説明

農作業機

【課題】相対的に互いに回動する2つの構成部を有する場合に、この回動をロックするロック機構がコンパクトとなるトラクタに装着する農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】一方の構成部50は、当て部材51を有し、他方の構成部20は、第1の受け部材61と、第2の受け部材62と、第1の受け部材61と第2の受け部材62の間に配設されたロック体42とを有し、ロック体42は、一方の構成部50の相対的な回動による当て部材51に対して通過可能位置と干渉位置とに変更可能であり、2つの構成部50、20の回動のロックは、当て部材51が、第1の受け部材61と干渉位置におけるロック体42の第1の受け部材61側端部42aとの間に挟まれる第1のロック状態と、第2の受け部材62と干渉位置におけるロック体42の第2の受け部材62側端部42bとの間に挟まれる第2のロック状態とでなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関し、特に、相対的に互いに回動する2つの構成部を有する場合に、この回動をロックするロック機構がコンパクトとなるトラクタに装着する農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に互いに回動する2つの構成部を有する場合のロック機構として、どちらかの構成部にフックを設けてロックしていた。強度が必要な場合は、フックを大きくするか、回動中心から離れたところでロックする必要があった。一例が特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2005−124504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来ロック機構においては、フックを大きくしたり、回動中心から離れたところでフックを用いたりする場合、コンパクトな構造をとることはできなかった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みて、相対的に互いに回動する2つの構成部を有する場合に、この回動をロックするロック機構がコンパクトとなるトラクタに装着する農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機は、相対的に互いに回動する2つの構成部を有するトラクタに装着する農作業機において、一方の構成部は、当て部材を有し、他方の構成部は、第1の受け部材と、第2の受け部材と、前記第1の受け部材と前記第2の受け部材の間に配設されたロック体とを有し、 前記ロック体は、前記一方の構成部の相対的な回動による前記当て部材に対して通過可能位置と干渉位置とに変更可能であり、前記2つの構成部の回動のロックは、前記当て部材が、前記第1の受け部材と干渉位置における前記ロック体の前記第1の受け部材側端部との間に挟まれる第1のロック状態と、前記第2の受け部材と干渉位置における前記ロック体の前記第2の受け部材側端部との間に挟まれる第2のロック状態とでなされることを特徴とする。
【0006】
さらに本発明の農作業機は、前記ロック体の通過可能位置と干渉位置の変更が、モータの動力が伝達される軸芯に設けられたロック体を前記モータの動力による回動により移動させることにより行うことを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記2つの構成部が、トラクタに装着される第1のフレームに連結された第2のフレームと、農作業する作業部とであることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記作業部が、畦塗り作業を行う畦塗り作業部であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記作業部が、溝堀作業を行う溝堀作業部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、農作業機において、相対的に互いに回動する2つの構成部を有する場合に、この回動をロックするロック機構をコンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1の農作業機の第1の状態を示す平面図である。同じく、図2は、第2の状態を、図3は、第3の状態を示す。実施例1における農作業機は畦塗り作業を行う畦塗り機である。この畦塗り機は、第1フレーム10と、第1フレーム10とリンク体で接続される第2フレーム20と、第2フレーム20と回動可能に装着される畦塗り作業部30を有している。
【0010】
第1フレーム10は、トラクタ後部に装着する部分である。図1から3の上側にトラクタが配置される。
【0011】
第1フレーム10と第2フレーム20を接続するリンク体は、第1リンク体11と第2リンク体12で構成される擬似平行リンク機構となっている。第1リンク体11と第2リンク体12はアーム形状であり、それぞれ両端が、第1フレーム10と第2フレーム20に水平方向に回動可能に取り付けられている。第1リンク体11は第2リンク体12より長くなっており、これにより擬似平行リンク機構となっている。これは、図2や図3で示されるとおり、第2フレーム20を左側(前進作業における畦と反対側)に移動させるに従い第2フレーム20が右側に回転し、この向きの移動により図3における畦塗り作業部30の回動動作が少なくてすみ第2シリンダ22の動き量を減らせるようになる。また、第1リンク体11に有する第1シリンダ第1支点17と、第2リンク体12に有する第1シリンダ第2支点18の間には、第1シリンダ13が取り付けられ、この第1シリンダ13の稼動により擬似平行リンクを動かすことができる。
【0012】
第2フレーム20と畦塗り作業部30は回動中心21を中心として回動可能に設置されている。そして、第2フレーム20に有する第2シリンダ第1支点26と、畦塗り作業部30が具備する取付部35に有する第2シリンダ第2支点34の間には、第2シリンダ22が取り付けられる。この第2シリンダ22の稼動により畦塗り作業部30を第2フレーム20に対して回動させることができる。
【0013】
畦塗り作業部30は、ロータリー31で旧畦の土をかき出し、ディスク32を回転させて畦を形成するものである。また、必要に応じ旧畦上面をカットする上面削り部33を有する。トラクタ側からの動力はジョイント14を介して畦塗り作業部30側に送られる。このとき、内部にベベルギアを介する構成等として、第1ミッションケース15は第1フレーム10に対して、第2ミッションケース25は第2フレーム20と畦塗り作業部30に対して回動する機構となっている。これにより 図1から3の状態の変化によるジョイント14の折れ角を減らすことができる。
【0014】
次に、図1から3に示される状態の変化について説明する。図1の状態は、トラクタを前進させて畦を塗るための状態であり、畦塗り作業部30は、第1フレーム10に対して右側に位置している。この位置において、トラクタを前進させて右側で畦を塗る。
【0015】
図2の状態は、第1シリンダ13の稼動により、擬似平行リンク機構を動かし、畦塗り作業部30を第1フレーム10の後方に位置させた状態である。この位置は、横へのはみ出しが少なく、あぜ塗り機をトラクタに装着して走行させるのに適した位置となる。
【0016】
図3の状態は、第1シリンダ13をさらに稼動させ、擬似平行リンク機構を動かし、畦塗り作業部30を第1フレーム10の左側に位置させる。さらに、第2シリンダ22を稼動させ、畦塗り作業部30を右方向に回動させ逆方向に向かせた状態である。この状態では、畦塗り作業部30はトラクタをバックさせトラクタの左側であぜを塗ることができる。これにより、圃場の隅で前進作業で塗り残した部分を、トラクタをターンさせてトラクタをバック(後進)させながら、畦を塗ることができる。
【0017】
図4は、実施例1の農作業機の要部拡大斜視図であり、第2フレーム20におけるロック機構を斜め下側から見た図である。また、図5は、実施例1の農作業機のロック体の説明図である。
【0018】
第2フレーム20と軸体50は回動可能に装着されており、軸体50は、畦塗り作業部30に固定されている。そして、当て板取付部52は、軸体50側に固定され、当て板取付部52に当て板51が固定装着されている。一方、第2フレーム20の下側には、2つのロック体取付板41と、第1受け板61と、第2受け板62が取り付けられている。2つのロック体取付板41には、軸芯43が回動自在に装着され、軸芯43には、ロック体42が固定されている。さらに、軸芯43はつなぎ48を介してモータ45へ連結されている。モータ45は第2フレーム20側に取り付けられるモータボックス44(図6〜8では図示省略)内に収納されている
【0019】
モータ45を回転させると、軸芯43が回転しこれにより、ロック体42も回動してロック体42の軸芯43の反対側の端部42cは上下動するようになる。そして、ロック体42を上げた状態では、当て板51はロック体42の下側を通過可能となり、ロック体42を下げた状態では、当て板51はロック体42の第1端部42a又は第2端部42bに干渉する構成となっている。
【0020】
図6aは、実施例1の農作業機の第1のロック状態における要部拡大斜視図であり、図6bは、この状態における上部から見た説明図である。この状態において、当て板51(の両端部51aと51b)は、第1受け板61の受け部61aと、ロック体42の第1端部42aに挟まれており、動くことはできない。このため、第2フレーム20に対して軸体50(畦塗り作業部30)は固定(ロック)されていることになる。このロック状態は、図1、2の状態で適用することができる。
【0021】
図7aは、実施例1の農作業機の回動中の状態における要部拡大斜視図であり、図7bは、この状態における上部から見た説明図である。第1のロック状態から、モータ45を回転させて、ロック体42を上げる。すると、ロックは解除するので、その後に、軸体50(畦塗り作業部30)を回動させると、当て板51は、ロック体42の下側を通過可能となり、この通過中の状態を示したものが図7の状態である。
【0022】
図8aは、実施例1の農作業機の第2のロック状態における要部拡大斜視図であり、図8bは、この状態における上部から見た説明図である。図7の状態から、さらに軸体50(畦塗り作業部30)を回動し、当て板51の第2突き当て部51bが、第2受け板62の受け部62aに当接する位置で、モータ45を先ほどと逆回転させるとロック体42は下がる。これにより、当て板51(の両端部51bと51a)は、第2受け板62の受け部62aと、ロック体42の第2端部42bに挟まれており、動くことはできない。このため、第2フレーム20に対して軸体50(畦塗り作業部30)は固定(ロック)されていることになる。このロック状態は、図3の状態で適用することができる。
【0023】
また、これと逆の回動をする場合は、上述した順番と逆の順番により第2のロック状態から、第1のロック状態にすることができる。
【実施例2】
【0024】
図9は、実施例2の農作業機を示す平面図である。実施例2の農作業機は、溝堀作業部73で溝堀作業を行う溝堀機である。この溝堀機は、トラクタの後部に装着可能にする第1のフレーム71と、第1のフレーム71に対して第1回動支点81を中心に回動可能に装着される第2のフレーム72と、第2のフレームに対して(第1回動支点81とは別に位置する)第2回動支点82を中心に回動可能に装着される溝堀作業部73を有する。トラクタからの動力は、第2のフレーム72内に設けられた、例えば、チェーン等の伝動部材を介して溝堀作業部73側へ伝達される。
【0025】
第1のシリンダ74は、第1のフレーム71と第2のフレーム72間に取り付けられ、 第1のシリンダ74の稼動により、第1のフレーム71に対して第2のフレーム72を回動させる。また、第2のシリンダ75は、第2のフレーム72と溝堀作業部73間に取り付けられ、第2のシリンダ75の稼動により、第2のフレーム72に対して溝堀作業部73を回動させる。
【0026】
図9の状態は、第1のフレーム71に対して、溝堀作業部73が右側に位置し、トラクタを前進させ右側で溝堀作業をする状態である。この状態から、第2のフレーム72を第1のシリンダ74の稼動によりAの方向へ回動させる。さらに、溝堀作業部73を、第2のシリンダ75の稼動によりBの方向へ回動させる。これにより、溝堀作業部73は、第1のフレーム71の左側に逆向きに配置される。この状態において、圃場の隅で前進作業で作業し残した部分を、トラクタをターンさせてトラクタをバックさせながら、溝堀作業できる。
【0027】
このときの、第2回動支点82のロックとして、図4から図8で説明したロック機構を適用することができる。これは、第2のフレーム72に対する溝堀作業部73の回動をロックするもので、実施例1の第2フレーム20が本実施例の第2のフレーム72に相当し、実施例1の畦塗り作業部30が本実施例の溝堀作業部73に相当させる。すると、図9の状態が、図6の第1のロック状態を適用でき、図9から溝堀作業部73を上述した反転させた状態が図8の第2のロック状態を適用できる。これにより前進、バック作業ともに、第2のフレーム72に対して溝堀作業部73をロックさせて作業することができる。同じく、第1回動支点81側においても、図4から図8で説明したロック機構を適用することができる。
【0028】
なお図9で示される実施例2における機構は、溝堀機の溝堀作業部73を畦塗り機の畦塗り作業部30とすれば畦塗り機としても適用することもできる。
【0029】
実施例1と2で示したように、本発明は、回動する構成部同士を2箇所の位置でロックする場合において、回動軸周りに上述した部材を配設していくことでコンパクトで確実なロックを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の農作業機の第1の状態を示す平面図である。
【図2】実施例1の農作業機の第2の状態を示す平面図である。
【図3】実施例1の農作業機の第3の状態を示す平面図である。
【図4】実施例1の農作業機の要部拡大斜視図である。
【図5】実施例1の農作業機のロック体の説明図である。
【図6a】実施例1の農作業機の第1のロック状態における要部拡大斜視図である。
【図6b】実施例1の農作業機の第1のロック状態における上部から見た説明図である。
【図7a】実施例1の農作業機の回動中の状態における要部拡大斜視図である。
【図7b】実施例1の農作業機の回動中の状態おける上部から見た説明図である。
【図8a】実施例1の農作業機の第2のロック状態における要部拡大斜視図である。
【図8b】実施例1の農作業機の第2のロック状態における上部から見た説明図である。
【図9】実施例2の農作業機を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 第1フレーム
11 第1リンク体
12 第2リンク体
20 第2フレーム
21 回動中心
30 畦塗り作業部
42 ロック体
43 軸芯
45 モータ
50 軸体
51 当て板
61 第1受け板
62 第2受け板
71 第1のフレーム
72 第2のフレーム
73 溝堀作業部
81 第1回動支点
82 第2回動支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に互いに回動する2つの構成部を有するトラクタに装着する農作業機において、
一方の構成部は、当て部材を有し、
他方の構成部は、第1の受け部材と、第2の受け部材と、前記第1の受け部材と前記第2の受け部材の間に配設されたロック体とを有し、
前記ロック体は、前記一方の構成部の相対的な回動による前記当て部材に対して通過可能位置と干渉位置とに変更可能であり、
前記2つの構成部の回動のロックは、前記当て部材が、前記第1の受け部材と干渉位置における前記ロック体の前記第1の受け部材側端部との間に挟まれる第1のロック状態と、前記第2の受け部材と干渉位置における前記ロック体の前記第2の受け部材側端部との間に挟まれる第2のロック状態とでなされることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機において、
前記ロック体の通過可能位置と干渉位置の変更は、モータの動力が伝達される軸芯に設けられたロック体を前記モータの動力による回動により移動させることにより行うことを特徴とする農作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の農作業機において、
前記2つの構成部は、トラクタに装着される第1のフレームに連結された第2のフレームと、農作業する作業部とであることを特徴とする農作業機。
【請求項4】
請求項3に記載の農作業機において、
前記作業部は、畦塗り作業を行う畦塗り作業部であることを特徴とする農作業機。
【請求項5】
請求項3に記載の農作業機において、
前記作業部は、溝堀作業を行う溝堀作業部であることを特徴とする農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94108(P2010−94108A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269888(P2008−269888)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】