材71の解除部材73側の端部71bに付勢部材75の一端を接続し、付勢部材75の他端を後フレーム45のいずれかの部分に接続している。この場合、付勢部材75は引張ばねとして軸方向に操作部材74から引張力を受けたときに復元力を発揮する。
【0104】
係合部材71の支持軸Qに関してフック部71aの反対側の端部には解除部材73が直接、もしくは間接的に接続される。上記のように付勢部材75がフック部71aの係合状態を維持しようとすることで、解除部材73は付勢部材75に抗して係合部材71を係合の解除の向きに力を与えればよい。そこで、図面では解除部材73に操作部材74を接続し、操作部材74を通じて係合部材71にその係合を解除する向きに力を与えている。
【0105】
図示する場合、解除部材73が操作部材74を前フレーム13側へ押し出すことにより係合部材71を、支持軸Qを中心として時計回りに回転させ、フック部71aを被係合部72(支持軸18)から離脱させる。フック部71aが被係合部72から離脱した状態では、付勢部材75が復元力を発揮することにより係合部材71を反時計回りに回転させ、フック部71aを被係合部72に係合可能な状態に復帰させる。
【0106】
解除部材73にも直線運動を操作部材74、または係合部材71に伝達する機能を有すれば、各種の駆動装置が使用可能であるが、図面では拘束・解除装置80で使用している解除部材85と同じくワイパモータを使用している。この場合、ワイパモータの出力軸の回転により操作部材74が前フレーム13側へ移動することにより係合部材71が支持軸Q回りに回転し、フック部71aが被係合部72から離脱する。ワイパモータの電源がOFFになったときに、付勢部材75が操作部材74を元の位置に復帰させ、係合部材71を係合の向きに回転させる。
【0107】
図8は農作業機1の格納状態を、図7は図8から伝動フレーム51と作業部50を省略した様子を示す。この状態は図1における上記係合部材71の被係合部72(支持軸18)への係合が解除され、リンク部材41〜43が折り畳み状態から走行機体100の走行方向に対して左側へ傾斜した状態にあり、リンク部材41〜43が振動によって自由に揺動し得る状態にある。そこで、図面では格納状態にあるリンク部材41を作業部50に拘束する保持装置41Aをリンク部材41と作業部50に配置することによりリンク部材41〜43の自由な揺動を防止している。
【0108】
保持装置41Aは複数本のリンク部材41〜43の内、作業部50側に位置するリンク部材41の側面に突設されるピン状(突起状)の嵌合部材41bと、作業部50のリンク部材41側に固定され、嵌合部材41bが挿通し得る開口を有する板状、もしくは箱状の被嵌合部材54からなり、図1、図4に示すように嵌合部材41bと被嵌合部材54は伝動フレーム51の格納位置にリンク部材41が回動したときに互いに嵌合する位置に配置される。
【0109】
嵌合部材41bは係合部材71が被係合部72から離脱したときに、リンク部材41の一端が軸支された支持軸18を中心として回転し、被嵌合部材54はシリンダ61の伸長に伴って伝動フレーム51が後フレーム45と平行な状態を維持したまま、平行移動する。具体的には図1において右側に位置するリンク部材41上の点は支持軸18を中心とする円弧を描き、作業部50は走行機体100の中心線に近付きながら、前フレーム13から遠ざかるように平行移動して直線状の軌跡を描く。そこで、支持軸18を中心とする円弧の軌跡と作業部50が描く直線の軌跡が交わる位置に、嵌合部材41bと被嵌合部材54がそれぞれ配置される。
【0110】
嵌合部材41bは支持軸18の回りに回転して平行移動する被嵌合部材54に嵌合するため、被嵌合部材54の開口は回転しながら接近し、接触時に嵌合部材41bが開口内に入り込むよう、嵌合部材41bの回転面の方向には嵌合部材41bの幅より大きめの幅が与えられる。嵌合部材41bが被嵌合部材54に嵌合した状態では、図8に示すように嵌合部材41bが被嵌合部材54の開口を貫通し、嵌合部材41bの周囲に形成されているフランジ41cが被嵌合部材54にリンク部材41側から係止した状態になる。
【0111】
被嵌合部材54の開口を貫通した嵌合部材41bの先端部分には例えば孔41b’が穿設されており、図8に示すように孔41b’には開口からの抜け出しを防止するためのピン41dが差し込まれる。ピン41dは被嵌合部材54に抜け出しの向きに係止し、嵌合部材41bを被嵌合部材54に拘束する。嵌合部材41bの孔41b’へのピン41dの差し込みによって嵌合部材41bが被嵌合部材54に拘束され、格納状態にあるリンク部材41の回動が拘束された状態になる。ピン41dは不使用時には図1に示すように被嵌合部材54のいずれかに仮止めされている。
【0112】
ここで、作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合の農作業機1の動作について説明する。なお、作業部50が前進作業位置Pfにある状態では、リンク40は一方側に所定角度θを有して揺動した状態にあり、拘束・解除装置70によってリンク40の揺動がロックされた状態にある。
【0113】
先ず、操作スイッチを操作して作業部50が前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動するように操作する。操作スイッチが操作されると、拘束・解除装置80の解除部材(電動モータ)85が前進側係合部材82を反時計回りに回転させて係合部82aの被係合部81に対する係合状態を解除し、伝動フレーム45の回動ロック状態を解除する。
【0114】
伝動フレーム45の回動が非ロック状態になったときに、シリンダ61が収縮して回動部材62が時計回りに回転し、それに伴い、回動部材62に形成された開口62aが操作部64(図9参照)を押圧して伝動フレーム45がその回動支点Oを中心として時計回りに回転する。同時に、前側受動クラッチ31(図13参照)が伝動フレーム45の回動支点Oを中心として時計回りに回転して前側駆動クラッチ27(図13参照)から離脱する。
【0115】
シリンダ61が更に収縮すると、図3に示すように作業部50は前進作業位置Pfから時計回りに回転し、走行機体100の後方を通って走行機体100の他方側の側方に移動する。作業部50が後進作業位置Pbに移動するに伴い、被係合部81が後進側係合部材83の係合部83a内に入り込んで後進側係合部材83が被係合部81に係合し、伝動フレーム51の回動が拘束されると共に、後側受動クラッチ32が後側駆動クラッチ28に接続され、作業部50の後進作業位置Pbへの移動が完了する。
【0116】
このように1本のシリンダ61の伸縮によって作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させることができる。このため、走行機体100の先端部が圃場の端に到達したときから作業部50を後進位置に移動させて走行機体100を後進させながら圃場の隅部に残された未作業部分の畦塗り作業を行うまでの時間を短縮することができ、畦塗り作業全体の作業性を向上させることができる。
【0117】
次に作業部50を後進作業位置Pbから格納位置Phに移動させる要領を説明する。先ず操作スイッチが操作されると、拘束・解除装置80が作動して伝動フレーム51の回動ロック状態を解除し、その後、図5に示すようにシリンダ61が伸長して作業部50が後進作業位置Pbから前進作業位置Pfに移動する。
【0118】
作業部50が前進作業位置Pfに移動すると、図6に示すように拘束・解除装置80の前進側係合部材82の係合部82a内に被係合部81が入って伝動フレーム51の回動が拘束されると共に、前側受動クラッチ31が前側駆動クラッチ27に接続される。続いて拘束・解除装置70が作動して係合部材71が時計回りに回転してリンク40の揺動ロック状態が解除される。
【0119】
リンク40の揺動ロック状態が解除されると、シリンダ61が伸長する。ここで、作業部50の回動が拘束・解除装置80によって拘束されていることで、伝動フレーム51、後フレーム45及び回動部材62は一体的に挙動する。このため、シリンダ61が伸長しても、回動部材62は回動しない。一方、シリンダ61が伸長するに伴い、シリンダ61が伸長する力、つまり他方側に向く力は、回動部材62を介して後フレーム45に伝達されるため、第1リンク部材41、第2リンク部材42及び第3リンク部材43を他方側に回動させる。
【0120】
以上のようにシリンダ61の伸長によってリンク40が格納側へ回転し、後フレーム45が格納側へ移動する。リンク40の格納側への揺動に伴い、図7及び図8に示すように第1リンク部材41の一方側の側面に設けられた嵌合部材41bが作業部50に突設された被嵌合部材54の開口を挿通する。リンク40の他方側への揺動に伴い、前側受動クラッチ31が斜め後方に移動して前側駆動クラッチ27から離脱する。その後、嵌合部材41bのフランジ41cが被嵌合部材54に突き当たった時点で、シリンダ61の伸長が停止してリンク40の他方側への揺動が完了する。ここで、被嵌合部材54の開口を挿通した嵌合部材41bに係止ピンを貫通させてリンク40の揺動がロック状態になる。
【0121】
このように作業部50が前進作業位置Pf及び後進作業位置Pbのいずれの作業位置に移動してもリンク40の移動端側は前フレーム13側に近接した位置にあり、リンク40の移動端側は走行機体100側に接近した位置に配置されるため、リンク40の移動端側に取り付けられた作業部50を走行機体100側に接近させて配置することができる。
【0122】
このため、農作業機の作業時において農作業機自体の前後方向長さを短くすることができ、作業部50から圃場に作用する力の反力がモーメントとなって走行機体100に作用しても、このモーメントの大きさを比較的に小さくすることができる。その結果、走行機体100が軽量な小型の場合でも、走行機体100と農作業機との重量バランスが崩れる虞を防止することができ、走行機体100の走行が安定して、農作業機1による作業を安定して行うことができる。
【0123】
[第2実施形態]
次に本発明に係る農作業機1の第2実施形態を説明する。ここでは第1実施形態との相違点のみを説明し、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。本実施形態においては、装着部10と作業部50との間に、前フレーム13に対するリンク40の揺動を手動でロックし、且つ後フレーム45に対する作業部50の回動を手動でロック可能なロック装置110が設けられている。
【0124】
図10〜図12はロック装置110の構成例を示す。図10は作業部50が前進作業位置Pfにあり、作業部50の回動がロックされると共に、リンク40の揺動がロックされている状態を示す。図11は前進作業位置Pfにおいてリンク40の揺動がロックされた状態を維持したまま、作業部50の回動のロックを解除し、後進作業位置Pbに移動する途中におけるロック装置110の状態を示す。図12は作業部50が後進作業位置Pbまで回転し、作業部50の回動がロックされると共に、リンク40の揺動がロックされている状態を示した説明図である。なお、説明の便宜上、図10〜図12中、ロック装置以外の機構等については、構成を一部省略して示してある。
【0125】
このロック装置110はリンク40の揺動をロックするための揺動ロック機構部111と、作業部50の回動をロックするための回動ロック機構部120とを有している。
【0126】
本発明の農作業機(畦塗り機)1は第一実施形態で説明したように後フレーム45が前フレーム13と平行なまま、右側前方に移動すると共に、前側受動クラッチ31が前側駆動クラッチ27に接近移動して前側駆動クラッチ27に接続されたときに、作業部50が前進作業位置Pfに移動する。作業部50が前進作業位置Pfに移動すると、図10(平面図)に示すように揺動ロック機構部111によりリンク40の揺動がロックされる。
【0127】
具体的には揺動ロック機構部111は後フレーム45に前方に張り出して固設された張出部112の前方側に形成された孔112aと、第1リンク部材41の略中間位置から先端側に張り出して設けられた円弧状部113の一端側に形成された孔113aと、L字型ロックピン114とを有し、連通状態にしたこれらの孔112a、113aにL字型ロックピン114を挿入することにより第1リンク部材41と後フレーム45とを固定し、リンク40の揺動をロックする。
【0128】
なお、図13に示すように作業部50が格納状態にあるときには、揺動ロック機構部111のL字型ロックピン114が、第1リンク部材41に形成された略円弧状部の他端側に設けられた孔113b側に挿入することによりリンク40の揺動をロックしている。
【0129】
回動ロック機構120は図10に示すように一端が伝動フレーム51の基端側に回動自在に軸支された平面視略C形状の回動プレート121と、回動プレート121の拡幅した他端側の先端部に回動自在に軸支された棒状のロック操作部材122と、畦塗り作業部50に固設されたピン部材123とを有する。ピン部材123はロック操作部材122の先端側に形成された長孔部122aに沿って移動可能に嵌め込まれている。長孔部122aの両端部には長孔部122aに連通してロック操作部材122の回動方向と同一方向に連続し、ピン部材123の長孔部122aに沿う方向の移動を規制する移動規制孔122bが形成されている。ロック操作部材122は例えばスプリングなどの付勢手段(図示せず)により作業機の前方に付勢されることによりピン部材123が移動規制孔122bから長孔部122aに移動して畦塗り作業部50の回動ロック状態の解除をし難くしている。
【0130】
また回動プレート121の拡幅部分には長孔121aが設けられており、長孔121aには後フレーム45の下面から突設けされたガイドピン124が挿入されている。
【0131】
作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合には、先ず、図10に示す回動ロック機構120を操作して後フレーム45に対する作業部50の回動ロック状態を解除する。すなわち、作業者は図10(平面図)に示すようにロック操作部材122に形成された長孔部122aの一端側に設けられた移動規制孔122bに係止しているピン部材123を、ロック操作部材122を回動操作することにより長孔部122a側に移動させて、畦塗り作業部50の回動ロック状態を解除する。
【0132】
次いで、回動支点Oを中心として作業部50を前進作業位置Pfと反対側に回動させると、前側受動クラッチ31は回動支点Oを中心とし畦塗り作業部50の回動方向と同一方向に回動して前側駆動クラッチ27から脱着され、図11(平面図)に示すようにピン部材123が長孔部122aの長手方向に移動すると共に、ガイドピン124も長孔121aの他端側に向かって移動する。作業部50を反対側に更に回動させ、後進作業位置Pb側に移動すると、図12(平面図)に示すように作業部50はその前後関係が反転された状態となり、後側受動クラッチ32は前方側に向いた状態となって後側駆動クラッチ28に接続される。
【0133】
これと同時に、ピン部材123は長孔部122aの長手方向の他端側まで移動し、ピン部材123が移動規制孔122bまで移動して係止し、作業部50の回動がロックされる。なお、ガイドピン124は長孔部122a内を移動して前進作業位置Pfと同じ位置に復帰する。
【0134】
作業部50を後進作業位置Pbから前進作業位置Pfに移動させる場合も、作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる場合と同様に、回動ロック機構120によるロック状態を解除して、後フレーム45に対して作業部50を回動させるだけでよく、この作業は前述した前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに移動させる作業に準じるので、その説明は省略する。
【0135】
このように畦塗り作業部50を前進作業位置Pfから後進作業位置Pbに、逆に後進作業位置Pbから前進作業位置Pfに移動させるときには、作業部50の後フレーム45に対する回動操作のみで、前側受動クラッチ31を前側駆動クラッチ27に又は後側受動クラッチ32を後側駆動クラッチ28に接続することができる。併せて作業部50を容易に反転させることができるため、作業部50の反転作業の習熟を不要にすることができる。
【0136】
図14には、平行リンク40の揺動ロックを解除可能な揺動ロック解除機構部を備えた農作業機1が記載されている。この揺動ロック解除機構部70は、後フレーム45に回動可能に設けられ前側に形成されたフック部71aが第1リンク部材41の前側を軸支する支持軸18から上方へ延びる係止ピン19に係止して第1リンク部材41の揺動を規制して平行リンク40の揺動をロックする係合部材71と、係止ピン19の中心軸線と同軸上に回動自在に設けられた回動部材72と、回動部材72の上面に突設されて回動部材72の回動によって係合部材71の先端部に当接して係合部材71をロック解除方向に回動させる押圧ピン73と、基端側が係止ピン19の中心軸線と同軸上に回動自在に設けられ先端側に操作部74aを有し回動部材72と一体となって回動部材72を回動させる操作レバー74とを有してなる。
【0137】
回動部材72の回動中心と反対側の回動部材72の端部には、第1リンク部材41に突設されたピン部材41bを挿通する長孔部72aが前後方向に延びて設けられて、回動部材72の回動範囲を規制している。長孔部72aは、係止ピン19に係止された係合部材71に押圧ピン73が接触した状態になると、長孔部72aの後端部にピン部材41bが当接した状態になるように形成されており、この状態で操作レバー74を後方側へ回動すると、押圧ピン73によって回動部材72を時計方向に回動させて回動部材72の係止状態を解除するとともに長孔部72aが後方側に移動してピン部材41bが長孔部72aの前端部に当接して操作レバー74のロック解除方向の回動操作を規制する。
【0138】
また回動部材72の回動中心側端部と第1リンク部材41との間には引っ張りばね75が設けられている。この引っ張りばね75によって回動部材72を介して押圧ピン73を係合部材71から離反する方向に移動させるようにしている。このため、振動等によって平行リンク40の揺動規制が解除される虞を防止している。
【0139】
また操作レバー74は、これを時計方向に回動して平行リンク40の揺動ロックを解除した状態でさらに時計方向に回動すると、平行リンク40を揺動させることができ、平行リンク40を揺動させる操作部材としての機能も有している。
【0140】
なお、前述した実施の形態では農作業機の一例として畦塗り機を対象とした場合を示したが、溝掘機を対象としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】作業部が前進作業位置に移動した状態の農作業機を示した平面図である。
【図2】作業部が前進作業位置に移動した状態の農作業機を示した左側面図である。
【図3】作業部を反転させる移動途中の農作業機を示した平面図である。
【図4】作業部が後進作業位置に移動した状態の農作業機を示した平面図である。
【図5】回動部材と、リンク部材用の拘束・解除装置の関係を示した平面図である。
【図6】図5の状態からシリンダが収縮した様子を示した平面図である。
【図7】図5に示す拘束・解除装置を構成する係合部材の係合が解除された様子を示した平面図である。
【図8】作業部が格納位置に移動した状態の農作業機を示した平面図である。
【図9】図8の後方側の立面図である。
【図10】手動式のロック装置によって作業部が前進作業位置でロックされた状態の農作業機を示した平面図である。
【図11】手動式のロック装置によって作業部の回動がロック解除された状態で、作業部を反転させる移動途中の状態にある農作業機を示した平面図である。
【図12】手動式のロック装置によって作業部が後進作業位置でロックされた状態の農作業機を示した平面図である。
【図13】手動式のロック装置によって作業部が格納位置でロックされた状態の農作業機を示した平面図である。
【図14】他の手動式のロック装置を備えた作業部を有する農作業機を示した平面図である。
【符号の説明】
【0142】
1……農作業機(畦塗り機)、10……装着部、13……前フレーム、
22……前進用駆動軸、23……後進用駆動軸、30……従動軸、
40……リンク、41……第1リンク部材(リンク部材)、42……第2リンク部材(リンク部材)、
45……後フレーム、50……作業部(畦塗り作業部)、51……伝動フレーム、53……回動軸、
70……拘束・解除装置、71……係合部材、72……被係合部、73……解除部材、74……操作部材、
80……拘束・解除装置、81……被係合部、82……前進側係合部材、83……後進側係合部材、85……解除部材、
100……走行機体、
110……ロック装置、111……揺動ロック機構部、112……張出部、
112a……孔(孔部)、113a……孔(連通孔部)、114……L字型ロックピン、
120……回動ロック装置、121……回動プレート、122……ロック操作部材、
122b……移動規制孔、123……ピン部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に装着される装着部を有する前フレームと、この前フレームに揺動自在に連結される複数本のリンク部材と、この各リンク部材の移動端側に連結される後フレームと、この後フレームに突設された回動軸に回動自在に連結され、先端位置に作業部を支持した伝動フレームを有し、
前記伝動フレームが前記後フレームの回動軸の回りに、前記作業部が前進作業姿勢になる前進作業位置と、後進作業姿勢になる後進作業位置との間を回動自在な農作業機において、
前記装着部に前記走行機体からの動力を受ける前進用駆動軸と後進用駆動軸が前記後フレーム側へ突出した状態で前記走行機体幅方向に並設され、
前記リンク部材が最も折り畳まれた状態のとき、前記伝動フレームの前記前フレーム側の側面から、前記前進用駆動軸に接続可能な前進用従動軸が突出し、その反対側の側面から、前記後進用駆動軸に接続可能な後進用従動軸が突出し、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記前進作業位置まで移動したときに、前記前進用従動軸が前記前進用駆動軸に接続され、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記後進作業位置まで移動したときに、前記後進用従動軸が前記後進用駆動軸に接続されることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記伝動フレームの回動中心となる前記回動軸は前記前進用駆動軸を通る直線と前記後進用駆動軸を通る直線の中点を通る直線上に位置し、
前記前進用従動軸と前記後進用従動軸は前記回動軸から、前記前進用駆動軸と前記後進用駆動軸との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記リンク部材の移動端側と前記伝動フレームの前記回動軸付近との間にシリンダが架設されて双方に連結され、前記伝動フレームは前記シリンダの伸縮に伴って前記回動軸の回りに回動し、前記作業部を前記前進作業位置と前記後進作業位置との間を移動させることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記伝動フレームに突設された操作部が相対移動可能な開口を有する回動部材が、前記操作部が前記開口を挿通した状態で、前記後フレームに突設された支持軸に回動自在に連結され、前記シリンダは一端において前記回動部材に連結され、伸縮に伴って前記回動部材を回動させ、前記伝動フレームを回動させることを特徴とする請求項3に記載の農作業機。
【請求項5】
前記伝動フレームに突設される被係合部と、
前記後フレームの、前記作業部が前記前進作業位置にあるときの前記被係合部に対応した位置に回動自在に設置され、前記作業部が前記前進作業位置にあるときに一端部において前記被係合部に係合可能な前進側係合部材と、
前記後フレームの、前記作業部が前記後進作業位置にあるときの前記被係合部に対応した位置に回動自在に設置され、前記作業部が前記後進作業位置にあるときに一端部において前記被係合部に係合可能な後進側係合部材と、
前記前進側係合部材と後進側係合部材の各他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動により前記前進側係合部材と前記後進側係合部材を回動させ、前記前進側係合部材と後進側係合部材のいずれか一方が前記被係合部に係合した状態を解除する解除部材とを備えた拘束・解除装置を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の農作業機。
【請求項6】
前記前フレームと後フレームの内のいずれか一方に突設される被係合部と、他方に突設された支持軸の回りに回動可能で、前記リンク部材が折り畳み状態のときに前記被係合部に一端部において係合可能な係合部材と、
前記係合部材の他端部に接続され、直線運動により前記係合部材を前記支持軸の回りに回動させ、前記係合部材が前記被係合部に係合した状態を解除する解除部材とを備えた拘束・解除装置を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の農作業機。
【請求項7】
前記複数本のリンク部材の内、前記作業部側に位置するリンク部材の側面に突設される嵌合部材と、前記作業部の前記リンク部材側に固定され、前記嵌合部材が挿通し得る開口を有する被嵌合部材とを備え、
前記嵌合部材と前記被嵌合部材は前記伝動フレームの格納位置に前記リンク部材が回動したときに互いに嵌合する位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の農作業機。
【請求項8】
前記伝動フレームの回動支点側に一端が回動自在に設けられ、前記伝動フレームの回動に連動して前記伝動フレームの回動方向と同一方向に回動する回動プレートと、前記作業部に設けられ、前記作業部の回動と共に移動するピン部材と、前記回動プレートの他端側に一端が回動自在に取り付けられ、他端側に前記ピン部材が挿通する長孔部を有し、前記作業部の回動に伴って前記ピン部材が前記長孔部に沿って移動可能なロック操作部材とを有し、前記長孔部の両端部に、前記長孔部に連通して前記ロック操作部材の回動方向と同一方向に延びて前記ピン部材の前記長孔部に沿った移動を規制する移動規制孔が形成された回動ロック機構部が備えられていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の農作業機。
【請求項9】
前記前フレームに連結された一対のリンク部材の一方に形成された連通孔部と、前記後フレームから張り出した張出部に設けられた孔部と、前記リンク部材が前記前フレームに接近した折り畳み状態にあるとき、あるいは前記後フレームが前記前フレームから距離を置いた格納状態のときに、連通状態にある前記孔部及び前記連通孔部に挿通されるロックピンを有する揺動ロック機構部が備えられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項8のいずれかに記載の農作業機。
【請求項10】
前記後フレームに回動可能に設けられ前側に形成されたフック部が前記一対のリンク部材のいずれかに設けられた係止ピンに係止して前記リンク部材の揺動を規制する係合部材と、前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられた回動部材と、該回動部材に突設されて前記回動部材の回動によって前記係合部材に当接して該係合部材を回動させる押圧ピンと、基端側が前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられ先端側に操作部を有し前記回動部材と一体となって該回動部材を回動させる操作ハンドルとを有する揺動ロック機構部が備えられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項8のいずれかに記載の農作業機。
【請求項1】
走行機体の後部に装着される装着部を有する前フレームと、この前フレームに揺動自在に連結される複数本のリンク部材と、この各リンク部材の移動端側に連結される後フレームと、この後フレームに突設された回動軸に回動自在に連結され、先端位置に作業部を支持した伝動フレームを有し、
前記伝動フレームが前記後フレームの回動軸の回りに、前記作業部が前進作業姿勢になる前進作業位置と、後進作業姿勢になる後進作業位置との間を回動自在な農作業機において、
前記装着部に前記走行機体からの動力を受ける前進用駆動軸と後進用駆動軸が前記後フレーム側へ突出した状態で前記走行機体幅方向に並設され、
前記リンク部材が最も折り畳まれた状態のとき、前記伝動フレームの前記前フレーム側の側面から、前記前進用駆動軸に接続可能な前進用従動軸が突出し、その反対側の側面から、前記後進用駆動軸に接続可能な後進用従動軸が突出し、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記前進作業位置まで移動したときに、前記前進用従動軸が前記前進用駆動軸に接続され、
前記伝動フレームが前記回動軸の回りに回動して前記作業部が前記後進作業位置まで移動したときに、前記後進用従動軸が前記後進用駆動軸に接続されることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記伝動フレームの回動中心となる前記回動軸は前記前進用駆動軸を通る直線と前記後進用駆動軸を通る直線の中点を通る直線上に位置し、
前記前進用従動軸と前記後進用従動軸は前記回動軸から、前記前進用駆動軸と前記後進用駆動軸との間の距離の1/2の距離をおいた位置を通る直線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記リンク部材の移動端側と前記伝動フレームの前記回動軸付近との間にシリンダが架設されて双方に連結され、前記伝動フレームは前記シリンダの伸縮に伴って前記回動軸の回りに回動し、前記作業部を前記前進作業位置と前記後進作業位置との間を移動させることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記伝動フレームに突設された操作部が相対移動可能な開口を有する回動部材が、前記操作部が前記開口を挿通した状態で、前記後フレームに突設された支持軸に回動自在に連結され、前記シリンダは一端において前記回動部材に連結され、伸縮に伴って前記回動部材を回動させ、前記伝動フレームを回動させることを特徴とする請求項3に記載の農作業機。
【請求項5】
前記伝動フレームに突設される被係合部と、
前記後フレームの、前記作業部が前記前進作業位置にあるときの前記被係合部に対応した位置に回動自在に設置され、前記作業部が前記前進作業位置にあるときに一端部において前記被係合部に係合可能な前進側係合部材と、
前記後フレームの、前記作業部が前記後進作業位置にあるときの前記被係合部に対応した位置に回動自在に設置され、前記作業部が前記後進作業位置にあるときに一端部において前記被係合部に係合可能な後進側係合部材と、
前記前進側係合部材と後進側係合部材の各他端部に直接、もしくは間接的に接続され、直線運動により前記前進側係合部材と前記後進側係合部材を回動させ、前記前進側係合部材と後進側係合部材のいずれか一方が前記被係合部に係合した状態を解除する解除部材とを備えた拘束・解除装置を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の農作業機。
【請求項6】
前記前フレームと後フレームの内のいずれか一方に突設される被係合部と、他方に突設された支持軸の回りに回動可能で、前記リンク部材が折り畳み状態のときに前記被係合部に一端部において係合可能な係合部材と、
前記係合部材の他端部に接続され、直線運動により前記係合部材を前記支持軸の回りに回動させ、前記係合部材が前記被係合部に係合した状態を解除する解除部材とを備えた拘束・解除装置を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の農作業機。
【請求項7】
前記複数本のリンク部材の内、前記作業部側に位置するリンク部材の側面に突設される嵌合部材と、前記作業部の前記リンク部材側に固定され、前記嵌合部材が挿通し得る開口を有する被嵌合部材とを備え、
前記嵌合部材と前記被嵌合部材は前記伝動フレームの格納位置に前記リンク部材が回動したときに互いに嵌合する位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の農作業機。
【請求項8】
前記伝動フレームの回動支点側に一端が回動自在に設けられ、前記伝動フレームの回動に連動して前記伝動フレームの回動方向と同一方向に回動する回動プレートと、前記作業部に設けられ、前記作業部の回動と共に移動するピン部材と、前記回動プレートの他端側に一端が回動自在に取り付けられ、他端側に前記ピン部材が挿通する長孔部を有し、前記作業部の回動に伴って前記ピン部材が前記長孔部に沿って移動可能なロック操作部材とを有し、前記長孔部の両端部に、前記長孔部に連通して前記ロック操作部材の回動方向と同一方向に延びて前記ピン部材の前記長孔部に沿った移動を規制する移動規制孔が形成された回動ロック機構部が備えられていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の農作業機。
【請求項9】
前記前フレームに連結された一対のリンク部材の一方に形成された連通孔部と、前記後フレームから張り出した張出部に設けられた孔部と、前記リンク部材が前記前フレームに接近した折り畳み状態にあるとき、あるいは前記後フレームが前記前フレームから距離を置いた格納状態のときに、連通状態にある前記孔部及び前記連通孔部に挿通されるロックピンを有する揺動ロック機構部が備えられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項8のいずれかに記載の農作業機。
【請求項10】
前記後フレームに回動可能に設けられ前側に形成されたフック部が前記一対のリンク部材のいずれかに設けられた係止ピンに係止して前記リンク部材の揺動を規制する係合部材と、前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられた回動部材と、該回動部材に突設されて前記回動部材の回動によって前記係合部材に当接して該係合部材を回動させる押圧ピンと、基端側が前記係止ピンの中心軸線と同軸上に回動自在に設けられ先端側に操作部を有し前記回動部材と一体となって該回動部材を回動させる操作ハンドルとを有する揺動ロック機構部が備えられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項8のいずれかに記載の農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図14】
【公開番号】特開2010−41924(P2010−41924A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206422(P2008−206422)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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